『遊戯王部活動記』タッグデュエルルール。
例 プレイヤーA&B 対 プレイヤーC&D
1.2人1組となり4人で対戦を行う。
2.LPは2人で共通の8000とする。
3.手札、デッキ、エクストラデッキは各自、プレイヤーのみ。
フィールド上のカード、墓地はプレイヤー共通カードとして扱う。
4.最初の1ターン目のプレイヤーはバトルフェイズ不可、次点のターンプレイヤーからバトルフェイズ可能とする。
5.ターンの順番においては、プレイヤーA→C→B→D→A~
となる様に4人のローテーションになるようにする。
順番を決めるにおいて
決闘盤を用いる場合は、決闘盤の選定機能によりランダムに決定。
用いない場合においては、先攻後攻決定前にあらかじめ決めておく。
6.A→C→B→Dの順番でAが先行の場合。
プレイヤーA、Dを主導権プレイヤーとし、そのプレイヤーのターンに入るごとにターンプレイヤーが主導権プレイヤーとなる。
例 プレイヤーA
先行でプレイヤーAのターン、次のプレイヤーCのターンまでがAが主導権プレイヤー。
プレイヤーBのターンに移った時、プレイヤーBが主導権プレイヤーとなり次のAのターンが来るまでプレイヤーBが主導権プレイヤーとなる。
7.カードの操作、発動は主導権プレイヤーが行う。
主導権プレイヤーでない場合は、操作、発動する事ができない。
8.手札、デッキ、エクストラデッキに効果を及ぼす場合、主導権プレイヤーにのみ効果が有効とする。
例 プレイヤーA、プレイヤーDが主導権プレイヤー
《メタモルポット》のリバース効果発動時、プレイヤーA、プレイヤーDの手札を全て捨てデッキからカードを5枚する。プレイヤーB、プレイヤーCは手札を捨てずデッキからカードをドローしない。
9.サレンダーは、パートナーの同意がなければ適応されない。
10.パートナー同士の手札確認、相談ともに不可とする。
「先行は僕だ! ドロー!」
晃と涼香、赤松と青柳のタッグデュエル。
決闘盤を使用したルールに従い、ランダムの抽選の結果一番始めにターンを行うプレイヤーは青髪の少年、青柳へと決定された。彼は、カードを引きその中から1枚を決闘盤につけられた板の5つの窪みの一つにはめ込むように置いた。
「《深海のディーヴァ》召喚!」
深海のディーヴァ
☆2 ATK/200
決闘盤に置かれたカードは、バーコードを読みこむようにカードから情報を読み出しプログラムからソリッドビジョンシステムへと連動する。イラスト情報を読み込み2Dで描かれた絵を3Dの映像として場に映し出す。
場に現れたのは、上半身が女性、下半身が魚という人魚の様なモンスター。
イタリア語で
「す、すごい……これが決闘盤か……」
決闘盤のデュエルを始めて行う晃は、ソリッドビジョンで擬似的な実体化をしたモンスターを見て感銘を受けた。たかだが、カードゲームがこれほどまでに普及していた理由、始めてその意味を理解したのだ。
「へぇ、橘……あんた初心者?」
「ああ、そうだけど」
晃の様子を見て、涼香は目を細め軽くイラついたように棘のある様な口調で聞く。
少なからずタッグデュエルにおいて、パートナーの協力以前に地力が必要不可欠だ。
タッグデュエルの性質上、一人のプレイヤーにターンが回ってくるのは、実質通常のシングルデュエルの半分だ。それ故、自分が攻め入れ攻撃を防ぎきれたところでパートナーの番で形成を逆転され不利になる事は否めないだろう。
故に涼香は、自身のパートナーが初心者である事を良く思っていない。
心の中で軽く舌打ちをしても青柳のターンは続いて行く。
「《深海のディーヴァ》が召喚に成功した時、効果が発動する。デッキからレベル3以下の“海竜族”……僕は、《真海皇トライドン》を特殊召喚するよ」
真海皇トライドン
☆3 ATK/1600
“ディーヴァ”の歌声に惹かれる様に現れたのは、青い体躯の幼龍だ。
召喚するだけでモンスターを呼べ、さらにチューナーである“ディーヴァ”は手札に1枚あるだけでシンクロ、エクシーズ共に繋げる事のできる優良カードだ。また他のカードと組み合わせるコンボなどにも活用ができ今回、青柳はこのカードを後者の活用法を果たす。
