赤龍帝の幼なじみ達   作:THIS

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 お待たせしました。

 一話だけですがエピローグ更新です。

 いよいよ・・・あのイベント開始です。




エピローグ 神様の代理は・・・。

SIDE イッセ―

 

 さて、俺は少し眠り、また起きた。

 

 隣では渡も起きている。

 

 そして、そこでもう一人寝かされている人がいる事に驚いた。

 

「なんでミカエルさんまで?」

 

 すやすやと寝ているミカエルさん。包帯が巻かれ、相当な怪我を負った事が分かる。

 

 でも、見たところアーシアのおかげで傷その物は治っているみたいだ。

 

 ただ、相当体力を消耗していて、その回復に勤めているという感じだ。

 

「どうもキリエさんを庇ったみたいで。」

 

 キリエさんを庇った!?

 

「・・・えっと・・・。」

 

 保健室の扉が開かれるのを聞き、俺達はとっさに寝たふりをする。

 

 入ってきたのはそのキリエさんだったからだ。ネロとクレドさんも伴っている。

 

「・・・おや?来てくれたのですか?」

 

「当然です。私を庇ってくれた方の見舞いです。」

 

「まあ、キリエなら当然だ。」

 

「私の妹を助けてくれてありがとう。」

 

 ミカエルさんはクレドさんの方も見る。

 

「そうか・・・確か、彼女には息子もいましたね。」

 

 ミカエルさんはクレドさんの方も見てそう言った。

 

 そしてネロは当然のように気付く。

 

「・・・んん?なあ・・・。何でキリエとあんたから、同じ気配がする?クレドとも似ているぞ?」

 

 俺も気付いた事だ。ネロなら当然気付く。

 

「・・・本当に、あなた達アギトは鋭い。そして・・・いい機会ですね。では昔話をしましょうか。誰も知らない話なので内密にお願いしますよ?」

 

 それに苦笑しながらミカエルさんは話す。

 

「私は・・・実はある人間と恋に落ちた事があります。」

 

『・・・えっ?』

 

 ミカエルさんほどの天使が人間と恋!?

 

「その人はとても優しい女性でした。まるで聖母のような素晴らしい方でした。天使ですらも心奪われるような・・・とても暖かくて、優しい女性でした。恋に落ちるのは一瞬でした。でも・・・私は天使、彼女は人間。儚い恋となるのは確実でした。それでも私達はわずかな時間を惜しんで・・・誰にも秘密で愛を育みました。一年以上も会えない時もありましたが、それでも私は彼女の事を忘れた事はありません。」

 

 どれだけ情熱的で素敵な恋をしたのだろう。

 

 ミカエルさんの表情が人間臭くて・・・それでいて優しい。

 

「でも・・・その彼女はある事件で死んでしまいました。私が知らないところで、魂すらも確認できず、天界でも会えませんでした。」

 

 唐突な死に別れだったのだろう。ミカエル様の瞳から涙が零れ落ちる。

 

「私はその魂を奪った存在を探しています。また彼女に会いたいと願って。おっと・・・すみません。話が脱線してしまって。」

 

「いや・・・いいぜ。だが、後でそいつが誰か教えな。」

 

 ネロが構える。

 

「キリエの命を助けてくれた礼代わりだ。そいつをぶっ倒してやる。」

 

 その言葉に目を丸くするミカエルさん。

 

「・・・そう・・・ですか。なるほど、キリエさん、あなたが選んだ人だけあって、とても暖かい方ですね。少々捻ねていて、素直じゃない部分はありそうですが。」

 

 そして、納得した様子を見せる。

 

「後はクレドさん、あなたにも素晴らしい人がいれば安心できるのですが・・・。」

 

 あっ・・・あれ?なんか会話の流れが変だぞ!?

 

 まるで身内のように・・・。

 

「おっと・・・すみません。まだ肝心なことを。私が生涯唯一愛した女性の名前はクリスティといいます。」

 

『・・・・・・・・えっ?』

 

 あれ?その名前にクレドさんとキリエさんが呆けたような声をあげたぞ?

 

「おっ・・・おい。それってお前達の母親の名前じゃなかったか!?」

 

 ネロはその名前が何を意味するのか分かっていたようだ。

 

「はい・・・。まさか、クリスティは私に隠し事をしていたなんて、少々ショックです。」

 

 ・・・・なんかとんでもない事がわかってきたぞ。

 

 渡も同じ考えに至ったのか、お互いに視線で確認し合う。

 

「今こそ名乗りましょう。クレドさん・・・キリエさん。私は・・・。」

 

 そして、ミカエル様は名乗る。

 

「私はあなた達の父親です。」

 

『・・・・・・・・・・。』

 

 その答えに三人とも呆けている。

 

 受け入れるのに相当な時間がかかっている様子だ。

 

 いや・・・その前に、とんでもない事を聞いたぞ!?

 

 キリエさんとクレドさんの父親がミカエルさん!?

 

「えっと・・・。」

 

「そっ・・・その・・・。」

 

「DNA鑑定でも間違いないようです。私も今日・・・初めて知った事です。」

 

「おいおい・・・まじかよ。その前に天使でもDNA鑑定で血縁分かんのかい!!」

 

 ネロは天を仰いながらツッコミを入れる。

 

「キリエは確かに天使みたいだと思っていた。だが・・・マジで天使だったなんて想像外もいいところだぞ!?」

 

「それだけじゃありません。あなた達の母親クリスティですが・・・かの聖人、キリストの子孫である事もわかっちゃいました。」

 

『・・・・・・・。』

 

 おい・・・頼むから俺達をこれ以上驚かせないで。

 

 あの二人が俺だって知っている位に有名なキリストの子孫だと!?

 

―――これは・・・驚きだな。だが、同時に納得もしている。そんなとんでもない存在がこの世にいたとは。あのロンギヌスにも関わる偉大なる聖人の子孫だったか。

 

「・・・はあ・・・そうかい。そういうことかい。だが・・・知らなかった事とは言え、よく名乗る気になったな。殴られる事も覚悟したのか?」

 

「・・・それに関しては・・・あなた達に何もできませんでしたから。あなた達を助けたのはネロさん・・・あなたです。本当に・・・ありがとうございます。」

 

「おっ・・・おいおい。それこそ今更だ。俺だってキリエを愛しているからこそ助けたわけで・・・。」

 

 ネロはすごく戸惑っている。まあ・・・恋人の父親が熾天使だなんて動揺しない方が可笑しい。

 

 動揺しすぎてとんでもない事を言っている事にネロは気付いていない!!

 

 キリエさんが顔を真っ赤にさせていますし。クレドさんとミカエルさんは何度も瞬きしているくらいに驚いている。

 

「自爆するなんて珍しいな。」

 

「ええ・・・。でもかなり情熱的な一面があるようで。」

 

「しっ・・・しまった!?////」

 

 顔を真っ赤にするネロ。気付くのが遅すぎる!!

 

「話は戻りますが、・・・その・・・あなた達を私の息子と娘として認知していいでしょうか?今まで知らなかったこと、突然のことですし、私も初めてのことで何をすればいいのか分からない事だらけで・・・。」

 

 うん・・・ミカエルさんも盛大に動揺している。

 

「・・・顔をあげてください。それと、私達は良かったと思います。」

 

 そこに歩み寄ってきたのはキリエさんだった。

 

「私や兄さんが愛されて生まれた事がわかりましたから。」

 

 心の底から良かったと思っている。

 

「驚きはしましたけど、また実感が無いのはお互い様です。でも、お互いにじっくりと時間はありますよ。」

 

 ・・・そうだな。キリエさんは天使、クレドさんは悪魔としてだけど、時間はまだじっくりとある。

 

「そう・・・だな。私からもそう言う形でお願いしたい。私は咎人でもあるが、それでよければ・・・。」

 

「いいえ・・・あなた達は私の自慢の子ですよ。」

 

「あ~・・・こりゃまいったな。」

 

 ネロは居心地悪そうだ。

 

「まあ・・・あんたとは色々な意味で長い付き合いになりそうだ。よろしく頼む。」

 

「ええ。あなたに義父さんと呼ばれる日を・・・覚悟しておきます。」

 

「うっ・・・・。」

 

 ミカエルさん・・・結構意地悪い。

 

 でも見ていて面白い。

 

「・・・スパーダ眷属。我ながらすげえぜ。」

 

 そこに堂々とダンテ様が入ってきた!?

 

「いや~天道の奴が例の事で連絡したいと言ってきたから、ミカエルを呼ぼうとしたんだが・・・はあ、グレゴリといい天界といい、中々愉快なメンバーを俺は眷属にしたみたいだな。こりゃ退屈はしねえな。」

 

「・・・そういうあんたが一番愉快だ。」

 

「ははははははっ!!」

 

 ネロのツッコミをダンテ様が笑っていう。すごい陽気にやってくる。

 

「・・・息子の事をよろしくお願いしますね。」

 

「ああ。安心しな。身内には優しいことで定評があるんでな。まあ・・・こっちが色々とお世話になりっぱなしなんだが。」

 

「・・・クレドさん。よければまた天界に休み来てください。癒されますよ。」

 

「・・・・ありがとうございます。」

 

「少し待遇はよくなるさ・・・新しく入ったメンツが何とかカバーしてくれるから。」

 

「おいおいおいおい!!頼むから勘弁してくれ。って、はあ・・・巧もいるからなとかなるか。出来る事があればいえ。可能な限りなんとかしてやる。」

 

「・・・はあ。私も手伝います。話し合えばきっと分かってくれますから。」

 

「おお・・・ネロ、キリエ・・・。」

 

「OHANASI。してあげますから。兄さんがお世話になっているので色々と。」

 

『・・・・・・。』

 

 なんだろう。同じ話なのに何か含まれている威圧が違う。

 

 にこにことほほ笑んでいるのに怖い・・・。

 

「ああ・・・キリエが・・・キリエまでもが・・・。おお・・・神よ!!」

 

 クレドさんの苦労は絶えない。

 

 神に祈ることでの頭痛で涙を流しながらも祈らずにはやっていられないらしい。

 

「・・・こっ・・・これが二天龍を単独で制圧してしまった娘の実力だというのか?」

 

「・・・俺だって怒らせたくないぜ。何でこんなすごい事になったのやら。」

 

 ミカエルさんの驚きに対してネロは溜息を突いて同意している。

 

 いや・・・もう熾天使最強と名乗ってもいいんじゃないですかね!?

