ログ・ホライズン ~わっちはお狐様でありんす~ 作:誤字脱字
とりあえず次で海外は終了です
〈KR〉
元〈放蕩者の茶会〉メンバーであり、道楽者
彼は色々と特殊な人物だ、まず初めに彼の装備は両手に1本ずつ杖を持つ二刀流。次に基本的な戦闘スタイルは〈召喚術師〉のくせに近接が主体。最後に〈ちんどん屋〉
ネタの宝庫と言っても過言ではない!
その特殊な戦闘方法ゆえにソロプレイが多く、〈茶会〉所属後のPT戦闘では隊列の中間から全体のサポートをするのがメインであった。
噂では〈茶会〉に加入する切欠は当時リーダーであった女性の有り方に興味を持ち近くでその女性を見ていたいと言うストーカー染みた理由だと囁かれた
また、同じ異質な戦闘スタイルでありソロプレイヤーであった〈九尾〉とは親交が深く、あの二人が話している時は近くによるな!と言われ、そこに〈腹ぐろ〉が加わった時はエリア移動しろ!と言われ恐れられていた
最後にネタなのか分からないが、ソロプレイ推進の為に作ったであろうギルド〈KRひとり団〉のネーミングセンスはどうなのかと彼を疑ってしまう……
「番外!Who? So you are name?~出会いは突然襲ってくる!~」著作者:くずのは
より抜粋……
「ちんどん屋、危なかったでありんす。一歩間違えていたらわっちがちんどん屋でありんした。しかし……」
苦笑いと共に持っていた本を閉じ、視線をレオナルド達に向けた
「連中は、切り立った崖下の河床を進んでいる。数は判らない。――済まないな、月明かりだけで確認は不可能だ。だが、十やそこらの数じゃない。最低でも、五百は居るだろう」
「500っ!?」
KRが直接肉眼で偵察してきた結果を聞き入れレオナルドは驚愕の声を上げていた
「500……正攻法では少々キツイ相手ではありんすが、カーミンは行くでありんしょうね?」
もぞもぞっと天幕で動く人影を彼女は懐かしく、そして歓喜に満ちた思いで見つめるのであった
ログ・ホライゾン ~わっちがお狐様でありんす~
テレってー!レベルアーップ!……はっ!林檎がいんす!
「あほかっ! 相手の数は一万以上だぞっ!!」
アオルソイの荒野にレオナルドの悲鳴が響き渡った。
無理もないであろう……レオナルドが声を上げた原因であるカナミはこともあろう事か、現在進行中の〈灰斑犬鬼〉500体じゃ物足りない!敵の本隊が陣を置く〈列柱遺跡トーンズグレイブ〉に突入!敵の首級を上げる!と拳を天に突き上げたのだから
まさにクレイジー、前から何を考えているか分からない女であったが、ここまでおかしいとは思ってもいなかったのであろう
大体、進行中の〈灰斑犬鬼〉500体だってKRの話ではステータスのダブりが出ているモノが大半を占めており、イレギュラーな事態となっている。本来の、そう只の〈灰斑犬鬼〉なら〈武闘家〉の圧倒的な回避能力と、カナミの馬鹿げた攻撃能力で、500の〈灰斑犬鬼〉さえも退けられるのかも知れないと希望が持てたであろう。かりにもカナミ以外にもLV90以上の凄腕プレイヤーが、このパーティーに多く存在していおるのだから!
だがしかし!本隊に乗り込む!此方の戦力は6人!イレギュラーな事態が起こっている!
