DUAL BULLET   作:すももも

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28.失踪

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 1995年12月、情報ハンターチームのブリッツは、偶然聞いた奇妙なプロハンター失踪事件の調査の為、資産家ゴードン氏の屋敷を訪ねていた。

 

 

 道中、車を運転していたガルナのナビゲーションの為に広域の円を使用したミコトは、車の中で休むようにシドリアに促された。

 

 ミコトは、確かに少し消耗はしたが、ただの調査をすることができない程の疲労はしていない。

 また、車が出発してからすぐにミコトは昨晩の寝不足を解消する為、眠ることに専念していたので、眠気に関しては全くなかった――。

 

 車の中で休む必要性はなかったといえる。

 

 しかし、ミコトは理解をしていた。

 

 シドリアが極度に怖がりだということを――。

 

 

 普段からシドリアは、ミコトの身を案じ、仕事の度にミコトが依頼人に顔を合わせないように細工をしてくるのだ。

 

 あのとき仮に、ミコトが疲れていないと言ったとしても、次にシドリアはミコトに車を守るように頼んでくることが予想できた。

 もしくは、ブリッツのリーダーとしてドッシリと構えていてくれとでも――。

 

 少なくともミコトは、シドリアには口で勝てない。

 シドリアはただの理屈屋ではなく、時には優しく嬉しくなるような言葉でミコトを説得するからだ。

 例外的に、ミコトがヒステリックになってしまえば勝てるが、それをあまり頻繁にするとシドリアに嫌われてしまうということを、ミコトは理解していた。

 

 同時に、シドリアが如何にミコトを大切に想っているのかということも――。

 

 他人のどんな傷も一瞬で治癒できるミコトのようなタイプの念能力者は、かなり稀だ。

 仮に操作系や具現化系で治癒能力をつくったとしても、極めて限定的な効果しか与えられないからだ。

 

 ミコトは、自分の治癒の念能力が自身に使えないリスクを自覚しているし、他人と関わる危険性も理解している。

 また、ブリッツの後方支援要員として、いざというときの為に後方待機は戦略的に有効だということも知っている。

 里を出てからはいつも、ミコトの待機場所にガルナの3番目の銀の弾丸をセットする習慣になった。

 危険なときは、どんな重傷でもミコトの元に逃げられて、治療を行えるという寸法だ。

 

 当初ミコトは、頭で理解はしていたが、待機することに対して退屈で不満を感じた。

 治療についても、できることならその場ですぐにやりたいと、ミコトは内心考えていた。

 

 

 だが最近では、ミコトもシドリアのその乱暴な身勝手ともいえる、ミコトへの心遣いを受け入れるようになった。

 変わらぬシドリアの強い想いに、ミコトが根負けしたとでも言うべきだろうか・・・。

 

 

 だとしても、今日はいつになくミコトは退屈に感じていた。

 

 車で移動中に、しっかり寝てしまったので眠ることはできそうにない。

 

 ミコトの記憶によれば、屋敷の主人が帰ってくるのは夕方で、それまでは確実に車の中で待機していなければならない。

 

 食事については、シドリアが車内に用意してくれているので、心配はない。

 

 しかし、出発の時に急いでいたせいで、お気に入りの曲を入れた音楽プレーヤーをホテルに忘れてきてしまった。

 

 

 ミコトは目が見えない。

 

 景色を見ることも、本を読むこともできない。

 車のラジオも、山の中で雑音ばかりが聞こえる・・・。

 ミコトは酷く退屈に感じていた――。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 俺とシドリアが屋敷の呼び鈴を鳴らすと、使用人のお姉さんに例のプロハンターが消えたという応接間に案内してもらった。

 

 

 この屋敷の主人のゴードンさんは、資産に物を言わせてハンターを雇い、古今東西のありとあらゆるレアなモノを入手するという趣味があるらしい。

 

 収集物は統一されておらず、ゴードンさんの価値観として、希少価値の高いモノなら何でも集めたいのだということが伺える。

 

 コレクションといえば、例えば絵画でいえば同じ画家の絵を集めるというのがあるけれど、それならば俺にも少し理解できる。

 庶民レベルでいえば、シリーズ物の小説を全巻集めたいというような欲求だろう。

 

 だが、ゴードンさんの場合はそういうのには全く興味はないらしく、絵や壺、楽器、刀剣、古本、トレーディングカードなど明らかにシリーズ化してると思われるものですら、世に出回っていないようなレアモノならば、単体で入手する傾向があるらしい。

