赤龍帝の幼なじみ達   作:THIS

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お待たせしました。

 今回は一話のみ投稿ですが。ものすごく長くなります。


 ポルムの神器の基本性能を初公開。でもこの神器は番外編の神滅具と言わるくらいの危険な神器です。


第四章 停止教室のヴァンパイア
新しい日常と明らかになる繋がり。そして・・。


 SIDE イッセ―

 

さて・・・今俺は貴重な同志を得た。

 

「この欲望素晴らしい!!」

 

 俺は今、貴重な同志を得たのだ。

 

 その同志は鼻血を出しながら我が宝を見ているぞ。

 

 エロ仲間である彼の名前は・・・ポルムだ!!

 

 眼鏡キャラは分かっていたが、俺の同志になるとは思わなかったぜ!!

 

 そして、あいつが持っている神器は非常に便利なことが判明したのだ。

 

巨鳥の解析光翼(ジズ・スキャニング・レイ・ウィング)

 

 あらゆる道具や乗物を翼から出る光で解析。完全に解析できたら、それを翼から自在に作り出すことができる。

 

 また、翼に作り出した物もそうだし、それ以外の物も生き物以外という制約はあるけど、情報化収納。自在に取り出せる。

 

 応用が効き、神器の所有者は解析する際、その構造や使い方を完璧に理解し、その上で複数の道具を組み合わせて作り出せる。上に解析の力を転用させてデータを書きかえることも可能。

 

 また、力のみで作った物はすぐに消えるけど、材料を取り込んで作った場合は、それがそのまま固定化されるというのが驚きだ。

 

 一度情報化して収納した物もそれは同じだ。

 

 今俺の目の前にあるテレビは良い例だろうな。

 

 あいつ、ブルーレイレコーダーと最新の4Kテレビのデータを元にしてHDD搭載、ブルーレイレコーダー付きの4Kテレビを作ったのだ。

 

材料はブラウン管テレビとビデオデッキ。それを原子レベルで変換させるらしい。

 

 比較的近い材料の方が作りやすいと本人は言っている。

 

「もっとも、これはあくまでも個人的しかしないよ。」

 

 まあ、さすがに色々と問題があるので、自重はしている。これもあくまでも個人的に家へのプレゼント代わりに作ってくれたのだ。

 

 力を応用させて、秘蔵のDVDやVHSに入っている分をすべてBDに変化、画質もアップ、おまけに複数を一つにまとめるなどしてコンパクトになったぜ!!

 

 おかげで収納も楽々。

 

「ありがとう、同志。」

 

「この世界は楽園だ。それを知ることができた。」

 

 俺とポルムはがっちりと握手をする。

 

 さあ、今から観賞会へとしゃれこもうじゃないか。

 

 この世界のエロス、存分に教えてやるぜ!!

 

「見つけましたよ。」

 

『!?』

 

 だが、そこに巨大な敵が立ちはだかる。

 

 その名はキリエさん。

 

「エッチすぎるのは行けないと思います。」

 

 エッチなのは良いのか?

 

「あなた達二人は度が過ぎている」

 

「こっちも同等扱い!?」

 

「イッセー君とエロ方面で意気投合する時点で今更・・・。」

 

「客観的に見ればそうか。まあ・・・むしろ名誉よ!!」

 

 うお。こいつ言い切りやがった。

 

 意外とクールな一面と、そして熱い一面を兼ね備えているな。

 

 俺達二人は視線で語り合う。

 

 本当に分かりあった二人なら・・・。

 

―――――いやいや・・・そんな同志いらないぞ。

 

 ドライクからのツッコミが入りました。

 

「隙あり。」

 

 ポルムが隙を見て呪文発動。

 

――――――転送呪文(ルーラ)

 

 だが、発動しない?

 

「なんと!?」

 

「言っておきますけど、転送は無駄ですからね。」

 

 キリエさんがいつの間にか手にしていた神器がそれを邪魔したのか?

 

「この力は便利です。守るだけじゃなく閉じ込める事もできるなんて。」

 

「・・・これは強敵だ。力の性質が完璧に適合している。」

 

 背中から十二枚の翼を展開させたキリエさん、強くなりすぎです!!

 

―――――軽く見積もって、熾天使クラスか・・・。

 

 ちょっと!?ドライクさん何言っているの?

 

 それってキリエさんが天使最高峰クラスの力を持っていることになるって!!

 

――――実際それくらいあると思うわ。

 

―――それに二つの神器。これはすごい。

 

「攻めは得意じゃありませんけど、守りなら負けません!前の戦いで放ったあなたの必殺キックも受け止める事ができる自信があります。」

 

 いやいや!!まず、結界を応用させた攻めもすごいですよ?

 

 キリエさんはそういう荒事を嫌うからしないだけであって、ツッコミ代わりに使う一撃は変身していない鋼兄だって気を失うレベル・・・。

 

 そして、守りの方は俺の必殺キックすら防げるって、鉄壁すぎる!!

 

 でも、それができて可笑しくないのが今のキリエさんだから怖い。

 

「こんな美人な天使がボスだなんて素敵だね。」

 

 ポルムは乾いた笑い発しながら横眼で俺に告げる。

 

―――カウントはゼロからが勝負だ。OK?

 

 分かっているさ。ここからが勝負だって。

 

 今ここに男のロマンを死守するための大戦が始まる。

 

 

 

 まあ、その結果は惨敗である。

 

「くそ・・・。」

 

「まったくもう。イッセ―君だけでも大変なのに、ドスケベな子がもう一人いたなんて迂闊だったわ。」

 

 キリエさんの後ろには我らの秘蔵の・・・。

 

「いや、俺はこういうのは持っていないから!!この世界に来て初めてだよ!!」

 

「そう言うあなたは、そっちも大した神器を持っているのにどうしてこんなくだらないことに使っているのですか!!」

 

「だってさ。これはこれでかなり危険な神器だぜ?あえてこういった面白いことに使わせてもらっているけど。神滅具とされてもおかしくないくらい。ある意味上位クラスすら超える様な番外神器かな?」

 

 そう言いながらポルムは背中から翼を展開させる。白い光で作られた変わった翼だ。

 

 この翼、そんなに危険なのかよ?

 

――――――安心しな。データに関しては翼の中に保管済みだ。すぐに取り出せる。

 

 念話みたいなものでポルムが教えてくれる。

 

 こいつ・・・本当に強かだ。

 

 頼りになる。

 

 なんかそれを冷めた目でキリエさんが見ているけど・・・。

 

「・・・大方、その翼に保管しているのでしょう。どうかな、アーシアちゃん?」

 

「はい。そんな事を言っていました。」

 

『!!?』

 

 しっ、しまったぁぁぁぁぁ!!

 

 アーシアがいるのを忘れていた!!あいつの前で隠し事など無意味だったよ!!

 

「これは予想外。」

 

 目が点になっているポルム。

 

 でもすぐに余裕を取り戻したぞ?

 

「まあ、これくらいは見逃して。無ければ、イッセ―が暴走する危険もあるしさ。」

 

 それで交渉をしてくる。

 

「それに必要悪ではないけど、ある一定以下に抑えるだけでも大分違うかと。」

 

「あなたは弁が立つわね。でもまあ・・・いいでしょ。そのデータを消去することも難しそうですし。」

 

 なんと!!許可が下りただと?

 

「度が過ぎたら整理します。それでいいですか?」

 

 すげえ!!ポルムって、相当頭が良い。機転が効くというべきなのか・・・。

 

「まあ、ある一定以上は必要だから、そこをついただけ。それにそっちも無事じゃないと思う。・・・・・・すでに羞恥プレイを味わっているだろうから。」

 

 羞恥プレイ?

 

「ほうほう・・・なるほどイッセ―ってこんなのが良いんだ。よっしゃ!!ストライクど真ん中だわ!!」

 

「はわ・・・あわわわわあわ・・・すごいです!!」

 

「う~む、勉強になるわ。私はこの手の知識はさっぱりだったから。」

 

「こんなに業が深いだなんて。あらあら。」

 

「女の視線でこういうのを見ると・・・違った感じだ。」

 

 それはユウナを初め、アーシア、部長、朱乃さんそしてゼノヴィアの五人。

 

 ちょっとまてい!!

 

 なんでお前らが・・・うおおおおぉぉぉぉぉぉぉ。

 

 確かにこりゃ羞恥プレイだ!!何が悲しくて、俺のコレクションを女子共に興味深々に見られないといけねえ!!

 

「痛み分けになったわ、これ。いや・・・。」

 

 俺の肩に、ある方が手を置く。

 

 その光景を見てポルムは苦笑する。

 

「藪をつついて蛇どころか暴れ馬を登場させてしまったかな?」

 

 ダンテ様の計らいでユウナがこの家に住む事になり、自動的にこいつも付いてきた。

 

「イッセ―君。少しお話いいかな?・・・・・・なんでユウナが君の如何わしいコレクションを読んでいるのかそのあたりをじっくりと。」

 

 木場さん。後半から声のトーンが明らかに低いです。

 

 判明したことだが、こいつ、結構なシスコンだ。

 

 肩に置かれた手の力が異常に強くて痛いです。

 

 っていつの間にかオルフェノク化していますよ!!

 

 そりゃ、痛くて同然です!!

 

 オルフェノクとなった木場はテクニックとスピードにパワー、タフさまで加わる。

 

 その結果、こいつの弱点が無くなってしまう。

 

「やれやれ、退屈しないわ。」

 

 ポルム、お前、本当に強かだ。

 

「君もだ、ポルム!こんなに色々とやらかすとは。」

 

 怒りの矛先は当然ポルムにも向う。

 

「成長と言ってくれ。それにこれくらいできないと。」

 

 こいつ本当に抜け目ねえぞ。さりげなく木場から間合いを離している。

 

「何時の間に・・・。」

 

 木場も何時の間に空いた距離に軽く面食らっている。

 

「向うの世界で念のために覚えた盗賊のスキルも役に立つという事だ。ははははは!サラバだ!また会おう!!」

 

 そして、逃走。

 

「待ちたまえ!!それにそのセリフに関してはツッコミも入れたい!!」

 

 木場は捕まえるべく追いかける。下半身を馬に変えてって・・・頼むから家の中でそれは止めてくれぇぇぇぇl!!

