赤龍帝の幼なじみ達   作:THIS

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お待たせしました。まだデジモンの方は時間がかかりますが一週間後には投稿するようにします。


 まずはこっちのほうから。

 ミカエルさん・・・大変な目に会います。


聖なる剣と二天龍大喧嘩です。

SIDE イッセ―

 

 俺は朱乃さんに呼び出されてある神社にやってきていた。

 

 この神社は朱乃さんが管理しており。悪魔でも入れるようにしている物らしい。

 

 アギトも問題ないか。

 

 一応、一緒にいる人達はいないはず。

 

 部長も行きたがっていたが、今回はサーゼクス様との打ち合わせで外せないと。

 

 それでも何故かあとで駆けつけそうな勢いだった。

 

 女王である朱乃さんも行かなくていいのかと聞いたけど、それに関してはグレイフィアさんやユウナがフォローしてくれるから大丈夫だと言っていた。ユウナはあれで秘書的な役割もこなせるらしい。

 

 そこで俺はある方に呼び出されていた。

 

 誰かは内緒にされていたけど・・・鳥居に入った瞬間俺は気付いてしまった。

 

「・・・キリエさんと同じ感じがする。」

 

「あらら?」

 

 清浄なオーラがそこにはあった。

 

「そしてその強さ・・・いるのは。」

 

 振り向くと予想通りの人物が立っていた。

 

 金色の翼を十二枚背負った端正な顔立ちの青年。

 

 豪華な白いローブを纏い頭に輪っかが乗っていた。

 

「熾天使様に呼び出されるなんて光栄と思うべきなのかな?」

 

「・・・流石に驚きましたね。」

 

 俺の発言にその天使は苦笑していた。

 

「流石は神の後継。私がどういう存在がすぐに見抜くとは・・・。」

 

 まあ、近くにキリエさんという分かりやすい実例があるからですけど。

 

 でも・・・それにしてもあまりにも似すぎているのは気のせいだろうか?他の天使に会ったことがないので何とも言えないけど。

 

「なんか・・・知り合いとすごく似たオーラを放っていたので。」

 

「そう・・・ですか。自己紹介を、私はミカエル。貴方の察しの通り熾天使の一人です。まあ、あなたの中にいる赤龍帝に必要ありませんでしたかね?」

 

 神に最も近いとされる天使の一人。

 

――――ほう。懐かしい奴が来たものだな。

 

 それに呼応するようにドライクもデフォルメ化した状態で現れる。

 

「とりあえず握手を。」

 

 こうして俺はチョー大物と会談することとなった。

 

 

 

 

 俺達はミカエルさんと共に本殿に入る。

 

 そこから、俺達にとって少し嫌な感じのするオーラが漂っていた。

 

「・・・聖剣・・・があるのか?」

 

「ふふふ。やはり気付いた。言ったはずですよ?イッセ―君に下手な小細工は無意味ですわ。一緒に考える頭も他の三つもありますし。」

 

―――――その頭って俺達の事か?

 

―――――まあ、良い知恵袋にはなるかな?戦略には自信あるし。

 

―――――そう言ったことは苦手だけど直感には実は自信あり。

 

 まあ・・・こいつらとは一緒にいるのが当たり前って感じの相棒達だし。

 

 それぞれ担当が分かれているのも大きい。

 

 ドライクが戦闘指南なら、クレアが戦略、そしてブランカは鋭い感性と洞察力を持っている。

 

「・・・神が死ぬ間際に外した神器の制限。それがこんな赤龍帝を生み出すとは想像もしませんでした。私達もシステムを調べてみて今初めて判明した事態ですので。でも、それがあなたの様な方でよかった。」

 

 ミカエルさんは胸をなでおろしている。

 

「あなたになら・・・新しい世界を託せます。この聖剣アスカロンは贈り物です。」

 

 えっと、その聖剣を俺にですか?

 

―――――しかもドラゴンスレイヤーか。ククク、面白い物を送ってくれるものだ。

 

――――――あなたは知らないでしょうけど龍殺しの英雄が使っていた一品よ。あなたはドラゴンを初め、多くの猛者を引き寄せるあなたの力になるでしょう。

 

 うむむ・・・龍殺しの英雄の剣か。

 

―――――相棒、もっと勉強しておけ。我らという知恵袋があるとは言え、お前自身ももっとこの世界を知った方がいい。

 

―――知識は力。これまでもドラゴンやそれにまつわる英雄を色々と教えたけど、今後の参考にするために、色々と知ることは神の後継としても大切なことよ。

 

 そう言った意味では冥界での悪魔の勉強に加えて、堕天使、天使達の勉強も必要だな。

 

 堕天使達の勉強は巧やハルトが教えてくれるけど。

 

「あの・・・自分で言うのもなんですけど、俺って相当欲望まみれな男ですよ?」

 

 少なくともエロという欲望ならこの世の誰にも負けない自信があるね!!