 

「そうそう・・・。禁手化をあいつは無意識のうちにいくつも生み出していやがる。何種類の盾を生み出せば気が済むのか分からねえ。」

 

 そこに唐突に会話に割り込んでくるのはアザゼルさん。

 

「遅いから迎えに来たぜ。それと・・・まあ、何とかなりそうだな。」

 

「まったく、あなたは最初からすべてを知っていましたね。」

 

「おう。だが、お前は自分でケリをつけた。それでいいじゃねえか。」

 

 どうもアザゼルさんはミカエルさんの事情を知っていた様子。

 

「・・・はあ。ええ。そっちも本当の事を言ったらどうなのですか巧さんに。」

 

「・・・おいおい。そっちはそっちで俺の事情を知っているのかい。」

 

「そりゃそうですよ。あなたと巧さんは義理でもなんでもなく血の繋がった正真正銘の家族。あなたの孫だってことを。」

 

『!!!?』

 

 まっ・・・孫!?

 

「おいおい。俺は親父で十分だ。じいさん呼ばわりしたら歳が気になるじゃねえか。それと、ネロ達だけじゃなく、そこの二人が起きているのを知った上で言いやがったな。」

 

 あら?起きている事はばれていましたか。

 

「えっと・・・。」

 

「今の話、内密にしておいた方がいいですか?」

 

 渡の言葉にアザゼルさんは「ありがとうな」と言って

 

「・・・まあ、今は黙ってくれ。俺もいつか話さないといけないと覚悟はしている。」

 

「・・・あなたの奥さんと娘の話になりますからね。」

 

 ミカエルさんもまたアザゼルさんの事情を色々と知っているようだ。

 

「ああ・・・。覚悟はしている。わりぃ・・・俺がケリつけないといけない案件だ。あいつ、アリスと娘レディア、その夫の死についてもな。ほら・・・行くぞお前ら。」

 

 アザゼルさんはそう言って他の二人をせかす。

 

 ミカエルさんはまだ本調子ではないのかふらつきながら立ち上がり、キリエさんとクレドさんに支えられながらいく。

 

「・・・お前はよくやったと俺は思うがな。」

 

 その後を、静かな笑みを浮かべたダンテ様も続く。どうも、ダンテ様も事情を知っている様子だ。

 

「お前はあの時、精一杯の事をした。俺も認める。ミカエルもそう思っているぞ。」

 

「ええ。」

 

「よせやい。礼は言っておくが、俺はそうは思えねえ。」

 

 アザゼルさんは肩をすくめてあえて軽い口調でいう。

 

「俺は・・・知らなかったとはいえ、あいつも、娘も救えなかったんだぜ?」

 

 そして、アザゼルさんは最後に部屋を後にする。

 

「・・・・・・・・・。」

 

 その背中がとても悲しそうに見えたのは俺だけじゃないはずだ。その悲しみの深さはおそらく、まだ若造の俺達には想像もできないものなんだろうとも。

 

 堕天使総督・・・その背中に一体どれだけの物を背負っているのか?

 

 

SIDE ???

 

 私達二人は学校内を歩き回っていた。

 

「この世界は私達ですら普通扱いって言うのが怖いな。」

 

「ああ。」

 

 私達は突然記憶を取り戻した。

 

 本来なら死に別れて二度と会えないはずの彼女とこうして相棒として歩いているのもそのためだ。

 

「私達って・・・天使みたいな存在になってんだろ?」

 

「うん。まあ神の使いという意味ではそうだよ。でも私があいつの使徒になるなんて変な気分だぜ。あいつに会ったら色々といいたい事もあるし。」

 

 彼女は元々教会出身。ある意味では神の徒と言える。それが今・・・使徒となっている。

 

 使徒としての特典は・・・魔法の無制限使用。そして・・・不老不死。

 

 私達は神となった彼女と同じく世界の法則の一部となっていた。

 

 私達は力を奪われ、何故かこの世界にやってきてしまった彼女を探してこの世界に来た。

 

 私達が元いた世界よりも更に混沌とした世界に。

 

 そこで幸運にもミカエル様に拾ってもらい、事情を話した上で彼らの仕事を手伝いながら必死に探していたのだ。

 

「私、大魔王なんて初めて見た。」

 

「うん。こっちも。」

 

 でも私達、この世界でまともにやっていけるのだろうか?

 

 そんな不安がある。

 

 

 

 それは先ほどの戦い。私達は魔術師達の転送を断つために動いていた。

 

 でも、それこそが罠だった。

 

 私達は無数の魔術師達に取り囲まれていたのだ。

 

「へえ・・・あの世界の魔法少女が来るなんて面白いのねん。」

 

 それを率いるのは・・・黒いゴスロリの衣装を着た魔女。

 

 紫炎のヴァルブルガ。

 

 しかもあいつはどういう経緯なのか分からないが・・・こちらの世界の魔女の力を持ってしまっている。

 

「いい加減、どういう手品かおしえてくれないか?どうして、お前は魔女になっている?」

 

「それでいて、人間の姿を保つことができるのかもな!」

 

 私達は彼女と因縁がある。彼女が・・・この世界で魔女や魔獣を次々と生み出している元凶だからだ。

 

 それを私達は討っている。

 

「それはできないのん。それにいい加減あなた達が邪魔だから・・・。」

 

 魔術師達が変化していく。

 

 魔獣と呼ばれる連中にだ。そこにホラーと呼ばれる奴らまで・・・。

 

「いい加減、焼き尽くしてくれるのん。」

 

 私達に巨大な十字架の紫の炎が迫る。

 

 炎だけじゃない・・・無数の魔力が私達に一斉に飛んでくる。

 

 不死身の私達を消滅という形で倒すために。

 

 でも・・・。

 

「無粋だな。」

 

 轟音と共にそれがすべて跳ね返された。

 

「ん!?」

 

 現れたのは銀色の髪と二本の角を持った仮面の男。

 

「・・・だれなのん?私の炎を素手で弾き飛ばすなんてただものじゃない。」

 

 私達の前に突然現れたその男は左手だけですべての攻撃をはたき返したのだ。

 

 摩擦熱で手が不死鳥のごとく燃え上がる程の速度で。

 

「余はただの通りすがりの大魔王だ。」

 

 手に残る炎を軽く振り払いながら、通りすがりの大魔王はいう。

 

「大魔王?」

 

「そうだ・・・。」

 

「通りすがりって・・・そんなふざけた名乗りがあるのかしらん?」

 

 そして、彼が軽く腕を振るうと共に無数の火の粉があちこちに巻かれる。

 

 それが魔術師達や地面などに接触した瞬間・・・。

 

 巨大な火柱が次々と上がったのだ。

 

 燃え上がった魔術師達は灰すら残さずに焼きつくされる。

 

「こっ・・・これは火炎呪文(メラゾーマ)!?異世界からの呪文!?」

 

「ふっ・・・ふははははははははははは。」

 

 メラゾーマ。異世界より伝わる呪文だと聞いている。魔戒法師を中心に広がっている。

 

 だが、その名を聞いた彼は可笑しそうに笑う。

 

「お主、何を勘違いしておる。」

 

 そして彼は告げる。

 

「今のはメラゾーマではない・・・メラだ。」

 

『!?』

 

 メラ。それはメラ系の最下級の呪文。小さな火の球を放つ呪文。

 

 それも火の玉ではなく、火の粉として放つだけであの威力。

 

「・・・どっ、どんな魔力をしているのん?あんなカスみたいな呪文でこの威力・・・。」

 

「だから最初から名乗っているだろう。」

 

 その男はもう一度言う。

 

「余は通りすがりの・・・大魔王だと。」

 

『っ!?』

 

 それだけで私達は理解した。

 

 今私達の目の前にいる男は・・・まさに大魔王だと。

 

「ついでに氷結呪文(ヒャド)も見せてやる。前世は全く使わなかったが、ある理由でこっちも相当な者にさせてもらっている。」

 

「ヒャド?」

 

 その言葉と共に無数の粉雪が落ちてくる。

 

 それが地面や相手に触れると共に・・・一瞬で凍結。

 

 それが倒れると共に粉々に砕け散る。

 

「・・・なるほどねん。これは・・・。」

 

 私達は理解する。

 

 次元が全く違うと。

 

 たった二つの最下級の呪文だけで私達を囲っていた連中の大半が殲滅されていた。

 

「そして、これが余のメラゾーマ・・・いや、異世界で習得した・・・。」

 

 彼の右手が炎を発する。

 

「最上級火炎呪文(メラガイアー)だ」

 

 その炎は不死鳥へと姿を変えたのだ。

 

 しかもその不死鳥は凄まじくでかい。それこそ翼長だけで二十メートルは超える様な超巨大な・・・。

 

「・・・・・・・・。」

 

 それを見たヴァルブルガは目を点にしていた。

 

 いえ・・・私達だって目を点にしていた。

 

「前世から余の最上級の火炎呪文はこう呼ばれている。」

 

 そして、不死鳥は放たれる。

 

「カイザーフェニックスと。」

 

「・・・じょ・・・冗談じゃないわよ!!」

 

 それを十字の紫の炎で受け止めるヴァルブルガ。

 

 でも、それを炎の不死鳥は噛みつき、次々と食い破っていく。

 

「嘘!?私の炎を!?」

 

 あの単体の呪文で神滅具を圧倒しているというのか?

 

「前世のそれから改良済みだ。召喚獣って言う物の要素も組み込んであるからのう。そして・・・もう一つおまけだ。」

 

 あいつの左手に膨大な冷気が宿る。

 

「へっ?嘘!?もう次の呪文!?」

 

「今度は最上級氷結呪文(マヒャドデス)だ。」

 

 手に現れたのは巨大な氷の龍。姿は東洋の胴体の長い龍だった。

 

「竜の騎士にやられてから、ドラゴンという物にも執着してしまってね。気付いたらヒャドがこんな呪文になった。名はまだないがな・・・。」

 

 放たれる超巨大な氷の龍。

 

「ああああああああぁぁぁっぁ!?」

 

 流石のあいつの悲鳴をあげる。

 

 炎の不死鳥と氷の龍を同時に受け、大爆発を起こす。

 

 でも・・・。

 

「・・・逃げたか。致命的なダメージは与えたが、主らと同じ不死身の体ならそれすらも意味はないのだろうな。」

 

 彼女が落とした腕を見て、それを背中から出した翼の光に当てる大魔王。

 

「だが・・・これで神滅具を一つ読み取らせてもらった。お前達も戻るがいい、すでに転送術式は破壊してある。」

 

 その言葉と共に彼はいつの間にか姿を消していた。

 

 最初からいなかったかのように。

 

 でも・・・彼が撒き散らした破壊の跡が夢でないと教えてくれた。

 

 

 

 

 

「・・・この世界って、規格外ばかりだよ。」

 

 あの通りすがりの大魔王の姿を思い出し、私達は深い溜息をつく。

 

「とりあえずミカエルのおっさんを探して、天界に戻ろうぜ。流石に疲れ・・・。」

 

 そこで私達の言葉は止まる。

 

「ねえ・・・何でこの学校に魔女の結界が?」

 

 突如魔女の結界が現れたからだ。

 

「そんなの知らねえよ。だが・・・。」

 

「中に誰か閉じ込められているかもしれない。入口を見つけるか、強引に切り裂いて突入するよ!!」

 

 私達は武器を構え走りだした。

 

 

 

 

 

SIDE アザゼル

 

 ったく、ミカエルの奴。俺の背中を押すためにあいつらに聞こえるように言いやがったな。

 

「・・・ふふふ。私も前に進めました。あの子達といると一歩前に足を出せる。それは貴方も知っているはずですよ?」

 

・・・確かにな。あいつらには異常なまでの力だけじゃなく、いや、それすら超える物まで引き寄せられている。

 

 それが人の和。そして、そこから生まれる無限の勇気と希望だ。

 

 そのおかげで巧を娘の後を追わせる事を防げた。

 

 この街には何かがある。それだけの大きな力が・・・。

 

「その何かが・・・今わかるってか?」

 

 そして、俺達は集まっている。そう・・・天道が集めたメンバーだ。

 

「まさかいきなり会わせてくれるとは思わなかったぜ。」

 

 それは神の代理を務める者との会合だ。

 

 天道はすぐに行ってきた。

 

 あの事件のすぐ後である今、会わせると。

 

「流石に驚いたよ。でも・・・そこが狙いか。」

 

「ああ。彼らに会う事はこの街の根幹を知る事にも繋がるからな。」

 

 この街の根幹?

