赤龍帝の幼なじみ達   作:THIS

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 いよいよ授業参観の始まりです。

 さて・・・さっそくみんなは大暴れしますよ。


 


嵐の授業参観です。

 

 SIDE イッセ―

 

 いよいよやってきました授業参観。簡単に言えば公開授業といった方がいいかもしれない。

 

 だが、この日の駒王学園の裏の事情を知る者達は大変ピリピリしています。

 

 何しろ・・・。

 

 俺の幼馴染連中のとんでもない身内が大集合するのですから。

 

「・・・俺、悪魔になったばかりなのに、なんでこんな目に合わないとといけないの?」

 

「まあまあ、ある意味いい機会じゃねえか。今のうちに苦労しておけば絶対に役に立つ!!一緒に顔を覚えてもらおうぜ。」

 

 匙の奴なんて顔色を蒼くしながらも必死にあっちこっち巡回しまわっています。何かあったら大問題必須だからなあ。

 

 仁藤の前向きさがこういう時羨ましいだろう。

 

「ある意味俺の所為でもあるのかな?」

 

――――――かもしれんな。ドラゴンは例外なく強い者を呼び寄せる。ましてやアギトであるお前の場合は、その傾向がさらに強い。まるで強者と出会い、更に自身の進化を促そうとするようにな。

 

 俺、そんなつもりないけど。

 

――――――でもいい機会ね。神を目指すのなら、そう言った者達との出会いは大切にしなさい。

 

「義兄も元気そうで。」

 

 鋼兄からやってきやがった。目の前にいるのは俺達と同じ制服を着たまさに純日本人といった風貌の青年。

 

 細身で、一見すると普通にしか見えないけど、どことなく猛禽類を思わせるような鋭い眼差しをしている。

 

 どうも鋼兄の知り合いのようです。

 

「紹介する。俺の義兄弟の契りを交わした弟分、嵐だ。本場の忍びでもある。」

 

「そういうことです。常々話は義兄より聞いています。」

 

 忍者って、現代でもいるの?

 

「丹波殿も含めて極少数いる。まあ、嵐の場合は特殊でな。俺達鬼との付き合いがかなり長い。何しろ俺達と同じく変身できるのだからな。しかも強いぞ?」

 

 変身する忍者なんて初耳ですよ?

 

「変身忍者というべきだな。お前の方の鬼の篭手はどんな感じだ?」

 

「まあまあというべきかな?鬼の眼はようやく慣れてきたが。まだまだ・・・新生した状態に慣れていないのがきつい。」

 

「修行のやり直しだからな。だが、せっかくお前の兄から貰った命だ。大切にしろよ。」

 

 二人のやり取りからして、あの嵐って人も色々あったみたいだな。

 

「なあ・・・それって、二つの魂と命が感じられることと関係あるのか?」

 

『!?』

 

 どうもこの人からそれが感じられる。

 

 二つの魂と命。それを同時に宿しているみたいなのだ。

 

「なるほど。神の資格を持つ男。義兄の言う意味が良く分かった。」

 

「こいつの転生にはちょっとした理由があってな。黒歌がまだ悪魔の駒をちょろまかしていたせいで・・・。」

 

 それ以上は聞くのは野暮みたいだな。

 

「それはそうと・・・母上達はどうした?」

 

「・・・好き勝手に行動されている。実は探している最中で。」

 

「それを早く言え!!」

 

 ちょっと待てい!!既に日本神話の最高神達が学校を徘徊しているのか!!

 

 思ったよりもフリーダムな神様達だな!!

