真・恋姫†無双 仲帝国の挑戦 〜漢の名門劉家当主の三国時代〜 作:ヨシフおじさん
宛城を目前に撤退した黄巾軍と袁術軍は、しばらくの間小康状態を保っていた。だが、中華各地で黄巾軍が次々に領主の城を落とし始めると、再び南陽でも黄巾軍の動きが活性化し始めた。
これに対し、辛うじて南陽への攻撃を防ぐことに成功した劉勲は、軍の再編成を終えると同時に再び黄巾賊の討伐に向かう。
当初こそ袁術軍は数に任せてバラバラに突撃を繰り返すだけという無策無能ぶりをさらけ出し、大損害を被っていたものの、戦いが長引くにつれて状況が好転し始める。
地力に勝る袁術軍はカネに物を言わせて戦力を増強し、数と装備に依存することで強引に押し切っていった。当初、黄巾軍総数8万に対して袁術軍は5万という戦力比であったが、今では黄巾軍7万に対して袁術軍6万と戦力比は縮みつつある。
更に、黄巾軍に協力にした農家を焼き払い、強制収容所に入れるという強硬手段にも訴えた。
これだけならば、むしろ黄巾軍に参加する農民が増えそうな気がするが、劉勲は密告を奨励することで民衆が黄巾軍に協力するのを防いだ。誰が味方なのか敵なのかも分からない状況に置かれれば、自然と反体制運動は下火にならざるを得ない。
結果、黄巾軍は民衆の協力を得ることができず、補給線に問題を抱え始めたため、自軍が有利な状況になったことを確信した袁術軍は満を期して掃討作戦を開始したのだ。
袁術軍司令部・会議室
「今こそ全面攻勢に出るべきよ。これで連中にトドメを刺してこの戦いを終わらせるの。」
そう主張するのは劉勲だ。前回の反省も踏まえて、今回は部隊移動によって混乱が生じないよう、無理のない編成に変更している。しかも捕虜から得た情報によれば既に敵の装備・食糧は大幅に消耗しているという。ならば一刻も早くこの戦いを終わらせるべき、というのが彼女の主張だった。
「そうですね。一気にガツンと一発かまして終わらせちゃいましょう。」
それに続くのは張勲だ。何人かの将校もそれに同意して頷いた。なにせ、彼我の兵力差は伯仲している。装備もこちらが上回っている。地図の上には、山岳部へと追い詰められつつある黄巾軍と、それを包囲中の袁術軍が印されていた。総力を挙げて攻撃すれば、山岳地帯に追いつめられた敵軍を殲滅できるはず。
しかし、それに真正面から反対する者がいた。袁家の客将として参加してた周瑜である。
元々孫家が参加する予定はなかったものの、あまりの損害の多さに苛立った袁術の命令によって途中参加が決定されたのだ。袁術軍に吸収されなかった数少ない孫家将兵をこれ以上失う訳にも行かない以上、周瑜が慎重論を述べるのは当然の帰結だった。
「私は反対です。敵が立て籠もっている場所は山岳地帯であり、抵抗は頑強でしょう。即攻撃したところで被害が増えるだけです。」
「これはこれは……孫呉の軍師殿はなんとも慎重なことで。」
その場にいた袁術軍の軍師の一人が、口の端を歪ませて皮肉を言う。
「……そういう勇敢な袁家の軍師殿はお変わり無いようで。この乱が始まった時と同じくお気楽そうで何よりです。」
相手が農民上がりの賊にも拘らず、袁術軍が緒戦で大損害を被ったことは既に周知の事実だ。士官の何人かが表情を引きつらせるが、周瑜は眉一つ動かすことなく自論を展開する。
「山岳地では動きが大幅に制限されます。敵が正面からの攻撃を忌避して不正規戦闘を仕掛けてきた場合、鈍重な我が軍は格好の的になるだけです。」
袁術軍は豊富な資金力から装備は充実しているものの、山岳地帯ではむしろそれが仇になる可能性を周瑜は指摘した。
重装備の兵士では狭い山道を通らざるを得ず、自然とその進行ルートは限られる。さらにベテラン将校が失脚したおかげで指揮官が不足しており、袁術軍一般兵の錬度の低さと相まって、一度混乱すれば簡単に軍が崩壊する。
