やはり岸波白野の青春ラブコメは王道か?   作:魔物Z

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今回でガハマさんの依頼終了です。

あんまり納得していただけるかがわかりませんが、自分の考えなども含めて書かせていただきました。

なるべく気にせず楽しんでもらいたいです。


料理は気持ちが大切です。

 

 

 

 

 

俺は予熱しておいたオーブンにマフィンの生地が入ったカップを入れる。

 

「後は焼けるのを待つだけだな」

 

こっちは済んだからクッキー作りのほうを見に行こう。

 

俺が作ってる間に雪ノ下さんが由比ヶ浜さんのミスを指摘しまくってたけど…。

 

「なんか違う…」

 

由比ヶ浜さんはしょんぼりと肩を落としている。

 

「そっちはどんな感じ?」

 

俺は雪ノ下さんに尋ねてみる。

 

「見ての通りよ。……どう教えれば伝わるのかしら?」

 

そこの皿を見ると最初のクッキー?に比べたら、形は歪ながらも十分と言えるくらいマシな頑張って作った手作りクッキーになっている。

 

「なんでうまくいかないのかなぁ…。言われたとおりにやってるのに」

 

由比ヶ浜さんは不思議そうにクッキーに手を伸ばし口に運ぶ。

 

「うーん、やっぱり雪ノ下さんのと違う」

 

「俺も一つ貰ってもいいかな?」

 

「え?別にいいけど…。雪ノ下さんや岸波君みたいにおいしくないよ…」

 

手作りの場合は美味しさも大事だけどそれは二の次だ。そのことは比企谷が言ってくれるだろ。

 

由比ヶ浜さんのクッキーを口に入れる。

 

「うん。これなら最初のクッキーに比べたら十分いいよ。それにこれから頑張っていけば美味しくなると思う」

 

「そうかな…」

 

由比ヶ浜さん納得していないような顔をしている。

 

「あのさぁ、さっきから思ってんだけど、なんでお前らうまいクッキー作ろうとしてんの?」

 

「はぁ?」

 

由比ヶ浜さんが「こいつ何言ってんの?」みたいな顔で比企谷を見る。

 

まぁ、それは納得いかないよな。食べて貰うなら美味しい方がいいのは当たり前だ。俺だってそうだ。だから頑張って努力して今に至るわけだし。それにいい先生が二人もいたからな。

 

「お前、ビッチのくせに何もわかってないの?バカなの?」

 

比企谷…。またそういうこと言う。

 

「だからビッチ言うなっつーの!」

 

「男心がまるでわかってないのな」

 

「し、仕方ないでしょ!付き合ったことないんだから!そ、そりゃ友達にはつ、付き合ってる子とか結構いるけど…そ、そういう子たちに合わせたたらこうなってたし…」

 

「別に由比ヶ浜さんの下半身事情はどうでもいいのだけれど、結局、比企谷くんは何が言いたいの?」

 

下半身事情ってなんだろ?単語の意味はわからないけで俺の中のオヤジが聞けと騒いでいる…。

 

「下半身事情?なにその単語始めて聞いたな。どういう意味なの雪ノ下さん?」

 

比企谷と由比ヶ浜さんが俺の言葉に軽く引いてるよ。

 

「岸波くん。そういうことはわからないからと言って女性に聞くのはどうかと思うのだけれど」

 

雪ノ下さんは冷たい目で俺を睨みながら言ってくる。自分で言ったくせに…。

 

「わ、わかった。あとでインターネットで調べてみるよ」

 

あと比企谷が言ってたジゴロってのも気になるな…。

 

「ふぅー、どうやらおたくらは本当の手作りクッキーを食べたことがないと見える。十分後、ここへきてください。俺が『本当』の手作りクッキーってやつを食べさせてやりますよ。」

 

比企谷は勝ち誇った笑みでそう言った。

 

「何ですって…。上等じゃない。楽しみにしてるわ!」

 