 

 実際、その広い応接間は収集したモノを全て飾っていたが、部屋のあちこちに陳列棚やガラスケースや本棚が点在したりしていて、俺からすると落ち着かない感じの部屋だった。

 

 

 応接間の中央にあるソファーに案内され、俺とシドリアは座った。

 

 俺はキョロキョロと辺りを見回すが、色々ありすぎてどうにも落ち着かない。

 

 例のプロハンターは名前も専門も知らないけれど、こんな統一感の無い収集物に夢中になるなんて凄いと思った。

 

 

 俺は仕事柄、美術品の有名な作家の作品とかなら分かるようになったけれど、単に希少なモノっていうだけのモノは際限なくあって、この部屋の収集物を見ても何も心惹かれるということはない。

 

 

 ハッキリ言うと、俺は退屈していた。

 

 もっと言えば、昨晩からほとんど寝てないから滅茶苦茶眠いし・・・。

 

 ていうか、シドリアは、姫にばっかり優しくしてズルい。

 俺も車の中で寝たかった・・・。

 

 

 しばらくしてから、先程の使用人のお姉さんがコーヒーを持ってきてくれた。

 シドリアは、1口だけコーヒーを啜ると、早速お姉さんに質問を始めた。

 

 

「それで、例のプロハンターとはどういった方だったんでしょうか?」

 

「ええ、ワルツさんと仰る方で、プロの宝物(トレジャー)ハンターでした。

 確か、御主人様とは5年くらいの付き合いだったと思います。」

 

 

 そんな感じで、次々にシドリアが色々な質問をし、お姉さんが丁寧に答えていく。

 俺はやることがないので、せめてコーヒーが無くならないようにできるだけチビチビと飲んで、退屈な時間が過ぎるのを待っていた。

 

 しばらく質疑応答を繰り返してから数分後、シドリアがお姉さんに聞いた。

 

 

「――ふむ、ワルツさんが失踪してから今日で3日目ですか。

 今回のようなケースは以前には無かったですか?」

 

「私は8年前から働いていますが、私が知る限り今回のようなことはありませんでした。」

 

 

「ワルツさん以外にもハンターを雇っていたんですか?」

 

「はい。何名か信頼をおける方を雇っていました。

 それぞれ微妙に専門が違う方達だったので、特に競合することは無かったと聞いております。」

 

 

「そうですか。では、最後に――。」

 

 

 シドリアはそう前置きすると、最後の質問をした。

 

 

「その日、ワルツさんはどういう風に、収集物を見ていましたか?」

 

「ええと、どうって、こうやって――。」

 

 

 シドリアの最後の質問に、お姉さんは一番近くにあった壺を手にとり、実際にやって見せた。

 お姉さんは、壺を両手でしっかり持ったまま角度を変え、下から横から上から眺めるようにしている。

 

 解説してあげようかと思い、俺がシドリアの方を向くと、シドリアは既に影のオーラを展開して、しっかり見ていた。

 影の大きさは手の平サイズなので、多分普通に見えているんだろう。

 

 

「ありがとうございます。良く分かりました。

 では、これから私達でこの部屋の詳しい調査を始めたいと思いますが――。」

 

 

 シドリアがそう言うと、使用人のお姉さんは頷き言った。

 

 

「はい、お願いします。

 ワタクシはこれから町へ買い出しに行って参りますので、どうぞご自由に。」

 

 

 お姉さんの返答に、俺は思わず驚いて聞いた。

 

 

「え、俺達だけじゃマズイんじゃ――?」

 

 

「フフ、御主人様は実は収集し終えたモノに執着しないんですよ。

 だから、例えば壊してしまっても御主人様が帰る前に片付ければ気付きません。」

 

 それを聞いた俺とシドリアが唖然としていると、さらにお姉さんが言った。

 

 

「それに、貴方達は何となくですが、信用できますから――。」

 

 

 お姉さんはそう言うと、部屋から出て行った。 

 

 

 

 

▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲

 

 

 

 

 それからシドリア達は部屋の調査を開始した。

 

 シドリアの考えでは、ワルツ本人の念能力によって消えたというのは考えづらい。

 状況的に考えて、何者かの罠系念能力(トラップ)だというのは予想できた。

 

 

 ガルナがポソリと独り言を言う。

 