 

「逃走は重要な戦術なのだよ!故に待つ理由もない!!」

 

 結果として、俺はお話を免れる格好だ。

 

 いや、助かった。

 

「・・・・・・。」

 

 木場。この家ではツッコミか。

 

 今日も家は賑やかだよ。場を引っかき回すのが得意なポルムのキャラも判明し、あいつもこの家に滞在するからもう賑やかさに拍車がかかっている。

 

 そして、アーシアが逃げるポルムを見て一言。

 

「あなたも苦労していますね。」

 

「まあね、互いにフォロー頑張ろう。こっちは器用だからある程度小回りは効くし。」

 

 逃げながらよくもまあそんな会話できるよな。

 

「自分で言うあたりはすごいです。でも色々考えて過ぎて読み切れません。一部しかわからないです。もうそろそろ時間なのでは?」

 

「それが分かる辺り、十分君もすごいよ。あと教えてくれてありがとう。」

 

 アーシアに心を読まれていることに苦笑いしながらも、それを前提として普通にやり取りしているのもすごい。

 

「なっ!?」

 

 そして、ポルムは立ちどまり、そして木場を止める。

 

 いつの間にか氷結させてあった床に木場が転倒したのだ。

 

 しかも転倒しても怪我しないようにうまく布団まで用意されている。

 

「・・・また嵌められた。」

 

 転倒した木場を助け起こすポルム。そのあたりのケアはうまいよな。

 

「ごめん、俺は少し出る。ちょっとある家に行くことになっていてね。サイガ、案内頼む。」

 

「うっ・・・うん、いいよ。」

 

 いつの間にかサイガがやってきていた。

 

 あいつらのやり取りに完璧に呆れている様子だ。

 

「・・・・・・はあ。いい性格をしているよ君は。」

 

 元の姿に戻った木場は軽く涙目になっている。完璧にふりまわされているな。

 

「どこにいくんだ?」

 

「ちょっと鋼牙さんに呼ばれてね。」

 

「父さんがどうしてもポルムと話をしたいって。こっちはすぐに戻るけど。」

 

 そして、サイガは家の庭に召喚する。

 

『・・・・・・・。』

 

 よりによって、轟竜を。

 

「へえ・・・。」

 

 それを見て木場は薄い笑みを浮かべているし。

 

 そしてサイガに向けて親指を立てる。何でグッジョブなの?この仕打ちが本当にグッジョブなのか?!いい仕事してんのか!?

 

 サイガは苦笑いを浮かべているし。

 

 その背の上にポルムが乗る。

 

「・・・乗っておいて今更だけど、馬で行くのか?この世界にはそれよりも早い足はいくらでもあるだろ?たしか、魔戒道を使う手段だって・・・。」

 

「いやいや、速いよ。少なくとも・・・。」

 

 サイガは鎧を纏いながら告げる。

 

「この世界の中で間違いなく最速だからね。それもダントツで。」

 

 処刑宣告を。

 

「・・・・・・はい?」

 

 ポルム。言っておけばよかったぜ。

 

 その轟竜―――馬、いや生き物というカテゴリーを逸脱しすぎた怪物だぞ?

 

「それに轟竜も走りたいって言っていたからちょうどいいよ。全力で行こうか!!」

 

「地球一周の寄り道をおまけしてやる。この世界をじっくりと堪能しな。」

 

 うん。轟竜もやる気満々だ。余計なまでに!!

 

「・・・・・・。」

 

 鼻息も荒い。

 

 止めは木場がします。

 

「もう結果は見えているから僕はここで引き下がる事にする。ポルム、逝っておいで。僕は君の事は一生忘れないから・・・・・・光になれ。」

 

 真っ黒な笑みを木場は浮かべている。

 

 その笑みの意味をポルムは悟ったのか冷や汗を流す。

 

「・・・・・・・・・まじで?」

 

『ハイヤー!!』

 

 サイガと轟竜の口から処刑執行の言葉が放たれる。

 

「ちょっ!?ぎゃあああああああああああああぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・・。」

 

 悲鳴を残して姿を消す。

 

 あれは確かに風じゃなく光になる勢いだよな。

 

 ポルム、お前のことは忘れない。光になれ。

 

「はあ・・・おっともうこんな時間か。」

 

 俺も俺で今日は用事がある。

 

「イッセ―、何処に行くの?」

 

「久しぶりに師匠に会いに。」

 

 今日は師匠がこの街にやってきている。

 

 その師匠に会いにいくのだ。

 

 

 

 SIDE 朱乃

 

イッセ―君の師匠に会いに私も付いてきました。

 

「あれだけの和食の腕前。是非会ってみたいですわ。」

 

 イッセ―君からその師匠からあらかじめ連絡を入れており、許可はもらっている。

 

「言っておくけど、かなりの俺様キャラだし、こうオーラが違うし・・・。」

 

 そして、彼は今その師匠について色々と話してくれる。

 

「どんな方なのですか?」

 

「一言でいえば、天の道を行き、総てを司る男・・・かな?」

 

「・・・・・・・。」

 

 訳が分からない。

 

 俺様キャラという事だけは分かりますが。

 

 でも、待ち合わせの街の噴水に到着すると、彼が言っていたことが非常に的を射ていることが分かりました。

 

 簡素な着物に下駄。

 

 大変格好はシンプルだ。

 

 それだけなのに・・・存在その物が違っていたのだ。

 

 ただそこにいるだけで、彼は他のなにかと違う。

 

 理屈ではなく、直感でそれが分かる。

 

 超越者。

 

その言葉が的確だろう。

 

「久しぶりです!!師匠!」

 

「ああ、久しぶりだな。」

 

 彼が天の道を行き、総てを司る男って言った意味が分かった気がする。

 

 この男には何かある。

 

 眷属最大の規格外となったイッセ―君。

 

 その基礎を作り上げた何かが・・・。

 

「それと・・・ほう。珍しいな。」

 

 彼、天道総司さんは私の方を見て言う。

 

 何が珍しいのでしょうか?

 

「俺は俺の道を行く故、大したことは教えられない。だが・・・。」

 

 私とイッセ―を交互に見て・・・。

 

「イッセ―。お前の夢は順調のようだな。呆れもしたし、それでもできるほどの器を持っていることは分かっているが。」

 

 何故か苦笑いで私を見ていました。

 

 イッセ―君の夢って確か・・・。

 

 

 

 SIDE イッセ―。

 

 天道師匠。僕が尊敬する男の一人だ。

 

 最初は俺様キャラの変わった奴かと思うかもしれないが、すぐに違いに気付くだろう。

 

 俺は師匠のようになりたいと思ったけど、他でもない師匠がそれを止めさせた。

 

「俺には俺の道がある。そしてお前にはお前の道が・・・な。」

 

 俺は師匠の様になれない。

 

 それを突きつけた言葉でもあり、違う道を行くべきと諭してくれた。

 

 俺は、そのおかげで今の夢を持てた。

 

 その夢を語った時、さすがに師匠は完璧に呆れていたが、それでも貫いて、今回の言葉をもらったのだ。

 

「お前の場合は皆を幸せにするためのハーレムを作るのだろうな。」

 

 まあ・・・そう言われると照れくさい。

 

 欲望にまみれた夢だけど、幸せになりたい、幸せにしたい気持ちは本物だ。

 

「自ら作るのと自然と作られていく二つのパターンがあると聞く。お前の場合、意思は前者のつもりだが、経過が後者というのがちぐはぐだ。そのあたりもお前らしい。翔一の奴がなんというか。」

 

 師匠は父さんとも友達だ。

 

 今回は父さんと新作料理の打ち合わせをしているらしく、その足で俺達にも会ってくれたのだ。

 

 久しぶりで本当に嬉しい。

 

 誰にでも自慢できる最高の師匠なのだから。

 

「さて・・・なら一つ・・・。」

 

 師匠は朱乃さんを見て一言。

 

「話を聞く限りだと、すでにお前にはお前の料理がある。いや・・・受け継がれているというべきだろうな。イッセ―の言葉からそれが分かる。」

 

「あらら・・・。」

 

 朱乃さんはその言葉に驚く。

 

「それでもまた前に進みたいのなら、己の道を振り返ることだ。」

 

「道を・・・振り返る。」

 

「前に進みたいのなら、自分がどうしたいのかがそこに置いてある。それをもとに前に進むが良い。」

 

 その言葉に、朱乃さんが震える。

 

「あっ・・・・っ。」

 

 その過去に何かがあったからだろう。

 

「怖いはずだ。辛いはずだ。だが・・・それを乗り越えるのが前に進む事。それが料理にも現れる。お前はもうすでにその領域に達している。あとは心次第だ。」

 

「・・・・・・。」

 

 言葉を失う朱乃さん。

 

 それはいつも余裕があるお姉様としての顔ではない。

 

 ただ、道に迷い戸惑う一人の女の子として顔だった。

 

 俺が初めて見る朱乃さんの隠された素顔だった。

 

「・・・師匠。一つ質問。」

 

 それを見て俺は師匠に質問をした。

 

 

SIDE 朱乃。

 

 私は言葉を失っていた。

 

 私の過去に答えがある・・・。

 

 その言葉があまりにも痛すぎたからだ。ずっと隠していた。目を背けていた。

 

 でも、何よりも求めてやまないものがそこにあった。

 

 もうどうにもならないのに。

 

 諦めるしかないのに。

 

 あの人は私を見て、私の核心をついてきたのだ。

 

「・・・・・・。」

 

 何を口にすればいいのだろう。

 

 突きつけられたのは、私にとってあまりに酷なもの。

 

 そんな時だった。

 

 イッセ―君が言ってくれた。

 

「師匠、質問があります。」

 

「なんだ?」

 

「それの強さって、俺が手を差し伸べる形でもいいのですか?」

 

「ほう・・・。」

 

 イッセ―君の言葉は私にとって完全に予想外であった。

 

「誰もが己の道を持っている。ずっと一緒というのはまずない。だが、故に道が重なる。皆が別々の方に歩いているが故にだ。その影響で共に同じ方へ歩きだすこともある。故に可笑しいことではない。」

 

「そうですか。ありがとうございます。」

 

 道に付いて説く天道さん。

 

 そして、イッセー君は私に向かっていう。

 

「手伝います。朱乃さんが前に進むために。」

 

 彼が私に手を差し伸べてきたのだ。

 

「何を抱えているのかまったくわかりませんけど、それで美味しいご飯が作れて、一緒に食べられるのなら安い物です!!」

 

「・・・・・・。」

 

 人が良いとは思っていた。

 

 でも、何も知らないのに私に手を差し伸べてくるなんて・・・。

 

「あなたに・・・。」

 

 それなのに私は言ってしまった。心の奥底に締まってある・・・憎しみとやるせなさに。

 

「あなたに何が分かるというの!?私の何が・・・。」

 

 いつもの私じゃない。

 

 あるのは、心に色々な苦しみを募らせ、それで壊れそうになっている脆く醜い私の心。

 

 それにイッセ―君は驚いていた。

 

 天道さんは黙って見ているだけだ。

 

「・・・・・・あっ。」

 

 やってしまった。

 

 私の嫌な部分を見せてしまって。

 

 でも彼は苦笑いをしながら答えてくれる。

 

「確かに俺は何も知りません。どうしてそんな事になっているのかも知りません。だからこそ、知りたいですし、教えて欲しいです。」

 