………どのように考えてもカナミの様な結論に至るのはおかしい
「話を聞いてなかったのか。〈楽浪狼騎兵〉の百人部隊《レギオンレイド》は全滅したんだぞっ。いいか、90
レベルの冒険者百名が、全・滅・したんだぞっ!?」
「それは正面から喧嘩したからだって。情報も無しでさっ」
「な……」
「だから喧嘩はしない。攻めていって、首級をあげる。それで、逃げるっ。パーフェクトゲーム! うぃあーちゃんぴよん!」
「ばっ」
馬鹿じゃないのか、この女。
なにが『ちゃんぴよん』だ。お前の脳みそはバカの世界王者だ。
――それをさせないために一万の〈灰斑犬鬼〉が遺跡を守っているのだろうに。それが出来ないからこその大規模戦闘による攻略だったろうが。レオナルドはそう考えるが、余りにもあっけらかんとしたカナミの態度に、口をぱくぱくさせることしかできなかった。
「で、カナミ」
「ん? なに? KR」
「情報と言っていましたけれど」
「春翠からいろいろ聞いたでしょ」
「ふむ。で、それをどう生かして、〈灰斑犬鬼〉のボス――居るとすればですが、そのボスと対峙するのですか?」
「それはクーちゃんが考えるよ!」
アオルソイの夜に、まるで夜明けが訪れたかと思うほどの、輝かしい笑みを浮かべて、カナミは言い切った。
「――やはりか」
「やはりじゃない!出来る訳無いだろっ! アホっ」
どこか納得が言ったとばかりに頷くKRとは反対に、レオナルドは強い言葉を叩きつける。そこには現在の状況や、よりにもよって怠けているばかりの駄狐に頼るという事も計算に入れていたであろう
そんなレオナルドの思いとは裏腹に話題に上がった彼女はレオナルドが上げた声に驚き、戯れていた林檎を地面に落としていた
「クーちゃんはやれば出来る女だよ?それに、ね?出来るか出来ないかじゃ、無いんだけどなぁ」
「じゃ、なんだって――」
「行く必要があるんだよ」
「だから、その必要ってなんなんだよっ」
レオナルドの追求に、カナミはつま先立ちで軽くステップすると、小さく微笑んだ。それは、レオナルドをからかうようなものではなくて、柔らかい笑みだった。
「口で言っちゃ、ダメな理由だよ……さぁ、くーちゃんお願い」
だから、レオナルドはその言葉の先を、続けることが出来なかった。これはこちらのパーティーの問題だと考えているのだろう。春翠もジュウハも、見守ってはいるが、口出ししては来ない。このままでは埒があかない。エリアスやコッペリアにも、カナミをいさめてもらおうと思ったレオナルドだが、その思惑は裏切られることとなる。
「いいわ。と言っても今回は策と言う策はないわ……所詮愚図の集団、人形による弱体化で〈古来種〉の魔法でもレッドゲージまで削れるでしょう……トドメはカナミ。それが基本的な動きかしら?」
「さっすが~、くーちゃん!」
「心得ている」
「了解でありマス」
「なっ!?」
レオナルドは目を大きく広げ驚愕した。いきなり駄狐の雰囲気が変化したのも驚いだが、こんなクレイジーな行動に二人が賛成の意思を示している事に驚きを隠せなかった
レオナルドの表情にどこか嬉しそうに微笑みながらも真剣にエリアスは声をかける
「なにも、カナミに恩義があるから死地へ旅立とうという話ではない。忘れているかも知れないが、私は〈古来種〉なのだ。私には〈大地人〉を守るという義務がある。それは我ら全界十三騎士団が設立されたときから与えられた使命なのだ。――例えそれが陳腐なものであろうと、私はそれに真実の意義を感じる。滅びし妖精族の誇りに懸けて、私は〈大地人〉を見捨てはしない」
そういえば、そうだった、とレオナルドは思い出す。
最近の旅で仲間として過ごしてきたからすっかり忘れていたが、エリアスは〈古来種〉《NPC》なのだ。〈冒険者〉《プレイヤー》ではない。感情豊かに見えるが、高性能のロボットと同様なのだ。それは、〈大地人〉も一緒だ。彼らは〈大地人〉《NPC》でしかない。だからこんなにも愚かな行動しかしないのだ。
「コッペリアも行きます」
「ッ!」
細い腕を動かし荷物を重量軽減バッグに詰め込むコッペリア