 

 それだけの人物と合う事になるのか。

 

「・・・もったいつけてくれるね。それだけの大物ってわけかい?」

 

「へっ・・・早く会わせろ。その神様の代理って奴に。」

 

 サーゼクスの奴とダンテもせかす。

 

「あらあら・・・。私も会えるなんて光栄ですわ。」

 

 アマテラス様は悠然と構えている。なんか楽しみでもあるみたいだ。

 

「・・・いよいよですね。」

 

「私・・・そんな人に会っていいのかしら?」

 

「それに関しては私もだぞ!?」

 

 そう言えば本来予定に入っていないクレドも来ているが・・・。

 

「問題ないだろう。それにフォローを任せる事もできる。」

 

「・・・・・・あんた、悪魔か?」

 

「ハハハハ!!魔王に悪魔って、釈迦に説法も同じだぜ?それもお前も今は悪魔だろうが。」

 

 恨めしそうに皮肉を言うクレドだが・・・皮肉に関してはダンテの奴の方が一枚上だ。

 

 クレド。お前って本当に苦労してんな。まさかの事態に、頭を抱えている。

 

「さて・・・そろそろ来てもらお・・・・。」

 

「そんなに固くなられても困るけどな・・・。」

 

 天道が言い終わる前にそれは現れた。

 

 あれ?俺は今・・・夢を見ているのかね?

 

 それとも幻覚でも見ているのか?

 

 みんなも同じ様子で瞬きを何度もしている。

 

「・・・いたずらが過ぎるぞ。」

 

「テヘヘ・・・。」

 

 可笑しい。桃色の髪をツインテールにした外見は中学生位の女の子がここにいるのだろうか?

 

 しかも、つい最近顔見知りになったばかりの。

 

「あれ?・・・なんでまどかさんが?」

 

 キリエ!!そこではっきりと現実を突きつけるな!!

 

「あらま・・・ママ友がまさかの再登場だなんて・・・。」

 

 ああもう・・どうしてこの場にイッセ―の母親の幼女(?)まどかさんがいる!?

 

「・・・彼女が神の代理だ。」

 

『・・・・・・・・・・・・。』

 

 えっと・・・

 

 えっと・・・。

 

 えっと・・・。

 

 すみません!!総司さん!?今なんて言いましたか!?

 

 今、まどかさんが神の代理って聞こえたような気がしましたが!?

 

 まっ・・・まさかそんなことはないですよね!?

 

「・・・予想通りか、それを上回るリアクションだな。」

 

「ははは・・・まあ、仕方ないよね。」

 

 総司の奴は呆れながらもう一度言う。

 

「兵藤まどか。彼女が紹介しようとしていた神の代理人だ。俺はこういう時は冗談を言わな・・・。」

 

『えええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?』

 

 あまりに衝撃的過ぎる話に俺達は揃って叫んだ。

 

 ああいや、本当に久しぶりに叫んだぜ!!

 

「・・・・・・頼むからお前ら最期まで話をさせてくれ。」

 

 それどころじゃないっての!!

 

「あの赤龍帝の母親が・・・?」

 

 しかも、殆どのメンツが兵藤家で宴会をしていたので、まどかさんの事を知っている、ミカエルの奴も調べてはいたみたいだしな。

 

「・・・あまり叫ぶと外に聞こえちゃうよ。いくら結界を使っても心配だよ。」

 

 そこで俺達は初めて気付いてしまった。

 

 いつの間にか俺達は異世界にいる事に。

 

『!?』

 

 それは大変メルヘンチックな世界。

 

 世界その物が・・・まるでヌイグルミやケーキの山などで出来た非現実的な世界に変わったのだ。

 

 俺達の傍にぬいぐるみで出来たイスが現れる。

 

「魔女の力を少々利用させてもらってね。ちょっとした世界だよ。」

 

「大した御持て成しだな。」

 

 はあ・・・こうなりゃ、開き直るしかねえ。

 

 赤龍帝の母親もまた普通ではない!!

 

 それで納得して話を進めようか!!

 

「そりゃ・・・息子がお世話になっている方達ですから。ねえ、翔一君?」

 

「ははは・・・。」

 

 その隣にはイッセ―の父親だと!?

 

 おいおい頼むぜ。ようやく俺達は開き直ったというのに、そこに更なる爆弾を投下してくるかい!!

 

「みんなやっぱり驚きますよね?」

 

 アーシアも一緒に現れてとんでもない事を言いやがる。

 

 彼女は全部知っているのは間違いないみたいだ。アギトとしての力がそこまでのレベルにあるということか!!

 

「まどかさんが神様だなんて誰が思うか。」

 

「・・・ほう。大体読めてきたぞ。」

 

 そこまで言って、俺達もようやく飲み込めてきた。

 

「総司。お前ってどんな人脈をしているんだ!?どうして異世界の神様と知り合っている。」

 

「ふふふ・・・言ったじゃないか。2人の馴れ初めに関わりがあるって。」

 

 目の前にいるまどかさんは間違いない。

 

 異世界の神と言っていい存在。

 

「そして、僕も正体を見せようか。」

 

 翔一も変身をする。

 

 銀色の鎧に紅い頭を持った・・・・。

 

「あっ・・・アギトだと!?」

 

 しかもその力は・・・隣にいるまどかに匹敵する。

 

「アザゼル。会談の時に俺に聞いたな。イッセ―が神の後継たる器だと知っていて俺が鍛えたと。」

 

 ああ・・・だが、なるほど。

 

「この二人がその答えだ。異世界で神となりしアギトと、異世界の法則その物となった神にして最強の魔法少女。イッセ―はその二人の息子だ。」

 

 俺達はようやくこの街が人外魔境となったのと、イッセ―の馬鹿みたいな力の根源を知ることができた。

 

 この親達がこの街に来てから・・・すべてが始まったという事か!?

 

「そして、イッセ―は異世界のアギトの因子に加え、この世界の神の遺志と出会い、この世界のアギトの因子も与えられている。」

 

 なん・・・だと!?

 

 異世界のアギトの因子に、この世界のアギトの因子を同時に持っているだあ!?

 

「つまり・・・なんだ。あいつは二重にアギトの因子を持っているということか?それがあのバカみたいな進化に繋がっていると!?」

 

『!?』

 

「・・・流石だアザゼル。察しが良い。それにまどか魔法少女としての力も男なのに、神としての器と共に実は受け継いでいる。」

 

 そっ・・・そりゃとんでもないってレベルを超越しているぞ!!

 

 そこに赤龍帝、そして無双龍。

 

 あいつの力の根源に触れてぞっとするぞ。

 

 なんだ・・・あいつって神すら恐れるレベルの力が幾つも寄り集まった怪物じゃねえか!?

 

「・・・恐ろしいってもんじゃねぇ!!サーゼクス。さっきの話を早めるぞ!!」

 

「そうだな。早く新たなトレーニングを考えないと。君も当然手伝ってくれるか?」

 

「ふっ・・・そのためにこの世界の先輩達に打診している。ぬかりはない。」

 

 あの赤龍帝は進化する怪物。

 

 ヴァ―リもあれがある。巧とも繋がりのあの血が・・・。

 

 あの二人は知らないことがある。

 

それはヴァ―リと巧には血の繋がりがある。

 

 その繋がりには眠ったままの灰の王の存在があると。

 

 その王の血を引く者がアギトになるのもおかしいが・・・あいつの生涯のライバルはもっと怪物だ!!

 

「・・・はあ。そうなるとエッチな事を全力で止めないと。」

 

「それですませていいのかキリエよ!?」

 

「もう慣れています。」

 

 キリエの奴は動じず。

 

「・・・多分、今後もイッセ―さんに対するキリエさんの絶対的な精神的優位は変わらないかと。」

 

 アーシアの言葉は正しいだろう。そう言った意味ではキリエがこの場に来たのは意味があった。

 

 ・・・うん。キリエはアギトのストッパー、今後も重要な役割を担ってくれそうだ。

 

 彼女のトレーニングメニューも考えておかないと。

 

「何でここに魔女の結界が!?」

 

「ミカエルのおっさん達が巻き込まれ・・・。」

 

 その時、結界を切り裂いて二人の少女が現れる。

 

「ほう・・・。」

 

「この二人やるな。まさか結界を切り裂いてきたか。」

 

「ミカエル様!!大丈夫ですか?」

 

「他の勢力のトップもみんなも一応無事か。」

 

 確かあいつらはミカエルの連れだったか。

 

 実力はあるとは分かっていたが、相当なものだな。

 

「さて・・・魔女はどこ!?」

 

「ここで魔女に出くわすなんて分かんねえよな!?」

 

 そして二人はフードを脱ぎ捨てる。

 

 現れたのは・・・。

 

「まっ・・・魔法少女。」

 

 ザーゼクスの奴が言ったように、魔法少女だった。

 

 セラの奴のおかげで色々と慣れたからな。

 

 ショートカットをしたボーイッシュな青の魔法少女は剣を。

 

 長い髪をリボンで停めたやんちゃそうな赤の魔法少女は槍。

 

 それを構えるが・・・。

 

「・・・さやかちゃん、杏子ちゃん。」

 

『へっ?』

 

 まどかを見て固まってしまった。

 

 いや・・・まどかの方まで固まっている。

 

「なんでお前の世界の魔法少女がこの世界にいる!?」

 

「あらら・・・。」

 

 総司まで驚いている始末。翔一に至っても目を丸くしている。

 

「あの・・・お二人とも。もしかしてずっと探していた友達って・・・。」

 

 ミカエルの奴が二人に話しかける。

 

「まどか・・・まどかなの?」

 

「うん・・・。」

 

「・・・はあ・・・やっと見つけたぜ。」

 

 まどかに抱きつく二人。

 

「二人とも・・・また会えるなんて・・・。」

 

『・・・・・・・。』

 

 さて・・・場が固まってしまっているのはどうすればいい?