 

「・・・・・・。」

 

 あっ、匙が固まっている。

 

「流石にこれは不味いな。」

 

「不味いってもんじゃないって!!」

 

「こっちは母上と伯父、伯母を探してくる。」

 

「すまん。だが、義兄が苦労しているのはよく分かるよ。」

 

「お前でも振り回されるか・・・まあ、伯父は有名だが、母上はあれでかなり自由奔放なところがある。人見知りの伯母上は別の意味で心配だ!!」

 

 2人が走り出す。その後に匙と仁藤まで続く。

 

「・・・そうか。頭が痛い話だな。」

 

 そこにやってくるのは鋼牙さんです。

 

 その隣には・・・。

 

「会ったら取材と、スケッチしてみたいかも。創作意欲がわくわ。」

 

―――――カオル・・・お前、いい度胸をしているな。

 

 明るい感じの女性がいます。

 

「妻のカオルだ。黄金の騎士の物語って知っているかな?」

 

 あっ、懐かしい。子供の頃、何回も読んだ。

 

「その原作者だ。」

 

「ちなみにモデルは鋼牙。」

 

「・・・・・・。」

 

 何と言えばいいのか。小さい頃大好きな絵本の作者と出会い、その絵本のモデルとなった既に会っていた事を知るなんて。

 

「握手してください。」

 

 とりあえず、二人と改めて握手することにした。

 

 俺・・・感激だ。

 

――――――今でもその絵本を大切にしている辺り、すごく好きだったのね。

 

 子供ができたら読ませたいと思っているくらいだ。

 

「それはそうとサイガは知らんか?」

 

「例の計画のために、ポルムがあちこちに連れ回しています。」

 

「そうか。ついにサイガも年貢の納め時か。」

 

―――――あの坊ちゃん、ついに男になるのかねえ。

 

 魔道輪であるザルバのコメントが面白いです。

 

「ははは・・・そう言えばセラさんも来ているのだったわ。」

 

 予想通り、母であるカオルさんも買収済みか。

 

 だが、どんな方なんだろう?まだこっちは会ったことないけど。

 

――――カオルは今度の絵本のモデルに、よりによってあの魔王とサイガをモデルにするつもりらしいからな。

 

 魔王とサイガをモデルにした絵本?

 

「出版したら是非買います。」

 

 一ファンとしては買ってみたいものだ。

 

「さて・・・。」

 

 あれ?鋼牙さん緊張している?

 

「クスクス、中々授業参観に行けなかったのを気にしてね。行くのは行くので緊張しているのよ。」

 

「・・・行くぞ。」

 

―――――はははは・・・お前も人の親だな。

 

 恥ずかしいのだろう。そのままその場から去っていく鋼牙さんとカオルさん。

 

 微笑ましい限りだ。

 

「やあ。なんかすごい面々が集まってきているね。」

 

 そこにサーゼクス様とその後ろに見覚えのある顔が二人。

 

 あっ・・・確か結婚式で!!

 

 思い出したぞ。

 

 この二人、部長のご両親だ!!

 

「・・・・・・。」

 

 俺は知らない間に背筋に冷たい汗が落ちてくるのを感じた。

 

 結婚式の時、俺は相当やらかしたからなあ。

 

「おう・・・ここで魔王様に会おうなんてな。」

 

 そこに堕天使の総督、アザセルまで来ましたよ!!?

 

「可笑しい事じゃねえだろうが。俺だって息子の授業参観くらい行く。」

 

「それもそうだね。」

 

「なら弟子の様子を見に行くのは可笑しい事じゃないか。」

 

 何で天道師匠まで来ているんですか!?

 

「久しぶりだね。」

 

「わりぃな、総司。」

 

「フッ・・・何かあったらこっちが動くだけのことだ。」

 

「今回の会談での立会人になってくれるからね。」

 

「はあ・・・。」

 

 まさか師匠まで会談にやってくるなんて。

 

「安心してくれ。総司がいる場で変なことはしねえから。したら、総司とハルトのやつにお仕置きされる。」

 

「そういうことだ。護衛とストッパーも兼ねて俺もいるから安心しろ。」

 

 ハルトも傍にいる。グレゴリの幹部だけあって、会談に参加する。

 

「ふっ・・・それに今のこいつは青春を送っている息子の事で頭が一杯だ。悪巧みして、息子に嫌われるようなことは絶対しないさ。」

 

「ちょっ!?」

 

