少年と女神の物語   作:biwanosin

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そういえば、前回の話にすっごく大きいヒントがあったんですけど・・・気付いた人はいましたかね?


では、本編へどうぞ!


第四十五話

 で、近くにあった店でサイズの合う服と靴を勝手に調達した俺と梅先輩は、委員会に支払いをしておくよう俺の名前で電話し、また行動を再開していた。

 

「・・・ねえ、梅先輩。俺はなんでこんなにぐるぐる移動しているのでしょう?」

「それは私ではなくあの神様に言ってください。何で急に京都の伏見区に行くことになって、さらには大阪の住吉区に戻ることになるのかとか、次に東京の品川区北品川に行くのかとか、山ばっかり異常な数登るのかとか、文句を言いたいのはこっちなんですから」

 

 余談だが、移動は途中から俺が跳躍の術で行ったし、山を登る際には豊穣王(フェ―タイルキング)で操った植物にのって登ったりした。

 はっきり言うと、真面目に移動するのがバカらしくなってきたのだ。しかも、あれ以降一回もあの神と出会わない。そのくせ、北品川に行ったとき以外は毎回神獣がいるし。いい加減飽きたんだよ、鬼とか鳥獣とか蛾とか。倒し方もだんだん雑になってきて、被害もでかくなってきてるし。

 

「・・・スイマセン、梅先輩。今回の神と俺が戦うとき、今回の神が出してきた神獣と戦うとき、いつも以上に被害がでかくなるって言っといてください」

「分かりました。人的被害が出なければ何とかなりますので」

 

 ったく、何であの神は俺と戦おうとしないのか・・・そのくせ、敵なのは間違いないし・・・

 

「あと、水辺にも出没しているようです。海とか、川とかで一休みしている姿が何度も確認されていて、そのたびに委員会の方で慌てて記録を消そうと躍起になっています」

「その辺りに神獣は?」

「出ていませんよ。本当に、ただ休んでいるようです」

 

 と言うことは、アイツは水神のような属性も持ってるのか・・・正体だけでもつかめれば、後は先回りとかも出来ると思うんだが・・・

 

「・・・はぁ、とりあえず、今は策がない状態ですね」

「ですよね。・・・では、私の勘で移動してみる、と言うのはどうでしょう?」

「と言いますと?」

「これでも私は媛巫女ですし、祐理さんほどではありませんが霊視もできます。そして、私が媛巫女となりえるだけのものもあるのです」

「そりゃ、あるでしょうね」

 

 そうでもなければ媛巫女にはなれない。祐理はその霊視の能力で媛巫女になったはず。詳しくは覚えていない。

 ついでに言っておくと氷柱にも一度、媛巫女として働かないか、と言う誘いがあったのだが、一蹴した。

 

「それが、特異点を見つけられる・・・かもしれない、と言うものです」

「すっごくあいまいですね」

「そりゃ、ただの人間が持つ能力ですから。それでも、賭けるだけの価値はある、と考えます」

「・・・まぁ、それ以外に頼るものがないのも確かなんですよね」

 

 となると、もうそれ以外にはないだろう。

 

「道頓堀の法善寺横町という結果が出ましたが、どうします?」

「そんな感じの名前の川に、ついさっき行ったと思うんですけど」

 

 これだけの大移動を、一日の間にしていると言う事実に、まだ頭が追いついていない。

 と言うか、まだ一日すらたってないんだよなぁ・・・

 

「とはいえ、そこまで具体的なものなら信じてもいいでしょうね」

「信じていただけるのであれば幸いです。では、お願いします」

 

 俺は梅先輩に言われて横抱きにする。

 最初のころは抵抗があった様子の梅先輩であるが、もう今となってはそうでもない。

 散々その状態で移動したせいか、諦めたようだ。

 

「そういえば、あの神の正体についてはなんの霊視も降りていないんですか?」

「特に降りていませんね。一つだけ降りたものがありますが、噛み砕いて説明しましょうか?」

「あー・・・お願いします」

 

 あまり移動に時間もかかりそうにないので、噛み砕いてもらえるのなら助かる。

 と言うか、もうついたし。

 

「よっと・・・では、説明しますね」

「はい、お願いします」

 

 地面に降りた梅先輩がささっと服を調え、説明を始めた。

 

「では・・・色々バカやらかした英雄、です」

「本当に極限まで噛み砕いた説明、ありがとうございます」

 

 つまり、自分の欲望のためにバカやったんだろう。

 それでもなんか退治して、英雄になったんだろう。

 

「・・・・・・どんな神様だよ・・・お願い事とかしたくねぇ」

「同感ですね。そんな神様に頼むくらいなら、自分で努力する方を選びます」

「というわけで、そんな神様をブチコロスとしますか」

 

 どうやら、梅先輩は今回成功したらしい。体が高ぶっている。宿敵が近くにいるのを感じて、戦うための体を完成させた。

 

「・・・ほう、まだ会うのは当分先になると思ったぞ、神殺し」

 

