やはり岸波白野の青春ラブコメは王道か?   作:魔物Z

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今回は、ザビ男が過去を話します。




岸波白野の過去。

 

 

 

俺はある家庭に生を受けた。

 

とても貧しい家庭。子供の面倒を見ることも出来ないぐらい貧しい家庭だった。

 

たが、俺は祝福された。

 

俺を産んだ母も、それを見届けた父も喜んだ。

 

そして俺の両親は誓いを口にした。

 

『この子だけは絶対に幸せにしたい』と、『辛い思いをさせるかもしれないが、私たちの大切な子だ。絶対に幸せにしよう』と。

 

その誓いを守るため、父も母も頑張っていた。

 

俺はとても幸せだった。貧しい家庭でも両親の優しさが本当に嬉しかった。

 

でも、幸せはすぐに壊された。

 

俺が三歳になるころ、両親を目の前で殺されたのだ。

 

犯人は人身売買を目的としていた集団。俺はその集団に誘拐され、ある場所に売られた。

 

日本ではない、紛争が絶えない国に俺は売られた。

 

そこでは子供が当たり前のように銃を持ち、人を殺す。紛争地域ではよくある話だ。

 

そんなところに売られた俺は当たり前にそのための訓練を受けさせられた。

 

ただ俺はもう人を殺すことはしたくなかった。だから歯向かった。

 

それからはほぼ毎日が拷問だった。

 

致命傷にならない程度に蹴られ、殴られ、叩かれ、斬られ、刺され、焼かれた。自分が生きているのが不思議なぐらいだ。

 

ただ、死のうとは思わなかった。自分の意思で生を投げ捨てるようなことはしたくはなかった。

 

俺は自分に言い聞かせた。

 

『大丈夫だ。辛いのは今だけ。頑張って生きていれば絶対に楽しい日々がある。彼らと一緒に過ごしていた日々と同じような楽しい時間が絶対にやってくる。だから、死なない。いや、死ねない。俺を産んでくれた両親の為にも』

 

それから二年、俺が五歳になったときある変化が訪れた。

 

『幼い奏者…』

 

『ショタなご主人様…』

 

『小さな子ブタ…』

 

『『『ゴクリッ』』』

 

まぁこのことはいいや、正直拷問のような毎日よりその後の光景のほうが怖かった……。

 

俺は五歳になった日、俺は魔術が使えるようになった。

 

そして俺はここから逃げ出すことを決意した。

 

そこから抜け出すときに多くの人を傷つけた。自分の感情を押し殺して、自分が生きて幸せになれることだけを考えて人を傷つけた。

 

でも、無理だった。五歳になったばっかりの俺には一人で抜け出すことができなかった。

 

抜け出そうとした俺には更に酷いことをされた。

 

けど、そんな地獄のような毎日も半年で終わりを迎えた。

 

疲れ果てて寝ていた間にそこは壊滅した。

 

原因は不明。

 

俺がいた場所は俺以外の人間が全員死んでいた。

 

だから俺はその場を離れた。

 

走り。走り疲れたら歩き。歩き疲れたら這いずり。生きることだけを考えた。

 

それから数日後、俺はあの人に、父さんに出会った。

 

 

 

 

 

「と、まぁこんな感じかな?俺が父さんと出会うまでの日々。俺が隠してきた過去」

 

目の前で両親を殺され、誘拐され、知らない国に売られて、拷問のような毎日。しっかり話せばもっと長くなる話だけど、今はこれぐらい短い説明でもいいだろう。

 

今更だが、あの一夜で俺がいた場所が壊滅した理由は昨日の憑〇合体だろうな。

 

英雄にもなれば、三分なくてもアレぐらいなら壊滅させてもおかしくない。そうなると俺はこの手で人を………。

 

「それで、俺の過去を知った感想はどうかな?」

 

少し意地悪な気もするけど、これは聞いておきたい。

 

「………確かに簡単に話していいような話ではないわね。辛いことを話させてごめんなさい」

 

「謝らなくてもいいよ。いつかは話さないといけなかったわけだし」

 

「それと………ありがとう」

 

「はい?」

 

どうして感謝?

