赤龍帝の幼なじみ達   作:THIS

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 大変お待たせしました。

 二話程更新します。


 原作と時系列は違うことになるのは容赦してください。

 そして・・・巧と椿姫に関して驚愕の事実があきらかになります。


 狼の王子の再会アギトの予言

 SIDE 椿姫

 

・・・・・・。

 

 私達はすごい時代に生まれたのだと思う。

 

「HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!!」

 

 ある意味光栄と言うべきかもしれない。

 

「HA-HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!!」

 

 ありがたみは全くないけど、

 

「HAHAHAHHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA・・・さあイッセ―。いい加減すべて白状しなさい。あなたの幼馴染ってあと何人いるの?名前は?行方は?そして、どんな化け物なの?」

 

 RIASUさんもとい、リアスさんが壊れた笑いをしながらイッセ―君を問い詰めています。

 

「そんな事言われてもたくさんいるし・・・。」

 

『たくさん!?』

 

「それにあっちこっちから来て、あっちこっちへ行っちゃったから。」

 

『あっちこっち!?』

 

「ちょっ・・・そこ、驚くところなの!?」

 

 沢山とあちこち発言にリアスさんだけでなく、話を聞いていた全員が聞き返します。

 

 もちろん私も驚いています。

 

 この期に及んでまだいますか・・・。

 

 それもまだ沢山。

 

 本当にいい加減にしてほしい。

 

「いいから全部教えなさい!!」

 

「へっ・・・そんな無茶・・・。」

 

「い・い・か・ら!!」

 

「行方不明な連中が多いから!!宇宙だったり、平行世界だったりで・・・。」

 

『なんですと!?』

 

「あっ・・・しまった。これは誰にも言うなって・・・。」

 

「全部・・・全部話して!!お願いだから!!一体どんな連中なの!?想像もできないくらいヤバい連中がまだまだ一杯いる気がしてならないの!!もう私の眷属全員が規格外になって、残った戦車の駒が変異の駒に変わっちゃって、これからどうなるのか心配しているだけでもきついのに!!」

 

 リアスさん、すごく問い詰めています。

 

 現在いる眷属全員が化け物確定ですし。

 

 まあ・・・それに酷い追い打ちが・・・。

 

「ひょっとして・・・俺のせい?」

 

 加賀美 新さん。

 

 イッセ―君の幼馴染。

 

 その正体はあのオーディンの孫・・・。

 

 うん。驚かない方が可笑しいくらいとんでもない繋がりです。

 

「宇宙か・・・まあ、あいつがいる場所だよな。元気してっかな~。」

 

 新さんの証言で確定しました。

 

 まず宇宙に何かがいると。

 

「あなたの人脈って本当に一体どうなっているの!?私・・・宇宙にも気を張らないといけないの~~~~~~~~~~~~?!」

 

 リアスさんの悲鳴が木霊します。

 

「私も把握しないといけません。」

 

 あれ?ソーナも考え込んでいますね。

 

「他人事じゃないからです。現に、兵藤君の幼馴染繋がりの転生者を私は兵士にしていますし。」

 

 ああ・・・仁藤君の事ですね。

 

 転生者であり、私達の先生、ハルトさんの同志。彼を恐れない数少ない猛者。

 

「レイアもいつの間にかハルトさんから魔法を教えてもらっています・・・。」

 

 そう言えばシトリー家もイッセ―さんの幼馴染関連が・・・。

 

「極めつけは姉様とサイガ君の婚約。ポルムさんの眷属入り。」

 

 あっ・・・あれ?

 

「いつの間にか、こっちの周りもイッセ―君の幼馴染関連に浸食されていたようです。これは非常に恐ろしいことです。」

 

 そうですね。気がつかないうちにこっちの眷属も・・・。

 

「あと、どこにその芽が潜んでいるのやら・・・。」

 

「・・・そう言えば、判明している中に私の弟と同じ名前がありましたね。」

 

 私は新君と弦太郎君達との会話の中にあった鉱太と言う名前に懐かしさを覚えていた。

 

「たしか・・・葛葉 鉱太・・・でしたか?」

 

「はい。」

 

 私のただ一人の弟。性が違うのは両親が離婚したからだ。

 

 呪われた子とされた私のせいで・・・。

 

「・・・・・・まだ見つかりません。あの子・・・どこにいるのかしら?」

 

 あの子は二年前から行方不明になっている。そのままだったらイッセ―君の一つ歳下になるくらいの歳だ。

 

 あの子には私が悪魔になった事も伝えていない。

 

「・・・一つ聞きますが、そのあなたの弟さんはこの街にいましたか?」

 

「ええ。」

 

 私の弟は皆に自慢したくなる事がたくさんあります。

 

その一つが信じられない程の身体能力。

 

 私が幽閉されていた蔵に一つだけついている窓へ平気でよじ登ることなど、朝飯前なくらいに。

 

 呪われた子とされた私にも懐いてくれた可愛い弟。

 

よく、私の所へ忍びこんできて、一緒に遊んだ友達の事を話していました。

 

 エッチだけど熱血な一誠君。

 

 友達を作るのが上手な弦太郎君

 

 不器用だけど、やるときは過剰なまでにすごくできてしまう誠君。

 

 真面目で一本気な新君・・・。

 

 おバカだけど元気一杯なイリナちゃん。

 

 おませで、クールだけど、本当は誰よりも熱いイリアちゃん。

 

 他にも話していたわね。

 

 変なロボットみたいな人達。

 

 宇宙の警察官・・・。

 

 ホント愉快な友達ばかりだったわ。

 

 人間とは思えない人達も話していた。乗り物に変形するって・・・。

 

 あの子は生きているのかしら?私は今でも心配しています。

 

 たった一人の大切な弟だから。

 

 ずっと・・・ずっと探しています。

 

「・・・・・・・。」

 

 あれ?ソーナ?どうして崩れ落ちているの?

