Báleygr   作:清助

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第十七話「オカエシ返し」

「1体で止められるかと思ったけど、2体分か。やっぱり見た目のオーラと実際の攻撃力が釣り合ってないわね。あんた」

 腰に手を当ててラヴェンナはそう悠然と告げた。

「でも無駄。『悪意ある攻撃』に対しての自動防御だから、あんたのその<オーラを隠す能力>はあたしには届かない」

 後ろでウィルの叫び声が聞こえた気がするが、片手をあげて無事を伝えた。

 口元から流れる鮮血を拭いながら、俺は震える身体を立たせる。拙いな、内臓を損傷したみたいだ。骨も何本か折れてやがる。

「……〝灰〟がシンデレラなら、〝雪〟は白雪姫か」

「そういうこと。相性、最悪でしょ?」

 確かにこれはまずい。

 彼女の周囲には7体の念人形が浮いていた。

 そのどれもがかなりの量のオーラが込められている。彼女自身のオーラは比例して小さい。あの人形が出ている間は最低限の念しかできないようだ。

 相手の視覚と精神に対してアドバンテージを持つ俺の能力は、意思や理性を持たない相手にはまったく役に立たない。

 それを踏まえて対人を想定して念を作成したのに、まさかここまで能力効果の悪い念能力者がいたとは考えていなかった。

「アイショウ、アイショウ。ナニ?」

「バカヤロウ! スキカキライカダ」

「……チガクナイ?」

 中央の白雪姫が手を俺に向けると、7人の小人が取り囲むように包囲してきた。日頃から他者の監視という名目で能力の遠距離操作練習もしていたのだろう。操作系の能力方面も随分と優秀なようで、あっという間に囲まれた。

 目線よりやや高い位置に浮いているので、自然と念人形たちを見上げる形になる。

 まるで自分が裁判の被告人になったかのようだ。

「ジヒナキオマエガワルイ」

「<我が侭な木偶の坊たち(ローア・アム・マイン)>――ワレラヲソウヨブ」

「〝アクイ〟ニハ、〝オカエシ〟デス!」

「ヒメスキヒメスキヒメスキ」

 口の端から鮮血を垂らしながら、俺は歯を食いしばって構えなおした。

 これは、骨が折れる。

 

 

 

 

 

 

 

「無理だな」

 眼下の試合に唇を噛んだウィルに声をかけて来たのは、彼の今日の対戦相手であるハルド・ムトーだった。

 ラヴェンナと交戦した経験者は語る。

「一定以上の攻撃力がなければあれは、無理だ」

 後ろには狐目の男とアイシャがいる。

 彼女の方はルカの様子に顔を青くして心配そうな面持ちを浮かべていた。

 ウィルの近くに腰掛けていたミモザは、黙ったまま試合を見ている。

「どういう意味です?」

「7体の念人形による完全自動防御。使用者であるラヴェンナ・メルヒルに対する攻撃を防ぎ、余剰オーラで相手にカウンターを返す念能力だ。攻略するにはラヴェンナ本人に防御を突き破る強力な攻撃をするか、オーラが枯渇するまで念人形を相手取って一人ずつ倒していく持久戦が必要だろう」

「……」

 ポケットに両手を突っ込んでいたムトーは、内から煙草を取り出して火をつけた。

「強化系能力者や格上相手とはどうやっても勝てない能力だが、それ以外のほとんどの念能力者たちにとっては相当厄介な相手だろうよ。今の攻撃で致命傷を受けたルカには悪いが、おそらく乱れたオーラではもう勝ち筋はあるまい」

 ウィルは唇をかみ締めたまま試合に視線を戻した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 油断。

 そう、油断だ。

 実力の拮抗したミモザ戦、相手の力を勘違いしたオーシャン戦。

 どちらの試合も何だかんだで勝った。

 それがこの様だ。

 ラヴェンナが彼らより弱いとオーラだけで判断した俺の慢心が招いた結果だ。蓋を開けてみた彼女の念能力は今までに類を見ないほど強力な能力。例え付属能力であろうと感知タイプの能力者だと思って舐めてかかった。