その仕草が納得しがたくて、レオナルドはコッペリアの手首を掴もうとして―――〈くずのは〉が持つ扇子によって叩き落された
「何をしているのかしら道化よ、人形が自分の意思で決めた事、止める権利なんて最初からありはしないわ、控えなさい!」
正論で言い返せなかった。いまの彼女はカナミのメイドではなく一個人として戦いに望もうとしていることが嫌でも分かったのだ。此方を見ないで淡々と荷物を重量軽減バッグに詰め込むコッペリア。それはひどく不快で痛々しい気持ちをレオナルドに与え、弱弱しくコッペリアに声を掛ける事しかできなかった
「……何でだ。勝てる訳が無いじゃないか」
「いえ、コッペリアは勝算があると考えます」
荷物を詰める手を止めて、互いの目が合うようにコッペリアはレオナルドを見つめた
「あの現象を、コッペリアは二重なる者《パラレル・ワン》と名付けました。あの状態は、おそらく極度に不安定でス。『魂の欠けた者』が近づけば、自壊して重複したそれは、コッペリアに殺到します。コッペリアの防具には対霊防御性能がありますから、『二重なる者』に対する有効な対策になるとクーも考えたのでショウ」
「その理屈が正しいからって、相手の数が減る訳じゃない! コッペリアが犠牲になる必要なんて無いだろうっ」
レオナルドの否定に、コッペリアは深い藍色の髪を揺らした。
磨かれた鏡のような大きな瞳に、レオナルドが映っている。
その無垢な視線をレオナルドに注いだまま、コッペリアは告げた。
「コッペリアもまた、プレイヤーではありません。中国に本拠地を置く資金洗浄グループが設置した、MMO内資金回収botのうちひとつが、コッペリアです」
◆
夜明けの光が、レオナルドを照らしていた。
平板な光の中で、荒野はやけに色彩無く、白けて見えた。
カナミ達三人は峡谷へと向かった。春翠とジュウハは、セケックの村へ急を知らせると言い、やはりこれもまたやけを待たずに旅立った。
そんな中、レオナルドは石を飲んだような思いを抱えて、アオルソイの荒野に、独り座っていた。やがて藍色の暁は過ぎて、地平線から太陽が顔を出したが、今日に限ってそれは、さほど輝かしくも温かくも感じられなかった。
「相当ショックだったらしいな?」
「さぁ?道化の考える事なんて私には理解出来ないわ」
同じように太陽の日を浴び遠目からレオナルドを見つめる二匹の獣
一匹は日差しが眩しいのか扇子を広げ日光を遮り、もう一匹はたそがれるレオナルドを見て鼻を鳴らしていた
「貴様は行かなくていいのか?久しいくとないカナミとの戦闘だぞ」
「無粋ねKR、目の前に愉快な道化がいるのに独り占めなんて?……モテないわよ」
「貴様に惚れられたら体が持たん。」
互いに笑みをこぼし、ただ茫然と座り込むレオナルドを見続ける
数分の時が流れた。傍観していた一匹が徐に足を動かしたのだ
「どれ悩む青年に声を掛けに行くかな?」
KRの表情は今、白馬な為、付き合いが長い〈くずのは〉でも分かり辛かったが、期待と歓喜に満ちた顔をしていると容易に想像が出来た。それが〈くずのは〉には不思議でならなかった
「……貴方と旅をして感じたけど、あの道化をそこまで気に掛けるのは何故?」
二日前に世界の情勢をレクチャーしていた時もそう思った。彼は道化を何かと気に掛けて何かを期待するような目を常に送っていたのだ
〈くずのは〉の問に対しKRは後を振り返らずに淡々と答えた
「言っただろう、カナミが目に付けた奴だ。それに…」
何か言いよどむと照れくさそうな声色でーーー
「奴の言う赤いアイマスクのヒーロー、俺も好きだったよ」
そう言い残しレオナルドへと向かうKRの後ろをーー
「……男って分からないわ」
ため息交じりで〈くずのは〉は付いて行くのであった
◆
「どれ」
「え?」
振りかえると、白馬であるKRとこの旅の最中つねに猫背だった背がしゃんと伸びた駄狐がいた。そんな彼女は美しい白馬に似た優美な姿の四肢を折り、大地に腹ばいになったKRの背に腰を降ろした
「KR、それにクー……。行ったんじゃないのか?」
「なぜ?」
「……」
「だって、君達は……カナミの昔からの仲間なんだろう?」
