エルニーニョ   作:まっぴ~

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第16話 システム変更

 集合、はい!

 という掛け声から選手が集まるそれは、どこの部活でもやっている事だろう。葉蔭学院でも同じように、1学期末テスト日程を全て終えた生徒たちが我先にと鬱憤を晴らすかのようにグラウンドにかけて来ていて、練習着を着こんでから集まったメンバーからボールを蹴り始めていた。

 何人かの3年生が引退して、1軍にも欠員が出る。つまり、総体予選では控えに甘んじていた1,2年生がこれから行われる冬の選手権に向けて、夏休みの部活というのは監督にアピールする事が出来る絶好の機会なのだ。

 

 3年生の中でも飛鳥さんを始めとして今後もサッカーを続けていくと考えている者は部活に残っていて、人数が減ったと言っても強豪校の名前に恥じない程度の部員数を有しているのは事実。選手よりもむしろ、マネージャーの方が減ってしまったのがサッカー部にとっては痛い事だ。なにしろ、マネージャーの彼女たちはサッカーに生きていくわけではないのであり、マネージャーとして部活に貢献してきた内申点を糧に、受験勉強に励んで推薦を貰う者もいれば、勉強に打ち込んで難関大学を狙う者もいる。

 つまり、いつもの監督のそばで笛を吹く様な筆頭マネージャーと呼ばれる存在は二年生にバトンを受け渡されることとなり、その銀色の笛は今や陽香が首からぶら下げていた。それは勿論、現二年生の総意でもあり、そして三年生からの指名でもある。誰より早くにサッカー部のマネージャーとして部活に参加して、そして他のマネージャーとは比べ物にならないほどに知識を有している彼女がその役目を担う事になるのは必然だったのだろう。

 

「……お前たちももう分かっているとは思うが、昨年の選手権予選の覇者でもある葉蔭サッカー部にかけられた期待は大きい。全国大会出場の報を待って練習に励んでいるのは、お前たちだけではない。吹奏楽部やチアリーディング部を始めとして、応援しに来てくれる者たちも我々の選手権全国大会出場に向けて練習に励んでいる」

 

 重々しく口を開いた田岡監督の言葉は、心理学的にはたぶんその言葉を口にすることが間違っているのかもしれない。練習は楽しく効率的にやるべきだ、というのが近代スポーツ科学の権威者たちの言葉であり、日本が古くから実践し着てきた様な根性論は最早時代遅れの遺物である事は否めない。

 だが、それらの理論を根本から否定するかのように田岡監督は選手権に向けて新たなスタートを切ろうとしているチームを前に、プレッシャーをかける様な言葉を告げる。

 

「そして、私の指導が至らず、我々は総体全国大会出場を逃すことになった。お前たちは確かに強い。個々人の力は、優勝した鎌学にも劣っていない。敗因は、伝統校の誇りなどというバカげたものに縛られ過ぎて、頭の固い考え方で昔ながらの方法でしかチームを組織出来なかった私に責任がある」

 

 鎌学と葉蔭の試合が終わってから、それを評価したサッカー記者の記事には、こう書いてあった。

 『葉蔭学院というチームは、全国でも有数どころか、全国でトップの守備力を誇る高校チームだと言って過言ではない。それは昨年度の選手権でも証明されている事であり、今回の総体県予選大会で決勝前に姿を消したと言っても否定されることではない。だが、それでもチームは準決勝で敗退。何が足りなかったのかと言えば、その守備力に頼り切って攻撃力を疎かにしていた点にあるのだろう。カウンターからの1点を狙うという方法は、確かに戦術論としては優れている。だが、それしか狙わないチームが怖いわけではない。それは攻撃の起点となるのも常に飛鳥享であり、彼からのロングパスと、オーバーラップを警戒すれば葉蔭の攻撃は全てシャットアウト出来るのだ、という事を鎌学は証明した。何度も繰り返した攻撃戦術もあったのだろう。だが、その圧倒的な守備力に比べて、葉蔭には攻撃力が足りていないのは事実だ。彼らが選手権で勝ち上がるには、やはり点を取る事が必要になってくるだろう。』

 これはその通りの指摘であり、どんな解説者だろうと葉蔭というチームを見ればその欠点は明らかに出来る。カウンターからの反撃ほど怖い物は無いが、しかしそれしか攻撃の手段が無いチームほど怖くないものもない。

 

