浄罪の炎   作:ナレイアラ

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第9話

ドシャア

 

恋次は必死の叫びの後地面にうつぶせに倒れこんだ。血の量からみても死んでいるようにしか見えない。その姿を見ていた一護も後を追うように斬月を手放し倒れこんだ。

 

「一護さん!」「一護!」

 

すぐさま花太郎と岩鷲が駆け寄る。どうやら眠るか気絶しているようで彼らが話しかけても返事はない。

 

(マズい、出血もそうだが霊圧を消費しすぎている。このままじゃ一護さんも阿散井副隊長も―――)

 

「花太郎」

 

――――――――――――――――――一瞬、呼吸が止まった。

 

これは誰だ?

 

初石班長だ。

 

何を見られた?

 

旅禍の仲間の様な振る舞いだ。

 

逃げる?

 

重症の一護を担いで?無理だ。

 

「クソッ」

 

新手の出現に気付いた岩鷲は悪態をついて薫に向かって腰のものを構えた。だが、それに対する薫の反応はあっさりしたものだった。

 

「ああ、やめろやめろ」

 

迷惑そうに手をプラプラ振ってそういうと。一護に近づいて戸惑う岩鷲を押しのけ死にかけの二人の容体を見た。

 

「ふむ、この旅禍の子はまあこのままでも死にそうにないが阿散井副隊長はなぁ・・・いや、ふむ」

 

「は、初石班長。あ、あのこれは」

 

花太郎が焦ったような顔で何かを言おうとする。

 

「ああいや、何も言わんでいいぞ」「お前が人質になった時からつけてたから状況は把握している」

 

「ええ!?じゃ、じゃあなんであの時助けてくれなかったんですか?!」

 

「なんでってそりゃあお前、ねぇ?」

 

「いや俺に振られても」

 

いきなり話を振られた岩鷲は焦る。

 

「話を逸らさないでくださいよぅ!目を合わせてください目を、って何してるんですか?」

 

言いつつ一護を背負った薫に聞く。

 

「何ってお前逃げる準備だよ。さっきまであれほどの霊圧のぶつかり合いが起きてたんだ。当然誰かが見に来るだろうよ」

 

「ああ!?そうでした早く逃げないと――ってなんで班長も来る感じになってるんですか」

 

「なんだお前の上司なのか?花太郎」

 

「ええこちら僕の所属している四番隊特別補給班班長の初石薫さんです」

 

「おい自己紹介もいいがぼちぼち霊圧が三つ四つ近づいてきてる。ここはとっととトンズラこいた方が賢明だと思うがね」

 

だが、拒否の声が上がる。

 

「ダメだ!」

 

岩鷲が薫を指さして言う。

 

「いきなり現れてなんか仲間みたいに話してはいたが、お前みたいな得体のしれない奴のいうことなんて聞けるか!」

 

一護を背負っているのでいつもみたいに頭をかくことはできないがめんどくさそうな顔をして薫は言った。

 

「フー、、、とは言っても選択肢なんてそっちにはないと思うがね。それとも何か?このままここにいて今向かってきている奴らとも戦いかい?言っておくが、

そいつらはそこに転がってるのと違って旅禍を見つけたら連絡するなり応援を呼ぶなりすると思うぞ」

 

「クッ」

 

そういうと岩鷲は押し黙ってしまった。

 

「・・・答えは決まったようだな。よし、もう本当に時間がない。見つかる前に行くぞ!!」

 

「は、ハイ!!」

 

そういうと四人はその場を離れ、一先ず一護の治療ができそうなところを探すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、結局お前は誰なんだよ」

 

不機嫌そうな顔で岩鷲が聞く。ここは先ほど一護たちが通ってきた地下道。一護の治療のためにはおそらく見つかる心配がないとされるここが最適だろうと

判断された結果だ。壁にもたれかかる薫の前には岩鷲が胡坐をかいて座り二人から少し離れたところで花太郎が治癒霊力を使って一護の手当てをしている。

 

「お前は誰だ、ね」

 

「なんだよなんか文句でもあんのか」

 

岩鷲が憮然とした顔で言うと薫は片眉を上げて言った。

 

「いや何、それは本来こちらのセリフなんだが・・・と思ってね」

 

「お前!」「班長!」

 

岩鷲の怒りの声と花太郎の取りすがるような声が地下道に反響する。その言葉に薫は眠たげな目を向けて仕方ないといった風情で話し出す。

 

「・・・先ほども言った通りお前らが人質にしていたソイツの上司だ。名前は初石薫。四番隊特別補給班班長。あとは・・・好きな色でも教えようか?」

 

「・・・俺が聞きたいのはお前の素性なんかじゃねえ。わかってんだろ。なんでお前は俺たちに協力するようなことをするかってことだ」

 

(やっぱりその質問が来たか。まあどう考えても怪しさ満点だしなあ)

 

薫は渋面を作りかけ、根性で顔を元に戻すと答えた。

 

「俺とお前らは目的が一緒だからな」

 

「一護が現世で世話になったっていう死神の救出か」

 

「ああ」

 

「なるほどな、だが動機が薄い。お前とその極囚の関係は何だ?」

 

薫は古傷をえぐるような質問に軽く目を眇め、仄かに地下道の壁を照ら光を見つめ老人が昔話をするように語り出した。

 

「俺は、朽木ルキアの上司の親友だった」

 

「だったって言うのは・・・」

 

岩鷲が後に続くのがどんな言葉か想像てきてしまい言うのをためらっていると、薫がその後を続けた。

 

