やはり岸波白野の青春ラブコメは王道か?   作:魔物Z

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今回で川崎さんの回は終わりです

バトラー岸波大活躍!!


彼を知るために彼女は決意する。

 

 

 

 

 

改札前で義輝様と彩加様と別れ、八幡様と一緒に雪乃お嬢様と結衣お嬢様との待ち合わせ場所へ向かうことに。

 

この口調も馴れてきたせいでしょうか?考えもこのような話し方になってしまいました。

 

「それでは八幡様、ホテルの中に入り、お二人が来るのを待つことにしましょう」

 

「なぁ岸波」

 

「はい、どうなされましたか八幡様」

 

「いつまでその喋り方なんだ?」

 

いつまでと言われますと困りますね…。

 

「そうですね…。雪乃お嬢様から許しを得るまでか、この執事服を脱いだときでしょうか」

 

「お前はよく雪ノ下を第一に考えるよな」

 

「いいえ、そういうわけではありませんよ」

 

「そうか?俺はお前と今日まで、まだ二カ月ぐらいしか経ってないが、お前と過ごしていた間、お前の行動は『雪ノ下のために』みたいなことが何度かあったと思うけどな」

 

「はい。八幡様と出会ってから、いいえ、八幡様と出会う前から雪乃お嬢様のために行動をしたことも何度もあります。ですが私の行動は全て『誰かのために』のような感じでしょうか、誰か一人のために行動をするときもあれば、複数の人のために行動をしたこともあります。特定の一人にだけというわけではありません。とはいえ雪乃お嬢様を特別視してはおりますが」

 

「特別視?」

 

特別視。家族や仲間。私に、一人だった私に手を差し伸べてくれた人たち…。

 

「はい。雪乃お嬢様だけではありませんが、私が『大切な存在』と思っている方々です。その中には、八幡様、あなたや結衣お嬢様も含まれていますよ」

 

「なんで俺が入ってんだ?」

 

「私が仲間と思っているからです。ですので、今後あなたや結衣お嬢様がいい方向に向かっていたら見守りますし、悪い方向へと転がってしまったら手を差し伸べ、救い出したいと思います。無理矢理にでも、ですが」

 

「断っても、拒絶しても、お前は自分が良しとすることをするわけか…。自分勝手だな」

 

「はい。欲張りとも言われます」

 

ポケットの中にある懐中時計で時間を確認する。

 

「そろそろ集合時間ですね。エレベーターホール前に行きましょうか八幡様」

 

「なぁ、その八幡様は止めてくんね」

 

「では、この姿のときは比企谷様と呼ばせて頂きます」

 

「様は付くんだな…」

 

比企谷様と共にはホテルの中に入ってエレベーターホールへと足を運んだ。

 

 

 

 

 

比企谷様がソファに座っているため、その横に立ってお二人が来るのを待つ。

 

「お、お待たせ…」

 

お二人が来たようですね。

 

「な、なんか、ピアノの発表会みたいになってるんだけど…」

 

「ああ、由比ヶ浜か。誰かと思った」

 

「せめて結婚式くらいのこと言えないの?さすがにこのレベルの服をピアノの発表会と言われると少し複雑なのだけれど…」

 

「だ、だってこんな服着たの初めてだもん。ていうか、マジでゆきのん何者!?」

 

「大袈裟ね。たまに着る機会があるから持っているだけよ」

 

「普通はその機会自体がないんだけどな」

 

普段のように話せるようになったみたいですね。

 

「それでは全員が揃いましたので、上に参りましょうか」

 

エレベーターのボタンを押し、ポーンと音と共にランプが灯り、音もなく扉が開く。

 

ガラス張りのエレベーターで上に昇り、最上階に着いて再び扉が開く。

 

高級感溢れるバーのような場所、ステージでは白人の女性がピアノでジャズを弾いている。

 

ここからは緊張しないように冷静に行きましょう。

 

後ろを振り向き、三人のほうを向く。

 

「皆様、雪乃お嬢様は大丈夫かと思いますが、他のお二方、比企谷様と結衣お嬢様はなるべく緊張なさらないように。ですが、しっかりと背筋を伸ばし胸を張って、きょろきょろなさらないでください」

 

私の言ったようにお二人は姿勢を正す。

 

「はい。それでよろしいですよ。雪乃お嬢様お手を」

 

