広瀬"孝"一<エコーズ>   作:ヴァン

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やっとバトルがおわった・・・
正直こんなに神経を使うとは思いませんでした・・・


決着

激戦が繰り広げられていた。

 

「うおぉぉおおぉぉぉぉ!」

孝一が吼える。

「エコォーズ!!」

そして複数の文字の付いた拳を"R"めがけて繰り出す。

 

「ハッ!」

それを"R"は難なく交わす。

このパターンは、まるであの夜の再現である。

だが、

大音量のスピーカーノイズ!

ジェット機の轟音!

ダンプカーのパッシング!!

それら全てがエコーズのリミッター解除により、音の凶器として

"R"と孝一に襲い掛かる!!

 

「クァァァァァッ!?」

「ウグウッ!」

 

窓ガラスが割れ、電灯が破壊される。そして

 

ピシッピシッ

 

コンクリートの壁にひびが入り始める。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

孝一達のいるフロアが大きく揺れる。

それだけ、エコーズの繰り出す音の破壊力はすさまじかった。

 

「コ・・コイツ、自身もダメージを受けているのに、ぜんぜん怯まネェ!!

イクラ殴っても!叩きのめしても!倒れネェ!!

もしかして、俺はとんだ思い違いをしていたのか?」

 

 

孝一には何が何でも自分を倒すという、意思のような物が感じられる。

その為には自身を犠牲にしてもいいほどの。

 

普段のエコーズの能力にはリミッターがかかっている。

それは孝一自身のなるべく他人を傷つけたくないという願望の為である。

それを今回は解除した。そして覚悟を決めた。

例え相打ちとなっても、"R"を倒すと。

 

(ヤバイ!この攻撃はヤバイ!どんなに攻撃をかわしても、ダメージが来る!

今はよけられているが、こんな音量を体のどこかにつけられたら!!)

 

「クソガァ!!」

 

ドゴォ!

 

エコーズを捕らえた"R"がパンチを繰り出す。

それをまともに受けてしまうエコーズ。

 

 

「グゥッ!」

 

当然それは孝一にもフィードバックされ、孝一が顔面から鼻血が噴出す。

 

しかし

 

ドシュウ!

 

それでもエコーズは拳を繰り出すのをやめない。

 

とたんに大音量の衝撃が二人を襲う!

 

「ギィアァァァァァ!!!」

とうとう音の攻撃にこらえきれなくなり、Rは絶叫する。

 

もし学園都市中の電気を味方につけていた状態の"R"だったのなら、

広瀬孝一を瞬殺するのは容易い事だったろう。

いかに大音量のエコーズの攻撃とはいえ、高速で移動できるRなら、

攻撃を繰り出す前に、本体である孝一自身を殺害するなど朝飯前である。

 

しかし、いまの"R"にはそれが出来ない。

いまのRに与えられているのは、停電時にエレベーターなどを動かす

必要最小限の電力のみである。それもあと十分ほどでなくなってしまう。

 

かつてのパワーは鳴りを潜め、全盛期の十分の一程度しかその力を発揮できない。

いくら攻撃しても孝一が倒れないのは、それだけ"R"のパワーが落ちているということなのだ。

 

 

"R"は戦慄する。

(俺は選択を誤った。こいつだった!先に殺しておくべきだったのは

御坂美琴じゃなくてコイツだった!!)

 

もう時間がない、まもなくビルの電源が切れる。そうしたらオレは、死ぬ!

 

孝一がなおも音による攻撃を繰り出そうとすると・・・

 

「ま、まて・・・まってくれ・・・」

 

孝一の後ろの方から声がする。

 

「わっ悪かった。俺が間違っていた・・・もう悪さはしネェ・・

ちゃんとアンチスキルに自首もする。だから、命だけは助けてくれ・・・」

 

その人物の名前は音石アキラ。怪人"R"を操作していた犯人である。

 

「・・・音石、アキラさんですね?」

 

孝一がそう尋ねる。

立っているのもやっとなのだろう。

その声はハァハァと息切れを起こし、苦しそうだ。

 

「ああ、俺が音石だ。正直、降参だ。お前達の勝ちだ。

もうこれ以上、戦闘はしたくネェ!頼むから、自首させてくれ!」

 

そう、孝一に対して懇願する音石。

その姿は髪が乱れ、顔から汗が噴出し、実年齢より遥かに老けて見えた。

 

孝一は音石を凝視する。本当に投降の意思があるのか疑っているのだ。

もちろんエコーズで"R"の監視も怠らない。

しばらくにらみ合いが続いたが・・・

攻撃する意思がないと判断したのだろう。耳に装備しているインカムで

誰かを呼び出している。

 

一瞬、孝一の視線が、音石から外れる。それがいけなかった---

 

ゴッ!