 

「・・・すまん。どうやら面白いことになったそうだ。」

 

 総司の奴は状況を理解したらしく笑みを浮かべる。

 

 その頃三人は笑みを浮かべ会い、涙を流しながら再会を喜び会っていた。

 

「そうそう・・・二人に紹介しないと。翔一君。」

 

「そうだったね。どうも、兵藤翔一です。えっと・・・まどかの友達ですよね?」

 

「はい。」

 

「えっと・・・お前誰だ?」

 

 翔一の登場にいぶかしむ二人の魔法少女。

 

「私の夫なの。」

 

『・・・・・・。』

 

 ピシッ!!

 

 まどかの満面の笑みで言った発言に音を立てて固まる二人。

 

「まっ・・・まどか?今夫って聞こえたけど。まさか・・・結婚しているわけじゃ・・・ないよね?」

 

「そっ・・・そうだぜ!!まさか中二で結婚だなんて・・・。」

 

「ちゃんと結婚しているよ。式も上げたし。」

 

『・・・・・・・。』

 

 その答えはまどかが見せた結婚指輪だった。

 

「しかも息子もいて、実は娘も妊娠中・・・。」

 

『・・・・・・。』

 

 のろけ話のように話しているまどかさんだけど、その友達お二人の反応を見て欲しい。

 

 気を失いそうなくらいに口をパクパクさせているぞ。

 

 もう理解が追いついていないって感じだ。

 

「・・・まどかが結婚?」

 

「しかも子持ちで現在も妊娠中だぁ!?」

 

 二人ともあまりの衝撃に思考ら混乱しているのだろう。

 

 だが、二人は揃って大きく深呼吸。考えを無理やりまとめる。

 

 2人が出した結論は・・・。

 

『あんた!!なにしとんじゃ!!この犯罪者!!』

 

 とりあえず夫を殴り倒すことだった。

 

「ふご!?」

 

 アギトに変身した状態の翔一が吹っ飛ぶ程の全力での拳。

 

 いい拳持っていやがるぜ。

 

「なんでそこで僕に矛先が!?しかも犯罪者って何!?」

 

「うっさいわ!!このロリコン!!」

 

「ロリコン!?」

 

「まどかを傷ものにした変態を私は斬る!!」

 

「変態って・・・わわあわわわわわ二人とも落ちついて!!」

 

 しかも二人とも武器繰り出してくる始末。必死に腕の装甲の厚い部分で受け止めるなどでやり過ごす。

 

「僕はまどかを愛しているから結婚したわけで!!」

 

『その時点で犯罪じゃ!!』

 

 説得しようにも二人は完全に頭に血が上っており止まらない、止められない。

 

「ちょっ・・・他のみなさんもなんかフォローを!!僕はロリコンでもないし、変態でもないって・・・。」

 

 そこであいつが俺達に口添えを頼むけど・・・なあ。

 

「なぜ皆そこで僕から目をそらすの!?」

 

 誰もフォローできんわな。

 

「・・・すまない。」

 

「俺って自分に正直だからさ・・・思っていない事を反対の事を言うのは嫌なんだわ。」

 

「・・・罪深き者に神の慈悲を。」

 

「まあ・・・俺が言うのもなんだが業が深すぎる。」

 

「・・・・・・なにもいえません。」

 

「ノーコメントでお願いしたい。」

 

「ははは・・・あははは・・・愛って偉大です。」

 

「ちょっと!?」

 

 二人の怒りもなんかわかってしまうから・・・フォロー出来んのだわ。

 

 いや、堕天使がフォローできないほどの業の深さと言うべきか。

 

「翔一。」

 

 そこに総司の奴が肩に手を置く。

 

 流石は友だな。

 

「俺は・・・お前がロリコンでも変態でも、犯罪者でも友達だと思ってい・・・。」

 

「だあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 酷い止めだ。

 

「もう二人とも落ちついてって!!ロリコンじゃないのは小猫ちゃん達が来ても全く反応しない点などで分かっているから!!」

 

 まどかよ。そこで一応だけど確認はしているのだな。

 

「だって・・・こんな子供の姿のままの私を好きでいてくれる事に不安だったんだもん!!」

 

「だからってこの場でそれを激白しないでよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 いや・・・女心は複雑なものですな。おかげでさらに暴走が酷くなったぜ。

 

『お前の罪を数えやがれぇぇぇぇっぇぇぇぇぇ!!』

 

「だから罪ってなにぃぃぃぃぃぃぃ!?」

 

 二人の猛攻はさらに過激になってきやがった。

 

 まあ・・・あれだけ火に油どころか、より燃焼効率のいいハイオクを入れるような発言をしたからな。

 

 ああもう・・・収集がつかねえ・・・って。

 

「とりあえず落ち着け。」

 

 そこに現れたのは仮面をつけた一人の男だった。

 

 彼は行ったのは単純な事。

 

『わっ!?』

 

 二人の目の前に紫の炎をだして驚かせ・・・。

 

「これって便利だ。」

 

 いきなり二人の身体を停めたのだ。

 

「じっ・・・時間操作系の能力!?」

 

「・・・お前、まさか・・・。それにその紫の炎・・・ってまさか!?」

 

 こいつ当然のように停止の魔眼をコピーしていやがった。

 

そして、もしかして紫の炎って神滅具の・・・。

 

「落ち抜かぬか、娘ども。これ以上騒ぐと余も少し・・・暴れてくれようか?」

 

 彼の謎の威圧に皆が息をのむ。

 

「あんた・・・あの時の・・・。」

 

「この場にまで現れるなんて、一体何者なの!?どうして私達の動きが・・・。」

 

 二人は一応彼の事を知っているらしい

 

「これは・・・。」

 

「なんです?まるで大魔王を相手にしているかのような・・・。」

 

「ははは・・・やっぱり君は自力で来たか。」

 

 彼を見たまどかさんは驚いた様子はない。

 

「さすが・・・異世界で神すら封印した大魔王だけはあるよ。」

 

『!?』

 

「あなたこそ流石です。」

 

 彼は仮面を外す。

 

 そこに現れたのは・・・銀色の髪に、雄牛の様な二本の角、そして、額に三つ目の目が付いたポルムの真の姿だった。

 

「大魔王バーン。あなたの前世。まさか・・・異世界の勇者パーティの一員の息子として生まれていたのには驚きました。」

 

『・・・・・・・。』

 

 おいおい・・・。マジで大魔王だったのか?

 

 その名前、ハドラ―から何度も聞いているぜ!!あちらの世界で魔界を納めていた絶対的な存在。

 

 まさに魔界の神ともいえる存在だとな!!

 

 ある意味、あいつも神クラス。

 

それも、スサノオ達のような主神クラスは疑いようがねえ。

 

「はい。私は三代目大魔道士にして・・・大魔王です。そして・・・一応だけど、今日からサイガの女王となりました。」

 

『はい!?』

 

 そのポルムの背中から悪魔の翼だと!?しかも・・・ルシファーのような十二枚の黒い翼!?

 

「さて・・・私・・・いや余もこの会談に加えさせてもらうよ?安心して・・・悪巧みなら数千年単位の長期から数秒すぐ後でもなんでも得意だから。」

 

 こうして異世界の大魔王も加えて、非公式の会談は始まった。

 

 

 

 SIDE サイガ

 

「まったくもう・・・みんなやりたい放題やってくれて。」

 

「ははは・・・でも、あなたの願いをかなえたけど・・・本当に面白い事をするね。」

 

 セラさんの苦笑も分かる。

 

「ポルムには僕に黙って色々と暗躍してくれたお礼を兼ねてね。強制的に眷属にしてやっただけだよ。」

 

 セラさんに一つお願いしたのは、前借りで女王の駒が欲しいというものだ。

 

 上級悪魔としての実力は疑う余地もないらしく、セラさんも特例として急いで調達してくれた。

 

 まあ・・・フィリップさんがこっちに用事があったらしく、そのついでに持ってきてくれただけなんだけど。

 

 そして、ポルムを呼びつけて、私の責任を取ってもらった。

 

 変異の女王の駒。かなり特別な物になったらしいけど・・・それを埋め込んでやったのだ。

 

 

 

 

 その時のポルムの驚き方は印象的だった。

 

 でも私達も驚いた。

 

 転生した時に現れたのが・・・十二枚の黒い翼だったからだ。

 

「ルシファー・・・みたい。」

 

 セラさん曰く、元々のルシファーが持っている翼そっくりだそうだ。

 

「流石というか・・・まさか私を転生させるとは。おそらく竜の騎士、それも紋章三つの実力に変異の駒まで加わった結果ということか。まったく、イッセ―といいお前といい余を驚かせてくれる。」

 

 想定外の何かに目を丸くしていたポルム。

 

「だが・・・まあいい。おかげでこっちも寿命や老化の問題も、そして前世の肉体を取り戻す事も偶然ながらできた。悪魔の駒で転生できないと思っていたけど、個々にそれを覆す規格外がいてくれて助かったよ。」

 

 前世の肉体?

 

「それどころか・・・なるほどな。こりゃ・・・あの力も使えるか。」

 

 あれ?そして、なぜ腰にベルトみたいな物が現れているのですか?

 

 あと、手が黒の甲殻と鋭い刃みたいな棘、そして鋭い爪に変わっているのですか?

