駆け足気味かもしれませんが楽しんでくれれば嬉しいです。
9月、イオリア達がグリードアイランドにやって来て約5ヶ月が経った。
現在、イオリアの指定カードは90枚、テトは86枚、ミクは78枚だ。正直、異常なペースと言っていいだろう。魔法により他プレイヤーの邪魔が入りにくく、また移動に苦労もないことがアドバンテージとなっている。
ちなみに、テトとミクの枚数が少ないのは、限度枚数が少ないSランク以上のカードをハメ組等が独占しているからだ。
一坪の海岸線はまだ誰も取得したことがないカードなので、ゴン達が挑戦するときに便乗させてもらうつもりだ。ほどよい頃に会いに行くべきだろう。この世界から出れば、もう会うこともないだろうから、最後の挨拶くらいはしておきたいとイオリア達は考えていた。
そろそろゴン達もイオリア達の存在に気づく頃だろうから、修行の様子でも見に行こうかと考えていたとき、不意にスペルカードによってイオリア達の前に現れた者達がいた。
「同行」を使ったのだろう。複数の男がイオリア達を見ている。
すわ、戦闘か!と身構えたイオリア達だが、相手の様子がおかしいことに気が付いた。敵意がないどころか、やたら憔悴しており、しかもその内の一人は顔面が見るに耐えないほど破壊されてもう虫の息である。もって数分といったところか。
そんな中、リーダーぽい男が悲痛に満ちた声でイオリア達に叫んだ。
「頼む、何でもする! 助けてくれ!」
その瞬間、イオリアは飛び出した。罠の可能性とか、事情説明とかそんな事は、今はどうでもいい。目の前に救いを求める者がいる。ならば、“誓いのままに”。
「ミク! テト!」
二人の相棒にも声を掛け、治癒魔法を構築する。
――ミッド式治癒系魔法 フィジカルヒール
ミッド式は知らないため、リリなので出た魔法を参考に作った回復魔法だ。シャマルの使う“静かなる癒し”が範囲回復なら、これはピンポイント回復だ。その分効果は強い。
三人で同時に行使する。顔の潰れた男の周りに幾何学模様の光が現れ、負傷した部分が光り始める。
その様子に驚愕の声を上げる男達。一切無視して、全力で治療する。ほどなくして、男の顔が原型を取り戻し始めた。みるみる癒えていくその様子にリーダーの男がつい声をかける。
「た、助かるのか?」
その男、名をニッケスという。いわゆるハメ組の中心的存在で、同じハメ組のゲンスルーに裏切られた挙句、命を握られ指定カードを引き渡すように要求されているのだ。顔を潰された男はジスパといいゲンスルーに戦いを挑み返り討ちにあったのである。
「助ける!」
そう断言するイオリアに呆けたように沈黙するニッケス。周りの連中も同じ感じだ。
おそらく理解できないのだろう。いきなり現れた自分達に事情も聞かず、不可思議な力を惜しみなく使い、必死の形相で救おうと奮闘することが。
ニッケスは、本当にジスパを救ってくれると思っていたわけではない。ただ、裏切られ、命を握られ、大事な仲間が死にかけて、どうすればよいかわからず混乱し、そんな時、ふと思い出したのだ。ゲンスルーを問答無用に追い返した“死神”の存在を。
藁にもすがる思いで気がつけば「同行」を使用し叫んでいた。一同は固唾を呑んで見守る。
しかし、回復も虚しくジスパの心臓が止まった。ニッケス等は俯き拳を握り締める。
「まだだ! ミク!」
「はい!」
ミクはジスパの胸に両手を置き、新たな魔法を発動する。
――付与系魔法 サンダーアーム
原作でフェイトが使用した体の一部に電撃を集中させ相手に流し込む魔法だ。
ミクはフェイトのように変換資質を持っている訳ではないが、資質を持たなくても変換自体はできる。ただ時間がかかるので実戦では使い物にならないだけで。もっとも、それは普通の魔導師の話で、処理能力チートなミクはフェイト並みに変換できる。
ミクの両手が紫電を帯、次の瞬間、ジスパの体に電流が流れ込む。ビクンと跳ねるジスパだが、心臓は動かない。
「もう一度!」
「はい!」
再度、ミクが電流を流し込む。ビクンと跳ねたジスパは、果たして……ドクン、ドクン、元気よく心臓を動かし始めた。
「「「ふぅ~」」」
安堵の息を吐くイオリア達。三人は笑顔で拳を突き合わせる。
「た、助かったのか? ジスパは生きてるのか?」
不安を隠さず尋ねるニッケスに、イオリアは力強く頷いた。
「そうか……そうか。よかった。本当に」
そう言って、ニッケスはドサッと座り込む。他の連中も同じような表情だ。仲間意識は結構強いらしい。
イオリアは魔法について何か聞かれる前に、機先を制して話を始めた。
「それで、何があった? 何となく想像はつくが一応話してくれ」
「あ、ああ。実は……」
