魔法の世界へ転生……なのはって?   作:南津

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#015 広がる世界

 

Side Yui――

 

 

 私立聖祥大学付属小学校。

 

 今日から私が通う小学校だ。

 

 既にお兄ちゃんが通っていて、今日から四年生。原作ではなのはちゃんやアリサちゃん、すずかちゃんも通っているエスカレーター式の私立学校だ。

 お受験は緊張したが、子供としてある程度一般常識を身につけていれば大丈夫だった。学力も元中学生なので、今のところは同学年には負けない自信はある。今のところは。

 面接とか初めてだったけど、ちゃんと入学できたので大丈夫だったんだと思う。これで、取り敢えず地球にいるあいだはもう受験しなくてよさそうなので一安心。大学どころか高校まで通うかすら分からないんだけど。

 

 お金も気にしなくていいって言われたけど調べてみたら恐ろしい思いをした。さすがお嬢様達が通う学校だけある。一瞬、地元の公立学校に行きたくなったくらいだった。

 

 とにかく今日からぴっかぴっかの小学一年生という、新しい生活が始まった。

 

 体育館を見回してみると、なのはちゃんの姿も確認できた。

 すずかちゃんとアリサちゃんを探してみたけど、アリサちゃんは金髪だったので分かりやすかった。他にも一人ほど見慣れた頭の子供がいたけど、セットで居そうな銀髪の子は入学生の中にはいなかった。てっきり聖祥に入学してくるものだと思っていたけど思い違いだったみたい。

 

 入学式は何事もなく終了した。サーチャーの気配があったけど、誰のものなのかは分からなかった。もしかしたらここに居ない銀髪の男子のものかもしれない。

 

 それから、お父さんはミッドチルダ産のビデオで撮影しているのに、デバイスでも入学式の様子を撮っていたみたいだった。

 

 クラス分けも決まっているようで、受付の際にクラス名簿を渡された。自分のクラスの物だけだけど、残念ながらなのはちゃんとは違うクラスになったみたい。

 所謂原作登場人物の名前は無かったので、アリサちゃん達とも違うクラスだ。みんなとお知り合いになるのは暫く先になりそうだった。

 

「宮崎結衣ちゃん」

 

「あ、はいッ!」

 

「うん、元気ですね。自己紹介できるかな?」

 

「はい。……宮崎結衣です。好きな食べ物はシュークリーム、嫌いな食べ物はパイナップルです。好きな動物は……えっと、狐です。よろしくお願いします」

 

 

 

 

 

 

 

 

 教室での自己紹介が終わり、教科書や学習用具を受け取った。

 前世では普通に近所の公立小学校に通っていたので私立は初めてだけど、教材なんかは特別なものは特になかった。年間行事なんかを見たらやっぱり私立なんだなって思ったけど。

 

 教科書も懐かしい感じ。ひらがなばっかりで逆に読みにくいのが、二度目の小学生やってるんだって実感がする。『こくご』とか『おんがく』はともかく、『しょしゃ』なんかはゲシュタルト崩壊して教科書の中を見るまでなんのことか分からなかった。

 

 そうだよね、ひらがなとか漢字の書き順なんかの文字から習い始めるよね。普通に使ってたから完全に忘れてたよ。

 

 

――Side out

 

 

Side Yuichirou――

 

 

 時が経つのは速いもので、いつの間にか一年が経過していた。

 結衣も今日から小学生になったり、はやてちゃんも車椅子ながら地元の公立小学校に通っていたりする。

 

 僕もついこの間三年生になったばかりのような気がしていたが、気のせいだったようだ。

 

 どうもこの一年間は夜天の書の試験ばかりしていたせいか、時間の経過が速かった。

 

 小学生になった結衣にはインテリジェントデバイスをプレゼントした。体の負担を考えてカートリッジシステムは導入していないが、拡張性には余裕を持たせているので本人が希望したら追加も可能だ。デバイスコアは例のごとく特別製である。

 

 最も、現在の科学で再現できないのは材質の構築だけなので、管理局にロストロギアに指定されるようなことも無いだろう。多少調べられるかもしれないが、入手経路を誤魔化すだけで良いだろう。

 

「裕一郎さん、二度目の小学生は大変やなぁ」

 

 八神家のリビングではやてちゃんが黄昏ていた。服は入学式のためだけに用意した可愛らしい洋服を着ている。

 机の上には真新しい教科書や学習用具が広げられ、名前を書いたりシールを貼ったりしていた。

 

