長くなってしまったせいで誤字が増えてしまったような…。今回も誤字報告お願いします。僕にはわかりません
「そ、その……つ、付き合ってくれないかしら」
「「「……は?」」」
まだ二人は俺たちに気付いてないようだな。ならこの場は少し離れよう。
俺が小町ちゃんにアイコンタクトとジェスチャーで『少し離れよう』と告げると、小町ちゃんは頷いてついてくる。
で、二人に気付かれないぐらいの距離に移動してから
「ねぇねぇ小町ちゃん」
「はいはい何でしょうか岸波さん」
「さっきの雪ノ下さんの言葉の意味はどっちだと思う?」
「そうですね…」
小町ちゃんは二人を観察してから
「小町的には何所かに付き合って欲しいって意味だと思いますよ」
「まぁそうだよな。でも感心したな」
「何がですか?」
「雪ノ下さんが俺と桜以外の人に対してああいうことを言うのって初めてだったからね」
いやぁ…、雪ノ下さんも成長したんだな。または比企谷がそれだけの存在になってきているってことかな?
「……岸波さんって雪乃さんのことをライバル以外ではどう思っているんですか?」
小町ちゃんがジト目で見てくる。俺ってこんな目でよく見られるよな。
「ライバル以外だと、妹のような姉のような…、うーん、まぁ家族に近い感じかな」
「……ではそういった感覚の女性は何人ほど」
「桜は入ってないよね」
「そうですね。本当の妹ですから」
そうだな…。
カレンだろ、陽乃さんだろ、留美ちゃんだろ、でも陽乃さんと留美ちゃんは、カレンや雪ノ下さんとは少し違うんだよな。どちらかで言うと由比ヶ浜さん寄りかな。
「桜抜きなら雪ノ下さんを合わせて二人かな?」
「疑問形なのは気になりますが、雪乃さんだけではないんですね(これは雪乃さんが岸波さんを手に入れるのは時間が掛かりそうだな。小町は雪乃さんの味方ですよ!)」
「それでこの質問は何か意味でもあったの?」
「いえいえ、小町が少し気になったでけです(岸波さんは鋭いようで鈍いなぁ…)」
「ならそろそろ合流しようか。もし何所かに付き合って欲しいって意味なら俺や小町ちゃんにも言ってくるだろうから」
「ほえ、どうしてですか?」
「俺の予想では雪ノ下さんは由比ヶ浜さんの誕生日プレゼントを買いに行こうと思っているからだよ」
こうして俺と小町ちゃんは二人と合流したら、俺の予想通り由比ヶ浜さんの誕生日プレゼントを買いに行くために誘われた。桜も連れて行こうかな。
今日も結構充実してたな。
『東京わんにゃんショー』に行って、いつものバイト、いつもと同じトレーニング。
そういえば今日はBBと会話する日だったな。
なんかあの日(リップとメルトにバレた日)以降、BBが『センパイ、今度から二日置きに話しかけて下さい』って言ってきたんだよな。
従ってはいるけど。BB達のほうもいろいろあるんだろうな。
俺はパソコンを開いて、桜の花のマークをクリック。
『あらハクノ、久しぶりね』
おや、メルト久しぶり。って、どうして今まで出て来なかったの?
『BBにしてやられたのよ』
BBのことだからまたどうでもいいような悪巧みだろうな。
『BBが、一日交替でBB、リップ、私という順番でハクノと会話することにすると提案してきたのよ。私は反対したのだけどリップが納得したせいで多数決で私の負け』
そういうことか。それだと俺が話しかけてない二日間にリップとメルトが入ってるから、君たちには会えるはずがないわけだ
『ええ、そういうこと。でも久々にあなたの顔が見れて嬉しいわハクノ…』
メルトが獲物を見るような目で見つめてくる。
あ、あのーメルトさん?もしかしてまだ俺のことを狙っているんでしょうか…?
