やはり岸波白野の青春ラブコメは王道か?   作:魔物Z

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これ普通の恋愛ゲームじゃないよね。

 

 

よし、ゲームはこれでいい……のか?

 

今更だが、比企谷と一緒に恋愛ゲームをやるっておかしいよな。

 

でも仕方がない。この家に暇つぶしできそうな物ってあんまりないし。

 

じゃあ、比企谷を俺の部屋に呼ぼう。流石に居間でやるわけにはいかないし。

 

自室から出て居間に行くと比企谷と白乃が向き合っている。

 

俺は「なにやってるの?」と尋ねながら二人に近づくと机の上に白乃のメモ帳が置いてあり、いつも通りそこには文字が書いてある。

 

内容は……『比企谷さん、小町さんをわたしにください』

 

なにをやってるんだ俺の娘……。

 

「えーっと、この状況説明してくれ」

 

お父さんは娘が百合に目覚めても文句は言わないし、それからの人生を温かく見守ろうとは思う。けど理由は欲しいです。

 

「岸波の娘は妹が欲しいんだとよ」

 

「妹?」

 

俺が聞き返すと白乃はコクリと頷いてメモ帳に文字を書き始める。

 

『そう、わたしは妹が欲しい。お父さんはわたしの嫁、桜という妹がいるのに私にはいないなんて不公平。それならわたしにもわたし専用の妹をこの手に』

 

と右手をグッと握りしめながら力説?いや、力筆する。

 

『というわけで比企谷さん、いや、お兄ちゃん。小町ちゃん頂戴』

 

「やらん。小町は俺だけの妹なんだよ。それに妹が欲しきゃ父親である岸波に頼め」

 

『だってお父さん周りに女の子とかいるくせに誰にも手を出さないチキンだから、子供なんて私が中学生になってもできそうにないし』

 

まさか娘にそんなことを言われるとは、お父さんショックです。

 

『この前だって、お母さんができるみたいな思わせぶりなことを言うわりには童貞だし』

 

「あのー白乃さん?俺って父親だよ。流石にひどくないかな?」

 

「それよりも本当の四歳児かよ……」

 

『頭の中は既に十七歳以上だから』と白乃はドヤ顔で字を書いているが、それってドヤ顔することなのだろうか?

 

前世の記憶を持っているってことだから自慢はできるか。公言はできないけど。

 

「まぁ妹については今度にして、ゲームするために俺の部屋に行こう」

 

『ゲーム?わたしもやる』

 

というわけで、白乃も俺の部屋に来た。

 

「で、何のゲームすんだ?」

 

「俺が知り合いから貰ったゲームなんだけど、これ」

 

俺は自分の勉強机の上に置いてあるパソコンの画面を指さす。

 

パソコンの画面には『どきどき 総武学園』のタイトル画面が映し出されている。

 

「……ギャルゲーかよ」

 

「いやぁ、俺の家ににあるものだとこれしかないんだよね。大丈夫、俺もこのゲームは一度もやっていない初見プレイだし」

 

「そういう問題じゃねぇよ」

 

「それにこの三人がいるのなら必然的にこういうゲームだろう」

 

「何が必然だ。それに年齢制限とかいろいろあんだろ。お前の娘に見せてもいいのか」

 

『大丈夫。見た目は子供でも中身は大人だから』

 

「何処の名探偵だよ」

 

「でも、これ以外することがないんだよな。それじゃあ比企谷、俺と一緒にお菓子作りでもするか?」

 

「………」

 

最終的に比企谷が「わかったよ。やってやる」と呆れ気味に了承してくれた。

 

俺がマウスを動かして、スタートをクリックするとこのゲームの説明が出てきた。

 

「なになに……『ごく普通の生活をしていた高校二年生の主人公にモテ期が訪れた』」

 

「なんだかありきたりだな。どうせこの主人公はリア充みたいな奴だろ」

 

「いや、そうでもないぞ」

 

「は?」

 

俺は説明の続きを読み始める。

 

「『だが、主人公は誰とも付き合う気もない。当たり前に結婚なんて考えてすらいない。養う気も養われる気もない、稼いだお金は自分の為にしか使わないと決めているほどの人物であった。そう、このゲームは主人公に近づいてくるヒロインたちを拒絶し続け、モテ期の終わりまでヒロインたちをフリ続けるゲーム』」

 

「………ギャルゲーじゃあねぇな、これ。それにタイトルとのギャップの差がデカいな」

 

その通りだな。

 

『難しいゲーム。フラグを建てて回収するわけではなく、建っているフラグを折り続けるゲーム』

 

白乃がそう言うのだが

 

「でも、既に目的はわかったるんだから、結構簡単でしょ?」

 