 

「誰も見てない時間が1時間もあったらしいから、瞬間移動とは限らないけど――。」

 

 

 瞬間移動系の能力は、媒介となる、使い慣れた物体か、具現化した物体が必要になる。

 また、ガルナとは違うタイプの念空間を利用する能力者だとしても、その痕跡はしばらく残る筈だった。

 

 凝で部屋を隅々まで視ると、ガルナは言った。

 

 

「部屋には、それらしい痕跡は無いね。

 ワルツさん本人に仕掛けられちゃってたらどうしようもないけど・・・。」

 

「そうか。では、この部屋の収集物の確認だな。

 影で見たところ相当骨が折れそうだ。」

 

 

 シドリアの念能力である影は、3つの要素を組み合わせて使う。

 

 3つの要素とは、範囲、解像度、コマ数――。

 

 シドリアは、これらの3つの要素のそれぞれの割合に応じて、名前をつけることで、能力の発動をスムーズにしていた。

 

 例えば、頻繁に使う広範囲の円影は、範囲LV10、解像度LV4、コマ数LV1という、約10秒毎に白黒写真の静止画のような光学情報を得られる型だ。

 他に映影といって、範囲LV3、解像度LV2、コマ数LV10というような、高速戦闘を意識した型等がある。

 

 シドリアは、あらかじめ名付けた型を思い浮かべることで、素早く能力を発動することができた。

 シドリアは日夜、最適な型を研究し、それぞれの3要素の最大Lvを上げる努力もしている。

 

 だが、そんなシドリアの合理的に管理された能力にも、あるどうしようもない欠点がある。

 

 影の能力で、凝はできないのだ。

 

 これは、致命的な欠点ではあったが、もはや仕様という他ない。

 しかし、何よりガルナは、そのことを酷く馬鹿にした。

 

 シドリアは、解像度、コマ数がどちらもLv0の能力、【偽影】を常時自身の目に展開させて、わざわざ目を封印しているからだ。

 

 

――ミコトの目が治るまで、ミコトからもらった目を使わない。

 

 それは、信念だ。

 

 

 シドリアはミコトを愛している。

 故に、一緒に同じように、目を開き、景色を見たいと思っている。

 

 これは、シドリアの一方的な愛――。

 念の制約にすらならない、勝手な縛り。

 

 シドリアは、そんな信念を持つ。

 

 そして、ガルナはそんなシドリアを理解できない。

 何故、そんな面倒なことをするのかが――。

 

 

 

 しばらくすると、ガルナは額の汗をぬぐいながらシドリアに声を掛けた。

 

 

「ちょっと休憩していい?」

 

 

 調査を開始してから、1時間程経過していた。

 

 ゴードン氏の屋敷の収集物は、おそらくゴードン氏本人の性格にもよるのだろうが、整理されていなかった。

 

 同じジャンルならば同じ棚にすれば良い筈なのだが、ゴードン氏は集めた順番に棚に配置していくらしい。

 また、統一感がないことを自覚しているのか、必ず棚は扉の中に引出しがあるタイプで、1つ1つ開けて見なければ分からない。

 

 ガルナが1時間必死に調査して、やっと部屋の収集物の半分の調査が終わったところだった。

 シドリアも、ガルナが調べ忘れた物がないかを確認する為に、影の能力を縦横無尽に展開して疲労していた。

 

 シドリアが時刻を確認すると、ちょうど昼刻だったことに気付いた。

 すぐに、シドリアの頭の中にお腹を空かせたミコトのイメージが浮かぶ。

 

 

「では、一度食事に――。」

 

 

 そのとき、どこかの棚から物音が聞こえた。

 

 シドリア達は、何気なくその方向を見る――。

 

 

――――!?

 

 

 人が、倒れていた。

 

 シドリアは、瞬時に部屋の出入り口や窓を確認するが、全てしっかりと閉まっていた。

 

 既にガルナは倒れている人の傍にいる。

 遅れてシドリアもガルナの傍に駆け寄った。

 

 シドリアの顔を見ると、ガルナが呟いた。

 

 

「この人・・・死んでる。」

 

 

 シドリアも、倒れている人物から全くオーラを感じないことから、それが死体だということが分かった。

 

 

「まさか、この人がワルツさん?」

 

 

 ガルナが聞くと、シドリアが答えた。

 

 

「分からない。その人の所持品に何か身分証みたいのがあるんじゃないのか?」

 

