DUAL BULLET   作:すももも

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03.戦利品

★★★★★★★★★★★★★★★

 

 

 

 

 男は、暗い路地を気配を殺して歩いていた・・・。

 

 

 シュンベイ市内にある、大きな博物館の前に、男はいた。

 

 辺りを警戒し、人がいないのを確認してから男は、自分の身長の3倍ほどある塀を軽く飛びこえる。

 

 

 男はそのまま敷地内を歩き、博物館の係員用のドアの前に立つ。

 

 瞬時にオーラを手に集め、見よう見まねの手刀をドアに放った。

 

 ドアを貫き、男の手は錠前の位置を手探りで探した。

 

 

 

―――カチリ

 

 

 小さな音とともに鍵は開き、男はドアを静かに開けて、その身体を素早く、室内に入れる。

 

 

 男は、気配を殺したまま歩いていた・・・。

 

 

 日中に客として下見はした。

 

 故に、男は大して迷うことなく、そこに着いた。

 

 

 

 

 広いフロアには、大きなガラスケースにいくつかの展示物がある・・・。

 

 

 男はオーラを鋭利にした手刀を慎重にガラスに刺し入れて、四角い穴をつくった。

 

 すぐに気配を消して、目的の物に手を伸ばす・・・。

 

 

 

―――ジリリリリリッ

 

 

 

 けたたましい音が突然なり響いた・・・。

 

 

「あれえ?この付近の電線全部切ってたのに・・・。」

 

 

 男は、素人のような疑問を口にした。

 

 

 

―――ダッダダダダ!!

 

 

 男は、複数の足音が近づくのを聞いて、心の中で舌打ちし、毒づいた。

 

 

(遅い、遅すぎるよ・・・。)

 

 

「ファースト・ブリット。」

 

 

 男の声が闇に木霊した。

 

 

―――警備員達が駆けつけたときには、割れたガラスケース以外には何もなかった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう」

 

 

 男は黒い覆面を外すと、ポイッとベッドに投げる・・・。

 

 男の短く刈り上げられた金髪が玉の汗を弾いた。

 

 

(そう簡単には会えないか・・・。)

 

 

 その男、ガルナは服を脱ぎながら、考えた。

 

 

 

 

 

 あの情報屋の件から3ヶ月、ガルナは自らの肉体を鍛え直し、念も磨きながら、あの女を探していた・・・。

 

 ガルナは自身の弱さを自覚し、見つめ直すことにしたのだった。

 

 また、前回の危機から、情報屋に限らず、人に関わることが危険であることを、ガルナは学んだ。

 

 

 

 少ない情報から自力で女と会う方法、それは女が来そうなところで待ち伏せることだと、ガルナは考えたのだ。

 

 ガルナの女に関しての知識はほとんど何もない・・・。

 

 あの女が、「泥棒」であること。

 

 そして情報屋で名乗った「マチ」という名前以外は・・・。

 

 

「マチさん・・・いや、マチ・・・と会いたいな・・・。」

 

 

 ガルナはベッドに倒れこむと同時に呟くと、落ちるように眠りに入った・・・。

 

 

 寝ているガルナの部屋には、100を超える数の美術品が乱雑におかれていた・・・。

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

「へえ、マチが取り逃がすとはねえ・・・。」

 

 

 爽やかな青年、シャルナークが言った。

 

 

「うるさいな・・・。もう、アイツの能力も分かったし、次見つけたら、絶対捕まえるよ!」

 

 

 マチ、と呼ばれた女が吠えるように言い返した。

 

 

「・・・しかし、瞬間移動の能力者か。」

 

 

 黒い髪をオールバックにした男がボソリと、呟く。

 

 それを聞いたマチは慌てて言った。

 

 

「駄目!絶対、駄目だからね!!団長、アイツはアタシの獲物だよ!」

 

 

「でもさ、もう足取りが完全に途絶えちゃったんだろ?」

 

 

 シャルナークが間に入ると、マチは痛いところを突かれたのか、歯切れ悪く答える。

 

「う・・・、でもアイツは絶対、またアタシに、会いに、くるから・・・。」

 

 

 場の空気が一瞬固まった。男2人は、顔を見合せる・・・。

 

 その空気に鋭くマチは感付いて、慌てて弁解する。

 

「言っておくけど、そんなんじゃないからね!ただ・・・なんとなく、そう思っただけなんだけど・・・。」

 