「ああ、死んだ」「虚に食われた自分の妻の後を追うようにあっさりとな」「あの時俺も一緒に行っていればなんて、そんなことをよく考える。

それでも、俺にはとめることができなかった」「愛するものを失って、その仇討ちに行こうとする親友の決意を踏みにじることなんて俺にはできなかった」

「ルキアは奴の一番お気に入りの部下でな、あいつと一緒に修行を見てやったこともあった」「だからまあ、何だ、あいつが大切にしていたものくらい俺も大切に

してやんなきゃなって思ってな。それにあいつがいたらこうするだろうって思ったんだ」

 

最後に薫が頬をかきながら話を締めると岩鷲はさっきまでとは少し違う真剣な顔をして薫の顔を見つめていた。どうかしたのかと薫が聞こうとするとその前に

岩鷲が薫に真剣な顔のまま話し始めていた。

 

「初石さん―――

   (〝さん〟てお前)

          ―――その親友の名前を教えてもらってもいいですか」

 

「・・・なぜそんなことを聞く?」

 

「俺の兄貴は死神に殺されました」

 

「!!」

 

薫は目を見開いた。

 

「今のあなたの親友の話が、俺の兄貴が死んだときの状況とすごく似てるんです」

 

薫は今度こそ真面目な顔になり岩鷲の顔を見つめた。そしてさっきから――一護たちを監視していた時から――感じた違和感の正体に気が付いた。

 

(よく見れば目元とか大雑把な性格そっくりだな・・・)

 

「あの・・・?」

 

「そうか、志波岩鷲。君は海燕の弟か」

 

「っ、やっぱりあなたが言っていた死んだ友人っていうのは」

 

「ああ、俺の親友の名前は志波海燕」「君の兄だ」

 

ガッ!!

 

その言葉を聞いた途端岩鷲はその目に怒りの色をたたえて薫の胸倉を掴んだ。

 

「どうしてだ!!どうして兄貴を止めなかった!!あんたさえ!!あんたさえ兄貴を止めていれば兄貴は死なずに済んだんだ!!!」

 

「・・・すまん」   

 

薫は後悔の念をたたえた瞳を岩鷲から下にそらして謝った。その言葉は岩鷲ではなく別の誰か、かつて死地に向かうことを止める事の出来なかった親友に向けた

ものにも見えた。

 

「っクソッ!もういい!」

 

そういうと岩鷲はどっかりと元の位置に戻り座り込んだ。その顔には疲れが浮かんでいた。

 

 

 

「ううっ」

 

しばらくすると花太郎の治療を受けていた一護からうめき声が聞こえてきた。

 

「そうだ花太郎その子は大丈夫そうか?」

 

先ほどまでのやり取りで薫は忘れていたが一護も瀕死の重傷を負っていたのだ。正直副隊長の斬魄刀を深くその身に受けるなど普通の死神にとっては即死しても

おかしくはない。

 

「すさまじい生命力です。普通なら即死ものの傷ですがこのままなら助かりそうです。あとは左肩から胴体までの傷が予想以上に浅かったのもよかったです」

 

ただ、と続けようとして言いよどむ花太郎に薫が先を促すとためらいながらも答えた。

 

「はい、その、傷が浅かった原因っていうのがこの仮面なんです」

 

「これは・・・」

 

「おいこれって確か」

 

花太郎が差し出した仮面を見た薫と岩鷲は驚いた顔した。

 

「虚の仮面・・・か?」

 

「解りません」「でも、この仮面が一護さんの懐にあったおかげで一護さんは助かりました」

 

「そうか・・・ふむ」

 

「おい、大丈夫なのかよ」

 

「解らん」

 

そういうと薫は黙ってしまった。

 

「おいこんどはこの人かよ。大丈夫なのか?」

 

「解りません。班長は考え事するときはいつもこうなんです」

 

そんな話を花太郎と岩鷲がしていると「よし!」と言っていきなり薫は立ち上がった。

 

「考えても答えが出ないから保留だ保留!」

 

そういうと薫は腕枕で寝始めた。わざわざ立ち上がった意味は謎である。そんな薫を指さして岩鷲は花太郎に言った。

 

「お前ん所の班長いつもこんな感じなのか?」

 

「ええ、大体こんな感じです」

 

「・・・苦労してるなお前も」

 

「いえ、特別補給班は班長いてこそのものといっても過言ではありませんし・・・」

 

それでも不満はあるような言い方である。

 

「はあ?どういうことだ?」

 

「ふつう四番隊は治癒霊力という傷の治療に使う霊力が使えます。といってもほとんどそれしかできないんですが」

 

「ほお」

 

「でも班長は違います。班長は他の隊の人同様治癒霊力は使えません」

 

「じゃ、ダメじゃねえか」

 

それは違いますと言い花太郎は指を立てて説明を続けた。

 

「僕たちは特別補給班、任務は補給です」

 

「なんだ?お前らの班長はすごく力持ちで一人で何人分もの荷物を持てるってことか?」

 

「アハハ、まあ大体あってます。班長の斬魄刀の能力名は夜笠。黒い羽織を取り出してそこにいろんなものを入れることができる能力です。僕もその容量の

限界を見たことはありませんが・・・・少なくとも五間立方もの資材を一度に運んだこともあります」

 

「・・・それは、すごいのかすごくないのかよく分かんない能力だな。戦いには全く向かないし」

 

「それは言っちゃだめですよ」

 

そうした下らない駄弁りは一護が目を覚ますまで続いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 


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