 それをイッセ―君は受け止めてくれる。

 

 こんなにも私は醜いのに・・・。

 

「こんなエッチな男でよければ何時でも力になりますよ。気軽にどうぞ。」

 

 優しく、それでいてしっかりと私を見てくれる。

 

 卑怯なくらいにだ。

 

「イッセ―君。」

 

 これがイッセ―君を意識した瞬間だったのかもしれない。

 

 何かとんでもないことをしでかす規格外のアギト。

 

 エッチで、それでいて誰よりも熱血でお人好しな歳下の子。

 

 そんな認識に上書きされたのだ。

 

 私を受け入れてくれる男の子に。

 

 隠していた私の心。

 

 それを察し、その上で手を差し伸べてくれた男の子の言葉に。

 

「ふっ、本当に罪づくりな弟子だ。まあ、ついでだ。一緒に翔一のレストランに行くか?そこでお前の食事も食べてみたい。」

 

「あっ・・・喜んで!!俺も師匠や父さんの食事を食べてみたいし。」

 

 イッセ―君は笑う。

 

 その笑顔が眩しい。

 

「・・・・・・・。」

 

 なぜ、眩しいと感じてしまったのだろう。

 

 まるで太陽のようだ。

 

こんな汚れた私にとってその光は毒のように思えるのに。

 

「朱乃さん。行きましょう!!」

 

 彼はそのまぶしい笑顔で私に手を差し伸べてくれる。

 

 私はその手を取る。

 

 その手を取ったのは他でもない私が光を求めてしまったのからかもしれない。

 

 

 

SIDE  ハルト

 

「・・・・・・はあ。」

 

 俺はその光景を放っていたプラモンスター、ガルーダ越しに見ていた。

 

 心配で監視用に放っていたのだが、それが思わぬことを知らせてくれることとなった。

 

予想はしていたのだ。

 

 イッセ―はそれ程の器と魅力を持つ男なのは十分理解していたのだ。

 

 そして・・・ついにあいつは。

 

「姉上が攻略され始めた。」

 

 頭を抱えてしまう。

 

「ははは・・・大変ですね。ハル君。」

 

 傍ではレイちゃんが苦笑いを浮かべている。

 

「だが・・・同時に期待もしてしまっているかな。あんなこと言われたらなんかこう。」

 

 あいつは手を差し伸べたのだ。

 

 苦しんでいる姉上に対して。

 

「まだ名乗れませんね。」

 

「少なくとも父上と和解してもらわないと。でないと父上にも姉上にも名乗れない。どうしようか悩んでいたけど、もしかしたらイッセ―がきっかけになるかもしれない。」

 

「その結果、イッセ―君があなたの義兄になってもですか。」

 

「・・・・・・意地悪だぞ、レイちゃん。」

 

「ふふふふ。伯父さんになる日も案外すぐ来るかも。」

 

「勘弁してくれ。」

 

 だが、もう一つ俺は抱えている案件がある。

 

 レイちゃんにすら明かしていないこと。

 

 それは・・・。

 

 他でもないレイちゃん自身の最大の秘密についてだ。

 

――――俺は彼女を守らないといけない。

 

 それは前世ではできなかった事。

 

 救う事は出来たが、守ることはできなかった事。

 

 再び巡り合えたことは俺にとってこの世界に転生してきた最大の奇跡だと思っている。

 

 悲劇の中、彼女を救いだせたのだから。

 

――――・・・コヨミ。

 

 まだ本格的に覚醒してはない。少しずつ、徐々に目覚めつつある段階だ。

 

―――――この世界で俺は希望を守れるのだろうか。

 

 前世よりも遥かに危険なこの世界で。

 

 そのための力は・・・まだ足りない。

 

 だからこそ、何故かイッセ―には期待してしまう。彼ならもしかしたら。

 

「・・・姉上との件、しばらく見守るか。」

 

 未来の俺が姉上に施した封印が解け始める可能性すらある。

 

 まだ、解けるのは早過ぎると思うが・・・。

 

 

 

 

SIDE 木場。

 

 今僕と巧はある方と模擬戦をしている。

 

 相手は・・・。

 

「死ぬかと思った。」

 

「あんたって、本当に怪物だよな。ハルトから聞いたとおりだ。」

 

 よりによって鋼鬼さんです。

 

 この人、僕達の中でダントツのパワータイプ。

 

 ダントツというが、そのパワーが尋常じゃない。

 

 それこそ変身前の状態でも上級悪魔を拳一発で倒す程。

 

 変身したらもう・・・最上級悪魔クラスでも瞬殺は確実だろう。

 

 そして主神クラスの力を発揮するもう一つ上の姿がある。

 

 あの牙王と戦いもすぐに中断させてよかった。

 

 本気を出した両者。

 

お互いのパワーとスピード、そして肉体の頑丈さが非常識すぎて、ぶつかり合いの余波で周りに天変地異レベルの災害が発生するほど。

 

 まさにラスボス。

 

 おまけにまだその強さは完成していないという・・・。

 

 まだもう一つ、鋼鬼さんは強くなれるのか確定しているとのこと。

 

まだそこに至るために修行中だとか。

 

 僕達からしたら「ふざけるな!!」と恨み事を言いたいくらいの怪物だ。

 

 そんな相手と変身していないとは言え、まともに闘うのは分が悪すぎる。

 

 しかもテクニックも十分あるのだ。

 

「お前らと戦うのはこっちもいい経験になる。2人とも似ている。典型的なスピードを駆使したテクニックタイプだからな。お互いに合わせるのも上手い。どんどん連携上手くなっている。」

 

 僕達の戦い方を見抜く眼力まで持っているのだから本当に手に負えないよ。

 

 前の合宿の時、よくイッセ―君は彼とまともに組み手できたよね?

 

「アギトの本能がこういう時羨ましくなる。」

 

「違いねえ。」

 

 僕と巧君はその組み手が出来た最大の要因であるアギトの本能が心底羨ましかった。

 

 もっともイッセ―君も何度も死を覚悟したらしいのでなんとも言えないけど。

 

 鋼鬼さんと身内の中でまともにぶつかれるのは噂のサイラオーグさんか、またはアギトのイッセ―君、あとは・・・ギルスとして進化を続けるネロ君。それにまだ底を見せない究極のテクニックタイプと言えるサイガ君と同じく底が見えないハルト君くらいか。

 

 サイガ君とハルト君の力の底はまだ見えないのが不気味だ。

 

 イッセ―君が言うには、サイガ君は山脈をふっ飛ばす何かとんでもない潜在能力があるらしい。

 

 ハルト君はあのコカビエルが心の底から恐怖を覚えるほどの何かを持っている。

 

「ハルトの右腕には神すら恐れる者が宿っている。」

 

 巧はそれが何か知っているらしい。

 

「それを使いこなしているあいつは・・・ホントすげえぞ。あの戦いでも解放しなかったのが救いだ。もう一つ隠している力もあるらしい。」

 

 なんでこう、イッセ―君の幼馴染は例外も無く皆怪物ばかりなのだろうか。

 

 イッセ―君が最大の怪物という罠付きで。

 

「それよりも今度はお前達が戦ったらどうだ?特に木場の場合はもう一つの力を早く禁手化させる必要がある。巧のそれにもまだ先があるのだろ?」

 

 鋼鬼さんの提案ももっともだね。

 

「そうだな。俺もまだ修行する余地はある。」

 

 巧君は手から紅い光を出す。

 

「あなた・・・フォトンブラットを生身で扱えるの?」

 

 それを彼は槍のような形にする。それを見たユウナは軽く驚いた様子だ。

 

 彼女は部長達と修行中で、一休み中にこっちを見に来たのだろう。

 

「何気にあなたも規格外ね。」

 

 フォトンブラットは五大ギアが持つ共通したエネルギー。それでいて、とてつもない猛毒だと聞いている。

 

「まるで堕天使や天使の光のように扱える。理由をして考えられるのは俺の中の堕天使の血かな?」

 

 まさかの激白がきましたよ。巧君って堕天使の血を引いているのかい?

 

「堕天使のクォーターらしい。人間の血の方が濃いから翼はねえけど。おかげで親父達から堕天使の光の使い方を教えてもらう形でフォトンブラットを使う事ができる。まだ大したことはできねえ。」

 

 扱えるのは中級天使程度の規模らしい。それでも十分危険だと思うけど。

 

 フォトンブラットをまるで堕天使の光のように使うってねえ。

 

「これは親父がその研究の成果で作ってくれた強化アイテムみたいなもんだ。人工神器の研究の応用らしい・・・。」

 

 それは左腕の時計である。ファイズアクセルと総督は名付けている。

 

「グレゴリってすごいわね。まさかギアの強化アイテムを作るなんて。」

 

「それができるのが俺のギア・・・ファイズギアの最大の特徴だ。出力は五大ギア中最も低いし、パワーも一番低い。だが、親父が言うには、その理由はエネルギーの安定性とそこからくる拡張性の高さにあると。このギアには他のギアには無い可能性が秘められている。それ引き出すのが俺の仕事ならやりがいがあると親父が張り切っていた。今もこのギアの強化アイテムを開発中らしいぜ。」

 

「・・・・・・・。」

 

 巧君、君のギアってもしかして、しかるべきバックがいる相手に渡っているよね?

 

 ファイズギア。別名、救世主のベルト。

 

 そして、もう一つ・・・可能性のギアと言われているらしい。

 

 その可能性の理由がよくわかったよ。

 

 総督が頑張った結果、発動したと思われるその可能性―――アクセルフォームだけど、はっきり言って脅威の一言に尽きる能力だ。

 

 通常の千倍以上という脅威の超高速行動能力。

 

 必殺技も威力が増大。

 

 同等の加速能力が無ければほぼ対抗できない。前の戦いは北崎が対抗手段を持っていた故に互角だったが、無かったらその時点で相手は積んでいる。

 

 増大した必殺技の嵐を瞬時に何発も叩き込まれるのだから。

 

しかも、まだバージョンアップ中。

 

 現在、巧君が身につけているのはあの戦いの後の改良版。稼働時間がもう一秒追加された上に、冷却効率が三倍になり、一分のインターバルですぐに使えるようになるとか。

 

 もう、驚異でしかない。こんな怪物じみた能力を彼の親父はよく見つけたよ。

 

「会ってみたいわ。ギアの事かなり詳しそうだし。」

 

 ユウナはその話に非常に興味を持っている。彼女もギアの保有者だ。

 

 そして、僕も。

 

「僕もこのギアも知りたい。」

 

 僕の中に秘められたもうオーガギア。

 

 五大ギア中最大のパワーと防御力、そして出力を誇るギア。

 

 その防御力は、核爆発の爆心地にいても無傷でいられるとか。

 

 ある意味では素の僕の戦い方と反対のギアだけど・・・。

 

――――私の禁手化と同時に使えるようになれば、まさしく剣帝の誕生よ。

 

 話にクウも加わる。

 

「私達の召喚機による禁手化はかなり柔軟なの。それこそ神器の禁手化と同じようにね。ギアの禁手化を取りこんで、二つの力を同時に発揮させることも理論上は可能。」

 

 二つの禁手化を同時に使う?

