空が紅に染まる。あれほどまぶしかった太陽も、もう直視に耐えるほどに光を失っている。旅禍達がやってきたのが昼過ぎだったことを考えるとそれなりの時間が
経過したことが分かる。薫はいつの間にか姿を消していた花太郎、及び一護たちを追って懴罪宮に向かって走り出していた。正直あまりいい予感はしない。先ほど
から懴罪宮の近くで一護ともう一人感じた事のある霊圧、六番隊副隊長の霊圧がぶつかっているのを感じた。
(あ~あ~、副隊長だと?無理だ。おそらく更木隊の三席を倒したのは奴だろう。しかしいかに奴が強くても実質副隊長レベルの奴との連戦なんて無理に決まってる。
ルキアを助けるどころじゃねぇぞ。ホントどうしようかねぇ)
薫がさらにスピードを上げようとしたとこで先ほどから続いていた破壊音が止んだ。だが、戦闘が終わったわけでは無い。なにせ、進行方向から感じる一護の霊圧が
信じられないほど高まるのが伝わってきたのだから。
(これはマズいな)
さらに急ごうと足を踏み出した薫は次の瞬間、今までの破壊音が児戯に等しいものと思わされるような耳が痛くなるほどの破壊音と巨大な霊圧を感じた。
ズォッ
ゴッッガァァァ!!!!
「なん・・・」
何なんだ。と叫ぼうとしたところで一護と相対していた副隊長の霊圧が小さくなっていることに気が付く。先ほどまでの十分の一以下、有体に言うと虫の息だ。
そのことを感じ取った薫はさらに急ぎ懴罪宮に向かった。程なくして薫は懴罪宮前の広場についた。
ガッギィィィィン!!
手にした斬月が恋次の蛇のようにのたくる斬魄刀をはじく。恋次の斬魄刀の名は蛇尾丸。剣に垂直な鉤爪の様なものがいくつもついていてその数だけ剣が分離する
変幻自在の蛇腹剣だ。限定解除されているため、以前現世であった時の五倍の霊圧を持つ恋次は確かに前よりも遥かに強かった。しかし斬魄刀の力を開放し
浦原との戦闘経験を得た一護はそれなりに恋次の剣戟に耐えているようだった。勿論押されている事には変わらない。だが―――
(見えた!!三回だ!)
一護は攻められながらも恋次の剣を観察していた。以前浦原と戦った時に教えられていたのだ。
(そう、どんな攻撃にも回数制限がある)
ガギィィィィン!!
恋次がまっすぐ突きの形で伸ばしてきた蛇尾丸を斬月の切り上げで上に弾きあげる。
(重要なのは攻撃の最大回数)
上に持ち上がった蛇尾丸の下をかいくぐるように一直線に恋次目掛けて駆け抜ける。
「チィ」
ゴァァ!
恋次は上に弾きあげられた蛇尾丸をそのまま一護目掛けて振り下ろす。
(戦いが切羽詰れば相手はその最大回数でしか攻撃してこなくなる)
「オォ!!」
半歩左によけた一護はまだよけ足りない分を左から右に斬月で切り払い蛇尾丸の軌道をそらす。
「グッ、オラァ!!」
さらに間合いを詰めてくる一護に恋次は自分の前方半径二十メートルにも及ぶ薙ぎ払いを行った。
(その連続攻撃の間の隙を―――)
「ラアアアァ!!!」
右から迫ってくる蛇尾丸を姿勢を低くし背中に寝かせた斬月の刃で無理やり受け流すと同時に一気に間合いを詰める。
「クソッ」
恋次は悪態をつきつつ蛇尾丸を一旦元の長さに戻す。もう一護が来るまでに伸ばすことはできない。
(突く!!!)
「終わりだ!!!恋次!!!」
恋次の攻撃の隙を完全についた一護は渾身の振り下ろしを恋次に見舞った。
ゴガァァァ!!!
そう、完全に隙をついたのだ。避けられる筈がないのだが―――
「―――え?」
ザグッ
ブシャアア
あっさりと横に飛びのいて、一護の起死回生の一手を避けた恋次は逆に一護の体を左肩から胴体の中心まで一気に深く切りつけた。
「言ったろ」「お前は万に一つも俺には勝てねぇ」
一護は切り付けられたダメージで立つこともできず両膝をついた。
(躱された・・・なんで・・?)
「どうして躱されたか解んねぇってツラしてんな」
そんな一護を見下ろして恋次は語り出す。まるで一護の狙いが端から分かっていたかのように。
「連撃の隙を突くってのはいい。タイミングも完璧。なのになぜてめぇは俺を倒せなかったか・・・」
そして恋次は決めつけるように宣言する。
「答えは一つ。お前が俺より遅ぇからだ」
一護の目が見開く。
「俺とお前の埋めようのない力の差・・・・ただそれだけだ」
「解ったか」「てめぇにルキアは救えねぇ」
そういうと恋次はとどめを刺すために蛇尾丸を振り上げ―――
無情にもその断頭台は振り下ろされた。
まあアレです。主人公の戦闘描写の前に少し練習しておこうかなーなんて・・・