一通り事情を聞いたイオリアはゲンスルーの虐殺が始まったことを知った。あまり其の辺の知識はなかったので、いつ始まるのか分からなかったのだが、まさかこんな形で関わることになるとは思いもしなかった。
まさか、ゲンスルー相手に暴れたことがきっかけになるなんて! 死神の称号はどこまでもイオリアに憑いてくる。
「あんたは、ゲンスルーを圧倒したと聞いた。その死神の力、俺達に貸してくれ! ……もしゲンスルーから皆を守ってくれるなら今持ってる指定カードを全て譲渡してもいい」
ニッケスが悲痛な表情で、しかし強い意志を秘めた瞳でイオリアに懇願する。
指定カードを全て譲渡するという言葉に他の仲間がざわつくが、ニッケスは「誰にも死んで欲しくない」と説得する。
ゲンスルーの能力――【カウントダウン】により命の刻限が刻一刻と近づいており、仲間内で一番戦闘力の高かったジスパが瞬殺された以上もうイオリア達に頼るしかないのだ。
それを理解したのだろう。他の者達も納得したように頷いた。どちらにしろ、殺されればカードは全てゲンスルーに渡るのだ。それなら、とイオリア達に救済の対価として支払うべきと判断した。
ちなみに、「死神の力」とは魔法のことを指していたのだが、わざわざ突っ込んで詮索されるのも面倒なのでイオリアは我慢した。青筋を浮かべながら。
「……わかった。ゲンスルーは俺達がなんとかしよう。報酬のカードは全部でなくていい。必要な種類だけもらうことにする」
イオリア達が依頼を引き受けたことに安堵するニッケス達。その顔に希望の光が見え始めていた。
イオリアとしては助けを求められた時点で、報酬などなくてもニッケス達に協力するつもりだったのだが、いずれにしろ彼等から独占しているカードを奪わねばクリアできないため大人しく貰っておくことにした。
一同が今後の方針について相談しているとき、「交信」のカードにより、置いてきた他の仲間からニッケスに凶報が届いた。それは、ゲンスルーの仲間の一人バラが、プーハットの首を持って現れたというものだった。
イオリアはニッケス達と共に、現場に向かった。
到着した場所では男の首が無残に転がり、それを青ざめた顔のプレイヤー達が現実逃避するように視線を逸らしていた。その首の主がおそらくプーハットなのだろう。そして、それを冷めた目で見下す男がバラだろう。
バラは現れたニッケスに視線を移し、イオリア達の姿に一瞬眉をしかめるものの直ぐに興味を失ったのか、ニッケスを恫喝した。
「ニッケス、てめぇ、舐めてんのか? 死にたくなかったら、ガタガタ言わずに指定カードを持ってこい!」
ニッケスは無残な姿になったプーハットをやり切れないといった視線を向けたあと、イオリアに目で話しかける。「頼む」と。
イオリアは無言で頷くとバラの前に出る。バラは訝しげな視線をイオリアに送り、さらに両サイドに付き従うように二人の少女がいることを確認した上で、その特徴にようやく思い至ったのか、驚愕の表情になる。
「な、てめぇ! 死神か! 何でここ……」
「もう死神で固定なんだな、ちくしょうがっ!」
バラの発言を遮ってイオリアの拳が唸る。ゲンスルーは辛うじて避けた拳だが、バラは咄嗟に反応できなかったのか顔面を殴り飛ばされた。ものすごい勢いで錐揉みしながら飛んでいきグシャという音と共に地面に激突する。
しかし、なかなかのタフネスでガクガク震えながらも立ち上がり、「離脱」を唱えた。不測の事態のためゲンスルーの元に戻ったのだろう。
ニッケス達が慌てて駆け寄ってくる。
「お、おい! 大丈夫なのか? 逃がしたりしたら……」
不安そうなニッケス達に、イオリアは予定通りだと答えて、光り輝く幾何学模様の魔法陣を足元に展開した。転移魔法だ。実は、イオリアが攻撃を仕掛けている間にミクがバラにサーチャーを付けておいたのだ。どこに逃げたのか座標を特定するために。
イオリア達が光に包まれていく幻想的な光景に、息を呑むニッケス達。そんなニッケス達に「後は任せろ」と力強い言葉をかけるとイオリア達は姿を消した。
呆然としなが、仲間の一人がニッケスにポツリと話しかけた。
「アイツ、本当に死神なのかもな……ゲンスルーにとっての」
死神という呼称があながち間違ってないと強く実感するニッケス達だった。
ゲンスルーの眼前にダラダラと鼻血を流しているバラが現れる。ゲンスルーとサブは何事かとバラに駆け寄った。バラは未だ多大なダメージが残る体を必死に起こしながら報告する。
「ゲ、ゲン。死神だ! アイツ等、死神を連れてきやがった!」
死神。その名称にかつての記憶が蘇り、やはり障碍になったかと苦い表情を見せるゲンスルー。
「ちっ、ヤツか。なら、何人か見せしめに……」
