やはり岸波白野の青春ラブコメは王道か?   作:魔物Z

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今回は一気に話を飛ばしてラーメン屋のくだり、そしてザビ男は雪ノ下家に訪問します。今回は陽乃がメインになります



雪ノ下家への訪問。

 

 

 

現在11:30

 

自習を終え、昼食を何にするか考えながら居間に戻り俺はカレンダーを見て思ったことを口にする。

 

「夏休みの終わりが見えてきたな」

 

留美ちゃんの小学校の林間学校のボランティアを終えた日、俺は自分の過去をみんなに話して、更に俺の娘と名乗る四歳の女の子、岸波白乃が家に住むようになって既に数日が経った。

 

そういえば陽乃さんが俺の元両親の情報を教えてくれるとは言っていたが、未だに連絡がないんだよな。自分から連絡をしていいのかわからないのでこの案件については陽乃さんに任せることにしよう。

 

白乃は既にこの家に慣れて、今は縁側でエルとその子供たちと一緒に日干ししていた布団の上でお昼寝をしている。そして桜は学校の友達と勉強をするために図書館に行っている。

 

「さて、今日は何しようかな……」

 

白乃が起きてから作るとして、手軽にパスタとか?

 

それに昼食を食べた後は何をしよう。

 

こういう長期休みは暇で仕方がない。

 

高校の課題は初めの一週間以内で終わらせるし、自習も午前中やっている。トレーニングは決めた時間にやるようにしてるし、生憎今日はバイトもない。そして遊ぶような友人もいない。

 

「暇だ………」

 

いっその事俺も白乃と一緒に昼寝でもしようかな。

 

と、そんなことを考えていると寝起きの目を擦りながら寝ぼけ気味の俺の愛娘の白乃ちゃんが居間に入ってきた。

 

「おはよう白乃。昼食食べる?」

 

白乃はいつものように喋らずにコクリと頷く。

 

この前話せないか聞いたのだが『今は無理みたい』と手帳に書いて見せてくれた。今は無理ってことは今後話せるようにもなるってことだよな。

 

「それじゃあ、今から用意するから待って、ん?」

 

俺が用意を始めようとしたとき、白乃は手帳に文字を書き始める。

 

そしてそこには『お父さん、外食しよう』と書いてある。

 

「外食ねぇ」

 

娘の願いを聞くのも父親の仕事だと思うのだが甘やかしすぎるのもなぁ。うーん、どうしよう。

 

「白乃は何か食べたいモノあるの?」

 

俺が作れる範囲のモノなら家で我慢してもらおう。

 

白乃は少し悩んでから、手帳に『ラーメン』と書いて見せる。

 

ラーメンか、なら仕方がない。

 

「行こう」

 

『おーう』

 

 

 

 

 

俺は白乃とバイクでラーメン屋に向かうことにした。

 

バイクで移動する理由は白乃にどんなラーメンが食べたいか尋ねたら、『こってりしたとんこつで』と書かれたからだ。本当に四歳児か?

 

記憶があるから頭の中は高校生ぐらいだとしても、胃袋など身体に関しては子供なのにね。

 

そして移動中に見知った人物とドレスを着た綺麗な女性が歩いていた。

 

あの人たちって比企谷と……ひ、平、塚先生かな?少し自信がないが、比企谷といたところを見ると平塚先生でいいと思う。

 

でも、どうしてドレスなんだろう……。知り合いの結婚式の帰りかな?うん。たぶんそうだ。

 

そして俺が目的としていたラーメン屋は比企谷と平塚先生の目的地だったらしく、二人と鉢合わせした。

 

「お久しぶりです平塚先生。比企谷も久しぶり」

 

俺が挨拶をすると比企谷は「よう」と軽く手を挙げて返事をする。

 

「おや、岸波はこんなところでどうしたんだ?」

 

平塚先生は俺がここにいることを疑問に思ったようだな。

 

「それはですね」

 

俺は俺の後ろにいる白乃を二人に見えるように身体を動かす。

 

「この子がとんこつラーメンを食べたいと言ったので連れてきたんです」

 

白乃はコクリと頷く。

 

二人は白乃を見つめて一言。

 

