赤龍帝の幼なじみ達   作:THIS

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 ギャスパーの特訓編。

 原作と違ってスペシャリストぞろいです。


憧れの先輩たちです。

 そこから俺達によるギャスパーの特訓計画を練ることになった。

 

 ギャスパーの持っている神器、「停止世界の邪眼」。

 

 それを使いこなすためにだ。

 

「巧、早速だがお前の親父を頼らせてもらうぞ。」

 

 その際に鋼兄はそんな事を言いだしてきた。

 

 特訓と言えばこのメンツでいえば鋼兄が専門家だ。部長もその点は認めている。そして、そのための大前提を行ってきた。

 

「ちょっとどうしていきなり・・・。」

 

「神器の知識が必要だ。修行の大前提が己を知る事。幸いなことに色々な経緯があって、俺達にはアザゼルへのコネクションがある。そのためにアドバイスが欲しい。」

 

「はあ・・・まさか堕天使の総督を頼る日が来るなんて。」

 

 部長はあまり乗り気ではないが、否定する事も出来ない様子でもあった。

 

「はっ・・・はいいぃぃぃぃぃぃ!!」

 

 腕組みをした鋼兄の迫力にびっくりしているキャスパー。

 

 隣では匙もいる。あいつにも今回付き合ってもらっているのだ。

 

「とにかく走りまわらせるのはだめだという事か?」

 

「当たり前でしょう。」

 

 デュランダルを手にしていたゼノヴィアだ。それで追い回して根性つけさせようと試みていたのをドついて止めたのも鋼兄だ。

 

 ハリセンで人が数百メートルも吹っ飛ぶのは初めて見たぜ。

 

 それを受けて平然と戻ってくるゼノヴィアもおかしいけど。

 

「私達・・・もうあの頃には戻れないと思うべき。」

 

 小猫ちゃん。あの頃っていつの頃よ。遠い目をして懐かしまないで!!

 

「いや~うち姉が迷惑を。」

 

 良太郎が何度も謝っているけど。

 

「そのためにもまずは精神的な部分だな。そのための座禅だ。まあ・・・仙術の修行で小猫にやらせているあれと似たような物だが。」

 

「・・・・・・。」

 

「いや、悪くない修行だと思うぜ。足りないモノをすぐに見抜くなんて、お前さんトレーナーとしての才能があるぜ。是非機会があったら、グレゴリの連中も鍛えて欲しいところだぜ。」

 

 ッて、いつの間にか件のアザゼルさんが来ましたよ!!?

 

「流石に冥界一のトレーナーであるあの方には敵わないがな。」

 

「ああ・・・。グレゴリとしてもあの方は是非欲しい逸材だ。ったく、魔王連中もいい人材に眼をつけやがったもんだ。あれで悪魔サイドには屈強な軍隊ができたらしいからな。まあ、そう言う意味でも今回の会談は円満に進めたいもんだ。色々と交流したい。」

 

「俺もそれを期待している。」

 

「実は鬼になる術も興味あったりだが、あれって相当な修行が前提なんだろ?」

 

「その通り。言うは易しだが、なるのは大変だぞ?そして、そのための維持もな。」

 

「だが、神器の制御のための一つの方法としては悪くないと考えている。」

 

「面白いことをいうものだ。でも、そうかもしれないな。神器持ちが鬼になれるか試してみるか。妖怪でも悪魔でも変身できることはすでに実証された。小猫ももうすぐだ。夏休みには変身できそうだ。」

 

「おいおい。あのバアル家の大王が鬼になったことで冥界中大騒ぎになっているぜ?元々強かったパワーが十倍増って偉い事になったしな。そう言えばあいつはお前さんの盟友だったか。」

 

 あれ?鋼兄とアザゼルさんが詳しく話しこんでいるぞ。

 

 なんか意外な組み合わせだ。

 

「お前らには返しても返しきれない借りがある。手を貸してやるよ。」

 

「親父・・・。」

 

 巧の件、相当感謝されていますな。だが・・・俺はただ友達を助けたいと思っただけなのに。

 