 

「それがあなたの到達点ね。今の神器の手札を増やしつつ、禁手化をさらに深める。手札を多く持っておくと色々と便利よ。私の力もあるし。」

 

 僕の相棒であるクウは本当に多彩な能力を持っている。分身に加え。最近では透明化の能力も発現。本来持っていない能力らしいけど・・。

 

 もっと多くの手札を用意しないと。

 

 僕は今、三つの神器を持っているも同じ状態。

 

 んん・・・?

 

 僕がそうだとしたら・・・。

 

「ねえ・・・それじゃ、イッセ―君の場合はどうなるの?」

 

『あっ・・・。』

 

 僕はとんでもない可能性に気付いてしまった。

 

 それは理論上三つの神器、それも神滅具を持ち、同じく存在その物が神滅具といえるアギトである彼。

 

 イッセ―君の次の進化も、複数の禁手化を同時に発動させる形態になるのじゃないのか?

 

 アギトの力と神器の禁手化の同時発動ということに・・・。

 

「アギトと召喚機、そして赤龍帝の篭手(ブースデットギア)は相性が良すぎる。瞬間的な破壊力なら俺も敵わない。」

 

 鋼鬼さんが告げる。

 

「アギトの通常形態の必殺キック。あれは計測の結果、三十トンの破壊力があるのは皆も知っているはずだ。」

 

 頭のクロスホーンを展開させ、足元にアギトの紋章を発生、その力を足に込めた必殺キック。

 

 それの破壊力は凄まじい。

 

「それをあいつはブースデットギアによって瞬間的に倍化。しかも、総て破壊力の倍化という形に変換させている。仮に十回の倍化を使っていると仮定してみろ。どれだけ倍化されている?」

 

 2の乗数、10回となると・・・・・・1024倍!?

 

『!?』

 

「それだけふざけたレベルまでに倍化された破壊力のキックを受けてみろ。俺だって即死どころか消滅しているわ!!全く、アギトにブースデットギアは反則だ。その力に耐え、なおかつ最大の破壊力を発揮できるように進化しているのだからな。」

 

――――あの二人。本当にとんでもない怪物と契約しわね。

 

 鋼鬼さんの説明に皆が戦慄する。つまりあのイッセ―君が倍化させて放つ必殺キックは少なく見積もっても三万トンの破壊力になる。

 

『・・・・・・・・。』

 

 それは、まさに必殺技。

 

 もう、キックの破壊力じゃない。物理の法則すら超越し、神すら殺せる威力。

 

 それにファイナルベントを併用させ、その分を倍化させているのだ。

 

 本当にふざけた破壊力だ。

 

 コカビエルが余波だけで戦闘不能になった理由が良く分かるよ。むしろそれで戦闘不能で済んだだけ、彼も相当な実力者だったんだね。

 

 そして、自身がその破壊力に耐えられるように悪魔の駒の転生機能を利用して身体を作り変えたのか。

 

 異常なまでに頑丈でタフなのも納得だ。変身前なのに小猫ちゃんの全力のツッコミも平気なのも・・・。

 

 今もそのための進化を続けていると。

 

 一体何処まで強くなるのやら・・・先が見えない。

 

「・・・・・・もうこの話はやめにしましょう。イッセ―とドライク、つまりアギトと赤龍帝の篭手の相性が良すぎる理由が分かっただけでも十分よ。さらに進化する余地もね。」

 

 皆部長の言葉に同意。考えるだけ、寒気がする。

 

 もう夏だというのに・・・。

 

「イッセ―先輩はグレモリ―眷属の最終兵器に決定。」

 

 小猫ちゃん。名言をありがとうございます。

 

 まさにイッセ―君は僕達の最終兵器だよ。

 

「いや~本当にすごすぎるにゃ。」

 

 小猫ちゃんと一緒に仙術修行をしていた黒歌も笑みをひきつらせている。

 

 まあ、その余韻をふっ飛ばすように話題を探す。

 

 そして、巧が僕とユウナの方を見て、その話題を投げかけてくれたのだ・

 

「話は戻るが、お前達のギアだが、親父が是非研究したいって言っていた。天と地。この二つのベルトもさらに強化できるかもしれんと。」

 

『・・・・・・。』

 

「簡単に言わないでよ。まだ三大勢力同士の対立関係は続いているのよ?」

 

 そこに部長が突っ込む。

 

「それなんだが、案外何とかなると思うぞ。何しろ親父が自分から会談を申し入れたから、ここから対立していた関係が変わると思うぜ?」

 

「アザゼルが?あのエゴの塊のような人が?」

 

 部長、総督に関しては辛辣ですね。

 

「まあ・・・親父は確かに神器マニアで、それでいていたずら好きだ。確信犯で愉快犯的なほどのな。だが・・・少なくても戦争を望んでいない。それを止めるために俺が動いていたのがその証拠さ。ヴァ―リやハドラ―の件もそうだ。ただ、身内の幸せを普通に願っているようにな。出ないと俺がこうやって今も生きてはいないし。」

 

 巧君とハルト君のおかげで本格的なグレゴリとの外交ルートができた。それを通じての三大トップ会談だ。

 

 悪魔サイドからはサーゼクス様とダンテ様に加えもう一人、魔王様がやってくる。

 

 天使サイドからもトップと後二人程使者が来るらしい。

 

 他にも元老院から護衛として、あの鋼牙さんが来る。

 

「・・・あなたの事を本当に大事にしているのよね。アザセルって。」

 

「恥ずかしいくらいに。まあ・・・それでも俺にとっても親父なんだ。誰が何と言おうと。」

 

 巧君を助けるために必死だったアザゼル。

 

 そして、他のグレゴリの面々。

 

「身内を大切にするという一点に関してだけは、私も分かるわ。その点だけでも会談に参加する材料にはなるか。」

 

 一体どんな人達なのだろうか?

 

「それよりもまあ、訓練やろうぜ。今度は同じオルフェノクとして。」

 

 巧君の姿がウルフオルフェノクに変わる。

 

「いいよ。こっちもこの力をうまくコントロールしたいからね。」

 

 僕もホースオルフェノクに変わる。

 

「へえ・・・だったら私もやらせておうかな?私のオルフェノクとしての力も知ってもらいたいし。」

 

 ユウナもクレインオルフェノクに。

 

「なら俺はじっくりと見させてもらおうか。んん?」

 

 鋼鬼さんがそれを観戦しようとしたその時だった。

 

「あんさん。相撲しないか?」

 

――――ちょっとキンタロス!!

 

良太郎に憑依したキンタロスの姿が。

 

「相撲か。良い鍛錬になる。」

 

 鋼鬼さんがやる気だ。

 

 二人とも四股を踏んでいる。

 

――――あの・・・身体はひ弱なので・・・。

 

「安心しい・・・。プロモーション、ルークや!!」

 

「へっ?勝手に昇格した!?」

 

 部長は驚いている。

 

 その状態で四股を踏むと、地面が揺れた!?

 

「これで身体は頑丈や!!文句あらへんやろ?」

 

―――――・・・あれ?悪魔の駒ってそういうシステムでしたか?

 

『・・・・・・。』

 

 イマジンってすごいね。悪魔の駒のシステムを逆にのっとっていないかい?

 

「パクパクパクパク・・・。」

 

 その光景に部長は何か言おうとしたが、驚きのあまりに言葉にならない様子だ。

 

 部長の頭痛の種は尽きない。

 

「ああもう・・・何でこううちの眷属はどいつもこいつも常識を平気で破壊するの!!?」

 

 もしかして良太郎君って兵士になるべくしてなったんじゃないの?

 

 複数のイマジンの憑依による戦闘スタイルを各昇格でさらに高める。

 

 そう言う変幻自在な戦闘が可能になっている。

 

 ある時はパワー、ある時はスピード。ある時はテクニック、ある時はウィザード、トリッキーも可能ってことに・・・。

 

 これはこれで無茶苦茶だ。相手に合わせて相性のいい戦い方ができる。

 

 しかも良太郎君本人も戦闘経験豊富で、かなり強い。

 

「うおおおおっ!!!お前良いパワーしているな!!」

 

「そういうあんさんこそ!!どりゃあああああぁぁぁ!」

 

 2人ががっぷり四つに組んでいる。あの二人・・・互角だ。

 

「おまけに強化具合が可笑しいわ!?どうなっているの!?」

 

 流石、良太郎君だ。

 

―――――あははは・・・それは僕のセリフでもあるよ。

 

 良太郎君も相当びっくりしている。でも、驚いても動じていない辺りはすごい。

 

 どうやったら、そんな領域に立てるのか。

 

 同じグレモリ―眷属男子として、そして、苦労人としてご教授を願いたいところだ。

 

「お前さん・・・鬼の修行うけないか!!」

 

 組みながら鋼鬼さんが勧誘しているぞ!?

 

「イマジンにそれが可能なのかいな!?」

 

「少なくとも試す価値はある!!その頑健さ、そして心意気、放置したくない!!」

 

「ええな!!約束やで!!」

 

「ちょっと!!これ以上の怪物にする気なの!?」

 

 部長の悲鳴が轟く。現時点で鋼鬼さんと互角の怪力。それがさらに強化って・・・。

 

あっ・・・悪夢だ。悪夢でしかない。

 

―――――そう言えばウラタロスもポルムさんから魔法を教えてもらってたよね?

 

「他の皆もこの世界での何かを取り入れようとしているみたいやしな。こっちもがんばらないと!!」

 

 他のイマジン達も魔改造され始めているのか。

 

『うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!』

 

 二人の相撲は白熱し、今度は張り手合戦になっている。

 

 無数の張り手がぶつかり合う。

 

「だが、まだ甘いわ!!」

 

 鋼鬼さんが張り手でふっ飛ばした!?

 

「こりゃ、やられたな。」

 

「いや、だが良い修行相手が見つかった。よろしく頼む。なんとかお前達を実体化させたいが・・・。」

 

 ここにまた、鋼鬼さんとまともに組み手をする猛者という名の化け物が誕生しました。

 

「あっ・・・あははは・・・これ、レ―ディングゲームではどういう扱いになるんだろ?こんな怪物ども使用できるのかな?」

 

 部長の嘆きに皆はうんうんと頷いていた。

 

 まずアギトであるアーシアとイッセ―君が問題だよね。イッセ―君は反則もいい所だし。少なくともアギトになるのは封印。あんな大規模破壊兵器としか思えない必殺キックなんて発動した瞬間、ゲームその物がフィールドごと消滅してしまう。

 

 アーシアちゃんだって戦闘力はイッセ―君ほどじゃないけど、その他の能力が異常すぎる。各種超能力の成長が著しい。

 

 神器の回復の力に加え、彼女がサポートに回ったら、下手したら相手は何もできないまま封殺されるかもしれない。

 

 眷属の中で最高のサポート役だ。

 

 僕は制限かからないと思うけど・・・。

 

「他人事じゃないわよ、佑斗!!貴方も間違いなくその怪物達の仲間入りしているから。」

 

 僕も入るってどういう事ですか?