確かBBがスキルや権限がなくなってるって言ってはいたけども性格は前のままとも言ってたからな、SGの加虐体質は残ってるんだよな…。
『ええ、あなたへの想いは変わらないわ。今にでもあなたの悲鳴を聞きたいぐらいよ』
ゆ、歪んでいる…。ブレてはないけど歪んでいるよその想い…。メルトはさらに鋭い視線で舐めまわすように見てくる。
『でもあなたと一つになろうとは思っていない。むしろ純粋にあなたと恋がしたいもの』
メ、メルトがデレた…。前のも一応デレになるのか?
え、えーっとまぁ…、メルトが俺を殺そうとしてくるわけではないからいいか。それでBBは何所にいるのかな?
『ハクノ、あなた私と話しているのに他の女の名前を出すってどういう神経してるの』
ご、ごめん。でもそろそろ俺が作ってたプログラムについて聞きたくてね。
『プログラム?……ああ、BBが言ってたわね』
何て?
『それは―――』
『メルト、やっぱりここにいたのね』
『あらBB、ハクノと会話させてもらってるわよ。あんな変なウソで騙されるのはリップぐらいよ』
BBが出てきたみたいだな。
『それにあなたが吐いたウソのせいで、リップがいろいろ壊してしまったから、今みたいに掃除するはめになってるんでしょ』
……掃除中だったんだ。結構家庭的ですねお二人とも
いろいろ壊したってスキルとかは無くなってるんだよね。もしかしてステータスはそのままとかじゃないよな。ステータスは幸運以外はEぐらいでお願いしたい。
『別に私は好きで掃除をしてないわ。まだ手、指の感覚はないもの』
そうなんだ…
『でも、あなたと会話できたから今回は大目に見るわ。それじゃあまた会いましょう、私の初恋の人』
メルトはそう言って何所かに歩いて行った。
で、BBなんで変なウソ吐いてんの?
『い、いやぁ、前言ったじゃないですか、センパイと話をするのは私だけでいいんです。でもメルトにバレちゃいましたねぇ。今度はどうしましょうか』
まだウソ吐く気なんだ!!そろそろ諦めて二人も連れてくれば?俺は別に……
いや、ちょっと待てよ。あの三人を同時に相手できるか?無理だろうな。間違いなく無理だ。
今まで通り日替わり式でお願いするよ。俺が今度から毎日話しに来るから
『わかりました。はぁ…、これでセンパイを一人占めできませんね』
そこはお姉さん?いや、お母さんなんだから我慢しようよ
『あんな自分勝手な子どもはいりませーん。あ、センパイとの子どもは欲しいですね』
はいはい、ありがとうね
『どうしてそんなに適当なんですかー。BBちゃん悲しいです。ぐすん』
なんか冗談ではないんだろうけどさ、俺がBBたちと会話できるようになってからずっとこんなことばかり言われてきたから、有り難さみたいなのが無くなってきた感じでね
『……(過度な愛情表現は逆にダメってことですか…)』
それでだけど、俺が作ってたプログラムについて聞きたいんだけど
『仕方がありません。センパイは甘えん坊ですねぇ』
……。まぁそれでいいや。だから教えてくれないかな
『詳細は今度の私の日でいいですか?』
まだ延ばすんだ!?
『こちらもいろいろ準備しないといけないんです』
準備ですか…。それなら仕方がないって言うしかないよな。
わかったよ。じゃあまた火曜日。
『ではそちらでの火曜日にお会いしましょう。センパイ』
BBが映っていた映像が消える。
「火曜日ねぇ……。そうなると由比ヶ浜さんの誕生日を祝った日の後だな。明日は由比ヶ浜さんのプレゼントを買いに行くんだよな。もう寝よ」
俺は布団を引いてその中に入り、瞼を閉じて眠りにつく。
「それじゃあ桜、行こうか」
「でも私も行って大丈夫なんでしょうか?」
そして今、俺は桜を連れて集合場所へむかうところである。
「桜、俺は友達がいないからどうかは知らないけど高校生活では友人が必要だと俺は思っている」
「はい。私もそうだと思います。でも兄さん、兄さんは私のお友達の心配よりも自分のほうを心配したほうがいいのでは?」
「……」
だってどんなに頑張っても裏目に出ちゃうんだよ。こういうのって。
「大丈夫だ桜、俺はもうお友達候補は何人もできているから」
「候補のままなのはどうしてですか?」
「……………どうしてだろう?」
あれ?どうしてまだ候補のままなんだ?どれくらいで友達って呼んでいいんだろう?