今後の方針を伝えようと口を開いたゲンスルーは、眼前に見たこともない正三角形の幾何学模様が浮かぶのを見て絶句する。そして、溢れ出した光りが収まると、そこに死神ことイオリア達が現れたのを見て凍りついた様に固まった。バラやサブも同様だ。
そんなゲンスルー達を気にした様子もなくイオリア達は事態を進める。
「テト」
「あいよー、封時結界」
突然世界が色褪せる。通常空間からこの空間が切り離された証拠だ。
ゲンスルー達は尋常ならざる事態にようやく正気を取り戻し、ヤバイと感じたのか逃走しようと踵を返す。
しかし、振り返った先には、今の今まで目の前にいたはずのミクとテトが囲むように回り込んでいた。どちらにしろ結界がある以上逃げられないのだが、ゲンスルーの遠隔爆破に対する保険と心理的圧迫のため結界と人的包囲で二重の包囲をする。
ゲンスルーは逃げられないと悟ったのか、イオリアに向き直った。ミクとテトも危険だが、イオリア達の中心人物がイオリアであると看破していたので、状況打開にはイオリアをどうにかする必要があると分かっていたのだ。サブとバラはミクとテトを警戒する。
「カウントダウンを付けたヤツ等を全員解放しろ」
静かな口調で、しかし有無を言わさず機先を制すイオリア。狡猾なゲンスルーは何とか交渉を試みようと頭をフル回転させる。戦うという選択肢は、いつかのイオリアの戦闘力とこの正体不明の力を前には悪手だ。
「アイツ等からどんな対価を――」
「お前の選択肢は二つだ。黙って従うか、戦って死ぬか。彼等の解放より優先すべきことはない。」
倍の対価を出すから仲間に、という在り来たりな口上をきっかけにイオリアの望みを引き出そうとしたゲンスルーだったが、イオリアはバッサリと切り捨てる。交渉の余地なし、問答無用の態度にゲンスルーの表情が引き攣る。
ゲンスルーには思い至らない。純粋に誰かを救おうとする人間の心理など。仲間に対しては情を持つゲンスルーだが他者に対しては価値を見出さない男なのだ。
交渉の余地はない。しかし黙って従えば、この5年が水の泡となる。それどころか誰もが警戒してもう二度とカードを集めることなどできないだろう。
ゲンスルーは逡巡したが、もう一つある能力に賭けて戦闘を選択した。まずは油断させるために従うフリをする。
「わかった。俺もまだ死にたくない。全員解放しよう」
ゲンスルーは、両手を上げ降参だと肩を竦める。
イオリアは「そうか」と頷き、ゲンスルーを拘束しようと近づいた。ゲンスルーの後ろに回り触れようとした瞬間、バラとサブが一気に動く。
すぐミクとテトが対応するが、一瞬気を逸したイオリアにゲンスルーが腕を伸ばし、逆にイオリアの手首を掴みリトルフラワーを発動した。爆音が響き、イオリアの手が弾かれる。
ゲンスルーは攻撃の手を休めずさらに首を掴み止めを差そうとした。しかし、その手は弾かれ千切たはずのイオリアの手に防がれる。
ゲンスルーの瞳が驚愕に見開かれた。イオリアの手が無傷だったからだ。その理由は、単にゲンスルーよりも多いオーラを【凝】して防いだだけである。イオリアは、原作知識によりゴンとゲンスルーの戦いを知っていたのでリトルフラワーの防御方法も知っていたのだ。
しかし、驚きも一瞬、さすが一つ星ハンターであるツェズゲラをして自分では足元にも及ばないと言わしめた実力者なだけはある。凄まじい体術と流麗なオーラ操作でイオリアに猛攻を仕掛けた。
イオリアはそれを淡々と捌き、リトルフラワーのことごとくを防ぎきる。一瞬の隙をつきゲンスルーをガードごと吹き飛ばす。
距離をとった二人は睨み合う。ゲンスルーは険しい眼で、イオリアは静かな眼で。
その時、視界の外で「うわっ」という悲鳴とドサという人の倒れる音がした。明らかにバラとサブだ。ゲンスルーはイオリアを警戒しながらも、仲間の様子を見る。
すると、バラはなぜか頬にネギのマークを付けたまま脱力したように倒れ伏し、サブは尻餅を付いた両足の間の地面がごっそり消滅しているのを見てガクガクと震えていた。
どうやら、せっかくの実戦の機会ということで、【垂れ流しの生命】と【拒絶の弾丸】を使ったらしい。
その様子を見てゲンスルーが初めて動揺を顕にする。
「バラ! サブ!」
仲間に対する情はあるゲンスルーの焦った様子にイオリアが語りかけた。
「お前がしてきたことのツケを払うときが来たんだ。……今更、喚くなよ」
ゲンスルーは、その言葉に沈黙し、口元を歪めながらイオリアを睨む。
「なぜ、こうまでする! お前に何の関係があるんだ!? 騙し合いなんて普通のことだろう!」
叫びながら反論するゲンスルーに、イオリアは首を振る。