「その為に、今後はチームの方針を改めることにした。飛鳥と一条を得てから固定してきた3-5-2のシステムだが、これも崩すつもりだ。当然、それに当たってスタメンも一から考え直すことになる。今まで控えに回っていた者も、今までスタメンだった者も気合を入れ直して練習に励んでくれ」

「「「はいっ!」」」

 

 気合の入った返事は、勿論スタメンにはなれなかったような者たちからの声量が一層強い。システム変更まで考えるという事は、つまりFW、MF、DFのそれぞれの割り振り人数が変わってくるという事で、攻撃の選択肢の幅を持たせるために変更するのであれば、今までとは違う人選方法になるかもしれない。

 圧倒的なDFである飛鳥との相性を考えて、今まではDFには頭のいい飛鳥と連携を取れる者が、サイドMFにはロングパスを活かせるような足の速い者が、そしてFWには一発を決められるシュート力が求められていた。システム変更という事は、誰しもにチャンスがあるという事だ。強豪葉蔭でのレギュラーを取りたいと思って葉蔭学院を選んだ者からすれば、またとないチャンスだろう。

 

「また、今後は私と飛鳥だけではなく、2年の十文字にもコーチとしての役割を果たして貰う。十文字の実力はお前たちの記憶にも鮮明に残っているだろう。近代的なサッカー戦術論については私よりも詳しい。私に聞きにくい事があれば飛鳥と十文字に聞くように」

 

 何人かの視線が俺の方に集まるのは、今の話しの流れからすれば当然のことだ。

 果たして強豪校の選手であるというプライドのある彼らが俺に素直に疑問を提示してくるのかどうかは分からないが、少しだけでも風当たりは弱くなる筈だ。今までスタメンだった者からの風当たりは仕方無いかもしれないが、これからスタメンを目指そうとする者にとっては、明らかに中盤を努める俺との相性が、今後の葉蔭の攻撃力を担うことになるのは間違いないのだから。

 

「……また、誤解の無いように最初から伝えておくが、十文字はただの海外帰りではない。十文字、前に出て来て自己紹介したまえ」

「監督、情報開示は選手権予選が始まってからでは?」

「いや、早めに皆に伝えた方が君の方に相談も行きやすいだろう。そうなれば、君の言っていた相棒とやらも見つけやすいのではないかね?」

「……了解です」

 

 ばらばらに立っていたその状態から、少し間を縫って部員よりも前の方に出る。

 監督の横に立って、マネージャーと監督の間で回転して部員の方を向けば、未だに懐疑的な視線を向けている者もいる。最初にこのチームで練習に参加させてもらった時の、味方からのあの視線が思い浮かばれるが、その時に一緒にプレーした彼らは既に何を言ってくれるのかとワクワクしている様な瞳をこちらに向けている。

 やはり、同じ選手同士、一緒にプレーした方が分かりやすかったのだろう。

 

「改めまして、2年の十文字輝です。スペインからの帰国で、以前の所属チームは……FCバルセロナのユース。ポジションはトップ下」

 

 ガヤガヤと少しだけうるさくなる彼らの表情は、まさしく驚愕という二文字を体現しているかのようだ。

 今では日本人選手も欧州クラブチームに移籍するようになって、日本の若手はヨーロッパで結果を残しているだけあり、日本人選手が欧州で活躍するという事が夢ではなくなった。だが、それでも所謂有名なクラブチームに所属している日本人選手というのはまだいないのが現状だ。一番有名な所でも、ドイツのブンデスリーガ、アイントラハト・フランクフルトで活躍している倉知選手くらいだろう。彼も若干21歳にしてトップリーグ入りを果たしている際物だ。

 だが、フランクフルトという名前もサッカー好きでなければ分からない様なクラブチームの名前だ。一般に、それなりにサッカーに興味が無い人でも知っているクラブチームと言えば、チェルシー、バイエルン、Rマドリード、ユヴェントス、インテル、ミラン、マンU、そして現在クラブランキング1位のFCバルセロナ辺りだろう。他にも色々なチームがあるが、それらの中でも最も有名なのがバルセロナとRマドリードであるという事に異論を唱える様な人間はそんなに多くない筈だ。

 そのユースチームに所属していたというのは、例えば飛鳥享が以前は横浜ユースでレギュラーだった、というのとはレベルが違う。それこそ、草野球をしていたというのと甲子園に行った事があるという事くらいには差が広がっている。

 