由比ヶ浜さんは雪ノ下さんを引っ張って家庭科室を出て行く。

 

「岸波。お前は出てかないのか?」

 

「俺はお前の行動はなんとなくわかってるからな。お前の言葉の意味もわかる。それにあともう少しで俺が作ってるマフィンができるから、みんなでお茶を飲みながら食べようか。比企谷の言う本当の手作りクッキーというか、由比ヶ浜さんのクッキーと一緒にね」

 

「お前本当にすごいな。なに名探偵の生まれ変わり?」

 

「いや、平凡で最弱だった魔術師の生まれ変わりだ。」

 

「…。お前まさか材木座と同じ人種か?」

 

「比企谷も材木座を知ってるの?」

 

以外ではないが材木座を知ってるのか。

 

「まぁ、知り合いたくはなかったな」

 

そういえば材木座で気になることがあるんだった。

 

「なぜかさ、あいつ前はよく話しかけてきたんだけど、一年の後半からやけにガンを飛ばしたりしてきたり、無視してくるんだけどなぜか知らない?」

 

なぜだろう?

 

「俺に聞くな…。俺とあいつでは全く違うから考えがわかるわけがないだろ」

 

「そうだな。悪かったな比企谷。今度は自分から聞いてみるよ」

 

「あとお前のその設定、魔術師の時点で平凡じゃないだろ」

 

「それもそうか。今度考え直さないとな…」

 

まぁ本当のことなんだが。

 

「そうだ。そろそろマフィンも出来るから俺はお茶の用意でもするか」

 

 

 

 

 

全員でお茶を飲み俺の作ったマフィンを食べながら机の真ん中にある比企谷の『本当の手作りクッキー』を見ていた。

 

そして女子二人の反応は。

 

「岸波くん。相変わらず腹立たしいほどに美味しいわねあなたの作る食べ物は」

 

「なぜ怒りたくなるほどなの?」

 

いつからかだったろう…。『なぜここまで美味しくなるのかがわからないのだけれど?少しムカつくわね』と言われるようになった。

 

美味しく食べて貰いたいだけなのにな。

 

「それに比べて…。比企谷くん。これが『本当の手作りクッキー』なの?形も悪いし、不揃いね。それにところどころ焦げているのもある。――――これって…」

 

雪ノ下さんは気付いたね。

 

「ぷはっ、大口叩いたわりに大したことないとかマジウケるっ!食べるまでもないわっ!」

 

由比ヶ浜さんは言われるまでは気付きそうにないな。

 

「ま、まぁ、そう言わず食べてみてくださいよ」

 

比企谷は少しキレそうだけど我慢して余裕の笑み?を崩さない。

 

「ねぇ岸波くん」

 

雪ノ下さんが二人に聞こえないぐらいの声で話しかけてきた。

 

「何かな雪ノ下さん?」

 

俺も同じくらいの声で返す。

 

「岸波くんはこのことをどのあたりで気付いてたのかしら?」

 

「比企谷が『本当の手作りクッキー』を作るぐらいかな?」

 

「そ、あなたはあの僅かな情報があればわかるのね」

 

「まぁ、俺も男だから男心ってのもわかるし。料理も作るからね」

 

「?…それでこの茶番はいつまで続くのかしら?」

 

雪ノ下さんはクッキーは由比ヶ浜さんのと気付いてはいるみたいだけど、比企谷の考えまではわからないようだな。

 

「茶番ではないよ。これが比企谷の依頼解決方法、それにもうじきわかるよ」

 

俺と雪ノ下さんは比企谷と由比ヶ浜さんのほうを見る。

 

「わり、捨てるわ」

 

「ま、待ちなさいよ」

 

「何だよ?」

 

「べ、別に捨てるほどのもんじゃないでしょ。…言うほどまずくないし」

 

「…そっか。満足してもらえるか?」

 

由比ヶ浜さんは無言で頷いて比企谷から顔を背ける。

 

顔を赤くして初々しいねぇ…。少し年寄りくさいか?

