DUAL BULLET   作:すももも

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おかげさまで40話投稿゚+。(*′∇`)。+゚

当初は毎週投稿とかやってたのに、途中で休んだり、気まぐれでたまに更新したりと、読者様にはご迷惑をお掛けしてますm(__)m


変わらず、まったり投稿を続けていこうと思いますので、よろしくお願いします!(´∀`)

とは言っても、40話でまだ原作1年前という展開の遅さ(ノд<。)゜。

これからも頑張りますので、よろしくお願いしますm(__)m


40.映画館

★★★★★★★★★★★★★★★

 

 

 

 

 2人の男は、疲れ果ててその場に座り込みながら、驚愕した顔で互いを見合っていた。

 

 

「こ、これ程とは――。」

 

「これ、滅茶苦茶すごい!」

 

 

 2人の男は、自信に満ち溢れ満足した表情で、息を切らせながら言葉を交わす。

 すると、短く刈り上げた金髪の男が言った。

 

 

「これも全部シドリアの能力のおかげだよ。言われなきゃ、俺の念弾の仕組みなんて分かんなかったし――。」

 

「本来、そんなことはあり得ないんだがな、ガルナ。

 何はともあれ、これは切り札として使える。」

 

 

 興奮したガルナの言葉に、笑みを浮かべたシドリアが応じた。

 

 シドリアの怪我が治ってから毎日の日課となっていた、2人の早朝修行と念能力検証作業の最後の朝――今日から286期ハンター試験が始まる。

 

 

 短い期間ではあったが、ハンター試験前にガルナの能力の全容を解明し、新技を開発できたのは大きな収穫と言えた。

 

 

 2人が互いに支え合い、立ち上がると、ガルナが叫んだ。

 

 

3番目の弾丸(サードブリット)!」

 

 

 

 

△△△△△△△△△△△△△△△

 

 

 

 

 ミランダがここ数日聞き慣れた音――ガルナの瞬間移動の着地音が部屋に響いた。

 

 

「ん、お帰りー。」

 

 

 まどろみから抜けきっていないミランダが、ベッドの中からそう言うと、シドリアが厳しい口調でミランダに問い掛ける。

 

 

「まだ、寝てるのか?

 しっかりしろ! 今日からハンター試験なんだぞ?」

 

 

 シドリアの言葉に、ミランダはフラフラと起き上がり、寝惚けたまま着替えを始めた。

 

 それを見たシドリアは、慌ててガルナを連れて、逃げるように部屋から出た――。

 

 

 

 

「――まったく、少しは気を遣ったらどうなんだ?」

 

 

 朝食を3人で食べ始めると、シドリアが控えめな口調で静かに不満を漏らした。

 

 

「ごめん、ごめん。寝惚けてたから、普通に着替えちゃった。

 ま、2人とも悪い人達じゃないし、見せるだけなら別にね?」

 

 

 ミランダのあっけらかんとした言葉を聞き、シドリアはそれ以上言うのを諦めた。

 

 すると、見計らったようにガルナが質問をした。

 

 

「ところで、試験ってどこに何時とか書いてあったっけ?」

 

 

 その言葉を聞き、思わず顔を見合わせるシドリアとミランダ――。

 

 シドリアは、ガルナの言葉を無視をしたが、ミランダはゆっくりと説明を始める。

 

 

「えっとね、試験会場はここゼブラ市なんだけど、正確な場所も時間も分からないのよ。」

 

 

 ミランダの説明に、ガルナが頷いていた。

 ガルナの反応を見て、ミランダがさらに説明を続ける。

 

 

「それでね、とりあえずは――。」

 

「そろそろ行くぞ、ミランダ。」

 

 

 シドリアがそう言って、ミランダの説明を遮ると、上着を羽織ながらスタスタと歩き出した。

 

 ミランダが慌ててシドリアを追い掛ける。

 

 

「ちょっとシドリア、酷いじゃない。まだ話の途中なのに――。」

 

「酷いのはどっちだ。

 ここ連日その話をしていたのに、今まで我関せずで爆睡していたその男はどうなんだ?」

 

 

 いつものように、シドリアとミランダが揉めているように考えていたガルナも、シドリアの言葉の意味に、ハッと気付いた。

 

 

「え? 今シドリア何て言った?