「葉蔭が誇っているカウンター戦術からは最も遠い戦術論でプレーしていたので、多少戸惑う事があるかもしれませんが、日本の誰よりもスペインで行われている最先端の理論を理解している自信はあります。チームとして皆さんに求める事は、最低限全国優勝。そして、目標は観ていて面白い内容のサッカーをすること。一番の新参者が生意気言いますが、それを気にしない人はどんどん技術を盗み取って下さい。よろしく」

 

 ぽかん、としたままの彼らからは挨拶を終えても何のリアクションもなかったが、真面目なままの顔をしていた真守がぱちぱちと拍手をし始めると、それがアウトブレイクのように広がる。

 思ったよりも失敗ではなかった挨拶らしく、何人かは既に視線の感じが変化している。

 

「さて、それでは各自でアップを終えてからフィジカルトレーニングに入る。解散」

「「「はいっ!」」」

「飛鳥と十文字はこっちに来たまえ」

 

 各自で筋組織を伸ばしたり、関節を曲げたりしながら身体を柔らかく伸ばすアップを始めている中で、キャプテンの飛鳥さんと俺だけが監督に呼ばれる。

 マネージャーはドリンクを作りに行き始めたり、ボールを用意し始めたりと各自で既に動いていて、3年生がいなくなったにも関わらず仕事が滞るという訳ではなさそうだ。そして1年生はアップに集中しきれておらず、ちらちらと俺たちの方向を向いているのは仕方がないと考えるべきか、それともそれを注意している3年生を流石だと捉えるべきか。

 そんな事を考えている内に飛鳥さんがやってきて、陽香から手渡されたボードを手に、監督は話し始める。

 

「さて、早速だが二人に意見を聞かせて欲しい」

「……自分は3-5-2のシステムが一番良いと思って提案しましたが、この間の試合で点を取れずに負けたのは事実です。ストライカーがチームにいない現状を考えるならば、中盤を一人減らしてFWを増やし、3-4-3が単純にはチームの攻撃力の底上げになるかと思います」

「ふむ……十文字は?」

 

 さて、どうしたものか。

 飛鳥さんや春樹、真守のように世代別代表を経験している様な選手は、監督によってシステムが違うという事を体験しているから、急なシステム変更にも戸惑うという事は無いだろう。だが、これまでずっと同じシステムで練習してきた3年生と2年生からすれば戸惑いも大きく感じる筈だ。

 

「田岡監督が監督として、そして教育者として何を重要視するかによって変わるかと。具体的に言えば、試合に出る選手が今後の日本サッカー界にとって重要な人物となるために個々の底上げを考えるのか、或いは全国優勝の為に負けない戦術を取るのか、というどちらかによって変わります」

「そうだな……私は指導者に与えられたシステムの中でしか生きられない様な選手に、彼らを成長させたくは無いと考えているが、それでも優先されるべきなのは優勝の二文字を学校に持ち帰る事だろう」

「総体もそうでしたが、選手権も一回負けたら終わりのトーナメント方式です。負けない、という事を考えるならば今までの葉蔭通りに、カテナチオを戦術として選択することは正しいと思います。しかし、それはあくまで負けない、ということであって勝つ、という事とは違うと個人的には考えています」

「……点を取らなければ勝てないということか」

 

 苦い顔でキャプテンが呟く。

 幾ら彼が献身的に守備と攻撃の両方の為に走り回ったところで、それは結局ワンマンチームであることに変わりは無い。鎌学は単純な対抗策として、鷹匠暁という飛鳥享が無視できないFWを前線に残すことで、皇帝の攻撃参加を封じるという作戦を取ったのだから、彼が感じた悔しさも人一倍だろう。点を取られない守備は完璧だったのに、逆にカウンターを用いても点を取れずにチャンスを潰されてしまったのだから。

 故に、提案するべき形に監督が持っているボード上のマグネットを動かしていく。

 

「従って、個人的に最もこのチームに合っているシステムは、4-4-2です」

「随分とまた典型的なシステムを提案してきたな……理由は?」

「葉蔭というチームはその特性上、相手方は絶対に攻撃に人数を割くことになります。それゆえに、カウンターで少ない人数でも点が取れるというのは今までの葉蔭の戦術ですが、前回の鎌学のように、相手に上手いDFがいれば攻撃がシャットアウトされる」

 

 例え相手方のチームのFWが3人いようとも、結果的に3人ほどしかエリア内に侵入しない葉蔭の攻撃など、同じ人数がいれば止められるというのが対抗戦術としての考え方になる。しかも、伝統校なのだからそう簡単に攻撃方法も守備方法も崩したりはしない。後は伝統校の意地というものでそれを打開できるかにかかっている。