 

「いずれまた見せるさ。・・・ある世界で瀕死の重傷を負った際に偶然に得た強化兵士レベル3の力に三つの石の力、これは正真正銘の切り札なのでな。もしかしたら、この力を全開にして、お前と戦う日がくるかもな。ハハハハハハ!!」

 

 ・・・どうもポルムには謎が多い。

 

 まだまだ何かを隠している。

 

 でも・・・。

 

「お前は前の道を全力で進め。盟友として・・・最後まで付き合ってやる。」

 

 だまし討ちにする形で眷属にしたのに・・・こう言ってくるのだからさ。

 

「はあ・・・うん。よろしく。」

 

「ああ・・・こうなったらとことんやってやる。」

 

 

 と、いきなりすごい謎の多い友を眷属にしてしまったわけで。

 

「魔王眷属の眷属って面白いわ。」

 

「うん。今度の夏休みの時に早速冥界のみなさんに披露しないとね。日本神話との友好関係も示すために招待するよ。」

 

 ツクヨミさんとセラさんは色々と打ち合わせをしている。

 

「・・・そうだな。こうなったら冥界でやってみるか。」

 

 私はそこであること思いついていた。

 

『何を?』

 

「僕の本質は父様と同じ守りし者。それは父さんも、そして会った事がないけどおじい様も同じだと思うんだ。」

 

 私は冥界を中心にして一つ夢を作った。

 

「でも守りし者としての使命は一人じゃできない。だから・・・作ろうと思うんだ。」

 

 冥界を変えてやる気持ちを込めて。

 

「魔戒騎士団。正確には魔戒騎士だけじゃなくそれ以外でも騎士達を作りたい。冥界に魔戒騎士と父様達の守りし者としての技と精神を広めていきたい。」

 

『・・・・・。』

 

「まあ・・・せっかくやるのなら、でっかい事をしたいわけで。まだメンバーはわかりませんが。」

 

 まあ、夢と言うより冥界でこんな事をやってみたいという提案みたいなものだ。

 

「うん・・・応援する。」

 

「私達の世界からもいいのですか?妖怪や神でも。」

 

「そんなことで区別しない。それこそ堕天使や天使だって、ドラゴンや人間だって大歓迎だよ。私だってある意味ドラゴンなんだし。それに皆を率いるためにももっと強くならないと。」

 

 竜の紋章を使って分かった事だが、相当なオーラを使う。

 

 竜のオーラというものを体感して初めてわかったことだ。

 

 ほんの五分の戦いで相当疲れた。

 

 一応、力のコントロールはしており、配分もばっちり。それでももっとスタミナが欲しい。

 

「・・・夏休み・・・それこそ山ごもりでもしないといけないかもね。」

 

「・・・え~。せっかく一緒に入れると思ったのに?」

 

「そうですよ!!デートもしたいのに。」

 

「これはこっちのけじめ。デートはデートできちんと時間を取るから。まだ力を使うにもスタミナが不足しているんだ。体も別物になったから鍛え直さないと。」

 

 この時僕はこの先二つの出来事が待ち受けているのを知らない。

 

 一つは、この夏、イッセ―ともう二人と共に地獄とも言える想像を絶する過酷な修行をやる羽目になること。

 

 もう一つは・・・私の夢だ。

 

 その夢・・・ある方々が賛同して、そのトップ、騎士団長なってしまう事など誰が思うか。

 

 黄金の竜騎士。

 

 これが私の未来での二つ名となる。

 

 黒の大魔王を相方とすることでも有名となるのは未来の話だ。

 

「よっしゃ、なら一緒に夏のコミケにでてくれない?」

 

 ・・・コミケ?なんですかそれ?

 

「私もいいのですか?」

 

「ヨミちゃんの参加は当然だよ。もちろんサイガ君にもコスプレしてもらうからね。もちろん、魔法少女の!!」

 

「サイガ君の魔法少女のコスプレ・・・楽しみですね。」

 

「・・・・・・。」

 

 どうして、初デートで女装する話になっているのかな!?

 

 いっ・・・いや、私の未来は一体どうなることやら。

 

 

 

SIDE ヴァ―リ

 

 潜入を果たした俺は彼女を探していたのだが・・・。

 

 探して見つけたのは想像を絶する光景だった。

 

 そこには確かにオ―フィスがいた。

 

「う~んかわいいわ・・・いいわ~。」

 

「むぐぐぐぐぐぐ!?」

 

 じたばたしているオ―フィスを恍惚とした表情で愛している存在がいたのだ。

 

「まどかと再会した時は二人で愛でまくりたいわね。」

 

 黒髪の少女は成長したオ―フィスを精一杯可愛がっている。

 

「しかし・・・どうして姿が変わったの?あなたは確かに自在に姿を変えられるとは聞いていたけど・・・。」

 

 その問いに対して彼女は首を横に振る。

 

「我・・・もうこの姿以外になれなくなった。」

 

「えっ?」

 

 それはオ―フィスと言う一柱の神の在り方が根底から変わってしまったと言える事態だった。

 

「我・・・渡と一緒にいたいと思った。一人の女として。そう思った時・・・我はこの姿で固定されてしまった。そして・・・成長した。」

 

「・・・あなたという存在が変質、いえ・・・もともと未分化だった自我が選択した性に固定されたというの?あなたという存在その物を変えてしまうほどに・・・その渡って子を愛しているというの?」

 

 ほむらの問いにオ―フィスは頷く。

 

 恥じらいで顔を真っ赤にし、もじもじしながらだ。

 

「・・・もう///可愛いわ!!よし・・・何とかしてあげる。今は難しいけど、手紙位は私が何とかしてあげるわ!!」

 

 精一杯、可愛がられるオ―フィス。

 

「なあ・・・もしかしてだが、あいつが・・・。」

 

 認めたくない物だ。

 

 信じたくないものだ。

 

 変態的にまでオ―フィスを愛でている黒髪の少女が・・・あのホムラだと。

 

 渦の旅団の首領などと!!

 

「・・・ふう・・・大胆な事をする子ね。」

 

 そのホムラの様子が一瞬で変わる。

 

「私達の組織にスパイ目的で潜入。しかも堂々とプライベート空間に入りこんでくるなんてねえ。」

 

――――――流石と言うか、もうばれたか。早すぎるわね。

 

「ふん。上等というものだ。それくらいでないとつまらん。」

 

 ベノの苦笑も分かる。

 

 だが、この程度はある意味では想定内だ。

 

 まあ・・・あのキャラの壊れっぷりは完全に想定外だが。

 

 ホムラが指を鳴らすとともに周囲が黒い闇のような空間で覆われる。

 

「まあ・・・丁度いいわ。貴方の目的は何となく分かる。だからこそ・・・交渉しない?」

 

 だが、俺がスパイと分かった上で彼女は取引を持ちかけてきた。

 

――――――いいのか、ほむらよ?

 

「問題ないわ。ドラゴンって律義なのでしょ?それにスパイとばれても堂々としている辺りが気に言ったわ。逆に信頼できる。」

 

 ホムラの足元から浮かびあがるように現れるのは巨大な金属製の蜘蛛。

 

―――――ディ・・・ディスパイダー!?

 

「久しぶりだな、ベノスネ―カ―。」

 

 ミラーワールドのモンスターか?

 

―――ええ・・・。暴食のディスパイダー。あらゆる蜘蛛系モンスターの王にして・・・・。

 

 猛者なのだな。だったら早速手合わせを・・・。

 

――――ミラーワールド一の食いしん坊よ。

 

「・・・・・・・。」

 

 すまない。何故食いしん坊なのだ?

 

 勝負を挑もうとしたのに・・・いきなり躓いてしまったぞ。

 

「この世界には美味しい物がたくさんある。それをもっと食べたくてやってきた。現にこの世界は美味しい物で満ちている。来てよかった!!」

 

「面白い願いでね。意気投合して契約しちゃった。紅茶も好きだし一緒に飲んでいるの。このなりでお茶を入れるのがすごく上手でねえ。古今東西あらゆるお茶を研究しているくらいで・・・。」

 

 ほむらの手には蜘蛛が描かれた契約者のカードデッキがある。

 

―――――――ティースパイダーというのか!?

 

 アルビオンのツッコミが最近増えてきた。こっちはボケているつもりはないのに。

 

――――――はあ・・・うん。そうなのよ。でも気をつけなさい。彼もまた天龍クラスの猛者。特に食欲に身を任せて暴走した時には私にとっても脅威だから。食べられる物は何でも食べるとんでもない蜘蛛よ。

 

 驚くアルビオンに説明するベノ。そこにゲラスとエビルまでもが説明に参加。

 

――――――喰い意地は間違いなくミラーモンスター随一。そのパワーは瞬時に街全体を己の領域にしてしまうくらいには。

 

―――――でも、意外と太っ腹で美味しいと思った物を分けて、一緒に食べさせてくれる気の良い人でもある。

 

―――――・・・世界は広いな。

 

 アルビオン。こんなやりとりで世界の広さを実感しないでくれ。

 

 頭が痛いぞ。

 

「あなたはもう・・・。もう少し食べることを抑えなさい・・・。」

 

 その隣に空飛んでくる白いカブト虫に似た何かが現れる。

 

「レギオン。そう言うな。私にとっては大切な楽しみなのだぞ?」

 

 レギオン・・・って、あの校舎や街で現れた黒い虫みたいな連中。

 

「初めまして。我らの名はレギオン。星海の彼方より訪れし者。」

 

 星海の彼方?つまりこいつ・・・宇宙生物だというのか?

 

「彼女がその女王。無数の兵士を生み出したのが・・・この子達よ。あなた達も戦ったわね。」

 

 その言葉と共に黒い空間に無数の瞳が浮かび上がってくる。

 

「もう囲まれていたか。」

 

―――――ッ・・・。

 

―――――前に八千、あの戦いでもかなりの数を相手にしたというのに・・・まだこれだけ・・・。

 

「圧倒的な兵力。それを組織的に運用できるという事はかなりの脅威と言う事か。」

 

「・・・私がいることでこの子達が組織立って行動する事も見抜くか。面白い子ね。」

 

「これだけの聡明さなら取引の相手にふさわしいってことでしょ?」

 

 レギオンと親しげに話すほむら。

 

「私はある子を探している。名前はまどか。あの街・・・駒王町が怪しいと睨んでいるわ。」

 

 誰かを探している?まどかと言う名の?

 

「私としてはその子さえ見つかればこの組織なんてどうでもいいの。だから、あなたのスパイ活動も認めてあげる。・・・あの糞ジジイも好きにすればいいわ。」

 

――――見逃すというの?

 

「勘違いしないでくれないかしら?これは取引よ。私の探し人を見つけるのは私にとってそれだけの価値があるの。」

 

「・・・いいだろう。その代わり、見つけたら彼女も解放して欲しい。」

 

「彼女って・・・ああ、オ―フィスちゃんのことね。はあ・・・私は別に無限の力はいらないって言ったのに。カテレアの奴らも勝手よね。あいつらは知らないのかしら!!可愛いは正義って!!あんな可憐な子を泣かせて・・・。」

 

 ほむらはぷんぷんと怒っている。

 

「ちなみに、私・・・オ―フィス派の会長も務めているの。そのオ―フィス派の合い言葉は「可愛いは正義!!」だから覚えておきなさい。貴方もそこに組み込んであげるから。」

 

 いや・・・俺はそんな変態的な会派に入りたくないぞ!!

 

「そんなことはどうでもいい。それでどうなんだ?」

 

 入りたくないからこそ・・・急いで話を進める。

 

「・・・分かったわ。その条件も受け入れてあげる。まあ・・・その分色々と愛でさせてもらうけど。その代わり・・・あなたには私の目的のためにあの街でやってもらうことがある。」

 

「・・・なんだ?」

 

 一体何をさせるつもりだ?この場合はそれに素直に従った方がいいのだが。

 

「・・・安心しなさい。貴方にとっても悪い話ではないわ。ふふふふふふ・・・。」

 

 黒い笑みを浮かべる彼女を見て思った。

 

 ああ・・・流石首領。悪巧みがうまいと。

 

 でも・・・案外悪い人じゃないとも。

 

「これでオ―フィス派に二天龍が入ることになるわ。これで万が一のときでも大丈夫ね。ふふふふふふふ・・・。あなたのその取引はその会派に入ってもらう事が条件だからよろしく!!」

 

 でも、この人かなり腹が黒い。

 

 こうして、俺は・・・オ―フィス派に強制的に組み込まれてしまった。

 

 

SIDE イッセ―

 

 俺達は今、信じられない光景を見ている。

 

「えっと・・・今日からみなさんと同じクラスになった。」

 

「ヴァ―リだ。よろしく頼む。」

 

『・・・・・・・。』

 

 前に俺達と激闘を繰り広げたヴァ―リが突然、転校してきやがった!?