「「何処かで見たことがあるような……」」

 

でしょうね。

 

一応紹介するか。あれから白乃と話し合った結果「この子は家の養子の子です」と説明することにした。

 

こうすれば、白乃は俺の娘ってことも間違いないし、俺がこの年で隠し子がいるみたいな変な誤解も招かないだろう。

 

「養子ってことはお前の妹ってことか?」

 

そう比企谷が尋ねる。確かにそう思うよな。俺はそれでもいいんだが白乃がそれを譲らない。

 

「いや、そうじゃなくて俺の養子だよ」

 

「は?」

 

「まだ俺の年齢じゃ無理なんだけどさ、一応養子ってことで」

 

俺が軽く説明をすると白乃は『これからよろしく』と手帳に書く。

 

そんなことを比企谷と話していると、平塚先生からものすごく暗い怒りではなく悲しみのオーラが滲み出ている。

 

「あ、あのー、平塚先生?」

 

「……グスン。また、生徒に……しかも、まだ高校生、の生徒に先を……ウッ……」

 

な、泣いている。

 

なんていうか非常に申し訳ないんだが、可愛いよね。強気な人が見せる悲しそうな顔ってさ。セイバーとかそうだよね。とそんなことを考えてはいけない。

 

俺は平塚先生の頭を撫でながら慰めようと頑張る。

 

「ひ、平塚先生、そんなに気にしないでください。まだ俺は結婚とかしないですし、いや、今の生活は、桜(嫁)と白乃(娘)でかなり新婚みたいですけど」

 

『だから、桜はわたしの嫁』

 

わかってますよ白乃さん。

 

「また、先生の相談を聞きますから、元気出してください」

 

「……うん」

 

ほんと俺も悲しくなるよ。誰か貰ってあげてよ。

 

その後、四人で一緒にラーメンを食べるわけではなく、俺と白乃、比企谷と平塚先生と別れて食した。

 

見た感じだが、比企谷と平塚先生は結構いい感じだよな。

 

平塚先生の唯一?の救いは比企谷だったりして。でもたぶん由比ヶ浜さんも比企谷のこと好きだよな。比企谷も『女難の相』持ってたりしてな。

 

 

 

 

 

家に帰り、白乃はエルと追いかけっこを遊んでいる。俺の携帯に一通のメールが届いた。

 

送り主は陽乃さん。

 

内容は『明日、予定に空き時間ができたから話しに来てね。時間は三時、私の家で』とのこと。

 

それと何故か、雪ノ下さんと陽乃さんのドレス姿の写メも貼られていて『どっちが好み?』みたいなことも書いてあった。たぶん、父親関係でのパーティーにでも着いて行かされたのかな?

 

ただこの写真、陽乃さんのは自分で撮った感じなんだが、雪ノ下さんのは雪ノ下さんの目線とか撮影角度とかがすごく隠し撮りって感じがするんだが……。

 

返事は『わかりました』で簡単に済ませるとして、どっちが好み?って言われてもな……返信に困る。

 

ここは陽乃さんならわかってくれそうだから冗談で『二人とも結婚したいぐらい綺麗なんで決められません』と書いてみた。

 

「まぁ送らないけどね」

 

俺が書いた文章を消している途中、背後からエルと追いかけっこをしていた白乃が俺に激突。

 

アレ~?デジャブ?前もこんな感じで面倒くさいことになったな。

 

こうして本当面倒くさいことになる。

 

携帯が俺の手から落ちて、更にうまく落ちた携帯が送信画面になり、送信ボタンにエルの肉球が……そしてうまい感じに『二人とも結婚したい』で送信してしまった。

 

「………いや、陽乃さんならわかってくれるよね。一応、間違えましたって返信を」

 

返信しようと思い携帯を拾ってすぐに陽乃さんから電話が……。

 

「もしもし陽――」

 

『白野くん?私嬉しいな~。まさか白野くんから私たち姉妹を二人同時にプロポーズなんて面白そ、凄く嬉しいよ~。あ、今からお父さんに白野くんのこと話してくるね♡ 明日が楽しみだね。それじゃあねぇ』

 

そして電話が切れた。

 

