IS ヒーローを目指す者   作:ATARU

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第11話

無人機によるIS学園襲撃より数時間後、日本より遠く離れた場所にある無人島。

鬱蒼としたジャングルの中に存在している施設。

世界最高の天災である篠ノ之束は、内部の自室に設置しているベッドの上で熟睡していた。

朝食を作り終えたクロエ・クロニクルがエプロン姿のままで部屋に入って来た。

 

「朝だよ。起きて」

 

彼女の隣に移動して話し掛けたり、体を揺すっているのに起きる気配は無い。

 

「も~…イズルは可愛いなぁ…く~ちゃんも…箒ちゃんも拗ねてないでこっちにおいで~…えへへ」

「仕方ない」

 

それどころか幸せそうな顔で寝言を呟いている。

小さく溜息を吐いた後に、入り口近くの壁に付けてあるスイッチを押す。

 

「ふぎゃ!?」

 

それと同時にベッドが急激に傾いて、眠り続けていた彼女は顔から床に激突した。

 

「いたいよぉ…」

 

突然の強烈な痛みに流石の篠ノ之束も目を覚ます。

鼻を抑えて涙を浮かべながらゆっくりと立ち上がる。

 

「やっと起きた。朝ご飯が出来たよ」

「く~ちゃん…もうちょっと優しく起こして~」

「…先に行ってる」

 

今にも泣きそうな顔をしている彼女に要件を伝えたクロエ。

何度も同じ目にあっているが、乱暴な起こし方に慣れたりはしない。

そもそもの話、声を掛けたり体を揺すった時点で目を覚ましてくれれば、強硬手段を取る必要は無いのだ。

起こす側の気苦労も知らない発言に、理不尽な気持ちを抱きつつ部屋から出て行った。

 

 

 

クロエ・クロニクルが作った料理を食べ終えて、大量のコードが敷き詰められている研究室に訪れていた篠ノ之束。

 

「さてと…いっくんは何分で倒せたのかな~?」

 

嬉々とした面持ちで先日の戦闘の確認作業に移る。

彼女の助手としてクロエも端末を操作していた。

 

「…あ」

 

それから数秒が経過して、唐突に素っ頓狂な声を上げた彼女。

先程まで動いていた指先は動きを止めて笑顔は硬直していた。

 

「どうしたの?」

「あ~…その…ゴーレムの調整を…忘れてたみたい」

 

普段と全く異なる様子を訝しんでいたクロエが話し掛ける。

作り笑いを浮かべながら少女の疑問に対して正直に答えた。

 

「…何かあったの?」

「IS学園に向かわせるゴーレムは1機のみで、いっくんでも十分倒せるレベルにするつもりだったんだけど…」

「どうなったの?」

 

猛烈に嫌な予感がしていたが、ここで話を切り上げるべきではないと判断して続きを促す。

非常に気まずそうな表情を浮かべて頬を掻きながら事情の説明を始める。

クロエは詳しい情報を知らない為、当初の予定を聞いて怪訝そうに眉を顰めていた。

そして、篠ノ之束は一拍子置いてから…

 

「試作ゴーレムのデータを流用して、無人機も多めに送っちゃってたみたい。テヘッ♪」

 

洒落になっていない内容を語りながら、自分の頭を軽く小突いて可愛らしく振る舞う彼女。

海上での戦闘に用いた機体とは運用方法が異なるが、織斑一夏にとって荷が重すぎる相手には変わりない。

学園に向かった無人機も1体で終わらず、戦場となったアリーナに続々と集結していた。

最近の篠ノ之束はRED5の解析作業に勤しんでいた為、今回の件に対して殆ど手を付けなかった事が災いした。

中国の代表候補生である凰鈴音との共闘。

複数の無人機が時間差でアリーナに出現した事。

織斑千冬がRED5の兵装を持って救援に駆けつけた事。

これらの状況が重なって最悪の事態は免れた。

相当綱渡りだった状況を理解して、傍迷惑な天災に軽蔑の眼差しを送るクロエ。

 

「でもでも!終わりよければ全て良しって言うでしょ!?」

「良くない。駄目」

「え~」

 