「まあ、お前達はただ友達を助けた感覚なんだろうがな。その恩に応える意味ではお前さんはすでに俺にとっても身内と扱う事にしたぜ。」

 

 身内・・・。堕天使総督の身内になるって相当心強いですな。

 

「それに、少し気になる者もな・・・。」

 

 アザゼルの視線の先には黒いサガ―クと謎の白いカマキリがあった。

 

「なあ、ポルム。あの二体を解析できるか?」

 

「ファンガイアの王族一同に許可をもらった後でよければね。その点の分別を持つことがこの神器と付き合うコツだよ。」

 

 ポルムの神器ってすげえな。あれも解析可能か。

 

 もしかして神器もできたりして。

 

―――――・・・・・・。

 

 あれ?俺の中のドラゴン共が何故かポルムを警戒している。

 

――――何で今までその危険性に気付かなかったのかしら。

 

――――あの神器は謎の多い番外扱いの神器だ。可笑しくも無いか。

 

―――――私は出来ると見ている。そして、禁手化になったら・・・。

 

 あの神器になんの危険性を感じとっているのだ?

 

「あらら・・・はあ。何でこう聡い人が多いのやら。ねえ・・・アーシアちゃん?」

 

「はあ・・・、安心してください。分別はきちんと分かっていますので。」

 

―――この子・・・できるわね。そして、それは肯定と見ていいわね。

 

「少なくともあなたの力を使うときは許可をもらいます。それが筋かと。」

 

―――――そうか。それがお前なりのけじめか。

 

 そのやりとりを聞いていたアザゼルさんは笑みをひきつらせていた。

 

「本当に恐ろしい連中だな、ポルムよ。あとすまねえな。今回は俺の失言だ。それで、渡君はどうだ?あの件でお前さんにも大きすぎる借りもある。悪いようにはしないが・・・。」

 

「あ~そうだね。最高機密ではあるからまだ答えは出せないという形でいいかな。」

 

 その頃アザゼルの提案に対して、渡はその件は保留としたようだ。

 

「そうそう。まずそこの坊主の持っている黒い龍脈で力を吸い出しな。それで暴走の危険はなくなるはずだから。」

 

 アザゼルはその上で早速のアドバイス。

 

「・・・そんなことができんのかよ?」

 

「ああ。その力の吸い出しはリヴァイアサンの神器の収集の足しにもなる。いい力のはずだぜ?」

 

「・・・なるほど。これは面白い事になったぜ。」

 

「正しい使い方を教えるのは研究者としてもやぶさかでも無いんだわ。だが、そう考えると、お前さんの二つの神器も相性抜群だな。」

 

 匙の二つの神器が相性抜群だと?

 

「そして・・・お前の血を飲んでみるのがいいだろうな。」

 

 その上でアザゼルはもう一つのアドバイスを送ってくれた。

 

 それが俺の血を飲ませるという事だ。

 

「ドラゴンの血だからな。だが・・・不確定要素としてアギトとしての神性がある。吸血鬼が血を媒介にして、そしてファンガイアがライフエナジーという形で神性の因子をドラゴンの因子と共に取り込んだらどうなるのか想像もつかない。まあ、神性の因子を取り込んで復活するような力があったら面白くもあるが・・・。そんなのとりこんでいるわけないわな!・・・あの神の名前を取った神器であってもな。」

 

 えっと・・・俺の血を飲ませるってそんなに危険なのですか?

 

「お前って本当に色々な意味ですごい奴だな。」

 

「ははは・・・はあ。本当に。」

 

 そんな感じで修行を続ける。

 

 

 

 

 まあ、そんなアドバイスと的確な修行の成果もあったのだろう。ある程度だけど神器の制御に成功している。

 

 四回に一回程度は狙った物を止められるようになったのだ。

 

「すっ・・・すごいです!!」

 

「まだまだここからだ。」

 

 あと、重度の引き込もあり出会った精神面も少しずつ改善してきているのも大きい。

 

 メンタル面の修行から入るべきだという鋼兄の方針は正解だったのだ。

 

 だが、一つ大きな失敗があった。

 

 俺の悪魔の仕事を手伝わせたのだが、その際にものすごい濃い人に会ってしまい、ギャスパーは力を暴走させてしまい、ひきこもりが再発してしまったのだ。

 