俺は急いで電話やメールをしたのだが全部着信拒否された。

 

たぶんこの人は間違えとか、冗談とかわかったうえでやってるよな………。面白そうって言いかけけてたし。

 

そうだ。雪ノ下さんに連絡を……今は止めておこう。何か嫌な予感もするし。

 

はぁ……すごく面倒くさいことになってきた。

 

俺が項垂れていると、白乃とエルが心配そうに俺を見つめてくる。

 

「白乃……もしかしたら、もしかしたらだけど、変な方向に話が流れたら……お母さんができるかも」

 

『歓喜!おめでとうお父さん。桜はわたしに任せて』

 

喜ばないでください。

 

 

 

 

 

どうしてこうなった?

 

現在、雪ノ下さんの実家近くの合気道の道場。

 

「白野くん頑張れー」

 

陽乃さんに応援されながら俺は今、戦うことになりました。

 

相手は陽乃さんと雪ノ下さんの合気道の先生。

 

さて、思い出そう。

 

俺は昨日のやり取りのあと、重い気分で一日を過ごし、行きたくない気持ちを抑えながら雪ノ下さんの実家に向かい、そして雪ノ下さんの家に着くなり雪ノ下さんたちの父親に会わされ、「君が私の娘たちに相応しいか見てやる」みたいな感じの展開になった。間違いだと説明させてもらう時間ももらえずに、三つの試練みたいな感じで、学力、武力、家柄の三つを判定されることになった。

 

既に学力の項目は終えてあり、普通にいつもの努力の成果を発揮して合格。

 

で、武力は体力テストだったのだが、完全に高校生の上を行っている俺は当たり前に合格してしまった。

 

ただ納得がいかなかったようだったので、今、俺は戦わされているわけだ。

 

今更だがなんで俺全力で頑張ってるんだよ。手を抜いてればそこで終わって、自分の両親の話を聞いて帰れたのに……。

 

まぁ仕方がない。ここまで来たら全力で戦おう。

 

全力と言っても魔術を使うわけではないから大丈夫。

 

俺は店長から習った八極拳の型を構える。

 

「なるほど、君は八極拳をやっているようだね」

 

構えを見ただけでどの武術かを判断できるようだ。さすが教える側の人。

 

さて、相手は合気道だ。相手の力を生かして戦う武術。合理的な体の運用により体格体力によらず『小よく大を制する』ことが可能。言わば柔って感じかな?

 

対して俺は魔術なしだから基本打撃技になる。なので剛って感じになるだろう。

 

正直相性は悪い。

 

ただ、相手の力は店長以下だろう。技量ぐらいなら俺でもすぐにわかる。魔術なしの俺でも十分にやりあえると思う。

 

なので、早く終わらせたいので終わらせるには一撃で決める。

 

「それでは」

 

よくわからないが、審判みたいな人も出てきたな。ちょっと楽しんでないよね?

 

まぁいい、俺と相手の距離は七メートル。すぐに懐に入れる距離ではある。

 

「勝負始め!」

 

俺は合図とともに距離を詰める。

 

投げ技は基本、相手の腕や胸元などを引いたりして相手の軸がぶれたところを狙ってやるもの。

 

なら、掴ませなければいい。いや、掴まれる前に打ち込めばいい。

 

相手は早く動いても常人レベル。俺は英雄や店長みたいな人間以上に化け物みたいな人たちに習ってるし、この前だってエネミーと戦わされた。

 

自分でいうのも悲しいが俺は高校生レベルではなく、常人レベルを越してるわけだ。

 

相手との距離は残り三メートルくらい。

 

俺は畳張りの床を思いっきり蹴り、前に跳ねて距離を一気に縮める。

 

『絶招歩法』

 

そしてその勢いのまま相手の胸に向かって拳を突き出して攻撃をする。

 

 

 

 

 

はい、負けました。

 

俺は畳の上で仰向けの状態で天井を見ている。

 

俺が天井を見上げていると相手していた雪ノ下さんたちの合気道の先生が俺のことを見下ろしてくる。

 

「ねぇ君はどうしてあのとき打撃技を撃たなかったの?」

 

相手の雪ノ下さんたちの先生に聞かれた。

 