 

「勘か・・・。」

 

 

 妙な顔をしながら、団長のクロロが言った。

 マチは、頷いて答える。

 

「・・・勘だ。」

 

 

「マチの勘は当たるからね。」

 

 

 シャルナークがそう言って、場を収めた。

 

 

(・・・自分で「次は殺す」じゃなく、「次は捕まえる」って言ってるのには、気付いてないんだろうな・・・。)

 

 

 シャルナークは心の中で密かに笑った。

 

 

 

 

 

 

 ノースタリア公国の、東端を彼らは、移動していた。

 

 

 今回のターゲットはブエストタ要塞。

 

 

 

 

 かつて、ノースタリア公国で起こったクーデターにより、公族達は公国の財宝とともに、ブエストタ要塞に避難した。

 

 その後、クーデターは鎮静化し、公族達は暴徒達の対処や経済的な混乱を治めることに尽力する。

 

 本来、宝物庫に戻されるはずの財宝だが、混乱の中、財宝の移動に人員が割けず、要塞自体の警備も厳重であったため、そのまま要塞で管理されることとなったのであった。

 

 

 それから30年近い歳月が経ったが、いまだに、その慣習は続いており、公国軍人のエリート集団が財宝の護衛を任されている。

 

 

 財宝現物を見ることはもちろん、要塞内部に入ることも禁止されてるが、いまや要塞は観光名所となっていた。

 

 客達は要塞の中にあるであろう、財宝を心に浮かべて、その外観の写真を撮り、満足して帰るのだ。

 

 

 

 

 

 もちろん、外観を見るだけで満足できない連中もいる。

 少なくとも、ここに3人・・・。

 

 

「ふーん、なかなか渋い建物だね。」

 

 

 シャルナークが言うと、ゆっくりとクロロが答える。

 

 

「機能美というやつだ。・・・中々だな。この建物自体盗みたいものだが・・・。」

 

「無理だし、最初の目的から脱線してるし。」

 

 

 マチが、すかさず突っ込みを入れる。

 

 

「そうだな。では、手筈通りに。」

 

 

 盗賊団の団長であるクロロが短く、そう言うと、同時に各自は違う方向へと歩いていった・・・。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 アタシは、何本も伸ばした念糸を、慎重に手元にあるグラスに繋げていった。

 

 

 念で物体を強化する「周」を使えば、針で簡単にガラスに穴が開けられる。

 

 

(完成した・・・念糸電話!)

 

 

 アタシの糸達は、建物の外の全てのガラスの窓に取り付けて、それらは手元のグラスに繋がっている・・・。

 

 

(予想以上に時間かかっちゃったね・・・。)

 

 

 アタシは新しく編み出したこの技を試してみたくなり、2人に言った。

 

 

 若干バカにされた気がするけれど・・・ていうか、間違いなく笑われたし・・・。

 

 

 グラスに耳を当てると、小さく話声が聞こえる。

 

 どこの部屋か、特定はできないけれど、今回のアタシの役目は広域な情報収集・・・。

 

 

 限りなく、耳を澄ませて様々な話声を拾っていった・・・。

 

 2時間くらい聞いていると、やっと大事な情報らしき会話が聞こえてきた・・・。

 

 

「2階の見廻りとか、いるんだろうか・・・。」

 

「何言ってるんだ、私達は立派な要塞防衛の任務を果たしているんだぞ。」

 

「いやいや、俺達は『要塞防衛』じゃなく、『要塞の財宝の護衛』だろ?」

 

「ふむ・・・一理あるな。」

 

「そうそう、だからさ、最上階だけ見て帰れば、任務完了ってわけには行かないか?」

 

「いやーしかし・・・。」

 

 

 

 

 

(ビンゴ!!)

 

 

 アタシは思わず口許に笑みを浮かべ、携帯で電話する。

 

 

「お待たせ、シャル。獲物は最上階だよ。」

 

 

 アタシは既にグラスを道端に投げ捨てて、シャルの元へ歩いていった・・・。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「大分手慣れてきたなー。」

 

 

 俺は倒れている2人の警備兵を見て、言った。

 

 

 「プロ」はやはり、違う。

 俺がいかに「絶」を使っても、透明人間になれるわけじゃない。

 

 ここの警備兵は巡回ルートが厳密で、分単位で動いているのだろうか、複数のルートが交錯し、うまく侵入ルートを潰していた。

 