 皆がどうしたものか考えている中、

 

「しまったわね、」

 

 部長が部屋の前でため息をついている。

 

「・・・・・・リアス部長。報告は聞いています。どうしてあの子がこうなったのか理解しています。」

 

「ええ・・・あなたの弟を勝手に眷属にしたことは悪いとは思っているけど。」

 

「いいえ、前にもいいましたが、兄も、そして僕も弟の命を助けてくれたことに感謝しているのです。ギャスパーの命・・・改めて助けてくれてありがとうございます。」

 

 二人の会話の内容は・・・ある意味俺の、正確には俺達の想像通り家、それを少し超える内容だった。

 

「やっぱ、キャスパーって渡の身内か?」

 

 俺達はあえて堂々と部屋に入ってくる。

 

「やっぱり、勘づいていたか。」

 

「まあ、カ―ミラやキバットを知っているのならわかるものよ。あの子は確かに渡達の家族なの。」

 

 部長の言葉に対して、渡が立ち上がる。

 

「僕がこの街にやってきた理由でもある。生き別れの弟を探すというね。」

 

『弟!?』

 

 流石に弟というのは予想外だった。

 

「ギャスパーはファンガイアの第三王子なの。私・・・あの時とんでもない子を眷属にしたのよね。」

 

「正確には代理出産というべきかな。母・・・まあ、ファンガイアの先代クイーンがあるヴァンパイアと人間の子供を魔術で代わりに身ごもった。その際・・・魔術の影響か母さんの血まで受け継いでしまって、人間とヴァンパイア、そしてファンガイアのトライアングルとなったんだ。」

 

 代理出産。

 

「どうしてそんな事をする必要があったのか不明。でも・・・母さんは会いたがっていたし、僕達もずっと探していた。でも・・・。」

 

 渡の探していた弟だったのか。それなら・・・あのサガ―クって奴をギャスパーが従えていたのも納得だ。王族だからこそ・・・。

 

「本当はすぐに兄だと名乗りでたいけど、その前にまず・・・あの子に当たり前の幸せを知ってほしい。何でひきこもりになったかも、理由は知っているから。」

 

 渡の言葉の最期の方にわずかだが、怒りがこもっている。

 

「・・・元気出して、渡。」

 

 そこに現れたのはオ―フィスだった。彼女がここに現れるのは少し意外だった。

 

「私はずっと一緒にいた。渡がもう一人の家族をどれだけ探していたのか知っている。調べて行く中で、弟が受けた仕打ちにどれだけ怒っていたのかも。」

 

『・・・・・・・。』

 

 話を聞くに、家から追われ、ヴァンパイアハンター達に追いまわされる日々を過ごしていたらしい。

 

 そのヴァンパイアハンターによって殺されたところを部長が助けたと。

 

 そんなとんでもないことをしでかしたヴァンパイアハンターの組織の末路だが、すでにファンガイアの某王様より死刑の判決を下され、壊滅どころか、この世界から完全に消滅させられている。

 

 その怒りの凄まじさ・・・すでに全世界に轟いている。

 

 ヴァンパイアの専売特許だったはずの串刺し公の名を拝命したほどに。

 

 本来ならギャスパーをいじめた連中にも乗り込む勢いだった。実際、一度キャスパーの実家に殴り込みをかけ、兄弟二人で大暴れをしたらしい。

 

 そのため、二人は吸血鬼達から大変恐れられている。

 

 正直この話を聞いて、俺は渡を見直した。

 

「お前・・・すごく熱いところあったんだな。」

 

「よしてくれ。あの子のためになっていない。」

 

 それでもこいつはまだ会ったことのなかった弟のためにそこまで怒った。

 

「しゃあねえな。」

 

「ああ・・・。」

 

 俺達が動かない理由はなかった。

 

「もちろん、弟を他人任せにするつもりはないけどね。」

 

 渡もまたバイオリンを手にしていた。

 

 やっぱりこいつ・・・精神的には誰よりもタフだ。

 

 さあ・・・一つ乗り込みますか!!

