少年と女神の物語   作:biwanosin

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今回、クイズの答えが分かります。


では、本編へどうぞ!


第五十六話

「いっつ・・・何すんのよ、バカ兄貴!」

 

 急にバスから放り出されて打った場所をさすりながら、無意識のうちにそう怒鳴る。

 あいつ・・・何のつもりで、

 

「・・・え?」

 

 そう思って振り返ると、そこにバスはなかった。

 代わりにあるのは・・・

 

「布・・・?でも、なんで・・・」

 

 そう、布。

 最初はその布にバスの厚みがあって・・・一瞬の間に、それは消える。

 その布が風に乗って飛ばされると、中から現れたのは・・・

 

「ウソ・・・」

 

 中からは、二振りの槍を構えたお兄ちゃんが、三人出てきた。

 何で、三人も・・・

 

「氷柱、無事か!?」

「え、ええ・・・」

「黙れ偽物!」

 

 まず、二人が槍を打ち合う。

 そのまま口論になり、さらにもう一人も参戦する。

 

「なんなのよ、これは・・・」

 

 もう、何がなんだか分からない。

 どうなってんのよ・・・お兄ちゃん・・・

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 俺は、その空間で槍を振り回していた。

 ただ向かってくる敵に槍を振るい、終なる全王(ゼウス・エクス・マキナ)も使って攻撃するが、全く同じ攻撃が返ってきて、一方的に俺がダメージを喰らう。

 途中までは医薬の酒(メディシカル・アルコール)を使って傷を癒していたのだが、そんな暇もなくなって、結局当初の予想通り沈まぬ太陽(パーマネンス・レイ)を使い、死んでは生き返ってを繰り返す状態になっている。

 

 自分の権能を喰らうのって、こんな感覚だったんだな・・・なんと言うか、すごくムカつく。

 

 そんな事を考えながら向かってくる敵を槍で突き、全く同じ攻撃を自分の腹に喰らい、風穴が一つ開く。

 口から血を吐きつつ、俺は次の手を考える。

 さっきから、何度攻撃してもこちらにしかダメージがない以上、下手にいろいろと使うわけにはいかない。手の内は、必要になるまでは隠しておきたい。

 そのためにも、四振りの槍は隠す。

 

 しかし、そうすると・・・今更ながら、俺には攻撃系の権能がほとんどない。

 これまでどおり、向こうの攻撃をいなしつつ、自分が放ったのと同じ攻撃を喰らう・・・それしか、やれることはないだろう。

 

 頼んだぞ、氷柱・・・

 

 

 

 俺は(、、)ここにいる(、、、、、)

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 目の前で起こっていることに、わたしは一切ついていけていない。

 誰かが権能を使えばそれで分かると思った。でも、違った。

 

 一人がゼウスの権能を使ったと思ったら、ほぼ同時に残りの二人もゼウスの権能を使った。

 一人が蚩尤の権能を使ったと思ったら、残りの二人も使い出す。

 

 どれかがまやかしなのかとも思ったけど、そうではない。・・・と思う。

 どれもが同じもの。一つだけから何か違うものを感じ取ることは、なかった。

 立夏姉様ほどではないけど、わたしだってそれなりの確立で霊視が降りてくる。

 まつろわぬ神が作った異空間で、それも恐らくは神そのものが目の前にいる。

 その状況で、わたしがここまで望んで違いが分からないなら・・・この三つは、違いを気にするまでもないくらいには同じもの、ということだ。

 

「くそったれ・・・さっさと正体を見せろ!」

「それはこっちの台詞だ、この偽物!」

「そう言うテメエらが偽物だろ!」

 

 それに、戦いは拮抗している。

 全く同じだけの力を持っているのだろうか、状況に変化が訪れない。

 

「どうしよう・・・電話も通じないし」

 

 異空間なんだから当然といえば当然だけど、外に連絡は出来そうにない。

 出来たらアテ姉様に連絡を取って、どうにかしてもらうんだけど・・・それが出来ない以上、私がお兄ちゃんを助けるしかない。

 

 でも・・・そのお兄ちゃんが、

 

「・・・はぁ、なにやってんのよ、あの兄貴は・・・」

 

 ここまで来ると、本気で呆れるしかない。

 とはいえ、神と直面してるこの状況で呆れてられるあたり、なんだか麻痺して得る気はするけど。

 

「「「氷柱!」」」

 

 そんな感じで考え事をしていたら、三人から大声で呼ばれる。

 そして・・・

 

「「「俺が、本物の」」」

「ああ、もう!うるさいわよ!!」

 

 私はつい、怒鳴り声を上げた。

 ああもう、人が考え事をしてるところに・・・

 

「つ、氷柱・・・?」

「うるさいのよ、人が考え事してるときに!」

「いや、でも・・・」

 

 ああ、こいつらは・・・!

 なんで、神のくせに(・・・・・)こんなに私に構うのよ!