「闇討ち、不意打ち、騙し討ち。どれも悪いとは言わない。実戦は甘くはないからな。……だがな、お前は、最初から開放する気なんてなかったろ? 仲間のために苦渋の選択でカード差し出したニッケス達を皆殺しにするつもりだったろ? そして、絶望する彼等を見て愉悦を感じてたろ? ……それは、人としてやっちゃいけないことだ。人と化け物の境界線を超える行為だ」
「そんなもの!」
なお、反論しようとするゲンスルーに、イオリアの強大な意志が込められた眼光が突き刺さる。
「御託はもういい。構えろよ、ゲンスルー。間違ってないと思うなら……死ぬ気で足掻いて見せろ。……でなけりゃ……」
イオリアが拳を引き絞る。オーラが右拳に集束していく。莫大なオーラが集中し周囲の景色すら歪んで見えるようだ。
ゲンスルーの表情が引き攣る。あれはマズイと本能が全力で警報を鳴らす。なんとか逃げ出そうとするが、そんな選択肢は最初から存在しない。
「俺の
イオリアが踏み込み拳を突き出す。【断空拳】だ。しかも、【硬】も施している。衝撃を伴いながら絶大な威力を秘めた拳撃がゲンスルーを襲う。
ゲンスルーはこの拳を知っている。散々喰らったことがあるからだ。故に、受けるのも下がるのも悪手だとわかる。
咄嗟に自身も【硬】をし、横合いから殴りつけることで軌道を逸らす。そして、空いたわき腹にリトルフラワーを発動しようと手を添えた。と同時に、イオリアの左手が静かに自分の脇腹に添えられていることに気がつく。よく見れば拳に乗せた威力の割に体勢が崩れ切れていない。
ゲンスルーは悟った。本命は2撃目の左だったのだと。直後、イオリアの左拳が超振動を起こす。ゲンスルーは体勢が崩れるのも気にせず、必死に体を捻った。体の横を掠りながら拳が通過する。
(躱したぞ!)
ゲンスルーが今度こそ隙を晒したイオリアの足を掴もうとする。どこでもいいからリトルフラワーをするつもりだ。
だが、次の瞬間、
「ゴフッ!?」
血を吐きながら力なく地に倒れ伏した。【圓明流奥義:無空波】だ。
「ゲン!」
テトの非常識な銃撃にガタガタと震えていたサブは慌ててゲンスルーに駆け寄る。一応加減はしたので死んではいないはず。イオリアはゲンスルーにさせたいことがあったので、取り敢えず殺さないことにしたのだ。
ゲンスルーに近寄るイオリアに、懇願するような視線をむけるサブ。ゲンスルー組は仲間同士の情は厚いようだ。
「た、頼む! 言う通りにする。開放もするし、指定カードも渡す。だから、命は……」
「ニッケス達も同じだろうに。でも、お前らは殺すんだろう?」
ぐっと詰まるサブ。そんなサブの肩に手を置き、苦しそうに呻き声を上げるゲンスルー。
そんな二人に、イオリアはバインドをかけた。突然現れた光るロープに体を固定された二人は、もはや言葉もない。
「まぁ、今のところ殺すつもりはない。だが、これ以上好き勝手もさせない」
そんなイオリアの言葉に諦めの表情で頷く二人。わけのわからない力を使われ、純粋な体術でも叶わず、手の内は読まれている。もはや、逆らう気は微塵も持てなかった。
その後、イオリア達は、ニッケス達の元に戻りゲンスルーに触れさせ「ボマー捕まえた」と言わせることで全員の解放に成功した。ハメ組だけでなく他にもカウントダウンが付けられているプレイヤーはいるらしく後ほど彼等も開放する予定だ。
感謝感激の言葉を雨あられと伝えられたイオリア達は、最初こそ素直に受け取っていたが、一部の人間が安心したせいで心のタガがはずれたのかイオリア達を「死神様~!」と信仰しそうな勢いで拝み始めたところで、遂にイオリアがキレ、「死神って呼ぶんじゃねぇ!!」と暴れ始めた。
ニッケス達が慌ててイオリアを宥め、報酬のカード譲渡が行われる頃には日が沈みかけていた。
ハメ組からの指定カード譲渡により、遂にイオリアの所持カードが98枚になった。残すは「一坪の海岸線」のみである。
そして、イオリアのゲンスルーにして欲しいことについて。ゲンスルー達には、ゴンの修行相手になるよう要求した。
最初は、一体どんな無理難題を要求されるかと絶望の表情を浮かべていたゲンスルー達だが、芝居を打ってゴン達に強者との念を使った殺し合いを教えてやって欲しいという内容を聞くと、予想外にデメリットの少ない内容だったので二つ返事でOKした。それと、それが終わったら自首することも約束した。
イオリア達が転移魔法やサーチャーを見せ、常に監視されていると思い込ませ、封時結界の中で砲撃魔法をぶっぱなし遠隔攻撃も可能だと実演してみせると、砲撃により引きちぎられた様に払われた上空の雲を見ながら死んだ魚のような目をしてコクコクと素直に頷いたから大丈夫だろう。
イオリアとしては、ゴンが強くなる機会を奪ってしまったことに心苦しさを感じていたので、やむを得ない措置だった。そう、やむを得ないといったらやむを得ないのだ!