 

 

 

 SIDE ギャスパー

 

 外は怖い。

 

 ずっと閉じ込められていたのに、いきなり追い出され、怖い人達に追いまわされ・・・。

 

 親兄弟からは苛められ、人間達には化け物と言われた。

 

 そして、僕は殺された。

 

 散々苦しい目に・・・酷い目にあわされてだ。

 

 この眼の力のせいで・・・・。

 

 どうして僕はこんな力をもったの?こんな力・・・いらないのに!!

 

 どうしてなの?

 

 外は怖い。

 

 出てみたけど、僕の力でまた人を傷つけてしまった。

 

 僕なんていなくなれば・・・。

 

 そんな時だった。

 

 扉の外から不思議なバイオリンの音が聞こえてきた。

 

 この音は最近聞こえるようになっていた。

 

 僕の心を慰めてくれるような温かい音色。もしかして、イッセ―先輩達の中にいるのだろか?

 

 心が安らぐ。

 

「よお・・・俺達はお前が出てくるまで一歩も動かない事にしたぜ。」

 

 扉の向こうから声が聞こえてきたのだ。

 

「俺ってバカだからさ、こんなことしかできないんだわ。呆れてくれていい。」

 

 あれは・・・イッセ―先輩だった。

 

「一方的な話になるが、まあ聞いてくれや。俺ってさ、相棒達とは長い付き合いだが、本格的にアギトの力が目覚めたのはつい最近なんだ。こんな怪物みたいな力に目覚める前は一応・・・普通の高校生活を送っていたんだぜ?」

 

 それを聞いて僕は流石に驚いた。

 

 アギトの話と、その活躍は僕も知っている。

 

「ドラゴンの力、そしてどんどん進化していく俺のアギト。正直怖いんだわ。このまま俺は何処まで行ってしまうのか、まったく先が見えねえ。俺が俺でいられるのかもわからねえんだからな。それでも・・・俺は前に進むことにしてんだわ。」

 

「どうして・・・ですか?」

 

 僕は思わず聞いてしまった。

 

「部長達のため・・・かな?ずっと昔、俺の初めての変身した時の気持ちを今でも俺は忘れていねえ。あの時もみんなを守りたい・・・みんなのために何かしたい、そんな気持ちで戦っている。今のそれは変わらねえ。」

 

 みんなのために戦う?そんな事のために。

 

「もう一度言っておくが、俺は馬鹿だ。あまり難しいことは考えているわけじゃない。だが、部長や木場の奴も辛い何かを抱えていた。そして、それはおそらく他の眷属の面々も同じだろう。部長の辛い顔なんかは特に応えたよな・・・。あんな顔、もう二度と見たくない。」

 

 僕は先輩の話を聞いて何となく分かってしまった。

 

 いろいろな話に出てくる英雄(ヒーロー)がいるのならそれはきっと先輩みたいな人の事を言うのだろうと。

 

「俺のせいで一度死なせてしまったダチもいる。そいつも俺に負けない馬鹿だったぜ。残り少なかった命を俺のために使いやがって。助かったから良かったけど、今でも申し訳なさと怒りを感じているぜ・・・他でもない自分自身に。」

 

 その悔しさや辛さを飲み込んで、前に進んでいる。

 

「そんな中、俺は一つの目標ができたんだわ。それが・・・神になりたいってな。」

 

 先輩はとんでもない目標を持っていた。

 

「まあ、元々ハーレムを作りたいって欲望まみれた夢から始まったんだわ。だが、ある事件をきっかけにして、俺はこの理不尽な何かを変えてみたいとも思っていた。だからこそ俺は神になる。ハーレムを作って自分も幸せになって、他のみんなもついでになるが幸せにしてやると。」

 

―――――・・・我が相棒ながら何と欲にまみれた夢。

 

「お前の力・・・俺は正直うらやましいところがあるぜ?」

 

「――――――っ!?」

 

 何でこんな力がうらやましいの?