そう俺は攻撃しなかった。何故かって?相手が女性だからです。いや正しく言えば、相手が人だからです。

 

「いえ、確かに『絶招歩法』で距離を詰めたまではいいんですけどその後の攻撃で使うつもりだった『金剛八式・衝捶』は結構危ない技なんで使うのを止めたんです」

 

結果、俺は綺麗に投げ飛ばされた。傍から見たら俺が攻撃を止めたなんて気付かないぐらいに綺麗に投げられた。

 

八極拳はアサシン先生や店長を見てわかるように破壊技なんだよな。

 

「ふーん、君、優しいんだね。陽乃ちゃんや雪乃ちゃんが気に入る訳だ」

 

俺が手加減したのを見切っているようで。そしてあの二人に気に入られている?玩具的な意味で?

 

「そうだ。勝負は私が勝ったけど、二人のお婿さんに推薦しようか?」

 

「いや、大丈夫です」

 

「そうなの?だって君は今日、二人の内のどちらかの貞操を奪いに来たんでしょ?」

 

「違いますよ!なんですかそれ!?」

 

「それでデキ婚して、雪ノ下家の財産を」

 

「だから違いますから!」

 

変な方向に話が進んでるぞ。これじゃあ完全に悪人じゃん。

 

あれ?もしかして……

 

「あの……その話ってどこで聞いたんですか?」

 

「これは、陽乃ちゃんからだね。この話は結構広まってると思うよ」

 

「………」

 

俺、もしかしたら千葉から消されるのかな?

 

「陽乃さん!!悪ふざけで俺の人生を終わらせないでください!!」

 

俺は応援?に来ている陽乃さんに大声で怒鳴ると「てへっ」と陽乃さんは右手でコツンと頭を軽く叩いて舌を出す。

 

「「てへっ」じゃないですよ。今日俺、両親の話聞きに来ただけなのに、人生の大勝負みたいな展開に巻き込まれてるんですか」

 

この試練クリアしないと千葉から抹殺(いろんな意味で)されるだろう。

 

「ほら、男の子ってこういう熱い感じ好きでしょ。静ちゃんも好きそうだし」

 

「熱くないですよ!死しか見えませんよ」

 

「大丈夫。全部終わったら私か雪乃ちゃんの彼氏ってことで人生スタートできるから」

 

「確かに二人みたいな美人の彼氏ってのは嬉しいですけど、それとこれは違うじゃないですか」

 

「えー。だって白野くんが昨日『二人とも結婚したい』って言ってくれたじゃん」

 

と陽乃さんは笑顔で言うのだが、この笑顔、絶対に間違いだと見抜いたうえで面白そうって理由でやってます。って感じの笑みだ。

 

「………陽乃さん、気付いて言ってますよね」

 

「なんのことかなー。私にはわからないなー」

 

もうヤダ。俺泣きたい。

 

 

 

 

 

結局、最後の試練まで来ました。

 

最後は家柄なのだが、俺が名医トワイスの息子だって言ったら即OKをもらった。

 

こうして俺は雪ノ下さんか陽乃さんと付き合う権利をもらった。いらないわけではないが、使い道がないな。

 

いろんな意味で疲れた俺に陽乃さんは抱き付いてきた。

 

「やったね~白野くん。これでお父さん公認カップルだ」

 

「……あ、はい……嬉しいです。ほんと……すごく嬉しいですよ……はぁ……」

 

「それじゃあ、今から私の部屋で……お話しようか」

 

陽乃さんは真面目な声色で話す。

 

やっとか、やっと俺は今日の目的を果たせる。

 

俺は陽乃さんの案内の元、雪ノ下さんの家の中を移動している。やっぱり広いな。

 

「ここだよ。私、お茶持ってくるから中で待っててよ」

 

「いや、気にしないでください」

 

「お客さんはしっかりおもてなしをしないと。だから中で待ってて」

 

そう言って陽乃さんはお茶を取りに行った。

 

何だろう、嫌な予感がするんだが。

 

ダメだな。こう用心深いのも問題だな。陽乃さんが言ったように中に入って待たせてもらおう。

 