 

「むしろ、佑斗はイッセ―とアーシアを除いたら、現時点でグレモリ―眷属最大の怪物よ?テクニックタイプである点ではある意味もっとすごい事に・・・。」

 

 部長の言葉に流石に僕はショックを受けた。

 

 ・・・・・・そんな馬鹿な。

 

 僕って、そんな怪物?確かに隠していたけどオルフェノクだったし。

 

――――――あなたねえ。応用が効く神器に、私との契約、そこにオーガギアの力もある。成長したら魔王になってもおかしくない程のスペックを誇っているのよ?

 

 クウの指摘を受け、改めて思う。そう言えばクウってクレアさん達と同格のとんでもない存在という事を思い出したよ。

 

 僕はここからどんなふうになっていくのか?

 

 

 

 それが怖くなってきた。

 

 

 

 

 

SIDE ハルト

 

 色々と頭の痛い思いをしながらリビングに行くと、そこには先客がいた。

 

「おじゃましているよ。」

 

「よっ!!」

 

 そこにはフィリップと翔太郎、そしてネロとゼノヴィアがいた。

 

「あんたらが俺の剣と銃をここまで愉快にしてくれたか?素敵過ぎて、現物見てから受け入れるのに二時間はかかったぞ。」

 

 彼の前にはあの魔改造されたアクセルクイーンとローズダブルの姿。

 

 早速ネロはそれに対して文句を言っている。

 

 確かに変わり果てたあれを見て茫然としていたネロは傑作だった。

 

 立ち直るのにかなりの時間もかかったし。

 

「ほう・・・これはまたすごい作りこんでいるな。」

 

 それをゼノヴィアはまじまじと見て、触っている。

 

「それくらいでないとギルスとなり、そしてここからさらに進化する君の力に耐えられないと考えてね。しかし驚いたよ。もう使いこなしているなんて。」

 

 その魔改造の張本人、フィリップははっきりと言う。

 

「そんなにすごいのかよ。」

 

「君はイッセ―と同じく進化をしている。スパーダの力とギルス。そこに新しく僕からプレゼントがある。受け取ってくれたまえ。」

 

 フィリップが出したのは変身ベルト。バイクのハンドルにスピード計が付いたようなデザイン。

 

 そこに中央にそのスピード計をかこむように三つの差し込み口と横にスロットがついている。

 

――――――アクセル。

 

「これはアクセルドライバー。君が持っているアクセルメモリの力を最大限に引き出すためだけ作られたドライバーの改良型だ。そこに人工神器のデータも加え、さらに強化している。そこにいるハルト君のおかげでね。」

 

 俺は巧を助ける際の手土産として、フィリップが欲しがっていたギア関係の人工神器のデータを提供した。

 

 そして、それをもとに彼らはアクセルドライバーを強化、改良したのだ。

 

「いや・・・早いな。もう完成したのか?」

 

 提供者はもちろん俺だ。アザゼルからも許可は貰っている。

 

「早く彼の新しい進化を見たくてね。本当に、楽しみだよ。ガイアメモリとギルスの融合。ゾクゾクするね。アシュカも同じ気持ちだろうし。ふふふふふふ・・・。」

 

「・・・・・・・。」

 

 ネロはそのセリフに軽く寒気を覚えているようだ。

 

「俺はモルモットか?」

 

「データは欲しいかな?これとギルスの力がどのように融合していくのか非常に楽しみなんだよ。ふふふふふふふ・・・。」

 

 そこは否定しないんだ。

 

 うん・・・そこにいるのは神龍じゃない。

 

 マッドサイエンティストという名のイッセ―の幼馴染がいる。

 

「魔王眷属としての初仕事はこのドライバーのテスターだ。もちろん上司であるダンテ様には許可はもらっているよ。」

 

 すでにダンテ様は買収済みか。

 

 ちなみにそのデータはアザゼルも欲しいって言っていたぞ。

 

 巧のギアのさらなる強化のためにもデータが少しでも欲しいって。

 

「ダンテの野郎・・・よりによって初仕事がこれかよ。」

 

 頭が痛い様子のネロ。

 

「はあ・・・それでこのメモリは何だ?」

 

―――トライアル。

 

 それはまるで信号機みたいなヘッドが付いたメモリ。

 

「君にも超音速の世界を体感してもらいたくてね。これも改良済みだよ。面白いくらいにね。これは左腰にあるマキシマムホルダーに装着すれば発動するよ。」

 

「後、三つは?」

 

――――――サイクロン。

 

―――――ヒート

 

 それはWが使っているのと同じメモリ。

 

 そこにもう一つ。

 

――――ビート

 

「アクセルと相性抜群のメモリだよ。このドライバーはこの三つに特化している。三つ同時に使ってくれたまえ。多分・・・そのメモリに合わせたフォームチェンジになると思うから。ビートメモリは右腰のマキシマムホルダーに装着したらいいよ。」

 

 風と熱。

 

 なるほど、加速に深い関わりがある。

 

 でも鼓動の記憶ってどんな効果が?

 

 ここからネロはどのように進化するのか?

 

「僕は今回の会談で三つの勢力が手を取り合う事に期待しているよ。」

 

 フィリップは笑う。

 

「そうしたら、もっと大きなことができる。面白い世界にできそうだ。そう考えるだけでゾクゾクする。」

 

「ほう。そうなったら、こっちもそっちと色々できそうだな。」

 

 そうなると研究者としての俺も面白いことになりそうだ。

 

 この世界に希望を与えるのは悪い話しじゃない。

 

「なんか君とは面白い話ができそうな気がする。」

 

「こっちもそう思う。」

 

『同志!!』

 

 がっちりと握手させてもらおう。

 

「頼むからお前らが手を組むな。嫌な予感しかしねえ。」

 

「同感だ。はあ・・・もう。」

 

 ネロと翔太郎が互いにため息をついている。

 

「・・・こっちは仕事が増えそうだ。なんか天界やグレゴリからも依頼がきそうで。この前だってハルト、お前から個人的に依頼があったからな。ほら、その結果だ。」

 

 翔太郎は俺の依頼を達成してくれた。

 

 俺が探しても見つからなかった相手を見つけてくれたのだ。

 

「うん、噂通り、いやそれ以上にいい仕事している。まさか見つけてくれるなんて。報酬は割り増しで口座に振り込む。もちろん、秘密は厳守で頼むよ。」

 

「分かっているって。しかし割り増しって、よほど手詰まりだったんだな。」

 

 俺の記憶の通りならと信じて探した甲斐があった。

 

「まあ、個人的にまた何かあったら力にはなるぜ?医療に詳しい奴も知っているからな。」

 

「秘密厳守のわりには熱いな、君は。だが、その時は頼む。何としても目覚めさせたい。」

 

 すでにこのイッセ―宅では二つの勢力が交流している。

 

「それがハーフボイルドさ。」

 

「だから誰がハーフボイルドだ!!まあ、同僚、いや後輩が出来たのもう嬉しいが。」

 

「そうですかい。はあ・・・もう。あんたらが先輩なんてな。」

 

 イッセ―を中心とした輪がどんどん広がり、そして重なっていく。

 

 これがどこまで広がるのか、俺には想像もできない。

 

 だが、それが確実に俺にとっていい方向に進んでいる。

 

 それだけは間違いなかった。

 

「あっ・・・みなさんお茶です。」

 

 そこにエプロン姿のデネブがやってくる。

 

 お茶と菓子を持ってきてくれたのだ。

 

 彼は家政婦になっている。おせっかいな部分もあるけど、中々有能。

 

 だが、疑問があるとしたら、それをイッセ―達の両親はあっさりと受け入れている点だ。

 

 おかしい。

 

 イマジンって認識阻害の力でも持っているのか?

 

「・・・それとゼノヴィア君。君に伝えたい事がある。」

 

「なんだ?」

 

 フィリップはゼノヴィアにある事実を伝える。

 

「前世は契約しているイマジンはデネブだけのはずだったよね?」

 

「そうだが?」

 

「だが、イマジンのデータ元に作った測定器をみると・・・。」

 

 イマジンという存在を計測する機能をバットショットに搭載したらしい。

 

 カメラ機能付きのメカコウモリみたいなそれもまた色々と改良中。

 

「君からもう二体、イマジンの反応がある。今はまだ眠っているみたいだけど。」

 

「なん・・・だと?」

 

「全然気付かなかったぞ!!」

 

 その結果に驚くゼノヴィアとデネブ。

 

 まだまだグレモリ―眷属の潜在能力は未知数だ。

 

 ここからどのように成長していくのやら。

 

 

 

 

 

 SIDE 朱乃

 

 

 本当にいい経験をさせてもらった。

 

 天道さんとイッセ―君のお父さんの二人の料理人の競演。

 

 技術もそうだけど、ちょっとした工夫もそうだ。

 

 そして、気付いたことだけど、イッセ―君は二人の技を受け継いでいる。

 

 それを指摘すると。

 

 イッセ―君のお父さんから「君はもうそこまでの領域にいる。」と褒めてくれた。

 

 天道さんも同じことを言ってくれたのだ。

 

 私ってそんなレベルかしら?