 思えばいつもより凝も使っていなかった。

 それにしたってもう少し慎重に行動していたら、まだ勝負になっていたはずだ。念人形の動きも威力もそこまで脅威ではない。通常の状態なら総合戦闘能力は明らかにこちらの方が上。角に追い詰めたと思いこんでしまったのが今の状況である。騙しの念能力者である俺自身が、試合の流れに騙されてどうする。

「イタイ、イタイ。ダイジョウブ?」

 右から囁き声と共に衝撃が迸る。

「バカヤロウ。テキノシンパイスルナ」

「……アヤツラレルノキライ」

「フム、ジヒナキハダメ」

 喉に力を入れてなんとか耐え切った。連撃のように次々と身体に突き刺さっていくが、耐えられるレベル。念人形は攻撃している間も、遊戯をしているかのように思い思いに会話をしている。

「ワレラハ〝アクイ〟ニハツヨイガ」

「〝オシオキ〟デハナイト、デス。ハタラカナイノ、デス」

「ヒメスキヒメスキヒメスキ」

 四方からの攻撃を捌きながら、ちらりと視線を戻す。

 ラヴェンナは隙だらけだ。

 おそらく攻撃時の人形はオートではなくリモート。念人形たちの会話から判断してあいつ自身が操作している可能性が高い。

 だがこの会話から察するに、迂闊に近づいてはいけない。

 この能力はつまり正当防衛。相手が攻撃してきた時しか本来の威力は出せない能力。しかしそれならば何故最初からラヴェンナは出さなかったのか。カウンター系の能力なら初撃のぶつかり合いの時に彼女自身は攻撃しなければいい。

 理由は一度出したらしばらく能力を消すことができないのではないか、というのが結論だ。

 こちらが致命傷を受けたにも関わらず、見るからにオーラ消費量の激しいこの能力を未だに使用しているのが根拠だ。念弾の牽制だけでも既に十分きついのに、7体もの強大な念人形を操る理由はない。ミモザと似たような感じで白雪姫に則って当てはめるに、「眠らなければ自分で消すことができない」とかふざけた理由じゃないだろうか。

 さらには遠距離からの攻撃なら俺が対応できる可能性があったか。

 驚愕で硬直した近接距離からの決定打。攻撃を防がれて狼狽した空白を突かれた。致命的な俺の判断ミスだ。

 彼女は広いように見えて狭いギリギリの勝ち筋を鮮やかに手繰り寄せたのだ。敵ながら見事としかいいようがない。

 俺は弾丸のように突撃してくる念人形の一体をかわすと、合わせる形でオーラを集めて殴りぬく。

 攻防力は50、先の会話通りなら念人形1体ならば防げない。

「ギッ……」

「ぐふっ……!」

 隙を見た2体の攻撃が腹部に刺さる。動き自体は単調だ。万全の状態なら余裕を持って捌けていただろう攻撃に歯噛みする。

 意識が飛びそうだ。

 霞んだ視界で攻撃した念人形を見ると、風船のように破裂した。オーラの名残がラヴェンナに戻っていくのを眼で確認して軽く絶望する。あれは再利用とか出来そうだ。

 俺の攻防力40が2体に防がれたということを加味して、1体のオーラ量が約20~30ほどとみた。つまりラヴェンナ本人にダメージを与えるには、最低でも7体分の攻撃力が必要となる。