必死に弁明していた彼女を冷たく突き放した。

最悪の状況を作り出したのに反省の色が見られない。

 

「…ちゃんと反省して」

「く~ちゃん大好き!」

「離して」

 

何かを諦めたような面持ちで溜息を吐いて目を背けながら小さく呟く。

その言葉を聞き逃さなかった彼女は、満面の笑みを浮かべて目の前の少女を抱き締めた。

頬擦りされていたクロエは、心底鬱陶しそうにISを部分展開して天災を引き剥がしていた。

 

一通りの作業を終えたクロエ・クロニクルは、篠ノ之イズルに連絡する為に、端末の操作を続ける篠ノ之束を残して研究室から出て行った。

部屋の中央部にある大型ディスプレイには、薄緑の機体と打鉄の戦闘映像が映し出されており、頬杖をつきながらソレを眺めていた彼女。

両手に備え付けられている銃剣を用いて相手の女性と斬り結ぶ。

何度も打ち合った影響で打鉄のブレードは限界を迎え砕け散ってしまう。

 

(コイツは亡国機業の人間か。嬉しそうな顔しちゃってまぁ)

 

覆しようが無い圧倒的な性能差。

打鉄も激しい損傷を負い戦闘継続は困難。

そんな状況であるにも関わらず、無邪気な笑顔を浮かべて戦い続けている。

常人であるならば薄ら寒い物を感じそうだが、この映像を見ている人物は控えめに言っても普通ではない。

飛行さえもまともに出来なくなり、徐々に高度を下げていくのだが、蛯名と呼ばれた女性はこちらを見て笑顔で手を振り続けていた。

 

先日の戦闘映像を見終えた彼女はディスプレイの映像を切り替える。

画面に映し出されていたのは、同型機でありながら色の異なる機体だった。

漆黒の機体と薄緑の機体を交互に見比べる。

 

(RED5のデータに残されていたBLACK6。この子はその同型機ってとこかな?)

 

RED5の解析を進めてこの機体に関する情報を得られた事にほくそ笑む。

BLACK6という名称からRED5に連なる機体であると推測する。

素早い動作で端末を操作して新しく出現させたディスプレイに映像を映し出した。

侍をイメージさせる蒼色の機体。

腕も足も無い特異な形状の紫色の機体。

他よりも明らかに大きい薔薇色の機体。

右腕が射撃兵器と化している金色の機体。

その隣に並べられているRED5とBLACK6。

特異な形状の機体が映し出された映像を食い入る様に見詰める。

RED5の解析を進めて分かったのは、これらの機体の名称と姿だけだった。

 

(基本性能は優秀だけど、RED5のような爆発力は無い…か)

 

無人だから力が発揮できないのか。

この機体がBLACK6の量産仕様ならば、何らかの調整が施されていても不思議ではない。

しかし、推測が真実と同じとは限らない為、この考えを頭の隅に置いて椅子に腰掛ける。

 

(イズルは何と戦っていたんだろう?)

 

天井を見上げながらIS学園で生活している弟を思い浮かべる。

過剰とも言える戦力は何に対して向けられていたのか。

RED5を大破に追い込んで、彼に重症を負わせた相手は何者なのか。

疑問点を上げればキリが無い。

しかし、この状況は天災を喜ばせるだけだった。

 

彼女が解析作業に勤しんでいる中、篠ノ之イズルに電話を掛けていたクロエ・クロニクル。

戦闘の結果を見て分かっていた事だが、少年を心配してあまり眠れなかった少女。

 

「…でね…織斑先生が来てくれて助かったんだ」

「そ、そうだったんだ」

「クロエ?どうしたの?」

「何でもないよ」

 

昨日の出来事を電話越しに語っていたイズル。

適当に相槌を打つクロエだったが、普段と異なる様子に疑問を抱いていた。

アリーナの件を彼より詳しく把握しており、誰が無人機を送り込んだのか分かりきっている為、申し訳ない気持ちで胸が一杯だった。

 

 

 