 

「・・・・・・手遅れでした。」

 

 何を言っているの?

 

「あなたの弟さんの話していた友達と目の前にいる面々を照らし合わせればわかりますよ。」

 

 えっと・・・へっ?

 

 ちょっとまって?あの子が言っていた友達ってもしかして・・・。

 

「しかも、新たな火種まで発覚しましたし。そうですか、文字通り人外の存在は確定ですか。それも複数・・・。ロボットみたいな連中って一体なんでしょうかねえ・・・。乗り物に変化して潜り込むって・・・。」

 

 あれって・・・本当にいるの!?

 

「でも、ある意味朗報ですね。あのイッセ―君の幼馴染であることが。」

 

 あっ・・・。

 

「私の推測が正しければ、あなたの弟さんは間違いなく無事ですよ。そして、アギトの予言が正しければ近いうちに会えるはずです。」

 

 鉱太が・・・生きている?

 

 そして、もうすぐ会えるの?

 

「嘘・・・。」

 

 ずっとずっと探していた私の弟。

 

 これほど嬉しい事ってあるの?

 

「ただ・・・心配なのは、もう一つの法則ですけど。」

 

 ソーナの表情が陰る。

 

「一体・・・どんな化け物になっているのやら。」

 

「・・・・・・。」

 

 そういえば、そうでしたね。

 

 それから逃れられないのですか。

 

 でもそれはそれでいいかも。

 

 ある意味、鉱太に私が悪魔になったと言っても、笑って済ませそうだし。

 

 そんな私達を見てアーシアさんが言ってくれます。

 

「もうすぐ会えますよ。弟さんに。」

 

 女神のような綺麗な微笑みで。

 

「ははは・・・そうですか。これで・・・確定ですか。」

 

 私にとって嬉しいことですけど、ソーナには止めになったみたいで。

 

 すごく遠い眼をしながら笑っています。

 

「リアスに伝えるべきでしょうか・・・。ついに私達の周りも浸食されましたと。そして、とんでもない火種が発覚したことも・・・。」

 

 鉱太・・・。早く会いたい。

 

 どんな姿でも、あなたが無事ならそれで・・・。

 

 でも・・・まさか交際している人なんて、いませんよね?

 

 まだ十代半ばなのに、そんなのお姉ちゃん・・・・・・・・・許しませんよ?

 

 ふふふふふふふふふふふふふ・・・まさかねえ。

 

 

Side ???

 

 ハックション!!

 

 んん?誰か噂しなかったか?

 

「どうしたの?鉱太。」

 

「あっ・・・ああ。なんか噂された気がしてな。」

 

 俺の心残りがそうさせたのかもな。

 

 イッセ―達。

 

 そしてお姉ちゃん・・・。

 

 少々ブラコンが過ぎるところはあるけど、優しくて綺麗な自慢の姉だ。

 

「・・・私もあなたのお姉ちゃんに会ってみたかったわ。あなたの愉快な友達にも。」

 

「そうだな・・・マイ。」

 

 俺達は知らない。

 

 俺達の心残りともうすぐ会えることに。そして・・・その際に大きすぎる問題と思考放棄してしまいたくなるほどの酷いカオスに襲われる事も。

 

 SIDE イッセ―

 

 まあ、とにかく新の奴との再会を果たしたわけで。

 

「歴代赤龍帝でずばぬけていないかい?力を引き寄せる才能。」

 

 ヴァ―リが呆れた様子で指摘してくる。

 

―――もう諦めの境地だ。アギトである時点でもう悟っている段階だ。

 

 俺の中の相棒の言葉がすべてらしい。

 

――――最早、今度は何?ってレベルだし。

 

 クレア・・・お前までか。

 

――――私達でさえ把握しきれないから。

 

 ブランカ・・・そう・・・だったな、

 

「・・・ウルトラマンって奴に会ったら驚くかな?」

 

『!!?』

 

 だからみんな過剰に反応しすぎだって!!

 

 ゼロ達が来たら大変なことになるのは間違いないけど。

 

 

 

 そして、そんなやりとりの中で・・・。

 

「私の事・・・覚えていますか?」

 

 イリナが剣崎さんと再会を果たしていた。

 

「君は・・・それにその剣・・・その銃!?」

 

「橘さんってから受けとりました。永く生きるあなたを一人にしないでほしいと。」

 

「橘さんが・・・。」

 

 イリナの悲願だった恩人との再会。それはまさかの剣崎さんだった。

 

「私も結果的にあなたの友達になれるわ。永い間。」

 

「えっ?」

 

 イリナの背中から現れたのは白い翼。

 

「天使!?」

 

「そういうことだ。」

 

 そして、弦太郎の背中にも白い翼。

 

 これは・・・。

 

「へえ・・・もう転生天使が生まれたか。」

 

 アザゼル先生は何やら事情を知っている様子ですけど?