 全力で攻撃しても5体の念人形に防がれてしまう計算だ。己の能力の性質上、体術の訓練ばかり優先して基礎オーラ量を研磨しなかったのが裏目にでた。

 完全自動防御である以上、頼みのプライベートライアーは効かない。

 いよいよ詰んできた。

 攻撃を貰いながら2体目の撃破に成功する。

 ラヴェンナのオーラがまた一回り増加。

 連射はしてこないが念弾の牽制を再開してくる。

 念人形は増える気配はない。

 一度消えると次に本人に攻撃するまで出てこないのか。

 痛みと貧血で思考が上手くまとまらない。

 攻撃を貰いすぎた。

「普通に戦っていれば、たぶんあんたが勝ったかもしれない」

 ふらふらになってきた俺を見ながらラヴェンナが言い放った。

「攻撃を貰わないように気をつけながら、念人形が出てきたらあたしのオーラが尽きるまで一体一体丁寧に繰り返し倒していけば、あるいは勝負はわからなかった」

「まだ……わからんだろ」

 3体目に蹴りを入れて爆散させる。

 念弾が3発飛んでくるが、横から3体の攻撃を食らいながらも避ける。遅れて攻撃してきた1体を地面に叩き潰した。

 ラヴェンナの認識から外れるためにプライベートライアーを発動。操作されていた念人形たちの動きが一瞬止まったのを確認し、すり抜ける。

 残り3体を背後に置き去りにして彼女に向かい駆け出した。

 攻撃するならこの瞬間しかない。

 今ラヴェンナから出せるのはおそらく4体しかないはず。

 一か八か硬で殴り飛ばす。

 放たれた念弾に左腕を犠牲にして突っ込む。完全に折れた音がするが気にしない。これで決める。

 振りかぶった渾身の一撃は――。

「だから、防御は自動だって」

 ――やはり届かない。

「……まあ、そうだよな」

 俺の全力の攻撃を人形6体が止めていた。

 背後の3体の気配は消えている。本人に危害が加わりそうになると自動的に周囲に移動する機能でもあるのだろう。放出系能力が瞬間移動の要素に精通していることを考えたくはなかった。

「〝アクイ〟ロクニンブンデス。〝オカエシ〟ヒトリデス」

「ヒメシュキイイイイイイイイィィ!!」

 奇声をあげた念人形の一撃が腹部に突き刺さった。

 オートカウンターの威力はおそらく制約によって、彼女自身が操作している時よりも格段に跳ね上っている。彼女は操作系ではなく放出系能力者。純粋なカウンターを放出させていると見て間違いない。

 強力な攻撃。

 予想していたため、今度はぎりぎり防御に成功するが、ふんばりが効かずに後退する。

 みしみしと身体が悲鳴をあげた。

 堪らず肩膝を着くと、6対0ポイントを告げる審判の声が歓声と共に木霊した。随分と一方的な試合展開になってきたものだ。

 ――考えろ。

「タコナグリ、ナグリ」

「ウッセーシュウチュウシロ!」

 止まらない猛攻。

 俺の攻撃ではラヴェンナの絶対防御を貫くことができない。

 かと言って持久戦はもう論外となりつつある。

 遠距離戦は放出系能力者の独壇場。

 彼女のオーラが尽きる前に、俺がぶっ倒れる方が早いだろう。

 どうあがいても勝てない。

 この戦いは彼女に軍配があがる。

「……」

 ――だから、まともに戦うのは止めだ。

 笑みをこぼした。

「あと、もう少し……」

 念人形たちから一気に距離を取って後退する。

 現状から考えれば、さらに放出系の有利になる局面で行った不可解な行動に、ラヴェンナは眼を細めて追撃を止めた。

 慰め程度のプライベートライアーを解除してオーラを可視化させる。

「あともう少しなんだよな」

「……何が?」

「チェックメイトまでだよ」

「確かに、あんたが負けるのも時間の問題よね」

「お前がな」

 円を広げる。

 現在稼動範囲は約40メートル、ちょうどラヴェンナを包み込む。この前まで能力開発のために円の修行をしていたことが役に立った。

 怪訝そうに眉を潜めたラヴェンナは口を開いた。

「何? オーラそのもので攻撃しようとしても無駄よ。念人形を出している間でも、纏くらいなら出来るわ。その程度の悪意では、人形すらも反応しない」

「俺の能力は、<戦場詐欺師(プライベートライアー)>。自分のオーラにステルスの性質を与える能力だ。俺の志向と考えがどんぴしゃだからオーラ燃費もいいし、使いこなすまでそう時間はかからなかった」