 

 そんな俺に期待なんかしていいのですか?神様の跡継ぎとして。

 

「それを含めてです。あなたは新しい世界を作ってくれそうな気がしますので。・・・すでに知っていると思いますが、他の神話勢力のこともあります。日本神話勢力とはうまくやって行けそうですが、他の勢力はそうもいきません。でもあなたが後を継いだら・・・。」

 

 他の神話勢力か・・・。

 

「私としては、他の神話勢力にもイッセ―君の幼馴染共がいることを懸念していますわ。すでに日本神話勢力の二代目荒神がそうですし。」

 

 そこで朱乃さんが憂鬱そうにとんでもない発言をした!?

 

「・・・ある意味好都合といえますが・・・。」

 

「私としてはまだどんな人外どもがいるのか気が気でないくらいで。しかもイッセ―君って交友関係広そうですし。」

 

―――――そうね。幼馴染に該当する連中はまだ何人も知っているわ。

 

―――――あいつらもまさか・・・って思わせる物を持っている。

 

『・・・・・・・。』

 

 相棒二人の言葉にミカエル様と朱乃さんが固まっている。

 

「・・・一つアドバイスを送るのなら、イッセ―君を幼い頃からの友達――つまり幼馴染に該当する連中は人外だと思うべきかと。下手な手出し無用。対応はイッセ―君に任せるのが適当です。」

 

「覚えておきます。あの子達との関係性も知ってこっちもびっくりしたものですし。弦太郎とイリナともねえ。」

 

 その様子だとイリナや弦太郎と、俺の関係も知っているみたいだな。

 

 その前に俺の幼馴染はみな人外って・・・。まさかあいつらもそうだというのか?

 

 ははは・・・まっ、まさかな。

 

 エイジ兄さんやユウスケ兄さん、士さんに弟分のコウタ、マコトとアラタの三人がそうだったりするのか?

 

 俺達を助けてくれた謎の怪物の事もあるし・・・。

 

 他にも該当者がいる・・・。

 

 まっ・・・まさかな・・・ははは・・・そっ・・・そんなことありえないよな!!

 

「イッセ―君。すごい脂汗。」

 

「・・・・・・。」

 

 なんだろう。アギトとしての第六感が極めて嫌な予感を・・・。

 

 あいつらは普通だよな!?そうだよな!?

 

 頼むから俺の予感よ、外れてくれ!!

 

「その話は置いておきましょう。まあ、私達としても、そんなあなたを後継にしたい。それだけの素質も分かっていますので。その力の助けとなるのなら・・・。」

 

 俺の力の制御の助けとなる剣をマジマジと見る俺。

 

 龍殺しのオーラと聖なるオーラ。それがひしひしと感じられますな。

 

「特別な術式は・・・実はどうしようかと悩んだのです。何しろアギトが聖剣を持つという事例はまったくないものですから。」

 

「私も知り合いと頼んで術式を考えていましたけど・・・答えがでないままイッセ―君が来たのです。まあ、私が必要ないと答えてそのままにしていましたし。」

 

 アギトに聖剣か。

 

「こういう時はとりあえず手にとってみれば?」

 

 いきなりブランカが現れて、俺にこの剣を手にするように促す。

 

「アギトに聖剣。その力はきっと一つになれるから。同じ神様の贈り物のドライクだって一つになれた。だから・・・。」

 

「・・・そうだな。」

 

 それも一理ある。

 

神器に宿った相棒とも一心同体みたいなものだし。

 

 ただのアギトとしてじゃなく、ドライクやクレア、ブランカ達に出会えてよかった。

 

 俺一人じゃ、闘い抜けなかった。

 

―――――ふっ・・・お前達と出会えたことこそ、我が人生最大の幸運だというのに。

 

――――あら、イッセ―だけじゃなくて私も含まれるの?