「桜」
「はい。何でしょうか?」
「俺の友達って誰ぐらいからなんだ?」
「はい?」
桜が『兄さんまた考え過ぎて変な方向に…』みたいな顔をしている。どんな顔かって、それは兄である俺にしかわからないんだ。
「まぁ桜は高校での俺の人間関係って雪ノ下さんぐらいしか知らないもんな」
一応カレンもそうなんだけど、カレンの名前を出したら桜が怖いんだよ…。
「なら、桜から見て俺と雪ノ下さんってどんな感じかな?」
「兄さんと雪ノ下さんですか……」
なんだろ、桜から黒いモノを感じる。これは話しを変えよう。
「ま、難しそうだから別にしよう。桜にとって雪ノ下さんってどんな感じ?」
「それは…、理想のお姉さんって感じですかね。猫をかぶってませんし、守銭奴でもありませんから」
なんかムーンセルでそんな人にあったような…………凛?
そんなことを兄妹仲良く話しながら集合場所に移動した。
現時刻10:00ちょうど。集合場所にはもう三人がいた。ゆっくりしすぎたかな?
「ごめん。少し遅れたよ」
「は、初めまして。兄さんの…、岸波白野の妹の岸波桜でしゅ…///」
あ、噛んだ。俺の妹は可愛いな。そういえば『俺の妹がこんなに天上天下唯我独尊』って本が生徒会室にあったような…。
「桜さん、久しぶりね」
「あ、はい。お久しぶりです雪ノ下さん」
雪ノ下さんと桜が挨拶をしている横で
「なぁ小町」
「なにかなお兄ちゃん」
「岸波の妹ってお前と同い年らしいけどさ、レベルの差を感じるんだが」
「お兄ちゃんも岸波さんとかなりのレベル差があると小町も思うよ。でもお兄ちゃんはダメなほうが小町も面倒のやりがいがあるよ。あ、小町的のポイント高いかも」
それから電車に乗り『ららぽーと』に向かう。まさかまたここにくることになるとは…。嫌な予感がするな。
電車の中で早くも小町ちゃんと桜が友達みたいになった。すごいな…これがコミュ力か。
「驚いた……かなり広いのね」
雪ノ下さんは案内板を見ながら考えるように腕を組む。
「いろいろあるからね。いくつものゾーンで分かれてるから目的は絞ったほうがいいかな」
「詳しいのね」
「桜やカレンと何度も来たからね」
「そ、どうでもいい情報ありがと」
「雪ノ下さん、踵で俺の足のつま先を踏むの止めてくれないかな。地味に痛い」
前はこんな暴力を振るう子じゃなかった!と思う……。
「あらごめんなさい。見えてなかったわ」
「さいですか……。って他の三人は」
辺りの見渡すと三人がいない。
「桜さんと小町さんは一緒に行動したいと言ってたわよ」
「じゃあ比企谷は?」
「彼は……」
雪ノ下さんが比企谷がいない理由を考え始めたとき、俺の携帯に着信音が。
比企谷八幡の名前が……。嬉しい!初めて同い年の男子から電話だ。
「もしもし」
『あー、岸波か』
「まぁ俺の携帯だし。で今何所にいるの?」
『俺は買うモンは決めたから、一人で行かせてもらうわ。集合は案内板の近くな。じゃあな』
「は?ちょっと、ま」
通話が切れた。
「どうしたの?」