「《真海皇トライドン》の効果は、自分の他の“海竜族”と共にリリースする事で手札、デッキから“ポセイドラ”が呼べる。僕は、その効果を発動しデッキから《海皇龍ポセイドラ》を特殊召喚!」
海皇龍ポセイドラ
☆7 ATK/2800
彼の場の2体のモンスターが光の粒子となって消え去る。
消え去った矢先、《真海皇トライドン》が一回り、二回りも成長した姿の海龍が姿を現す。
本来、このカードはレベル7の最上級であり特殊召喚できる効果を持つが、それも極めて重い性質上、扱い難いカードとされる。だが、サポートカードの《真海皇トライドン》と併用することでこうも容易く召喚できるのだ。
ちなみに、《真海皇トライドン》の二つ目の効果があり、《海皇龍ポセイドラ》が特殊召喚した後に、相手モンスター全ての攻撃力を300下げるが、今相手の場にモンスターが一体もいないので無意味だ。
「っ……いきなり、攻撃力2800のモンスター!?」
一度しかデュエルの経験がない晃にとっては、恐ろしく脅威だった。
目前に、高攻撃を持つモンスターがいるだけで彼にとってプレッシャーとなりうる。
「僕は、カードを3枚伏せてターン終了!」
「っ、オレのターンだ!」
次のターンプレイヤーは晃だ。
やや、慌てながらカードを引く。
現在、相手の最上級モンスターを倒す術はない。しかし、このターンのデッキトップからドローしたカードは幸いにもこのデッキの主格となるカードだった。
「オレは、《武神─ヤマト》を召喚!」
武神─ヤマト
☆4 ATK/1800
【武神】の主要カード、“武神”と名の付く獣戦士族モンスター。
赤い甲冑に身を包んだモンスターは、己の数倍もあるだろう巨大な海龍と対峙する。
本来、高攻撃力を持ったモンスターを除去できない場合、裏守備表示でモンスターを出すのがセオリーだ。しかし、晃は以前の決デュエルで《武神─ヤマト》のサーチ効果に戦闘を補助する“武神器”があるのを知っている。
そのため、彼は“ヤマト”を攻撃表示で出すのが得策だと考えた。
「オレもカードを2枚伏せて、ターンエンド……っと、ここで《武神─ヤマト》の効果を発動! デッキから《武神器─ハバキリ》を手札に、そして《武神器─ムラクモ》を墓地へ捨てる」
“ヤマト”の効果によるサーチと墓地肥やし。
この効果により晃は、手札から発動できる戦闘補助の“ハバキリ”を手札に加え墓地より除外し相手のカードを破壊できる“ムラクモ”を墓地へと送る。これならば、相手の場に攻撃力2800のモンスターがいようと十分に対抗できるだろう。
「チッ……“ハバキリ”かよ、俺のターン、ドローだ!」
次いで、タッグデュエルのため青柳でなく赤松のターンへと移る。
この時、彼は前のターンで青柳が伏せたカードを確認してはニヤリと笑った。
「ハハッ、なんだよ……いいカードがあるじゃないか《マインドクラッシュ》を発動だ! もちろん、カード名は《武神器─ハバキリ》!」
「マインド……クラッシュ?」
いくら汎用性が高い有名カードとはいえ、初心者の晃は知らずに?マークを浮かべる。
そんな彼の姿を見ては、遊戯王の経験者である涼香は呆れた様に彼に、カードの説明を行う。
「はぁ……《マインドクラッシュ》も知らないなんて馬鹿じゃないの? いい、あのカードはカード名を一つ宣言して、相手の手札を確認……ある場合は、そのカードを全て捨てさせるカードなのよ」
「え゛っ……!?」
それは、ハンデスとピーピングを兼ね揃えたカード。
サーチカードが多い現在、それらに対するメタとして働き相手の手札まで確認する事ができるのだ。もっとも、宣言したカードが1枚もない場合、使用者がランダムに手札を1枚捨てることになるのだが、それを逆に利用して【暗黒界】に組み入れられる事もある。
そして、宣言したのは《武神器─ハバキリ》。
前のターンで、“ヤマト”の効果を使うにあたり手札に加えたカード。
これも演出なのか、ソリッドビジョンシステムが働き晃の手札のカードが全て公開される。《D・D・R》、《武神─ミカヅチ》、そして当然の如く《武神器─ハバキリ》。
「と、言うわけだ……捨ててもらうぞ」
「くっ……」