 

―――――・・・今更言わせるな。

 

「おやおや・・・噂には聞いていましたが、本当にドライクが所帯をもつことになるなんて信じられません。」

 

「もうすぐ子供も生まれる。まあ・・・あの時の様なことは起こさんさ。」

 

 ドライクがデフォルメ化した状態で飛び出してきた。

 

「子供まで・・・。また興味深いことで・・・。」

 

「・・・・・・我が子に手を出した時はどうなるかわかっているか?」

 

 おいおい・・・デフォルメ状態でドライクさんが殺気を放っていますよ?

 

 しかも殺気だけで神社の境内全体が震えあがっていますし!?

 

「・・・ッ!?生前のあなたよりもさらに迫力が増しています。精神的にもさらなる成長を遂げたというのですか?あっ・・・安心してください。あなたの逆鱗にふれるような真似は絶対にしませんので!!」

 

 ミカエルさんは必死にドライクをなだめる。

 

「親になるというのはそう言う事だ。生前の時より、心がなぜか強い。白いのも同じ様なことが言えるから気をつけるが良い。」

 

 そうだね。アルビオンもすごい親馬鹿っぷりだったもんね。

 

「肝に銘じておきます。以前は私達三つの勢力が手を取り合ってあなた達を倒せましたが、親となったあなた達を倒せる自信はまったくありません。精神的な何かが別人と言っていいほどに強くなっていますので。」

 

 あの二体を子供関連で同時に怒らせたら・・・世界が滅ぶかも。

 

「単なる親バカの様な・・・うっ!?」

 

 クレアが出てきて呆れ得た声を上げるけど、すぐに苦しそうにお腹を抑える。

 

「おっ・・・おいどうした!?」

 

「うっ・・・生まれる・・・。」

 

『!?』

 

 そこから先は阿鼻驚嘆の大騒ぎでした。

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・本当に貴重な体験をさせてもらいました。まさか二天龍の卵が生まれる瞬間に立ち会う事になるとは・・・。」

 

 ミカエルさんは心底疲れていた。

 

 ドライクも同じ様子だ。

 

 まあ・・・どこか満足そうな様子もあったが。

 

「すまぬな。手伝ってもらって。」

 

「いえ・・・同僚にこう言った事を司る方がいまして、レクチャーを受けていて良かったです。実際に行うのは初めてでしたが、ガブリエルに心の底から感謝したい。こんなに慌てたのは初めてかもしれません。」

 

「・・・・・・私も疲れましたわ。こんなの知識では知っていても初めてですし。しかもドラゴンなんて普通ありません。」

 

 朱乃さん、ミカエルさん。本当にありがとうございます。

 

 卵なのに結構難産でしたので、クレアが苦しそうだったのだ。

 

 こっちは覚えたてのホイミなどで支援することしかできなかった。

 

 ミカエルさんは流石大物。戸惑っていましたけど何とか動いています。

 

 俺も・・・まあ、出来ることは出来たけど。

 

「あなた達はすごいです。普通なら男はうろたえて何も出来ないのに。」

 

 朱乃さんはむしろ呆れかえっている。そんなにすごいのか?俺なんか頭真っ白で痛み止め程度の魔法しか使っていないぞ?

 

「・・・良く頑張った。済まん・・・手を握る事しかできんかった。」

 

「・・・それだけでも十分よ。ありがとう。」

 

 ドライクも必死で声をかけ、手を握っていましたし。

 

「・・・これが卵なんだ。」

 

 ブランカはきらきらした目で卵を見つめている。

 

 生まれた卵は二つだ。

 

「ええ・・・。」

 

「・・・温かい。これが命なんだ・・・。」

 

 そんなやりとりを俺達は微笑みながら見ている。

 

「・・・こんな当たり前の事が・・・実は大切だったりするんだな。」

 

「はい。私も改めて思い知りました。もう・・・争いは起こせませんね。」

 

 ミカエルさんは改めて決意したようだ。

 

「私はこの三勢力会談で和解を提案するつもりです。あちら側もいい話を聞いています。それに何より、あなたという存在がきっかけですでに悪魔と堕天使の交流が始まっていると聞きます。」

 

 その話しを聞いて俺は思わず微笑んだ。

 

「よかった。」

 

 それは目の前で新しい命が生まれる瞬間を見たからこその言葉だった。

 

 まだ卵だけど、この子達を、争いに巻き込みたくない。

 

 サーゼクス様を初め魔王達全員も悪魔の存続のためにもう闘いたくないと言っていますし、アザセルさんに至ってもすでに巧とハルト繋がりで俺達との交流が始まっている。

 