 

「だって、それが使えれば、いやらしいこと、やりたい放題じゃん!!いや、この学校中の女子達にやりたい放題。がばっ!?」

 

――――それは私が許さず。小猫ちゃんの代わりに私が止める。

 

 そこに黒い龍みたいなモノが現れて先輩をどついて、すぐに姿を消す。

 

 そんな間抜けな光景に・・・。

 

「ブランカ・・・いいタイミングでツッコミ入れやがって。」

 

「・・・・・プッ。」

 

 僕は思わず笑ってしまった。

 

「やっと笑いやがったな。」

 

 そして、そのあと見せた先輩の笑顔を見て分かる。

 

「・・・先輩って優しいですね。」

 

「おう。神様になるんだ。これくらいできないとな。」

 

―――――神になるか、契約者としてこれほど高い目標を持つことを誇りに思う。

 

「アギトの力は怖い。でもせっかく持って生まれた力なんだ。どうせならそれを生かして、もっとでかい事を成し遂げても面白いじゃねえか?」

 

 その一言は僕にとってあまりに衝撃的な言葉だった。

 

 僕にとってこの力は呪いに等しい。おそらく先輩の力は僕の力よりも遥かに大きな呪いと言っていい力を有している。

 

 それなのに、それすら受け入れて前に進もうとしている。

 

「僕にも・・・できるでしょうか?あの時も何もしなかった僕が・・・。」

 

 ライザ―の一件。僕は動かなかった。いや・・・動けなかったんだ。

 

 外に出るのが怖くて・・・。

 

「それに関しては仕方ねえさ。大事なのは今からどうするかだ。」

 

 イッセ―先輩は俺の頭を撫でるながら瞳を覗き込んでくる。

 

「だが、今回ばかりはアギトでよかったと思うぜ。お前の力の暴走も俺には効かねえし。」

 

 そうだった。イッセ―先輩には僕の力の暴走は通用しない。

 

 暴走した力程度じゃ、イッセ―先輩を止めることはない。その事実だけでもどれだけ安心できるのか。

 

「だから安心しろ。俺の幼馴染の連中も含めて色々と可笑しいメンツには慣れている。そんな俺がお前を嫌う事は決してないぜ。」

 

 その上で、とんでもないことを平然と言ってくる。

 

「むしろ俺を止めることができるようになれ。そうしたらお前も神器を使いこなした事になる。それに、制御方法として俺の血を飲むって言う選択もあるぜ?どうだ・・・ドラゴンに神の因子とやらが含まれるらしいが、飲んでみるか?」

 

 えっと・・・そんなとんでもない血を飲んだらどうなってしまうのでしょうか?

 

「流石に・・・色々な意味で怖いので保留させてください。」

 

 なんか、吸血鬼が飲むにはあまりにぜいたくすぎる血の様な気がします。元々血を飲むのは好まないですし。

 

「まあ・・・そう言った意味でお前も力を貸してくれ。さっき言った大それた目標も俺一人じゃ無理だからさ。部長を支えたいし、俺の夢を叶えたい。でも、それは一人じゃ絶対にできないんだ。アギトとして覚醒してからも、それを何度も思い知らされた。どんなにでかい力をもっても・・・一人じゃできることはあまりねえ。最期は人の和で解決したみたいなもんだ、みんなが一つの目標に必死になり、その必死さをうまく合わせてそれが結果として奇跡のような成果を出しただけだし。」

 

 僕は先輩と話して驚かされることばかりだった。

 

 あれだけの力を持ったうえで一人で出来ることはあまりないと断言したのだから。

 

「下手な神様の奇跡何かよりも価値があると思っているぜ。なあ・・・お前ら?」

 

 その言葉と共に・・・何と木場先輩に加え、イッセ―先輩の幼馴染の面々がいます。

 

「ったく、恥ずかしい話を黙って聞きやがって。」

 

「今さらだろうが、はあ・・・まあ俺じゃ苛立って乱暴にしてしまうから、面倒見のいいお前に先陣を切らせただけだぜ。」

 

 ネロ先輩は待っていたのか僕の方を見る。

 

「正直お前を見るとイライラする。だが、まだお前に見込みがある。こうやって外に出てきたんだ。だから・・・あまりがっかりさせるなよ?」

 

 この後、僕はネロ先輩の経歴を知ってそう言った言葉の意味を知ることになります。

 