士気の低下も深刻だ。劉勲は数で勝る黄巾軍に対して、袁術軍も新たに街でゴロツキを傭兵として雇い、農民を強制徴募して無理やり頭数を揃えることで対処した。そんな彼らの士気が高いわけがない。
しかも袁術軍兵士と孫家の兵士、ゴロツキの傭兵と強制徴募された農民からなる兵士という4つの錬度が異なる軍をごちゃまぜにしているため、錬度の差から部隊間の連携が全く取れておらず、奇襲を受ければ瞬く間に烏合の衆と化すだろう。
ただでさえ袁術軍はサボりやズル休みが多く、錬度は他の諸侯に比べれば話にならない粗悪なレベルだったのだ。それに指揮官不足や連携の不一致、地の利まで奪われて勝てるわけがない。
そのことを指摘した上で、周瑜は持久戦に持ち込むことを提唱した。黄巾軍7万は山岳地帯に逃げ込んだものの、それだけの大軍を支えるだけの兵站は無い。
「ですから、我らが敵を包囲した状態を維持し続ければ、敵は自ずと自壊するでしょう。」
派手さは無いが、堅実で確実な戦術。確かにこれならば袁術軍は無理をすることなく、待っているだけで勝利できるだろう。しかし、その意見に劉勲は首を横に振った。
「却下よ。そんなことしたら兵站が持たないし。悠長に包囲なんかしてるヒマないの。」
黄巾軍もそうだが、袁術軍とて大軍を支えるのは大変なのだ。食糧もそうだが、武器も同じく消耗品である。弓矢は言うに及ばず、槍は折れるし、鎧も壊れる。それに加えて6万もの兵士への給料も払わなくてはならないのだ。袁家とて無限に金を生み出せるわけでは無い。長期戦になって出費が嵩めば、責任追及は免れないであろう。
付け加えると「用途不明の
しかも、そこら辺の農民を強制徴募したために戦いが長引けば士気は一層低下する上、農作業にも影響が出ることが予想された。例え勝ったとしてもこれでは失うものが多すぎる、というのが劉勲の意見だった。
純粋な理論として見れば、劉勲の意見もあながち間違いとは言えない。だが周瑜はどうしても素直に認めることが出来なかった。
(そもそも誰のせいでこうなったと思っているのだ。自分の出世のために経験豊富な将校を失脚させて大敗北し、挙句の果てに敵にワイロを送って首の皮一枚で危機を脱出。場当たり的に強制徴募で数を揃えたはいいが、長期戦になれば無理な出費と徴兵が嵩んで自身の無能を周囲に曝け出すことになる。自業自得ではないか。)
周瑜は冷やかな目線で劉勲を見つめる。若干の偏見は混じっているだろうが、天才軍師との評価も名高い周瑜にとっては仕方のない反応だった。
「わたしは劉勲さんの意見に賛成ですね。周瑜さんの言うことにも一理ありますけど、烏合の衆なのは敵も同じですし~。」
袁術軍が頼りないのは確かだが、だからといって黄巾軍が強力か、と言われるとそう言うわけでもない。彼らのほとんどは貧しい農民や難民から構成されており、士気と数以外はこれといった武器もない。真っ当な兵站を持たない黄巾軍は袁術軍以上に疲弊しているはず。苦しいのは敵も同じであり、袁術軍は腐っても軍隊だ。本来、個々の兵士の力量なら上である。ならば必要以上に恐れる事もあるまい。
あまり仕事をしない彼女だが、決して無能ではない。むしろロクに仕事してないクセに、曲がりなりにも袁術軍のトップでいられるということは逆に賞賛すべきことだろう。『敵も』烏合の衆と言っている辺り、地味に自軍の状況もよく分かっている。
「慎重になるのは結構ですけどぉ、勝機を逃しちゃいけないと思います。」