「そんなあなたへの送り物として、受け取ってください。平和の証として。」

 

 俺はもうこの剣を受け取ることに躊躇わなかった。

 

 この剣に託された思いが分かるからだ。

 

「はい。」

 

 そして、俺がその剣を手に取る。その剣は見た目より重い。

 

 だが、この重さが今の俺には大切だった。剣から漏れるオーラも龍殺しの力もすべてを受け止める。

 

 平和をもたらすための剣。

 

「これからよろしくな。相棒。」

 

 そう声をかけた時だった。剣が胎動を始めたのだ。

 

「へっ?」

 

 最初はゆっくり。だが、徐々に速くなり、そしてそれと共に剣に亀裂が入っていく。その亀裂の隙間から光が溢れだす。

 

「こっ・・・これは!?」

 

 そして光の爆発と共に、アスカロンが変わったのだ。

 

 前も十分綺麗な剣だったけど、銀の刀身が朱金へと。

 

 そして鍔元がアギトの角と同じ様な物に・・・。

 

「・・・信じられない。アスカロンが進化したというのですか?」

 

 剣が進化した?

 

「・・・アギトが神の力を持つとは聞いていましたが。その理由が良く分かった気がします。まさか、剣と呼応し、剣が選んだ瞬間にお互いの力に耐えられるようにするなんて。」

 

 ミカエルさんは心底驚いた様子で告げる。

 

「それはもう聖剣アスカロンではありません。強いていうなら神剣アギト・アスカロンというべきでしょうか。」

 

『・・・・・・。』

 

 とんでもないことをやらかしてしまった俺に対して、朱乃さんだけじゃなくドライクやクレアまでもが目を丸くして俺を見ている。

 

 いやいやいや・・・俺自身が一番驚いているんっだって!!

 

「すご~い。さすがイッセ―。」

 

 ブランカだけは直感が当たっただけなので、喜んでいる始末。

 

「今ほど相棒・・・お前の無茶苦茶さを思い知ったことはない。」

 

「龍殺しに神殺しまで加わるか・・・はあ、頼むから卵を産んだ余韻に浸らせてよ。」

 

 ごめんなさいクレアさん。

 

「その代わり・・・この剣を捧げるよ。ドライクとクレアの子供に。ついでにあいつらの子供にも祝福してやろうか。子は宝って父さんが言っていたらしいし。」

 

 俺は騎士の礼にならって剣を掲げる。

 

「二天龍の子に祝福を!!・・・まあ、形だけだけど。」

 

 こういうのは気持ちが大切だって・・・あれ?

 

 何か卵が光輝いて・・・。卵の殻にアギトの紋章が浮かび上がっているぞ!?

 

「・・・どうやら本当に祝福しちゃったようですね。この子達・・・相当恵まれた子になると思います。まさか剣を通じて神のシステムに介入してくるなんて・・・。」

 

 ミカエルさんは微笑みをひきつらせながら説明をしてくれます。

 

 いや・・・その気持ち分かりますわ。驚きすぎてこっちも表情が追いつかない。

 

『・・・・・・。』

 

 俺、どこから驚いて、どのように反応すればいいのかもう分からないし!!

 

 そんなとんでもない事をしたの!?

 

「相棒・・・嬉しいと思う。だが・・・驚きが勝ってなんといえばいいのか・・・。」

 

「私も同じ意見。でも・・・ありがとう。あんたの祝福、良いプレゼントだわ。」

 

 まあ、喜んでくれているしいいか。

 

「効能は・・・ささやかですけど幸運が増えます。この子達の道は幸多いですよ。」

 

『おおぉぉぉ・・・。』

 

 そんなありがたい効果があるのか?

 

 何か神様やっている気がしてきたぞ。

 

 あれ?そうなると、あっちの卵はどうなっているの?

 

 俺・・・二天龍の子って言っちゃったんだぞ!?

 

「ドライクゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」

 

 あれ?天から何かが叫んで突っ込んできた!?

 

 そして、神社の敷地に凄まじい轟音と震動と共に何かが落下したぞ!?

 

 ッて、あれってアルビオン!?

 

 何故か本来の姿であろう、でかく白い龍の姿でやってきたぞ!?

 

「あっ・・・アルビオン!?」

 

「・・・・・・・・。」

 

 これにはさすがに度肝抜かれた。ミカエルさんは辛うじて立っていますけど、朱乃さんなんか流石に腰抜かしていますよ!!

