DUAL BULLET   作:すももも

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10.暗影

★★★★★★★★★★★★★★★

 

 

 

 

 暗闇の中、僅かに血が滴る音が聞こえた―――。

 

 

 ガルナはパサパサに乾いた唇で、微かに何かを呟いている・・・。

 

 

 すると、今のガルナにとって、聞き馴染みのある足音が響いた。

 

 

―――ギギッ

 

 

 扉を開ける音が聞こえて、男が入ってきた。

 

 

「・・・どんな気分だ?」

 

 

 そう言って、暗闇から姿を表したのは、幻影旅団団長のクロロ=ルシルフル。

 ガルナは、かすれた声で謝罪を続けている・・・。

 

 

「ああ!?聞こえねえぞ!・・・何度も言ったが、俺はアレが欲しかった―――お前の能力がなくてもな。」

 

 

 ガルナは伏せた体勢のまま微動だにせずにいた。

 

 

――――ガン!!

 

 

 既に腫れていたガルナの顔を、クロロはオーラを込めて蹴り上げた―――。

 

 ガルナのオーラは弱々しく、クロロの蹴りを喰らい、既に失神している・・・。

 

 

「寝るんじゃねえ!!てめえ!全然っ反省してねえな!?」

 

 

 怒気を伴うクロロのオーラが強まる―――。

 

 

盗賊の極意(スキルハンター)

 

 

 クロロは具現化した本のページをめくり、能力を選んだ。

 

 

「これでいくか・・・。」

 

 クロロはそう言って、何かを呟く・・・。

 

 

―――【罰乗り地蔵(エクストーン)】発動。

 

 

「―――ギャアアアッ!」

 

 

 ガルナの悲痛な声がアジト内に響き渡った―――。

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

「・・・団長、まだやってる・・・。」

 

 

 マチがそう呟きながら、アジトの奥に目をやった。

 

 

「団長いや、クロロがああなったら、どうしようもねえんだよな・・・。」

 

「お前が昔、クロロの好きな本のページの端を破った時も、豹変したもんな?」

 

 

 ノブナガが忌々しく言うと、ウボォーギンが補足してからかった。

 

 すぐに、ノブナガとウボォーギンの取っ組み合いが始まる。

 

 

「8時間以上ずっと寝ないで続けてるもんね。あのままじゃ、朝にはガルナ死んじゃうかも・・・。」

 

 

 2人を気にせず、シャルナークがそう小さく呟いた。

 

 

「ま、自業自得だろうけどさ・・・。」

 

 

 マチはそう言いながら、ふと何かが引っ掛かっていた・・・。

 

 

「―――でも、あいつ凄いよな。」

 

 

 取っ組み合いを続けながら、ウボォーギンが思い出したように言った。

 

 ノブナガが手を止め、他の全員もウボォーギンの顔を見る。

 

 

「だって、あんな訳分からない機械、適当に動かせるんだぜ?」

 

 

 ウボォーギンのその言葉に3人がハッとした表情をした。

 

 

「!?そうだわ!」

 

「そうか!!なんでこんなことに気付かなかったんだ!?」

 

 

 パクノダとシャルナークが突然、立ち上がって叫んだ。

 ノブナガとウボォーギンは、何のことか分からない顔をしている・・・。

 

 マチが頷きながら、ゆっくりと言った・・・。

 

 

「ガルナ以外の誰かの細工ってことね・・・。」

 

 

「そうよ。飛行機は、メインエンジンに点火するだけでも正しい手順が必要。専門知識がないと無理な筈だわ。」

 

 

 マチの言葉をパクノダが肯定すると、ノブナガが驚いてマチに聞く。

 

 

「なんで、お前が分かるんだよ?」

 

「勘。」

 

 

 マチは短くそう言うと、ノブナガは笑いながら言った。

 

 

「ハハ、お前の勘って念能力かよ!?」

 

 

「あ・・・。」

 

 

 全員がそう言って1つの方向を見る。

 

 

―――その視線の先にはパクノダがいた。

 

 

 視線を受け、パクノダは頷きながら言った。

 

 

「急がなければならないわね。」

 

 

 その言葉に、その場の全員が頷いた。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 アタシの胸の中の鼓動が激しく鳴っていた―――。

 

 決して、皆がアイツの為に動いてくれているわけではない。

 ただ単純に蜘蛛を狙う連中を警戒しているだけ。

 

 それでも―――。

 

 

 さっきまでは状況的にアタシもガルナのせいだと思い込んでいた・・・。

 でも、思い返せば確かに違和感があった。

 