そう言い右肘を差し出す。

 

「ええ」

 

雪乃お嬢様はその右肘をそっと掴む。

 

「比企谷様と結衣お嬢様も、雪乃お嬢様と私のようにして下さい」

 

「「は、はい?」」

 

お二人ともわけがわからないような顔をしながら私たちと同じようにする。

 

「お二人はなるべく離れずに私たちの後ろについてきて下さい。では行きましょうか皆様」

 

雪乃お嬢様の歩調に合わせゆっくりと歩き始め、開け放たれた重そうな木製のドアをくぐる。

 

すぐさまギャルソンの男性が脇にやってきて、すっと頭を下げて、そのまま男性は一歩半先に行き、一面ガラス張りの窓の前の端のほうにあるバーカウンターへと導く。

 

そのバーカウンターには川崎様がバーテンダーをしていた。早く目標を見つけることができてよかったです。

 

川崎様はこちらに気付かず、コースターとナッツを差し出し無言で待つ。

 

「川崎」

 

比企谷様が小声で話しかけると、ちょっと困ったような顔をする。

 

「申し訳ございません。どちら様でしょうか?」

 

「同じクラスなのに顔も覚えられていないとはさすが比企谷くんね」

 

雪乃お嬢様は感心なされながらスツールに腰を掛ける。

 

「はい。そのようですね。比企谷様の気配遮断はアサシン並みかと」

 

「何の話だよそれ」

 

「すみません。このような話は私にしかわかりませんね」

 

こちらの世界の人々にはサーヴァントの話を出してもわかるはずがありませんね…。

 

「や、ほら。今日は服装も違うし、しょうがないんじゃないの」

 

結衣お嬢様は比企谷様にフォローを入れながらスツールに腰を掛ける。

 

開いている席はお二人の間の席が一つ。

 

「比企谷様、どうぞお座り下さい。私は執事ですので主の後ろで立っております」

 

「お前そのキャラ板に付いてきたな。モデルでもいんの?」

 

「はい。王に仕える太陽の騎士です」

 

「何また中二みたいなこと言ってんの」

 

「すみません。それにこういったことはやるからには限界まで挑戦してみたいので。ですから、どうぞお座り下さいませ」

 

最後の席に比企谷様が座り、私は比企谷様と雪乃お嬢様の間の一歩半後ろに立つ。

 

「捜したわ。川崎沙希さん」

 

「雪ノ下…」

 

「こんばんは」

 

「ど、どもー…」

 

「由比ヶ浜か…、一瞬わからなかったよ。じゃあ、彼も総武高の人?」

 

「あ、うん。同じクラスのヒッキー。比企谷八幡」

 

結衣お嬢様に紹介され、比企谷様は会釈をする。

 

「その後ろの執事は雪ノ下のところの人?」

 

私のことですか…。

 

「いいえ。今回はこのような格好をしておりますが、私もこちらのお三方と同じ高校生です。この話し方もキャラ付けのようなモノですから普段はこのようなことはしてはいません」

 

私の話を聞いた後、川崎様はふっと諦めたように笑う。

 

「そっか、ばれちゃったか」

 

「大丈夫ですよ。公言などする気はありません」

 

驚いたように皆様が私のほうを見る。

 

「どういうことかしら岸波くん」

 

「はい。では川崎様にわかるように今回の件からお話します」

 

「今回の件?」

 

川崎様は『何のこと』と言いたそうな顔をする。

 

「今回私たちは川崎様、あなたの弟、川崎大志様に頼まれてここにいるのです」

 

「なんで大志が…、ああ、最近やけに周りがうるさいと思ってたらあんたたちのせいか。大志が何か言ってきた?どういう繋がりか知らないけどあたしから大志に言っとくから気にしないでいいよ。…だから、もう大志と関わんないでね」

 

川崎様が睨んできましたがまだこちらの話が終わっていないので話を続けましょう。

 

「次に頼まれたことですが、川崎様を元の真面目で優しいお姉さんに戻して欲しいだそうです。この件については大志様の誤解があるので気にしないでください。それで最後にあなたが夜遅くまでこちらでバイトをしている理由をお当てしましょう」

 

ここからは私の推測…。当たっているかは川崎様しかしらないこと。

 

「川崎様は学費を稼いでいるのではないでしょうか?」

 