 

「あんたが、イリナの命の恩人か。」

 

「あっ・・・ああ。」

 

 弦太郎が拳を突き出す。

 

 そして・・・。なんとなくだったのだろう、剣崎さんも拳を突き出したのだ。

 

 そこから行うのは友達の証。

 

「これであんたともダチだ!!」

 

「・・・・・・・。」

 

 茫然となる剣崎さん。

 

「ああ・・・よろしく。」

 

 だが、嬉しそうに笑う。

 

「人外になっても、友達ってできるものだな・・・。」

 

 その瞳に涙が光っている事に気付いたけど、そっとしておこう。

 

「あの・・・俺たちも友達ですよ?」

 

「・・・そうだった・・・いつの間にかこんなに大勢。僕と対等な友が沢山・・・。気付けば他の世界でも多くの仲間達がいたな・・・。もう会えないけど・・・。」

 

 俺たちも当然仲間だと思っている。・・・もう完全に身内です。

 

「はい・・・。」

 

 何があったのか分からない。剣崎さんは長い時の間、色々な世界を回っていた事くらいしか俺たちも知らないのだ。

 

 まあ、この後部長は剣崎さんがジョーカーになってから色々あって地球を飛び出してしまい、あちこちの世界、宇宙を渡り歩き、様々な戦闘経験を積んだ文字通り、百戦錬磨でなおかつ不死身な猛者だと知り、卒倒するのだが。

 

ゼ―ベス星人達の事も知っていると知り、皆最初から何故それを言わなかったと突っ込んだのは本人いわく・・・。

 

――――そんな過去よりも今が大切だし、言う必要はないと思った。

 

 だそうだ。

 

 意味不明の神技の秘訣は途方もない歳月を戦いと修行に明け暮れることになって身に付けたものらしい。

 

 フォースと言う物を知ったのは特に驚いたけど。

 

「・・・んん?一つだけ聞いて良いか?君って・・・アンデットの力を生身でつかっていないかい?」

 

「あれ?これって生身で使えないものでしたか?」

 

「!?」

 

 剣崎さんがイリナの発言に血相を変える。

 

 どうしたの?

 

 そのカードを生身で使えるもんじゃないの?効果もすげえし・・・。

 

 ちなみに俺達の誰も使えない。

 

「まっ・・・まさか俺と同じ過剰適合者・・・。」

 

―――――・・・・・・。

 

―――――・・・・・・。

 

 俺の中でクレアとブランカが沈黙を保っている。

 

「過剰適合者?」

 

「なんだ?それ・・・。」

 

「じゃあ・・・彼女があいつの言っていた五人目・・・。」

 

 五人目?そう言えばモノリスの奴も白いジョーカーって奴も五人目の事を言っていた。

 

 確かジョーカーって話しで、剣崎さんもその中の一人だと。

 

「ある意味、天使になれてよかったかも。そうだ、これは提案なんだけど・・・。」

 

 剣崎さんはとんでもない事を言いだす。

 

「フォースを覚えてみないかい?」

 

「フォース?」

 

「アンデットの力の制御にも役立つ。君はみたところテクニックタイプ、それもウィザードとしての素質もある。なら役に立つはずだ。」

 

 イリナ、魔改造の始まりですか。

 

「それと、後で君達を天使にした人達と合わせて欲しい。・・・・・・確認したい事があるから。」

 

 真剣な表情の剣崎さん。一体何があったのだろうか。

 

 

 

 

 

 そんなやりとりをしながら俺達はある城にやってきていた。

 

 そこで新人悪魔が集う会場に来ている。

 

 そこで・・・。

 

 ある女性が、ガラの悪い奴に絡まれていた。

 

「だから・・・俺が男って奴を教えて・・・。」

 

「・・・ふん。おとといきて欲しいですわ。」

 

 女性は振りきろうとしている。だが、男はしつこい。

 

 そこで俺達の連れの一人の行動が速かった。

 

「・・・そこまでにしておけ。」

 

『えっ?』

 

 それは巧である。

 

「・・・あん?誰だお前?」

 

「あっ・・・ああ・・・ああ・・・。」

 

 ガラの悪い奴が睨みつけるのとは対照的にクールな容姿をした女性の方は巧を見て言葉を失うほどに驚いている。

 

「そいつは俺の知り合いだ。それが絡まれるのを見ると・・・。」

 

「巧!!」

 

「ごぶっ!?」

 

 絡もうとしたそいつを女性が蹴り飛ばして巧に駆け寄り・・・。

 

 って、蹴り飛ばしますか。

 

 見たよりもすごく過激な人だ。

 

「よお。シーグ・・・久しぶ・・・。」

 

「久しぶりじゃないでしょう!!!」

 

 と、クールな雰囲気をぶち壊して巧に怒鳴ったのだ。

 

「えっ・・・と。」

 

「知り合いなのは知っていましたが・・・。」

 

 その怒号。・・・マジで怖いです。顔見知りだと思われる部長やソーナ会長も目を点にさせていますし。

 

「助かったのなら助かったと連絡くらい寄越しなさいよ!!あなたの身体の事を知って私がどれだけ心配したかと・・・。」

 

「そういえば、俺を助けるために・・・。」

 

「ええ!!あなたには多大な恩もあると言って、家の力も使わせてもらいました!!」

 

「そっ、そこまでしたのか?」

 

「文句ある?あなたが助かるのなら、利用できるものなら何でも使うって思っただけよ!!そのために次期当主にもなったくらいだし!!」

 

「いっ・・・いや・・・。」

 

「・・・・・・。」

 

 巧を助けるために動いてくれた人だったんだ。この人が・・・。

 

 じゃあこの人が・・・あの噂のシーグヴァイラさん?アガレス家の次期当主である?

 

「てめえら!!俺様を差し置いて何痴話喧嘩をしてやがる!!?」

 

 ガラの悪い男が絡もうとする。

 

痴話喧嘩には同意するけど・・・この人は誰?

 

「・・・こいつはグシャラボラス家の凶児、ゼファードル。絡まれているのがまあ、俺の弟も世話になっているシーグヴァイラだ。はあ・・・あいつらに絡むなんていい度胸だ。」

 

 へえ~。

 

 確かにガラ悪い。

 

「てめえら・・・いい加減に・・・。」

 

「少し黙れ・・・。」

 

「だから・・・。」

 

「だ・ま・れ。わかった?二度も言わせないで。さて・・・巧に言いたい事はまだ・・・。」

 

「・・・・・・。」

 

 それをシーグさんは強引に振り切った。

 

 茫然となるガラの悪い男ことゼファードル。

 

―――――チェリーエナジー!!

