ハリー・ポッターと暴食の悪魔   作:普段は読み専用

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ハリー・ポッターの二次って主人公が生徒側ばっかなんだなー。先生ものあんまりみかけない。
なら自分で書いてみればいいじゃない(←今ここ)


プロローグ

 魔法使いと呼ばれる、科学では解明できないような秘術である魔法を扱う人間達がいる。

 彼等は、魔法の使えない人間のことをマグルと呼称し、住む世界を隔て、マグルに対して魔法を秘匿している。自分達だけの閉じた世界だけで歴史を築いてきた彼等とマグルには、中世以降で特に文化に差異が生まれてきた。しかし、そんな中で昔から変わらずに魔法使い、マグル問わず同じところもある。それはここ、アズカバンにも言えることだ。

 人は罪人を見つければ、自分達の安全を守るために排除するか、もしくは遠ざけようとする。司法という概念が生まれてからは特に後者が顕著になり現在はどこの国にも犯罪者を収容するための監獄がある。死刑という刑罰がない国などは特にそうだろうが、罪人に刑罰を与えると同時に隔離し、一般人の身の安全を確保しているのである。

 魔法使いの監獄であるアズカバンには、過去に大罪を犯した危険人物を収容していた。魔法使いの世界には死刑制度というものはない。まだ魔法使いとマグルとの交流が盛んであったころに起こった魔女裁判で、疑わしきとされた魔法使いの多くが様々な方法で死刑に処された。そのことから、罪人に対してマグルのように死を与えるのはどうなのかと当時議論となり、魔法世界から死刑制度が廃止されているのだ。

 その代替案としてか、ここアズカバンには吸魂鬼と呼ばれる怪物が飼われており、監獄の中をうろついている。彼等は人間の生気を主食としており、この場所に収監された罪人たちは死ぬことはなくともその多くが生気を吸われ過ぎて精神に異常をきたすとされている。マグルの世界における現代の死刑では安楽死が基本であることを考えれば、今となっては逆に罪人には死刑異常に厳しいものであるとすらいえた。

 

「ふむ、あいかわらず寒いところじゃの」

 

 そんなアズカバンに一人の老人が訪れていた。

 背が高く、白く長い髪とそれ以上に長い髭をしている眼鏡をかけた男性。ホグワーツ魔法魔術学校という由緒ある魔法使いの学校の現在の校長を務めているアルバス・ダンブルドアその人である。

 彼はどうやらここに収監されている何者かと面会をするためにやってきたらしく、目的の場所に向かって歩きながら白い息を吐いていた。周囲はどこも鉄製の壁で囲まれており、北方にあるためか季節を問わずに寒さを感じた。

 だが、ダンブルドアの前を歩いて案内をしている男の表情は、寒さ意外の要因で顔が真っ青であった。おそらくはこれから向かう先のことを考えてのことだろう。向かうのは犯罪者達が収容されている地上階ではなく、その地下だ。生気を吸魂鬼に吸われて力なく倒れている囚人達の檻の前を通過し最奥の扉、鉄製の無骨な一枚の扉。そこが地下へと通じる唯一の扉である。囚人達の生気を吸おうとフロア内をうろついている吸魂鬼が、その扉の周囲にだけは一体もいなかった。どの個体も避けているようで近づこうともしない。

 

「……本当によろしいので?」

 

「うむ、開けてくれ」

 

頷くダンブルドアを見て、案内人の男は悲壮な顔で扉に手をやった。ギギギ……と鈍い音を立てて開けられる鉄製の扉は、厚さが実に20センチもあった。扉が開いた途端、その奥から地鳴りを思わせる低く重い音が響いてきた。周囲にいた吸魂鬼は、本能的に何かの存在を感じたのか一斉に逃げるようにして姿を消した。

 

「ほっほっ、あいかわらずじゃな」

 

 しかし老人は恐れることなく笑ってせた。それを見た案内人は彼のことも化物を見るかのような目で見た。扉の奥にいる存在がどのような怪物であるかを知っている男にとって、同じく知っているはずのダンブルドアが笑っているのが正気の沙汰とは思えなかったのだろう。