 

「まぁ、由比ヶ浜がさっき作ったクッキーなんだけどな」

 

「……は?…え?え?」

 

由比ヶ浜さんは比企谷の言葉に驚いているようだ。

 

「お前らはハードルを上げすぎてんだよ。ハードル競技の主目的は飛び越えるじゃない。最速とタイムでゴールすることだ。飛び越えなきゃいけないってルールはない。ハー―――」

 

「言いたいことはわかったからもういいわ」

 

雪ノ下さん最後まで聞いてあげて。とても大切なことだから。

 

「今までは手段と目的を取り違えていたということね。岸波くんもそうかしら?」

 

「いや、俺の場合は比企谷とは少し違うかな」

 

「「「?」」」

 

比企谷と雪ノ下さんは『比企谷の答えを理解していてわからない』、由比ヶ浜さんは『最初からわからない』みたいな顔をしているな。

 

「俺の予想、比企谷は『俺のために頑張ってくれた』って思わせる感じで、見た目、味が少し悪いぐらいのモノがいいって感じだろ」

 

「そうだな」

 

「悪いほうがいいの?」と由比ヶ浜さんは比企谷に尋ねた。

 

「ああ、上手にできなかったけど一生懸命作りましたっ!ってところをアピールできればいい。だけど岸波は違うんだろ」

 

「少しな。俺は比企谷と雪ノ下さんを足した感じだ」

 

「俺には料理を教えてくれる人が二人いるんだよ。でその二人は『料理は愛』とか『食べて貰う人の気持ちを考えて』とか教えてくれてね。俺も『料理は気持ちが大切』って思ってるし、そういう気持ちで料理を作って、それを美味しく食べて貰うって本当に嬉しいことなんだ」

 

「それに食べて貰うなら美味しいほうがいいのは当たり前だ。作った人も食べてる人も嬉しいからね。だから頑張るんだよ。上手くなるまで。自分が納得するまで」

 

「それがあなたの答えということ」

 

「そうだよ。美味しいクッキーを作って、頑張って作ったことをアピール出来るように頑張る。それが俺の答え。雪ノ下さんが美味しいクッキーの作り方を、比企谷が料理の大切なことを由比ヶ浜さんに教えたんだ、なら俺はその二つを使うまでだ」

 

「岸波。お前はなんか無茶苦茶だな」

 

「そうだな。前にも『無茶だ。』『無謀だ。』とか言われたこともあるけど…。俺はさ、目指している場所があって、そこへと行く道があるのなら無茶だろうと無謀だろうと前へ進みたいんだよ」

 

ムーンセルでそうであったように。

 

「俺には無理だな。むしろ岸波みたいなやつのほうが少ないはずだ」

 

「ああ知ってる。だから俺は俺の意見を由比ヶ浜さんや今後の依頼人たちにも強要はしないよ。比企谷や雪ノ下さんにもね」

 

この後由比ヶ浜さんは『今度は自分のやり方でやってみる』と言って帰っていった。

 

俺たちは由比ヶ浜さんが帰ったあと片付けをして家庭科室を後にした。

 

雪ノ下さんはあまり納得はしなかなかったみたいだけど、由比ヶ浜さんがどういうやり方をするかは彼女しだいからどうこう言うのはお門違いだ。

 

 

 

 

 

比企谷と別れて俺と雪ノ下さんは職員室へむかっていた。

 

「雪ノ下さんはなんで比企谷と帰らなかったの?」

 

「なぜ私が彼と帰らなければならないの?気持ち悪い」

 

「疑問を疑問で返すって。それに比企谷ひどい言われようだな」

 

「それにまだ私は納得がいかないのよ。今回の由比ヶ浜さんの依頼には。岸波くんの答えはわからなくもないけれど、比企谷くんの答えには納得がいかないの」

 

 

「まぁアレは雪ノ下さんは納得しないね。でもアレも大切な考え方で、立派な解決方法だと俺は思うよ」

 