 

「ねぇ、あなたの話で気になることが二つあるのだけどいいかしら?」

 

感謝の理由は教えてくれないんだ。

 

「まぁ、気になることがあるなら答えるよ」

 

「一つは、何故あなたは、そんな小さい頃のことを明確に覚えているの?」

 

「………バカにしないでね」

 

「女性になったり、獣耳や尻尾を生やしたりした人が今更何を言っているのだか……」

 

それもそうだけど……。

 

「実は俺、産まれたころから既に自我を持っていたっていうか、既に人格形成できていたというか、前世?みたいな記憶を持っていたというか」

 

「それって……どういう意味?」

 

「これを転生って言うのかはわからないけど、それに近いのかな?」

 

「あなたって本当に不思議な人ね。私の常識の範疇を超えてるわ」

 

ご尤もです。自分だってそう思う。所々ぶっ飛んでるし、ぶっ飛んでいる人たちと絡むとこうなるんだね。

 

「では二つ目。あなたはどうしてそれほど辛いことがあったのにそんなに人に優しくできるの?」

 

「それも俺に前世、昔の記憶があったからかな?人がどういうモノかも知っているし、物事をどう受け止めるかもわかっていた」

 

たぶん俺にムーンセルでの記憶がなかったら、俺は既に死んでいるだろうし、または人を殺してるだろう。そういう世界にいたのだ。

 

それにもう十年以上前の話だ。引きずったままじゃダメだろう。でも忘れはしない。だからこそ身体の傷は残しているわけだし。まぁもう完全に古傷って感じで痕しか残ってないけど。

 

「受け止める?話を聞いてる限りそう簡単に受け止めるなんてできないと思うのだけど」

 

「前に言ったよね。『間が悪かった』って思えばいいって。それに……俺が信じていたように今みたいな楽しい日々を過ぎせているんだから、信じていてよかったよ。奉仕部メンバー、血の繋がりないけど本物のような家族、嫌がらせが好きな後輩とその家族、他にも親切にしてくれる先生方や同級生。色々な人に出会えて本当に今が楽しいよ」

 

でも、もうじきそれが終わってしまうかもしれない。

 

どうにかできるかもしれないけど本当に大丈夫だろうか?いや、考えるのは止めておこう。確かそういう死亡フラグがあったな。

 

「そ、それはよかったわ。ねぇ岸波くん」

 

「何?」

 

雪ノ下さんが俺の名前を呼んで少し間を開けてから俺に一つのことを尋ねてきた。

 

「あなたは…岸波くんは私と出会えてよかったと思っているの?」

 

 

 

 

 

「ねぇ岸波くん」

 

「何?」

 

私は彼に聞いておきたかったことがあった。

 

とても心苦しかった。

 

彼はいつも私に優しくしてくれる。それが本当に嬉しかった。辛いときや悲しいときに彼が見せてくれる笑顔に私は何度も救われた。だから岸波くんの近くにいたかった。

 

だけど私が近くにいると彼は周りの人間から標的にされる。

 

初めて私が彼に出会ったとき彼も私同様に嫌がらせを受けていたけれど、彼の性格を考えればそんなのすぐになくなったはず。でも私がいたから今まで彼には友達ができなかった。

 

だから心苦しかった。

 

でも彼から離れたくなかった。

 

留学している間も彼の事ばかり考えていた。留学してやっと私は彼のことが好きだと自覚した。

 

思い出すだけでも顔が熱くなるわね……。

 

だから私は彼に聞いておきたかった。

 

それは……

 

「あなたは…岸波くんは私と出会えてよかったと思っているの?」

 

「当たり前だよ」

 

即答された。

 

「雪ノ下さんがどういう考えのもとそれを発言したかはわからないけど、俺は君と出会えてよかったと思っているよ。というより俺はこの世界で君と出会えていなかったら、今まで作ってきた人間関係全てがなかったことになるとも思ってるし、君がいなかったらここまで努力をしてこなかった。本当に君には感謝してもしきれない」

 

「………あなたはいつも何故こんなに恥ずかしいことを普通に言えるの?」

 

「え!?何で俺がそんなこと言われるの?雪ノ下さんが聞いてきたから答えたのに!?」

 

「ふふ、そうね。………ありがとう」

 

感謝を彼には聞こえないくらい小さな声で述べる。

 

「何か言った?」

 

「いえ、何でもないわ。そろそろ千葉に入るわね」

 

「ん?そうだね。後一時間ぐらいすれば学校に着くかな?途中で休憩の為に何処に寄る?」

 

「いいえ、別にいいわ。そのまま帰りましょう。他の人を待たせるのも悪いでしょう」

 

「わかった」

 

この夏休みはたぶんもう彼や由比ヶ浜さんたちとは会えないと思うけれど、いい思い出を作れたわ。

 

「ねぇ雪ノ下さん」

 

「何?」

 

岸波くんは私に質問でもあるのかしら?