 

「おい・・・これって何の冗談だ?」

 

「俺にそれを振るな!!困る!!」

 

 ネロのひきつった笑みもわかる。

 

「はあ・・・まあ、あとで本人に事情を聞けばいいだろう。あいつの事だ。事情の知っている俺達になら教えてくれるはずだ。」

 

「あいつと同じ学校、同じクラスになるなんて。」

 

「分からない物だ。だが・・・これでこのクラスの人外化がさらに進む。」

 

 元々ヴァ―リと親交のあったらしい鋼兄は落ち付いている。

 

 まあ・・・友と言える巧とハルトは苦笑しているけど。

 

 俺達のクラス・・・なんかすごい事になっていませんか!?

 

 

 

 

 そのあと・・・部室ではもう二人、面白いメンツが来ていた。

 

「よお・・・。」

 

 何でアザゼルさんがいるのですか!?

 

「はははははは・・・。」

 

 そして剣崎さんまで!?

 

「今日から俺がこのオカルト研究部の顧問になった。よろしく頼むな!!セラフォル―の奴に頼んだらこのような形になったぜ。」

 

 ラスボス先生・・・アザゼルさんの誕生ですか!?

 

「ついでに言うなら・・・なんかこの学校の用務員として働くことになった。リアス部長の口添えで。」

 

 そしてジョーカーな用務員も誕生!?不死身の用務員って・・・。

 

「まあ・・・アンデット対策もあるし、あなたをこっちに引き込みたいのもあったから。眷属にするのは・・・流石に止めたわ。でも一応だけど使い魔契約をさせてもらったから。」

 

 部長は思い切った事をしますな。

 

「・・・有無言わさずに使い魔にされた・・・。はあ・・・。」

 

 剣崎さんを使い魔にしたなんて!?

 

 そして、その傍に・・・あれ?ブランカが現れましたけど・・・なぜかうちの制服を着ています。

 

「・・・私、小猫ちゃんとギャー助のクラスに転校することになったから。」

 

 そして・・・えっ?

 

 ブっ・・・ブランカよ。今何って言った?

 

 学校に通うって聞こえたような気がしましたが?

 

「・・・私が許可したの。もっといろいろな世界を見て、人間の勉強もしたいって。年齢的に小猫ちゃん達と同じだからそのように。」

 

 唐突過ぎて困る!?

 

「私もイッセ―のハーレムに入るには人間としての常識、身につける必要があると見た。故に人間としての生活を・・・。」

 

 こっ・・・後輩が無双龍って、なんじゃそりゃ!?

 

「これで・・・戦力はさらに万全。さあ・・・渦の旅団共。私達の学校を襲ってみたかったら襲ってみなさい!!魔王や熾天使だって裸足で逃げだすメンツばかりよ!!」

 

『・・・・・・・。』

 

 どんどん過剰戦力が学校に集まってくる。

 

「渦の旅団ではお前達の無双に恐れおののいているぞ。この学校を襲うのは冥界の首都や天界などを襲うよりも遥かに危険とされるくらいにな。」

 

 ヴァ―リの言葉も何となく分かる。

 

 あの時みんな・・・大暴れしたもんな。

 

『・・・・・・。』

 

 あれ?そこで俺にみんなジト目を向けてくるのはなぜ?

 

――――一最も大暴れした本人達は自覚なしか。

 

 ドライクさん?そんなに暴れた覚えは無いって。ただ・・・ヴァ―リとタイマンをやっただけで・・・。

 

「イッセ―。お願いだから、ヴァ―リと戦う時は場所と時を考えてよね?あなた達の激突は渦の旅団だけじゃなく、三勢力、いえ全世界に轟いたのだから。歴代最強にして最も危険な二天龍としてね。」

 

 部長から釘を刺された!?

 

 その前に、俺達ってそんなにすごい事になっていたの?

 

「しかしまあ・・・うん。あいつの提案通り、悪くない。」

 

「お前はマイペースだよな!!おい!!」

 

 今更とは思うけどヴァ―リは当然のように部室に顔を出していた。しかも今のやり取りに動じていないどころかあっさり流しやがったし。

 

「・・・事情は聞いたが、お前も大胆な事をするな。」

 

 スパイ活動のためにこの学校にやってきたヴァ―リ。まあ・・・渦の旅団の首領直々の命で、この街で調査をするために来たそうだ。

 

 スパイということはとっくにばれているので、むしろ祖の首領はそれを利用して、目的の人物を探すように仕向けたのだ。

 

それは誰か・・・流石にヴァ―リも言えないらしいが、少なくても俺達じゃないらしい。

 

「渡殿、例の彼女から手紙を預かっている。」

 

「ありがとう。」

 

 ヴァ―リは律義にもオ―フィスからの手紙を渡す。

 

「・・・・・・二天龍が揃う部室か。」

 

 部長は俺達を見て溜息をついている。

 

「おそらく・・・こんな光景は今までなかったぞ。いや・・・今代の二天龍は規格外過ぎて恐れいるわ。」

 

 アザゼル先生の言葉に皆が頷くところを見ると、どうやらそれが皆の思いらしい。

 

「おお、赤いの!!ついに生まれたぞ!!我が子が!!」

 

「何!?見せてくれ・・・おお・・・・。可愛い子ではないか。」

 

 その一方、アルビオンはドライクに先ほど孵ったばかりの双子を見せていた。

 

 額に第三の目を持った白い蛇みたいなドラゴンに、紫色のドラゴン。

 

「調べて分かった事だけど・・・この子達、父親の生前の能力の上にとんでもない力を持っているのよ。」

 

「そうなの?父親の力ってことは半減、そして空間を半分にする事と・・・。」

 

「封印されたはずの反射を二人とも使ったわ。一人は反射をさらに突き詰めてとんでもない能力を生み出したけど。えっと・・・あの白い子よ。」

 

「・・・反射だと!?」

 

 それを聞いたドライクは驚いている。

 

「・・・・・・とんでもない子になってしまったぞ。まだ何かを持っていると思う。判明したこの子達の固有の能力もそうだし。しかもこの子達は契約したら、その力を神器としてその契約者に与える事も出来る。」

 

 どうも二人とも父親の能力をすべて継いでいる様子。

 

「おいおいおいおい。神器のシステムを逆に利用しているというのかい!?原因は?」

 

「おそらく二人のアギトの祝福かと。それで神器のシステムをあらかじめ備えた子になってしまったと考えるのが妥当よ。」

 

「・・・アギトの祝福?こいつらをこの二人が祝福したというのか?神の特権である祝福を!?なるほど・・・じゃあ、こいつらその物がまだ未分化の神器そのものでもあるということかい。」

 

 アザゼル先生は色々とメモを取って興味深くみている。

 

「悪用されないように気をつけな。この子達は条件さえ整えば人間以外でも神器を使えるようになってしまう例外的な存在だ。しかも、どんな能力か分からねえがお前達の子なら神滅具に化ける可能性が極めて高い。下手したら上位クラスになるかもな。」

 

 その上で適切な警告をしている。

 

「この子達はトップシークレットにした方がいいわね、」

 

 とんでもない子供だ。

 

「あっ・・・卵が動いた。」

 

 一方クレアが持っていた卵も動き出したのだ。

 

 そして・・・。

 

「思ったよりも孵るのが早いぞ!?」

 

「本当ね。むしろベノ達の子を見て早く会いたいと思ったのかも。」

 

 二つの卵に亀裂が入り・・・そして生まれる。

 

 赤ではなく朱金の龍と黒いドラゴン。その双子が。

 

「うっ・・・生まれたというのか?おお・・・。」

 

 ドライクは元の姿にっておおおおおおおおおい!?

 

 ハルトがとっさに部室内の空間を広げてくれなかったら部室が崩壊していたぞ!!

 

 元の姿になって抱き寄せているぞ。すごい勢いで涙を流しまくって。

 

「これが我が子・・・白いの!!これが我が子だぞ!!」

 

「あらら・・・もう好き勝手に元の姿に戻れるか。でも、ああ・・・私達の子だ。」

 

「・・・うん。そして、この子たちもベノの子供たちと同じようになっている。」

 

 ブランカの指摘に皆は固まる。

 

 つまり未分化の神器でもあるということか。

 

「・・・俺、神器研究者として大変光栄な場にいるぞ。新たな神器の可能性と出会えるとは・・・じっくりと体を調べ・・・。」

 

『うちの子に変な事をすればどうなるかわかっているかな?』

 

「ひっ!?」

 

 あの子達の親たちが一斉に元の姿に戻り、アザゼル先生を取り囲んでいた。

 

 うわ・・・アザゼル先生が悲鳴を上げた。

 

 でも無理ないよね。二天龍にクレア、ベノまで加わった状態で睨みつけたらねえ。

 

「・・・分かった。この子達の健康診断、検査程度にするから安心してくれ。ドラゴン専門の医者も紹介してやる。はあ・・・この子達に手を出したら、その勢力はこの世から確実に消滅するぞ。このモンスターペアレント共を敵に回す事だけは避けないとグレゴリが消滅する。それも一瞬でな。」

 

 アザセル先生は必死でいう。

 

「まったく、古来からドラゴンの子供と親の繋がりは大変深いとは聞いていた。まあ、ラッセ―のような放任主義も多いらしいが、お前達の場合はそうだったか。お前達も気をつけろ、この子達に何かあったら、テレパシーみたいな感じで親たちがすぐに気付く。そして怒り全開で襲いかかってくるから。二天龍とその嫁共の逆鱗・・・お前達だって触れたくないだろ?」

 

『・・・・・・・。』

 

 四体の最強クラスのドラゴンが怒り全開で暴れまわる光景。

 

 うん・・・世界の終わりが見えた。

 

 嫁の方は合体もできるから余計にヤバい。

 

 みんなの顔色も揃って青ざめているのは仕方ないよね?