 ネロ先輩も僕と同じ混血。悪魔と人間の。それ故に周囲から孤立していた事も。

 

 似た部分があるからこそ・・・こうやってイライラしてくれている事も。

 

「お前もずいぶんストレートになってきたな。まあ・・・それでも希望はあるものさ。ネロもそして俺もな。その希望は一人じゃ決して掴めない。それだけは忘れないれくれ。」

 

 そんなネロ先輩に続いて、今度はハルト先輩が話す。

 

 希望と言う言葉、僕はあまり使った事が無い。でも、ハルト先輩の希望は重みがある。おそらくそれは・・・自負という名の重み。

 

「その希望で俺は助かったわけだ。人の和って分からないねえもんだ。まあ・・・照れくさいが今度は俺がこの和に応える番だと思っている。」

 

 巧先輩が照れくさそうに話す。この人が絶望的な状況からみんなで救われた人なんだ。

 

「こいつは俺が認める敵に回したら最も危険な男だ。故に頼りになる。俺もまだまだ強くならないといけないと思わせる、世話の焼ける弟分だ。だが、こいつらが今後の世界を支える重要なカギになると俺は見ている。そんな奴らを守るために、もっと強くならないとな。」

 

 鋼鬼先輩。この人はすでに主神クラスの力を得ている。それでもなおさらに上に行こうとしている。イッセ―先輩という成長株がいるのを嬉しく思って。

 

「確かに。力という意味では僕はこのメンバーの中で一番弱いかな。はあ・・・こっちは最近色々とドキドキしすぎて困っているよ。ギャスパー、実は私も君と同じなんだ。」

 

 サイガ先輩が苦笑しながらある事をいってくれる。

 

「私も実は自分の力を使いこなせていない。出せて三分の一の力のさらに一割も出せない。せっかく父さんから受け継いだ力なのに使いこなせない。前まではそこまで力は必要じゃなかったけど、敵の強さを考えるとこっちも本当の意味で全力を使う必要がでてきた。」

 

 サイガ先輩ってみなさんの中で最強のテクニックタイプでしたよね?そんな腕を持つ先輩が使いこなせない程の力って。

 

「そう言った意味ではライバルかもね。どっちが先に力を制御できるか、共に競い合ってみようよ。その方が張り合いがでる。」

 

 この先輩もとても優しい。あえて自分の悩みを打ち明け、そして手を差し伸べてくる。

 

「はははは・・・まあ安心しろ。暴走に対抗する術式も構築済みだ。せっかくの力を持ち腐れにしてほしくないし、私も君を見込んでいる。とんでもない男に化けるとな。」

 

 ポルム先輩の僕に対する評価が高いです。そんなすごい男になれるのでしょうか?

 

「なれるじゃない。私達がそうなるように育ててやるさ。」

 

 そこまで推されると照れます。

 

「はい・・・。」

 

 そして、良太郎先輩がこっちを見てくる。

 

「君は、まだみんなが怖い?」

 

「いえ?でも・・・。」

 

「そうだね。みんなを停めてしまうのが怖いんだね。」

 

「―――っ。」

 

 まさに図星でした。僕が本当に怖いのは己自身であることを良太郎先輩は見抜いている。

 

「みんな優しいというけど、君も十分優しいよ。意図していないのに時間を停めてしまうことに傷つくことができるくらいに。」

 

 僕が・・・優しい?そんなこと考えた事もなかった。

 

「だから、その優しさを、傷つけるのが怖いと思う気持ちは忘れないでほしい。そして、難しいけどその上で強くなってほしい。今すぐじゃなくていい、その力を使う覚悟、そして傷つく覚悟を身につけてほしい。この世界は優しいままですごせない残酷な世界だと思う。それでも、優しさを失ってほしくないから。」

 

 この先輩はきっと…一杯傷ついて、そして悩んできたんだろうな。

 

 だからこそ、嬉しかった。僕を認め、その上でさらに道を示してくれた事に。

 

「はあ、みんな言いたい事を先に言ってくれるおかげで、僕の言う事がなくなってしまったよ。」

 

 最期は渡先輩です。

 