えっへん、と腰に手を当てて胸を張る張勲。勝機と言えば聞こえは良いが、逆にいえば選択肢が限られているという事でもある。ついでに言うと「たかが農民の反乱」に「勝機」なるものが必要なのは袁術軍ぐらい。フツーの軍は反乱の数が多すぎて対処能力を超えているだけで、戦えば大抵勝てます。
「……それはそうとして、おかしいですねぇ。」
と、その時だった。会議が紛糾し始めて自分達に注意の目が向かなくなった頃合いを見計らい、劉勲の隣にいた張勲が話しかける。
「劉勲さん、どうしてあんな事を言ったんですかぁ?」
「え?」
どういうことだ?一瞬、張勲の質問の意味が分からずに混乱する。
「えっと、アタシの意見に賛成なんじゃないの?」
「いえ、そう云う事では無くてですねぇ……何と言うか、劉勲さんらしくないなぁ、と。劉勲さんはもっとこう、功績より自己保身に走る人だと思いましたよ。」
「ヤダ、アタシそんな風に思われてたの?」
もちろん劉勲とて多少の自覚はあるが、問題はそこではない。張勲の意図が不明である以上、相手の真意を突き止めるまでは適当にとぼけるのが上策なのだ。
「ま、どっちにしろ同じ事じゃない?失敗を帳消しに出来るだけの功績を立てなきゃ、どうせ今の立場も危ういし。言ったでしょ、長期戦になれば――」
「――では聞き方を変えますね。」
先に仕掛けたのは張勲だった。張勲の表情から、零れるように感情が抜け落ちてゆく。
「いったい……
一瞬、別人かと間違えるほどの空虚な笑顔。確実に笑っているが、本当の笑みでは無い。
「……さぁて、何のことかしら?アナタがのんびりし過ぎているだけじゃないの?」
言い逃れようと、とっさに人を食った言い草ではぐらかし、無理やり微笑む。張勲の方も一向に視線を逸らそうとはせず、空っぽの笑みで彼女を見つめる。
「……では、
淡々とした、何の感情も感じさせない無機質な声。
「誰にだって、話したくない秘密の一つや二つ、あるでしょうし。それが害にならなければ、他人の個人的な事情なんて知っても良い事ありませんしね。」
「もちろんよ。それはアタシにとっても
「では、
本心を心の底に隠したまま、二人で笑い合う。
どうやら、この辺が落とし所の様だ。劉勲に危害を加える意思はなく、ゆえに張勲もそれ以上の詮索はしない。互いの不利益にならない限り、約束や条約といったものは必ず守られるのだ。
一方、会議は作戦課を中心に周瑜の意見に賛成する者と、兵站課を中心に劉勲の意見に賛成する者に2分されていた。どちらの意見にも利があり、互いに譲ろうとしなかったために会議はこじれてしまう。
「賛成しかねます。袁家の軍資金にはまだ余力があるはずです。」
断固として反対の姿勢を崩さない周瑜。実際、袁家の財力を以てすれば後3,4週間は包囲が可能だ。しかし、またもや劉勲はその意見を却下する。
「へぇ~、自分の懐は痛まないからって随分な言い草ね。あんまり袁家を貯金箱扱いしない方がいいわよ。あ、それともこの機に袁家の弱体化でも企んでるつもり?」
「そんなつもりは無い。ただ、事実を述べただけだ。」
挑発を軽く受け流し、あくまで淡々と告げる周瑜。
だが、周囲の視線が一層冷ややかになったことは十分すぎるぐらい感じ取れた。孫呉は所詮客将であり、正規の袁術軍ではない。そのことが、この軍議の結果を決定した。
周瑜の意見に賛成だった者も、こうなってはどうしようもない。このタイミングで彼女を擁護することは、政敵に自ら失脚の口実を与えるようなものだ。勝利を確信した劉勲は、短くこの会議の終わりを告げる。
「では、民主的に採決を取りましょうか。」
結果、賛成多数で「全面攻勢」案が採用される事となった。
◇◆◇
例えばの話をしよう。
ここに一つの単純な、およそ間違えようのない、簡単な質問がある。
もし、姉妹で意見が食い違った時、より正しいのはどちらだろうか?