「…なんでそう思うの?」

 

最初は驚いた表情を出しましたが、すぐに元の強気の表情に戻しましたね。

 

「大志様から聞いた話では、『両親が共働き』『兄弟が多い』『川崎様が高校二年生から帰りが遅くなった』『そしてこのお店からの電話がくる』が主になります」

 

「それで」

 

「私の推測なのですが、川崎様の進路を大学への進学と考えさせてもらいました。こちらは当たっているでしょうか?」

 

「そうだよ…」

 

これで大丈夫でしょう。

 

「私たちの通っている総武高校は進学校ですから、予備校などに通うための資金が必要だったのという感じですよね。兄弟が多ければその分の生活費や学費が掛かります。その上大志様は今年から塾に通っているんじゃないかと思いまして、自分の予備校の学費を稼ぐためにバイトをなさっているのではないですか?」

 

完全に的を射ることができましたね。川崎様はさらに驚いた表情を見せる。そして次は解決方法…。

 

「……だとしても、バイトは止める気はないよ。ならあんた、あたしのためにお金用意できんの?うちの親が用意できないものをあんたたちが肩代わりしてくれんの?」

 

川崎様の言葉は奉仕部全員に向けられた。解決方法を言う前にこういうことを言われると思ってはいましたが…、その場合もすでに対策済みです。

 

「ええ、あなたがそう望むなら構いませんよ」

 

「「は?」」「「え?」」

 

ここに来る前、自分の部屋にある金庫から持ってきたモノを上着の内側のポケットから取り出し川崎様に渡す。

 

「こちら通帳の中には私の全財産の約三分の一が入っております。私の家族は関係なく、私だけのお金です。どう使おうと誰のにも文句は言われないのでどうぞ」

 

川崎様は中に書いてある金額を目にする。

 

「ご、五〇〇万…」

 

「「………は?」」

 

「約三分の一と言うことは一五〇〇万円近くのお金ね。どこで手に入れたかはわからないけど高校生ではまずあり得ない大金ね」

 

「私が持っている理由はいつか私の口から言わせてもらうので詮索は無用です」

 

話しても皆様は理解してはくれないでしょうし。

 

「川崎様、あなたが望むならあなたが欲しいだけの金額をお渡しします。貸すではなく差しあげます。なにも考えず、ただ欲しいと言えばいいだけです」

 

このようなことはやりたくはないのですが、これからの反応で川崎様の性質がわかる…。

 

「いらないよこんな大金。さっき言ったのは言葉の綾みたいなもんでしょ。何信じてんの、バカじゃないの?」

 

川崎様はそう言いながら私に通帳を手渡す。

 

「はい、信じておりましたよ。あなたがそう言ってくれるのを」

 

「……」

 

川崎様はまた驚いたような顔で黙り込んだ。

 

「大志様が言っていたようにあなたは真面目で優しい方ですね。ですから一度家族と話し合ってみて下さいませんか?『あんたには関係ない』なんて寂しいじゃないですか。川崎様もそのようなことを弟や妹、両親に言われたら辛いはずです。でももしまだバイトが止められないのなら、比企谷様からいい案がありますよ」

 

「は?なんで俺…」

 

急に話をふられた比企谷様は驚いてから諦めたように

 

「はぁ…、なぁ川崎。お前さ、スカラシップって知ってるか?」

 

 

 

 

 

「なぁ岸波」

 

「はい、何でしょうか比企谷様」

 

現在全員でエレベーターで下の階に下りている途中。

 

「話し方、元に戻してくんね」

 

「わかった。それでどうしたんだ比企谷」

 

「お前、もし川崎が金が欲しいって言ったらどうしたんだ」

 

「あげたさ。自分で言ったことだからな」

 

俺がそう答えると、比企谷どころか他の二人も驚いた。

 

「…岸波、俺にはお前がどんな人間かがわからねぇよ。俺は結構人間観察してそいつがどんな人間かは見分けるのが得意だと思う。だが俺は未だにお前がわからねぇ」

 

「そうだろうな。誰一人として俺を理解できる人間はいないと思う。長い付き合いの雪ノ下さんやカレン、妹の桜でも俺を理解するのは無理だと思うよ」

 

「岸波くん、それはどう言うことかしら」

 