 はやてちゃんの小学校の入学式に変身魔法というか強化魔法を使って参加した僕は、そのまま八神家へやって来ていた。

 流石に車椅子の六歳児を一人で入学式に行かせるわけには行かなかったので、遠い親戚の叔父さんという設定で二十過ぎの男性に変装して出席した。聖祥の入学式は在校生は参加しないので丁度良かった。

 

 着飾ったはやてちゃんが先生に車椅子を押されながら入場した様子は、確りとビデオカメラで録画しておいた。本人は遠慮していたけど、家は両親が二人共参加しているので都合がついた。

 

「まぁね。はやてちゃんは大分退屈するだろうな」

 

「ほんまや。前のこともあったから最初は楽しみにしてたんやけどなぁ」

 

 案の定、車椅子という特徴は同年代の子供たちには良くも悪くも注目されるようで、無駄に疲れたようだった。まだ授業も始まってないのに定年間近のサラリーマンのようだ。

 逆行前はろくに通っていなかったのではやてちゃんは楽しみにしていたようだが、中身はそろそろアラサー女子だ。僕の危惧通り、精神年齢が合致しなかった。

 

 僕やなのはちゃん達が通う聖祥に通う案もあったが、金銭面から却下となった。流石に毎年百万近くの費用を払ってまで通う意味もないと、主婦のような視点から公立小学校を選択した。それに、受験するにも足りないものばかりだった。

 

 結果、前回もしばらく通っていた地元の小学校からの案内に従って学校が決定した。

 

「よし、ポチッとな」

 

「ん、なんや?」

 

 テレビに繋がったビデオカメラを操作すると、画面に今朝録画した映像が出る。校門の前で車椅子から小学校の校舎を見渡すはやてちゃんの横顔が映っていた。

 

「ちょっ」

 

 中身が大人には思えない、子供らしい表情をしている。まだ小学生に夢を抱いていたころの綺麗なはやてちゃんだ。

 これが、帰宅する頃にはすっかりと失われてしまったのが残念でならない。

 そう言う意味では、この録画は正解だった。

 

『はやて、入学おめでとう』

 

『あはは、ありがとう』

 

「あぁぁぁ……」

 

 カメラに向かって満面の笑みを浮かべるはやてちゃんを見ながら、本人は赤く染まった顔で悶えていた。その姿は年相応に可愛らしく、娘を可愛がる父親のような気持ちが湧いてきた。

 生きて子供がいたらこんな気持ちだっただろうという感じだ。

 

 その後も映像は続き、体育館に入場するはやてちゃんや入学式で凛としている姿や年相応の女の子を演じている姿が流れた。

 

「ははは、可愛かったぞ。はやてちゃん」

 

「うぅ、意地悪やなぁ」

 

 そう言うと、はやてちゃんは口を閉じて何かを堪えるように俯いた。

 

「……お父さんとお母さんにも見て欲しかったなぁ」

 

 ボソッと呟いた言葉は確りと耳に届いた。

 

 たとえ中身が二十を過ぎた大人だとしても、彼女はこれまでこういった行事を両親と経験してきたことはないため仕方ない。

 聞いている限り、前の保護者のグレアム提督という人物も資金援助のみという形で距離をとっていたそうだ。中学の入学式や卒業式では友人の母親達がいてくれたようだが。

 

 二度目の人生で中途半端に両親と再会したことも、彼女の寂しさを増加させているようだ。

 

 守護騎士は家族だが主という関係から普通の被保護者ではいられない。

 

 親がいる身としてはその気持ちの全てを理解してあげることは出来ないが、ある程度は察することが出来ていると思いたい。

 

 はやてちゃんの頭に手を伸ばし、出会った頃より少し長くなっているサラサラの髪を撫でつける。丁度僕の好みが反映されたかのような髪型だ。

 

「……」

 

 俯いたままはやてちゃんが僕の腰に抱きつく。今の姿は二十過ぎ、成人した将来の自分をシミュレートした姿なので、はやてちゃんはお腹辺りに静かに顔を埋めている。

 しばらくの間静かに頭を撫でていると、はやてちゃんも落ち着いたのか腕に込める力が抜けた。

 

「わわっ」

 

 はやてちゃんの体を持ち上げて抱き上げる。腕に座るような形になったはやてちゃんと視線が近くなり、赤くなった瞳が一瞬目に入る。

 そのまま残った片腕で親が娘にするように抱きしめると、はやてちゃんが口を開いた。

 

「……裕一郎さん」

 

「ん?」

 