 

すさまじい音がして、孝一が転倒する。

 

Rが何かを飛ばしたのだ!

その正体は、いつの間にか隠し持っていたナット。

それをレールガンの要領で、孝一の後頭部めがけて飛ばしたのだ。

 

「オラァ!」

 

間髪いれずに音石が孝一の腹部めがけ、ケリを入れる。

 

「グヘェ!」

「よぉぅし、戻って来いチリペッパー。オレの体内に、早く!」

 

そういって"R"、いや『チリペッパー』と呼ばれたそれを体内に戻す。

 

「ふぅ~。危なかったぜぇ~。正直、死ぬかと思った・・・

だがよぉ~。コーイチくぅん。人を簡単に信じちゃいけないなぁ~。」

 

そういって音石はいやらしく笑う。

 

「ぁ?・・・・うぅ・・」

 

対する孝一は意識が朦朧として動くことが出来ない。

 

「だまされるほうが悪いんだぜぇ~世の中はヨォ。・・・とりあえず、

このまま人質になってもらうぜ!」

 

そういってポケットからナイフを取り出す音石。

 

「御坂美琴はまだこのビルにいるはず!

お前の叫び声を聞いたら、あいつはきっと飛び出してくる。

そのときに『チリペッパー』であいつを殺る!」

 

音石の顔が狂気に歪む。

そしてうずくまる孝一に目をやる。

 

「その後はお前を殺して、とりあえずしばらく潜伏する。ほとぼりが冷めるまでな~!

だがヨォ・・・カリは返さなきゃなぁ~!

このオレ様に、こんなにも傷つけたんだ。俺の美しい髪、顔、指・・・!

指はギタリストの命なんだぜぇ?それをこんなにしやがってよぉ!」

 

しゃべっていて腹が立ってきたのか、音石は孝一の腹部を何度も何度も蹴る。

そしてガシッと、孝一の頭に右足を乗せ、思いきり体重を乗せる。

 

「ぐあぁぁぁぁぁぁ!」

 

「痛いか!?だがオレ様の痛みはこんなもんじゃネェ・・・こんなもんじゃオレ様の

心は癒せネェ!」

 

そしてピタッっと、その足を止め、孝一にこう宣言する。

 

「だからお前が一番悔しがることを、することにした。

あの時ジャッジメント支部にいた、あのアマ。

お前のダチかスケなんだろ?あいつを攫う。」

 

ドクン

 

(・・・なんだって?なんていった?お前・・・)

 

「そしてお前の死体と対面させて、目の前で可愛がってやる。

その時の、泣き叫ぶ声を想像するとヨォ~!

いまからゾクゾクするぜ~!」

 

ドクンッ ドクンッ ドクンッ

 

怒りに感情が支配される。

 

(・・・佐天さんを、どうするって?

・・・許さない・・そんなことは許せない!

いや、許しておくものか!!

ふざけるな!

佐天さんには、指一本触れさせやしない!)

 

 

ドクンッ!!

 

・・・何かが生まれる。自分の中の激しい感情が、エコーズに伝わっていく。

それを養分とするかのように、エコーズが成長していくのが、分かる。

 

パリッパリッ

 

エコーズの背中に亀裂が入る。

その様子は、さなぎから孵る、蝶のよう。

そしてついに、その殻を破る!