 

「こっ・・・この・・・俺を馬鹿にしやがって・・・えっ?」

 

 激昂してさくらんぼのような錠前を取り出す。そのまま腰に現れたベルトに装着し、魔力を解放しようとしたところで、その顔面を誰かが掴む。

 

「はいはい~とりあえずお前は黙っていようね。」

 

「ぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 でました。堕天使総督すら気を失うハルトの必殺総督殺し。

 

 単なるアイアンクロ―とは違うのだよ。

 

「巧。とりあえず紹介をしてくれよ?その麗しいレディは一体誰だい?」

 

「ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「・・・・・・。」

 

 ゼファードルの顔面を握りつぶさんと掴み上げながら、普通に話しかけてくるハルト。

 

「えっ?えっ?」

 

 シーグヴァイラさんの方も流石に驚いている。

 

 無理もないか・・・。

 

「・・・お前な・・・。」

 

 巧のほうは流石に慣れているらしく、呆れる余裕まである。

 

 本当に慣れている。

 

「本当に隅に置けないと言うか・・・巧、僕にも紹介して欲しかったぞ。」

 

「ぎゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 絶叫し続けるゼファド―ル。

 

「まあ、噂の彼女と言うのは間違いないね。」

 

「ぎゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「・・・・・・うるさい。」

 

 ゴキ。

 

 そんな鈍い音と共にゼファド―ルが黙る。手足も力が抜け、だらりと下がる。

 

「えええっ!?」

 

 シ―クヴァイラさんは茫然としているけど、俺達からすれば見慣れた光景だ。

 

 もう驚くまでもない。あの程度、生かさず、殺さず絶妙で最高の苦痛でやらかすハルト先生の技にかかれば・・・。

 

 まあ酷いとは思うけど、もう日常の一コマだ。

 

 ハルトのキャラになった。

 

 ハルトがそいつをごみみたいに放り捨て、女性の方に駆け寄る。

 

「まずは、グリゴリを代表してお礼を言わせてもらいたい。」

 

「グリゴリ?ってあなた・・・確かグリゴリの幹部の・・・。」

 

「まあ、俺の友達。グレゴリ最凶を誇っています。」

 

 今のところ。そして、これからも多分、俺の幼馴染最凶をキープし続ける可能性が高い。

 

「あっ・・・あの希望と絶望を司る指輪の魔法使い?」

 

 女性の方もハルトの素性を知っていた様子。

 

 しかし、希望なのは分かっているけど絶望って・・・。

 

・・・・・・・・・。

 

・・・・・・・・・。

 

 ・・・・・・うん、ごめん!!納得しかできない!!

 

 主に敵対した連中に絶望がもたらされると言う意味で。

 

「がっ・・・ぐっ・・・ぐぐぐぐぐ・・・・ううう・・・てめえ・・・。」

 

 あっ・・・あいつまた立ち上がってきたぞ。

 

 結構タフだな。

 

「下級悪魔やカラス羽根ごときがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

――――チェリーエナジー!!

 

 再びさくらんぼの錠前を使おうとするが・・・。

 

 おいおい、そこまでにしてやれよ。

 

 巧にそれ以上ちょっかいをかけて黙っていない人がいますから。

 

「おい・・・若造。うちの息子に何かようかい?」

 

 ああ・・・来ちゃったよ。

 

 ラスボス先生もとい・・・親馬鹿提督が・・・。

 

 グリゴリ大暴れと言っておこう!!

 

「・・・・・・・。」

 

 流石に不味いとは思ってくれたみたいだね。

 

 固まっていますよ。

 

 それを見て先生は告げる。

 

「先生達。俺の代わりにこの若造に無形文化遺産に個人的にだが登録したいと思うほど素晴らしい・・・あの鬼の伝統を教えてやってくれ。」

 

 それはもうラスボスらしい邪悪に満ちた笑みを浮かべながら。

 

「誰が先生だ・・・。」

 

「あんたが一応先生だろうが・・・。」

 

 それに応えてやってきたのはサイラオ―グさんと鋼兄?

 

「まあ、お前はやり過ぎたってことだ。あのまま気を失っていれば幸せだったのに。」

 

「あとで怪我だけは治してやる。怪我だけはな・・・。存分に堪能してくれ。」

 

「ちょっ!?」

 

 ゼファードルの表情が明らかに変わる。その全身からでるオーラがまず違うお二人ですし。

 

「安心しろ、記憶を失わない程度にしてあげるから。」

 

 ハルト・・・お前まで参加するのか。

 

それに敢えて記憶を失わない程度にするの間違いだろう!?

 

――――――AD VENT!!

 

 そこに唐突に何かが現れる。

 

「ちょっ!?」

 

 獣の様に飛びかかるシラトラさん。そのままゼファードルさんを押し倒して告げる。

 

「兄者・・・こっちは準備いいぞ。このまま引きずっていく。」

 

「はっ・・・放せ!!放せぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 シラトラさんが顔面を掴んであちこち引きずりまわしながら物陰へと消えていく。

 

「こっちは初めてだが、ファイナルベントの良い練習にはなるか。」

 

「必殺だけは勘弁してやれよ・・・。」

 

 ガチムチ筆頭のお二人がそのあとに続く。

 

「いい仕事しているねえ。」

 

 そのすぐ後に魔女顔負けの最凶のドS、ハルトが・・・。

 

「・・・そうか。鬼伝統のあれか。」

 

 巧も知っているな。鬼伝統が何か。

 