クラス対抗戦の最中に起きたハプニングを退けた翌日、アリーナを修復する為に多くの人員が費やされている中、織斑千冬と山田真耶は学園の整備室に訪れていた。

無人機と戦った白式と甲龍は多少ダメージを受けているが、深刻な程ではないので修復作業は順調に進んでいた。

そして、2人は整備室の奥に向かい激しく損傷している打鉄を発見する。

3機のISは事件当時、学園の周囲を警戒しており、その際に未確認機と交戦して撃墜されたとの事だった。

休憩中のスタッフに損傷した打鉄についての話を聞き終えて廊下を歩いていた2人。

 

「打鉄の映像記録が抹消されているとはな」

「妙ですよね。無人機の存在を知られたくないなら、全ての記録を消去する筈なのに」

 

打鉄の映像記録が何者かの手によって削除されていた。

スタッフが他のISを調べたが、特に異常は見られなかった。

十中八九、IS学園のシステムをハッキングした人間の仕業だろう。

 

(無人機は使い捨てて構わないという事か…)

 

世界でも類を見ない無人ISを惜しげも無く投入。

残骸を放置する点では海上での戦闘と似ている。

 

(彼女達は何と遭遇したんだ?)

 

アリーナで無人機と戦った千冬からすれば、軍人である彼女達が撃墜されるとは思えない。

打鉄の映像記録には何が映っていたのだろうか。

 

「話を聞きに行きますか?」

「そうだな」

 

自分と殆ど同じ事を考えていた山田真耶からの提案。

その言葉に同意して医務室へ歩みを進めた。

 

 

 

目的地へ到着すると、3人の女性がベッドの上で休んでいた。

突然の来客にも冷静な対応をしていた隊長格の女性。

彼女に打鉄の修理状況とシステムの異常を話した千冬。

 

「貴女方が交戦したISについて聞かせて頂きたいのですがよろしいですか?」

「構いません」

「ありがとうございます」

 

IS学園の教師が自分達を訪れた背景を聞いて納得していた東雲。

映像記録に残っていないならば、話を聞きに来るのも理解出来る。

その申し出を了承すると織斑千冬が感謝の言葉を述べる。

 

「えっと…まずはこの無人機がアリーナに侵入したISです」

「ん~…随分と不細工ですね」

「蛯名さん。静かにして下さい」

 

真耶が端末を操作して無人機の映像を見せる。

異形のISを見て率直な感想を述べた蛯名。

彼女の失礼な物言いを注意しながら無人機を注視した栄城。

 

「我々が目撃したISは薄緑色で、形状も共通点が見当たりませんね」

「そうですか」

 

遭遇した機体の簡単な特徴を話した彼女。

自分の予想は当たっていたが、千冬は表情に変わりはない。

そもそも、一夏と鈴音で対処出来る相手にこの面々が撃墜されるなど有り得ない。

 

「そこの蛯名が先に例の機体と遭遇したのですが」

「やられちゃいました。面目ない」

「は、はぁ…」

 

事の発端を聞いていた2人。

怪我をしているにも関わらず軽い調子の彼女に動揺していた真耶。

その後に何が起きたか詳しい話を始めたのだった。

 

 

 

謎の機体と戦闘に移った彼女の救援に向かっていた2人。

現場に到着した東雲と栄城を空中で待ち受けていた薄緑のIS。

蛯名の姿は見られなかったが、今はその事に意識を注ぐ余裕は無い。

両手に握られた銃剣を見て交戦の意思はあると判断する。

 

「相手の出方を見る!栄城は援護を!」

「はい!」

 

2本のブレードを取り出して未確認機体に近接戦闘を仕掛ける。

手数を活かした攻撃を容易く受け流されるが、この程度で倒せるとは考えていない。

敵の注意を引き付けている隙に、側面に回り込んだ栄城がアサルトライフルのトリガーを引いた。

戦闘を目的としている為、IS学園の物より威力は上だが、シールドを貫けるかは不明。

行動の阻害を狙っていた彼女はダメージを与える事に拘ってはいなかった。

正確性の高い射撃はターゲットに当たった筈だったが…

 

「見向きもしないなんて…!」

 

弾丸はシールドに阻まれてしまう。

それは予測していた事だったが、敵機が全く気にしていないのは予想外だった。

そして、攻撃を行わなかった敵機が右手の銃剣で横薙ぎに切り払う。

 

「ちぃ!」

 

ブレードと銃剣が激突して激しい音が響き渡る。

斬撃を受けてその場に踏み留まるのではなく距離を取った彼女。

凄まじい衝撃に腕が痺れてしまい苦悶の表情を浮かべる。

その隙に側面に回り込んでいた栄城に銃口を向けて弾丸を射出した。

咄嗟にイグニッションブーストを用いてギリギリ回避に成功するが…

 

(偶然当たったの?それとも恐ろしく精度の高い射撃?)