 

「少なくとも、俺と引けを取らないかと。」

 

 あらら、イッセ―君から褒められた。

 

 悪い気がしない。

 

 料理人として一定水準以上の技術を会得か。あとは自分の道。

 

 私もそろそろ向き合うべきなのかもしれない。

 

 あの時は一人だった。

 

 でも、私はリアスに出会い、そしてそこから多くの仲間達と出会った。

 

 そして今・・・隣にはイッセ―君がいる。

 

 私はもう一人じゃない。

 

 少なくても、私の味方になってくれる人がいる。

 

 私を受け止めてくれる人がいる。

 

 こんな醜い私でも・・・良いっていてくれる人が。

 

「・・・ふふふ。」

 

 そうなると・・・無性に欲しくなってしまうわ。

 

 私はさりげなくイッセ―君の腕に抱きつく。

 

「わわわわわわっ!?朱乃さん!?」

 

 おもっきり胸を当てると、彼は慌てふためく。

 

「ふふふ。」

 

 可愛い反応ね。ああもう・・・たまらない。

 

「イッセ―君。私と浮気してみない。」

 

「えええええぇぇぇぇぇぇ!?」

 

 イッセ―君が驚いてくれる。ああもう、そそられるわ。

 

「これからじっくりと・・・。」

 

「何しているのかしら?朱乃?」

 

 そんな私達を見て、ついに現れる。

 

「部っ・・・部長!?」

 

 憤怒の様子のリアス。

 

 あれは完璧に嫉妬しているわね。

 

 そのオーラにアギトのイッセ―君が慌てふためいている。

 

 いくら強くても女の嫉妬には敵わないのね。

 

 ふふふ・・・本当に可愛いんだから。

 

「あらリアス。いい機会だから言っておくけど、私も参戦することにしましたわ。」

 

「朱乃!?」

 

「だって・・・こんなに可愛い子を放っておけないもの。」

 

「へっ!?えっ!?」

 

 イッセ―君。私もあなたの夢に貢献してあげますわ。

 

 ふふふ、覚悟してね。

 

 

 

 そんな時であった。

 

「・・・えっ?」

 

 私の中である光景が蘇る。

 

 その男の事と私の過去である手が重なって見えた。

 

 それは母が私を庇って斬られた時の後の記憶。

 

 絶望に膝をつき、意識がもうろうとなり、倒れた私。

 

 体が・・・心がひび割れ、自分が自分で無くなっていく。

 

 そこに斬りかかる男達。

 

 それを助けた四人の背中。

 

 一人は金髪の小柄な女の子。

 

 一人は変わった指輪をした青年。

 

 一人は・・・赤いカブト虫みたいな男。

 

 そして最後の一人は・・・・・・。

 

―――――イッセ―・・・君?

 

・・・それがイッセ―君の手と重なったのだ。

 

 

 

「・・・・・・・。」

 

 茫然としている私はそのまま倒れる。

 

「朱乃!!朱乃!!?」

 

「朱乃さん!?」

 

 倒れる私を抱きとめるイッセ―君。

 

 心配そうに私を見るイッセ―君の顔と手、それが記憶の中に会ったそれと完全に一致する。

 

「しっかりしなさい!!」

 

 それを見て嫉妬していたはずのリアスまでもが心配して声をかけてくる。

 

「どう・・・して・・・。」

 

 どうして、イッセ―君が私の記憶の中にいるの?

 

 それも目の前にいるイッセ―君と同じ姿で。

 

 薄れ行く意識の中、私は疑問と困惑に溢れていた。

 

 私の過去に何があったの・・・?

 

 

 

SIDE アーシア

 

 私は朱乃さんを見てある事に気付きました。

 

「記憶が封印されている?」

 

 それは外部からの力で記憶が閉じていたのだ。

 

「消せないのか?」

 

「私には無理です。かけた本人か、または自力で解かないと。今回の件はその封印の一部を自力で解いてしまった反動だと思います。」

 

「そうか。まあ・・・後は頼む。みんなにも話してくる。」

 

 イッセ―さんはそのまま部屋を後にします。

 

 その背中にごめんなさいといいたいですけど・・・。

 

「そう言うややこしい事情、色々と頼む。事情説明はうまく纏まった時点か話すべき時が来たらでいい。」

 

「・・・はい。必ず説明します。」

 

 イッセ―さんは分かってくれています。

 

 朱乃さんの記憶にかかった封印。

 

 誰がそれをかけたのか、私が知っていることに。

 

「・・・・・・・。」

 

 私はハルトさんを見る。

 

 神様、許してください。

 

 私はみんなに嘘をついています。

 

 どうして朱乃さんに封印がかかっているのか知っています。

 

 でも、その理由故に言えないのです。

 

「すまない。一つ目の封印がもう解けてしまうなんて・・・。」

 

 皆が去った後にハルトさんがお礼を言いながら朱乃さんの手を取ります。

 

「辛いですね・・・。」

 

「ふっ・・・だが、自力で封印が解けそうになっているのはむしろ良い事らしい。それを乗り越えた時に解けるようにしたからと。そう言う意味ではイッセ―には感謝だな。」

 

 何しろ、未来のハルトさんがかけたという無茶苦茶な話、誰も信じません。

 

「そのための指輪は完成している。これを俺はどうやって過去の姉上に使うのかずっとわからないままだった。母上の行方も。」

 

 死にそうになった朱乃さんの母をどこかに連れて行ったという話もあります。

 

 その行方をずっと探し、先ほど見つけたそうですけど・・・。

 

 この矛盾の最大の問題はどうやって時間を超えるのかという事です。

 

 でも、その時間を超える手段が前の事件で分かってしまった。

 

 それがデンライナーなどの時を超える列車。

 

 そこに未来のイッセ―さんと私まで関わっているとなると・・・。

 

 大変ややこしいです。

 

「ライバルも増えましたし。」

 

 朱乃お姉様まで参戦してくるなんて・・・。

 

「・・・・・・それに関してはこっちも頭が痛い。」

 

「それでも幸せって意味ではいいんじゃないの?」

 

 ハルトさんと私の会話に、レイさんが入りこんでくる。

 

「はあ・・・そうなんだけどな。あいつが義兄になるのは少し問題が・・・。」

 

 頭の痛そうなハルトさんとそれをなだめるレイちゃんを見ながら私はドア越しにいる二人に念話を送ります。

 

――――――すみません。事情はまだ話せませんがフォローお願いします。

 

――――しかたないわね。

 

――――まあ、いいぜ。

 

 心配だったのだろう。様子を見に来てくれたキリエさんと巧さんです。

 

―――――キリエさんは巧さんから事情を聞いてください。その程度なら差し支えないと思いますので。

 

―――――お前、そこまで読み取るのか。

 

 フォロー役はこの二人にお願いしよう。

 

 でも、私一人のエゴでここまでしていいのでしょうか?

 

「いや、君は本当に色々と手をまわしてくれている。こっちからしたら感謝してもしきれない。」

 

「それに関しては俺もだ。あんたにはもう・・・頭が上がらん。」

 

 そう言いながら巧さんが堂々と部屋に入ってきます。

 

「それに一人じゃないですよ。」

 

 キリエさんもです。

 

「・・・はあ。フォロー役か?」

 

 ハルトさんもすべて察したようです。

 

「でも、一人で抱える羽目にならずによかった。」

 

 レイちゃんも笑っています。

 

「まだまだ、イッセ―に隠し事が多いな。俺って。」

 

 ハルトさんが苦笑しながら皆に笑いかけます。

 

「違いねえ。まあ、今回はややこしすぎる事情があるって分かっているからマシだ。」

 

 そんな私にもう一匹の相方もやってきます。

 

「ラッセ―。」

 

 私の使い魔である雷のドラゴン。

 

 私を慰めるように甘えてきます。

 

「本当にイッセ―も規格外だが、アーシアちゃんもすごいよ。」

 

「そうでしょうか?」

 

 それを見たハルトさんが感心した様子を見せます。

 

「うん・・・グレゴリのデータベースを見る限りでも、変身していないのにもかかわらず。ここまで多彩で強力な力を持ったアギトはいない。イッセ―とは確実に別の進化を遂げている。本格的な覚醒を果たしたら・・・どうなるのか想像もできない。」

 

 アギトである私。

 

 神様が残してくれた力。

 

 神様はもういないからわかりませんが、私には何となくこの力の意味が分かるような気がします。

 

 イッセ―さんのあの言葉。

 

 それが事実だと私は思えてなりません。

 

「もしかしたら、純粋な意味で神となれるのはアーシアちゃんだったりして。色々と神様の遺志を継いでいそうだし。」

 

 さすがにそれは恐れ多いです。

 

 キリエさんの言葉に私は謙遜した時でした。

 

――――――・・・・けて・・・。

 

「へっ?」

 

――――――誰か・・・たすけて・・・。

 

 私の頭の中に声が聞こえてきたのです。

 

「誰です?」

 

「どうした?アーシアちゃん?」

 

「声が・・・。」

 

―――――誰か・・・。

 

「テレパシー・・・ですか?」

 

 私はその思念に引き寄せられる。

 

「ちょっと行ってきます。」

 

 いつの間にかテレポテーションしてしまうくらいに。

 

 

 

 そして、そこにいたのは・・・。

 

「お願い・・・します。」

 

 超巨大な蛾のような生き物でした。

 

 それがある洞窟の中で倒れていたのです。

 

「あなたは・・・?」

 

 でも、私は彼女に恐怖を抱くことはありませんでした。

 

 アギトの直感みたいなものでしょうか?

 

 それで彼女が守護者であることを本能的に察しました。

 

「私はモスラ。・・・この世界に故在って迷い込み、もうすぐ私は命を落とします。」

 

 その声は穏やかな女性の声。まるでキリエさんみたいな感じがします。

 

 強い意思と優しさを兼ね備えた方の様です。

 

 そのふわふわした毛の生えた体はあちこちボロボロになっており、一部焼き焦げ、羽も穴があいていたりします。

 

 その命を癒すことは私にはできません。

 

 怪我なら癒せますが、もうこの方の寿命が。

 

 それが分かる故に目から涙がこぼれてしまいます。

 

「優しい子。だからこそ・・・ここに来てくれたのですね。」

 

 助けって言っているのに、何もできません。

 

「あなたに、この子をお願いしたい。純粋な心を持つあなたにならこの子を任せることができます。」

 

 傍には巨大な卵があります。

 

「私はもう、この子に力と経験しか残せません。ですが、あなたにならこの子に愛を教えることができるはずです。」

 

 私にあなたの子供を?

 

「ガ―!!」

 

 あれ?ラッセ―?

 

「ふふふ・・・お兄ちゃんになってくれるのですか?」

 

 優しい子ですね。

 

 あれ?あなたが口にしているのって何?

 

 黒い皮膚がついた肉片と金色の鱗がついた肉片・・・。

 

「あっ・・・あなた!それを食べてはいけません!!それは・・・。」

 

 それを見たて、モスラさんが慌てています。

 

「ガ―!?ががががが!?」

 

 それを食べたラッセ―が苦しそうにしています。体が黒く変わったり、金色に変わったり。

 

「ああ・・・あの二体の肉片が私の体についていたばかりに・・・。」

 

 苦しそうにしているラッセ―を見て嘆き悲しみます。

 

 ラッセ―を私は抱きしめます。

 

「大丈夫。あなたは強い子だから・・・。」

 

 すると・・・。光が・・・。

 

 それは神器の光とはまた違う光になって・・・。

 

 それがラッセ―を包み込み・・・。

 

「ガアアアアァァァ!!」

 

 ラッセ―は姿を変えて、私の腕の中で吠えます。

 

 深い蒼から銀色に近い白。目は蒼くなっています。

 

 そして何より、頭が三つになりました。

 

 そしてラッセ―のカードに書かれた種族名が・・・蒼雷龍から変わっています。

 

 えっと・・・白銀の光龍(プラチナ・レイ・ドラゴン)?