 俺もあれが伝統って知りたくもなかったよ。鬼達を怒らせてはいけないって心の底から思ったし。

 

 それをまた見る事になるのか。

 

「何?鬼伝統って?」

 

 シ―グさんは知らない。知らない方が幸せだったのになあ。

 

 鬼の真の恐ろしさを知ることになるから。

 

「まあ、ある意味祭りみたいなもんだ。簡単に言えば文字通り・・・。」

 

「ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 物影から辺りに轟く絶叫と何か赤い液体みたいなものが飛び散る音。

 

 それで何か分かったみたいだ。

 

「祭りは祭りでも、血祭りってこと!?」

 

「正解。よく分かったな。」

 

「これのどこが伝統なの!?」

 

 良いツッコミですな。

 

 鬼伝統・・・恐ろしや恐ろしや。

 

 

 

「・・・あっ・・・こほん。」

 

 女性もといアガレス家、次期当主シ―グヴァイラさん。化粧直しもして自己紹介もしてくれました。

 

 クールな雰囲気を取り戻しているように見えるが・・・。

 

「・・・お前。怒っているだろ?」

 

「怒ってない。」

 

「めちゃくちゃ拗ねているだろ!?」

 

「拗ねてないモン。」

 

 あっ・・・あれ?

 

 巧とのやり取りがすごく・・・。

 

 この方ってすごくクールで知的な女性って感じがしたのに・・・。

 

「・・・そう言う関係かい。」

 

 アザセル先生ですら呆れ果てている。

 

「はあ・・・巧。お前に女ってもんを教えておけばよかったぜ。」

 

「なんでそうなる?」

 

 巧・・・お前・・・。

 

 この場にいる巧以外の全員が思った事だろう。

 

『・・・・・・。』

 

 鈍い。

 

 あまりにも、鈍すぎるぞ。

 

 なんで、あそこまで分かりやす過ぎる好意に気付かないかな!?

 

「・・・まあ、挨拶が遅れたな。ありがとよ、うちの息子のために力を貸してくれて。」

 

 アザゼル先生が改めて挨拶。

 

「・・・本当にあのアザゼルの息子だったんだ。」

 

 しかも、義理でもなく本当に血の繋がった孫だとは誰も思わないだろうし。

 

 渡とネロも苦笑している辺り、同じこと考えたな。

 

 二人はクールに、なおかつ穏やかな雰囲気で・・・。

 

「お前さんが巧とどういう関係かはよく分かった。だが・・・簡単にウチの息子を攻略できるとは思わないことだな、小娘。」

 

「ええ・・・思いがけない強敵がいる事がわかりましたから。御老人」

 

「そうとも、その強敵は手強いい。特に御老人は・・・とってもな。」

 

「だからこそ燃えるというものよ。小娘はね。」

 

「はははは・・・。」

 

「ふふふふふ・・・。」

 

 あっ・・・あれ?

 

『ふははははははははははははははっ、あーはははははははははははははーっ!!』

 

 なんか二人の笑いがすげえ怖いです。

 

 まるで悪の組織のボス同士の邪悪な笑いのようだぜ。

 

 互い、腹にドス黒い何かを抱えているのは間違いないね!!

 

 冷や汗が・・・

 

 冷や汗が止まらねえ・・・。

 

「なっ・・・なんだ?二人とも・・・。」

 

「へえ・・・これは面白いことになりそうだ。」

 

 戸惑う巧をよそにハルトはすごく面白いおもちゃを見つけたような笑み。

 

「・・・フォローはしてやるか。」

 

 同じ眷属のネロは頭痛そうに・・・。

 

「シ―グちゃん。私は応援するから。」

 

 ユウナは完璧にシ―グヴァイラさんの味方だ。

 

「・・・ユウナ。貴方の応援・・・非常に心強いわ。今後のために魔女の修行これからもっと頑張るわよ!!」

 

 初耳ですよ?それ・・・。

 

「げええ、ちょっと!!それは反則だろ!?お前まで魔女関連かい!!今回の新人悪魔共は一体何がどうなっていやがる!?ちょっとおかしいぞ!?」

 

 アザゼル先生の反応が明らかに変わった。

 

 どんだけ魔女に苦手意識をもっているの?

 

「てっ・・・てめえら・・・。」

 

 血まみれのガラの悪い男――ゼファードルが復活してくる。

 

 こいつ不死身の特性も無いのに存外しぶとい。

 

 良く心が折れないな。

 

 その眉間に三丁の銃が突きつけられる。

 

「あら?魔女相手に君、良い度胸だね?」

 

「はっ・・・破壊の魔女ユウナ・・・だと?」

 

 一人はユウナ。

 

 異名がすげえですよ?

 

「あらあら、私の姉弟子の恋路を邪魔する殿方にはどんなおもてなしをしましょうか?」

 

「雷光の・・・巫女!?」

 

 一人は、朱乃さん!?

 

 いつの間に銃を手にしていたの!?

 

「おもてなし?そんなの決まっているじゃない。」

 

『ええ・・・。』

 

 三人は同時に発砲。

 

 躊躇い?

 

 そんなの微塵も感じなかったぜ。

 

「がばっ!?」

 

 額に凄まじい衝撃が叩きつけられたために、キリモミ回転しながらふっ飛ばされる。

 

そして、壁にめり込むほどに叩きつけられるゼファードル。

 

「あんたなんか最初から眼中にないの。だから消えなさい。」

 

 シ―クヴァイラさんがすごく冷めた目でいらっしゃる。

 

『でないと・・・お仕置きしちゃうよ?』

 

 三人の言葉と共に次々と召喚されてくる拷問器具。

 

『いい度胸だな。また祭りを楽しみたいのか?』

 

 後ろではガチムチのお二人と、ハルトさん、シラトラさんがスタンバイ。

 

 まさに前門に虎。後門に狼。

 

 この場合は前方に魔女。後方に鬼と言うべきか?