 

「お前・・・うちの子の卵に何をしてくれる!!?何の恨みがあって呪いをかけた!?」

 

 そして、背中に乗っていたヴァ―リが手にしていた卵には・・・ああやっぱりアギトの紋章が・・・。

 

「落ちつけアルビオン!!まだ呪いを決まったわけじゃない。むしろそのアギトの紋章からはそう言った類の力は感じられないって何度も・・・。すまん、アルビオンを抑えきれなかった。まさか自力で元の姿に戻るなんて・・・。」

 

 必死でアルビオンを説得しているヴァ―リ。

 

「・・・ってほう・・・お前もそんな剣を得たのか。」

 

 あいつは俺が手にしているアスカロンを見て笑みを浮かべる。

 

「なら俺も会得したこれを披露しないと・・・おい!!アルビオン落ちつけ!!うおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

 

 だが、暴れまわるアルビオンに振り落とされてしまう。

 

「お前は卵を守っていてくれ。」

 

 非常に怖い声でアルビオンはヴァ―リにそう言う。

 

 アルビオンはそのあたりは分かっているのか?

 

「大丈夫か!?」

 

「ああ・・・まったく、あいつがここまで親馬鹿だったなんて。」

 

 暴れまわるアルビオン。それに呼応する様に別の方から凄まじい怒気が感じられますよ!?

 

「・・・暴れるな。暴れると俺の卵が危険にさらされる。」

 

『って・・・でぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!?』

 

 その暴れっぷりにドライクが建物を突き破りながら自力で元の姿に戻ったぞ!?

 

「・・・二天龍・・・こんな形で再会するなんて・・・。」

 

 あのミカエルさんがガタガタ震えている。

 

 その気持ち分かるモン!!誰だって怒れるドラゴン、それもとんでもない強さが確定している奴らだと怖いから!!

 

 三勢力が力を合わせてようやく倒せた怪物だし!!

 

「こうなったら、生前の喧嘩の再開だ。」

 

「いいだろう!!我が子はやらせんぞ!!」

 

「それはこっちのセリフだ!!」

 

 ちょっと待ってくれ!!二人ともここで喧嘩しないで!!デフォルメ状態ならまだ可愛いけど、本来の姿で喧嘩なんかされちゃ・・・。

 

『グルオォォォォォォォォォ!!』

 

「まずい。二体とも完全にブチ切れている。」

 

 しかも、親となったせいで、色々と生前よりもさらに強くなった状態ですよ!?

 

「ヴァ―リ。なんとか止めるぞ。」

 

「・・・ああ。さすがに互いの相棒が暴れようとするのは止めないと。」

 

 これって、この街最大の危機じゃないのか?

 

 今のこいつらの喧嘩の余波だけで街が壊滅する!!

 

「卵・・・お前達頼むぞ。」

 

 ヴァ―リは卵をベノ達に託す。

 

「ブランカ、クレアを頼む。それとトルネを急いで呼んでくれ。」

 

「わかった。」

 

 クレアはブランカにまかせる。

 

 ヴァ―リの奴が右腕から剣を展開させる。

 

 鍔元が俺と同じアギトの角の形をしている。あっちは白だが。

 

 こいつも剣を?

 

「・・・アギト・ミッドナイトという。元々二振りの剣だったのを俺がアギトの力で融合させてしまってな。親父を真似して普段は俺の右腕にあるってわけさ。」

 

 こいつも俺と同じく剣を・・・。

 

 まあ、それは置いておこうか。まずこの怒れる親馬鹿ドラゴン共を止めるぞ!!

 

「親馬鹿なのは認める。だが、お前とこんな形で共に戦う事になるとは思いもしなかったぞ。・・・・・・これはこれで楽しむことにするよ。」

 

 どんだけお前はバトルマニアなの。

 

 まあ、それでもいい意味で前向きだと思う事にしようか!!