 故に、見つかってしまったのだが、俺が「絶」状態で動いたにも関わらず、2人の兵士は冷静に、機械的に銃を構えてきた・・・。

 

 

(まあ、死んだだろうな・・・。)

 

 

 以前の俺なら、念を込めて殴るくらい、しかできなかった・・・。

 

 だが、こういうレベルの人間は稀にタフなやつがいる。

 

 素直に気絶せず、無駄に騒ぎを大きくして、周りの物を壊したりしながら泥仕合みたいになることがあった。

 

 

 俺は今回、あの娘、マチの手掛かりを探しながら、修行の日々であったが、これはその修行の成果の1つ。

 

 

 「絶」から高速の「流」による「凝」と「隠」を併用した手刀。

 

 素人相手なら、少なくとも何をされたか自覚する前に即死させることのできる、無音の暗殺術(見よう見まねだけど)。

 

 

 以前の俺なら、「楽しそうじゃない」という理由で、面倒そうなそれらの技術を鍛える気もなかったが、あの娘、マチと戦ってから考え方が大きく変わった。

 

 実際、この3ヶ月で俺は、強くなった。

 

 身体の使い方も、念も、無駄を極力なくして、レベルが1個上がった感覚がある・・・。

 

 とはいっても、殴りあいは好きだけどね、楽しいし。

 

 

 だが、今「楽しさ」は、いらない。

 

 正確かつ慎重に動き、目的のものを奪取し、脱出する。

 

 

 

 急所を刺されて、微動だにしない2人の警備兵を俺は一瞥して、奥に向かった・・・。

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

―――タタタタタタン

 

 

 

「誰か、いるな・・・。」

 

 乾いた音が響き渡る中、クロロが呟いた。

 

 それに対し、他の2人も小さく頷く。

 

 

 

「随分な手練れみたいだね。最早、気配を察知できない。」

 

「完璧な『絶』だけど、素人っぽいね。でも警備兵ではない気がする。」

 

「また、勘?」

 

 

 思い思いのことを、シャルナークとマチは語った。

 語りながら、シャルナークは手に携帯を持ってカタカタッと何かを操作している。

 

 

「・・・あれ?壊れちゃった。」

 

 

 シャルナークは、大したことのないように、さらりと言った。

 

 

「マチ、ごめん。あとよろしく。」

 

 

 シャルナークに言われ、マチは無言で、兵士の前に躍り出る。

 

 既にそこは、兵士が仲間同士で撃ち合った為に、数えきれない程の死体が量産されていた。

 

 残るは、3人ほどの兵士。だが、3人の兵士は恐れを顔にも出さず、マチに向かって自動小銃を構えた。

 

 

 

―――ビュン

 

 

 

 マチは兵士達が引き金を引くよりも素早く動き、素手で兵士達を絶命させた。

 

 

「糸を使うまでもないね、こんな連中。」

 

 

 マチは造作もなく呟く。

 

「終わったようだな。先へ進もう。警戒だけは怠るなよ。」

 

 

 団長クロロの一声で、3人は目標の場所を目指して、歩いていく・・・。

 

 

 3人が歩いた後には、様々な死に方をした、公国の警備兵が倒れていた・・・。

 

 

 

 

★★★★★★★★★★★★★★★

 

 

 

 

 ガルナは「絶」を維持して、歩いていた。

 

 

(強そうなやつらがいるな。)

 

 

 ガルナは思った。

 

 ガルナの存在くらいは、向こうにも気付かれているだろう・・・。

 

 

「念能力者の警備兵?いや違うな、多分・・・。」

 

 

 ガルナは予想して呟いた。

 

 ガルナの目的の場所まであと少しである。

 

 

(念能力者との戦闘になった場合、どうしようか・・・。)

 

 

 ガルナは考えた。

 だが、答えは決まっている・・・。

 

 

「ブツだけゲットして逃げる、あるのみだな。」

 

 

 ガルナはそう声に出して、先に進んだ。

 

 

 

 ガルナは、要塞の最上階にたどり着いた。

 

 

 戦闘は最低限に留め、できるだけ見つからないように行動した。

 

 おそらく、これが最短ルート。

 

 

 手早くガルナは鍵を壊した。

 

 

―――ゴゴーン

 

 

 重く錆びた扉を開ける。

 そして、ガルナは、簡単に物色して、目的のモノをリュックサックに詰め込んで、立ち去る・・・。

 

 

 

 

 

 ガルナが立ち去った跡には金塊や宝剣、宝石類が手付かずで残っていた・・・。

 

 

 

 

 

(しかし妙だな・・・。)

 

 

 そのまま立ち去ろうとした、ガルナは思った。

 

 

(かなり強そうな、念能力者達がいたはずだけど、難なくゲットできたぞ?)

