少年と女神の物語   作:biwanosin

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はい、前回の風神雷神の章のタイトルを何にするか悩み、結局『奈良破壊』編とか言うわけの分からんタイトルを付けたbiwanoshinです。
さすがにあの規模の破壊はアウトかなぁとかビクビクしていたのですが・・・大丈夫だったのでしょうか?そんな心配をしながらの今回の投稿であります。

書きあがった時の感想はあれですね。武双どうしようもねえなコイツ、です。



では、本編へどうぞ!


第百二十話

「一体何を考えていらっしゃるのですか!」

 

 奈良県で風神雷神と激しい戦いを繰り広げた日からはや二日。

 これまでの戦いとは若干方向性の子となる、しかし心躍る戦いの代償として俺は死んだ。まあこれはいつものことなんだが、いつもとは違って今回は復活まで数日かかっているのだ。なんでも、倒れた際にそのままがれきに埋まってしまったらしい。探すのに手間取って治癒をかけられなかった、というわけだ。そういうわけで復活はつい数分前だったりする(厳密に言えばずっと死に続けて生き返り続けての無限ループから解放された)。正史編纂委員会総出で探したとはいえ、捜索範囲は奈良県全体。携帯電話もがれきに埋もれた際に壊れたからGPSも使えず何の当てもなかったわけだから、まあ時間がかかっても仕方ないといえば仕方ない。

 あ、因みにだがウチの家族はまだ奈良県に来ていない。俺を探すためにさらに奈良県が死んでしまう事態は避けたかったらしく、色んなところのお偉いさんが泣いて土下座して、二日間の猶予をもらったらしい。譲歩するとは、珍しいこともあったものだ。いやまあ、俺がガチで死んでるわけがないって言う確信があったからなのか

もしれないが。

 

 で、復活してまだ数分しかたっていない俺は今。反射的に正座してしまっている。

 

「い、いや。えっとですね・・・」

 

 あ、なんか敬語になっちゃってる。立場がある身なんだから、せめて強気で行こう。どーせお説教は避けられないんだから、気にしたら負けだ。一つ咳払いをして、ああするしかなかった理由を言っていく。

 

「あれしか手段はなかった。武器になりそうなものがそこら中に生えてるんだから使わないわけがない。まつろわぬ神を殺す代償なんだから国一個までいかなければ大したことはない。よって反省もしていない」

「だまらっしゃい!!!!」

 

 媛巫女筆頭怖い。超怖い。ってか、若干口調がキャラ崩壊していませんか?あ、ふざけたこと考えてるのがばれたのか若干にらみが強くなった。

 

「確かに。ええ、確かに御身ら魔王さま方とまつろわぬ神々との戦いでは周囲に被害が出るでしょう。受け入れがたくはありますが、天災に対して文句を言っても仕方のないことです。そう考え、全てを受け入れることこそが私たち力ない者が神殺しの力をお借りしてまつろわぬ神を退けるにあたって必要な義務であり対価であることも理解しております。ええ、理解しておりますとも。ジョン・プルートー・スミス様のように権能を使用するために対価を必要とし、それを受け入れる庇護者がいる例もありますし。護堂さんだって口ではあれだけ平和主義を語り普段であれば人並みの倫理観や正義感を持っているのにも関わらず、『やられたらやり返す』と言わんばかりにまつろわぬ神々との争いでは必ず何かしらの大きな被害をもたらしていますから」

「お、おい万理谷?」

 

 さらっと巻き込まれた護堂が冷や汗をかきながら口を挟む。事実だからかこれ以上は言ってこないみたいだけど。

 

「他の王たちも皆、神々より簒奪なされた権能を使うごとに大きな被害を及ぼしております。サルバトーレ卿の絶対切断、ヴォバン侯爵の魔眼、ええその被害を考えるだけでも恐ろしいです。ですが・・・ですが!」

 

 と、そこで祐理は右手を伸ばして周囲一帯を示す。そこに広がるのは、俺が死ぬ直前に薫に報告したとおりの荒れ地。見渡す限りどこまでも、ガレキしかない。

 