 

 あのときアタシは、嫌な予感と、妙な予感を、無理やり結び付けて考えてしまっていたのだ・・・。

 

 

 

 

「ここね。」

 

 

 パクがそう言いながら、ドアを開けた。

 

 

―――ギギッ

 

 

 部屋の中に入ると、ガルナと団長がいた。

 

 

 ガルナの背中には、顔のついた石が乗っており、そこから伸びるトゲはガルナの全身に巻き付き、深く食い込んでいた。

 

 重さの為、ガルナは床に伏せたまま動けずにいる。

 また、痛みが意識を失うことを許さず、ガルナは苦痛な表情でそれに耐え続けているようだった・・・。

 

 間違いなく、団長の能力。それも、拷問用の念能力だろう・・・。

 

 

「なんだ?俺が呼ぶまで待機しろと言ったはずだが・・・。」

 

 

 団長は不機嫌そうにそう言ったが、パクは静かに語りかける・・・。

 

 

「事故が仕組まれた可能性があります。至急ガルナの記憶を確認したいんですが、よろしいですか?」

 

 

 パクは無駄な嘘はつかず謙虚に最低限の要求を出した。

 

 

「・・・ふざけるな。」

 

 

 団長の怒りは相当なんだろうか・・・。

 パクの真摯な言葉も届かない。

 

 

「―――そうか、ガルナの良い罰を思い付いた。」

 

 

 団長がそう言いながら、アタシを見る・・・。

 

 

「ガルナのお宝、大切なモノを壊す。徹底的に、な。」

 

 

―――本気ではない。アタシは団長の目を見て分かった。

 

 

 だけど、団長がそう言った瞬間、ガルナの弱々しいオーラが突然強くなる―――。

 

 

「マチ、に・・・手を・・・出す・・・な。」

 

 

 ガルナは強いオーラを纏い、団長の能力の石の重さに負けないように、立ち上がっていく・・・。

 

 

 それを見た団長は怒りの形相で、ガルナに攻撃を仕掛けた。

 それは、まともに身動きのとれないガルナを即死させる一撃―――。

 

 

 

 

―――瞬間。

 

 

 アタシは信じられないものを見た。

 

 何故かは知らないけれど、アタシは団長の左腕を掴んで、団長の攻撃を止めている・・・。

 

 団長はピタリと手を止めて、重々しく言った。

 

 

「・・・何のつもりだ―――。」

 

 

 アタシは、自分の行動に戸惑いを感じて何も答えられずにいた・・・。

 

 団長はアタシに背を向けたまま、言った・・・。

 

 

「何のつもりだと聞いている、ノブナガ!?」

 

 

―――!?なんで? ノブナガ!?

 

 

 アタシが混乱していると、先程まで一緒に来ていなかった筈のノブナガがいた。

 

 無言で強いオーラを纏い、刀を構えている―――。

 

 

「そいつを殺した瞬間、俺がお前を殺すだけだろうが、クロロよ。」

 

 

 ノブナガは、普段通りの声で団長にそう言った。

 

 団長は、その言葉に沈黙している。

 

 

 立つのが精一杯のガルナ、ガルナを狙う団長、団長の背後からアタシが団長の腕を掴み、更にノブナガが団長を狙う―――。

 

 

 完全な膠着状態―――4人だけだったら。

 

 

 その時、既にパクがガルナの背後に回り込んでいたのだ。

 

 団長はその様子をジッと見ている・・・。

 

 

「ガルナ、あのとき何があったの?」

 

 

 パクが、必死に立つガルナの肩に触れながら、そう聞いた。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「すごい、かっこいい!!」

 

 

 あの時、俺は見たこともないその形のそれに心を奪われた。

 

 シャルや他の人の話は、俺の耳にはほとんど届いていなかった。

 

 

 背後の連中がどこかに行くのも気にせず、俺は飛行船をあらゆる角度で、ずっと見続けていた・・・。

 

 

 ふと見ると、整備員が電話をしながら、飛行船内に入っていった。

 

 

―――そうだ、中も見てみよう。

 

 

 そう思った俺は、飛行船内へ駆けていった―――。

 

 

 操縦席には無数の計器があり、その周辺や天井にまでスイッチがズラリと並んでいる。

 

 整備員は操縦席に座って、次々とスイッチを操作していた。

 

 俺は、その背後から様子を見ていた。

 実際、それだけでも楽しかったしね。

 

 

 突然、飛行船が僅かに振動し始めた・・・。

 

 

 整備員は、シャルが自動操作している奴のはず・・・。

 なんか、嫌な予感がするな。

 

 

「おい、お前大丈夫か?」

 

 

 意味はない、と思いながらも俺は整備員の肩を叩き、声を掛けた。

 

 反応もなく、整備員は操作を続けている・・・。

 

 

 よく見ると、計器類の針が激しく動いていた。

 

 

「ちょっ待て!!ヤバくない?!やめろよ!!」

 

 

 焦って、整備員の肩を強く揺すると、整備員が俺の方を向いて言った。

 

 

「ダ、ダめでス。イ、るミ様ノ命令がナいと―――。」

 

 

―――ガクン!!