 

「俺の過去も話したことだし、もう一度聞きたいんだけどさ」

 

そして岸波くんは私に何度か言ったあの台詞を言った。

 

「俺と友達になってくれない?」

 

答えは今までと変わらない。

 

「嫌よ。何度も言わせないで私はあなたと友達っていう枠組みに入るつもりはないわよ」

 

 

 

 

 

雪ノ下さんからお友達をお断りされて一時間と少し、総武校前に到着した。俺と雪ノ下さんはバイクから降りて既に到着しているメンバーのもとに近づくと、何故かあの人がいる。

 

「はーい、白野くん、雪乃ちゃん」

 

「何で陽乃さんいるんですか?」

 

「姉さん……」

 

やっぱり、苦手そうだな。

 

まぁいいや、まず俺が取るべき行動は……陽乃さんから距離を取ろう。

 

いつものように抱き付かれたら死ぬかもしれないからな。

 

「あら?白野くん何で距離取っちゃうの~?いつもみたいにハグしようよ」

 

「絶対にアレはハグじゃないですよ。完全に陽乃さんからの一方的な嫌がらせじゃないですか」

 

「白野くん、あれ嫌だったの?」

 

「いや、別に女性から抱き付かれるのは嫌いではありませんけど周りの人たちから悍ましい視線を感じるんですよ」

 

本当にアレは嫌だ。死線を見られてるんじゃないかってぐらい嫌だ。モンスターさんの『直死の魔眼』かよ。

 

「今の発言は完全にアウトの部分があった気がするんだが」

 

比企谷がそう言うが、何処かアウトだった?

 

「まぁ俺のことはどうでもいいんですけど、陽乃さんはどうしてここにいるんですか?雪ノ下さんのお迎えですか?実家への」

 

「流石は白野くん、よくわかってるね。好きになっちゃうよ」

 

「ありがとうございます。それでもう一つ何か用事がありそうですね」

 

「……素で流さないでよ~。乙女心を何だと思ってるの?お姉ちゃん怒っちゃうよ」

 

「俺に用事でも?」

 

「うわぁ完全にスルー。白野くんのいじわる~。まぁいいか、白野くんに用事があってね。答え合わせに来たんだ」

 

答え合わせ……。たぶんアレだろうな。

 

「俺の過去のことですか?」

 

「あれ?あまり驚かないね」

 

「いろいろありまして、今日みんなに言うことになったので心の準備がもうできているんですよ」

 

「ふーん。ちょっと残念だなぁ。白野くんの秘密を私だけのモノにしたかったのに」

 

「その言い方すごく怖いんですけど」

 

何?俺の秘密を手に入れたら何か脅しにでも使う気?

 

「答え合わせはまた今度でいいや。そうだ白野くん今度家に来てよ」

 

「えぇ……」

 

「何でそこまで嫌がるのかな?」

 

昔、陽乃さんに拉致られたし……。

 

ただ、陽乃さん次言った言葉で行かなければならなくなった。

 

陽乃さんは俺に近づいて耳元に顔を近づけて小声でこう言った。

 

「昔のご両親の情報とかもあるよ」

 

…………。

 

「わかりました。いつ行けばいいですか?」

 

「やったー、白野くん来てくれるんだねぇ。お姉ちゃん嬉しいな。そうだ、お礼に」

 

そう言って陽乃さんは俺の頬に「ちゅ」と言いながら唇を軽く当てる。

 

そのとき俺は死を覚悟した。

 

いつも通り、雪ノ下さん、桜、カレンから悍ましいオーラを、ただそれ以上のオーラを放っているのが……。

 

「岸波……歯を食いしばれ……」

 

平塚先生だ。

 

平塚先生の大量の黒いオーラが平塚先生の右手に集まり始める。

 

「抹殺の、」

 

今回は避けずに食らうか……。

 

だってこれ避けたら、他の人たちから殺されちゃう気がするんだ。

 

「ラスト・ブリット!!!」

 

 

 

 

 

俺が目を覚ますのそれから五分後ことだった。

 

既に雪ノ下さんと陽乃さんがいなくなっていた。

 

平塚先生の一撃は俺の芯を捉え、鳩尾にクリティカルヒットしたようだ。まだ痛い。

 

それより俺五分間、校門前で気を失ってたんだよな。すごく恥ずかしいんだけど。

 

「あ、兄さん起きたんですか?」

 

桜が心配そうな声で俺に近づいてきた。よかった桜はいつも通りの優しい桜だ。

 

「もし兄さんが起きなかったら………さっきの女のこと問い詰められませんから……」

 

怖い!