『お父さんはわかっていない。一度建ったフラグはそう簡単には折れたりはしない』

 

なぜだろう、すごい説得力。

 

「お、難易度ってのがある」

 

難易度は三つ、デレデレ、普通、ヤンデレの三種。

 

「このゲームはヒロインをフル前提なんだから、一つ目と三つ目はねぇから二つ目の普通が安定だろうな。っていうかヤンデレって……」

 

まぁこれを俺に作らせた人物はそれに近いから仕方がない。

 

「じゃあ、普通で始めよう」

 

俺はマウスを動かして普通を選択。そしてゲームが始まりだした。

 

 ? 『――なさい。起――さい』

 

誰だ、俺の安眠を邪魔するのは。

 

 ? 『起きなさい。人がせっかく起こしに来たあげたというのにまだ眠れるとはいいご身分ね』

 

う、この声は……。

 

眠いため目を少し開けて、声の主を見ると、やはりそこには俺の幼馴染がいた。

                                           』

 

「なぁ岸波、この幼馴染キャラ、なんか雪ノ下に似てるような気がするんだが」

 

比企谷はゲーム画面に映し出されているキャラクターのCGを見て言う。

 

「まぁ何となくわかる気が、それに口調も似てるかも」

 

俺も何となくだがこのキャラクターが雪ノ下さんに似てる気がする。まぁ続きをやろう。

 

 幼馴染 『やっと目を覚ましたようね。毎日起こしにきているのだから進歩して欲しいわね』

 

俺は付き合うとか結婚とかそういうことはしたくないが、この上から目線を無くせばいい女って部類になるんだけどな。

 

 主人公 『俺に進歩を望むのは無理ってもんだろ、俺自身変わろうなんて思ってもいねぇし。変わっても何の得にもならねぇんだかから変わる必要はないんだよ』

 

俺はベットから身体を起こしながら自分の思っていることを口にした。

 

 幼馴染 『本当にあなたは変わらないのね。仕方がないわ、私があなたを変えさせてあげるわ』

 

 主人公 『は?何言ってんの』

 

 幼馴染 『私と付き合いなさい』

                                          』

 

「早いな、始まって五分も経たないうちに一つ目の選択肢。しかもそれが告白かよ」

 

選択肢は①わかった。付き合う ②嫌だ、お前とは付き合わない

 

「まぁこのゲームの目的としては②を選ぶってことだよね」

 

「そうだな」

 

『いや、ここは①がいいと思う』

 

「え?どうして」

 

『嫌な予感がする』

 

「目的は②だろ」

 

俺と比企谷は②、白乃は①がいいと別れた。

 

多数決で②を選択することになった。

 

 主人公 『嫌だ、お前とは付き合わない』

 

俺は誰とも付き合う気がないんだ。幼馴染であろうとそれは変わらん。

 

 幼馴染 『そ、私のモノにならないのなら……死になさい』

 

グサリと俺の左胸、心臓に包丁が刺さる。ああ、短い人生だったな……。

                                          』

 

「「ええぇぇぇ!!」」

 

『予想通り』

 

画面に『BAD END』の文字が浮かび上がっている。

 

理不尽だ。理不尽すぎる。殺されるって酷すぎる。

 

「あれ?難易度・普通にしたよね?これ完全にヤンデレでしょ?」

 

スタート画面に戻り難易度を確認したら、普通のままだった。

 

このキャラはヤンデレが売りなのかな?

 

「そうなるとさっきの選択肢は岸波の娘の言う通り①だったってことか」

 

「目的は違うけど、目的通りになる補正がでるのかな?」

 

ということで、さっきの選択肢の場所まで戻る。

 

 主人公 『わかった。付き合う』

 

こいつには結構世話になってるし、自分のどうでもいい考えなんて捨ててもいいか。

 

俺が幼馴染の告白を受けれたとき、俺の部屋の扉がガチャリと開いた。

 

 妹 『お兄ちゃん……ダメだよ。お兄ちゃんは私だけのお兄ちゃんなんだから』

 

妹が俺の部屋に乱入してきた。その手にはナイフが……

                                          』

 

そこからはさっきと同じ。

 

「詰みだな。これ」

 

「そうだね。普通を選んだはずなのに、完全にヤンデレしかいないね」

 

たださっきと違うの『BAD END』の代わりにエンドロールが流れている。

 

「にしてももうエンディングか……」

 

「まぁほぼ自作ゲームだから仕方がないと思うけど。そう言えば、さっきの妹キャラは少し小町ちゃんに似てたかもね」

 

「まぁ何となくな」

 

そしてエンディングが終わると、スタート画面に戻らなかった。

 