でも、やっぱり心配なので俺は扉にドアノブに手を掛けてゆっくりと扉を静かに開けると、そこには……

 

パンさんのぬいぐるみを抱きながらパソコンで猫の画像を見ている雪ノ下さんがいた。

 

俺は静かに扉を閉める。よかった。雪ノ下さんは俺に気が付いていないようだ。

 

「陽乃さんの部屋じゃないじゃん……」

 

仕方がない。廊下で陽乃さんの帰りを待とう。

 

十分後。

 

陽乃さんは来ない。

 

もしかしてだけどさ、陽乃さんの狙いって俺と雪ノ下さんをこの部屋に二人っきりにさせるつもりだったのかじゃないよな。

 

仕方がない。俺から陽乃さんの方に出向くか。

 

俺はポケットに手を入れて電子手帳を作り出す。

 

「view-map()」遠見の水晶玉のコードキャストで陽乃さんを探すと、ここから部屋三つ離れた部屋にいるようだ。

 

俺はその部屋の前まで移動して、中にいる人に気配を感じ取る。

 

……人の気配は一人、そうなると中には陽乃さんだけか。さっきは俺を騙したので仕返しにノックもせずに戸を開けようかな。

 

そして俺はノックをせずに扉を開ける。

 

そこには着替え中の下着姿の陽乃さんがいた。雪ノ下さんとは違ってしっかりと目も合った。

 

あの陽乃さんが珍しく顔を真っ赤にしていく。でも叫ぼうとはしない。いや叫べないのかな。驚きすぎて叫べないのだろう。

 

「………お邪魔しました」

 

俺は戸を閉める。

 

桜にも負けないぐらいのいいモノ見せてもらいました。はい。

 

 

 

 

 

俺はその場を動くこともできずに、陽乃さんの着替えている部屋の前で立って待っている。

 

数分後、扉が開き、陽乃さんは扉からまだ赤みが抜けていな顔だけを出してジト目で睨んでくる。

 

「白野くん。私に恨みでもあるのかな?」

 

「着替えを見ちゃったのは謝りますけど、今日のことについては恨みだらけですけどね」

 

「へぇ~。そういうこと言うんだ。私の着替えを見たのに」

 

「だって、陽乃さんが雪ノ下さんがいる部屋に連れていくから」

 

まずあんなことがなかったらこんなことにはならなかったはずだ。

 

「責任取ってね」

 

あるある展開だな。

 

「責任てなんですか?もしかして結婚してとかですか?」

 

「別にそれはいいや、そうだなぁ………」

 

陽乃さんは悩み始めた。そして閃いたらしくポンっと手を叩く。

 

「今後私と雪乃ちゃん以外にはフラグを建てちゃダメってことにしよう」

 

ムーンセルでもそうだったけど別に建てたくて建ててるわけでもないし、自分が正しいって思ってやったことやったら立ってたんだよ。それ以前に俺はこの世界ではフラグは建てていないはずだ。

 

「陽乃さん俺は死亡フラグとかはよく建てますけど、恋愛方面ではフラグは一度も建ててませんよ」

 

「白野くんはそろそろ自分が一級フラグ建築士だって自覚を持った方がいいよ。そうしないといずれ身近な女の子の誰かに背後からグッサリいかれるよ」

 

グッサリなんてもう五歳までに慣れたし、コードキャストも使えるから怖く……いや、怖いな。マジ怖いです。

 

「そ、それじゃあ俺はどうすればいいですか陽乃さん。さすがに身近な人間に背後からグッサリなんてシャレになりませんよ」

 

俺は頼りになる自称お姉さんに懇願する。知り合いに殺されたくないから。

 

「まぁ立ち話もなんだから中に入ってよ」

 

確かにずっと廊下で話してるわけにもいかないな。

 

「はい、ではお言葉に甘えて部屋の中に入れせてもらいます」

 

こうして俺はやっと部屋の中には入れた。

 

ただ問題発生。

 

「あのー、何で水着姿なんですか?」

 

何故か陽乃さんはビキニの水着を着ている。

 

「サービスは大切だからね。それでどうだったかな?お姉さんの水着は、えいえい」

 

俺の頬を人差し指で押しながら答えにくい質問をしてくる。

 