 

「君はここまででかまわんよ。後はわし一人で十分じゃ」

 

「そ、そうですか? それではお言葉に甘えて私はこのへんで……」

 

 本来ならば、囚人と外の人間が面会する場合は誰かが一人は付き添うのが原則だ。だが、男にとっては原則を守るよりも早くこの場を立ち去るほうが自信のためになると判断したのだろう。助かったとばかりに職務を放棄して逃げるように立ち去った。

 彼を責めるのは酷というものだろう。この地鳴りのような音を聞いていると、自分が飢えた狼の前に差し出された羊のような気分になってくるのだ。生命の危険を感じさせる場所に平然としていられるこの老人の方がおかしいといえた。

 

「ルーモス・光よ」

 

 ダンブルドアは杖を取り出すと、小さく呪文を唱える。杖の先に灯った光が地下深くへと続く螺旋階段を照らし出した。その明かりを頼りに、彼は深い闇の底に封じられている者へと面会するため足を進めた。

 下に行けば行くほどに音は大きくなっていく。やがてその音の正体がわかるほどに鮮明になってきた。音量こそ現実離れしたものだが、生きているものであれば誰しもが耳にしたことがあるはずのもの。空腹を知らせる腹の虫の泣き声だ。

 50メートルほど階段を降り続けただろうか、地の底に収監されていたのは一人の男性であった。両手両足どころか、首までもが鉄製の拘束具で壁に固定されている。物理的に拘束されているだけでなく、魔法や呪いの類でも封じられているらしく、彼を中心に壁一面に魔方陣とその術式らしき文様が描きこまれていた。何年も切ることができないせいか、彼の黒い髪は伸び放題で足元までの長さをしている。地上まで届く大音量の空腹の音から解るとおり、満足な食事が与えられていないのか頬はこけており、全身が痩せ細っていた。

 

「なんだ、まぶしいと思ったら客人か?」

 

「……痩せたな、グラッド」

 

 名前を呼ばれた男は、その声が懐かしいものであることに気がつき顔を上げた。ダンブルドアの顔を見ると一瞬驚いた顔をするも、その表情は昔なじみの友人に出会ったかのように明るいものとなった。

 

「ダンブルドア、あんたダンブルドアか!……いやぁ懐かしいな、何年ぶりだ? 監守意外の人間が来たと思ったら思いもよらないやつが来たな!」

 

「13年ぶりじゃよ」

 

「へぇ、外じゃもうそんなに時間が経ってるのか……せいぜい100年くらいかと思ったぜ」

 

 皮肉ぶった調子でそうおどけてみせるグラッドに、ダンブルドアは呆れた顔をした。

 

「こんなところで長い間おったくせに、お前は相変わらずじゃのう」

 

「その“こんなところ”とやらにぶち込んだ張本人がいう台詞じゃねぇな、そりゃ。それに相変わらずなのはお互い様だろうよ」

 

「ふむ、そうじゃったな」

 

「ったく、13年も飲まず食わすじゃあ俺の腹も減るわけだ」

 

「お前さんが空腹なのはここに入る前から常にそうじゃったろうに……」

 

 この様子では、看守は誰もこの男に食事を与えていなかったようである。13年、何も口にしないで普通の人間が生きていられるわけが無い。まぁ、そもそも普通の人間がアズカバンの、それもこのような特殊な場所に収容されているはずもないのではあるが。

 

「で、俺に今更何の用だよ」

 

 別に世間話をしにきたわけではないのは明白である。今更この老人が男を殺しにきたとは思えない。殺すつもりであれば13年も放置せずにとっくの昔に殺しに来ている。普通の魔法使いの力ではとある理由からグラッドを殺すことは難しい。ならば殺す必要があるのなら、彼を捕まえた当人であるダンブルドアがするのが順当だろう。今までそれをしなかったということは、この老人はグラッドに何らかの用があってここに来たのである。

 

「お前さん、ここを出たくはないか?」

 