「そんなものなのかしら?」

 

「そうそう。男心は単純で女心は複雑。それでいいだよ」

 

「でも岸波くんは、両方を取ったってことは女心を理解しているってことかしら?」

 

雪ノ下さんがたまにやる『いじめっ子の目』をしている。

 

「いや、俺は料理に関してだけだよ」

 

「なぜ料理だけなの?」

 

「それは俺に料理を教えてくれる人が『女性』と『オカン』だからだよ」

 

「?」

 

当たり前の反応だな。俺の家には母親がいないから『オカン』という存在がムーンセルにいるアーチャーだとはわかるわけがないだろう。

 

そんなことを話しているうちに職員室前に着いた。

 

「俺は鍵を返しに行くけど雪ノ下さんはついて来る?」

 

「いいわ。ここで待っているわ」

 

「わかった。急いで帰って来るよ」

 

「ええ、いってらっしゃい」

 

雪ノ下さんの笑顔に見送られ職員室に入っていく。

 

 

 

 

 

「失礼します。鶴見先生いますか」

 

「岸波君依頼は終わった?」

 

「あ、はい。おかげ様で。お礼にマフィンを焼いたので家で留美ちゃんと食べてください」

 

「ありがとうね岸波君。岸波君は料理が上手でいいわね。将来留美のお婿さんにならない?」

 

何を言っているんだか。

 

「鶴見先生。そういう冗談はダメですよ。もし冗談では無くても留美ちゃんの気持ちを考えないといけません。大切な一人娘でしょ」

 

「岸波君はお婿さんよりも、優しいお兄ちゃんって感じね」

 

「はい。俺は妹や妹分には優しいですよ」

 

「あら、岸波君ってもしかしたらシスコン?」

 

「否定はしません。むしろ肯定します。でも手は出しませんよ」

 

「なら大丈夫ね」

 

「?」

 

何が大丈夫なんだ?

 

「最初に言っておいたお願いの内容よ」

 

「そういえばそうでしたね。それで内容はなんですか?」

 

「今月末の土曜日ね私出張で日曜日の夜まで帰れないのよ」

 

「なるほど。だからその出張の間留美ちゃんと一緒にいて欲しいと」

 

「岸波君はすぐに理解してくれて助かるわ。それでどうかしら?」

 

「大丈夫ですよ。うちも親は一人だし小学生一人でいるのは心細いでしょうし」

 

「ありがとう」

 

「なら留美ちゃんを俺の家に来て貰う感じでしょうか。俺の家には妹もいますし」

 

「そうして貰えると嬉しいわ。生徒がバツ一の女教師の家に出入りしているなんて噂が流れたら危ないものね。ふふふ」

 

「笑顔でそういうこと言わないでください。それに留美ちゃんに料理とか教えに言っている時点で何度も家に上がらせてもらっていますし」

 

「それもそうね。それじゃ留美にも言っておくわ。マフィン美味しく頂きます」

 

「はい。それでは決まったらメールして下さい。失礼しました」

 

そうして俺は職員室を出た。

 

職員室を出た瞬間俺に冷たい目線で睨んで来る雪ノ下さんが…、

 

「え、えーっと雪ノ下さん?」

 

「岸波くんは鍵を返しに行くだけで五分以上かかるの?それとも岸波くんは職員室の中で迷子にでもなったのかしら?」

 

ご立腹のようで…。

 

「ええ、この私を待たせているのだからそれ相応のことはしてもらうわよ」

 

「笑顔でも内容が怖いよ。それに心が読まれた」

 

「それでは何をしてもらおうかしら」

 

「ちょ、ちょっともう俺が罰を受ける前提で話が進んでるよね!」

 

「?当たり前でしょ。あなたは何を言っているのかしら?」

 

「それはこっちの台詞なんですが…。でも待たせたのも事実だしな…。仕方ないか」

 

まぁいつもお世話になってるからいいか。

 

「わかった。罰を受けよう。罰の内容はどうする?」

 

