少年と女神の物語   作:biwanosin

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さて、依林が見た神とは何なのか?

では、本編へどうぞ!


第九話

「林姉・・・まあ、林姉のその呑気さはもういいよ。長所の一つだと思うし」

「ありがとう、ムー君!」

「でも、少しは慌てよう?それくらいの危機感は持っていよう?俺が言えたことじゃないけど、神様は本当に危険なんだから」

「はーい」

「うん、よろしい」

 

 いつ話しても思うけど、姉に接してる感じがしない。

 どちらかというと、妹なんだよな・・・今も頭を撫でられて喜んでるし。

 

「はあ・・・二人とも、もういいか?なら話を再開して欲しいんだが」

「ですね。まつろわぬ神が関わってるなら、対処は急いだほうが良いでしょうし」

「アー姉もそのうちの一人だってこと、忘れてない?」

 

 まあ、人の中で暮らしてもらおうとしてるんだから、それでいいだろ。

 それよりも、話の再開だ。

 

「で、林姉はその神様が何なのか、分かる?」

「う~ん・・・わかんない。リーちゃんにも言ったんだけど、四目六臂で獣みたいな体で・・・でも、人みたいでもあって、牛さんみたいな頭と蹄が有って・・・そうそう!立派なお角も生えてたよ~」

「イーリン、電話で聞いたときにも思ったが、相変わらず変なところで記憶力が良いな」

「それに、そこまで分かっててなんで神様の名前を知らないのかなっ?」

「え~!もしかして皆は分かったの?」

 

 うん、この業界に関わってて、それだけの情報と中国ってことから分からない人は少ないんじゃないかな?

 

「林姉も知ってるはずだよ?家にあった古代中国神話の本読んでたよね?」

「うん、読んだよ~。漢民族に伝えられてるやつだよね?」

「うん、正解。じゃあ、さっき林姉が言ってたことと中国神話から考えると?」

 

 林姉は「う~・・・」とか唸りながら悩み始めた。

 学校でこの姿を見た人は、揃って非公認の親衛隊へと入隊し、近づく男を排除している。

 生徒会としても弟としても頭を抱える問題で、ついでに言うと、これが学校で起こしている問題の、林姉バージョンだ。

 

「・・・あっ!蚩尤!ね、蚩尤でしょ!」

「うん、正解。よくできました」

「えへへ~。撫でて撫でて~」

 

 猫みたいに擦り付けてくる頭は撫でるとして、それは十分に利用できる内容じゃないか?

 

「確か、蚩尤って鍛冶の神格だったよね?」

「うん、結構悪行を行ったりしてるけどその神格が鍛冶から出来てるのは間違いないよ」

「では、先ほど話していたことも?」

「きっと、できるね!よかったね、アー姉!」

 

 立夏はアテに飛びつき、その胸に顔をうずめている。

 まあ、この光景は眼福だし、いつの間にか俺の膝の上に頭を乗せている林姉の笑顔も見ていて良いものなのだが、何か一つ忘れてないか?

 

「質問だけど、蚩尤って素直に頼みごと聞いてくれるやつだったか?」

 

 とりあえず、話を聞いてくれそうなのがリズ姉くらいだから、リズ姉に聞くことにした。

 リズ姉は弄っていた携帯から顔をあげ、ポケットにしまいながら答える。

 

「そんなわけないだろう。神話の中では黄帝に立ち向かった立場だぞ?」

「じゃあ、どうやって加工してもらうんだ?」

「いや、やってもらう必要はないだろう。なんせ、お前がいるんだからな?」

 

 いえーい!いやな予感が的中したぜー!

 

「俺が、簒奪しろと?」

「そうだな。まあ、武双が運よく簒奪できなかったら他の鍛冶の神格を探せば良いだろう?」

 

 この人は自分の弟にどれだけ死線をくぐらせるつもりなのだろう?

 まだ権能の把握すらできてないってのに・・・

 

「まあ、それ以外に方法がないんだよな・・・気が進まないけど、行きますか」

「あ、そうそう!中国の空港でパパとママに会ったんだけど、これをアーちゃんに渡してって~」

 

 そう言いながら、林姉はパスポートを取り出した。

 相変わらず、あの人たちは行動が早いな・・・

 

「私に・・・?一体なんですか?」

「ん?パスポート~」

「戸籍ないのにどうやって!?」

 

 おー、アテが驚いてる~。

 女神様が驚くってのは、結構なことだよな。

 

「まあ、あれで日本の正史編纂委員会が頼みを断れないくらいの実力者だからね。どこまでしてあるって?」

「う~んとねえ・・・数日前に家に来て、ムー君たちと一緒に入国したことになってるって!」

「よし、それなら今すぐにも向かえるな」

 

 確か中国には中国のカンピオーネがいるはずだし、早く行かないと取られる可能性がある。

 

「飛行機については、母さんのを借りるとしよう。確かこっちの空港に一隻置いてあったよな?」

「間違いないよ。って言うか、もう使用許可は取ったし整備も済んでる」

「おー、リズ姉さっすが!やることが早いね!」

「パイロットはどうするんだ?」

「もう呼んであるよ。母さんの知り合いから一人」

 

 仕事速すぎるだろ・・・いや、それはさっき電話をいじってたときかな?

 だとしたら、急に頼まれたパイロットは哀れだ・・・南無。

 

「というわけで、もう出るぞ。さっさと荷物をまとめろ。それと、立夏はアテに移動式の結界を付けろ」

「念のためだね。分かった!こっちに来て、アー姉!」

「あ、はい!」

 

 さて、二人は結界関係で忙しいだろうし・・・立夏の荷物でもまとめるかな?




というわけで、依林が見た神様は蚩尤でした!

次辺りからバトルを始めたいと思います!
バトルは結構早く終わるかもしれません。


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