考えるまでも無い。大抵の場合において正しいのはより世間を知っており、状況を正確に判断できる姉の方だ。
対して、妹のそれは姉に遠く及ばない。多少の例外はあるだろうが、世間一般の常識として姉は妹より正しい。
では、妹が独断行動をおこした結果、失敗したとする。
理由は、取るに足らないミス。
年長者ならば、条件反射的に防げる類の失態。
姉ならば、ちょっと考えただけで思いつく失敗。
それを見つけた姉の反応は?
姉は「なぜこんな簡単な事も分からないのか」と決まって言うだろう。
それは正しい。間違ったことは何一つとして言ってはいない。後になってみれば当の本人ですら、こんな単純な事に気づけぬ己を恥じてしまうような、そんなつまらない原因。
だが、果たして妹が本当に軽率無思慮であったと断言できるだろうか?
答えは否。
妹には妹なりの理由と確信があったはずなのだ。
ただ、姉のそれに及ばなかっただけである。にも拘らず姉は妹の視野の狭さと思慮の浅はかさに呆れてしまう。それは誰も悪くない、見える世界が違うが故の、小さな小さな悲劇。
人気のなくなった会議室に、劉勲は一人で座っていた。
彼女の肩は震えていた。
可笑しかったのだ。
しかし、それは自身の意見が通ったこと喜ぶ類のものではない。周瑜という天才を舌先で丸めこんだ事を誇る類のものでもない。
そうであったならどれだけ幸せだったであろう。
どれだけ満足であっただろう。
知らぬが仏、先人の言葉は実に正しい。
だが、劉勲は違った。幸か不幸か、彼女は気づいてしまった。
周瑜が何を考え、何を思ったのかに。
周瑜は何も言わなかった。ただ、淡々と無表情で部屋を退出していった。「全面攻勢」案が採択された時も、そっけなく「わかりました」の一言で片付けた。
「……これだから、天才ってヤツは……!」
受け入れようと頭で思っていても、つい愚痴ってしまう。劉勲自身、周瑜の考えの方が優れていることも、彼女の不満も理解できた。
今回の大敗北の原因を作ったのはほぼ自分のせいであり、もっともらしい事を言っても自分は結局、失態を揉み消すために多くの人間に無理を強いているだけだ。そのことに気づいていない者もいるだろうが、天才である周瑜には、いともあっさりと理解できただろう。
だからこそ、軍議の間中ずっと、周瑜は冷めた目で劉勲を見ていた。
もちろん劉勲の立場上、彼女が必ずしも合理的な選択肢が選べるわけではない。高い地位にあれば、面子や派閥、その権威に絡み合うあらゆる人間の思惑と無縁ではいられない。
だが、周瑜に限らず、聡明な者なら皆同じ結論に達するはずだ。
「こうなるのは分かり切っていたことだろう。」と。
自身の権力拡大の為に、形振り構わず突き進めば、どこかでボロが出る。にもかかわらず、劉勲は反対派の失脚と更迭、粛清を断行してしまった。その結果がこのザマである。
確かに、現状において取り得る策の中で、劉勲は最善の選択をしたのかもしれない。だが、こんな状況を生み出したのは誰なのか?いったい誰のせいでこうなったのだ?