「そうね……。どんな命令でも一回だけ聞くなんてどうかしら?」

 

「うん。止めようか。それじゃあ今やってる奉仕部の勝負の意味がなくなるよ」

 

「そう言えばそんなことをしていたわね」

 

「一番大事なことだよ!それがないとこの話終わったも同然だからね!」

 

「岸波くん何を言っているのかわからないのだけれど?」

 

「ご、ごめん。ちょっと取り乱しちゃった。」

 

その後もいい案は出ることなく俺たちは帰った。

 

 

 

 

 

比企谷が入部して初めての依頼が終わって数日。

 

俺はプログラム、雪ノ下さんと比企谷は読書に勤しんでいる。

 

こつこつと戸をノックする音が聞こえてそのあと、「やっはろー!」と元気のある声で入室する由比ヶ浜さん。

 

「……何か?」

 

「え、なに。あんまり歓迎されてない…?ひょっとして雪ノ下さんってあたしのこと…嫌い?」

 

「別に嫌いじゃないわ。…ちょっと苦手、かしら」

 

「それ女子言葉で嫌いと同義語だからねっ!?」

 

そのから由比ヶ浜さんが雪ノ下さんの話を聞かずに、最近料理にはまってるとか、雪ノ下さんと今度一緒にお昼を食べようとか、今度から部活を手伝うとか話していた。

 

あと雪ノ下さんのことを『ゆきのん』と呼んでいた。

 

いいことだ。料理を頑張ることにしたんだ由比ヶ浜さん。あと雪ノ下さんがお昼は一人で食べることが好きって言ってたから俺は今度から部室じゃない場所で食べようかな。

 

由比ヶ浜さんの怒檮の攻撃の様な言葉に戸惑う雪ノ下さんは俺と比企谷のほうをちらちら見て助けを求めて来る。

 

あ、比企谷が逃げた。

 

聞こえない声で「お疲れさん」と言って部室を出て行った。

 

その後を由比ヶ浜さんが追っていった。

 

「あの子はなんなの岸波くん」

 

「そんなの決まってるじゃないか」

 

「なに?」

 

「あの子は雪ノ下さんのことが気に入ったから友達になりたいんだよ」

 

「そ、そう…」

 

雪ノ下さんは頬を少し赤くして俯く。

 

嬉しいんだな雪ノ下さん。

 

比企谷と話が終わったのか由比ヶ浜さんが戻って来た。

 

「ねぇねぇゆきのん。あっそうだ、キッシー」

 

ん?キッシー…、俺のことか?

 

「えっとキッシーって俺のこと?」

 

「そうだよ。最初は『キッシー』か『はくのん』で悩んだけどキッシーにしたの」

 

おお、この世界初のまともなあだ名だ。

 

「ありがとう。嬉しいよ」

 

「ホント!よかった。それでキッシーにもこの前のお礼に、はいクッキー」

 

由比ヶ浜さんからクッキーを受け取った。

 

中を確かめてみた少し焦げている形の悪いクッキーが入っていた。

 

「頑張ってるみたいだね由比ヶ浜さん」

 

「ま、まぁ最近料理にはまっているからね。もっと頑張って上手くできるようになるよ」

 

由比ヶ浜さんは頑張ることを選んでくれたみたいだね。

 

そうだ。この前言えなかったことを言わないとな。

 

「ねぇ雪ノ下さんと由比ヶ浜さん?」

 

「なにかしら?」

 

「なに?」

 

「この前俺が作ったモノ覚えてる?」

 

「クッキーとマフィンよね。」

 

「あれ本当に美味しかったよね!私にも作れるかな?」

 

「頑張れば作れるよ」

 

「ホント!」

 

元気だなこの子は。

 

「うん。それで、二人に質問だけど俺が作ったモノの中にあるモノが入ってたんだよ」

 

「あるモノ?」

 

「なにかしら…。あのほのかな苦みみたいなモノ?」

 