 

「・・・るさない・・・」

「?なんか言ったか?」

 

頭に乗っている音石の足を、孝一が掴む。そしてギラリと音石を睨む。

 

「ゆるさない・・・佐天さんに・・・僕の友達に手を出すことは許さない!」

「許さなきゃどうすんだぁ!?今のテメェに、なにが・・」

 

そういって、手にしたナイフを孝一に突きつけようとするが、その手が止まる。

 

「なにが・・なにっ・・・ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

そう絶叫し、ナイフを落とす音石。見るとその右手はまるでやけどを負ったように

赤くただれている。

そして落としたナイフにはある文字が刻まれている。

 

『ドジュゥゥゥゥゥ』

 

その文字がナイフから浮かび上がり、グニグニと変形していく。

そしてそれを、エコーズから孵った"物体"が尻尾に戻し、装着する。

その容姿は昆虫や幼虫を連想させたエコーズが、文字通り成長したようなフォルムをしている。

体からはエコーズの時にはなかった足が生え、より人間のような形体となっていた。

 

孝一には分かる。こいつの能力が、使い方が!

 

「てめぇが!てめえがやったのか!?なんなんだ!?おまえ!お前の、この能力は!?」

 

明らかに、自分の知っている広瀬孝一の能力ではない。

その事が音石を軽いパニックに陥らせる。

 

ゆっくりと、孝一はその体を起こし、立ち上がる。

頭からは血を流し、体中からは激痛が走る。

体力も、もう限界に近い。

しかしそれでも、孝一は音石と対峙する。

その瞳を怒りに染めて。

 

「来いよ・・音石アキラ・・・『チリペッパー』だっけ?お前の能力の名前・・・

そいつを出してみろ。」

 

ジリジリとその距離を狭め、孝一が近づく。

 

(冗談じゃない!こんなわけの判らない能力を持ったヤツと、これ以上戦えるか!

逃げるんだ!・・・あの傷だ、きっと、コイツは追ってこれない!)

 

そう思い、音石が逃亡を図ろうとしたその時!

 

「広瀬君!大丈夫!?」

 

御坂美琴と白井黒子が孝一たちの目の前に現れた。

 

 

(・・・御坂美琴、だと・・・)

 

音石はある事を思いついた。

(これが成功すれば、ここにいるやつらを皆殺しにすることが出来る。

『チリペッパー』に残されているわずかな電力。コイツを今、全て集中させる。狙いは---)

 

突如、音石が走り出す!

その先にいるのは、御坂美琴。

 

(御坂美琴!お前はレベルファイブの電撃使い(エレクトロマスター)だ!

その体内には、莫大な電気が溜め込まれている!そいつを全て貰う!

一瞬だ!チリペッパーが一瞬でもテメェの体に触れることが出来たなら、

それでお前の体から電気を抜き取れる!!)

 

音石の体内から『チリペッパー』がその姿を現す!

 

 

・・・孝一は冷静だった。冷静に美琴に向かう音石を凝視する。

 

(逃げられない、お前はエコーズの射程圏内の中だ!)

 

そして耳に装備したインカムで美琴にある事を告げる

 

 

「おねえさま!」

 

敵の不穏な行動を察知し、白井が美琴の手を掴もうとする。

安全圏内までテレポートするためだ。

しかしそれを美琴は手で制す。

相手は凶暴な表情を浮かべ、美琴になおも接近する。その距離約五メートル!

だがそれでも、御坂美琴は動かない!

 

「もらったぁ~!!」

 

『チリペッパー』は自分の勝利を確信した。

 

 

(・・・新しいエコーズ・・エコーズACT2の能力、それは貼り付けた擬音に触れた

物や物体に、その擬音と同じ効果を体験させる!)

 

『チリペッパー』の手が美琴の体に触れる、その瞬間。

『チリペッパー』は見てしまった。

美琴の隣にいるエコーズを・・・

そして、美琴の服に張り付いている、ある擬音を。

だが、もう腕を止める事が出来ない!!

 

そして『チリペッパー』が美琴に触れた瞬間・・・

 

ドッグォォオオオオオオオオオン!!!

 

発生した爆発の衝撃で、『チリペッパー』は吹き飛ばされた。

 

 

孝一は美琴にこう話していたのだ。

 

『僕を信じてその場を動かないでください』と。

 

 

こうして広瀬孝一と音石アキラの戦いは、音石アキラの敗北で幕を閉じた・・・

 

 




ついに音石アキラとの戦いが決着です。
彼の名前がアキラなのは、やはりパラレルワールドであるがゆえです。
正直、ここに話しを持ってくるまで、かなりきつかった・・・
これを毎週のように投稿している方たちはホントすごいです。



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