その後、ミクとテトのカードも揃えるため、50種以上の指定カードを持つプレイヤー達とトレードや戦闘などしつつ過ごしていると、遂に二人も「大天使の息吹」と「一坪の海岸線」以外のカードを集めるのに成功した。「大天使の息吹」は引換券があるので、一人でもクリアすればすぐ手に入る。よって、後は「一坪の海岸線」を手に入れるだけだ。
イオリア達は、「同行」のカードを使い、ゴン達の元へ行くことにした。ツェズゲラが一緒にいれば、イオリア達のゲームクリア阻止に動き出すと踏んで、ある程度の指定カードはゲンスルー組に預けてある。今や彼等は、グリードアイランドで一番安全な金庫だった。もう、死神というより魔王といってもいいかもしれない。
ゴン達は、カード収集に邁進している途中で、「同行」によりプレイヤーがやって来たことに警戒心を顕にした。しかし、目の前に現れたのがイオリア達であると気づくとゴンは目を輝かせ飛び跳ねた。キルアはギョッとしている。
「イオリア! ミクちゃん! テトちゃん!」
「げっ、何であんたらがここにいるんだよ!」
手をぶんぶん振りながら走り寄ろうとするゴン。しかし、それは叶わなかった。金髪の12歳くらいの女の子が、険しい表情でゴンの首根っこを掴み引き止めたからだ。
「ぐえっ」と呻き声を上げながら抗議の視線を送るゴンに、その女の子はイオリア達から視線を逸らさずに叫んだ。
「あんた達! 気をつけなさい! どういう関係か知らないけど、死神に不用意に近づくんじゃないだわさ!」
ゴンとキルアは「死神?何言ってんの?」という表情をするが、女の子の表情は変わらない。
「紅髪翠髪の少女を侍らせた死神。彼等の姿を見た者で生きている者はいないらしいだわさ!」
噂が悪化していた。既に都市伝説みたいになっている。生きている者がいないなら、なぜ容姿が伝わっているのか、もう矛盾しまくりだがイオリアにはクリーンヒットした。
「遂に、俺は皆殺しを始めたのか……ついこの前、皆、救ったばかりなのに……」
崩れ落ち四つん這いで嘆くイオリアにミクとテトがオロオロとフォローする。開き直ったと思ったが、見た目小さな女の子に警戒心も顕に危険人物扱いを受けたのが案外堪えたらしい。
「ちょ、ビスケ! なんてこと言うんだよ! イオリア達は、おれの友達だよ! ハンター試験ですごく世話になったんだ!」
「あ~、こいつら底抜けのお人好しだし、姿見ただけで皆殺しとかありえないって」
睨んだ相手は崩れ落ちて嘆いているし、自らの弟子たちから批難の目を向けられ、女の子改めビスケット=クルーガーは狼狽えた。
「えっ、いや、でも、噂がね? その、いろいろと……」
ビスケの弁解を流し、ゴンとキルアがイオリアに駆け寄りミク達と一緒に慰めはじめた。まぁ、キルアは我関せずだったが。
釈然としない気持ちを抱えながら、ビスケも傍に行く。ビスケ自身も既に、イオリアを危険人物とは思えなくなっていた。その情けない姿を見ていると特に。
しばらくして、イオリアが持ち直しようやくお互いに挨拶ができるようになった。
「さっきは悪かっただわさ。ビスケット=クルーガー、ゴン達の師匠ってところ」
「いや、気にしなでくれ。ほとんど自業自得だから。イオリア=ルーベルスだ。よろしく」
「ミクです。マスター共々よろしくお願いします!」
「ボクはテト。よろしくね?」
自己紹介をして、ビスケはショックを受けたような表情をした。そして、わなわなと震えると突然叫びだした。
「マ、マスターって!? つまり、ご主人様!? な、なんなのあんた達。そんな若さで、もう、そんな……アブノーマルな!」
「なに言い出してんの、この人!? そんなんじゃないから!」
興奮したように騒ぐビスケに、必死に弁解する。その横でなぜか赤くなるミクとテト。ゴンはキョトンとし、キルアはソっぽを向いて無関係を装う。話が全然進まなかった。
その後、何とか誤解を解き、「一坪の海岸線」取得のメンバーを探している旨を伝える。ゴン達もカード集めに邁進しており、快くメンバーになってくれた。
他にメンバーになりそう心当たりはあるか相談し合い、イオリア達はニッケス達に頼むことにした。
ただ、ゴンがクロロ=ルシルフルの名でプレイしているプレイヤーがおり、どうしても気になるということで、その正体を確かめることにした。
イオリア達は、本人だったら嫌だなぁ~とかつて旅団とやりあった時のことを思い出していた。グリードアイランドに旅団メンバーがいることは知識にあったが、ヒソカがクロロの名を名乗っているとは知らないイオリア達。後で盛大に嘆くことになった。
ちなみに、ツェズゲラ組と組まないのはカードの所有で揉めるのが嫌だったからだ。ニッケス達は必要な人数分駆けつけると快諾してくれた。