「…………正気?」

 ラヴェンナが凝をする。

 周囲に展開する俺の円には何も仕掛けはないように見える。

 直接戦闘に何も関係ない行いをするうえに、自身の念能力を喋る相手がいたらさすがに何かあると警戒するだろう。

 だからこそ続ける。

「お前のオーラ錬度がミモザと比べて低い理由がわかったよ。一定以下の攻撃なら自身の念能力で完全に防御できるもんな。凝や流をする必要がないのも頷ける。『ローア・アム・マイン』だっけ? 俺の能力が全く無意味になる能力者に出会ったのは初めてだ」

 そう言いながら右手をラヴェンナの方に伸ばした。

「でも、俺にもあったようにそっちにも弱点はあるよな。純粋な強化系能力者以外にも、例えば触れた相手のオーラを反射したり、消したりする能力には全くの無力だ……さて此処で問題だ。この手の先から、そういうもの(・・・・・・)が出たらどうする?」

「……」

 挨拶でもするように気楽に言ってみた。

 まるで話しにならないといった様子でラヴェンナの唇が開く。

「……あんたはそういった特殊な能力じゃないのはわかるわ。あたしの動揺を誘っているなら――」

「俺がそういう能力を開発していないとでも思っているのだろうか。いや、ラヴェンナ・メルヒルは俺と同じで直感で動くタイプじゃない。その証拠に、やっぱり凝をしてしまう」

 彼女は口を噤んだ。

 思案するように黄金色の瞳を閉じるが、すぐに決断した顔つきに変わり、右手を前に差し出した。

 7体の念人形が烈火のごとくこちらに突撃してくる。

 思いきりがいいな。

 俺ならまだ用心しているところだ。

 悪戯が成功した子供のように俺は小さく舌を出した。

「残念正解。時間稼ぎでした」

「やっぱりね」

 再び始まろうとする猛攻に、俺は苦笑するしかない。

 最もそんな遊戯をするつもりはもうないが。

「ああ時間稼ぎだとも、十分時間は稼げた」

 向かってくる念人形たちに対して、俺は右手を軽く振った。

「漫画らしく言うなら……能力発動条件は満たされた」

 念人形たちを溶かすように掻き消す。

 7体ともすべて消し飛ばした。

「条件を満たすまでに時間はかかったが、何とかなったな」

 消したぶん、周囲のオーラが増す様が驚愕となってラヴェンナの視界に入っただろう。

 範囲の伸びた円はリング全体を覆うが、相変わらず続けている。

「円範囲内の放出されたすべてのオーラを吸収する第2の念能力『フェリーニ』。使うのはお前が初めてだから紹介させて貰った――ご感想はどうだ?」

「……ありえない」

 呟きと共に掲げた右手の先からオーラを飛ばそうとしたラヴェンナは硬直する。構えたまま忌々しそうにこちらを睨み付けてきた。

 意外と冷静だ。

「飛ばせるわけはないよな。人形7体分のオーラは失うと相当な痛手。これはミモザほどではないが、念能力に顕在オーラを限界まで使用している反動だ。しかも撃破ではなく吸収。今纏っているオーラまで飛ばしたら、お前を守るオーラは完全になくなり、俺の円だけで致命傷になる。なぜなら俺が円をするのは正当防衛で(・・・・・)悪意はない(・・・・・)からだ」

 そういいながら手を下ろす。

 勝利の確信に自然と笑みがこぼれた。

 俺は上機嫌に続ける。

「……変化系能力者はあくまで自身のオーラの性質を変化させる能力者。そう思ってんだろ? だがプライベートライアーで概念的な性質変化も可能なことが証明された現状、〝オーラを吸収する〟性質を持つオーラも、少し難しい制約をつければ可能なんだよ。ミモザの能力が良いヒントになった」