 まさか、俺を置いていくの?」

 

 

 ガルナがそう言うと、シドリアはうんざりした顔で答える。

 

 

「気付くのが遅い!

 少しはもっと周りのことに注意しろ。」

 

 

 シドリアがそう言って、3人はホテルを出発した――。

 

 数分後、3人は駅前のバスロータリーに着き、市内の案内図を見ていた。

 

 

「これがゼブラ市の地図ね。面積4万キロ平方メートル、人口約3000万人の中規模の都市で、この時期は4000人以上の観光客が訪れるそうよ。」

 

 

 案内図を見ながら、ミランダがガルナに説明をした。

 

 

「結構でかいんだね。どうやって試験会場探すの?」

 

 

 ミランダの説明を聞いたガルナは、ほとんど何も考えずにそう聞いた。

 

 しかし、それこそ連日ミランダとシドリアが調べながら相談していたことであり、試験日当日になって考え始めるガルナは、この時点で不合格となってもおかしくはなかった。

 

 今まで不機嫌だったシドリアも、半ば呆れて説明を始める。

 

 

「まずはナビゲーターを探す必要がある。

 ナビゲーターとは、試験会場の案内係だ。ハンター試験に合わせて居住地を変えるなら、去年の今頃は違う場所に住んでいるはず。

 もちろん、この市内にナビゲーターがいると仮定した場合の話だがな・・・。」

 

 

 この点に関しては、最後まで結論は出なかった。

 もしかしたら、ナビゲーターが全世界に散らばっていて、必要な時に依頼を受けて仕事をする可能性もあったからだ。

 

 しかし、現状ナビゲーターを探す手掛かりはそれしかなさそうだったので、シドリアは情報屋を使って、ゼブラ市もしくはその周囲5KM圏内で、ここ1年以内に入居した人間を洗い出していた。

 

 

「――シドリアは自分の仕事の合間、ずっとそれを調べていたみたいなの。

 それこそ、私と会うずっと前からね。」

 

「ナビゲーターが市外にもいる可能性はあるが、市内に1人もいない可能性は低いと思うんだ。

 こっちに来てからさらに調査は進み、今絞れているナビゲーター候補は12名だ。」

 

 

 2人の説明を聞いたガルナは驚き、何も言えずにいた。

 ここ数日、シドリアが早朝の修行以外にも何か忙しそうにしていた理由が分かったからだった。

 

 

「その、12名って何を見て判断したの?」

 

「決まっているだろう。まずは立ち振舞い、歩法のレベルだ。影を使っての広範囲の捜索だから限界はあるが、相当数が絞れた。

 観察が充分できなかった人間については、普段の仕事や外出の頻度等から総合して判断したわけだ。」

 

「――その中の3人が、ここ1週間全く出掛けず、部屋からも出ないそうよ?」

 

 

 ミランダが面白そうにそう言うと、ガルナが言った。

 

 

「それじゃ、その3人全員がナビゲーターで間違いないんじゃないの?」

 

「いや、どちらかと言えば、その3人がナビゲーターの可能性は低い。

 試験会場を知らなければならないナビゲーターは、ハンター協会と直接連絡をとるはずだ。

 盗聴の可能性がある連絡手段ではなく、直接面会が基本――故に、その3人がナビゲーターである可能性は限りなく低いだろう。」

 

 

 シドリアの推理に、ガルナはなるほどと呟きながらも疑問が生まれた。

 

 

「だとしたら、その3人は何してる人なんだろう?」

 

「ニートか漫画家とかじゃないの?」

 

 