 

 

 整備員の言葉と同時に、機体が激しく揺れた―――。

 

 

 正直、意味が分からなかった。

 

 シャルの操作している奴だよな?

 操作ってバグとかあるのか?

 

 

 考えるのが面倒になった俺は、力強く整備員を殴った。

 

 

―――グキッ

 

 

 首の骨が折れる音が聞こえた。

 シャルの人形なら、動かなくなる筈だ。

 

 

 とりあえず、なんとか復旧しなきゃだな・・・。

 

 

 焦りながら、俺が操縦席に近づくと、突然手首を掴まれた。

 

 

―――!?シャル以外の操作系能力者か!?

 

 

 整備員の帽子がとれて、その額には銃弾がめり込んだ痕跡があったのだ。

 更に後頭部には妙な形の針が―――。

 

 

 俺は、整備員の掴む手を捌きながら、すかさず全力の手刀で整備員の首を切断した。

 

 首から下の整備員の身体は操縦パネルに倒れこみ、今度こそ動かなくなった・・・。

 

 

―――ボンッ

 

 

 突然、大きな音が鳴り響き、飛行船の振動が強くなる・・・。

 

 

「やばい!?」

 

 

 俺が操縦パネルを見ると、あらゆる計器が先程よりも速く、メチャクチャに振れている。

 

 もしかしたら、整備員の身体が倒れた時に、何かのスイッチが入ったのかもしれない・・・。

 

 

 よく分からなかったが、このままじゃヤバいという焦りから、目の前のレバーみたいなものを俺は握って、力一杯手前に引いた―――。

 

 

―――フィーン

 

 

 甲高い音とともに、飛行船の振動が高まる―――。

 

 

「止まれえええええ!!」

 

 

 俺はレバーに更に力を込める―――。

 

 

 

 

―――ペキッ

 

 

 そして軽い音とともに、レバーが折れた・・・。

 

 

 俺はこの状況で、混乱し、泣きながら、辺りを見回す。

 

 

 すると突然、団長が入ってきた。

 

 

 俺は、助かったという気持ちで団長に駆け寄る―――。

 

 

「ガルナ・・・その手にあるものは、何だ?」

 

 

 団長の強烈な殺意を感じながら、俺は自分の手に握ったままの、折れたレバーを見た・・・。

 

 嫌な汗を感じながら、俺は答える。

 

 

「が、頑張ったけど・・・折れました。」

 

 

 俺の言葉を聞いて、団長は無言で近づいてきた。

 

 

――――!!?

 

 

 何も見えなかった。

 

 

 気付くと俺は吹き飛んでいて、床に倒れていた・・・。

 

 

 状況から団長に殴られたのは分かったが、何発殴られたのかも分からなかった。

 

 

「ガルナ・・・殺すのはあとにしてやる。わかってるな?」

 

 

 団長がそう言って、恐怖で動けない俺を素早く肩で担ぎ、操縦席の窓を割りながら飛び降りた―――。

 

 

―――あれ?

 

 

 飛行船の傍に影があった。

 うまくカモフラージュしていたが、光を浴びても消えない影・・・。

 そこから僅かにオーラと視線を感じるそれは、まるでシドリアの念能力――。

 

 

 

 

 既に団長は走り出しており、俺は声を掛けることが出来なかった・・・。

 

 

 蜘蛛の皆が駆け寄る――。

 

 俺は、泣きながら能力を発動させた。

 

 

「セカンド・ブリットォ!!」

 

 

 俺は、嘘のような状況から逃げたかった―――。

 

 

 

 

△△△△△△△△△△△△△△△

 

 

 

 

「オーラを使い果たして気絶したわね・・・。」

 

 

 パクノダが、そう言ってガルナを見た。

 

 クロロは舌打ちをしながら、能力を解除する。

 

 

「ノブナガ、ガルナを部屋で寝かせてやれ。」

 

 