「ここまでの被害がなされることが、他にありましたか!?」

「奈良県の全ての建物が壊れて地面に超でかいクレーターが一つに小さいのが大量に広がってる。まつろわぬ神が殺せなかった場合を想定すればまだ小さいだろ!」

『そう言う問題じゃないだろ!』

「デスヨネー」

 

 もはや魔王への恐れも敬意もなく(護堂は最初っからなかったが)、この場にいる全員が口をそろえてそう言ってくる。

 

「でも!避難が完了するまではどうにか持ちこたえたんだからそこは評価してくれよ!」

「今後その人たちはどのようにして暮らすのですか!」

「ファイト、正史編纂委員会。今回の報酬はいらんから頑張ってくれ。ペガサスは今回酷使しすぎて機嫌が悪いから無理だが狸は大量に貸し出せる。野菜や果物、米とかの無限提供もするし、ガレキだって全部片づけるから」

「そう言うことではありません!」

 

 うーむ、むしろ自分の手で壊したものについて魔王が手を貸すなんて中々ないと思うんだが・・・誰に何と言われようと、俺は今回の被害は避けられなかったものだと思うし。

 

「なあ、武双。ここまでの戦いになったってことは、相手は鋼の神格だったのか?」

 

 と、護堂が一気に話題を変えてきた。これ以上お説教を続けても意味がないと考えたのか何なのか、まあ何にしても助かった。そう考えた俺は、その話題に乗っかる。

 

「そうだな・・・一応、アイツらが鋼の神格を持ってた可能性はある」

「確実じゃないのか?」

「はっきりとは断言できないな。あの神については鋼の神格を当てはめることもできるが、あの感じだとそれはないだろうし」

「何を言っているのか全く理解できないのだけれど・・・結局、どの神が降臨なされたのかしら?」

 

 と、俺が告げていたらエリカがそう尋ねてくる。そう言えばまだ今回出てきた神が何なのか言ってなかったな・・・そりゃ、俺が何を言ってるのか分からんだろう。

 ってか、なんでわざわざ護堂チーム五人総出できてるのか・・・あ、捜索対象が神殺し()だからか。

 

「今回出てきたのは、日本人なら誰でも知ってるレベルの神様だよ。風神雷神だ」

「・・・私の記憶では、その名はタケミナカタとタケミカヅチであったり天神だったりをさす名だったと思うのだが」

「まあ、そう考えるよな。俺だってそうだと思ってたし」

 

 今回手に入れた権能がどういう方向性になるのか。それを何となく想像してみるためにも俺は戦った神について知に富む偉大なるもの(ルアド・ロエサ)で調べてみた。タケミカヅチとタケミナカタのタッグで出てきたのなら鋼の権能だから期待できるなーと考えてのものだったのだが、それはなさそうな結果を得てしまっている。

 

「戦ったから当然あの神を見てるんだが、あの二神と今回俺が戦ったやつはさすがに見た目が違いすぎる。その線はさすがにないと思っていいだろうな」

「えっと、つまり風神雷神って神格として出てきたってこと?」

「そう言うことだ。権能使ってざっと調べてみたが、カニシカ王が治めてたって言うクシャーナ朝ではでっかい袋を持って走る風神を描いたコインがあったらしいし、壁画なんかの類でも『風神雷神』として描かれる。力士っぽい、鬼っぽい像だって日本では作られてるしな。そう考えれば、あの神は『風神雷神』っていう独立した神格だとも考えられる。風神を祀るお祭りも奈良県にはあるっぽいし、ちゃんと信仰も残ってるんだろ」

 

 そして、信仰がまだそれだけ残っていればその姿でまつろわぬ神が現れることもある。護堂がこの間戦ったランスロットや俺が戦ったヒルコみたいな『この時代に降臨すればもうあの姿ではありえない』タイプの神とは逆に、『現代においてある信仰から降臨する神』というのもあり得る、ってことだろう。風神雷神が描かれた扇子ってのもかなりの頻度で見るし。