 ガルナの疑問に、ミランダが笑いながらそう答えた。

 

 

「――ひとまず、手分けしてナビゲーターを探すぞ。」

 

 

 シドリアがそう言って、ナビゲーター候補のリストを手渡すと、3人は別れてナビゲーター探しを開始した。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「――ハンター試験会場直通バスはこちらでーす!」

 

 

 ニコニコと恰幅のいい男が、大きな声で案内をする声が辺りに響いた。

 

 その辺りにいた、いかつい男達が、無言でバスに乗車していく・・・。

 

 

「――5分後に出発します! 受験者の方はお急ぎ下さい。」

 

 

 案内の男の急かすようなその言葉を聞き、俺は焦ってバスに向かって駆け始めた――。

 

 

「ガルナ! どこ行くのよ?」

 

 

 背後から聞こえた声にビクッとして、立ち止まる。

 

 ゆっくりと背後を振り返ると、鬼の形相をしたミランダと、溜め息をつくシドリアがいた。

 

 

「手分けして探すってあれだけ言ったのに、何でそんなトラップに引っ掛かるわけ!?」

 

 

 ミランダが、狂ったように叫び声をあげていると、案内の男が優しい口調で語りかけた。

 

 

「おや、受験者の方ですか? 間もなく出発しますよ、お急ぎください。」

 

 

「――おい、さっさと出せ。そんな奴らを待つ必要なんかない。」

 

 

 バスの中から屈強な男達が文句を言うのが聞こえる・・・。

 

 俺では判断しきれず、思わずシドリアの方を見た。

 

 

「――分かった。ガルナはそっちに賭ける(・・・)んだな?」

 

 

 シドリアの言葉に、俺は自信なさげに頷く。

 最早俺には、何が本当で何が嘘か分からなくなっていた・・・。

 

 

 すると、シドリアが俺に耳打ちをした。

 それを聞いた俺は思わずシドリアの顔をまじまじと見て頷くと、誰にも見えないように、シドリアと握手をした。

 

 

 

 

「――あ、ごめん! そのバス、乗るよ!」

 

 

 そう叫びながら駆け寄り、扉が閉まる直前に俺は滑りこむようにバスに飛び乗る。

 すると、中にいた屈強な男達にジロリと睨まれた。

 パッと見ただけで、俺なら余裕でこいつら全員まとめて倒せることが分かる。

 そんな無駄なことはしないけど・・・。

 

 

「ふん、ガキがハンター試験なんて怪我するぜ?」

 

 

 隣の席の男がそう言った。

 

 

 心底イラッとしたけれど、ここで騒ぎを起こすと面倒なので、俺は男の言葉を華麗にスルーする。

 

 間もなくバスは走り出し、俺は自然と眠り始めた――。

 

 

 

 

▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲

 

 

 

 

「もう、ガルナったら、なんであんなのに乗っちゃうかなー?

 試験会場探すのも試験の一環なのに、直通バスなんかあるわけないじゃない!」

 

 

 ミランダが不満を撒き散らせながらプリプリと文句を言っていた。

 

 シドリアは僅かに笑いながら、口を開く。

 

 

「あいつは昔から、騙されやすいんだ。他人の嘘が見抜けないんだろう。」

 

「それは、シドリアも大変ね・・・。

 ていうか! 私とガルナだけだったら、ハンター試験なんて絶望的だったんじゃ?」

 

 

「フ、それは同感だ。

 むしろ、戦闘能力以外のハンターとしての素養は、間違いなくガルナよりもミランダの方が高いと思う。」

「そうなの? あんまり自信ないけど・・・。」

 

 

 

 

 2人が話をしながら辿り着いたのは、小さな医院だった。

 

 

 

 

「ミランダが先刻言っていたのは、ここだな?」

 

「うん、ほら見て。『本日休診日』の看板に蜘蛛の巣が張ってるでしょ?