 

 孵ったばかりで動きがおぼつかないドライクの子供達。

 

 それに駆け寄ってくるアルビオンの子供たち。

 

 両者共・・・興味深々。そして・・・すぐに遊び始めたのだ。

 

「・・・子供ってすぐに仲良くなりますよね。」

 

 アーシアの言葉に頷く皆。

 

 なんか・・・和む。

 

 そのアーシアのカードが輝く。

 

 そして・・・その手に前に契約したモスラの卵が現れ、それが孵化のだ。

 

 現れたのは焦げ茶色でかわいらしくデフォルメ化した芋虫みたいな生き物。

 

「アカリが生まれた。」

 

「って・・・何だその生き物!?」

 

 生まれたモスラは子供達に駆け寄る。

 

 そして一緒に遊び始めた。

 

 一匹だけドラゴンじゃないけど、それでもお構いなしに遊んでいるぞ。

 

「・・・それの本来の大きさ、今は考えないようにするわ。」

 

 部長のその言葉で皆は思い出してしまった。

 

『・・・・・・・。』

 

「おっ・・・おい。みんな、どうして震えている?」

 

 アザセル先生と剣崎さん、そしてヴァ―リは知らないのか。

 

 あの卵の本来の大きさが体育館並かそれ以上の大きさだということに。

 

「認めたくないわ。まだ今は小さいから可愛いけど、本来の大きさになったらまさに怪獣じゃない。」

 

 ますます怪物が増えて行く。

 

「あれ?ラッセ―?」

 

 そこにラッセ―が加わる。

 

 そして何やらいう。

 

 皆がそれで嬉しそうな声を上げる。

 

「・・・どうも、アカリだけじゃなく、みんなのお兄ちゃん役を買って出たみたいです。」

 

「ほう・・・。」

 

「ふふふ・・・頼むわね。」

 

 ラッセ―の潜在能力を知っているドライクとクレアは微笑む。

 

「このドラゴンは・・・。」

 

「へえ・・・、いいわね。」

 

 ラッセ―の潜在能力に気付いたのだろう。

 

 アルビオンもベノもラッセ―に驚いていた。

 

「でも・・・アルビオン、大丈夫?あの子達は女の子なのに?」

 

「そうそう・・・ドライク。私達の子共は二人とも女の子よ。」

 

『なんだと!?』

 

 雌だというのか?どちらの子供も・・・。

 

「ちなみにアカリも女の子です。」

 

 モスラ・・・いやアカリか。この子も女の子だと!?

 

『・・・・・・。』

 

 ラッセ―にすごく懐いている四匹の赤ん坊ドラゴンと謎の生き物アカリ。

 

 なんだろう。将来ラッセ―がハーレムを築き上げている光景が見えてきたよ。

 

 なんか二天龍がラッセ―を睨みつけております。

 

「将来性もある・・・危険だな。」

 

「うむむむむむむ・・・。娘はやらんぞ。」

 

 パパドラゴン共がすごく・・・すごくラッセ―を警戒していますよ!?

 

「ふはははは・・・イッセ―とヴァ―リの実例があるからわかるが、ドラゴンは自然とハーレムを作るみたいだな。まさか生まれついてすごいことになっている。」

 

 俺っていつの間にかハーレムをつくっていたか?

 

 まあ、ヴァ―リの奴は作っていたな。

 

「イッセ―。お互い女子には苦労するな。」

 

「ははは・・・ああ。全力で殴りあった仲だ。愚痴位は聞いてやる。」

 

「こっちも聞くぞ。お前とは色々な意味で仲良くできそうだ。」

 

 こいつとはなんか仲良くできそうだ。

 

 良いライバルと言う意味でも。

 

 共に女子で苦労している仲という意味でも。

 

「だが、ここでならあの子達の遊び相手には苦労しないからある意味いいのだが・・・。渦の旅団には預けておけない。」

 

「ちょっと!?この部室をこの子達の託児室にするつもりなの!?」

 

 ヴァ―リはこの部室を二天龍の子供たちの託児所にするつもりらしい。

 

「・・・だが、それしかないだろ。この子達を野に放って、何かあったら親が・・・。」

 

『・・・・・・・・。』

 

 怒れる二天龍を想像し、部長は冷や汗を流す。

 

 前の二人の喧嘩でも危なかった。この上で二人が逆鱗を発動させ、同時に襲いかかってきたらどうなるか・・・。

 

「じょっ・・・冗談じゃないわよ!!」

 

「ごめんなさい。出来る限り私達もサポートするわ。」

 

「でも初めての子供で不安で不安で・・・。」

 

 この旧校舎なら遊び場としても広めだし、結界も皆の強力で大変厳重にかけてある。

 

 確かに安全だ。

 

「・・・はあ。分かったわ。あとアルファとグレイフィアにも応援を頼むから。この子達は世界の希望にして同時に滅ぼしかねない爆弾みたいなものだから。慎重に育てないと。悪影響が心配だわ・・・例をあげると。」

 

 部長は色々不安を抱えている様子。

 

「おう!!面白い子供たちだな。」

 

「あのドラゴンの子供って聞いたけどこれは中々かわいいね。」

 

「ほな・・・立派なドラゴンになるように色々おしえてやらんとな。」

 

「そうそう!!一緒に色々と遊ぼうね。」

 

「王としての風格と言う物を・・・。」

 

「一生懸命可愛がるぞぉぉぉぉぉぉぉ。」

 

 悪影響候補その一・・・良太郎のイマジン共プラスデネブ。

 

 キャラが濃すぎる!!

 

 しかも何故かおもっきり張り切っていやがる。

 

「面白そうじゃねえか。こうなりゃ、この子達も育て上げてやる。将来竜王どころか天龍、いや、龍神にしてくれるぞ!!ふふふふははははははははははははははははははは!!ついでにハーレムと言うやつを今のうちに教え込んで・・・。」

 

 悪影響候補その二・・・ラスボス先生ことアザゼル先生。

 

 自らの手でこの子達を育て上げる事に野望を感じ始めているよ!!

 

 そこに余計な事を吹きこもうとしているし!!

 

 他にも・・・ドS姉弟にスタイリッシュな奴ら、いたずらネコ、腹が黒過ぎる大魔道士、酒好きドラゴンなどエトセトラエトセトラ。

 

「・・・すごく不安な環境でもあるのですけど!?」

 

「どんな愉快な子になるのか想像できない!?」

 

 母親達が悲鳴をあげている。

 

 俺の周りは愉快な連中が多すぎて、無垢なこの子達がどんな影響を受けるのか怖くて仕方ない!!

 

「剣崎さん!!お願いします。この子をぜひとも・・・ぜひとも!!私達もずっとついていきたいのですがそうもいかない時もあって!!」

 

「頼みます。まっとうなあなたが最期の希望です!!」

 

 実体化したクレアとベノに懇願される剣崎さん。すごく戸惑っている。

 

 まあ・・・でかい二人に迫られるのは流石に怖いだろうし。

 

「うっ・・うぇ!?」

 

 どうも一番関わりが深くなりそうなのは用務員である剣崎さんみたいです。

 

「子育てなんて初めてですから!!でも・・・出来る限りは。それにまともって言っても一応人外ですよ?」

 

『人格としてはもっともまともです!!』

 

「さいですか・・・はあ。どうしよ・・・。」

 

 そう言った事は不器用そうだね。

 

「安心して・・・これでも前世の経験がある。手伝うよ。」

 

 おお・・・良太郎がすごく心強いって・・・。

 

「ヨッシャ・・・こいつらにクライマックスを教えてやるぜ!!」

 

「僕は相手を釣ったり、釣られる方法を・・・。」

 

「こいつらを泣けるほどに強くしてやる。」

 

「答えは聞いていないは・・・教えない方がいいかな?」

 

 だめだ!!憑いてくる悪影響候補ナンバーワン共が余計だ!!

 

「立派な王に育て上げて見せるぞ。」

 

「・・・おちつきなさい。こうなったら・・・。」

 

 部長は皆を静めて言う。

 

「なるようになれよ。」

 

 匙を投げて、完全に開き直った!?その言葉と共にバイオリンが聞こえてくる。

 

 その音に・・・ドラゴン達が静かになる。

 

 奏でているのは渡だ。

 

「・・・胎教にもよかったのよ。彼のバイオリン。この子達はこのバイオリンを子守唄代わりにするのかしら?」

 

 そして・・・すやすやと眠り始めた。

 

「龍を鎮める曲か・・・。唄なら知っているが、この子達は渡の音楽も聞きながら成長するのだな。」

 

「うん。僕もがんばらないと。オ―フィスちゃんは絶対に戻ってくる。だからこそ。」

 

 渡はすでに前を向いている。

 

「さあて、まあ将来性が大変楽しみな子供達もいるが、まあ・・・その前にお前達をさらに強くするつもりだ。俺の神器の知識を総動員させてやる。それに・・・心強い連中もいるからな。チームイッセ―共は今後の三勢力・・・いや、世界の平和の鍵になる。それを疑う余地はねえ。」

 

 アザゼル先生は俺達を見る。

 

「・・・とくにイッセ―とヴァ―リ。お前達は切り札だ。だが・・・同時に危険すぎる最終兵器でもある。あの力を長時間保持、ならびに制御できるように夏休みは徹底的に鍛え直す。覚悟してもらうぞ。」

 

 修行している俺達に向けて先生は告げる。

 

「すでにサーゼクスの奴に声をかけて、あるお方達を呼んである。ついでに・・・良太郎、これをお前の契約しているイマジン共に使ってみな。」

 

 アザセル先生はある腕輪を五つ良太郎に渡す。

 

「んん・・・ええええぇぇぇぇぇえ!?」

 

 すると、イマジン達が皆実体化。

 

「おおおおっ!?なんじゃこりゃ!?」

 

「この時間で実体化できるなんて。」

 

「こりゃすごいで!!」

 

「最高だよ!!これで踊れる!!」

 

「う~ん。やっとこの時がきた。」

 

 デネブ以外は実体化出来なかったのに。

 

「今回の修行・・・お前達イマジンは個別にやってもらう。良太郎の個性を生かすにはお前達のさらなるレベルアップが必要だからな。そして、その器である良太郎と・・・そうだなサイガ!!お前もあの力の制御とスタミナなどの鍛え直す必要があるはずだ。俺達が開催する地獄のメニューにイッセ―とヴァ―リと共に参加してもらうぞ!!」

 

『えええっ!?』

 

 地獄のメニューって・・・。

 

「上等・・・アザゼルが地獄と言うのだから相当なものなのだろうな。前に体験したあれを軽く超えるのだろ?」

 

 ヴァ―リはアザゼル先生のトレーニングを受けた事があるらしい。

 

「当たり前だ。お前さん達の力はそれだけ増大してんだ!!それ相応の覚悟はしてもらうぞ。この人間核弾頭共が。」

 

 人間核弾頭・・・。俺達に対する評価がそれなの!?

 

「・・・はあ・・・。」

 

 でも・・・確かに本格的に鍛え直す必要は感じている。

 

「他のメンツも俺が頼んでスペシャルゲストを何人も呼んでいる。朱乃にも覚悟してもらうぞ。まあ・・・あいつの事は許せないのは分かる。だが・・・。」

 

「分かっていますわ。私もいい加減前に進みたいですし。」

 

 アザゼル先生の言葉に朱乃さんは何故か穏やかだ。

 

 あれ?なんで?確か父親である堕天使を憎んでいるはずなのに?