 師匠の発言に、アサゼルの顔に動揺が走る。

 

『ほう・・・。』

 

 なんだかんだ言って・・・やっぱりこの方は子煩悩だね。

 

「何だお前ら!?なんでニマニマ俺の事を見ていやがる!!?」

 

 いや・・・微笑ましい。

 

「はははは!!いいじゃねえか。俺やサーゼクスにも子供がいる。その気持ちはわかるってもんだ。」

 

 そこに、ダンテ様まで。

 

「おっ・・・あんたにはしっかりと挨拶したいと思っていたんだ。遅れてすまねえな。」

 

「いやいや。気にするな。だが・・・こんな形だが、素晴らしい若者の命を救うのに貢献できて嬉しいものだ。」

 

「ははは・・・そりゃ自慢の息子だからな!!」

 

 ダンテ様とアサゼル・・・何かすごく息が合っていないかい?

 

「似た部分があるということだ。まったくお前達は。」

 

 師匠が呆れています。

 

「ふっ・・・だが、この様子なら会談の際先も明るいな。」

 

 サーゼクス様は微笑む。

 

「しかし巧の奴も結構すごいモテるよな。なあ?イッセ―。」

 

「そうですね。あいつ・・・今日もラブレターを十枚も貰っていたし。」

 

「・・・その話、詳しく聞かせな。」

 

 おっ・・・おお!?あっ、アサゼルさん。何で俺に詰め寄ってくるの?

 

「いいから・・・聞・か・せ・な!」

 

 なんか、視線だけで人を殺せそうな位に殺気だっている。

 

 すごく怖い。

 

「いっ、いや巧は、王子様キャラだったみたいで、木場、渡に続く三人目の王子として、学園内の女子に大人気で・・・。ファンクラブもできたと。」

 

「ファンクラブだとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

 

 ちょちょちょ、襟元を握り締めないで!!首が・・・しまって息が・・息が出来ない。

 

 それに顔が近い!!近いから!!

 

 男に迫られても全く嬉しくないって!!

 

「・・・離してやれ。俺の弟子の首を絞めているぞ。」

 

 師匠、うまく諭して、助けくれてありがとうございます。俺、本当に師匠の弟子でよかったです。

 

「あいつら・・・勝手にファンクラブを作りやがって!!」

 

 アサゼルの憤慨は収まらない。

 

「作るなら、まず俺様に言いやがれ!!グレゴリ公式のファングラブ以外は認めんぞ!!」

 

 しかも、怒るポイントはそっちかい!!

 

「イッセ―。今すぐファンクラブと、今までラブレターを渡した連中の情報を教えな。」

 

 おっ・・・おい。何を言っているんですかあんたは!?

 

「あいつの本命は誰か調べるんだよ!!あいつ・・・そう言った話は無いから心配で心配で。下手な女は絶対に近づけんぞ!!」

 

 何と言う親バカ根性。

 

「デッ・・・でも、最初は大変だったんですよ。みんな無愛想でとっつきにくい奴だと勘違いしていて。友達が作るのが結構大変で。」

 

「巧の良さが分からん奴らぶっここすううううううううううぅぅぅ!!」

 

 ああもう!!このバカ親提督、すごく面倒くせぇぇ!!

 

 誰か助けてぇぇぇぇぇ!!

 

「はいはい。暴走の時間は終わりですよ。」

 

 そんな時に救いの手が差し伸べられた。

 

「ぎゃああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 アザゼルの顔面に向けてだ。

 

 悲鳴から分かってもらえると思うが、アサゼルの顔面に手を差し伸べたのは我らが幼馴染のハルトさんです。

 

 ハルトは右手でアサゼルの顔面を掴んだまま持ち上げる。

 

 その顔はすごく憂鬱そうだ。

 

「はあ・・・巧、すまん。またお前の親父に総督殺しをやってしまう俺を許してくれ。」

 

 そして、すごく胡散くさいセリフを。

 

「そうこれはしかたないことなんだ。学校の平和のため、イッセ―のため、そして俺の平穏と快楽のため。そうこれはしかたないことなんです。うん・・・大義名分は十分かな?」

 

 いや、お前誰に言い訳している?