 

 そう言われて、ガルナが死体のポケットをゴソゴソと探し出す。

 

 シドリアはその間に、影を展開して周囲を確認した。

 すると、シドリアは見たこともない妙な形の機械を引出しの中に見つけた。

 最初の捜索では、影により概略の格納状態だけを把握しただけだが、今は範囲Lvを下げたので物の詳細を見ることができた。

 

 

「これは、なんだ? 他の収集物は人形やら骨董品が多かったが・・・。

 何かのオーディオ機器か?古そうな型だが、何でこんなものが?」

 

 

 シドリアは呟きながら、その引出しを開ける。

 

 

「あった!ハンターライセンス! ワルツ=フロッグって書いてある。

 って、シドリアそれ――?」

 

 

 そう言ってガルナがシドリアに近づくと、シドリアが言った。

 

 

「いや、妙なものが見えてな。

 見たことがないが、レアなオーディオ機器か何かだろうか?」

 

「いや、違うよ。それ、ジョイステじゃん!?」

 

 

 ガルナがそう叫ぶと、シドリアは呟いた。

 

 

「そうか、これがジョイステーショ・・・これは、オーラを纏っている!?」

 

 

 引出しに入ったままのそのジョイステーションは、しっかりとしたオーラで覆われている。

 

 凝で確認するまでもなく、シドリアはそのゲーム機がおそらくどんな攻撃も防御してしまうような気配を感じた。

 

 

「そうだね。・・・位置的に、これがワルツさんが消えた原因?

 もしかして、3日間この中に閉じ込められたとか?」

 

 

「可能性はあるな。って、おいガルナ、触るなよ。ワルツの二の舞になってしまうだろうが!」

 

 

 会話をしている最中にガルナが早速ゲーム機に触れようとしたところで、シドリアが止めた。

 

 

「あ、そっか。危なかった。」

 

 

 ガルナが頭を掻きながら笑っているところに、使用人が帰ってきた。

 

 

「もう、お昼なので、お食事でも――。え?キャアアア!!そ、そそれ――?」

 

 

 使用人はワルツの死体を見て、思わずその場に座り込んで悲鳴を上げた。

 

 ガルナは慌てて、使用人を抱きしめて、落ち着かせる。

 しばらく、ガルナが頭を撫でていると、使用人の呼吸も落ち着きを取り戻したようだった。

 

 

 シドリアが使用人に質問をする。

 

 

「単刀直入にお伺いしますが、このゲーム機、ジョイステーションというらしいのですが――。

 ワルツさん失踪時はどこにありましたか?」

 

 

 ワルツ失踪時、部屋の物は出しっぱなしで、ありとあらゆる棚の引出しが開けたままになっていた。

 ジョイステーションに関しても、床に無造作に投げ出されていたらしいが、使用人が片づけたらしい。

 

 

「使用人さんが片づけた? 触ってどうにもならなかった?」

 

 

 ガルナがそう聞くと、使用人は何のことか分からないという顔をして答えた。

 

 

「え、ええ。全く何も。

 確かワタクシが働き始めてすぐに御主人様が入手して、新人だったワタクシが緊張しながら引出しにしまった物です。

 

 そのときも何もなりませんでしたが――。」

 

「緊張というと?」

 

 

 シドリアが、すかさず尋ねると、使用人が答えた。

 

 

「えっと、確か物凄く高価な物だったので――。」

 

 

 シドリアは何か重大なことを見逃している気がした。

 

 シドリアは考え込む。

 

 

 高価なゲーム――。

 

 ワルツが消えて3日後に死体となって帰ってきた。 しかし、使用人は最低でも過去2回は触っているが何もならなかった・・・。

 

 ワルツと使用人の違い――プロハンターと一般人。

 

 

 

 ハンターだけが出来るゲーム。

 

 ハンター専用ゲーム――?

 

 

 

「グリードアイランド!?」

 

 

 シドリアとガルナが同時に叫んだ。

 使用人は2人の顔を見比べながら、呟く。

 

 

「あ、そうですね。確かそんな名前でした。」

 

 

 使用人の言葉もそこそこに、シドリアとガルナは顔を見合わせて小さく笑いだした。

 

 

 夕刻、ゴードン氏が帰宅し、自己紹介の後シドリアが切り出した。

 

 

「ワルツさんが遺体となって発見されました。」 

 

「な、なんだと?死因は何だ?」

 

「ええ、実はここにゲーム機があるのですが・・・。」

 

 

 シドリア達が触れないように、念のため使用人に運んでもらったゲーム機を指さして、シドリアが説明を始める。

 

 

「ハッキリ言うと、これは呪われたゲームです。

 このゲームに運悪くプレイヤーとして選ばれてしまうと、3日間ゲームの中に閉じ込められ、死に至ります。」

 

 

 もちろん、嘘だ。

 

 

「呪いのゲームだと!?