なんか本当の面倒くさいから頭に浮かんだことを棒読みで伝えよう。

 

「いいと思いますよー。水着も陽乃さんに似合ってると思います。それにスタイルもいいですから興奮しますよー(棒読み)」

 

「棒読みとか白野くん酷い、グスン。お姉さん白野くんを誘惑するために恥ずかしい思いしてるのに~」

 

陽乃さんは両手で顔を覆いウソ泣きをする。

 

何で誘惑しようと思ってるんだろうこの人……。

 

まぁ確かに着ている水着はキャスターの『せくすぃーびきに』ぐらいの布の面積だし、しかも陽乃さんはセイバーと同じぐらいのスタイルの良さはある。似合わないと思うが『あかいいなずま』を着てきたらセイバーのとき同様鼻血を出すかもしれない。

 

だが俺はそう簡単に誘惑には負けないぞ。

 

と言ってもだ、陽乃さんは雪ノ下さんが憧れるように凄い人だとも思う。性格も正直言って無理とかも思わないし、陽乃さんぐらいの腹黒さなら普通に仲良くできる自信もある。

 

予想はしていたけれどこの人は自力で俺の過去を見つけ出したんだよな。やっぱりこの人はすごいよな。

 

「それじゃあ陽乃さん。そろそろ本題に入りましょう」

 

俺は陽乃さんの水着姿に触れないでおいて話題を切り出す。

 

「俺はどうすれば、背後からグッサリをされずに済むんでしょうか」

 

「そっちを最初に聞くんだね」

 

それはそうでしょ。殺されるかもしれないって言われてるんだからその対処法を聞くのは当たり前だよ。

 

陽乃さんに「ここに座って」と言われたのでベットに腰を掛けると陽乃さんも肩を並べる様に横に座った。何故だ?ここは普通向かい合ってでしょう?

 

「簡単な方法は今まで建てたフラグをへし折ればいいんだけどね」

 

「フラグをへし折る?」

 

なるほど、ラニ考案の『感情抑制装置フラグブレイカー』を使うわけではないんだな。

 

「そうそう、自分のことを好きであろう人物の嫌がることをすれば折れると思うよ」

 

俺のことを好きな人か……いないからまだ大丈夫だな。

 

「じゃあ次行きましょう」

 

「待った。今度は私の番だよ。白野くんばっかりじゃ、ズルいでしょ」

 

確かにそうだな。

 

「はい、わかりました。俺の過去の答え合わせでいいんですよね?」

 

「うん。OKだよ」

 

こうして俺は陽乃さんに俺の過去を話し始めた。今回も魔術のことは伏せておくけど。

 

話し終わる頃には俺は上半身を裸にされていた。

 

こ、これは仕方がないんだ。傷を見せるのは仕方がないと思ってるから、問題は俺の着てきたTシャツや上着を陽乃さんに奪われてしまったことだ。

 

現状、この部屋にはビキニ姿の女子大学生と上半身裸(傷だらけ)の男子高校生がベットに腰を掛けて話しているという異常な空間。

 

ま、まぁ今は自分のするべきことに集中しよう。

 

「えーっと俺の過去はどうでしたか?」

 

「……え?」

 

陽乃さんは俺の顔をぼーっと見ていたようで話を聞いていなかったみたいだ。

 

「いや、だから俺の過去を聞いてどう思ったかなって?それに陽乃さんの答え合わせもかねて」

 

「そ、そうだね~。私が手に入れてたのは情報だけであとは私の想像と推測で考えた結果だったんだけど、粗方合ってたかな……」

 

やっぱりこの人はすごいな。手に入れた情報を基に想像と推測だけで真実に辿り着くんだから。陽乃さんはマスターに向いてるかもね。

 

「ねぇ白野くん」

 

「なんですか?」

 

「多分なんだけど……私は君の事………」

 

 

 

 

 




次回はこの続きから、そしてザビ男の過去の情報が出てきます

『絶招歩法』と『金剛八式・衝捶』マーボーこと八極外道神父、言峰綺礼の技になります。どんな技かと説明しますと、Fate/Zeroで言峰が切嗣の心臓を破壊してときの技です

それではまた次回に!

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