「裕一郎さんはもう死なへんよね……」

 

「取り敢えず死ぬつもりはないけどね」

 

 首元に抱きつくはやてちゃんの腕に力が込められ、頬が密着する。その頬は僅かに濡れているような気がした。

 

 はやてちゃんが言うのは恐らく彼女が生きていた世界での僕の最後の事だろう。この世界でも同じことが起きるかは判らないが、彼女の言う人間が居たら気にかけておく必要もある。

 出来事から判断する限り得意な能力を持った転生者に思えるので可能性は低いだろうが、この世界にははやてちゃんの世界にはいなかった転生者が既にいるので気は抜けないだろう。

 

 僕もせっかくの命なので死ぬつもりはない。正直ここまで強化する予定もなかったのだが、自身の能力が許す限りの強化をしておいてもバチは当たらないだろう。

 

「……」

 

「……」

 

 そこからは互いに言葉も発さず、リビングにはテレビから流れるはやてちゃんと僕の会話だけが響いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「裕一郎さん。ミッドはな、結婚相手について一人しか認めないと決まっとるわけやないんやで」

 

「……なぜ今その話が?」

 

「ええから、ええから。んでな、ミッドはいろんな世界の中心って体だからいろんな世界の人が移ってきたりするんよ。やから戸籍にも複数名分の記入欄があるんやで」

 

「……へぇ」

 

「夫が裕一郎さん一人だとして、婚姻者としての表記欄がとりあえず(・・・・・)五人分。まぁ、ミッドの人らは一夫一妻が普通なんやけど、どこにも配偶者が一人なんて記述は無いんよ。結婚の際に確認したしな。というわけで、私は入るとして基本的に手続き可能な範囲として、あと三人まで増えても構わんからな」

 

 その話を聞いて僕はどう返事をすればいいのだ。

 

 

――Side out

 

 

Side Yui――

 

 

「ハッ――」

 

「どうしたの、結衣ちゃん」

 

「う~ん……。わかんない」

 

 今どこかで女の敵が生まれたような気がしたんだけど、気のせいなのかな。男の敵でもあるような気もするし、わからなくなってきた。

 

 お兄ちゃんは朝から友達の家に遊びに行っているらしいから、今日はお兄ちゃんと仕事でミッドチルダに戻ったお父さんを除いた家族みんなで入学祝いに外食になっている。

 入学式を終えて一旦帰宅して、夕方からお祖母ちゃんも連れて少し高めのレストラン。

 

 お兄ちゃんも来ればよかったのに。

 

「はぅぅ~。美味しい~」

 

 初めて食べる高級料理にさくらちゃんが蕩けている。翠屋のシュークリームを食べた時と似たような反応だ。

 

「そういえば結衣はお兄ちゃんから入学祝い貰ったの?」

 

 お母さんが聞いてきた。多分私専用のインテリジェントデバイスの事だと思う。

 人格は男性人格で、寡黙というかあんまり喋らないみたい。まだ貰ったばかりだから性格についてはまだよくわからないけど、話した感じだとボンヤリしていて堅苦しく無くて丁度いい。

 

 青色のコアをしたクリスタルタイプで、待機状態の時はレイジングハートのようにネックレスにして首にかけている。

 

 デバイスの形状は取り敢えず一般的な杖タイプ。お兄ちゃんのように徒手格闘戦技は習っていないので今のところ一般的な砲撃魔導師。

 

「うん。名前はヴァン」

 

 兄のデバイスからNobleを貰って、Valiant Nobleness(勇敢な気高さ)。略してVaN(ヴァン)

 

 インテリジェントデバイスのヴァン。

 

 

――Side out




ヴァン……童貞……う、頭が……




次は転生者達サイドの予定。
人によっては不快になるキャラかも知れない、よくある踏み台たち。容姿は既出なので、簡単に説明すると……


踏み台1
・俺様、隠れN○○属性、変態。
踏み台2
・錬○さんもどき、頑迷固陋。

踏み台1さんは作者的に後々まで贔屓する予定のある変態くん。プロットでは後々まで登場予定はある、かも。
踏み台2さんは完全に踏み台予定の作者の嫌いなタイプのオリ主くん。主に無印偏以降はまったくの未定。

この二人の話を読みたくないって人は次の話は飛ばして17話までお待ちください。

そろそろ夜天のターン。
無印、A's共に原作崩壊予定です。

作者のモチベーションが上がったときにしか書いてないので、まだ続いてるんだ、程度の感覚でお待ちください……

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