 

 言っていることが無茶苦茶だぞ。

 

「ハッ・・・放せ!!いっ・・・いや離してくださいハルト様!!」

 

 その言葉に対する答えは・・・

 

「はははっ・・・一度暴走したら、シャットダウンさせて止めるのが流儀なんだよ。」

 

 まるで虫も殺さないような儚い笑みで語るドS発言でした。

 

「シャッ、シャットダウン?」

 

「・・・・・・盛大な悲鳴を期待しているよ?」

 

「ははははは、そうかい。毎度おなじみのパターンってやつか。」

 

 アサゼルさん、すでに諦めとる。

 

「・・・秘技、総督殺し。」

 

「ぎゃああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 アザゼルの絶叫が校内に轟く。

 

「これはただ掴むだけじゃなく、指先、いや爪を喰い込ませるように力を込め、面じゃなくて点で相手の内部から苦痛を与えることがコツ。よい子は真似したら駄目だよ。」

 

 悲鳴をBGM代わりにして、解説しなくていいから!!

 

 それに誰も真似できんわ!!そんな、外道技。

 

 良い子が真似したら、この世は絶対に終わりだ。

 

「・・・・・・・・ガク。」

 

 ああ、アサゼルの全身から力が抜け、ぐったりとしている。

 

 手足が力なく垂れ下がっている。

 

 その光景に魔王様一同に、天道師匠まで顔を蒼くしているって!!

 

「魔力無しの純粋な握力でやるのが大切です。このように絶妙な力加減で頭をつぶさずに相手を気絶させることができようになったら一人前です。応用させれば、これだけで都合の悪い記憶を握りぶつ・・・いや、消去できます。」

 

 変身前の素の握力だけで堕天使総督を気絶させるなんて誰が出来んの!!

 

 誰も一人前になれない事をここで断言してやる!!

 

 それに、最期の方で握りつぶすって言おうとしたよな?それって力技で記憶ごと頭を握りつぶすってことじゃないよな!?そうだと言ってくれ。頼むから!!

 

「うちの総督が失礼しました。授業開始まで、少しの間保健室でも寝てもらいます。また会いましょう。」

 

『あっ・・・ああ。彼にお大事にって伝えておいてくれ。』

 

 ハルトは去っていく。

 

 顔面をわし掴みした状態アサゼルを引きずったまま。

 

「・・・・・・。」

 

 怖いよ。すごく怖いよ!!

 

 あまり異様な光景にまるでモーゼの滝のようにみんなが廊下の壁にへばりついて怯えておる。

 

 今のこいつは希望をもたらす魔法使いじゃない。

 

 恐怖の化身、大魔王だ!!

 

「ははは・・・こっ・・・これは凄まじい。」

 

「OH・・・本当だぜ。まだ、震えが止まんねえ。魔帝と戦った時以来の恐怖を感じた。」

 

 ほら!!現職の魔王様二人が震えあがっているし!!

 

「世界は広いな。」

 

 師匠にまでこんなことを言わせるのか、おのれハルト!!

 

 今なら断言できる。お前は可笑しい!!

 

「流石グレゴリ最強のストッパー。」

 

 それと何となくだけど、分かってきたことがあるんだ。

 

 ハルトって、グレゴリ最強にして最凶なんじゃないかって。

 

 いや、間違いない。あの総督殺しがすべてを物語っている。

 

 

 

 

「あっ、イッセ―!!」

 

 恐怖の化身と会った後に、俺は癒しと出会った。

 

 アーシアと母さんだ。楽しそうに語らっているこの二人は癒されるんだよな。

 

 あれ?もう一人いますよ。

 

「ここで会ったの。」

 

 黒髪の美しい方です。大和撫子って感じの清楚な女性だけど、同時に内側から溢れるばかりの輝かしい力を感じる。着ているのはカジュアルだけど、まるで太陽のようだ。

 

「あっ・・・イッセ―にアーシアにゃ。あっ・・・。」

 

 そこに黒歌がやってきて、固まる。

 

「おっ・・・お義母様!?」

 

 はい?そしてその口から出てきたのはお義母様?!