「さすがだね雪ノ下さん。それじゃあその苦みの正体は?」

 

二人は考えているようだが、

 

「……わからないわ。教えてくれるかしら岸波くん」

 

無理だったみたいだね。むしろ気付いたらすごいかな。

 

「由比ヶ浜さんが一番最初に作ったクッキーだよ」

 

「「え!」」

 

二人とも驚いてるみたいだね。

 

「本当はこの前教えるつもりだったんだけどタイミングを逃してね」

 

「岸波くん。それ本当にいてるの?」

 

「タイミングを逃したのは本当だよ。比企谷にも言われたけど悪意ではないから気にしないでくれ」

 

「そっちじゃないわ。由比ヶ浜さんの作ったクッキーを入れたのかってことよ」

 

「そうだよ。それにもしかしてヒッキーは知ってるの?」

 

「ああ、入れたし。比企谷も知ってるよ。まぁ比企谷は俺が作ってるところを見に来たからね」

 

「それで、どうして入れたのかしら」

 

「それがこの前由比ヶ浜さんに言いそびれたことだね」

 

「あたしに言いそびれたこと?」

 

そう。俺が由比ヶ浜さんに言いたかったことは、

 

「『伝えてたい気持ちを間違えないで』ってことだよ」

 

「「は?」」

 

最近この反応多くない。俺一人可笑しいこと言ってるみたいじゃん。

 

「俺はね、最初は由比ヶ浜さんのクッキーを全部自分で食べるつもりだったんだけど、由比ヶ浜さんの選んだ選択肢が諦めるではなく、頑張って美味しく作るを選んだから混ぜたんだよ」

 

「それがどうして混ぜることに繋がるの?」

 

「最初のクッキーは『感謝したい相手に作って食べてもらいたい』って感じで作ってたけど、二回目は『雪ノ下さんのような美味しいクッキーが作りたい』と思って作ったと思うんだよ。まぁ俺の推測だけどね」

 

「そ、そうかも」

 

「それで岸波くんは私が由比ヶ浜さんの見本作ることになって、由比ヶ浜さんがそうなると見越したのね」

 

「そうだけど、当たっててよかったよ」

 

やっぱり俺の感は合っているとは限らないからね。

 

「でも言う前に由比ヶ浜さんは気付いてくれたから別に言わなくてもよかったんだけどね」

 

「岸波くんはそういう風に言うけど。そうさせるように仕向けたのではないのかしら?」

 

「雪ノ下さん。流石にそれはないよ」

 

実は雪ノ下さんの言っていることはかなり近いかもね。

 

「それでも、あたしのクッキーを入れる必要はなかったと思うけど」

 

「言っただろ。『料理は気持ちが大切』って、料理とかって作った人の気持ちが宿ると思うんだよ。だから俺は『由比ヶ浜さんの気持ち』が伝わりやすくするために工夫したんだよ。美味しくするって方法でね」

 

「私にはよくわからないわね。そういうの」

 

「それは仕方がないよ。これが俺のやり方で、雪ノ下さん。君のやり方ではないから」

 

「あたしもわからないけど…、だけど今度はキッシーの手を借りないで自分の気持ちを伝えられるように頑張るね」

 

それでいい。そうやって前に進んで行ってくれ。

 

「頑張れ由比ヶ浜さん。また、味見とかして欲しかったら奉仕部のみんなを頼ってくれ」

 

「ホント!な、なら今度ゆきのんとキッシーに他の料理とか教えてもらいたいんだけど…いいかな?」

 

「俺は大丈夫だけど、雪ノ下さんはどう?」

 

「構わないわ」

 

こうして今度俺と雪ノ下さんは由比ヶ浜さんに料理を教えることになった。

 

 

 

 

 




なんか比企谷くんより白野くんのほうが由比ヶ浜さんに近づきそうなんだけど…これはどうなるんだろうか…。

次回は材…なんとか君こと材木座君の依頼です。

ルミルミはその後かな。

それではまた次回に。

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