 

「じゃあ、二天龍の強さってやらを体験しに行きますか!!」

 

 俺達が闘う決意を固めた時だった。

 

 アルビオンが口を開き、そこから白い光が集束していく。

 

 アルビオンだけじゃない。ドライクも一緒だ。

 

 ドライクは口に紅い光を集束している。・

 

「って・・・おいおいおいおいおいおいおいおい!!」

 

「ドラゴンのブレス?いや・・・それにしては感じる力が脅威すぎるぞ!?まっ・・・まさかあれを放つというのか!?」

 

 慌てふためく俺達。何しろ集束しているパワーはあまりにも膨大すぎるからだ。

 

 そして、それが何なのかヴァ―リは知っている様子だ。知っていて相当驚いている。

 

「ロッ・・・ロンギヌススマッシャ―を・・・。」

 

 何ですか?その名前は・・・。

 

「ほう・・・お前もその姿でそれが放てるというのか?」

 

「赤いのこそ・・・ふふふふふふ・・・。」

 

『ふははははははははははははははははっ!!』

 

 ドライクの力が倍化していき、アルビオンは周囲の力を半減させながら吸収していく。

 

 この時俺達は知らなかったんだ。

 

 二人はブレスという形で放とうとしていたのは俺達が覇龍となった時に使える二天龍禁断の必殺技であることを。

 

 それは神滅具の名前を取った必殺技。

 

 厖大な龍のオーラを解放させる放出系の必殺技だ。それが・・・。

 

『ロンギヌススマッシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!』

 

 赤と白の光が轟音と共に放たれる。

 

 そのオーラ量はあまりにも膨大。

 

 それのぶつかりあいだけでこの街が焦土に変わるのは必至だった。

 

 だが・・・まさかその必殺技を・・・。

 

「フン!!」

 

 衝突する間に割り込んで同時に防ぐ猛者がこの街にいたなんて誰が思ったか。

 

『・・・・・・。』

 

 それは神々しい白い十二枚の翼を持った鎧を纏いし乙女。

 

「何をしているのですかあなたたちは?」

 

 その名は・・・キリエさん。

 

 みんな別の意味で唖然としている。

 

「・・・・・・あっ、あれを防いだというのか?」

 

「しっ、信じられません。しかも熾天使って・・・あんなことをしでかす熾天使なんて聞いたことがありません!!」

 

 ヴァ―リ、ミカエルさんの順に驚きの声が上がっております。いや・・・キリエさんがどんどんすごい方になっていく。

 

『ロッ、ロンギヌススマッシャ―を防いだだと!?』

 

 ドライクとアルビオンは固まっている。

 

 まあ、それが一発だけなら分かるかもしれない。でも、キリエさんはその間に割り込んで二発同時に止めたのだ。

 

 はっきり言って、神業というレベルすら超越している。

 

「なんとなくですが、あなた達は生前の喧嘩を繰り返そうとしていたのはわかりました。」

 

 キリエさんが手にしていた十字架を頂いた杖を振り上げる。

 

 それと共に・・・ドライクとアルビオンの身体が光の輪のような物で拘束される。

 

「ぬおっ!?なっ・・・なんだこれは!?ぐう・・・半減が効かないだと?」

 

「ぬうううう・・・固い。まさか盾を拘束具に使ってくるなんて。ぬおおおおおぉぉぉ!!」

 

 必死でもがくドライク達。でも、その光の輪は相当頑丈らしくびくともしない。

 

「あなた達・・・。」

 

頭上に黒い影が入る。

 

「少し頭を・・・・冷やそうか?」

 

 その影の正体は二枚の超巨大な十字架が書かれた盾。その大きさは学校のクランドどころか学校の敷地全体位の超巨大な盾だ。盾の厚みだけで学校の校舎の横幅くらいはあるぞ。

 

『げっ!?がばっ!?』

 

 それがドライクとアルビオンに直撃。

 

 轟音と共にそのまま押し潰したのだ。

 

『きゅ~う。』

 

 二人ともその一撃に気絶してしまっている。

 

「・・・コカビエルがこの街は危険だといった理由がよく分かった。ここまで猛者がひしめきあっているのなら、絶対に退屈しないね。」

 

「ええ・・・。ここまで常識を破壊する様なことが連続で起きると流石に・・・。二天龍は三勢力が協力してようやく討てた相手なのに・・・それを単独で止めるなんて。」

 

 ヴァ―リとミカエルさんの言葉の通りだ。いや~キリエさん・・・すげえ。

 

 それと可笑しいな。何時からこの街ってこんな人外魔境になったのだろう!?

 

 二天龍が暴れ、それを止める天使がいるなんて・・・頭が可笑しくなったかな?