 ? 『―きて。お兄――ん、朝―よー。起―て』

 

身体を揺すられて目が覚める。

 

ん?ああ、夢か。まさか夢で妹に殺されかけるとは……。

 

 主人公 『俺の可愛い妹よ。もう少し眠れせてくれ。あと五分、いや、今日一日』

 

 妹 『サボる気満々だね。妹的にはそれでもいいんだけど、幼馴染さんが怒っちゃうから』

 

 主人公 『あいつか……なんでいつも俺の行動を縛ろうとするんだ?』

 

 妹 『お兄ちゃんがダメダメだからだよ。それに私同様でお兄ちゃんのことが好きなんだよ』

 

 主人公 『おう、ありがとう。でも俺誰とも付き合う気ないから』

 

俺は付き合う気はない。付き合っても何の得にもならない。むしろ損の方が多いだろう。

                                          』

 

なるほど、夢オチにしたのか。それにしても

 

「この主人公は捻くれてるよね。自分がモテてるとわかっていてこういうこと言ってるんだから」

 

「そうだな。捻くれ方もある意味俺よりも重傷だろ。俺はトラウマとか色々あった上でこうなったが、こいつは説明文からして最初からこういう感じだろうな。なんでこんな奴がモテるんだ?」

 

そこからゲームは進んでいき、いろいろとヒロインたちが出ていた。

 

幼馴染、妹、クラスの人気者の女の子、世話焼きの女教師、幼馴染の姉(大学生)、不良っぽい女の子、天然な生徒会長、何故か親しくなった小学生の女の子、男の娘、自称剣豪将軍の中二病(何故か女子)、白衣を着た後輩、主人公をライバル視するツインテールの帰国子女、ノーパン主義の褐色肌のメガネ帰国子女、白髪のシスター、狐耳の巫女、どこぞの国の皇帝の娘、正義の味方に憧れる少女、自称王の金持ち、アイドルも目指している貴族、などなど他にもまだまだ出てきた。

 

「このゲームいろいろぶち込みすぎて変なことになってるな。途中で本当に日本なのか疑いたくなるようなヒロインも出てくるし。最初のごく普通って設定自体がウソに思えるほどだな」

 

比企谷が言ってることはよくわかる。それに何となくだがそのヒロインたちを知っているような気がする。しかも男だった人たちも女になってるし……。

 

「ってそろそろ昼食の準備しないとな。俺、昼食作りに行くけど何か注文とかある?」

 

「いや、お前に任せるよ」

 

『同じく』

 

任せるか……。冷蔵庫の中にあるもので考えるとオムライスかな。

 

「じゃあ、このゲームは二人で進めててよ」

 

「いいのか?こういうのって途中が抜けてるとよくわかなくなるだろ」

 

「俺はいつでもできるから、大丈夫だよ」

 

俺は自室を出て、今の奥にある台所に移動をする。

 

 

 

 

 

わたしは岸波白乃、転生者です。

 

現在わたしはお父さんの部屋で、お父さんの友達?の比企谷さんと一緒にゲームをしている。

 

ゲームをしながらお父さんと比企谷さんの関係を観察してみたのだが、よくわからない。

 

仲はまあまあ良さそう。普通に友達と言ってもおかしくないくらいの仲だとは思うんだけど、友達みたいな関係じゃないような……。

 

『比企谷さんの名前ってなんていうの?』

 

わたしは比企谷さんの肩を叩いて質問をする。

 

「あ、八幡だけど」

 

『ハチマンの漢字は?ちょっとこのメモ帳に書いて』

 

ハチマンさんにメモ帳を渡して名前を書いてもらう。

 

ハチマンは『八幡』って書くのか。

 

『八幡さんはお父さんと友達?』

 

「いや、俺とあいつは友達じゃねぇな。そこまで仲良くはないし」

 

『家まで来て一緒にゲームしてるのに?』

 

「俺がここにいるのは小町が心配だったからな」

 

『そうなんだ』

 

お父さんの友達じゃないのか。今お父さんは楽しそうだからいいけど。

 

ここへ来る前ムーンセルに教えてもらったことが本当だったらお父さんは友達もいない状態でこの世界を去らないといけないんだよね。

 

でもそんなことはさせない。そのためにわたしがこの世界に来た、わたしはお父さんを守りに来たんだ。

 

 

 

 

 

台所へ行くと、桜と小町ちゃんがいた。

 

「あれ?二人ともどうしたの?」

 

「あ、兄さん。勉強ばっかりだと疲れてしまうので気分転換に料理でもしようかと」

 

「はい、小町も頑張っちゃいますよ。岸波さんはどうしたんですか」

 

「俺はそろそろ昼食の準備をしようかと思ってね。でも、二人が作るなら俺は邪魔だったかな?」

 