 怪しい気がするのよね・・・。」

 

 

 ミランダの言葉を肯定するように、シドリアが力強く頷く。

 

 

「数ヶ月前にゼブラ市に設立されたばかりにも関わらず、営業した形跡がない医院――確かに怪しい。よく気が付いたな。」

 

 

 ミランダの観察力を誉める言葉を放つと、シドリアは不敵な笑いを浮かべながら、ゆっくりと扉を開けた。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「――おい、これはどういうことだ!?」

 

 

 

 無数の叫び声が辺りに響き渡り、俺は叩き起こされるように目を覚ました。

 

 

「もう一度言いましょうか。このバスはここが終点です。」

 

 

 案内をしていた優しそうなおじさんが、キッパリとそう断言した。

 

 

「おい、お前の目は節穴か? この辺りには何もねえじゃねえか!?」

 

 

 バスに乗った男達が口々に文句を言っていた。

 

 

「このバスは『ハンター試験会場直通バス』です。間違いなくハンター試験会場を通り過ぎましたよ(・・・・・・・・)?」

 

 

 案内の人がそう言うと、一瞬の沈黙後、すぐに男達が先程よりも大声で騒ぎ始めた。

 

 俺は自分がバカだと自覚しているけれど、こいつらは文句ばかり言って、何も考えていない。

 

 さすがの俺にも分かる――騙されたのだと。

 だとすれば、次にどうするか考えるべき――。

 

 

「もう、いい! 俺は元の道を戻るぜ!」

 

 

 そう言って、何人かがバスを降りていった。

 確かにこれが日常生活ならば、それでもいいかもしれない。

 

 

「――いや、せめて最初の駅に戻れよ! 徒歩じゃ試験に間に合わないかもしれないだろう!?」

 

 

 別な男がそう言った。

 

 そう、それが正しい考え方。

 今降りていった連中は何も考えちゃいない。 

 試験時間に間に合わなかったら、騙した方が悪いという発想なのかもしれない。

 

 

 

 

「――残念ですが、ガス欠です。このバスはこの場所で一晩停車し、明日ここに来る別な車から給油するように指示されてますので・・・。」

 

 

 案内の人がそう言うと、途端にバスの中の全員が諦めたような顔をした。

 携帯は何故か圏外、既に日は落ちて周囲には何も手掛かりがない。

 

 このバスに乗る選択肢そのものが間違いだったのだ。

 今思えば、バスがすぐ出ると言って急かしたのも、罠だったのかもしれない――。

 

 俺はかなりへこみながらも、心からシドリアに感謝して呟く。

 

 

4番目の弾丸(フォースブリット)――。」

 

 

 

 あの時、シドリアは俺にこう耳打ちした。

 

 

「二色の弾丸を私が持っていれば、どちらが間違っていても修正できるだろう――。」

 

 

 

 

――結果的に、やっぱり俺が選んだルートが間違っていたってことか・・・。

 

 

 心の中でそう呟いている内に、能力が発動した――。

 

 

 

 

 景色が変わり、埃っぽいタイルが見える。

 

 

「――あ、ガルナ帰ってきた。」

 

 

 目の前にいたミランダが俺を見てそう呟いた。

 

 俺はすぐにシドリアを探すと、俺の方に見向きもせず、椅子に座ってゆっくりコーヒーを飲んでいた。

 

 

「ん、ここどこ?」

 

 

 予想外にまったりした光景を見て、俺は当たり前の疑問を呟く。

 

 

「おや、あなたがお連れ様ですか・・・。

 ほほう、瞬間移動の念能力とは・・・。長くナビゲーターをやっていると良いものを見れるものですな。」

 

 

 シドリアの向かいに座っている白髭のお爺さんが俺に語りかけた。

 

 やっぱりシドリア達は、ナビゲーターを見つけたってことか・・・。

 

 

「でもさっきは、びっくりしたわ。いきなり襲い掛かってきたと思ったら、突然倒れちゃうんだもの――。」

 

 