 

「あの二体の力を取り込んだというのですか?どちらも取り込もうとして逆に取り込まれるほどだというのに。」

 

 それを見たてモスラさんが驚いています。

 

「・・・これがあなたの力なのですね。総てを調和させる力。なによりも尊き力。」

 

 ですが、この光の本質を見抜いたのか穏やかな声に戻ります。

 

「私の子が、あなたの力になるように。最期にあなたに会えてよかった。私達の希望となるあなたに・・・。」

 

 モスラさんは光となって消えていきます。

 

――――――私の子を・・・お願いします。

 

 その言葉を残して。

 

 光は卵を包み、すぐに消えました。

 

「・・・・・・。」

 

 安らかに眠ってください。

 

 看取る事が出来て良かったです。

 

 突然なことで戸惑っていますけど、私が頑張らないと!!

 

 でも・・・。

 

「どうしましょう・・・。」

 

 目の前にあるのは体育館みたいな大きさの卵。

 

 さすがにこのまま運べません。

 

「う~ん・・・。」

 

「ガ―!!」

 

 その時。私にラッセ―があるイメージを送っていきます。

 

 それは、契約のカード。

 

 私はラッセ―の分とは別にもう一枚もらっています。

 

 なるほど、これを使えば。

 

 私は卵に契約のカードをかざします。

 

 そして、卵は見る見るうちに縮み、掌に収まる程度の大きさになりました。

 

 スーパーの卵よりも流石に大きいですが。

 

「・・・モスラさん。あなたの子供は大切に育てます。」

 

 私はこの場所を覚えておくことにした。

 

 一度訪れた場所はもうテレポテーションで自在に行ける。

 

 もう、私の力はそんなレベルまでに上がっていた。

 

 ここはどこか分かりませんが、大分遠くまで飛ぶ事も出来るようになっています。

 

 飛んでみて私も初めて気付きました。

 

 相当力が上がっていますね。

 

 私もイッセ―さん達のように変身する日が近いのかもしれません。

 

「後でお墓も立てないと。みんなが待っています。帰りましょう、ラッセ―。」

 

「ガ―!!」

 

 これが私の相方の出会い。虹色の守護神と白銀の聖龍王の始まり。

 

 また近い未来に・・・私を悩ませる困ったドラゴンとも契約します。

 

「・・・嫌な未来を見てしまった・・・。」

 

 なんでパンツなんですか。ああ・・・神よ。

 

 軽くめまいがします。

 

 私の試練はまだまだ続きそうです。

 

 

SIDE ポルム。

 

 鋼牙さんのところで色々な事実が分かった。

 

「この世界にまさかアバン先生の書が流れていたなんて・・・。」

 

「お前の師の本なのか。」

 

 この世界に呪文が使われている理由も納得した。

 

 ハドラーだけじゃなく、この本の存在があったからだ。

 

 おかげで魔戒法師達を中心に呪文が広がった。

 

 アバン流刀殺法をサイガや佑斗達が使っていたのも分かるという物だ。

 

 良い機会なので、魔戒法師達が使っている法術も勉強させてもらっている。色々と実戦的な術も多く、参考になる。

 

―――――――たった一日でいくつもの術を使える当たり、相当な才の持ち主だな。

 

 すでに発動のための魔道筆ももらっている。

 

 それなりの才はあるつもりだ。まあ・・・あの世界に行く際に偶然スキャンして取り込んでしまったあれのおかげなのだが。

 

「・・・あなたに聞きたいことがあります。この世界に来た理由の一つとして。」

 

 それはあの世界の皆、そして今は亡き父と母の悲願。

 

「勇者ダイとレオナ姫をずっと探しています。この名前に心当たりは・・・。」

 

 その名前を出した途端。

 

「・・・・・・。」

 

 鋼牙さんは無言。

 

 いや、覚悟していた様子だった。

 

「やはり、その名前が出てきたか。なら付いてきてほしい。」

 

 俺は鋼牙さんに後を付いていく。

 

 

 

 そこは小高い丘の上。そこにあったのは墓であった。

 

 それが答えだったのだ。

 

「そう・・・でしたか。」

 

「助けたかった。だが・・・到着した時にはもう・・・。」

 

 皆の思いは届かなかった。

 

 もう届けることはできない。

 

「お前はダイの仲間だったのか?」

 

「正確には父と母が盟友でした。同じアバンの使徒にして、共に俺達の世界を救ったと。父と母もずっと探してその旅の途中で亡くなりました。」

 

「そう・・・だったのか。」

 

「竜の騎士であるダイさんにこれを託したくて。」

 

 俺は翼からある剣を取り出す。

 

「・・・何だこの剣は。」

 

―――――ほう。凄まじいものだな。

 

 流石が超一流の剣士。見ただけでこの剣の凄さがわかるか。

 

 塚の部分が竜となっている剣。

 

「これはあの世界の神が作りし最強の剣。竜の騎士のための剣です。その名も真魔剛竜剣。それをさらに強くしようと試行錯誤を重ねられた剣です。ダイさんが持っている二つの紋章の力、全開させても耐えられるように。」

 

「竜の騎士か・・・。」

 

 鋼牙さんがその単語に感慨深そうに呟いている。。

 

「もう竜の騎士は途絶えてしまって・・・んん?」

 

 その時、剣が微かに動くのを見た。

 

「・・・この反応。どういうこと?」

 

「この世界にいるからだろう。竜の騎士が。」

 

――――そうだな。

 

「俺はお前の素性を聞いた時。これほど運命を感じた事はなかった。」

 

――――まったくだ。聖剣計画の時といい、これほどの繋がりが深いのだな。お前達の親の縁が息子の代にまで続いている。

 

「その剣を継ぐべき相手がこの世界にいる。お前もよく知っている相手だ。」

 

 どういうことだ?でも、すぐに分かることは・・・。

 

「いるというのですか?この世界に勇者ダイとレオナ姫の子供が。」

 

 あの二人に子供がいる。

 

 そういうことだろう。しかも、それが誰か鋼牙さんは知っている。

 

「ああ。今は俺の息子だがな。」

 

 鋼牙さんの息子?

 

 って、それってまさか!?

 

「サイガだ。あいつがお前の探していた相手。今代の竜の騎士だ。」

 

「・・・・・・・。」

 

 俺はその名を聞いた時、確かに運命という物を感じだ。

 

 あまりに意地悪な神の巡り合わせに流石に言葉を失ってしまった

 

 俺達はこんな深い縁があった。

 

「そう言う事・・・でしたか。」

 

 そうなると色々と納得できる。

 

 あの山脈をふっ飛ばしたのもおそらく・・・。

 

「探したよ~。鋼牙お義父様。」

 

 そこに非常にノリの軽い美少女がやってくる。

 

「頼むから父は止めてくれ。」

 

―――その前のお前さんのほうが圧倒的に年上じゃないか。

 

「にゃはははは、まあいいのだ。」

 

 先ほどまでのシリアスな空気をぶち壊してやってきたのは・・・。

 

「誰この美少女?」

 

「・・・あれ?この子って前の事件の・・・。」

 

「こいつはセラフォルー・レヴァイアタン。ダンテと同じ五大魔王の一人だ。」

 

 冥界の五大魔王の一人でしたか!!

 

「あれ?でもなんでそんなすごい人が、鋼牙さんをお義父様と?」

 

 その質問に鋼牙さんは大変渋い顔する。

 

――――代わりに俺が説明してやろう。かなり愉快だぞ?

 

 そして、ザルバにより一通りの事情を聴く。

 

 フフフフ、あいつめ。隅に置けない。

 

「へえ・・・ちょうどいいや!!アドバイザーとして協力をお願いしたいの!!」

 

「ええ・・・任せてください。」

 

 なんかこの方とは仲良くなれそうな気がする。

 

 この後イッセ―とある打ち合わせを行う事になる。ええ・・・だったらこっちが思い切りプロデュースしてやる。

 

 ふははははははははははははははははははははは!!

 

「お前、あのハルトという男とは別の意味で魔王だな。」

 

 魔王。ふふふふ・・・魔法をたしなむ者として、それはむしろ褒め言葉なのだよ!!

 

 ハルト君もそう言っていた。そう言った意味でも彼とも意気投合していたりする。

 

 それに、実際、魔王でもあるし。

 

「ヨッシャ。だったらこういう計画はどうかな?」

 

「いいねえ。あとサイガの性格からするなら・・・。」

 

 本当に面白くなってきた。

 

 あとでソーナ会長とイッセ―とも打ち合わせしないと。

 

「・・・もう意気投合しているか。」

 

――――サイガの坊ちゃん。完全に積みだな。

 

 我が運命の盟友のために、面白おかしく一肌脱いでやる!!

 

 

 

SIDE イッセ―

 

 今サイガは家にはいない。

 

 ホラーが出現したらしく、轟竜と共に出ているのだ。

 

 その隙を狙い、俺達は集結している。

 

 サイガを除いた俺の幼馴染連中全員に、グレモリ―眷属全員がだ。

 

 例の計画をいよいよ実行に移すために。

 

「みなには伝えてあると思うが、サイガにはいよいよ責任をとって貰う。」

 

 そう・・・サイガ以外全員があの事実を知っているのだ。

 

 徐々に広めていき、皆の賛同をついに得られた。

 

「僕も同志の幸せのために協力する。ええそりゃもう全力で!!」

 

 木場を抑えたのは非常に大きい。

 

 ユウナ、いい仕事している。

 

「サイガ君。そんな罪深い子だったなんて。これは何とかしないと。」

 

 キリエさんも完璧に抑えたぜ。

 

「小猫から聞いた時はびっくりしたにゃ。罪作りもいいところにゃ。」

 

「ああ。だが、あいつも身を固めてもいい頃合いかもしれん。あいつはそう言ったところは鈍感過ぎる。良い機会だ。」

 

 小猫ちゃんのおかげで鬼夫婦も賛成に回った。

 

「まさか魔王様に惚れられるなんてな。」

 

「不幸なのか幸運なのか分からなくなるよね。」

 

 ゼノヴィアと良太郎は比較的良識的な見解。

 

 でも、協力はしてくれる。

 

「計画の発動時期は追って知らせるらしい。・・・あのポルムが全面プロデュースする。」

 

『!!!?』

 

 あいつの叡智はもう皆が知るところだ。

 

 愉快犯で、確信犯的ないたずら好きなのも含めてだ。

 

「どうも例の魔王様と偶然会って、意気投合したらしい。それで全面協力するって。」

 

 正直説明に困っていたところだ。でも、むしろどうしてこんな面白い事を黙っていたのかと、言っていたくらいだし。

 

 サイガ。もうお前の包囲網は完成しているぞ。

 

 実は轟竜もグルだし。

 

クレアとドライクが二人で説得。

 