 

 

 

 

「全くあなた達は!!イッセ―君がかけてくれた祝福の効果で私がすぐに駈けつけられたから良かったものを!!子供達まで危険だったのですよ。」

 

『ずーん。』

 

 子供達を自分自身が危険に陥れてしまった。キリエさんの説教を受け、その事実に気付いて大いにへこんでいるデフォルメ状態の二天龍達。

 

 なんか可愛いな。

 

 それとキリエさん、ついに二天龍を叱りつける立場になりましたか。

 

「・・・俺達・・・今度絶対に喧嘩しないと誓おう。取り返しのつかない事が起こる前に。」

 

「ああ・・・。子は宝だ。我らが互いに子を傷つけてしまったら、本当の意味で歯止めが効かなくなる。」

 

 二体とも・・・流石に可愛い子供を危険にさらして喧嘩をするつもりはすっかり失せたようすだ。

 

「問題は神器内のあいつらか。」

 

「何とか説得しないと、せっかくの我らの幸せが・・・。」

 

 むしろ相当ショックだったんだろうな。今後の対応を話し合っています。

 

「・・・そこまで悔いているのならまあ・・・大丈夫ですね。なんだかんだ言って子供が出来た事で自重するようになって助かりました。」

 

「いや、ありがとうね。こっちはこっちで何とか守れたけど。」

 

「まさか自力で生前の姿に戻るなんて流石に予想できなかったわ。それと卵おめでとう。」

 

 クレアとベノさんは落ち込んでいる互いの夫に軽く呆れつつ卵を産んだことを祝福している。

 

「それと・・・祝福ありがとうね。その幸運のおかげか大事に至らずにすんだわ。」

 

「本当に申し訳ない!!感謝こそすれ、怒るのはさすがに道理として間違っていた!」

 

 ベノさんは俺のアギトの紋章が書かれた卵を見て微笑み、アルビオンが土下座をして謝っている。

 

 いや、白龍皇に土下座の謝罪を受ける日が来るなんて・・・。

 

「そうか。ならこっちも同じ様な形で返礼しないとな。お前に出来て俺に出来ない道理もない。」

 

 ヴァ―リがその光景に呆れつつ、右腕の剣を掲げる。

 

「二天龍の子にアギトの加護を!!」

 

 その言葉と共に四つの卵に、今度はヴァ―リのアギトの紋章が!?

 

「俺はこの子達の健康を守ることにした。運に健やかな体。あとは健やかな心を育めばあれば真っ直ぐに育つだろうな。」

 

「・・・ヴァ―リ、感謝する。」

 

「こちらからもお礼を言わせてもらいたいわ。」

 

 何か相棒達の子がどんどんすごい事になっていく。

 

「・・・なあ。赤いの。あとでゆっくりと語り合いたい。父親として我らがこれからどうあるべきなのか考えないといけないようだ。」

 

「わかった。なら、相棒の家に来い。ヤマタやオ―フィスがいるからあそこが色々な意味で最適だ。あいつらが良い仲介役になる。」

 

「・・・お前の家は一体どうなっている?」

 

「それについてはもう考えるのは諦めた。だが、あそこではうまい酒が飲めるぞ。」

 

「ほう・・・美食家であるお前がうまいというのだから、相当だな。いいだろう、今晩あたりに・・・。」

 

『・・・・・・。』

 

 そして、積極的に交流を始めた!?

 

「まあ、私と弟分たちもお邪魔するわ。そこで久々に勝負もしない?」

 

「いいわね。ならブランカがゲームにはまっているからそれを一緒にしようじゃないの。」

 

 今夜はドラゴンづくしの宴になりそうだ。まさか本当に二天龍が共に酒を酌み交わす日が来るなんて・・・。

 

「若様!!」

 

 そんなヴァ―リの傍に二人の男が現れる。

 

「大丈夫でしたか?」

 

 二人とも黒いスーツ姿。

 

一人は銀色のポニーテールをした男。顔つきは静観で、生真面目さがにじみ出ている。

 

 もう一人はまるで剣先のように固めた銀色の髪をしている。

 

 顔つきは刃の様に鋭く、眼は糸目。それでいて意地悪そうな笑みが似合う男だった。

 

「シグマにフェンブレンか。すまない心配をかけた。」

 

「そりゃワシだって驚きましたよ。いきなりアルビオンが巨大な龍になって若様を背に乗せたまま飛び去ったのですから。ハドラ―様ですら「一体何が起きた!?ヴァ―リは!?」唖然茫然としていた有様で。」

 