 

「で、まあ風神雷神らしく雲の上から雷落として暴風吹き荒らしてだったんだ。広い範囲で逃げ回りながら戦って結果被害が無茶苦茶でかくなっても仕方ない」

「だからと言って五重塔を投げ飛ばし、鳥居を投げ飛ばし、などしなくてもよろしいでしょう!」

「あそこまで武器を届けるとなると大きさとか重量とかが必須なんだよ」

即席工場(インスタント・ファクトリー)でお造りになってください!」

「これ見よがしに武器なんて作ってみろ。距離もあるんだから、『さあ撃退する準備を整えてください』っていうようなもんだろ」

「そ、それは・・・」

 

 よし、超無茶苦茶な理論だが何とか丸め込めるかもしれない。

 

「って、待て武双。それが通用するのは初回だけじゃないのか?」

「チッ・・・」

「今舌打ちしたよな!?」

「なーんでお前が攻める側なのかね・・・どう考えても、お前は説教される側だろ」

「そ、それは・・・」

「護堂さんについては普段から十分に言わせていただいてますから」

「・・・尻に敷かれてるんだな」

 

 ちょっと同情してしまった。まあ、うん。破壊したものの文化的価値の合計でも範囲でも今回の俺の一件だけで圧勝できそうだけど。ここまでぶっ壊れた状態を見てスッキリした自分がいるとはさすがに言えない。

 

「とにかく!武双さんは少しご自身のお持ちである力がどれだけの被害をもたらしかねないのかを自覚してください!」

「基本どれをとっても世界を滅ぼせる力だと自覚しています」

「ああ、もう・・・」

 

 たぶん、普段お説教をする護堂はもうとっくに折れてるんだろうな。変なところで常識人なところがあるし。俺はもう、まつろわぬ神とか同族との戦いで生じた被害はどのレベルであっても必須なものであるって考えることにしてるけど。

 

「さて、と。んじゃ俺はガレキを全部回収して狸召喚して帰るわ。家に帰って新年迎える準備しないとだし」

「あ、ああ・・・って、これだけのガレキをそんな短期間でどうにかできるのか?」

「堅牢なる大親分で蚊帳吊り狸を召喚。後はテキトーに狸たちを出しまくって持ってこさせて俺も動き回って放りこんでいけば、数時間で終わるだろ。布をガレキに当てていくだけの簡単な作業だ」

 

 そう言いながら早速権能を使って大きめの布と大量の狸を召喚する。伝承のないただの狸の妖怪だけど、それでもれっきとした神獣だ。便利なことに俺の権能の超劣化版も一個だけなら使えるみたいだし、濡れ皿の怪力超劣化verを持たせればすぐに行けるだろう。あー、こういう時は神速の権能が欲しくなる・・・それさえあれば、布を自分の前に突き出してひたすら走り回ってで済むのに・・・

 

「・・・って、ちょっと待て武双。最初に多少無茶をしてでもその権能で異世界に連れ込めば、被害なくて済んだんじゃないか?」

「・・・・・・・・・いや、それは難しかったから。それにあれをそう言う形で使わなかったからこそ向うの隙を付けたんだから。堅牢なる大親分は他にもいろんな狸の種類があるし」

「武双さん!?」

「よーっし、ガレキをさっさと片づけるぞー!」

 

 逃げた。全力で逃げた。それはもう全力で。

 

 さあ、早く終わらせて奈良県から逃げよう!

 




はい、こんな感じになりました。
この後武双は自分で走りながらガレキを回収しつつ狸のあつめてきたモノも異界に落として集めつつ、途中であった自分を発見した媛巫女にお礼を言い、何かあったら手を貸すと約束。終了次第家に帰りました。

死んでいた期間も長かったためにパンドラさんは超ご機嫌だったとか。息子と話せるのが楽しいんだろうね。うんうん、いいことだ。

では、感想、意見、誤字脱字など待ってます!

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