決闘盤のデッキをセットする反対側にある空洞のスペース。そこが墓地置き場となっており晃は、《武神器─ハバキリ》をそこへ入れる。これで“ヤマト”は戦闘時に“ハバキリ”の補助を受けれなくなってしまった。
「さらに俺は《ジュラック・グアイバ》を召喚だ!」
ジュラック・グアイバ
☆4 ATK/1700
赤い体躯に加え、手足の爪、牙、ヒレの全てに炎が燈った恐竜グアイバザウルスが現れる。一見、生物が共通して炎が苦手ながらも炎を纏っているのは不釣り合いだが、これも架空のモンスターならではの姿なのだろう。
「バトルフェイズ! “グアイバ”で《武神─ヤマト》を攻撃するぜ!」
「えっ……?」
その身軽そうな身体で全力で“ヤマト”へと突進していく《ジュラック・グアイバ》。しかしながら、その攻撃力は1700とわずか100ポイントのみと敵わないのだ。まして彼の場には、“ヤマト”の攻撃力を上回る“ポセイドラ”がいるのにも関わらずだ。
ここで晃が予想したのは、《ジュラック・グアイバ》が《ナチュル・チェリー》の様に破壊や墓地に送られる事で効果を発動する効果。もしくは、《武神器─ハバキリ》の様に戦闘における補助のカードがあるかの二択だ。
遊戯王経験の浅い晃には、《ジュラック・グアイバ》の効果はわからない。だけど、晃は本能的に1枚のカードを発動させた。
「っ……なら、《剣現する武神》を発動! 第一効果《武神器─ハバキリ》を手札に加える!」
「なにっ……!?」
「そして、“ハバキリ”の効果を使うのはダメージ計算時、なら……この時、《武神器─ハバキリ》を手札から捨て“ヤマト”の攻撃力を倍にする効果を使用できる……と、思う!」
力強く疑問形で語る晃に、涼香、赤松、青柳の3人は呆れた。
晃も発動できると確信できていないながらも、ちゃっかりと効果を発動させるように“ハバキリ”のカードを墓地へと送る。もちろん、《武神器─ハバキリ》の効果は使用できる。
この効果により、空から飛翔する鳥の姿の“ハバキリ”が形を変え、元の姿。かつて八岐大蛇を退治したとされる十束剣、
武神─ヤマト
ATK/1800→3600
青柳&赤松 LP8000-1900→6100
超過分ダメージが二人のペアの共通ライフから削られる。
【武神】としては、当たり前のプレイングの一種だ。しかし、晃が初心者という点を見れば涼香は、彼を見て少し強張った顔をほんの少し緩ませる。
「へぇ……ただの初心者かと思ったけど、少しやるじゃない橘」
「そりゃ、どうも」
だが、赤松も遊戯王においては十分に経験者と呼ばれるキャリアを詰んでいる。そんな彼が、そう簡単に昨日今日とで遊戯王を始めた初心者に後れを取ったままではなかった。
「チィ……だが、まだだ! 《リビングデッドの呼び声》を発動し、《ジュラック・グアイバ》を墓地から特殊召喚だ!」
青柳が伏せた1枚のカードを発動させる。
墓地から自軍のモンスター1体を蘇らせるこのカードで先ほど、破壊された炎を纏った恐竜は復活を果たした。
「もう一度、“グアイバ”で攻撃するぜ!」
これは、数秒前のリプレイの様に同じモンスター同士で戦闘がおこなわれる。“ハバキリ”の効果も切れ攻撃力が元に戻ったにしても、それでも“ヤマト”の方が上だ。だが、攻撃が届く瞬間に、赤松は1枚のカードを手札から決闘盤の魔法、罠スロットへと差し込んだ。
「ダメージステップ時に、速攻魔法《禁じられた聖槍》発動! コイツで、《武神─ヤマト》を対象にしこのカード以外の魔法・罠を受け付けない代わり、攻撃力が800下がる」
「っ……」
武神─ヤマト
ATK/1800→1000
突如、飛来してきた黄金の槍を《武神─ヤマト》は紙一重で避けたものの、次に襲ってきたのは炎を纏った爪と牙。防ぐことが叶わず、元々攻撃力で劣る《ジュラック・グアイバ》だろうが攻撃をまともに受けてしまい消滅した。
晃&涼香 LP8000→7300
これが、赤松が思い描いていたシナリオなのだろう。
しかし、これならなにも《リビングデッドの呼び声》を発動させずに“ポセイドラ”で攻撃を行った方がいいのではと、疑問に思った矢先、《ジュラック・グアイバ》が咆哮を上げた。