「同行」を使い、“クロロ”の元へ飛ぶと、そこには変態ピエロがいた。
ヒソカはイオリア達を見つけると、それはもう嬉しそうにニンマリし着いて来ようとした。全力で断るイオリア達だが、ビスケによるまさかの裏切りでヒソカの参加が決定。特にミクのストレスがマッハ状態で、降臨した黒ミクに全員がドン引きした。
ニッケス達に連絡を取り、イオリア達、ゴン組、ヒソカ、そしてニッケス達8人が参加し「同行」でソウフラビに移動した。
ソウフラビに到着後、イベントをこなし、海賊達とスポーツ対決になった。ニッケス達の気合がやたら高く、なぜかイオリア達をチラッチラッと見ることに少し引いたのだが、その奮闘もあってある程度勝ちを拾った。
しかし、最終的にレイザー率いる念獣軍団とのドッジボールで勝敗が決定するのであまり意味はない。それを知ったときニッケス組の何人かが崩れ落ちていたが、まぁ些細なことである。
ドッジボールの参加人数は8人でゴン組、ヒソカ、イオリア組で参加。試合は、常時優勢だった。レイザーも本気でやっているのだが、イオリア達が尽く止めてしまう。
まさか、緩衝魔法やシールド魔法を使っているなど夢にも思わず、合体した念獣は原作のゴン、キルア、ヒソカのコンビネーション豪速球で尽く打ち抜かれ、負傷したキルアの手はイオリアが治癒魔法で癒してしまう。
「一坪の海岸線」さえ手に入れば後は帰還するだけで、無用な詮索に悩むこともないので自重しないイオリア。
そしてついに、ゴンの【硬】をしたジャンケン? で飛ばした豪速球がレイザーを仕留めパーフェクトゲームとなった。レイザーは少し涙目だったかもしれない。そして、最後まで空気だったビスケも涙目だったかもしれない。
あと、治癒魔法を見たニッケス組が「おお、見ろ!また、神の御技が!」とか叫んでたのでイオリアが無言で殴り倒した。これ以上、グリードアイランドの地に伝説を築くつもりはない。
終わったあと、ヒソカがちょっかいを掛けてきたが、ミクに問答無用でランダム強制転移を使われ何処かに飛ばされていた。
ビスケが「一体なんなんだわさ!」と魔法について聞いてきたが、自分達「特質系」なんで、と誤魔化した。
疑わしそうだったが、他人の念能力を聞くのはマナー違反である。渋々、引き下がった。
ゴン達に「一坪の海岸線」を渡し、擬態させてイオリアとミクのバインダーに入れる。そして、実は他のプレイヤーに預けてあるだけで、これで全部揃った旨を伝え、いよいよお別れであることを伝えた。
「ゴン、今度こそお別れだ。クリア報酬があれば俺達は故郷に帰れる。そうなったら、もう二度と会うことはないだろう」
「そんな……もう会えないなんてことないでしょ? イオリア達の故郷に遊びに行くよ」
「いや、俺達の故郷はひどく遠くてな……歩いては行けない場所なんだ。俺達ですらクリア報酬の助けがなければたどり着けない場所にある。そして、一度帰れば、もう戻ってくることはないだろう。ここへ来たのは事故のようなものだから」
そう言うイオリアの言葉に、シュンと沈むゴン。キルアが気遣わし気にゴンの肩に手を置く。
「なぁ、ゴン。最後だからこそ、笑顔で行こう。偶然この世界に来ちまった俺達だが、中々楽しかったんだ。その内の何割かはゴン達のおかげなんだ。俺達は故郷に帰るけど、ここで過ごしたことを忘れないように最後まで最高の思い出にしてくれないか?」
ゴンはイオリアのその言葉に顔を上げ、ミクやテトとも視線を合わせる。そして、何か納得したのか「うん」と頷き、次には、ニッと笑った。それからしばらく楽しげに談笑をし、イオリア達とゴン達は別れた。
イオリア達はその足でゲンスルー組の元へ行き、預けてあったカードを返してもらう。その瞬間、ゲーム内にアナウンスが流れクイズ大会の告知がなされた。
イオリア達はクイズがあることを知っていたので、あらかじめかなり細かく予習済みである。結果、まずイオリアが優勝した。“支配者からの招待”を受け取り“グリードアイランド城”へリストと名乗るゲームマスターの一人に城の一室に案内され、其処にいたドゥーンと名乗るゲームマスターから「支配者の祝福」と指定カードを3枚入れられる特殊なバインダーを受け取った。
クリア後の説明を聞き、祝賀会があると聞かされたイオリアは、実は、連れの二人も99枚直ぐに揃える準備をしており、自分がクリアした後、即行で二人クリアすることになるので祝賀会を連続で3回することになる。それなら、そういうイベントは全員クリアしてからまとめてして欲しいと頼んだ。
ドゥーンはしばらくポカンとした後、慌てて他のゲームマスターと協議をし、どうやらそれが本当らしいのでイオリアの頼みを受け入れることになった。