 

「おい岸波」

 

比企谷が俺を呼んだ。助かった。

 

「比企谷どうかした?」

 

「どうかした?じゃねぇよ。みんなお前待ちだ。教えるんだろお前の過去」

 

「そうだね。じゃあ話すけど場所変えない?」

 

流石に校門まで話すようなことじゃないからな。

 

平塚先生に頼んで校内に入れてもらい、奉仕部の部室でみんなに俺の過去を話した。

 

俺の過去を聞いたメンバーは、桜、カレン、比企谷、由比ヶ浜さん、平塚先生、小町ちゃん。

 

戸塚くんは用事があったようで来なかった。まぁ聞いて気持ちのいい話ではないから来ないのが一番だ。

 

平塚先生は俺の身体を見ていないので俺の身体をもう一度披露する羽目になった。

 

そんなわけで俺の過去(魔術の部分は話さなかった)を話し終わったら、やはり重苦しい空気になった。

 

「で、どうだった?」

 

「いや、まぁ……何っていうか、本当に聞いてよかったのか?」

 

「今更何を言ってるんだよ。それにどうせいつかは言うつもりだったから気にしなくてもいいよ」

 

「「「「(気にするなって方が無理だぁぁ!!)」」」」桜とカレン以外の四人。

 

みんなが何かを心の中で叫んでいるぞ?何となくわかる。

 

桜は少し涙目だし、カレンは逆に高揚しているのか頬を赤くしている(少し息が荒い)。

 

まぁなんだかんだ、みんな受け入れてくれた。本当に優しいねみんな。

 

 

 

 

 

帰り道、俺はバイクを押しながら桜とカレンと一緒に歩いているのだが、なんだろうな、すごく空気が重い。

 

俺の過去の話もそうだが、陽乃さんがやったキスのせいだな。

 

そう言えばいつ陽乃さんの家、雪ノ下さんの実家に行けばいいんだろう?まぁあとで連絡くれるか。

 

特に話すこともなく、カレンの家の前まで来た。

 

「それでは白野先輩と妹、また後日会う日があったら」

 

会う日って次のバイトの日だろけど。

 

「うん、また今度ねカレン」

 

「さようなら言峰さん。それと私はあなたの妹じゃないですからその呼び方はやめてください」

 

カレンは桜の言葉を聞き流して家の中へ入っていた。

 

「それじゃあ、残りはバイクで帰る?」

 

「はい」

 

家までの残りの距離をバイクで移動しているのだが、やっぱり桜の胸は大きいな。

 

押し当てられていると妹でも変な気分になりかねん。

 

無心になれ俺。

 

「兄さん?」

 

「ひゃい」

 

変な声を出してしまった……。

 

「すみません、兄さんの過去がああいうものとは知らなかったので……」

 

そんなこと気にしなくてもいいのに。

 

「さっきもみんなに言ったように別に気にしなくてもいいんだよ。別に俺は変わるわけでもないんだから、今までのように接してくれれば」

 

「嫌です」

 

まさか雪ノ下さん同様に拒絶されるとは……。

 

「今までと同じは嫌です」

 

桜は俺を抱きしめる力を強くする。故に更に胸が……。

 

おい俺。桜は見た目は間桐桜やBBにそっくりでもこの子は俺の妹だぞ。

 

「じゃあ桜はどうなりたいの?」

 

「そ、それは……言えません……」

 

言えないんだ。

 

そんなこんなでもう家の前まで来た。

 

バイクから降りて門を潜って中を見ると、何故か玄関前に女の子が立ってた。

 

年は五歳くらいかな?

 

髪は茶髪でロング、色は俺よりも少し薄いかな?

 

背中には年のわりには少し大きめなリュックサックを背負っている。

 

ただ他人とは思えない。

 

何故かって?

 

女のときの俺をそのまま小さくした感じ。

 

女の子は俺たちに気付いたのか、こっちを向いて驚いた表情を浮かべてからダッシュで俺に突っ込んできた。

 

女の子の頭がお腹にジャストヒット!

 

「グハッ!」

 

「に、兄さん!!」

 

桜が心配そうに俺に声をかけてきた。ありがとう。

 

そんなことよりもだ、この子誰?

 

「………君はダレ?」

 

俺は女の子に尋ねると、女の子は背負っているリュックサックを下して、中から手帳を取り出してボールペンで何かを書いている。

 

声が出ないのかな?

 

そして手帳にはこう書いてあった。

 

『わたしの名前は岸波白乃。あなたの娘です』

 

「「………」」

 

俺に娘?

 

「兄さん?少々家族会議をしましょう」

 

「………はい」

 

身に覚えがないがこの子は俺の娘らしい。

 

というわけで、岸波白野、十六歳。娘ができました。

 

 

 

 

 




ザビ男の過去、いろいろ考えて末こんな感じになりました
最初酷い虐待とかも考えていたんですけど、ザビ男を産む人は善人であるべきと思ったのでかなりぶっ飛んだ感じになりましたね

さて、ついにザビ子がザビ子として出てきましたね。未だになかった感じの親子です
でも本当は親子ではありません。少々事情有、内容はまた次回。一応ザビ子にはザビ男同様に記憶を持っています

それではまた次回!!

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