「比企谷が一人で行動で由比ヶ浜さんのプレゼントを買うってさ。集合場所はここだって」
「意外ね。彼が由比ヶ浜さんにプレゼントを買うなんて」
「そうでもないよ。比企谷だって由比ヶ浜さんに感謝はしてるんだと思うよ」
「………そうね。では私たちもそろそろ買う物を決めないといけないわね」
「俺はもう用意してあるから雪ノ下さんの分だけでいいよ」
雪ノ下さんは驚いた表情をした後、いつものように呆れ気味に
「いつから用意していたのかしら」
「由比ヶ浜さんが来なくなって四日目ぐらいかな。その時には雪ノ下さんと同じように誕生日を祝おうって思ってはいたんだけど、今回は俺一人で頑張ってもまったく意味がないなって。平塚先生が来てくれなかったらどうしようかと思ったよ」
実際俺が由比ヶ浜さんにプレゼントを渡しても現状をどうこうできるわけがない。みんなで祝えば由比ヶ浜さんにも勇気を持ってもらえるだろう。
「あなたらしいわね」
「それで雪ノ下さんは何にするの?」
「まだよ。どういうものがいいかわからないのよ」
「それなら由比ヶ浜さんが使いそうな物を買えばいいんじゃないかな」
「彼女が使いそうな物?」
「そう。たとえば……」
案内板で場所を確認してから移動して目的地に着く。
「ここってキッチン雑貨のお店よね」
「ほら由比ヶ浜さんの依頼が終わって、その後に由比ヶ浜さんが来た日にさ『料理にはまってる』みたいなこと言ってたし」
「彼女の料理の腕前はかなり低いと思うのだけど」
「だからこそだよ。それに中に入れば意外といい物もあると思うよ」
「それもそうね。それじゃ中に入りましょう」
そして入店。
「おお、この包丁はいいな。あ、中華鍋まで」
目移りしちゃうよね、こういう店って。俺も料理をするから見るとテンションが上がる。アーチャーが銃や家電を見てテンションが上がるのも納得できるよ。
「岸波くん、どうかしら?」
雪ノ下さんのほうを向くとエプロン姿だった。
黒い生地で胸元に小さな猫の足跡があしらわれている。
「それは……、由比ヶ浜さんとは違うかな?だけど」
「だけど何かしら」
「雪ノ下さんにはすごく似合ってるよ」
やっぱり女の子のエプロン姿はいいね。
「……そう、ありがとう。それだと由比ヶ浜さんはこんなのかしら」
雪ノ下さんは自分が着ていたエプロンを脱いで丁寧に畳み、近くにあった薄いピンクの装飾の少なめのエプロンを手に取る。
「いいんじゃないかな。由比ヶ浜さんらしいと思うよ」
「そう、これにするわ」
そうして雪ノ下さんはピンクのエプロンと黒のエプロンをレジに持っていく。
自分のも買うんだ。まぁ似合ってたからいいと思うけど。
そのあと雪ノ下さんは途中にあったショップでパンさんのぬいぐるみを買っていた。本当に好きなんだな…。
集合場所に向かう途中、ペットショップで比企谷と鉢合わせした。場所で比企谷の買った物が予想がついた。
って場所決まってたのになんで今出てきたんだ?遅くないか。何所かで暇潰しとかしてなかったよな?