まさか、初のゲームクリア者が三人同時とは、と呆れを含んだ視線を向けられ何とも居心地の悪い思いするイオリアであった。
当然、3回連続でクイズ大会が開催され、ゲーム内は混乱の坩堝であったが、そこは、ゲームマスター達が何とかするだろうと割り切りスルーする。
全てのイベントが終わり、クリア報酬を受け取り、イオリア達はゲーム外へ帰還した。クリア報酬には「聖騎士の首飾り」「挫折の弓」「同行(擬態中)」「プラキング」「リサイクルーム」「大天使の息吹」「豊作の樹」「メイドパンダ」「不思議ヶ池」を貰う事にした。
ゲームから帰還後、イオリア達はいきなりメンインブラックな感じの方々に囲まれた。そして、彼等の奥から身なりのいい、しかしどこかやつれた感じの初老の男性が現れた。
「ゲームクリアおめでとう。ルーベルス君、それにお嬢さん方。私は、バッテラという者だ。聞いたことはあると思うが……」
イオリアは確かにその名を知っていた。ツェズゲラ達の雇い主でグリードアイランドの4割近くを買い占めている富豪だ。
いきなり現れたことに驚いたが、おそらくツェズゲラから報告が来たのだろうと当たりを付ける。
「ええ、もちろん知っていますよ。それで、何の御用でしょう?」
「……大方予想できていると思うが、もし君達が、クリア報酬に“大天使の息吹”か“魔女の若返り薬”を持っていたら譲ってくれないかね?言い値で構わない」
バッテラの言葉に、眉をしかめるイオリア。要求されたカードの意味するところを察して質問を返す。
「どなたか助けたい方が?」
「……恋人だ。もう、10年以上目を覚まさない……」
少し逡巡したものの、悲痛な声でイオリアの問いを肯定する。イオリアはそんなバッテラの様子を見て、チラッとミクとテトを見た。二人は「わかってますよ(るよ)」と微笑む。それを見て、イオリアも苦笑いし頷いた。
「大天使の息吹だけなら持っています。譲るのも構いません」
それを聞いてバッテラの目が大きく見開かれる。疲れて切って濁った瞳が、徐々に光を取り戻していく。
「おお、おお! そうか、譲ってくれるか。感謝する。本当に、本当に……」
世界有数の富豪でありながら、その顔には心労が深く刻まれており、どれだけ恋人が大切だったかがよくわかる。10年眠り続ける恋人を見てきたのだ。目を覚ますかもしれない、その希望はバッテラの涙腺を緩めるには十分だった。
イオリア達は黙ってバッテラが落ち着くのを待った。
「すまない。待たせたな。言い値を払おう。いくらだ?」
「まだ、助かると決まったわけではありません。念のため一緒に行きましょう。俺達がクリアしたことは他にも知れているかもしれませんし危険ですから。報酬は……その話は結果が出てからで構いません」
イオリアの言葉に、なぜそこまで?と疑問を抱くがヘタなことを言って撤回されても困るので、バッテラはそのまま了承した。
バッテラの屋敷に到着し恋人のいる部屋に行く。その女性は美しくはあったが、どうにも生気が薄く今にも消えてしまいそうなほど儚げだった。
バッテラはベッドの傍らに腰掛けると恋人の手を優しく握った。しばらく、ジッと恋人の顔を見つめると、スっとイオリアの方へ視線を送った。
イオリアは頷くと、「ゲイン、“大天使の息吹”」と宣言した。
“大天使の息吹”のカード化が解かれ、眼前に天使が現れる。イオリアは天使に命じた。バッテラの恋人を癒せと。
大天使は頷くと、眠る恋人に近寄りその癒しの息吹を優しく吹きかけた。全員がその様子を固唾を飲んで見守る。やがて、カードの効果が切れ天使が消えた。
しばらく見守っていると、僅かに眠る女性の瞼が震えた。バッテラが息を呑む。やがて、薄らと目を開け、ボーと辺りを見回し、その瞳にバッテラを写した。10年の歳月はバッテラ随分と老けさせただろう。それでも、静かに涙を流すバッテラを見て、薄らと微笑んだ。
イオリア達はそこまで見届けてそっと部屋の外に出た。
どれくらい経ったのか、イオリア達が別室で雑談していると、目を真っ赤にしたバッテラが部屋に現れた。
「すまない、待たせたな」
「いえ、構いません。それで、彼女は……」
「ああ、問題ないだろう。受け答えもしっかりしている。記憶も問題ない。念のため、医師に検査してもらっているところだ。……君達には何と礼を言えばいいか……」
バッテラは、最初にあったときとは別人の様に生き生きとし、心なしか若返ったように気さえする。余裕を取り戻したその表情は、とても穏やかだ。
「さぁ、報酬の話をしよう。何でも言ってくれ。私に出来ることなら可能な限り力になろう」
イオリアは、ミク達と目配せし、バッテラが来るまでの間に考えていた報酬を告げることにした。