 

 ってことは・・・。

 

「初めまして、アマテラスといいます。鋼鬼がいつもお世話になって・・・。」

 

「あははははは・・・。」

 

 アーシアの苦笑が俺の中の驚きが本物であることを教えてくれる。

 

 うわ~こんなところで日本神話の神様と会うなんて思いもしなかった。

 

 ありがたやありがたや。なんかすごい御利益が貰えそうだ。

 

「また今度遊びに行ってもいいですか?」

 

「大歓迎だよ。」

 

「はっ・・・あはははは・・・。」

 

 しかも、母さんと意気投合しとる。母さん・・・その方は唯の人じゃないですよ?

 

 日本神話の女神様ですよ!!

 

 そんな方とママ友にならないで!!

 

「ははは・・・流石イッセ―の母上。何かすごいものを感じるにゃ。」

 

「へえ・・・そうなんですか。」

 

 その後ろからもう一人参戦していますよ。

 

 ってハナさん!!

 

「今度試してみたら?」

 

「是非に。」

 

「・・・あなたがハナさんでしたか。」

 

 そこにもう一人参戦。

 

 グレイフィアさんです。

 

「一度話を聞いてみたくて。いいでしょうか?」

 

「持ちよ。」

 

『・・・・・・。』

 

 なんかママさんズが集まってきています。

 

「・・・なあ。あの子って誰だ?」

 

 匙が今更に、そのママさんズの中にいる桃色の髪をした我が母を指す。

 

「・・・まあ、驚くなというのも無理だろうが。」

 

 俺の母を紹介した後、匙は卒倒してしまった。

 

 それほどまでに驚くことだったのか?

 

 

 

 

 そんな感じで教室に入ったら、母さんの事で似たような混沌を味わう事になった。

 

「そっ・・・そんな馬鹿なことが!!」

 

「・・・これが合法ロリという奴か。」

 

 我が悪友二人の発言。母さんじゃなかったら許していたが、流石に見過ごせないので一発ドついてやりました。

 

「母さんをロリゆうな。」

 

 事実だけどな。母さんが涙目で睨んで来たら、手が出てしまうんだ。

 

 全然迫力なくて、可愛いくらいだし。

 

 その隣にはオ―フィスがいるけど、二人が並んでいると・・・仲良し姉妹にしか見えんのが恐ろしい。

 

 アーシアまで加わったら・・・アーシアがお姉ちゃんになってしまうし。

 

「でも、あれは仕方ねえよな。」

 

「うん。どうして昔から姿が変わっていないの?」

 

 ネロと良太郎の会話ももっともだ。

 

「僕もそう思うよ。でもイッセ―の母親だとすると話は別かも・・・。」

 

 渡の奴が何かを考えている。

 

「可能性としては極めて高いと思っているけど。イッセ―の力の根源としてね。」

 

 渡・・・一体お前は何を?

 

「思慮深くなったな。渡。」

 

「渡の思慮深さにはいつも助かっています。巧が助かった物、渡が影で動いてくれたからで。本当に感謝してもしきれない。」

 

「ああ。俺もあいつには頭が上がらない。」

 

「それに関してはこっちも同じかな?」

 

 巧やハルトですら、渡には感謝しているほどなのだ。

 

 俺達の身内は全員、渡とキリエさん、そしてアーシアには頭が上がらない。

 

 この三人の中で渡は外交で大活躍。着々と人脈を作り上げている。

 

 この様子だと、次は堕天使総督との人脈作りかな?