 ・・・そう憤っていたら、霊視が下りてきた。

 大名行列と・・・それによって妻を殺された神。

 大名行列と・・・それによって殺された神。

 大名行列と・・・それを利用して狐を殺した神。

 

 ああ、それでか・・・それで、コイツらは私のことを気にしてたんだ。

 

「な、何を言ってるんだ、氷柱?この状況で考え事なんて・・・」

「考えもするでしょう?どこにも兄貴がいないんだから」

「いや、だから・・・」

「ああ、もう!うるさいわね!いい!?」

 

 私は呪力を練り上げ、ここまでの時間に練り上げていた呪力と混ぜ合わせて、さらに体内にあったものも混ぜ合わせる。

 これだけあれば・・・

 

「私の大好きなお兄ちゃんは、家族に対してわざわざそんなこと、絶対に言わない!!」

 

 そう、あの人はそんなに弱い人じゃない。

 それに、家族に対して絶対的な信頼を置いてる。

 だから・・・本当にあの中にお兄ちゃんがいたのなら、私に心配の一言ぐらいはあっても、それ以降は必要ない。

 ただひたすらに、目の前の敵と戦っていたはず。

 

御巫(みかんなぎ)八神(はっしん)よ。和合の鎮めに応えて、静謐を顕し給え・・・!」

 

 精神感応力を最大限に高めて、巫女の和魂を放射する『御霊鎮めの法』。

 私はそれに少しばかりのアレンジを入れ、体から放たれた光を十本の触手にする。かなりの負担だけど、時間をかけてしっかりと呪力を練れた分、安定して行える。

 とはいえ、これは一日に出来て三回。それも、かなりの無茶をしてようやく、くらいのもの。

 

「この一回で決める・・・!」

 

 私はそう決めて、一気に九本の触手を神に向けて放つ。

 向こうもそれを多少は危険だと思ったのか手を出してきて・・・それをまとめて、一本でかき消す。

 

 次に本人達が来たので、私はいい加減あの姿にいらいらしていたこともあり、一人当たり二本使ってその権能を解除する。

 それでも向かってきたのを、二本の触手で押しとどめる。

 これで、道が出来た!

 

「さっさと出てきなさいよ、兄貴!」

 

 その道に沿って触手を進ませて、目的のもの・・・最初から消える様子のない、巨大な布に触れさせ、その権能をかき消す。

 

「ナイス、氷柱!」

 

 その結果出てきたのは、全身ボロボロの兄貴と、布が代わって出てきた神に、兄貴に蹴飛ばされて出てきた神。

 

「ちょ、兄貴!?どうしたのよ、その傷!?」

「いや、ちょっとあの中で色々あってな・・・治癒の霊薬、ある?」

「え、ええ・・・」

 

 私がポケットから小さな瓶を取り出して渡すと、お兄ちゃんはそれを一気に飲み干す。

 その瞬間に傷が治ったから・・・ああ、また沈まぬ太陽を使ってたんだ。

 あの権能を使ってる間、お兄ちゃんは死を一切恐れなくなるから、かなり心配になるんだけど・・・

 せっかく、医薬の酒が増えたんだから使う機会が減るかな、って思ってたのに・・・

 

「ふぅ・・・んじゃ、やるとしますか。霊視は?」

「あ・・・今出てきた二体の分まで出来てるわよ」

「ん、よし。ならいけるな・・・民の知は我が知。我が知は我が知。我はこの知を用いて叡智を手にせん」

 

 おそらく、今お兄ちゃんは私の頭の中を覗いて、戦っている神の知識を得た。

 

「さて、俺はかなり頭にきてるんでね。何が何でも五柱全員殺させてもらうぞ、狸ども・・・!」

 

 そして、二振りの槍を向けながら目の前にいる五匹の狸・・・

 

 『芝右衛門狸』、『蓑山大明神』、『二つ岩大明神』、『金長大明神』、『本陣狸大明神』の五柱の神に向けて、そう宣言した。

 




はい、というわけで今回顕現した神は『芝右衛門狸』、『蓑山大明神』、『二つ岩大明神』、『金長大明神』、『本陣狸大明神』の五柱になります!

繫がりとしてはですね。
『芝右衛門狸』と『蓑山大明神』こと『屋島の禿狸』、『二つ岩大明神』こと『団三郎狸』は同じ『日本三名狸』として。
まつろわぬ神は『芝右衛門狸』になります。

残りの二柱もまた狸で、こちらは『本陣狸大明神』が先祖である『隠神刑部』の持つ狸の群れという属性を利用して『金長大明神』が召喚された形になります。

五柱の共通要素は、『狸である』ということですね。

もう少し解説を入れていきますね。
とりあえず、あの羅列した霊視の内容についてだけでも。

『第五十一話』の最後に出てきた霊視は、五柱のものが混ざっています。

『芝右衛門狸』は『葉と金』『酒』『大名行列』
『屋島の禿狸』は『平家』『源家』『大名行列』
『団三郎狸』は『葉と金』『医者』『多額の金』『大名行列』
『本陣狸大明神』は『学業』『就職』『良縁』『安産』『名声』『交通安全』『商売繁盛』『回春』
『金長大明神』は『商売繁盛』『虎』『自害』『獣の群れ』


正解者は『つばさ』さんです!
今回はもう、誰にも当てられない、位のつもりでいたのですけど、まさか当てられるとは・・・参りました。


では、感想、意見、誤字脱字待ってます!

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