 

 あっ、一応だけど虎も混じっていますわ。

 

 後門になるし、すげえガチムチだけど。

 

「・・・・・・・・くっ・・・てめら・・・覚えていやがれぇぇぇぇぇ。」

 

 ここで懸命な判断をやっとしてくれた。

 

 そのまま逃げ去ってくれてよかった。

 

 もう必死で逃げて行ったよ。

 

 捨て台詞はありきたりだったけど。

 

「・・・魔女同士の団結は強いとは聞いていた。だが・・・これは厄介だな。」

 

「ふふふふ・・・どうですか?」

 

「上等。だったら攻略できるものならやってみるがいい!!」

 

「その勝負受けましたわ。」

 

 どうやら、巧をめぐって堕天使総督VSアガレス家次期当主のバトルが始まったみたいだ。

 

「二人とも・・・何言っていやがるか。」

 

 巧は呆れながらもシ―グヴァイラさんに近づき。

 

「でも、ごめんな。そしてありがとうよ。色々あったが、おかげさまでスパーダ眷属として生きている。」

 

 巧の謝罪に、邪悪な笑みを引っ込めたシーグさんは穏やかな笑みを浮かべる。

 

「うん、よかった。最悪、こっちの眷属にしても良かったんだけど、あなたほどの実力者・・・悔しいけど残っている駒では出来なかったから。」

 

 この人・・・それでも巧を助けたかった。

 

 そして、それができた事に心から喜んでいるんだ。

 

 自分の大好きな人を助ける事が出来たのが・・・。

 

「まあ、夢はまだ探している最中だが・・・。」

 

「やっと夢を探せるようになったか。よかったじゃないの。」

 

「ああ。まあ、個人的に再現してみたいことはあるが・・・。」

 

「何?私にも教えてよ?」

 

『・・・・・・。』

 

 本当に二人は親密な仲らしい。

 

 すごく自然なやり取り。シーグさんはすごく嬉しそうだけど。

 

 って、巧のやつ、何を考えている?何かを懐から出したぞ?

 

 まるでDVDケ―ス・・・。

 

「それなら、また行こうぜ?ほら・・・。」

 

「あっ・・・これって、新作?うわ~。」

 

 あれ?シ―グヴァイラさんの目の色が変わった?

 

 まるで少年みたいにきらきらと輝いて・・・。

 

「ずっと続きを楽しみにしていた奴だ。掘り出し物で苦労したけど、伝手があって、探しておいた。渡すのが遅れたのはごめんな。」

 

 何を渡したの?

 

「あと、予定はこっちが合わせる。都合付いたら連絡してくれ。これが俺の新しい連絡先だ。」

 

『!?』

 

 巧のやつ・・・すげえ。

 

 いろいろな意味で。

 

「まっ・・・まあそこまで言うなら、付き合ってあげてもいいわよ?」

 

 照れ隠し偉そうにそのメモを受け取るジ―グヴァイラさん。

 

「ドヤァァ。」

 

 その際、アザゼル先生に向けて会心のドヤ顔。

 

 もうこれ以上にないほど、勝ち誇っていたね!!

 

「なっ!?」

 

 よっぽど教えてもらった事が嬉しかったんだね。

 

 もうこれでもかって言うくらいの勝利の笑みだったもん。

 

「ぐっ、真っ先に阻止しないといけない巧の電話番号と、メールアドレスを・・・。」

 

 一方、アザゼル先生は心底悔しそうだ。

 

「親父は俺の新しい番号とか知っているだろうが?」

 

 アザゼル先生も流石に巧本人からだと阻止できないのね。

 

 とりあえず、この場はシ―グヴァイラさんの勝ちでいいみたいだ。

 

 さて、もうこの二人がどういう関係なのか良く分かった。

 

 アザゼル先生は邪魔する気満々。

 

 こっちとしては・・・。

 

・・・・・・・・。

 

・・・・・・・。

 

 うん。巧の幸せのために全力で応援してやる。

 

 この人となら巧も幸せになりそうだし。

 

「どうなることやら。」

 

 みたところ渡は傍観。

 

「同僚たちに教えないと。これでしばらくは話のネタに困らない。」

 

 ハルトは面白いネタと見てひっかきまわす気満々。

 

「どんなふうにプロデュースしようか・・・。とりあえずくっつける方向でいいのかな?」

 

「良い訳ないだろ!!」

 

 その話にポルム・・・お前まで乗ってくるか。

 

 しかもまずは方針から聞くか。その方針にアザゼル先生が怒鳴るし・・・。

 

「どうせなら面白くしようよ。色々と検索しておいた。」

 

「なら選択はあくまでも巧君にって方向で?」

 

「そうだね~。まずは巧の意識調査から・・・。」

 

 おい!そこの黒幕共!!

 

 お前らこいつらの関係に介入する気満々だろ!!

 

 いつの間にかフィリップの奴まで混じっていやがるし!!

 

 ハルト、ポルム、フィリップ!!お前達が暗躍するのは本当に怖いって!!

 

「安心したまえ、分からないようにする自信があるから。」

 

 そう言う問題じゃねえ!!

 

 そっちはそっちでお前ら怖いって!!

 

「やれやれだ。はあ・・・。苦言くらいはいわんとな。」

 

 鋼兄は・・・ため息ついているところ見ると、アドバイス位は送るつもりか。 

 

「どうしたらいいものか・・・。」

 

 ネロは大変面倒なことになると悟り、頭を抱えている

 

 結構ネロと巧は仲がいい。気が合うと言うのかもしれないが・・・。

 

「大丈夫かな・・・。また荒れそうな予感が・・・。」

 

 サイガはあくまでもドライに今後の展開を心配している。こういった事にはあまりかかわらない性質か?