「それはそうだが。……気になることがあってね」
KRが目を細めたまま、開けたばかりの太陽の熱を味わうかのようにのんびりと告げた。
カナミ達に同意することは出来ない。
無為に命を捨てる愚行なんて付き合うことは出来ない、しかし、では独りで東への旅を続けられるかと言えば、そこまで割り切れもしないレオナルドの、その迷いを見透かすように、KRはその聡明な瞳をちらりとレオナルドに向けた。
「これからどうするつもりなのだ」
「どうって……」
案の定投げられた質問に、レオナルドは答えることが出来ない。
それが出来ていたら、コッペリアにもう少し、何か声を掛けてあげる事が出来ただろうと思う。
――資金回収bot。
コッペリアはそう言った。
Botとは、時代背景の中で考案されたプログラムの一種であり、MMOのキャラクターをプレイヤー無しでも動かすための、一種の自動化された、人工知能的なプログラム。
もちろん、プレイヤーが行なうような複雑な行動は行えないが、プログラミングされた単純な行動を長時間続けることが出来る。例えば、人間には体力的にも精神力的にも不可能な、二十四時間、同じ狩り場で金銭とアイテムを集め続けると行ったプレイが可能なのが、Botの特徴
その事を踏まえるとコッペリアのどこか機械的な対応も、盲目的なまでに繰り返してきた狩りも、おそらくはカナミに対する無条件の服従も、彼女がBotだったとすれば説明が付く。
なんてことはない。
彼女も〈大地人〉と同じ、機械人形だったのだ。
「二人こそ、行かないで良いのかよ?……クーは作戦まで提供しただろ」
「構わない。〈くずのは〉に関しては行く気もないようだ」
「……」
「そう、なのか」
「カナミは自分が行くと云っても行かないと行っても、自らの判断を変えるようなことはない。例え、それで彼女が死ぬにしたところで、公開するにしたところで、それは彼女自身の責任において行なわれる」
「なんであんなに無謀なんだ、あの馬鹿」
「黙りなさい道化?」
「――ッ!?」
今まで口を開かなかった狐が旅の最中では見たことのない鋭い眼差しでコチラを睨んでいた
「カナミは全力なの。全てを全力で受け止めているだけ。そうすることが、カナミにとってはいつでも一番大切なの。彼女にはギアやブレーキという概念がない。そう言う人間よ」
「……つまり、バカじゃないか」
「そうね馬鹿よ?……でも私達はそんな彼女が好きなの」
鋭い視線がレオナルドから外れ遠く彼方、カナミ達がいるであろう方角に先程とは正反対の優しい目を向けていた。彼女の言葉に鼻を鳴らしたKRも満足そうだった。
「勝てる、のかな」
「悪くない線まで行くだろうな。カナミよりも、あの娘の方が、戦力的には不安がある」
「……」
言葉が出ずに言い淀むレオナルドに、〈くずのは〉はさもツマラなそうに言葉を掛ける
「何を悩む必要があるのかしら?貴方は行かない、その結果あの人形が死のうと貴方には関係ないわ」
ズキッと胸が痛んだ
コッペリアが死ぬ?
「知っているでしょ?AIである人形は〈大地人〉と同じ、HPが切れれば死亡する」
ズキリっと今度は心が痛んだ
棘だらけの塊がレオナルドの胸の中にあった。ちくちくと鬱陶しいこの感覚。イライラさせて、胸を重くして、責め立てられるような、急かされるようなこの感覚
「KRが貴方の事を好意的に見ているから私も少しは答えを出す手助けをしてあげるわ……こんな時、貴方の好きなヒーローはどうするでしょうね?」
言われなくとも判っている!
本当はずっと判っていた。
レオナルドが誰よりも愛した、パートワーカーのギーグではない。不屈のニンジャ・ヒーローは、こんな時にどうするか? そんな事は最初から判っていたのだった。なぜなら彼は誰よりもヒーローに憧れていたからだ。考えるまでもなく自明のことだった。
「行く」
「なぜ」
立ち上がったレオナルドに、間入れずに〈くずのは〉は問いた
「ただのAIの為に危険な橋を渡る必要はあるのかしら?」
確かに危険な橋を渡るなんて馬鹿げている。クレイジーだ。だけどーーー
世界でもっともクールな『彼』ならばどうするか?