 だが、それが出来なかったのが前回の鎌学との試合内容だ。

 

「葉蔭の守備力は何も、飛鳥さん一人で賄われている訳ではない。飛鳥さんのDF力は目を見張るものがありますが、むしろ称賛するべきなのはその指揮力の高さだ。ラインの上げ下げの判断と、誰がどのマークにつくのかを指示することによって、飛鳥さんが相手チームのキーマンをマーク出来るところに強みがある」

「確かにそうだな。鎌学戦でも、鷹匠のマークはほとんど飛鳥が行っていた」

「そこで、DFを四枚にすることで飛鳥さんを更に自由にさせるのがこのシステムの狙いです。そうすれば、危ない所にカバーに入れる事が出来るし、シュートを撃たれてもキーパーが真守というだけで、コースさえ塞げば止められないシュートは無い。相手のストライカーがDFをかわしてからシュートを撃とうとしても、かわすという時間で飛鳥さんが追い付ける筈です」

「なるほど、キーマンをギリギリまでマークしてからカバーに向かうのではなく、最初から飛鳥がDFを指揮することで、逆にフリーになった飛鳥を信頼して味方DFはいつもより強気に足を出せるようにもなるな……飛鳥はどう思う?」

「チームの守備力としては今まで以上になると思います。だからこそ心配なのが攻撃力の点ですが……十文字、その点も考えているんだろう?」

 

 その質問を待っていたとばかりに、4枚だったDFのマグネットから真ん中の1枚をずずっと前にずらして、トップ下の後ろに配置する。

 ハーフラインを境目に攻撃と守備に分けるのであれば、DFが一人敵陣に入った事で、攻撃人数は6人、そして守備人数はGKを除いて5人。他のチームであればこんな提案は出来なかったかもしれないが、葉蔭の試合内容を見ている限り、飛鳥享という男のポテンシャルならばこのくらいは可能だ。

 そして俺が彼に何を期待しているのか、という事が分かったかのように、彼は合点のいった納得の表情を浮かべる。

 

「そうか! 守備に力を注いだというよりも、むしろDFを増やした事で攻撃的なスタイルになっているのか!」

「その通りです。飛鳥さんの運動量は今までと変わらない代わりに、守備陣の人数を増やした事で容易にオーバーラップがかけられるようになる。つまり、飛鳥さんがこのシステムで演じるべき役割は、リベロだけでなく、本来はボランチが務める筈のレジスタも担うことになる」

「ふむ……飛鳥がオーバーラップしたと仮定して彼をトップ下とボランチの間に止めた理由は? 飛鳥の身長ならむしろポストプレーが出来ると思うが」

「そこがこのシステムの味噌です。飛鳥さんは敵ゴール前まで上がらずに、トップ下の位置で止まる事で、トップ下がFWに転じてエリア内に入る事が出来ます。これでFWが3人、更にサイドMFを春樹だと仮定して彼のクロスを考えるならば、敵陣エリア内にFWが全ていることになります。ショートクロスも選択できるし、トップ下の位置にいる飛鳥さんに下げる事で、ミドルシュートも狙える。そして万が一に敵にカウンターを貰ったとしても、バイタルエリアからのミドルを狙っている位置取りの飛鳥さんならば、味方DFが攻撃を遅らせている間に戻る事が出来る」

 

 さらに言えば、近代的に考えられている、GKもペナルティエリアから飛び出てDFをしてスペースを埋めるという戦術をかけ合わせて考えるならば、真守というGKがいるのだから彼を前に出して、敢えてシュートを撃たせることでそれをカウンターとして転じさせるという、今までの戦術にも合っている筈だ。

 さて、どうだろうかと監督の表情を覗ってみれば、彼も納得がいったようで満足げに頷いている。

 

「うむ、悪くないな。今までの葉蔭の利点を全て踏まえている上で、更に攻撃的なサッカーとなっている。戦術的にも優れていると判断できるから私は賛成だ」

「俺も賛成です。今まで以上に守備もしやすくなるばかりか、今までの練習をそのまま活かして攻撃的なサッカーをすることが出来る。まるで矛盾という概念を取り去るかのようなシステムだ」

「ただ、非常に重要な欠点を抱えている事も事実です。飛鳥さんの驚異的な運動能力が必要とされる他、トップ下がタイミングを誤らずにFWに転じて中盤に空白を作らないようにする事、そして何よりキーマンはボランチです」