「白野くん。飲みたいものある?おごるよ。」
「いえ、さっき自動販売機でコーヒー買ったんで…」
で、俺は今陽乃さんに捕まってららぽーとの中にあるカフェにいる。
何があってこうなったかを説明しよう。
比企谷と鉢合わせし、三人でその辺の一服しようとしたため俺が飲み物買いに行くと言った。
『俺、飲み物を買いに行こうかと思うんだけど、二人は欲しい飲み物とかある』
『私は紅茶を』
『俺はMAXコーヒーで』
『わかった。待っててね』
こんな感じだ。
で、俺が飲み物を買いに行って戻ったら、二人がいた場所にもう一人いた。それが陽乃さん。
そこから弩濤のようだった。
俺が『あれ陽乃さん?』と言ったら、陽乃さんはいつものようにハグをしてきて、雪ノ下さんがお怒り……不機嫌に、だけど陽乃さんはそれをスルー、そのまま俺を連行し今に至る。
飲み物はしっかりと渡してきたから大丈夫。
というか前もこんな感じで雪ノ下さんの実家に連れてかれたな。いや、あれは拉致か。
陽乃さんがコーヒーを買ってきて席に着く。
「それで、陽乃さんどうしたんですか?いつも……こんな感じですけど、今日は友人(笑)と遊んでたんじゃないんですか?」
「(笑)ってひどくなーい。お姉ちゃんショック」
「陽乃さんが今日一緒だった人たちを友達とは思っているかわからなかったもので」
「白野くんってさ、私には厳しくない?雪乃ちゃんにはあんなに優しいのに。雪乃ちゃんが羨ましいなぁ」
「気付いて言ってると思いますが、陽乃さんには強めに出ないとこっちが陽乃さんのペースに呑まれてしまいそうなので、こうしてるだけです」
大抵の人はこの人を前にしたら、逆らえなくなるからな。
「じゃあ、私も雪乃ちゃんみたいにツンツンデレデレしてれば、白野くんは私にも優しくしてくれるのかな?」
「……。雪ノ下さん俺にデレてるんですか?アレで?」
デレって言うのは、セイバーの『余の婿に来るがいい』とか『告白するぞ……余は奏者が大好きだーーっ!!』や、キャスターの『もうっ、ご主人様ったらイケメン!』とか『マスター!一生ついて行きます』や、優しいときのギルの『見事だ!後で飴をやろう』とか『おい。…怪我ないな』みたいなアレでしょ?
「雪ノ下さんが俺にデレているかはまた今度いいです。まず陽乃さんが俺を連行した意味を聞きたいんですが?」
「なら、私が雪乃ちゃんみたいになったらどう接してくれるか教えてよー」
「そうですね……、何か裏があるか考えちゃいますかね。今までが今までなんで。それか、陽乃さんは気に入ったモノをとことんいじめたがりますから、その一環みたいなモノって考えますね。」
あれって本当に迷惑な場合もあるからな。対象は俺、雪ノ下さん、葉山くんが多い。
「俺の予想では比企谷辺り気に入ったんじゃないですか?」
「そうそう、彼、比企谷くん。あの子は面白くていいね。あの変に悟って諦めているような目は好きだなぁ。まるで白野くんの逆って感じで」
「俺の逆ですか」
「君は全てを悟っても諦めずに頑張るって感じだもん」
確かにそうかもな。俺はまだ道があるなら逆らおうと必死になる。
「比企谷の性格とか考えると、陽乃さんの仮面にも気付いてるんじゃないですかね」
「そうかもねぇ」
そんなことを話しながら、俺は自動販売機で買ったコーヒーを、陽乃さんはここのカフェで買ったコーヒーを飲む。
「で、何の話だったかな?」
「あなたが俺を連行した理由です。話したい程度のことなら二人がいた場所でもよかったでしょ。だから気になったんです」
「連行なんてしてないよー。もう白野くんは大袈裟なんだから」
「俺が断ろうとしたら関節技決めてきましたよね。合気道に関節技なんてありましたっけ?」
確か陽乃さんと雪ノ下さんは合気道してたよな、護身術として。
「アレは白野くんが勝手に動いちゃったせいだよ」
「勝手に動いたら、陽乃さんは相手の右手首を持ったまま相手の背に回り込むんで肩の関節を外そうとするんですか!?」
怖すぎだろ。
「でも白野くんなら抜けることもできたでしょ」
「……ま、まぁ俺もそれなりに鍛えてますし」
でもその場合って陽乃さんが怪我するかもしれないからな。
「君は優しいよね」
陽乃さんは俺の考えを読み取ってそう言った。そして真剣な表情になり
