俺の嫁?黒ずくめの二刀流剣士の子ですけどなにか?   作:シャラシャラン

7 / 10
第七話 お花をつみに(意味深、じゃなくてマジで)

 

 

 

 

「どけぇえええ!!」

 

槍を振るいでっかい花を斬る。

 

 

 

「カゼキ頑張って!」

 

 

 

「おっしゃああああああ!!やる気が湧いてきたぁあああああああああああ!!!!」

 

 

 

「もうやだこの人……」

 

 

 

 

キリナに励まされ心底やる気がでてきた。

次々と迫ってくるモンスター達をちぎっては投げ、ちぎっては投げている。

俺にかかればこんなおぞましい植物なんて雑草である。

 

「俺に触れるな、この草が!」

 

槍で触手を斬り落とし大きな花に槍を挿す。

俺様最強!

なんだか後ろでシリカがあきれた顔でこっちを見ているが、気にしない。

触手による嬉し、恥ずかしイベントなんてありませんよ。

俺の嫁にそんなことさせません。

もしもやってみろ、お前等を生きたまま万力に掛けてやる。

 

「だいたいクリアかな」

「お疲れ様」

「すごいですね……どうしてそんなに強いんですか?」

 

「レベル上げマスターなめんなよ!!」

「さすが籠っているだけあるわね」

 

こんな下層のモンスターに手こずってられるか。

攻略組リーダーたる者、これぐらいできなくてどうしますか?

 

「それじゃああの丘目指そうか!」

「「おー!」」

 

 

走れ!あの丘まで!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんてしていたら本当にすぐ到着してしまいました。

 

「モンスター少なくね?」

「そうだね」

 

俺とキリナはシリカの隣を歩きながら言う。

先ほど言った通りモンスターが少ないのだ。

誰かここら一帯のモブ狩りでもしているのかな?

でもここのモンスターにレアドロップはなかったと思うし、倒す理由もないと思うのだけど。どうであれモンスターガ少ないのはありがたいことである。

 

「もうすぐだな」

 

「待っていてね、ピナ」

 

シリカは静かに呟く。

本当に大事にしていたんだな。

やはり相方は大事な存在である。俺にとってキリナは失いたくない存在である。もし目の前から彼女が消えてしまったら俺は発狂するだろう。そういえばキリナは俺の事をどう思っているんだろう?うざいとか思われていない事を祈ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

私の隣でシリカがピナの事を呟いている。

 

仲間、相方、相坊、パートナー、そういった存在はこの世界では大きい。ボス攻略戦では明らかに団体戦だし、その中でお互い背中を預けられる仲間というのは心強い。

私はこの世界にカゼキがいてくれて嬉しいと思う。もし彼がいなかったら私はここまで強くなっていなかったと思うし、それ以前にここまでやっていけたかどうか……。なにより女性一人でこの世界を歩いていて行くのは少々つらい。長い事この世界にいるがまだ知り合いの女性なんて指で数えられるぐらいしかいない。アスナに彼女の知り合いリズベット、サチ、それにあとは誰がいるだろう?よく考えたらそこまでいない。それよりアスナはいいとして、リズとサチは強敵である。彼女達はカゼキに惚れている。うん、さすが私の相方。いやそれどころではない。先に抜け駆けされたらどうしよう。あきらかに一緒にいる時間は私のほうが大きいが、それが仇となっている可能性がる。もし彼が私の事を異性ではなく、戦いのベストパートナーとか、親友とか思われていたらどうしよう!?いや、それはそれでいい、愛想つかされるより断然いい。なんとかして私を意識させるようにしなくちゃ。なんとかして彼を……カゼキは、私の、ものなんだ。誰にも渡さない。

 

「キリナさん?」

「ほぇ?」

 

顔を上げシリカの方を見る。

 

「すごい顔していましたよ?」

「え?そ、そう?」

 

無理やり笑う。

どうやらまた一人で百面相していたらしい。

 

そして二人はお互いに似たような事を考えていた事なんて、まったく知らないのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、あれだな」

 

俺はマップを閉じ先にある円柱型の岩を見る。

あそこに使い魔蘇生アイテムが出現するらしい。

 

「でも何もありませんよ?」

「うん、もうすぐ出てくるよ」

 

キリナがそう言いもう一度岩に視線を落とす。

すると岩に切れ目からゆっくりと茎が伸び、花が咲いた。

現実だと目が飛び出るがゲームの中なので問題なし。

 

「ほらそれを取って」

 

俺はシリカにその花を採取するように促す。

シリカは言われた通りにそのアイテムを取りアイテム欄で確認する。

 

「ここで蘇生してもいいんだけど、モンスターがくると厄介だから一度町に戻ろうか?」

「はい!わかりました!」

 

シリカは嬉しそうにする。

もうすこしで彼女の使い魔が戻ってくるのだ。それは嬉しいだろう。

 

俺はメールを開くキリナと軽くメールのやりとりをする。

 

『後ろ、反応アリ』

『了解。警戒する』

『攻撃されたら反撃な。おk?』

『おk』

 

すぐにメールを閉じる。

どうやらお目当ての物は釣れたらしい。

それじゃあ戦いやすい所に移動しますかね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やったな!シリカちゃん!これで家族が増えるよ!」

「おいやめろ」

 

キリナがシリカの頭をなでながら言う。

なでられている本人は嬉しそうにしている。

なによりネタを知っていなくて嬉しい。

実際死んでしまった使い魔が復活できるのだから嬉しいだろう。

 

そして俺はお目当てのものが釣れて嬉しいよ。

 

「ほらずっと出待ちしている奴ら出てこいよ。いいかげん飽きてきた」

 