 

 首を傾げるアザゼル先生。

 

 アーシアが驚いた様子を見ている。

 

「・・・・ごめんなさいアーシアちゃん。今は口止めで。」

 

「・・・・・・はい、朱乃お姉様。」

 

 何か様子がおかしいぞ?

 

「まあ、それと向き合いながらユウナと共に最強の魔女と一緒に修行してもらう。ハルトとポルム、そしてウラタロスとリュウタロスも一緒に行け。」

 

 最強の魔女?

 

「・・・あのベヨネッタ様と?ユウナさんから聞いてはいましたが?」

 

 誰ですか?そのベヨネッタって?

 

「少なくとも・・・朱乃、お前とは絶対に意気投合する奴だとだけ言っておく。俺はお前のキャラが崩壊しないことを祈っている。あれは俺や魔王、熾天使はおろか神ですら敵に回したくないとんでもない女だ。・・・ハルトとも意気投合しそうで俺は心底恐怖している。」

 

 渋い顔で告げるアザゼル先生。

 

 一体そのベヨネッタって魔女・・・どんなキャラしているの!?あのドS姉弟と意気投合間違いなしって!!

 

「木場。お前は禁手化の長時間の維持と・・・今回の修行でオーガギアの禁手化に至ってもらう。巧と一緒に剣も一から鍛え直しだ。お前を「剣帝」にするつもりだから覚悟しておきな。安心しろ、ギア関係なら巧のことで研究は進めている。」

 

 木場に対して課題は明快。あのギアを使えるようにするか・・・。

 

「ゼノヴィアとネロ、ついでにモモタロスにも参加してもらうぞ。特にゼノヴィアの中にいる残り二体のイマジンはまだ不明だが、お前さんも技量もさらに高めさせる。一から徹底的に鍛え直すつもりだから覚悟しな!!剣に関しては木場の師匠にダンテが相手になる。おもっきりしごかれてきな。」

 

 ゼノヴィアもそこに加わるのね。

 

「さて・・・アーシアにはアギトとして変身をできるようにしてもらう。アギトとしての戦闘形態。戦闘を嫌うお前さんには過酷だが、変身できるようになったら新しい次元が見えてくるはずだ。皆には言えねえが、アギトとしての大先輩に見てもらう。」

 

 そして、アーシアは変身できるようにか。って・・・アギトの大先輩って誰です?

 

「小猫ちゃんは・・・鬼の修行を仕上げろ。仙術と鬼の力の融合は凄まじい。そして・・・ガメラと言う存在とも向き合ってもらう。」

 

「はい。」

 

「鋼鬼・・・確かお前は夏の鬼の合宿をサイラオークと共に冥界でやる予定だよな?」

 

「ああ・・・夏の魔化魍対策で紅になることを覚えてもらおうとやる予定だ。ついでに・・・黒歌と共にアーマード化できるようにも・・・。」

 

「にゃはははは・・・覚悟はしているにゃ。」

 

 そっちはそっちで過酷な修行をするつもりですな。

 

「そこに実はそのサイラオークの眷属や、あと希望者も参加するらしい。一般の下級悪魔や堕天使達だ。俺は鬼の力を冥界にも伝えたいと思う。冥界の悪魔を・・・鬼にしてくれる。」

 

「・・・おいおい。下剋上が起きるんじゃねえか?」

 

 魔力とかではない鍛え上げた肉体のみで戦う別の意味で悪魔の軍団。

 

「サイラオークを量産するつもりなの!?」

 

「それも悪くない。魔力などではない・・・肉体のみで高みに上がる連中・・・鬼の一団を作り上げてくれるか。」

 

「・・・恐ろしい奴らだぜ。そんなガチムチ連中と戦うのは俺はごめんだね。」

 

「こっちは楽しみが増えて仕方ないよ。」

 

 ヴァ―リと俺の反応は全く別なのは仕方ない。

 

「安心しろ。そこにリアス・・・お前も参加させる。」

 

「・・・はい!?」

 

 えっ?鬼の修行に部長が!?

 

「お前さん・・・多分ウィザード系のパワーだけじゃなく、ウォーリア系のパワータイプを目指しても面白そうでな。」

 

「あのね・・・。」

 

「キンタロスとデネブも参加させてのパワー祭りだ。がっちり楽しんで来い。」

 

 すごく意地の悪い笑みを浮かべるアザゼル先生。

 

 部長が嫌がることを分かった上での確信的な笑みだ!!

 

 部長は体を細かく震わせながら・・・魔法陣からハリセンを召喚。

 

 その頬には皇魔力発動の証であるステンドグラスのような文様が浮かび上がっている。

 

「げっ!?ちょっとまて!!おちつけ・・・おちつけリアスちゃん!!その状態でのツッコミはシャレにならな・・・」

 

「私はそんなパワーはないっちゅうねん!!」

 

 そんなアザゼル先生を、なぜか関西弁で叫びながらのハリセンでのフルスイングを叩きこむ。

 

「ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ・・・・・・・・!?」

 

 部室の天井をぶち破り、場外ホームランのごとく外まで吹っ飛ばされる堕天使総督、もといラスボス先生の図。

 

 すごい勢いで星になったと思う。

 

「あっ・・あれ?」

 

「・・・すごい・・・パワー。なるほど、確かに修行は必要だね。鬼にならなくていいからその力を制御するための修行・・・僕も手伝うよ。」

 

 渡・・・部長と共に修行することになりそうだった。

 

「ウオオオオオォォぉ…ふん!!はあ・・・はあ・・・はあ・・・死ぬかと思った。まったく、そのパワーとあの爆発に耐えられる頑丈さを生かさない理由はねえだろう?ツッコミでこれだからな。」

 

 急いで戻ってきたアザゼル先生は荒い息とでっかいたんこぶをさすりながら身を持って部長の修行の必要性を示してくれた。

 

 なんてパワーだ。

 

「後ギャスパー。神器の制御はそうだが・・・あいつは未知の力が多すぎる。天道が主にさせるらしい。俺も研究がてらじっくり付き合ってやる。ついでにジ―ク、お前も来い。」

 

「へっ・・・ぼぼぼぼ・・・僕がイッセ―先輩の師匠に教えてもらうのですか?」

 

「クロックアップ。それを覚えさせたいらしいぜ・・・。お前なら生身でそれができると。」

 

「がっ・・・がんばります!!」

 

 ギャー助は段ボールからこもりながらもいう。

 

「・・・だが、こいつもやるな。血を吸われている事に今更気付いた。」

 

 ヴァ―リは驚きながら肩を指す。

 

 そこには・・・ギャー助が変化した一匹のコウモリと・・・サガ―クと体の一部が変化したコウモリが噛みついているだと!?

 

「・・・うむ。やはり最高級の燻製、そこにチーズなどの乳製品のようなおいしさがある。」

 

「そうですね。ああ・・・さらに力が湧いてきます!!」

 

 軽く飲んだ後、サガ―クがギャー助の所に戻って感想を言い合う。

 

 そう言えば、こいつ・・・相手に気付かれずに血を吸う技を身につけやがった。しかも・・・アギトの本能すら気付くのに時間がかかるほどのレベルで。

 

「こっ・・・こやつ・・・。二天龍を餌にしているというのか!?」

 

 アルビオンまで戦慄している。

 

「赤いの・・・気をつけろ。こいつは我らの天敵になりえる。」

 

『・・・・・・・。』

 

 ドラゴンキラー、いやドラゴンイ―タ―、アギトイーターのギャー助の誕生ですか?

 

「ははは・・・まあ、私も、ネロ君もやられましたよ。」

 

 アーシアは苦笑している。

 

「でも・・・飲む量は一日一人、四人、ローテーションにする。飲む量は百ミリグラムなら問題ないから。」

 

「・・・逃げることはできるのか?」

 

「やれたらやっている。こいつ・・・俺達まで停めるようになりやがった。目隠ししても止める事ができる。」

 

「・・・なんか、神器の特性を逸脱し始めているな。本当に退屈しない。」

 

 ヴァ―リの指摘に対してネロは溜息。

 

 ちなみにアーシアの血は喉越しすっきりでなおかつ甘く、逆にネロは炭酸のような刺激があって、なおかつ・・・美味しいビールのような苦さがあると。

 

 どんな味だ?

 

「まあ、覚悟してくれ。この夏、お前達をさらに魔改造してくれる!!お前達ははっきり言って現時点でも化け物だが、それでまだまだ原石と言うのだからこっちもやり甲斐があるってもんだ!!お前達はここからさらに上にいく。その手伝いをやらせてくれ。巧を助けてくれた礼代わりになるかどうか分からんが。」

 

・・・このラスボス先生って、義理固い。

 

「後・・・、キリエ、例の件はどうなっている?」

 

「ええ。パートタイマーの神様は順調ですよ。」

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?』

 

 キリエさんの報告を理解するのに俺達はかなりの間が必要となった。

 

 パートタイマーの神様!?

 

「はははは・・・まあ神様代理ということで本人はパートタイム勤務みたいな形でやっているのよ。」

 

「・・・ああ。時代も変わったねえ。まさか神としての仕事がパートタイム制になるなんてよお・・・。長生きするもんだわ。いやほんと。」

 

 アザゼル先生がすごく遠い目をしている。

 

 誰なんです?パートタイムで神様をやっている方は!?

 

「そう言えば・・・まどかさんって最近パートタイムでの仕事を始めたよね?」

 

 渡がある事を言い出す。

 

 そうだった。母さん、パートで働きだすと。

 

 もっとも、食事当番や家事は分担しているので全然問題はない。

 

 でもどうしていきなりパートを始めたのだろう?

 

 そして、どうして渡はそこで母さんがパートを始めた事を上げたの?

 

「そう・・・か。これはもう決定的ね。」

 

 ため息をつく部長。

 

「・・・気をしっかり持ってくださいリアスさん。僕も確信したところです。」

 

「渡君・・・ありがとう。」

 

「まあ・・・後で聞きに行こうや。俺もその領域に至ったというわけで。アーシアちゃん紹介を頼むわ。」

 

 あれ?渡と部長、そしてネロは揃って溜息をつく。

 

「安心しろ。俺も気付いた。」

 

「同じく。はあ・・・あの家はもうすごい。何が飛び出してくるのか想像もできん。」

 

 そこに・・・あれ?ハルトに鋼兄まで加わった。

 

「私・・・イッセ―の化け物じみた力の根源を知ることになるのね。」

 

 部長もまた遠い目をしている。

 

 こんな感じで俺達は夏休みを迎えようとしていた。

 

 だが、その前にとんでもない事件が起きるなんて誰が思ったか。

 

 

 

 

 




 皆さま・・・この後、夏休みの前にある事件を起こします。

 オリジナルです。

 前々からリクエストがあった分です。さて・・・かなりのカオスになります。


 

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