女の子二人で料理をするんだから男である俺は入るのは無粋だろ。ここは部屋に戻るか。

 

「いえ、岸波さんと一緒に料理とかしてみたかったんで小町的には問題ありませんよ。女として岸波さんの料理の腕をしっかり見てみたかったんで」

 

「私も大丈夫ですよ。今日は人数が多いですから兄さんに手伝ってもらえると嬉しいです」

 

「お言葉に甘えて入らせてもらうよ。それで何を作るの?」

 

「そうですねぇ。一応、小町ちゃんとは一緒にお菓子とか作るつもりですけど、昼食は冷蔵庫の中から考えるとオムライスとかでしょうか」

 

流石は我が妹の桜さん。お兄ちゃんと考えることは同じだね。

 

「じゃあ、俺が昼食を作るから二人はお菓子を作るといいよ」

 

「え?岸波さんは一緒に作らないんですか?」

 

「お菓子って作るものによって時間がかかるからね」

 

それからいろいろと話し合い、最終的には三人で昼食を作って、昼食を終えてからお菓子を作ることになった。

 

「あ、そうだ。岸波さん」

 

「ん?何かな」

 

「さっき桜ちゃんと話したんですけど、他の人もこの家に呼んじゃいけませんか?」

 

「別に構わないけど、呼ぶって奉仕部メンバーとか?」

 

「はい、雪乃さんや結衣さん、戸塚さんとか呼ぼうかと」

 

雪ノ下さんは来れないと思うけど、人がたくさん来てくれるのは嬉しいことだ。

 

「部屋数は余るほどあるから構わないよ」

 

たぶん、女の子は全員同じ部屋に寝るんだろうし。

 

というわけで、小町ちゃんは先ほどの名前を挙げた人物にメールを送ったようで、三人とも来るそうだ。雪ノ下さんは遅れてくるそうだが来れるとは思ってもいなかったな。

 

 

 

 

 

昼食の作り終えたので自室に比企谷と白乃を呼びに行くか。

 

「そういえば、お兄ちゃんは今何をしてるんですか?」

 

「俺の部屋で白乃とゲームしてるよ。俺もさっきまで一緒にゲームしていたし」

 

「え!お兄ちゃんが誰かと一緒にゲームですか!」

 

「え!そこまで驚くこと」

 

「はい、それはもう。今までのお兄ちゃんならその辺で本を読んでますよ」

 

と小町ちゃんは居間の隅を指さす。

 

部屋の隅っこで本読んでるって……。

 

「ま、まぁ最初は本を読むつもりだったらしいし、俺がゲームしようって頼んだんだよ」

 

「それでも小町は驚きますよ」

 

そこまで比企谷って人と関わろうとはしないんだな。

 

「じゃあ比企谷呼んでくるよ」

 

「わかりました」

 

俺は居間を出て自室にむかい、ノックしてから部屋に入る。

 

自分の部屋に入るのにノックするのって変な感じだな。

 

「二人とも昼食の準備できたよ」

 

「おう、わかった。そんじゃあ行くか」

 

白乃はコクリと頷く。

 

思っていたよりも早く仲良くなった。

 

そういえばゲームってどこまで進んだんだろ。

 

俺は机の上に置いてあるパソコンの画面を確認するとそこには

 

 神父 『これより聖杯戦争を行う。喜べ少年。君の望みはようやく叶う』

 

と店長にそっくりなキャラクターが怪しい笑みを浮かべている画像が映し出されていた。

 

「え?どうしてこんな展開に?完全にごく普通の生活じゃなさすぎるでしょ」

 

どうしよう、すごく気になるんだけど。

 

でもこのあと三人分の布団を用意してから、桜と小町ちゃん一緒にお菓子作りをしないといけないんだよ。

 

今度、一人でやろう。

 

「あ、そうだ。比企谷」

 

「なんだ?」

 

「あとで、奉仕部の二人と戸塚くんもこの家に泊まりに来るって」

 

「マジか。戸塚、戸塚が来るのか」

 

「あ、う、うん。小町ちゃんが呼びたいって言ってたから」

 

「ナイスだ小町」

 

今日見た比企谷で一番の笑みを浮かべている。どれだけ戸塚くんが好きなんだろ。

 

でも、俺も嬉しいな。たくさんの人が遊びに来てくれるっていい思い出になるな。

 

もしかしたら最後のこれが夏休みになるかもしれないから。

 

 

 

 

 




次回は岸波家に他の三人が来て、みんなで遊ぶだけです。恋愛ゲームはもうやりません
白乃がこの世界に来た理由は、文化祭中に書くと思います

それではまた次回に!

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