 

ライフルは銃弾の餌食になっており、原型を殆ど留めていなかった。

 

(分が悪いな)

 

2本のブレードは大量の亀裂が入り、これ以上の攻撃は受け止められそうに無い。

正面の敵機の行動に最大限の警戒をしながら武器を収納した2人。

怪訝な面持ちで圧倒的な不利を自覚していた彼女。

機体性能に差が有り過ぎる。

例え、専用機に搭乗していたとしてもこの状況を覆せるとは言い切れない。

 

「出し惜しみをしている場合じゃない…か」

「…そうですね」

 

拡張領域から対物ライフルを選択して取り出した東雲。

ISとの戦闘を念頭に置いて開発された武器であり、その威力は折り紙付きであった。

彼女と殆ど同じタイミングで肩部にミサイルポッドを装着した栄城。

 

「これで…!」

 

ターゲットに照準を合わせて全弾を発射する。

大量の誘導弾が空を舞い軌跡を描きながら敵機に殺到した。

防御ではなく回避を選択した未確認機体は、ミサイルの雨霰を交わしながら銃剣を用いて巧みに処理していく。

 

「私もいる事を忘れるな」

「!?」

 

対物ライフルの発砲音が空中に響き渡り凄まじい衝撃が敵機を襲った。

バランスを崩させる事には成功したが、行動を停止させるには至らなかった。

しかし、隙さえ作れるならば充分と言わんばかりに、残りのミサイルがターゲットへ殺到する。

爆炎が空中を覆い尽くす中でも、油断せずに攻撃を続けていた東雲。

 

「…やったか?」

 

打鉄のセンサーを活かしている為、正確性の高い射撃はターゲットを捉えていた。

現に爆炎の中で何度も衝突音が響いていたのだから。

対物ライフルの銃口を下げて煙の中心を凝視していた彼女。

先程まで銃声が空中に響いていた為、ターゲットの変化に気付けなかった2人。

 

「ぐぅっ!?」

「隊長!!」

 

唐突に蒼いビームが煙を切り裂いて、攻撃の手を止めた東雲に放たれる。

強烈な一撃を正面から受けてしまい、衝撃に意識を持って行かれそうになる。

その砲撃から数秒後、栄城にターゲットを絞って煙から飛び出した未確認機体。

 

「な、何で!?」

 

先程と全く異なる姿を目の当たりにして動揺を露にする。

まるで、今までの戦闘は様子見だと言わんばかりの変化。

打鉄の最高速度を超える速さで接近していた敵機。

咄嗟に我に帰った栄城は回避は不可能だと判断してショットガンを持ち出す。

至近距離に潜り込んだターゲットに散弾をお見舞いした。

彼女の攻撃はシールドを貫く事も行動の阻害も出来ない。

ツインアイが怪しい輝きを放ち、言い様の無い恐怖に顔を歪める。

 

「ひっ…!」

 

正面から敵機の苛烈な攻撃を受けてボロボロになる打鉄。

意識を刈り取られた彼女はそのまま地上に墜落していった。

 

(冗談じゃないわ。こんな化け物がIS学園に行ったら…)

 

部下が無事である事を祈りつつ、あまりの危機的状況に焦りを感じていた。

この機体がIS学園に到達すれば、どれほどの被害が出るか計り知れない。

戦えるのは自分1人しかいない。

だからといって、ここで退くという選択肢は無い。

覚悟を決めて後部スラスター翼にエネルギーをチャージする。

 

「ここから先に行かせるものか!」

 