「《ジュラック・グアイバ》は、戦闘で相手モンスターを破壊した場合、デッキから攻撃力1700以下の“ジュラック”を特殊召喚できる。《ジュラック・ヴェロー》を特殊召喚だ!」
ジュラック・ヴェロー
ATK/1700
首から上は、赤。胴体から尻尾にかけて黄。手足は、青。と、3色で配色された恐竜、ヴェロキラプトルが《ジュラック・グアイバ》の呼びかけに応じ登場する。これこそ、戦闘破壊をトリガーに発動する効果であり一度失敗してなお、もう一度狙った赤松の結果なのだ。
「くっ、モンスターが増えた!?」
「安心しろよ。この効果で特殊召喚したモンスターは、このターン攻撃を行うことができない……もっとも、俺たちの場には、まだモンスターが控えているぜ!」
彼の言葉と同時に、主のパートナーに賛同するように“海皇龍”は軽く唸りを上げて今か、今かと待ちわびる様に攻撃対象となる晃を見る。
「さて、《海皇龍ポセイドラ》で
「くっ……」
晃は、前のターン《剣現する武神》と同時に伏せたカードを発動させるか迷った。
このカードを発動させれば、攻撃を止めることはできなくとも戦闘ダメージをある程度減少させる事ができる。だが、それは汎用性が高く次の涼香のターンで彼女が有効的に活用してくれるかもしれないのだ。
そのため、彼は発動せず直接攻撃を受ける事を選ぶ。
晃&涼香 LP7300→4500
これで残るのは、半分と少し。
ライフアドバンテージは、下級モンスター1回分の直接攻撃分の差である。それに対し、肝心のボードアドバンテージも晃たちの方が不利であるのだが……。
「メイン2! 俺は、《ジュラック・グアイバ》、《ジュラック・ヴェロー》のレベル4恐竜族2体でエクシーズだ! 《エヴォルカイザー・ラギア》をエクシーズ召喚!!」
エヴォルカイザー・ラギア
★4 ATK/2400
素材は、恐竜族を指定しているのにドラゴン族のモンスター。
青白い体に真っ赤な瞳。生物にしては、異形の翼を6つ持ち円状の炎を纏ったモンスター。カード名の由来は、おそらく小型肉食恐竜のウネンラギアだろう。
「前言撤回! 橘、アンタやっぱ最悪よ」
「えっ!? 何故?」
召喚された《エヴォルカイザー・ラギア》の姿を見て涼香は、顔を再び強張らせ『へぇ……ただの初心者かと思ったけど、少しやるじゃない橘』などと言った言葉を即座に撤回させた。逆に、晃は“ラギア”と呼ばれるモンスターの能力を知らずにいるために何がどうしたのか理解が追いつかないのだ。
実際、晃の手札であのモンスターの召喚を阻止できたかと思えば、答えは否だろう。それでも涼香や……実際、遊戯王プレイヤーが《エヴォルカイザー・ラギア》を相手にされた時、良く思う人物などいないだろう。
そこに、親切にも赤松が《エヴォルカイザー・ラギア》の効果を解説してくれた。
「いいか、《エヴォルカイザー・ラギア》の効果は、エクシーズ素材を二つ取り除くことで魔法、罠の発動を無効。または、モンスターの召喚、特殊召喚を無効にできるぜ」
「なっ……!?」
それは、カウンター罠《神の宣告》に類似した効果だ。
エクシーズ素材が二つのため、発動は1度のみという制限があるものの、あらゆるカードに対して有効なこの効果は大きな牽制力を持ち、まして攻撃力も上級クラスの帝系モンスターと同等の2400とそう簡単に倒せる数値ではない。
「俺は、カードを1枚伏せてターン終了だ」
先ほど、上げたがライフアドバンテージは小さな差だ。
しかし、ボードアドバンテージはさらに差をつけられ誰が見ても明らかとなってしまった。相手の場には、共に上級クラスの《海皇龍ポセイドラ》、《エヴォエルカイザー・ラギア》にして1度、無効化の効果を使える。さらに魔法・罠には青柳、赤松共がそれぞれ伏せた2枚ものカードが存在する。
大して、晃と涼香の場には晃が伏せた1枚のカードのみ。
ボードアドバンテージの差が、戦力の決定的差ではないにして、明らかに晃と涼香が不利なのは見てわかる。
ふと、晃は申し訳ないといった表情で涼香を見る。
彼女は、すでに晃の視線など気にならないと言った感じで場を見つめては、何故か軽く笑っていたのだ。
「じゃあ、私のターンね」
こうして4ターン目。
最後のプレイヤー涼香のターンが始まる。