 

 

 ガルナは辺りを見回す・・・。

 

 

―――コッコッコッ

 

 

 しばらくすると、複数人の足音が聞こえてきた。

 

 ガルナは「絶」をしながら、通路の柱の影に隠れる。

 

 

 

――――!!!

 

 

 ガルナはその1人を見つけて、衝撃を受けた。

 

 

(ま、マチだ!)

 

 

 危うく、オーラがこぼれるのを堪える。

 

 

 

 

「・・・そこに誰かいるな。」

 

 

 黒髪の男が、小さいが迫力のある声で言った。

 

 

(やべ、バレた・・・。てか、今ので?感覚鋭すぎだろ・・・。)

 

 

 

 

 

 

「サード・ブリット」

 

 

 ガルナは呟き、心を落ち着け、右手にオーラを込める。

 

 もはや、「絶」は無意味、とガルナは考えた。

 

 

 ガルナの右手にだんだん現れる、オーラの塊・・・

 

 小さな6弾装填式の銀色のリボルバー拳銃が、具現化した。

 

 

 これも、3ヶ月の修行の成果だ。

 

 

 ガルナが念を覚えて3年以上経つが、その能力はいまだに完成していない。

 

 能力が複雑すぎてクリアすべきことが多すぎたからだ。

 だが、ガルナは確実にクリアしていく。

 

 

 特にこの3ヶ月、「欲しいもの」の為に努力を惜しまなかった。

 

 拳銃については、今までは具現化速度が遅すぎて、選択肢にも上がらなかった。

 だが、今は1~2分で具現化できる。

 

 

 そしてガルナは、具現化した拳銃に素早く弾を込めた。

 

 

 

 周囲の気配が緊張した。

 

 ガルナは柱の影から飛び出し、銀の拳銃を1発撃つ。

 

 

 相手は3人、全員が達人級だ。

 

 ガルナの弾丸は3人に簡単に回避され、石造りの床に当たった。

 

 

 同時に1人が飛び出してきていて、ガルナに拳を繰り出す。

 

 ガルナはそれを最小限の力で受け流し、4指にオーラを込めた、反撃の突きを返す。

 

 だが、相手はそれを難なく捌いて言う。

 

 

「『絶』は中々みたいだけど、その他はお粗末みたいだね。」

 

 

 まさにマチ本人だった。

 

 ガルナは無言で右手にある銀色の拳銃をズボンにしまい、手刀を繰り出す。

 

 

「技が甘過ぎるよ。」

 

 

 マチはそう言って、ガルナの未熟な手刀を軽く避け、マチも反撃の手刀を繰り出した。

 

 ガルナは、それを避けるが、予想外に手刀のオーラが小さいのに気付いた。

 

 

―――ゴッ

 

 

 マチの手刀の影からショートアッパーが飛んできた。

 

 だが、ガルナはそれを高速の「流」による攻防力変化で顎をガードし、すかさずジャブを数発打つ。

 

 

 マチは、若干ピクリと眉を動かして、それを捌いた。

 

 

(いまだ。)

 

 

 ガルナは既に具現化して「隠」をしていた、黒いリボルバー拳銃をマチに向けて撃った。

 

 

―――!?

 

 

 マチは瞬時に「凝」で確認し、至近で撃たれたその弾丸を、オーラを込めた右腕でガードした。

 

 

「マチ、戦闘中に『凝』をおろそかにしないことだよ。・・・ファースト・ブリット!」

 

 

「!!―――アンタッまさか――。」

 

 

 ガルナの言葉にマチが反応した瞬間、ガルナの体は消えた。

 

 

――――!!