「本当に優しい…、誰にでも……、だから嫌いな人がいないんだよね。というよりは嫌いな人を作らなくなったんでしょ」
「やっぱり気付いてましたか。俺の心の壁の正体」
「人を嫌いにはならないってことは、好きになることもない。絶対にある一定の距離を保つ。それ以上近づこうとする人が気付かないフリをする。そうやって自分も騙す。だから自分をも通さない壁になる。というより箱だね。鍵を閉めてるみたいだし」
「……さすがですね」
「君みたいに人の心や考えに鋭い人間が自分への好意に気付かないはずないもん」
「そうでもありませんよ。俺は今でも好意を持ってくれている人はいないと思ってますし」
「さすがは女泣かせ。この唐変木」
ひどい言われようだな…。
「それで、どうしてそうなったかを調べてるんだけどどうにもまだわからないんだよね。君の過去、五年間の空白が」
「……」
久しぶりに嫌な汗が出てきたな。なんとなくこの人ならここまで来るとは思ってたけど、実際に来られるとすごい緊張感。
「で、陽乃さんは俺の過去を知りたかったから連行したわけですか」
それから陽乃さんはいつもの偽物の笑顔に戻る。
「そうそう、そういうこと」
「俺としては、頑張って自分で調べて下さいって言いたいんですけど……。雪ノ下さんにもそう言いましたし」
「へぇ…。雪乃ちゃんも白野くんのことを調べようと思ってるんだ。意外だね、雪乃ちゃんは気付かないかと思ってたよ。白野くんの秘密」
「いえ、まだ気付いていませんよ。ただ俺には秘密があるってことは最近わかったみたいですけど」
俺が自分で言ったからな。
「ふーん。じゃあまだ私のほうがかなりリードしてるみたいだね」
「そうですね。でも雪ノ下さんが知ってることで陽乃さんが知らないこともありますよ」
コードキャストのことだけど。俺のコードキャストについて知ってるのは、雪ノ下さん、カレン、桜、父さん、店長の五人。店長は俺を見てすぐに気付いたようだったけど。
「白野くんは秘密だらけだね。そうなるともっと君のことが気になるし、気に入るなぁ、君は本当にいい暇潰しになるよ」
俺はおもちゃですか?
「まぁ俺から言うことはないのでこれから頑張ってください。真実に辿り着いたら俺の口から言わせてもらいますので。雪ノ下さんと手を組んでもいいですよ」
「それは無理だよ。君もわかってるでしょ、私はそうでもないけど雪乃ちゃんは私を嫌ってるから」
嫌ってるよりかは、苦手になるんじゃないか?陽乃さんは雪ノ下さんの憧れみたいなところでもあるんだし。
「じゃあ俺はそろそろ帰らせてもらいます」
「ええー、もっとお話しようよー」
「それがですね……」
俺が携帯を取り出して陽乃さんに画面を見せる。
「着信が五三件。一分おきに雪ノ下さんからメールが…」
内容が『今何所にいるの』『姉さんと何してるの』みたいなのばっかり、途中で『姉さん』が『あの女』に変わってるんだけど…。
「う、うわぁ…、私の妹でもこれはちょっと……。白野くんが雪乃ちゃんをこんなにしちゃったんだよ。しっかり責任とってね」
「俺にできることなら最善を尽くしますけど…」
どうしろと?
「今回はこれで失礼します。雪ノ下さんから殺されかねませんし…」
「そっか。残念、じゃあまた今度あったらお話しよか。そうだ雪乃ちゃんと会ったら手を繋いで上げれば機嫌が少しはよくなると思うよー」
そ、そんなもんか?
「一応やってみます。それではまた何時か」
俺は席を立ってカフェを後にした。
遠見の水晶玉のコードキャストで雪ノ下さんを捜し、迷子になっていた雪ノ下さんと合流。比企谷は先に帰ったようだ。というより雪ノ下さんが帰らせたようだ。
その後は殺気立った雪ノ下さんと一緒に帰ることにし、何も言わずに俺から手を繋いでみたら殺気が収まった。
さすがお姉さん、妹の扱いは知っているな。そう言えば桜もこんな感じで収まるな。意外と似てるかもな、あの二人。
明日は由比ヶ浜さんの誕生日を祝うから、鶴見先生に家庭科室借りてケーキでも焼こう。そのために下準備しておくか。
雪ノ下さんもうまいことヤンデレ化し始めましたね
メルトとも少し会話をしましたし、そろそろリップとも会話をさせないとですね
次回はアニメではなかった遊戯部の回です。
それではまた次回!!