「流石の親父もそりゃ驚くか。」

 

 ヴァ―リはため息つきながら神器を発動。翼を出現させて宙に浮いた。

 

「こちらの相棒が迷惑かけた。いずれ詫びを入れたい。」

 

「いえいえ・・・本当に色々な意味で貴重な体験になりましたので。」

 

「はっ・・・はい・・・。怖かったです。」

 

 朱乃さんは座り込んだままカタカタと体を震わせている。

 

 あれが一般人の反応なんだろうな。

 

「まったく、また喧嘩をするのなら私は全力で止めますからね。」

 

「・・・しかし、世界は広いな。貴方の様な猛者がまだ隠れていたとは。まあ・・・あなたの力の性質上、闘争は好まないという点はいささか残念―――それでもいつかあなたの神すら超えるであろう守りに挑戦させてもらいたい。」

 

「私はそんなに強くないわ。ただ、守りたいだけなの。」

 

 そう言いながらキリエさんは禁手化を解除する。

 

「フッ・・・あなたの強力な守りの力、それを制圧力という形で攻撃力に変えているというのに・・・。これは本当に猛者だな。」

 

「・・・・・・・・。」

 

 一方、ミカエルさんはキリエさんの素顔を見て、固まっている。

 

 眼を見開き、その姿をじっと見ているのだ。

 

「・・・・・・クッ・・・クリスティ?」

 

 そして、その名を呟いた。

 

「えっ?どうしてあなたが・・・。」

 

 キリエさんは驚く。

 

「私の母の名前を?」

 

「・・・・・・・・・・・・・。」

 

 その言葉にさらにミカエルさんは固まる。

 

「まっ・・・まさかあなたはクリスティの娘だというのですか!?」

 

「はい。キリエといいます。兄もいますよ。」

 

「・・・・・・・・・キッ・・・キリエ・・・。」

 

 あれ?ミカエルさんが凄まじいショックを受けている。

 

「あの・・・もしかして、私の母の事を知っているのですか?母は私が幼い頃に無くなってしまい、父親も誰か分からない状態で・・・。まるで天使の様な素晴らしい方だったとは聞いていましたが。よければ話を・・・。」

 

「・・・・・・・・てっ・・・天使のような・・・ちっ・・・父親。」

 

 気を失いそうにふらつくミカエルさん。

 

 二天龍との遭遇にも気丈に立ち続けたあの方が気を失いそうになるほどの動揺って一体何があったの!?

 

「こっ、これは確認しないといけませんね。」

 

 何とか踏ん張ったみたいですけど。

 

「あっ・・・あの、そう言えば頼みたい事が。」

 

 俺は一つ頼みたい事があった事を思い出した。でも、さすがに今回は無理だろうなと何となくだけど思っていたんだ。

 

 何しろ、ミカエルさんの動揺が半端ではなかったからだ。

 

「すみません、急用ができました。その要件に関しては三勢力会談で聞きます。私用で申し訳ございません。では・・・――さやかさん、杏さん、大至急調べてもらいたい事が・・・。」

 

 スマホで急いで誰かに連絡取りながらその場から消えて行ったミカエルさん。

 

「ではな、兵藤一誠。また今夜そっちの家にお邪魔する。」

 

 えっ?ヴァ―リも来るの?

 

「相棒が行くというのだ。俺も行くべきだろう。」

 

 こいつ、律義だな。

 

「・・・・・・ならお前の好きな食べ物は何だ?アルビオンとベノ、あとその弟分達の分もだ。」

 

「・・・なるほど。作ってくれるのか?親父とアザゼルが称賛したお前の料理を。」

 

「ああ・・・堪能させてやる。嫌いな食べ物でもいいぜ?その嫌いな理由も教えてもらえれば、それを大好物に変えてやる。」

 

 だったら、こっちももてなしてやるよ。

 

「楽しみにしている。後・・・そっちの奴を運んでやれ。気を失わなっただけでも相当気丈だが、腰が抜けて立てない見たいだぞ。」

 

 へっ?あらら・・・朱乃さんが座り込んだままだ。

 

「はっ・・・恥ずかしいです。」

 

 

 

 




さて・・・あまりにもくだらない駒王町最大の危機はどうでしたか?

 二天龍喧嘩未遂事件、それを単独で止め、制圧しえ見せた天使さん。


 ミカエルさんはどうして焦ったのか、それはこの章の終りで明らかにします。


 後一話投稿します。

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