俺は橋の向こう側にいる奴らに声をかける。

すぐに草が動き六人プレイヤーが出てくる。

シリカがおどろいてる、どうやらあの中に顔見知りがいるそうだ。

 

「やっと見つけたよ」

「ちょっと時間かかったね」

 

俺は頭を掻き、キリナとこれまでのことを思い出す。

 

「お前らの悪事もここまでだ」

「あら私達の事を知っているの?」

「もちろん、ロザリアさん?」

 

俺は槍を抜き、キリナにシリカを守るように言っておく。

この人数くらいだったら楽勝だろう。

 

「とある奴の頼み事でな。簡潔に説明するぞ。お前が潰したギルドのリーダーからだ。お前らを牢屋にぶち込んでくれって頼まれたんだよ」

「は!なんだそんなくだらない事ね。あんたらだけでこの人数を相手できると思っているのかい?」

「楽勝」

 

ゆっくりと近づいていく。

一番近くに立っていた短剣使いが飛び込んでくる。

俺はその攻撃を盾で弾く、俗に言う盾パリィである。敵の短剣使いの腹に拳を入れる。すぐにそいつはうずくまる。次の奴がまた来たが同じような事をする。

 

「弱いよ。お前らじゃ俺やキリナには勝てないよ?」

「キリナだと?それに赤い服に、槍?」

「や、やべぇよコイツ!あの攻略組リーダーと奴の相坊だ!」

「最強夫婦だ!」

 

またその名前か。

いつからその名前がついたか知らないがまだ結婚していないんだぞ。

何故かこの名前がついた時キリナはものすごく嬉しそうにしていたな。そんなに夫婦と呼ばれるのが嬉しいのか?

 

「正解だよ。俺がカゼキで後ろの子がキリナだ」

「えへへへ。キリナです」

 

すげぇデレデレしている。

喜びすぎだろ。

 

 「とりあえず依頼人からはお前らを牢屋に入れるように言われているわけだ。どうする?俺とお前等の実力差は歴然だ。このままかかってくるのもいいが、怪我するのはお前らだ。俺は依頼人から回路結晶をもらっている。この先は牢屋に繋がっている」

 

俺はアイテム欄から回路結晶を出す。

これはレアアイテムでお店では売っていない超貴重品である。お金で買うとかなりの大金が必要になる。ちなみに依頼人は全財産を使ってこれを買ったらしい。

俺は回路結晶を砕く。

 

「さぁ入れ」

「も、もし断ったら?」

「お前等のケツに槍でもぶっさしてでも入れてやる」

「アッ――――――!!」

 

キリナが後ろで何か叫びネタに走ったが気にしない。

気にしたら負けである。それより何故その動画を知っているんだ?

 

「ほらほらさっさと動け」

 

俺槍で地面を叩いて入るように催促する。

すると意外にもあきらめはいいようで、ぶつぶつ言いながらも皆入って行った。

意外とすんなりと入ってくれた。

最後の女性―――名前は忘れた―――その人は最後に残ったが蹴り飛ばして無理やり入れた。

ちょっと強引な方法だったが、万事オッケー。無事依頼終了。

 

「あ、あの」

 

シリカが何か言いたげな目をしている。

大方「私を利用したのね!」みたいな言葉だと思う。

 

「別に怒ってくれてもいいよ。悪いのは俺たちだしな」

「うん、そうだね。ごめんね、囮みたいに使っちゃってね」

「い、いや。違うんです」

「「え?」」

 

俺は顔を見合わせ驚く。

 

「あ、足が動かないんです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その拍子抜けした発言によりシリアスブレイクした後、俺はシリカを背負って街へと戻った。キリナよ、そんな目で見るな。俺はお前一筋だ。でもそんな言葉を口に出せないでいる。現在やたらとひっついてくるシリカを背負ってい歩いている。

 

「ほら付いたぞ。下りろ、ってか下りてください」

「え~?」

「え~?じゃないぞ。ほら早く」

「嫌です!もうちょっとだけ―――――」

「シリカチャン、モウ、オリヨウカ?」

「ごめんなさい」

 

シリカがいきなり俺の背中から飛び降り綺麗な土下座をキリナに向けて披露した。

いきなりどうしたのかと驚く。キリナは「いいよいよ、別にそんなことしなくても」と言うが土下座をしているシリカはガタガタ震えている。

俺なにかしたか?

 

「とりあえず最後ぐらいちゃんとしようぜ」

「サヨナラハ、チャント言ワナクチャネ?」

「キリナ怖いからやめろ。そして戻って来い」

 

俺はキリナの高等部を軽くチョップする。

いてっと言ったあと目にハイライトが戻った。

なんだか言い表せない恐怖があった。

 

「俺らはもう最前線に戻るか」

「うん。しばらくディアベルの所にも顔を出していないしね。きっとまた何か言われるよ」

「やっぱり攻略組だったんですね」

 

シリカは納得したような顔をする。

そういえばまだ言ってなかったな。

 

「それじゃあ使い魔大切にしろよ」

「はいっ!!」

「じゃあね。シリカちゃん。……もし、もしも彼にちょっかい出したらね、その時はぁ、ね?」

「は、はいっ!!」

 

最後の返答のとき声が震えていたぞ?

俺はシリカに手を振り、キリナと一緒に並んで歩き始めた。

また明日からレベリングとマッピング作業だな。恐らく一週間以内には次の層には進めるだろう。最近なんだかペースが上がっているような。それは喜ばしいことだな。

 

「じゃあ戻ろっか?」

「了解っと」

 

俺はキリナの手を取り、今の最前線の街の名を言う。

まだ現実に帰るのには時間がかかりそうだ。

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。