 まさか、そんなものを収集してしまっていたとは・・・。

 君、すまないがそのゲーム機を処分できるかね?」

 

 

 ゴードン氏が早口でそう言うと、シドリアが力強く答えた。

 

 

「お任せください。」

 

 

 

 

 その後、ワルツの捜査で地元警察が来る前に、ブリッツは速やかに退散した。

 

 

 車内では、笑い声が聞こえる。

 

 

「ホント、ひでえ奴だよシドリアは――。

 ほとんど詐欺だよね?」

 

「全て嘘というわけじゃないしな。

 まさか、金も遣わずにG・Iを入手できるとは、ついている。」

 

「へえ、これがG・Iです?」

 

 

 最後にミコトが、大きなアタッシュケースを持って呟いた。

 その中に、オーラを纏ったゲーム機がある。

 

 シドリアは、直接触りさえしなければ問題はないだろうと判断し、アタッシュケースに入れてもらった。

 シドリアの予想通り、念能力者である彼らがアタッシュケースに触れても、何も起こらなかった。

 

 

 ミコトは、退屈ではあったが、決して車外に出ることはしなかった。

 チームの一員として、作戦と違うことをすることのリスクは承知していたからだ。

 

 ガルナは時折、自分の考えで動いてしまうが、ミコトは決して勝手な行動はとらなかった。

 

 

 

 宿に着くと、ひとまず今後の作戦会議をするということで、ミコトの部屋に集まった。

 

 シドリアが説明を始める。

 

 

「入手はできた。ただし、問題がいくつかある。」

 

 

 シドリアは他の2人が頷いている様子を確認してから説明を続ける。

 

 

「まずは、プレイ方法。

 まだ、ハッキリとは分からないが、屋敷の使用人が触っても問題ないことから、これは触れた人間が念を使えるかどうかを、ゲームに施した念能力により判断しているんだと思う。

 そして一番の問題が、時間制限だ。」

 

 

「時間制限です?」

 

 

 ミコトが聞いた。

 ミコトは、アタッシュケースを抱きかかえるようにしながら、ソファでゆったり座っている。

 

 ミコトの隣にいたガルナが笑いながら言った。

 

 

「プロハンターのワルツさんが、ゲームに閉じ込められてから3日目で死体となって出てきたからだよ。」

 

 

 

 ガルナがそう言うと、突然ミコトのオーラが高まった。

 

 

「死体?どういうことです!?」

 

 

 シドリアは、意図的にワルツの死をぼかして、ミコトに説明していた。

 ミコトの性格上、それを言っていたら素直に宿に戻ることはしないだろうと思ったからだ。

 

 シドリアは頭の中で言い訳を考えながら、やはりここは素直に謝るしかないと結論付ける――。

 

 

 

 

「え?俺達に関係ない人だし、どうでもいいでしょ。」

 

 

 そのとき、ガルナが、あっけらかんとそう言った。

 

 よりにもよって、真剣に怒っているミコトに対してそう言った。

 

 

 するとミコトは立ち上がり、ガルナの方を向く。

 

 ミコトのオーラは全力まで高まっていた――。

 

 

 

 

 

 その瞬間、ミコトの姿が消えた。

 




【あとがき】


 活動報告にも書きましたが、5月25日からの作者のリアル事情により、次の29話を最後にしばらく更新停止しますm(__)m


 28話と29話は、作者不在のまま、予約投稿による自動更新になります(^o^;)

 気付いている方もいらっしゃるかもしれませんが、いつもなら、更新終わった日にさりげなく修正してます( ̄ロ ̄;)

 ミスが結構あるからです(´Д`)

 この話が投稿される頃には作者は不在なので、修正できない&感想返しができません(>_<)


 年内には戻れるのかなと考えているのですが、それも状況次第( ̄ロ ̄;)

 皆様、ご理解とご了承をよろしくお願いしますm(__)m

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