こんな事態でただ指をくわえては居ないだろう。
相手が機械だろうがbotだろうが躊躇いはしないだろう。
自分の臆病を、相手の価値のせいなんかにはしないだろう。
自分が助けたいと思ったのならば、それは助ける価値があるものなのだ。人間だろうが犬猫だろうがBotだろうが関係ない!
「それがなんだというのだ!AIのために命を掛ける馬鹿が一人くらい増えたって良いではないか!」
レオナルドは〈くずのは〉をただ真っ直ぐに見つめ問いに迷うことなく答えたのであった
……返答はKRの笑い声であった。
「なんだよ。文句があるのか。ふんっ。笑いたければ笑うがいいさ。僕が行ったって何も変わらないかも知れないけれど、黙って殴られるつもりはないぜ。――僕にだって新しい力がある」
「笑いはしないさ」
KRは白馬の身体で立ち上がると、首を長々と伸ばして一声いなないた。その声は長々と響き、いななきは鳥の囀りのような音声へ、やがて高密度の詠唱へと代わり――辺りを白光が満たした。
「面白いな。――実に。実に」
レオナルドがその輝きの中で薄目を再び開けると、そこには見知らぬ男が立っていた。
総髪を後ろで束ねたやせぎすの青年は、エルフのようだった。病人のように白い顔に、面白がるような笑みをはりつけている。特徴的なのはその装備で、裾がぼろぼろになった、それでも豪華なローブをまとい、両手に一本ずつの杖を持っている。魔法使いの装備として杖は珍しいものではないが、その二刀流は珍しかった。
「もしかして……KRなのか?」
「そうだが?」
「――本当に人間だったのか」
「失敬だな、君は」
ふんと鼻を鳴らした青年は、杖を器用に地面に突き立てると、自由になった腕を回し、大きく背伸びをした。小気味よいほどの音が洩れるところをみると、どうやら長い間、身体を小さく屈めていたらしい。
「どうやって、なにをしたん「そんな些細な事はどうでもいいわ、行くわよ」…え?」
レオナルドの言葉を遮った言葉に驚きをあらわにする
「決心したのでしょう? ――私も付き合うわ」
「なんでっ」
「ふ、目の前に面白そうな道化がいるのよ?なら、近くで見たいと思うのは当たり前の事だわ」
「……道化って僕の事か?」
「どうやらそうみたいだな、だが誇って良いぞ?あの〈九尾のくずのは〉を口説き落としたのだからな?」
「……KR、死にたいようね」
「おおう、恐い怖い」
〈くずのは〉を尻目にKRは杖を突き立てた
突き立てた杖を中心に、巨大な光の魔法陣が広がり、立体的に回転を始める
「レオナルド」
「…なんだ」
「さっきの言葉なんだが……良かったよ、まさに俺達が好きなヒーローだった」
照れくさそうな笑みを漏らす間も、風を切るような音と、魔法陣の共鳴は続く。
「そのヒーローが『新しい力』をみせるなら、こっちだってお披露目をしない訳にはいかないだろう?」
空中に描かれる輝く線は複雑に絡み合い、輪郭線は見る間に複雑に編まれた針金細工を経て、生き生きとした姿を描き出す。
「召喚……っ」
「目覚めよ我が友、紅き竜よ。ガーネットの眠りから覚めて、空を舞えっ!」
呼び出された真紅の竜は、慌てるレオナルドを咥えあげると、その優美な首筋にのせた。いつの間にかその後ろに収まっている彼女とKR。KRが鋭く指笛を鳴らすと、一瞬後にはその姿ごと、上空へと駆け上る。
「さぁ、道化よ。面白可笑しく踊ってちょうだい」
「ッ!上等!」
まるでアオルソイの大気に溶け込むように、二人を乗せたドラゴンは高く高く羽ばたくのだった。
NEXT コマンド → ガンガン行こうぜ! →だが断る!
小話
「ところでKR?」
「なんだ」
「彼女は本当にあのクーなのか?」
「然り、だ。」
「雰囲気といい態度といい別人みたいだな?」
「ふっ、〈くずのは〉の言葉を借りるなら『狐は化かす』ものだ」
「……」