「君たちは俺の真実を知らない。俺の過去を俺の未来を君たちは知らない」

 

だから、俺を理解するのは無理だろう…。

 

エレベーターのガラスに映る自分の顔は少し悲しそうに見えるな…。

 

一階に着いてエレベーターの扉が開く。

 

すぐさま気分を入れ替えよう。いつものように笑顔で話す。

 

「にしても緊張したな。こんなところ来たの初めてだよ」

 

「それにしてはしっかりとエスコートできていたけれど」

 

いつもと変わらないように話してくれる。

 

「必要最低限のマナーは習ってるからね」

 

「あれって必要最低限のマナーなのか?初めて知ったんだが」

 

「あたしも…」

 

そんなことを話しながらホテルの外に出る。

 

「もう十一時か…。バイクで帰ると言っても三十分は掛かるからなぁ。今日は試験勉強はできないな」

 

俺はみんなのほうを向き

 

「じゃあまた明日、って言っても試験前だからまず会わないか」

 

「そうだな。まぁまた明日でいいんじゃね」

 

「そうか。じゃあまたあ―――」

 

「その人捕まえて下さい!引ったくりです」

 

ん?少し遠いとかろから声が…。

 

振り返ってよく見ると女性物のバックを持って走ってる男とそれを追いかけてる女性。

 

女性の脚力で考えてもまず追いつくことはないだろう。むしろ距離が離れていくな。

 

「move-speed()」強化スパイクのコードキャスト。

 

一気に踏み込み全力で走る。

 

「速っ!」

 

移動速度が約倍に上がっているから、すぐに男の前に回り込む。

 

「退け!邪魔だ!」

 

男はそんなことを言いながらポケットからナイフを右手で取り出す。

 

ナイフか…。店長から習った技でもやってみるか。

 

俺も男のほうに向かって踏み込み距離を一気に詰める。

 

「なっ!」

 

男のナイフを持っている右手の手首を左手で掴む。そのまま左腕を引き、相手の懐に入り、その勢いで右肘を相手の鳩尾に打ち込む。

 

『六大開・頂肘』

 

「かはっ!」

 

そのまま相手の足を払い転ばす。といっても気絶してるか。魔力強化してなくても普通の人間があんなのくらえば気絶してもおかしくないし…。

 

店長ほど綺麗にできないけど、まぁ成功かな?

 

「「「「「「「「「おおおおおぉぉ!!」」」」」」」」」

 

周りから歓声が上がる。いやぁ、恥ずかしいですねぇ。

 

気絶している男からバックを取り上げる。

 

そして走ってきた女性にバックを渡す。

 

「どうぞ。あなたのですよね?」

 

「は、はい。ありがとうございます」

 

「いえいえ、気にしないでください。俺が勝手にしたことなので。それでケガとかはありませんか?」

 

「だ、大丈夫です。あなたのほうこそ大丈夫ですか?」

 

「あの程度なら無傷でどうにかなりますよ。この人はあなたに任せますけど大丈夫ですか?」

 

「はい。本当にありがとうございます。あの…」

 

「何でしょうか?」

 

「どこかの執事さんですか?」

 

この格好だとそうなるよな…。

 

「はい。あちらの方々に仕えています。それでは」

 

そんなバカみたいなウソをついてみんなのところに戻る。

 

「ただいま」

 

「岸波、お前何者?最強の弟子?」

 

「魔術師だ。あと俺は最強の弟子ではないけど、武術の先生は最強レベルの方々なのは間違いないな」

 

なんせ英雄と中華料理屋の店長だからな!!

 

「なんか周りの人たちの視線がすごいんだけど…」

 

「仕方がないでしょ。大勢の前であんなことやったら注目されるのは当たり前よ」

 

「なんかごめん。帰ろうか…」

 

 

 

 

 

あのあと比企谷と別れ、雪ノ下さんと由比ヶ浜さんを雪ノ下さんのマンションまで見送って、駐車場にある自分のバイクに乗って家まで帰った。

 

翌朝、ニュースで『謎の執事、引ったくり犯を撃退!!』みたいなことを騒いでいたが、まぁバレないでしょう。

 

最近の執事はハイスペックなのは当たり前だから、アレぐらいできてもおかしくないよね?