「・・・君にはまだ言っていないことが正直ある。でもまだそれを打ち明けることはできない。でも、その上でこれだけは言わせて。君は一人じゃない。」

 

 どうして渡先輩が締めくくるのか分かりません。

 

 でも、そうするべきだと他のみんなが促した節があるみたいで。

 

「少なくても力の暴走に対抗できる程度の猛者ぞろいだ。僕が言うのは難だけど相当無茶な連中だよ。そんな僕たちが君を支える。」

 

 見るだけでも豪勢なメンバーだと何となく思う。僕・・・とんでもない先輩連中を得たのかもしれない。

 

「はあ~渡君。本当の意味ではそれは僕のセリフだよ。」

 

 そこに木場先輩がやってくる。

 

「まあ、新しい眷属に加え、お人好しな人外どもばかりが来たんだ。多少の事は何とかしてくれるから安心して。」

 

『オイ!!誰が人外だ!!』

 

 木場先輩って、こんな風に軽い冗談を言えるんだ。

 

「少なくても、佑斗君。君もその人外の仲間入りを果たしているよ。」

 

「はははは・・・そんな冗談を言わないでくれ、渡君。」

 

『・・・・・・。』

 

「えっと・・・本当なのかい?」

 

「少なくとも、敵に回したらグレモリ―眷属内でイッセ―とアーシアの次に厄介だと思っている。」

 

 鋼鬼先輩の一言に皆がうんうんと頷いているよ。

 

「そんな・・・馬鹿な!?」

 

 何故にショックを受けているの?

 

「ふははは・・・まあ、気楽にやって行こうぜ。」

 

「はい!!」

 

 この先輩達と出会えたこと、きっと僕の人生の中で最大の幸運なのだろう。

 

「それでだ、お前の力と俺の倍化の力、そしてみんなで女子を触りたい放題する連携をだ・・・。」

 

『・・・・・・。』

 

 あまりに勇気溢れる煩悩にまみれたイッセ―先輩の連携案にみんなが白い目を向けています。

 

「鋼兄には見せられねえぜ。」

 

「それ以前の問題だよ!!僕は同志を救ってくれた君のためならどんな事をすると決めているけど・・・・もう少し力の使い方を考えようよ!!ドライクが可哀そうだよ!!」

 

―――おお・・・木場はいい奴だな。ああ・・・このままじゃ煩悩にまみれたゼウスみたいな神になりそうで頭が痛いところだった。

 

―――あのゼウスですか。なるほど・・・ありえそうで怖いわ。

 

「・・・あのな。お前は女を喰いたい放題だから言えるセリフだって!!こっちはそうじゃないし。」

 

「・・・・・・本当にそう思うのかな?僕の妹の件を忘れたといわせないよ?」

 

「うっ・・・。」

 

 木場先輩の双子の妹の話題になるとイッセ―先輩が気まずそうに背ける。

 

 木場先輩はモテモテと思うけど、もしかしてイッセ―先輩もモテモテだったりします?

 

「まあ、自覚しているだけでも良しとするよ。自覚ない状態で説明すると後が怖いけど、今は部長達を含めて誰が一番に貞操を取るのか牽制し合っている状態だし。」

 

「・・・うう、手玉に取られてばかりだ。エロいことしたいのに、迂闊に動けん。」

 

 イッセ―先輩って意外と苦労しているのですね。

 

「ああもう、こうなったらみんなで夜まで語りあかそうぜ!!男同志の猥談だ!!」

 

 そこでどうして猥談なのですか?

 

 それに僕の力の暴走が・・・。

 

「そういうことなら・・・はい。」

 

 ポルム先輩が眼鏡を渡してくれます。

 

「アザゼルさんから聞いている。この神器は視線を媒体にして発動する。その仕組みを解明させ、抑えるための機能をその伊達眼鏡につけている。」

 

 ・・・そんなものをいつの間に。

 

「すまなかったね。初めての試みだったから作るのに時間がかかった。でも、これである程度は大丈夫だ。安心したまえ。」

 

 その気づかいに涙が出そうになった。

 

「おーし。まずはサイガ!!お前の羨ましくもけしからん事を聞かせやがれ!!」

 