 ミランダがそう言うと、白髭のお爺さんがニコニコとしながら言った。

 

 

「シドリアさんとミランダさんの対処は的確で、素晴らしいものでした。

 死角からいきなり襲い掛かったにも関わらず、ミランダさんは素晴らしい動きでそれを回避し、シドリアさんは一目で倒れた私の身体に異常がなく、なおかつ医者であることまで見抜いた。」

 

 

 白髭のお爺さんは満足そうに笑いながら、そう言った。

 

 

「両者共に、ハンターに相応しいと私は思います。」

 

 

 それを聞いた俺は慌てて尋ねた。

 

 

「え、俺は駄目なの?」

 

「おっと、失礼。ガルナさんは念能力を使用し、バスのトラップに掛かったにも関わらず、ここに辿り着けた。

 間違いの可能性を考え、事前に対処していたことは評価に値しますよ。」

 

 

 白髭のお爺さんは、そう言って、ニコニコと笑いながら続けて俺達に質問した。

 

 

「明日の朝11時32分までに試験会場に入れば、試験が始まります。

 早めに行っても良いですし、ギリギリでも問題ありませんが、如何にいたしましょうか?」

 

 

 俺達は顔を見合わせて、同時に言った。

 

 

「今すぐ行く!」

 

 

 

 

△△△△△△△△△△△△△△△

 

 

 

 

 ミランダは、ゼブラ市の中心から外れた、小さな映画館の前に立っていた。

 

 どことなく緊張した面持ちのミランダが、チケット売り場に並ぶ。

 順番が来ると、ミランダが言った。

 

 

「『真実の道』3枚下さい」

 

 ミランダの注文を聞き、一瞬だけ僅かに眉がピクリと反応した後、チケット売り場の受付の女性は笑顔で対応した。

 

 

「朝9時上映の『真実の道』ですね。指定席ですが、席はどちらにしますか?」

 

「あ、『最後列の真ん中』で――。」

 

 

 間髪入れずにミランダがそう答えると、売り子はテキパキとチケットを発券しながら言った。

 

 

「――はい、かしこまりました。ではNの11、12、13でお取りしますね。

 上映は11番シアターです。」

 

 

 ミランダはおずおずとチケットを受け取ると、映画館から数ブロック離れた場所に向かった。

 

 

 

 

「――どうだった?」

 

「多分、大丈夫。ちょっと緊張したけど・・・。」

 

 

 その場所でミランダを待っていたガルナの問い掛けにそう答えると、ミランダは購入したチケットを2人の男に配った――。

 

 

 

 

 映画を観に来ている一般客も普通に出入りしているが、ナビゲーターの情報によれば、この映画館がハンター試験会場の入口らしい。

 

 

 映画の一覧にも乗っていない『真実の道』というタイトルと、指定席が『最後列の真ん中』と言えば、試験会場に案内されると、ナビゲーターに教えてもらった。

 

 ミランダがチケットを買いに行く間、売り場から離れた場所でシドリアとガルナが周囲に溶け込み自然体のまま周囲を監視していたのだ。

 

 

 

 

「――影を500m四方に展開していたが、何人か素人じゃない連中が周辺で様子を伺っているようだ。」

 

「あいつら、なんで試験会場に入らないんだろ?」

 

 

 シドリアの説明に、ガルナが疑問を呟くと、ミランダが言った。

 

 

「それなんだけど、チケット買った時、朝9時上映って言われたのよね。

 普通の映画だったら上映の30分前くらいからじゃないと入れないんじゃないかって思ったんだけど――。」

 

「なるほど、おそらく周辺の連中も既にチケットを買っていて、同じように考えたのかもしれないな。」

 

「今は21時――上映までちょうど12時間か・・・。」

 

 

 3人はそう言って、考え込んだ。

 

 ここに来て、最後の罠の可能性が出てきたのだ。

 

 上映の前日に映画館に入っていいかどうか――。

 

 