 

そして日は流れ、中間試験も終わり、休み明けの月曜日。試験の結果が全て返される日。

 

「うーん…。少し点数下がったかな」

 

ほとんどの教科は雪ノ下さんと大差がないんだけど…、国語が学年四位に…、もしかして比企谷より下かな?いや、下だな。

 

「岸波くん。あなた、あの比企谷くんに負けるとはね。情けない」

 

「いやいや、そう言われても、それに国語以外は雪ノ下さんと大差ないし、数学に限っては今回雪ノ下さんより上だよ」

 

「あら自慢?国語四位のくせに。私は数学以外は全部一位よ」

 

「俺は国語以外は一位か二位だよ」

 

なにこの不毛な会話。

 

「まぁこのことは置いておくとして、そろそろ行こうか」

 

今日は試験結果が戻ってくるだけでなく、職場見学の日でもある。

 

何故か俺と雪ノ下さんのグループの残りの一人の座を複数の女生徒が争っていた。

 

確かに雪ノ下さんはかっこいいから、クラスの女生徒から『憧れのお姉さま』のように見られていることが多いからな。ここは女子高ですか?

 

最終的に争っていた女生徒たちは全員、俺と雪ノ下さんと同じ場所に行くことになった。

 

女子率が高い!すごく居づらいんですが…。俺は殿をしよう。

 

職場見学場所は雪ノ下さんの意見でシンクタンクか、研究開発職のどちらかになったそうで、俺はそれについて行くだけ。

 

俺の意見を聞き入れる必要はないもんな。まぁ俺もそういうことに限っては意見言う気もないけど。

 

職場見学も終わりあとは帰るだけ、ためになるようなことを聞いても、実際に役に立つかはわからないよな。

 

ためになる話なら、寝て英雄に聞いたほうがいい気がしてきた。

 

あとそろそろ、BBにプログラムのこと聞かないと。結構はぐらかされるんだよなぁ。

 

「ねぇ岸波くん」

 

「ん?どうしたの雪ノ下さん」

 

一人で帰路に付こうと歩いていたら、雪ノ下さんに話しかけられた。

 

「この前の話しを聞きたいのだけど」

 

「この前?」

 

「ええ、川崎さんの依頼が終わったときの、あなたの話よ」

 

「……」

 

自分でもわかるぐらい、今の俺は嫌そうな顔をしてると思う。

 

「あなたが嫌だと言っても聞きたいの。あなたに嫌われても構わないわ。だからあなたの話を聞かせて」

 

「……。大丈夫だよ。俺は何があっても君を『人を嫌いにはならない』から」

 

そう。これが俺の秘密。陽乃さんが言っていた心の壁。俺が仕舞い込んだ人に対する負の感情。俺があの過去を経て、この世界で生きていくために、『人を嫌いになる』ことをやめた。

 

「だけど、ごめん。まだ言えない。でももし知りたいなら、少しでもヒントが欲しかったら」

 

「……」

 

「父さん、または陽乃さんから聞いてくれ」

 

陽乃さんの名前が出て雪ノ下さんの表情が曇った。

 

「どうして姉さんの名前が出るの」

 

少し強い口調で尋ねてくる。

 

「陽乃さんが、彼女が誰よりも俺を知ろうとしていて、誰よりも俺に近いからだよ。彼女は俺の過去を知っているかはわからないけど、俺の秘密は知っているんじゃないかな」

 

「……」

 

雪ノ下さんは黙り込んでから、何かを決意したような顔をする。

 

「わかったわ。なら私もあなたを知るために努力するわ。誰よりも早くあなたを理解する。姉さんや言峰さん、桜さんよりも早く」

 

「……、そうか。なら俺はそれを応援するよ。だけど…」

 

この先の言葉は俺の思い。

 

「だけど、俺を知っても嫌いにならないで、今までと同じでいて欲しいかな…」

 

 

 

 

 




次回からガハマさんの話になりますが…、皆さん疑問があるでしょう。それは…、ヒッキーがいつ小町からガハマさんのことを聞いたかです。さらにここのヒッキーは事故ってはいますが、大怪我ではありません。ですがここは原作通りに行きます

『六大開・頂肘』はFate/zeroのときマーボーこと言峰さんが舞弥さんに使った技です。かっこいいですよねアレ。

そして白野くんの心の壁については少し書いてみました。納得いかないかもしれませんが、納得してもらえると嬉しいです

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