 クロロにそう言われたノブナガは頷き、ガルナを背負って部屋を出ていった・・・。

 そして、クロロはパクノダに目で合図をした。

 

 パクノダは頷いて、リボルバー拳銃を具現化する。

 それを見たマチが聞いた。

 

 

「何それ?」

 

「彼氏の能力に似てる?」

 

「はあ!?彼氏じゃないし!・・・多分。」

 

 

 からかうパクノダの言葉をマチは否定した。

 

 

「どうでもいいから、早くしろ。」

 

 

 クロロの言葉にパクノダは頷き、クロロに銃口を向けて放つ。

 

 

―――【記憶弾(メモリーボム)

 

 

 記憶を込めた弾丸を撃ち、対象に記憶を打ち込むことのできる念能力。

 

 

「―――そうか。」

 

 

 記憶を打ち込まれたクロロは小さく、静かに頷いていた。

 

 

「マチにも見せておくわね。」

 

 

―――バシュンッ

 

 

「へえ・・・便利ね、これ。ていうか、ガルナってバカねホントに・・・。」

 

 

 パクノダの弾丸を受けて、マチが残念そうに言った。

 

 

「団長、あの整備員は私の相手です。完全に油断しました・・・。」

 

 

 パクノダが団長に対し謝罪すると、団長がゆっくりと首を横に振って答える・・・。

 

 

「いや、油断したのは俺もだ・・・。

 まさか、頭を撃たれても動くとはな。相当強力な操作系能力――。

 もう1人の奴も、俺達に察知されずにオーラの影を展開していた。

 両者とも相当な使い手だな・・・。」

 

 

 クロロが静かに語りだす。

 それに対しマチが言った。

 

 

「でも、変な奴らよね。わざわざ飛行船を爆発させて、団員を殺そうとした?」

 

 

「いや・・・爆発は偶然。目的は操縦を不可能にする程度だろうな。そこまで正確な指示はできない筈。

 あの爆発は、たまたまバカが絶妙なタイミングで余計なことをしただけだ。」

 

 

 クロロは「バカ」という言葉を強調してそう言った。

 

 パクノダがそれに反応して言った。

 

 

「ということは、狙いは―――。」

 

 

 突然、辺りの床が暗影に覆われた。

 

 

 

 

△△△△△△△△△△△△△△△

 

 

 

 

 ノブナガは、異様な気配を感じた。

 

 

 背負っていたガルナをゆっくりと床に置くと、その方向に対峙する。

 

 

 ウボォーギンがいた。明らかに普通ではない。

 

 

「・・・操作、されてるのか。仕方ねえな。」

 

 

 ノブナガは隙なく居合いの構えをし、待ち構える・・・。

 

 

 本来「居合い」とは、停止状態での抜刀術。「待ち」に特化した技だ。

 故に、ノブナガにとって向かってくる相手を迎撃するのは得意とするところであったが―――。

 

 

 

 

―――キンッ!!

 

 

 闇の中で一閃が放たれた。

 

 ノブナガは既に刀を納めていて、構えも解いている。

 

 

「・・・あ?なんでノブナガが―――?」

 

 

 言葉の途中でウボォーギンは、自身の首筋の刀傷に気付いた。

 天性のものか、強化系特有の現象か、既に出血は止まっている。

 

 

「くそっ・・・そうか、俺は操作されていたのか。」

 

 

 ウボォーギンは背後を振り返り、怒りの形相でオーラを解放する。

 

 

「許さねえぞ!!あの猫目やろう!!」

 

 

 

 

 ウボォーギンとシャルナーク、本当ならノブナガもアジト内の警戒をすることになっていた。

 

 シャルナークは相手について、操作系能力者を含む複数人がいることを予想していたのだ。

 

 

 ガルナ以外の仕業だとして、あの格納庫内に侵入者がいたら、さすがに気付く筈・・・。

 

 おそらくは、遠隔からの操作が得意な操作系能力者が、あらかじめ仕込んでいたのだろう。

 

 

 他者を操作する能力には、大きく分けて2つのタイプがある。

 

 

 1つは「指令型操作」

 対象の精神を支配し、術者の言う通りに行動させる操作。

 対象の記憶も利用できるため工作に向いている。

 反面、支配力は不完全かつ相対的でムラがあり、操作対象の精神力、術者の込める念、制約等で効果は変わる。

 

 

 もう1つは「操縦型操作」

 対象を完全に支配し、術者のコントロール下におく操作。

 2種類の物体を使い、遠隔操作が可能。

 シャルナークの能力がこれにあたるが、操作対象の記憶や念能力を利用できない。

 ただし、支配力は完全かつ絶対的で、一度操作できれば媒介が取れない限り解除されない。

 