 そう言いながら、禍々しい着物を纏った神が船に乗ってやってきた。

 

「まあ、あれだけ飛び回ってたんだから、そのつもりだっただろうな。おかげで、あんまり虫の居所がいいとは言えないぞ」

「そうか。確かに、今の我は汝と戦うに足るだけの力を取り戻した。・・・だが、すまんな。まだ我には、やらねばならないことが・・・捜してやらねばならぬものが、いるのだ」

 

 そのために、日本中を飛び回っていたのだろう。

 少し前に確認した梅先輩の携帯には、日本中の山のほとんどに来て欲しいと言う連絡があった。

 どれだけ山をめぐったんだよ、コイツは・・・

 

「・・・そういわれて、逃がすと思うか?」

「逃がさぬだろうな。そのようなこと、神殺しがするはずもない。・・・そして、我自身も神殺しを前に刃を交えぬなど、ありえぬこと」

 

 そう言っている神の背後に巨大な石が現れ、俺のほうに飛んでくる。

 反射的に俺がそれを砕くとそれに隠れて神が船に乗って飛んでいこうとしているので・・・

 

(いかずち)よ!」

「ぬ・・・邪魔をするか、神殺し」

 

 俺は容赦なく雷を落として、船を破壊する。

 

「ったく・・・何で鋼の神様が、神殺しを前に背を向けてるんだよ」

「ほう・・・我が鋼の神であると、よく分かったな。いかにも、我は英雄である」

「人間なめるなよ」

 

 ここまで行っても冷静なままである神に俺は驚いた。

 明かされたくない本質ならともかく、英雄であると見抜かれたことを、不快に思うことはないはずなのに・・・

 

「・・・では、少しばかり刃を交えるとしようか。三度もであった身だ、何かしらの逆縁を感じる。ここで刃を交えるのも、また一興よな」

「三度・・・?」

 

 確か、ここであったのが二回目のはずなのだが・・・

 

「・・・まあ、気にしても無駄か」

 

 恐らくこれまでに行ったどこかでまだこいつがいた、と言うことなんだろうけど・・・俺は色々と動かされていたせいで怒りに包まれてたし、体が高ぶったのに気づいていなくてもおかしくはない。山を五十二個登った辺りで、もう限界も近かったしな・・・

 

「ゆくぞ、神殺し」

 

 そういった神から放たれるのは音速を超えた石礫や、どこから現れたのか分からない火の矢、ダイアモンドをも斬り裂く水の刃。圧倒的なまでの物量による攻撃だった。

 

「ふぅ・・・滅槍烈刃(めっそうれっぱ)!」

 

 一つ二つなら神槍絶刃で防ぐのだが、これはそんな数ではない。

 だったら・・・こっちだ。

 

 俺は力づくでまず飛んできたものを両手の槍で叩き落し、

 

「烈槍滅刃《れっそうめっぱ》!」

 

 そのまま流れで、別の技を放つ。

 そのまま滅槍、烈槍を繰り返して、ひたすら飛んでくるものを叩き落し、砕き、切り裂き、弾き続ける。

 

 この二つの技は連続で放つことを前提とした技。

 神槍が弾くことを、龍槍が砕くことを目的とした技であるのに対し、この二つの技は相手に休む暇を与えずに繰り返す技。

 今回はそれに神槍の技術を少し組み込み、全ての技を消すことを目的とした。

 

「・・・っと。これで全部か」

「うむ、まさかこちらの攻撃を全て消されるとは思っていなかった」

 

 完璧に、油断していた。

 こうなることを想定して沈まぬ太陽(パーマネンス・レイ)を使っていたのも、死なないから、と言う油断が存在したのかもしれない。

 

「だが、これで終わりだ、神殺し・・・汝はよき戦士であった」

「武双君!」

 

 そして、俺の後ろでそういった神は・・・

 

 手に持った獲物で、俺の胴体を一秒に十回以上のペースでメッタ刺しにした。

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 私の前で、私を守るために攻撃を全て消した武双君が神に攻撃され続けている。

 あの時、武双君は跳ぶことで避けることもできたはずだ。なのに、彼は一瞬の躊躇いもなく消すことを選んだ。

 

「・・・これで、このものが立ち塞がることはないだろう」

 

 そう言いながら、神は倒れた武双君から刺していた獲物を抜き取る。

 それをしっかりと見ることはできなかったが、細い、武器であることだけは、見ることができました。

 

「おい、そこの巫女よ」

 

 神はそう言いながら、私の方を見もせずに命令してきます。

 

「このものはよき戦士であった。・・・せめて、供養してやれ」

 

 そう言って、再び船に乗ってその神は飛んでいきました。

 その姿をしっかりと見て、霊視が降りてきましたが・・・それは、今はいいです。

 

 私は信じることができず、神が見えなくなってから武双君に向かって走ります。

 彼が死んでいないことを信じて。

 




こんな感じになりました。


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