 

「何言ってんだお前ら?」

 

 弦太郎は・・・うん。全く理解していないのか?

 

「そんなのなるようになるしかないと思うぜ?」

 

 あっ、あれ?

 

 弦太郎?

 

「そこまで騒ぎ立てなくても十分面白いと思う。それに、二人はお似合いだと俺は思うぜ?ずっと一緒にいて問題ないくらいに。そのままにしても時間はかかるが自然とくっつく。まあ、何かをしてうまくいけばその時間が縮む程度だけな気が・・・。巧本人がいつ気付くのが鍵だな、あれは・・・。」

 

『・・・・・・・。』

 

 その発言に皆は驚く。もちろん俺もだ。黒幕三人集はそのあと苦笑しているみたいだけど。

 

 まるで「確かに」と納得しているような・・・。

 

 アザゼル先生ですらも表情をひきつらせながらも黙っている。

 

 多分・・・図星なんだと思うよ。最初から勝ち目のない戦なんだと。

 

 どうも俺は弦太郎を見くびっていたようだ。

 

 こういう時、核心をついてくる。

 

 その見立てはおそらく・・・間違っていない。アギトの直感がそう告げている。

 

「そうそう、こういうのは見守るのが一番。やっぱり、君にはフォースの素質があるようだね。イリナちゃんと一緒に修行してみないか?」

 

 剣崎さんは・・・なんか年寄り臭い。

 

 しかもさりげなく修行をつけようとしているだと!?

 

「私は断然・・・応援するわ!!」

 

「えっ・・・?天使が?」

 

「むしろ天使だからこそよ!!」

 

 イリナは・・・うん。応援する気満々ですか。

 

「本当に愉快な連中だよな?イッセ―!!」

 

 新・・・。お前はそれを愉快で済ませるお前がすごい。

 

 これはただのカオスなのに・・・。

 

「・・・ユウナから話は聞いていたわ。でも、ここまでとはさすがに予想外。」

 

「奇遇ですね。私もです。」

 

 そう言えばお二人は妹や甥等の繋がりでシ―グヴァイラさんと面識があったのですね?

 

 こんな混沌とした状態を見てシーグヴァイラさんはため息をついて部長と会長に話しかける。

 

 心底同情した様子で。

 

「・・・あなた達。苦労しているのね。これだけのカオスな連中に囲まれて・・・。」

 

『分かってもらえる!?』

 

「分からない方が可笑しいわ。」

 

 新人悪魔女子三人・・・急速に仲良くなっていないか?

 

「・・・・・・えっと・・・僕の存在を皆忘れていないかい?」

 

 そこに優男みたい奴がいるが、忘れ去られていた。

 

「お嬢・・・予定の方はこうなっている。この日に誘えばいい。」

 

 そこにまるで鎧武者の様な姿をした男がいつの間にか予定帳を手にスタンバイ。

 

 腰には日本刀がくくりつけられている。

 

 眼帯もそうだけど、見た目が・・・。

 

「・・・・・・ザムシャー。あなた、見ていたのね?」

 

「余計なことはしないのが主義でな。あの程度ならお嬢だけで何とかなると判断しただけのこと。後・・・久しぶりだな巧。息災で何よりだ。」

 

「久しぶり。」

 

 えっと・・・このお方は誰です?

 

「紹介するわ。私の騎士、ザムシャーよ。」

 

「星斬りのザムシャ―・・・。冥界で有名な剣豪の一人。僕も手合わせをしてもらったよ。」

 

 佑斗の言うとおり・・・この人も凄まじい実力の持ち主と言う事がわかる。

 

 ただ・・・。

 

「力にリミッターがかかっているのか?いや、今の姿も本来の姿じゃない・・・。」

 

 その言葉に少し固まるシ―グヴァイラさんとザムシャーさん。

 

「驚いた・・・。」

 

「・・・流石は神の候補だけはあるか。そちらの言う通りだ。これでも騎士の変異の駒二つ消費した存在。この姿でもそれ相応の実力は出せるのだが・・・。」

 

 今の姿、ザムシャーの本来の姿ではないのは何となくわかるのだ。

 

 本来の姿は多分・・・途方もなくでかい。

 

「本来の姿は私の女王と同じで滅多な事が無い限り、出さないようにしているわ。あれもあれで・・・ゲームが成立しなくなるし。自重って大切よ。」

 

「お嬢に命を拾われた恩義で眷属となっている。生きていればあいつらに再挑戦できる日も来るだろうからな。お主たちとも手合せする日が来そうだ。楽しみにしている。」

 

「・・・これはレ―ディングゲーム、面白い程に荒れそうです。」

 

 頭が痛そうな会長。

 

「・・・案外私達・・・制限無しで頑張れるかも・・・。どんどん周りもすごくなっていけば案外・・・。」

 

 部長が変な希望を持ち始めている。

 

 そんな希望でいいのか!?

 

 そんな事になったらレ―ディングゲームそのものが可笑しくなるって!!