 

 ボランチの位置にあった守備的MFのマグネットを掴んで、縦横無尽に盤上で動かしていく。

 

「飛鳥と同じくらいの運動量が必要になる、ということか」

「どうしても守備の際に中盤が手薄になります。俺がこのシステムでの敵チーム司令塔ならば、サイドチェンジを何回も使ってボランチを左右に走らせる事で疲れさせて、最後は中央からドリブル突破でシュートを決めますね。逆に言えば、それだけ走らされても疲れ知らずのボランチがいれば、まずこの先選手権で当たるチームに敵はいないとも断言出来ます」

「今までの守備的MFでスタメンを務めていた大月と仙道に任せるには少し不安があるな……二人でこなしていたボランチの仕事を、一人でやる上に仕事がもっと増えている訳か」

「ま、裏技としてここに交代要員を使うという方法も考えられますが……それはこのシステムがチームの意識としてすり合わせられるかという所にかかっていると思います。何はともあれ、一回は試してみるべきだと思いますよ」

「そうだな。選手権予選まではまだ時間がある。スタメンではなかった者も含めて、全ての者を貪欲に走らせて見ることにしよう」

 

 お前らも練習に戻ってくれ、と言われてアップに入る。

 足を動かして血液の流れを加速させて、身体を温めていく。

 正直な事を言えば、ボランチに入れる人はこのチームの中で決定している。このシステム上で守備的MFに必要とされているのは、リベロに追随する運動量だけではなく、相手からのカウンターの際にどこのスペースを埋めて、誰に当たりに行くのかという戦術眼を備えている選手である必要があるのだ。そして欲を言えば、そのボランチが優秀であればあるほどに、その段階で敵の攻撃をシャットアウトする必要も出てくるので、そのまま彼がパスを繋げられるような選手であるのが望ましい。

 つまり、守備的な事が出来てスタミナが豊富で、尚且つパスをしっかりと送れるという選手を考えた時に、このチームでは10番を付けていた真屋さんしかいない。言っては悪いが、今までの試合を見る限り彼にトップ下を任せる事は不安でしかない。

 鎌学戦でも、一度もミドルシュートを撃っていないという事は、相手チームも気付いていた筈だ。だから10番という番号を付けていてもそんなに驚異的な選手には感じなかっただろうし、彼はパスばかり出していて、決定的なチャンスに繋げる事が出来ていなかった。

 

 俺がチームに参加するという現状を考えるならば、トップ下を争うことになるのだろうが、今までの試合で中途半端なパスしか出来ていない様な選手とは、到底争うというレベルにあるとは思えないのが、彼には申し訳ないが正直な感想だ。

 そして逆に言えば、彼が俺という対抗馬を得た事で、スタミナだけでも劣らないようにと努力するのであれば、目指しているシステムはきちんと機能するべく、彼がボランチに収まることになるだろう。

 傑のように考えるならば、やはりこのチームにもストライカーが足りていないのだろう。彼と同じようにピッチでは王様となるべき俺にも、やはり相棒となるべき騎士がいてこそ、面白いプレーが出来るというものだ。恩師の教え通りに日本の高校でプレーすることを決めたとは言え、不満があることには変わりない。何しろ、ここ数日の練習で俺の予想をはるかに超えてくるような選手が見つかっていないのだから。

 

 日本でプレーする、というワールドカップを取る為の第一歩を踏みだしたとはいえ、自身の夢である最高のプレーという一瞬を求める道のりは、同じくまだまだ第一歩なのかもしれない。

 




最近目立つ感想
①日常いらない。サッカーさせろ
②主人公がよう分からん
③エリアの騎士関係なくね?


という事で、非常に申し訳ない気持ちで沢山(´・ω・`)
確かにエリアの騎士関係なくなってきてる・・・てか、主人公が違う学校の時点で絡ませようとしても絡むのが選手権の一戦だけになってしまうという・・・。
気付いた時にはもう遅い、という奴か・・・。
やっぱりもっと個性的なキャラを中学時代から絡ませて、傑生存ルートにして逢沢兄弟と一緒に鎌学に放り込むという当初の案の方が良かったか・・・。

というか、既に進んでいる頭の中の構想で、葉蔭が選手権に勝つことで江ノ島が脚光を浴びなくなり、原作のように駆が五輪代表に召集されないという展開が既に見えてしまっている時点でダメな気がする^^;

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