覚悟を言葉にすると同時にイグニッションブーストを発動した。

正面から近づいて来る打鉄に容赦無く銃弾を浴びせる。

敵の迎撃を予測していた東雲は両肩部分に備え付けられた楯を構えた。

それでも、異常な火力を誇る射撃を防ぎ切れずに欠損していく。

大量の銃弾が肌を掠めて血が流れるが気にしている余裕など無い。

 

「捕まえたぞ…!」

 

決して少なくないダメージを負いながらも、敵機の眼と鼻の先まで近付く事に成功した。

銃剣で切り払われるよりも先に腕を掴んだ彼女。

出力が段違いである為、打鉄が軋む音が鳴り徐々に追い込まれていく。

また、両腕を封じても背面や肩、脚部に豊富な武装がついてあり、攻撃を貰わない保証など微塵も無い。

しかし、危機的状況にも関わらず獰猛な笑みを浮かべていた彼女。

ボロボロの打鉄の両肩には2門のレールキャノンが装備されていた。

楯を正面に構えている隙に取り出していた最後の切り札。

 

「喰らえぇぇぇ!!!」

 

敵機の腕を掴んだままでレールキャノンを発射した。

射撃の反動で凄まじい衝撃が全身に掛かる。

残りのエネルギーを使い切るつもりで撃ち尽くす。

シールドエネルギー残量が危険域に入った事でアラートが鳴る。

 

「はぁ…げほ…」

 

体力の限界を迎えて掴んだ手を離す。

肩で息をしながら正面を向こうとして…

 

「ぁ…」

 

先程よりも強烈な衝撃が与えられる。

どうやら至近距離で反撃を貰ったようだ。

砕かれたパーツが宙を舞う中、朦朧とした意識で目の前の敵を見た東雲。

 

(お願い…誰か…子供達を…)

 

IS学園の生徒の無事を願って墜落するのだった。

 

 

 

一部始終を聞き終えた織斑千冬と山田真耶は感謝の言葉を述べて保健室を後にしていた。

彼女達を撃墜したISが来なくてよかったと胸を撫で下ろしていた真耶。

廊下を歩きながら聞いた話を整理していた2人。

 

「センサーで判別出来なかったのも妙ですね。出来たのは位置確認だけという話でしたし、フルスキンなら肉眼で判別も出来ません」

「ああ」

 

通常、ISのハイパーセンサーを用いるならば、相手が有人か無人か判別するのは難しくない。

しかし、敵機と交戦した本人ですら、相手が人間かそうでないのか分からなかった。

 

「…やはり今回の事件に篠ノ之博士は関わっているのでしょうか?」

「その可能性は高い」

 

IS学園の防衛システムへのハッキング。

複数の無人機によるアリーナ襲撃。

圧倒的な性能を誇るフルスキンのIS。

その何れも非常に高い技術力を必要としている。

あの天災ならば容易く成し遂げられるのだろう。

しかし、彼女の仕業と仮定しても納得出来ない点は多々ある。

 

(どうして織斑君と凰さんを無人機に襲わせたの?私の気のせいなのかな…)

(一夏が乗った白式のデータを収集するならば、あそこまで戦力を送る必要は無かった筈だ。アイツと無人機を戦わせるとしても精々1体が限度という事も知っているだろう)

 

普通の神経をしているならば、あの様な真似をする筈が無い。

白式の開発者という立場からも、今回の件に関わったとは考えにくい。

篠ノ之束を詳しく知らない人間として極普通の考えだった。

天災と友人関係にある織斑千冬は真耶とは違う疑問を抱いていた。

人の迷惑を欠片も考慮しない彼女ならばやりかねない。

しかし、ISを操縦して日の浅い一夏には荷が重すぎる相手だった。

 

(映像記録が抹消された機体についても気になる。シールドを容易く貫通する攻撃力…既存のISと全く異なる形状…それはまるで…)

 

気になるのはアリーナで起きた出来事だけではない。

IS学園から離れた場所で3機の打鉄と交戦した未確認機体。

東雲から聞いた特徴に酷似したISを織斑千冬は知っている。

その機体を駆るのは自分の生徒なのだから。

次から次へと厄介事が積み重なっていく。

真耶に聞こえない声量で溜息を吐いて歩みを進めるのだった。


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