「その件に関してはこっちも聞きたかったんだ。何時の間に根回しをされていたのかも含めて!!多分、部長達はクレアさんとイッセ―から抑えたでしょ!!そして、キリエさん辺りに回して・・・。」

 

「おおっ、鋭いな。それでその成果である本日のダブルデートを聞かせろ!!」

 

 何かやかましいけど、本当に楽しい。

 

「その上でお題は女子のこんなところがたまらなく好きな選手権だ!!ああ・・・ネロと鋼兄はいいぜ。答えは分かり切っている。絶対に二人の場合は嫁自慢になるから!!」

 

『ちょっとまった!!それは聞き捨てならないぞ!!』

 

「まあ、でも気持ち分かるかも、この場合は好みを聞いたら、黒歌さんとキリエさんその物を二人は口にしていそうだし。」

 

「そうだ。それ故に今だ特定の相手がいない、木場!巧!良太郎!ハルト!ポルム!!お前達が生贄だ。俺が話してもおっぱいとしかいえんし!!サイガは疎いからな。渡に関しては・・・うん、なんか聞くのが怖いからいいや。」

 

『そんな生贄やだよ!!』

 

「その前になんで僕に聞くのが怖いのか、その辺りを説明をしてほしい!!」

 

 そんな感じでその夜はお祭り騒ぎみたいにやかましくなった。

 

 ちなみに・・・僕も白状させられたのは当然だった。うう・・・恥ずかしい。

 

 でも、みなさん意外とスケベなんですね。なんか男子一同、ものすごく結束が強くなった気がする。

 

 そして僕は思った。みなさんみたいな立派な漢になりたいって。

 

 

 

 side ???

 

 まったく、あの子ったら本当にエッチなのにお人良しなんだから。

 

「心配で見に来たのかい?」

 

「うん・・・。」

 

「・・・泣いているのか?」

 

「グス・・・うん。」

 

 だってあの子・・・、人の和って言ったのよ。

 

 色々と苦しんでいるのは分かっていた。

 

 私は見守り、知らないふりをしながらもさりげなく支える事しか出来なかった。

 

 でも、あの子はその苦しみを自分から解き放った。

 

 人の和によって。

 

 それは私の言葉を聞いた私はいつの間にか涙を零していた。

 

 置き去りにした昔の日々を思い出すようで・・・。

 

「本当にあの子って私達の息子だよね。」

 

「そうだね。」

 

 本当に大きくなった。立派になった。

 

 エッチだけど、親としては誇りに思うよ。

 

「ふふふふ・・・師としても誇りに思う。」

 

 そこに天道さんまでやってくる。

 

「あいつはもうあいつの道が出来ている。もう道を指し示す必要すらない。」

 

「はい・・・。あの子を鍛えてくれてありがとうございます。」

 

「何・・・こっちも情はある。それにここに来たのはもう一つ。」

 

 天道さんは私の方を見てつげる。

 

「まどか、お前の探し人はやはりあの組織にいる。」

 

「そう・・・ですか。」

 

 それはある程度予測し、覚悟していたことだった。

 

「・・・いざとなったら僕も止めるのを手伝う。」

 

 翔一君がそう言ってくれる。

 

「すれ違ってばかりだな。だが、真っ直ぐ進め。迷わす進めば、おのずと道は交わる。」

 

「はい。」

 

「そろそろ僕達も動き出そうと思います。三勢力会談・・・君がそこの仲介役にしたのはそれを見越しての事だと思うけど。」

 

「・・・フッ。そう言う事だ。まどかも覚悟はいいか?」

 

「うん・・・。私もゆっくりと休むことは出来たから。」

 

 あの子が前に進んでいる。それなのに私が立ち止まっていいわけがない。

 

「ほむらちゃん・・・。」

 

 私達は動き出す。

 

「私はもう幸せだよ?だからもう・・・。」

 

 一番の親友を止めるために。

 

 

 




 ギャスパーですが、この話ではイッセー之根性だけでなく、その幼なじみ連中乃色々な部分ね異教を受けます。

 精神的にさらに成長する予定としております。

 今回は二話投稿です。

 また会いましょう!!

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