 

 あのとき、飛行機の整備マニュアル等の資料は、操作の為にシャルナークが保有していた。

 故に「操縦型操作」は考えづらい。

 

 

 仮に「指令型操作」の場合、そのほとんどは能力によって操作対象の状況は確認できないし、能力だけでは遠隔で「指令」も変えられない。

 通信機器等を使用すれば、遠隔で「指令」も変えられるが――。

 

 つまり、シャルナーク達が離れたのを見計らって、通信機器により「指令」を出した、そう考えると辻褄が合う。

 

 

 故にもう1人、現場の状況が分かるような情報収集能力者が必要だ。

 

 千里眼のような念能力者―――。

 

 

 シャルナークの予想では最低でも2人の念能力者が蜘蛛を狙っている。

 

 さらに気になるのはその動機―――。

 

 

 

 

「おかしいな。近づいた奴を攻撃するように言ったのに、なんで外れたんだろう。」

 

 

―――!?

 

 

 その声に振り向くと、いつの間にか、ウボォーギン達のいる広間の隅に長い黒髪の青年がいた。

 

 

「てめえ・・・」

 

 

 ウボォーギンが臨戦体勢をとる。

 

 

「凄まじいオーラ量だね。うん、やばいかも。」

 

 

 長い黒髪のその青年は、全く表情を変えずに、淡々とそう言った―――。

 

 

―――ピッ

 

 

 突如、背後から現れたシャルナークが、アンテナで青年を狙う――。

 

 しかし、青年は難なくシャルナークの攻撃を回避して、呟いた。

 

 

「3人もいるのか、面倒だな・・・。」

 

 

 長髪の青年がそう言いながら、素早く針を投げていた。

 

 3人はそれぞれ注意深く避ける。

 

 

―――!?

 

 

 しかし、その一瞬の隙に、長髪の青年は、その場から立ち去っていた・・・。

 

 

「おい、コラ!待てえ!!」

 

 

 ウボォーギンが常人離れした、大きな叫び声をあげた。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 影により、アタシの(多分パクも)視界は遮られた。

 おそらく、ガルナの記憶にあったアレ。

 

 床にオーラが広がった瞬間に跳躍したけど、既に部屋の床一面がオーラの影で覆われていて、着地したと同時に視界を奪われたのだ。

 

 尋常ではない展開速度・・・。

 

 

「面倒な能力だね。」

 

 

 アタシが忌々しくそう呟いた。

 

 

―――ギギッ

 

 

 部屋の扉を開ける音がする。

 

 

「クククッ、やっと二人きりになれたね、クロロ◆」

 

 

 気味の悪い男の声が聞こえた。

 

 

 この声は、間違いなくヒソカ・・・。

 

 

 今回のことは、おそらく団長を狙って仕組んだのだろう。

 

 

 そして、昨日偶然会ったガルナを戯れに怪我させ、しかもガルナが飛行船を爆発させてしまった原因も作った。

 そのせいで、ガルナは、団長に罰を与えられて―――。

 

 

 アタシは、ヒソカに対して、今までに感じたことのない、強い殺意を感じた・・・。

 

 

「そうか、お前か・・・。そういえば、お前は蜘蛛に入りたがっていたな・・・。

 しかしお前のことは、あの時コインで決めた筈だ。その決定が覆ることはない。」

 

 

 団長が静かにそう言うのが聞こえた。

 

 以前、アタシをだしに使って、団長を狙った最悪の男―――ヒソカ。

 

 

 ただし、狙っているのは団長との戦闘(タイマン)だった。

 

 別に団長を手段を問わず、殺そうとしているわけではない、それが蜘蛛のメンバーで意見が別れる原因となった。

 

 

 

「もう入団は諦めてるよ◆ 君とバトルしたいだけだ♥」

 

 

 ヒソカは、洩れ出る殺気を隠すことなく、そう言った。

 

 

「そうか・・・。お前のせいで、俺の獲物は壊れたんだな?」

 

 

 突然語気を荒げてそう言った団長のオーラが、急激に高まった―――。

 




 はい!真相は、こういう感じでした(・∀・)ノ

 長かったデスカ!?はい、ごめんなさい(ノд<。)゜。そして、分かりづらくてゴメンなさい!(^_^;)

 今後もっと精進しますm(__)m

 ちなみに、影を使う能力者は誰でしょうか!?
(バレバレかも!?)

 答えは次回(。≧∇≦。)

 次回【11.影使い】

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