「……そんなの、言うまでも無い。」
劉勲自身、客観的に自分を分析できる冷静さを備えているだけに、自己嫌悪が止まらない。周瑜に対する挑発的な態度も、所詮子供っぽい八つ当たりに過ぎない。そのことを自覚しているが故に、更に苛立ちだけが募ってゆく。
「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」とは孫子の言葉だが、周瑜はこれに従って自分の力量をよく弁えていた。常に現実的に物事を冷静に観察して、無理せずに「自分にできること」を確実にこなしていた。
劉勲に対して「目先の利益に釣られた挙句、勝手に失脚するのは結構だが、それに自分達を巻き込まないでくれ」と思うのも無理は無い。軍師として、周瑜にとってその程度は、分かり切った「当たり前」の事だった。
「そんなの……考えただけで分かれば苦労しないよ……。アタシだって……アタシだってちゃんと、自分で出来る事をしたつもりだったのに……!」
「黄巾の乱」といっても、実態は単なる農民の反乱だ。劉勲が初陣として手柄を立てるには、ちょうどいい相手だったはずなのだ。今になって考えてみれば、確かに袁術軍に負ける要素は多数存在していた。だが、戦いが始まる前に正規軍が農民に負けるなどと、一体何人が予想できただろうか?
そう、「天才」である周瑜と違って「秀才」に過ぎない劉勲には完璧は望めない。なまじ「凡人」よりかは頭が回るだけあって、ある程度までは誤魔化せてしまうためにそれに気づく者は少ない。現実に劉勲は自身の引き起こした、格差の増大や治安の悪化といった問題を経済成長で誤魔化している。だが「本当に大事な時」には誤魔化しは効かないのだ。
それが、二人の違いだった。劉勲の「当たり前」は周瑜の「当たり前」と違う。そして両者の意見が違った時、正しいのは周瑜の方なのだ。
故に周瑜からは、劉勲が後先考えずに行き当たりばったりで周りに害悪をまき散らしているようにしか見えない。「天才」の目から見た劉勲とは、敵の力量を知らず、己の力量をも見誤った道化。分不相応に高望みする俗物。呆れて物も言えないないとは、こういうことを言うのだろうか。
周瑜にとって確かに劉勲は厄介な相手だが、逆に言えばそれだけの小物。劉勲には大局を見る目も、王としての器も、卓越した武も無い。所詮は袁家という権威に寄生する、虎の威を借る狐。
はっきり言って、劉勲は相手にされていなかった。
それは、気にする価値も無いという意思表示の現れ。
対話の機会すら与えぬ門前払い。
お前など、そこらの有象無象と変わりはないと、鼻で嗤う行為。
口には出さずとも、劉勲には分かってしまった。
――かつて劉勲に、これと同じ目を向けた者がいたから
それは、取るに足らない
ただ五月蠅いだけの――――羽虫を見つめる視線だった
誰もいない会議室の隅で、劉勲は唇を噛み締める。
「……見てなさい。絶対に、成功させて見せる。」
自分を信じ、挫けそうになる心を叱咤する。
「アタシを見下した事を後悔させてやる。」
たった一人で、誓いを立てる。
「アタシは負けない。」
強く、白い骨が浮かび上がるぐらい強く、己の拳を握りしめる。
「自分でもやれば出来るんだって、ちゃんと証明してみせるんだから。」
3日後、袁術軍は全面攻勢を仕掛ける。
しかし、急斜面の山の細く狭い山道を進軍し続けてきた事と、各部隊の連携がうまくいってないことから、袁術軍は事実上分散してしまう。それに気付いた張曼成率いる黄巾軍が奇襲攻撃を加えたため、袁術軍は分断されて連携と補給を絶たれてしまった。
その後、黄巾軍は連絡を絶たれ孤立した袁術軍に、側面から一撃離脱の奇襲を繰り返し加えた。総兵力差は小さかったものの、袁術軍は混乱している上に分断されており、局所的に黄巾軍の兵力が上回ったため、各個撃破されていったのだった。
ある兵士によると、退却していく劉勲の顔は、何かを必死に堪えているようで――その体は心なしか、小さく見えたという。
初陣に引き続き2連敗中の主人公です。賄賂とか密告とかでコンディションを整えるまでは良いんですが、実戦になると勝てないのが劉勲さん。
戦記モノなのに初っ端から負け続ける主人公って一体……ホントにこれで良かったのかな?
ちなみにモデルは冬戦争です。ヒトラーに「独ソ戦で勝利できる」と勘違いさせたと言われるぐらい赤軍フルボッコのあの戦いです。