「お金はいりません。その代わり、あなたが雇っているプレイヤーの持ちカードを、とあるプレイヤーに譲ってあげて欲しいんです。彼等は現在修行中でしょうから、それが終わった後にでも。そのせいであなたに違約金が発生してしまうかもしれませんが……」
バッテラはその意外すぎる要求に意味がわからないという顔をする。苦笑いしながら、理由を説明するイオリア。
「彼等はハンター試験の同期でして。彼等の協力あって最後のカードも入手できました。……俺達はちょっと遠くに行くので、もう会うことはないかと……せめて最後の餞別になれば。お願いできますか?」
バッテラは「ふむ」と頷くと、
「カードを譲るといった時から何か裏でもあるのかと思っていたんだが……君達、少々お人好し過ぎやしないかね? 忠告しておこう、君達は商人にだけはなってはいけないぞ?」
そう悪戯っぽく笑うと、「カード譲渡の件は確かに承った。雇ったプレイヤーに伝えておこう」と快諾した。
ゴン達のことを伝え、何かと引き止めるバッテラに丁寧に断りを入れ、イオリア達は屋敷を辞した。
「何だかんだで1年か。ものすごく濃い1年だったな」
「マスター? 薄い1年なんて今までにありました?」
「マスターといえば、全力全開だよね?どっかの白い魔王みたいに」
う~んと伸びをしながら、この世界でのことを振り返るイオリアに、くすくすと笑いながらミクとテトがツッコミを入れる。
ここは、イオリア達がこの世界に飛ばされた際、最初にいた森の中だ。どうせならスタート地点から帰ろうと、イオリア達はたった1年ではあるが濃密な1年の思い出に話に花を咲かせながら森の中を歩いていた。
あの後、「挫折の弓」や「同行」だけでは帰還できなかった場合に備えてプラキングを組み立てたり、食料や空気ボンベ、循環器、生活必需品などを買い揃えたり、この世界にしかない動植物を採取したりして2週間ほど過ぎた。
その間、ゲンスルー達は自首し、ゴンも修行を終えてつい先日ゲームをクリアしたようだ。これにはイオリア達も安堵し、準備も整ったので遂に今日、この始まりの森で次元転移をすることになった。
「さて、それじゃあ、帰るとしますか!」
「はい、マスター!」
「うん、マスター!」
イオリアはミクとテトに向かい手を差し出す。ミクは右手にテトは左手にそっと自らの手を乗せ、それからギュッと握る。
――――― ユニゾン・イン ―――――
ミクとテトが光となり、イオリアと一つになる。イオリアは濃紺の魔力を束ねながら、パートナー達と共に次元転移魔法を構築していく。正三角形のベルカ式魔法陣が輝き、薄暗くなってきた森の中を光で満たす。
―――― カートリッジ・フルロード ――――
セレスの声が響き、カートリッジが消費されさらに魔力が跳ね上がる。吹き荒れる魔力を僅かにも無駄にせず収束させていき余すことなく転移につぎ込む。
「インデックス」
この世界で手にした新たな力を具現化させ、足りない力を補う準備をする。
そして、
「開け、いざないの扉、ベルカの地、絆のイヤリングの元へ」
この日、ハンター世界からイオリア、ミク、テト、の三人が消えた。
何かと特殊性を見せた3人を捜索する者も多くいたが、結局見つからず、プロハンターの同期で友人であったというゴン=フリークス曰く、歩いては行けない遠い故郷に帰ったと言われている。
彼等の伝説は多い。ザパン市で行った1日限りのライブで市民の全員を虜にしたとか、ハンター試験では4割以上の受験者の命を救ったとか、今大流行している美少女剣客浪曼譚風漫画の主人公のモデルが彼等の内の一人であるとか、犯罪集団幻影旅団を壊滅寸前に追い詰めたとか、グリードアイランドでは死神と畏れられているとか、初のクリア者であるとか、実に様々な伝説が残っている。
彼等は一体どこへ消えたのか、それは長らく人々の話題から消えることはなかったという。
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一方、イオリア達はというと……
「「「……ここどこ!?」」」
いかがでしたか?
かなり駆け足だったような気がします。
それでも1万5千字・・・手がぁ~手がぁ~
さて、最後の方、バッテラ氏の話がやたら長かった気がします。
自分でも、なぜ最後にこの人がこんなに出てきたのかわかりません。
妄想小説のおそろしいところですね。
ハンター編は全くもって、念能力がカッコイイという作者の趣味100%(物語風)で書きました。
設定やら解釈やら好き勝手やりましたのでイラッと来た方も多いかもしれません。
しかし、敢えて言おう。作者は楽しかった!
念能力考えたり・・・クリア報酬考えたり・・・メイドパンダ欲しい・・・
まぁ、あとでその辺の設定とか無駄になったりならなかったり・・・
次回は、またまた別の世界にトリップします。