 

「そうか・・・うんうん、万が一俺が倒れてもこれは安心だな。」

 

・・・・あれ?誰か会話に割り込んできている。

 

「我が弟ながら鼻が高いよ。うん。」

 

 いつの間にか、俺達の傍にいたのは二十代前半くらいの男だった。

 

 細身だが、まるでベンチャー企業の若い社長といった感じだ。

 

「・・・兄さん。直接学校に来るとは聞いていたけど、いきなり教室なの?」

 

「はははははは。そうそう、そうでないと面白くなくてね。そうですよね、サ―ゼクス殿。」

 

「うお!?」

 

「聡いねえ。噂の王様に会ってみたくて、こっそり近づいたのだが。」

 

 いつの間にかサーゼクス様まで。

 

―――――だからってタイムベントで時を止めないでほしいわ。

 

 へっ?俺の中で、クレアが何か言っているぞ?

 

――――――すまん、サーゼクスは普段は良識あるのだが、リアスやミリキャスの事になると手段を・・・。

 

 ゴルトさんの言葉が本当ならすごいシスコンだわ。サーゼクス様

 

 そのために時すら止めるなんて、どんだけだよ!!

 

「弟より、話は聞いていました。大牙です。」

 

「サーゼクスだ。」

 

『・・・・・・・。』

 

 今俺の教室にいる連中の何人が気付いているのかな?

 

 冥界の魔王様とファンガイアの王様が出会っていることに。

 

 二人は無言でただお互いを見つめ・・・。

 

『フッ・・・。』

 

 笑みをこぼす。

 

「君は、弟は好きかい?」

 

「ええ・・・大切な家族。愛していますとも。あなたは妹の事は。」

 

「シスコン・・・それは私にとって名誉なのだよ。」

 

「ブラコンな私も同じです。」

 

『・・・・・・。』

 

 再びお二人はじっと見つめ合っております。

 

『同志!!』

 

 って、ブラコンとシスコン繋がりで二人が力強く握手しちゃったよ!!

 

 こんなのでいいのか!?ファンガイアと冥界の外交って!?

 

「兄さんたらもう・・・。」

 

 二人はがっちりと握手している。

 

 いや、俺はこの時外交の奥深さを思い知ったよ。

 

 何が繋がりを生むのか全く読めない。

 

―――――そんなの私でも読めるか!!

 

 クレアさんが何故か投げやりなお言葉を。

 

「二人の新たな出会いに乾杯ときませんか?」

 

 そこに何故か父さんが加わってきた!?

 

『いいねえ!!今晩は宴会という形で。』

 

 ああもう!!これ以上ややこしくしないで!!

 

 

 

 

 カオス過ぎる出会いが終わり、やっと授業だ。

 

「さて・・・これはどういう事は説明してくれませんか?」

 

 そこでキリエさんが、英語の先生に対して仁王立ちで叱りつけている。

 

 英語の先生は・・・土下座中。

 

「私はただ、生徒達の才能を引き出したいだけだ!!」

 

「だからって・・・英語で美術をやるのですか!!」

 

 キリエさんのツッコミももっともだ。

 

 英語の授業で、出てきたのは何故か紙粘土と画板なのだから。

 

 まあ、そんな事より俺は今、面白い事になっている。

 

「でっ・・・出来た。」

 

 出来たのは、三体の人間。

 

 部長、アーシア、ユウナの三人。

 

 目を閉じて作ってみたら、いつの間にか三人の超絶リアルなフィギュアを作ってしまった。

 

 体の感触・・・手や肌に残っていてそれを再現したらこれだよ!!