「それで、この円……」

 ラヴェンナは舌打ちして離れようとするが、既にリング全体に伸びているのだ。今更その行動は意味をなさない。

 従者を失った白雪姫に向かって歩き出す。

「さてイーブンだ。殴り合いといこうか」

 俺の言葉に一瞬たじろぐが、まだ余裕があるようだ。

 しかしラヴェンナにならわかるはずだ。

「確かに念人形は使えなくなったみたいだけど、円をしたままオーラを纏ったあたしに勝てるとで……っ!!」

 やはり聡い思考で気づいた。

 狙い通りだ。

 俺は彼女に近づいていくことを止めない。

「さてここで問題だ。能力発動のために円をやっている分、防御に関しては俺が不利。このまま殴り合いをしたら負けるが、果たして俺が殴った瞬間の〝アクイ〟に対して、〝オカエシ〟はどういう末路になるのでしょう?」

「ぐ……」

 無意識に後退しようとしたラヴェンナは後ろがないことに気づいた。

 全力で飛べば十分別の角に退避できるが、焦燥でそこまで頭が回らないらしい。

「答えは〝自動で俺のオーラになる〟だ」

 前方に視線を戻したラヴェンナの前に立ちはだかると、小さな悲鳴が聞こえた。

 俺は頭から血を流しながら無表情に告げる。

「今からお前を一発ぶん殴る。何のオーラも篭っていない普通の攻撃だ。あっさりと人形1体に防がれて、代わりに僅かだがオーラを纏ったお前の拳は、俺の歯を何本か砕くだろう」

 淡々と聞かせるように語ると、ラヴェンナはごくりと喉を鳴らした。

「だが余剰オーラで来る〝オカエシ〟は全吸収だ。へろへろパンチでお前の意識は一瞬くらりといく。お前は焦りと共に全力で蹴りを入れてくる。当たれば多分俺は死ぬかもしれない。だけど今度は避ける自信がある。その場合は返すカウンターで再びお前のオーラを吸収する」

 視線は外さない。

 これは戦いだ。

 ラヴェンナには悪いが心を折る。

「後はその繰り返しだ。お前は俺が倒れるまで身体にダメージを与えればいい。俺はお前が倒れるまでオーラを吸収する……参ったとは言わせない。お前は徹底的に叩く。例えお前のオーラが尽きて意識が飛ぼうとも、一緒に病院送りくらいにはなってもらう」

 そういい残して構えた。

 そろそろ円がしんどくなってきた。俺自身も貧血で正常な精神状態とは言えないのでそう長くは展開できない。

 ラヴェンナを見ると小刻みに震えながら迎撃の構えを見せた。

 素人の構えだ。

 少し前の俺を見ているようで、軽く苛立つ。

「ちなみに聞くが、近接戦闘は得意か? 殴り合いをしたことは? そもそも敵を殴ったことはあるのか? 自動防御の放出系能力者どの」

「っ……」

 あるわけないか、と俺は皮肉げに呟いた。

 耐えられなくなったラヴェンナの拳が繰り出されるが、力を受け流すように捌き、にやりと笑った。空気が固まる。

「さあ踊ろうかお姫様。派手にぶっ倒れろっ!!」

 カウンターで彼女に拳を突き刺そうとかぶりを振る。白雪姫の叫びが漏れ出た。

「やっ……止めて……もう止めてっ!あたしの負――」

「ムシ、ムシ。トメルヒツヨウ、ナシ?」

「バカヤロウ。クウキヨメ! テカドコニイヤガル……」

「……え?」

「げ……」

 困惑するラヴェンナと嫌な顔をしているであろう俺の背後。

 2体の人形が浮遊している。

 遅れて5体の人形が空中に、鍍金が剥がれるように表れた。

「ボクココ……」

「ソンザイナキ。ミナスガタミエナキ」

「ワレラ、スルー」

「カクサレテイタ、デス」

「ヒメスキヒメスキヒメスキ」

 周囲から動かない俺たちに向かって野次が飛ぶが、今それどころではないのだ。

 嘘がばれ、勝利が遠のいた。

 

 

 




念能力の元ネタはぐぐれ。

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