 

 

「シャル!!後ろ!」

 

 

 

 

 

 マチが声を荒げる。

 

 

 シャルナークはガルナと一番離れた位置、前線から後方にいた。

 

 瞬時にシャルナークは身体を捻って、避ける。

 

 

―――プシュッ

 

 

 既にシャルナークの背後から、放たれていた手刀はシャルナークの脇腹を掠め、傷をつけた。

 

 ガルナの手刀、それは「凝」と「隠」を併用した隠密技術。

 まだ練習中なので、本気の「練」で高めたオーラではできない。

 

 しかし、瞬間移動後、「絶」状態から、一気に相手の命を奪うことのできる、術だ。

 

 

「あぶね・・・!!・・・もしかして、お前が『ガルナ=ポートネス』!?」

 

 

 シャルナークが、小さく驚き、聞いた。

 

 ガルナは見知らぬ相手が鋭く自分の名を当てたことに驚いて、思わず聞いた。

 

 

「?なんで知ってるの?」

 

「いや・・・ドロン市の情報屋にいるかもしれない、って調べたの俺だし。」

 

「あー、そうだったのか。」

 

 そう言って、ガルナは覆面を取って言った。

 

 

「バレてるなら、関係ないね。」

 

 

 マチが走ってきていた。 ガルナはマチの方を見て、ニコリと、続けて言った。

 

 

「もう、『宝物』は奪っちゃったからね。」

 

 

 

―――サード・ブリット発動

 

 

 3人が反応したときには、ガルナの姿は消え去っていた・・・。

 

 

 

 

 クロロだけは、口元に笑みを浮かべていた・・・。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 俺は部屋に戻り、心から、喜びを表し、ガッツポーズをとった。

 

 

 やっと、マチと会える。・・・あの、マチと。

 

―――それに。

 

 

 「発」の弱点もほとんど克服したしね。

 

 

 俺の能力には一定時間、防御力も攻撃力もないオーラ、能力の為の「発」が必要だ。

 

 今まで、俺は自分の身体から出す全てのオーラを「発」に回していた。

 

 故に、その間、オーラの防御力はゼロになる。

 

 しかし、本来、「発」の為に一定量のオーラだけ消費すれば、残りのオーラは「堅」に使えるはずなのだ。

 

 もちろん、コントロール修行には滅茶苦茶、苦労したけど・・・。

 

 

 

 

 この3ヶ月の最大の成果。

 

 「戦闘」と「瞬間移動」の両立。

 

 しかも、今回は「サード・ブリット」と「ファースト・ブリット」の「発」を同時に使用してみた。

 

 

 あのレベルの奴らに通用する、ということが分かったのも、大きな収穫だった。

 

 まあ、「発」しながらだと、どうしてもオーラ量が少なくなるけど、その辺の戦い方や総オーラ量の向上は、今後の課題かな?

 

 

 俺はリュックサックから戦利品を取り出し、部屋に並べる。

 

 

 いまや、俺の部屋には200程の美術品があった。

 

 

「最終目標達成かな。制限時間は・・・残り5時間45分くらいか・・・。時間あるし、とりあえず、シャワーでも浴びとくかな・・・。」

 

 

 俺は上機嫌で、服を脱ぎながら、思い出したように銀のリボルバー拳銃の弾丸を取り出す・・・。

 

 4発の銀の弾丸を並べ、銀のリボルバー拳銃の具現化を解いた・・・。

 

 

 

―――それにしても・・・。

 

 あの黒髪のやつは、ヤバかったな。

 

 俺は思い出しながら、恐ろしさで身体をブルッと震わせた。

 

 

 熱いシャワーが冷えた俺の身体を癒してくれた・・・。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

「アイツー!!!」

 

 

 アタシは怒りで、壁を蹴った。

 

 

「ハハハッ!アレがマチの『愛しの王子様』か。予想以上に面白いやつだよ。」

 

「シャル!アンタ、まだそんなことを・・・。マジで殺すよ?」

 

 

 

 

 シャルの冗談にアタシの怒りは高まる。

 

 

 

「しかし・・・。本当に、面白い能力だ。」

 

 

 団長が呟いた。

 

 

 いくら団長でも、駄目だ。怒りに身を任せて、殺したくなる・・・。

 

 

 

 

 

 

「あれ!?」

 

 

 シャルが変な声を上げた。

 アタシはイライラしながら見る。

 

 

―――!!

 

 

 信じられない光景だった。金塊や銀細工、さらには絵画や彫刻などの美術品、古本まで全てそのまま置いてあった・・・。

 

 

「アイツ・・・一体、何を盗んだんだ?」

 

 

 

 

 場の空気が、疑問に包まれた・・・。

 




 ガルナの戦利品とは?

次回で、判明します!多分・・・勘だけど(*´∇`)

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