 

「・・・イッセ―君のエロも馬鹿にできないわね。」

 

 キリエさんの言葉に皆は何度も頷く。

 

 それで・・・オークションが始まったけど。

 

「きゃああああぁぁぁぁぁ頼むから止めてぇぇぇぇ!!」

 

 顔を真っ赤にしたユウナがそれを必死で止めていた。

 

 あいつ、意外と乙女だよな。あいつの身体の細部まで再現してしまったのが相当恥ずかしいらしい。

 

「すごいです。」

 

「我が息子ながらすごい才能を見たわ。」

 

 アーシアと母さんは感心しているし。

 

 はあ・・・俺は終わった。近くのネロを見てみると。

 

「!?」

 

 あまりにすごい光景に俺は固まった。

 

「・・・・・・。」

 

 ネロは画板で鉛筆を使って絵を描いていた。

 

 書いているのはキリエさん何だけど・・・。

 

 その絵がすごい。

 

『・・・うわ・・・。』

 

 素晴らしすぎるのだ。その絵は、写真では伝えきれない愛までも伝えてくるくらいに。

 

「・・・・・・。」

 

 当のネロは熱中しているのか全く気付かない。

 

 そう言えば、ブル―ローズの刻印は自分でやっていたと聞いている。。

 

 新しくなったローズダブルとアクセルクイーンも自分で装飾を施していたし。

 

『・・・・・・。』

 

 もちろんその絵を見たサーゼクス様もダンテ様、大牙様まで固まっている。

 

「意外にして、とんでもない才能だな。」

 

「うっ・・・うん。」

 

 芸術をたしなむ渡は特にそのすごさが分かる様子だ。

 

「こりゃ、今のうちにコレクションに加えておくべきかねえ。百年後には阿呆みたいな価値が付くぞ。」

 

「親父がそう言うのなら相当だな。」

 

 あれれ?いつの間にか復活したアザゼルさん。絵をマジマジと見て極めてすごい評価を出しているぞ。

 

 巧が言うとおり、この人ってそう言う眼は確かそうだし。

 

「こりゃ、参ったよ。」

 

 ハルト、お前が言いたい事は分かる。

 

「今度俺も書いてもらってもいいかも。」

 

「そうにゃね。いい記念になるわ。絶対に。」

 

 鬼夫婦よ、お前らはそこでのろけるな!!

 

「よし・・・ってうお!?」

 

 一通り書き終えたネロは、皆の注目を浴びていることに今更に気付いたようだ。

 

「ネッ・・・ネロったらもう////。」

 

 顔を真っ赤にさせているキリエさん。なんだか嬉しそうだ。

 

「そんなに出来は良くないぜ?」

 

 いやいや、どの口で言う!?

 

 滅茶苦茶素晴らしいじゃないですか。俺は芸術とかはよく知らねえけど、それでもどれだけすごい絵なのか分かってしまうレベルだって。

 

 しかも、キリエさんに対する愛を感じるね。いや・・・愛がダダ漏れている。

 

 ちなみに、ネロとキリエさんの仲は学園内公認だったりする。

 

 教師と生徒の関係?そんなの関係ねえって言わんばかりの二人だ。

 

 まあ、二人は学校では生徒と先生という立場をわきまえている。

 

 少なくとも本人達はそう思っているだろうな。

 

 だがな、実際はだだ漏れている!!

 

 むしろ控え目な分、さりげないワンシーンで濃厚な甘さが伝わってくるんだ。

 

 視線だけでの以心伝心は当然として、勉強で困っているネロに話しかけるキリエさんや、力仕事でやれやれと言いながら進んで助けに行くネロの二人を見るともう・・・。

 

 俺を含めた何人のも人間が砂糖を吐いたか数えて欲しいものだ!!

 

 その気持ちが籠っているだけあって、素晴らしい絵だったけどな!

 

 

 

 

 

 どうでもいい話だが、この絵は百年後にオークションにて二十億ドルというとんでもない値がつくことになる。

 

 これが戦闘と芸術を司るギルスのプロローグだなんて誰が思ったか。

 

 あの先生。本当にとんでもない才能を発掘しやがった。

 

 この後皆の薦めで、ネロが美術部に入ることになるのは当然の事である。

 

 

 そして、昼休み。

 

 運命のあれが始まる。

 

 

 




 私はこの話を書いていて・・・匙に非常に同情してしまいました。

 だってそうでしょ?

 フリーダムな神様と魔王様達の大暴れっぷりです。

 でも本当のカオスはここからです。

 

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