 

 

 

 そして、その後の事である

 

 新人悪魔達が目標を皆の前で発表する場での事。

 

 部長がレ―ディングゲームの制覇。

 

 ソーナ会長がレ―ディングゲームの学校を作りたいといった時だった。

 

 それをあいつらが笑ったのだ。

 

「・・・ぐっ・・・。」

 

 ソーナ会長が悔しがる。

 

 だが、そこであいつが黙っているわけが無かった。

 

 そいつの発言。それと共に新たな力が発動する。

 

『!?』

 

 あまりの出来事に場の空気が凍りつく。

 

 それはそうだろう。

 

 その原因は匙であった。

 

 その全身から噴き出す黒い炎。

 

―――――そうか・・・また一体復活していたか。

 

 それがドラゴンへと具現化していく。

 

 それを見て長老たちは流石に驚く。

 

「我が分身とその恩人を侮辱するのは許さん・・・。」

 

 それはヴリトラ。そう・・・滅ぼされ、封印されたはずの龍王だ。

 

「おいおい落ちつけって相棒。」

 

 その隣にたつのは仁藤。

 

「まあ、気持ちは分からなくもないがよお。俺だって少し・・・腹立っているし。」

 

 仁藤の後ろにも何かいる!?

 

 大蛇の身体にその背に当たる部分に、まるで毛のように無数の蛇が生えてる。そして、ヤマタノオロチのように首がたくさんあるぞ!?数えて十三本も首がある!?

 

 でもその首はみんな目を閉じているし。

 

――――なんだ?この力・・・龍王クラス?

 

――――でもなんというか・・・すごい毒々しい。なんなの?

 

 俺の中の相棒達が騒ぐほどの存在。

 

「紹介するぜ?俺の新たな契約者・・・バジリスクとヒドラのハーフ。呪毒の龍王――またはメデューサドラゴンと呼ばれた・・・。」

 

「アルティナと申します。以後お見知りおきを・・・。」

 

 でも声はすごく清純な少女の声!?しかもすごく礼儀正しい。

 

 十三の首が一斉にお辞儀する光景に色々な意味で驚くけど。

 

 その前に・・・メデューサドラゴンと言いませんでした!?

 

「まあ、俺の妹分だ。よろしく・・・。」

 

「妹分だあ!?」

 

「はい・・・。」

 

「なっ・・・なんて危険なドラゴンと契約を・・・。」

 

 人の姿をしたタンニーンのおっさんが絶句している?

 

「冥界のある一帯がドラゴンを初めあらゆる命のある生き物が生きていけない瘴気の土地になった。その原因となったドラゴンだ。存在そのものが災厄といえる。近々、邪竜認定しようとしていた危険な奴だったが・・・。」

 

 仁藤の手にはあいつが描かれたアドベントカード。

 

「そいつとカードで契約させてもらった。その毒の制御もできるように。あらゆる毒を制するドラゴンになったんだぜ?」

 

「おかげで私はあの土地からようやく動けました。感謝してもしきれません。」

 

――――――私の契約のカードをこのように使うか・・・。考えたわね。

 

 契約のカード・・・応用が利きすぎでしょう!!

 

 それにしても、邪竜認定されそうになったわりには邪悪な気は全く感じない。

 

 毒々しい力は感じるけど・・・。

 

「・・・せっかく美味しい料理を堪能していたと言うのに・・・。」

 

 背中の蛇に乗っているのは料理が載せられた皿!?しかもすげえ量だぞ!?

 

「・・・お前、堪能しているな。」

 

「はい!!やっと出られた外の世界。本当に素晴らしいです!!ごはんもおいしいです!!もっともっと楽しみます!!」

 

 なんつうか・・・性格はすごく無邪気。

 

 アーシアになんか似ている。

 

「すごく美味しいですよね~。」

 

「はい~。あっ・・・それ、私も食べていいですか?」

 

「どうぞ。でもイッセ―さんの食事はもっと美味しいですよ?」

 

「えっ?そうなんですか?是非食べてみたい・・・。」

 

「是非食べるべきだわ。あれはまさに神の料理・・・。」

 

 ・・・いつの間にかアーシアとイリナの二人と仲良くなっていやがるし。

 

緊迫したその場のはずなのに・・・皆の毒気が抜かれる位にほのぼのとしてしまった。

 

「・・・・・。」

 

 タンニーンのおっさん茫然。

 

 しかたねえわ。

 

 こいつ本当に邪竜?すごくいい奴なんだけど・・・。

 

「まあ・・・こいつ、力は危険だが、性格はもう・・・これ以上ないってくらい良い娘だぜ?邪竜認定は待ってやってくれ。」

 

「あっ・・・ああ。どうやら俺達の認識が間違っていたようだ。」

 

 仁藤の言葉にタンニーンのおっさんも納得したようだ。こいつは邪竜にはならない。

 

 いい奴すぎる。力の制御もできた今、驚異ではないだろう。

 

「でも・・・私の義兄様の恩人の夢を侮辱するのは私もさすがに見すごせません。」

 

『!?』

 

 閉じられた瞳が一つだけ開く。

 

 誰も無い方向に。

 

 すると・・・その場所が一瞬で石となり砕け散る。

 

「私の視線の毒・・・ぶつけますよ?」

 

『・・・・・・・。』

 

 本当に危険な力を持っていらっしゃる。

 

 場の空気が一瞬で冷えた。

 

 ほのぼのとしていた分、その反動がきつい。

 

「落ちつけお前ら!!」

 

「なんて娘なの!?」

 

「流石に放置できない。」

 

 ドライク、クレア、ブランカがとっさに実体化して二体のドラゴンを止めるくらいに。

 

「・・・HAHAHAHAHAHA・・・・・私の眷属も大概になってきましたね。」

 

 会長が遠い眼をするのもわかる。笑いが壊れているよ。

 

「ようこそ・・・私は歓迎するわ。一緒にゲームのリミッターをぶっ壊しましょう。」

 

 部長はそんな会長の肩を叩いているし。

 

 

 

 

 

 

 さて・・・これがきっかけで俺達はシトリー眷属とレ―ディングゲームで戦う事になった。

 

 ただ、お互いに危険な力を持ちまくっているので大幅な制限付きで。

 




 次話・・・いよいよゲーム開始です。

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