「今思えば、会場に入る期限が、やけに中途半端だったのって、映画上映中に入れってことなのかな?」

 

 

 ガルナがそう言うと、ミランダが言った。

 

 

「でも、ナビゲーターのお爺さんは、『早めに入っても問題ない』って言ってたし――。」

 

「いや、『早め』が意味するところが、もしかしたらさっきミランダが言った、上映の30分前なのかもしれない。

 どちらにせよ、期限は正確な時刻を言った割に、妙に曖昧な表現だったな・・・。」

 

 

 シドリアがそう言って考え込んでいると、ガルナが唖然とした表情でミランダの方を見た。

 

 

「え、何で? アイツが――?」

 

 

 ミランダは怪訝な顔をした後、自分に言っているわけではないことに気付き、ガルナの視線を追い掛けて背後を振り返る――。

 

 

「ん、あの人が何?」

 

 

 歩法の基礎を学んだ程度の初心者ミランダですら、一目で気付く、隙の無い歩き方――。

 個性的な服装をしているが、その男は間違いなく達人だとミランダは感じた。

 

 だが、それよりも、ミランダは何か既視感のようなものがあった・・・。

 

 

「あれ、誰だっけ?」

 

 

 ほとんど誰にも聞こえないようなミランダの小さな呟き――。

 

 だが、その男は敏感に視線を察知し、ミランダと視線を交わした。

 目が合っても、派手なフェイスペイントのせいで、ミランダには男の表情を読むことができない。

 

 

 その瞬間、ミランダの両腕は力強く掴まれ、同時に焦った声色の叫び声が辺りに響いた。

 

 

1番目の弾丸(ファーストブリット)!」

 

 

 

――そこは、映画館に向かう直前に食事の為に立ち寄ったカフェ――。

 

 念の存在を知ってから、ミランダは何度もガルナが瞬間移動する姿を見ていたが、自分が移動するのは初めてだった。

 

 

「え、ええ?」

 

 

 混乱したまま自身の状況を確認するのに、数秒の時間を要した。

 シドリアが左腕を、ガルナが右腕を掴んだまま瞬間移動したということをようやくミランダは理解して、言葉を発しようとする――。

 

 

 

「ちょ、なんで!? アイツがいるなんて聞いてないんだけど!?」

 

「それはこちらも同じだ。

 大体奴は、3週間前に相当な致命傷を負ったんだぞ? 本当に化け物じみてる!」

 

 

 ミランダの言葉を発する前に、目の前の2人の男は明らかに混乱し困惑したまま、思い思いに会話を続けた。

 

 

 ミランダはしばらく様子を見ていたが、すぐに辛抱できなくなり、大声で聞いた。

 

 

「ていうか誰なのよ、あの人?」

 

 

 2人は一瞬会話を止めると、ガルナがミランダの方を向き、叫んだ。

 

 

「ヒソカだよ!」

 

 

「・・・誰それ?」

 

 

 ミランダは首を傾げながらそう聞いた。

 すると、シドリアがゆっくりとした口調で答える。

 

 

「戦闘狂の殺人奇術師だ。

 私達の師匠も、奴に殺された・・・。」

 

 

 シドリアがそう言うと、ミランダは言葉を失ったまま、悲痛な面持ちでシドリアとガルナを見る。

 

 

「ヒソカがいたのって――やっぱり、偶然じゃないよね・・・?」

 

 

 しばらくの沈黙の後、ガルナが呟くように、そう言うと、シドリアが顔を曇らせたまま頷き、答えた。

 

 

「ああ、間違いなく、奴もハンター試験の受験者だろう。」

 

 

 最後にシドリアが吐き出すようにそう言うと、3人は沈黙した・・・。




【あとがき】

映画館によって入場可能時間違うし、海外の映画館なんて行ったこともないので分かりません!(適当ですみません)

ちょっと明日から忙しくなりそうなので、感想返しは遅くなりますー(>_<)


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