「はぁ? んなもん出たいに決まってんだろう?」

 

「ならば……わしと取引せんか?」

 

 ダンブルドアはグラッドの目を見ながら、先ほどまでのおどけた様子を止めて真剣な表情で語りだす。

 

「司法取引というやつじゃよ。お前さんにやってもらいたいことがあってのぉ」

 

「取引ねぇ」

 

「詳しいことはこの後話すが、要はお前さんに守ってもらいたい子供がおるんじゃ」

 

「俺に子守をしろってか?」

 

「悪い話ではないぞ? 取引を受けるのであればここを出られるし、職場は毎日三食食べ放題じゃ」

 

「のった」

 

 グラッドは即答した。取引内容の細かい説明を聞く前に、即断即決した。

 

「……わしが言うのもなんじゃが、もう少し説明を聞いてからとか思わんのか?」

 

「俺こそあんたに聞くけどな、13年も食事をしていない俺にとって食うこと以上に重要なことがあると本気で思ってるのか? 他でもないこの俺だぞ?」

 

「……そうじゃったな、お前さんはなによりも食欲を重視するやつじゃった」

 

 ふん、と鼻をならすと、グラッドは一息に拘束具を引きちぎった。痩せ細った腕のどこにそんな力があるのか不思議である。いや、よく見れば引きちぎられた拘束具はどれも何かに“喰われた”かのように一部が損壊していた。

 

「ほっ!? 自分で外せたのか?」

 

 この男に物理的な拘束だけでは意味がないことはダンブルドアもわかっていた。だからこその魔法術式を用いて二重に拘束していたというのに、グラッドは自分で術式が効果を発揮している状態で拘束を破壊してしまった。これにはさすがのダンブルドアも驚きの顔を見せた。

 

「本当ならあんたが寿命でくたばるまでここでおとなしくしてるつもりだったんだがな。殺しても死ななそうなあんただ。寿命を待ってたら何百年後になるかわかったもんじゃない」

 

 久々に動かす手足の稼動域を確認しながらなんてことないかのように話すその内容に、さすがの老魔法使いの頬にも一筋の汗を流した。

 

「契約内容は子供の護衛で、護衛中は三食用意してくれるんだな」

 

「契約じゃなく取引じゃよ。わしの監督のもと行動することを条件にここから出るという司法取引じゃ。お前さんにはこれからホグワーツで教師をしつつ学校内ではその子供を守っていて欲しい」

 

「あぁん?……なぁ、ダンブルドアの爺さんよぉ、俺に教師をやれってか? しかもこの俺にそんなことをさせて報酬がただ料理を提供するだけってなぁどうなんだ?」

 

「じゃがそういう司法取引となっておるからな」

 

「……取引じゃなく契約だ。これだけは譲れねぇ」

 

「……お前さん相手に契約は結びたくないんじゃがの……どうせそれ以上の代価を要求するんじゃろ?」

 

「当たり前だろうが……元は人間でも、今の俺は悪魔なんだからよ」

 

 そういうとグラッドは、悪魔のように口角を吊り上げて笑った。

 

「悪魔を利用しようとするなら契約は絶対だろうよ。そうだな、あんたが何を危惧しているかは知らんが命には命だ」

 

 乾いた唇を湿らせるように、舌なめずりをするグラッドの腹部から一際大きな空腹を知らせる音が鳴り響いた。それはまるで、ダンブルドアを迎えるための地獄の門が開いた音のようでもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「依頼が成功した暁には、ダンブルドア……あんたを喰うぞ」

 

 

 

 




主人公の簡易解説。
グラッドは暴食のグラトニーをもじってます。元魔法使いでダンブルドアの生徒だった。悪魔との儀式により自身が悪魔へと堕ちてしまい、人間を止めている。食欲魔人でなんでも食べる。それこそ生き物意外でもなんでも。常に空腹に襲われている。ヴォルデモートが赤子のハリーに敗れる前にダンブルドアにつかまり封印されていたので、この13年間のことも知らない。今の段階ではハリー?なにそれ旨いの?である。

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