 その魔王の契約している相手を将来の嫁相手と紹介する形で買収済み。

 

 轟竜がサイガの帰る前に知らせてくれるので安心して会議が開ける。

 

「皆よろしく頼むわ。」

 

 部長の言葉に、皆は頷く。

 

「ダンテ様からも同じ様な言葉は頂いていますわ。ふふふふ・・・。」

 

 ユウナもやる気だ。

 

 さあ、サイガ。

 

 お前の罪を数える時はもうすぐだぜ。

 

 

SIDE 渡

 

 僕はある取引材料を元にグレイフィアさんとサーゼクス様に会いに行っていた。

 

「ほう・・・これはありがたい。」

 

「いえいえ。」

 

 それは授業参観のお知らせです。

 

 リアス部長、ごめんなさい。

 

 ある情報を得るために、あえて鬼になります。

 

「そして、その対価を君には与えたよ。」

 

「はい。これはリアス部長には内緒にしてほしいことです。」

 

「・・・そうだね。でも、すまなかった。君の身内を悪魔にしてしまって・・・。」

 

 サーゼクス様の言葉を僕は止める。

 

「いえ。命を救ってくれた事に感謝しても、恨む道理はありません。よく生きてくれたと感謝しています。でも・・・。」

 

「・・・リアスの成長は著しい。君の教えや、カ―ミラの存在が大きいのだろう。少し見ない内に体も、そして心も強くなった。まさかケルベロスを蹴り倒すなんて、すごい子になったものだよ。その功績で、彼が封印が解ける。その縁で会いにいけるだろう。」

 

 やっとか。

 

 兄さん。やっと弟を見つける事が出来ます。

 

 引きこもりになっているのは予想外だけど。

 

「ようやく彼にサガの主になってもらえる。」

 

 僕の周りに飛び回るのはサガ―ク。

 

『・・・・・・・。』

 

 それを見たサーゼクス様は固まっています。

 

「ねえ。君はリアスの眷属をどう思うかな?」

 

「へっ?」

 

 どうもサーゼクス様は部長の眷属に不安を持っているらしい。

 

 すごく頼りになるメンツだと思うけど?

 

「・・・はっきり言うと、魔王眷属すら超える面々ばかりなのだよ。アギト二人を初め、この世界の異常な連中ばかりが集まってきたような気がする。」

 

 なるほど。確かに異常なメンツばかりですね。

 

「特にイッセ―君の関係する人物はどれも異常だ。彼を中心にまだ集まってきそうで。」

 

 それって僕も含まれますよね。

 

「君の弟君も僧侶の変異駒でようやく転生できたほどの潜在能力を秘めている。それも通常の僧侶の駒の三倍以上の価値をもってだ。」

 

 さっ、三倍以上!?

 

「今でも十分危険な力を持っているけど、それ以上の何かを秘めている。その答えの手がかりがようやく分かった気がするよ。まさか彼が、ファンガイアの王族の一員だったとは。」

 

「・・・・・・。」

 

 あの子がそこまでの潜在能力を?一体何を秘めている?

 

「ドラゴンは強き物を引き寄せる。赤龍帝、そしてアギトのイッセ―はその傾向が強い。我もそれに引き寄せられた。」

 

 あれ?オ―フィスちゃんもいつの間にか来ている。

 

『・・・・・・・。』

 

 そして、その姿をみたサーゼクス様とグレイフィアさんが目を点にして驚いている?

 

「おかげで渡に会えた。」

 

 そう言いながら腕に抱きついてくる。うん・・・甘えられているのか。

 

「・・・はあ。君がいるとは聞いていたけど、実際に会うとびっくりするよ。」

 

「我の契約者。故に誰も渡さない。」

 

「・・・契約!?」

 

――――クレアったら、よりによってオ―フィスに契約のカードを渡したのよ。

 

――――その結果が、この異常事態か。

 

 アルファさんとゴルトさんまで現れる。

 

「きっ、君は世界を塗り替えるつもりかい?おっと、正体はばらしたらだめだったね。」

 

 僕はオ―フィスちゃんの正体をまだ知らない。

 

 いや、あえて知ろうとしていないのだ。

 

 それを彼女自身の口から聞く日を待っている。

 

 まだそのための準備中だと。

 

 それまで待っている。

 

 それを受け入れた瞬間、初めて彼女の満開の笑顔を見た。

 

 正直見惚れる位の満開の笑顔。

 

 その破壊力を察してほしい。

 

 その結果、前よりも懐くようになった。

 

――――――あなた・・・近い将来覚悟した方がいいかも。

 

「そうですね。」

 

 アルファさんが何を言いたいのか、それが分からないほど僕は鈍感ではない。

 

 オ―フィスちゃんがこっちに向けてくる感情が何かも察している。

 

 本人はまだ自覚が無いみたいだけど。

 

 自覚した時・・・僕もいい加減あれを乗り越えるべきなのかもしれない。

 

 あの辛い過去を。

 

「失礼するよ。」

 

「あなた様に呼ばれるなんて光栄としか言えないね。」

 

 狙ったように現れたのはアシュカ・ベルゼブブ様とフィリップ君。

 

 緑の数式と共に唐突に現れたのだ。

 

「フィリップ君のおかげでデータ転送による移動ができて楽でいいよ。」

 

 一体、今の冥界ってどんな技術水準になっているの?

 

「すまない。オ―フィス様を借りて行くよ。」

 

「行ってくる。夕飯までには戻る。」

 

 そう言ってオ―フィスちゃんは姿を消す。

 

「続きはラボで。」

 

「そっちはゆっくりしてくれたまえ。」

 

「くれぐれも失礼が無いようにお願いしますね!!下手なことをしたら冥界が滅びます。」

 

 グレイフィアさんが必死に念を押している。

 

 オ―フィスちゃんってどんだけすごいの?

 

「さて・・・、会談の場所も決まったところで、授業参観の打ち合わせをしたい。リアスはどんな授業予定なのかね?カメラもそれに合わせて・・・。」

 

 やれやれ。

 

 こうやって個人的な交流を持っていると分かるけど、サーゼクス様はシスコンだ。

 

 それもすごいレベルの。

 

 こちらの兄と仲良くできそうなくらいだよ。

 

 

 

 

 SIDE フィリップ

 

「我決めた。あの組織から離脱する。」

 

「例の組織の事?」

 

 ラボでオ―フィスはそう告げる。

 

 彼女を象徴として担ぎあげている例の組織、そこから降りるというのだ。

 

「だが、我を慕ってくる者がいる。皆と共に離脱したい。そのために全知の龍神と魔王にお願いがある。」

 

 その言葉にオ―フィスちゃんは黒い蛇を作り出す。

 

「これ・・・無限の力を秘めし蛇。これを使って我の駒を作ってほしい。」

 

「君の駒?悪魔に転生させるための?」

 

「いや・・・我の眷属に転生させるための駒がほしい。この駒で。」

 

 彼女の手に現れたのはチェスではなく将棋の駒だった。

 

『!!?』

 

 つまりオ―フィスちゃんは・・・。

 

「我・・・眷属を持つ。」

 

「ほう、将棋を元になんて面白い事を考えるね。王将の駒を悪魔の駒でいうクイーンにするつもりかい?」

 

 オ―フィスが想定している駒は、王将を悪魔の駒であるところの女王と同じ存在とした形にしたいとのことだ。

 

 なんとなくだけど、その王の駒を誰に使いたいのかわかる。

 

 いじらしいね。

 

「でも、無限の力を解析されるのじゃ・・・。」

 

「いやアシュカ。それは難しい。何しろ無限の体現者はあくまでも彼女だ。解析できても再現はまず無理だろう。彼女の存在その物を解析しないとね。」

 

「なるほど。だが、そんな事をすれば・・・。」

 

 僕の中で最悪の未来が思い浮かぶ。

 

「僕としては黄金のキバを敵に回す真似はしたくない。いや、下手したらイッセ―達全員が敵に回るかもね。そうなったらどうかな?僕の相棒も黙っていないし。」

 

 アシュカもそのあたりは分かっているみたいだ。

 

 そんな事すれば冥界は間違いなく滅ぶ。

 

 遊び心と良心のバランス。そのあたりはきちんとしている。

 

「うむ・・・その無限の力を持つ蛇を必要な数だけ提供してほしい。それを加工する形で駒を提供するよ。しかし、悪魔じゃなくてドラゴンに転生か。それはそれで面白いよ。成功したらタンニーンなどで他のタイプの転生駒を試作してみようかな?」

 

 それでも新しい転生システムを作るのにわくわくしている。

 

「フィリップ君。そっちもゾクゾクしているじゃないか。」

 

 当然だ。面白い試みだからね。

 

「あと、無限に関してはこれでどう?」

 

「これって・・・。」

 

 オ―フィスの手に出現した空のガイアメモリ。それに彼女が力を込めた結果・・・メモリが変化する。

 

―――――インフィニティー!!

 

「力になればと思う。」

 

 無限の力を持つガイアメモリへと。

 

「・・・・・・・。」

 

 アシュカが驚きに目を丸くしている光景は新鮮だ。

 

 いや、僕も同じだ。

 

「・・・分かった。大切にさせてもらうよ。これは切り札になる。でもこのままじゃきっとメモリの出力がでかすぎて使えない。そのために色々と調整しないと・・・。」

 

 アシュカはそれを受け取る。とても大切そうに。

 

「・・・冥界の技術がまた上がりそうだ。」

 

 無限の記憶。

 

 確かに切り札だ。

 

「君たちはとんでもない事を企んでいるね。」

 

 そこで現れたのはサーゼクスだ。渡君との会談を終え、こっちに来たようだ。

 

 サーゼクスはオ―フィスに用があるらしい。

 

「一連の事件の黒幕。その象徴として君は担ぎ込まれていたよね?」

 

 その言葉にオ―フィスは首を横に振る。

 

「いや、別の存在が象徴になった。我、それに備えないといけない。」

 

『!!?』

 

「それは異世界の悪魔。我と同等か、それをしのぐ力を持つ魔女。時間と結界みたいな形で空間を操り、無数の白いぬいぐるみみたいな使い魔をしたがえている事までは分かる。正体までは分からない。でも・・・。」

 

 その言葉で、僕はこのメンツの中でいち早くある異常に気付く。

 

「まどかと似た感じの力だった。」

 

『!!?』

 

 僕はもう一つの規格外を誰よりも早く知ることになる。

 

 まどか。

 

 サーゼクスとアシュカは気付いていないけど、それはイッセ―君の母親の名前だ。

 

 それってどういう事だい?

 

 イッセ―君の家族。

 

 オ―フィスはとっくに気付いていたある事に僕も漸く気付くことになる。

 

 

 

 

 SIDE ???

 

 レストランの閉店時間になっても俺達は語らっていた。

 

 久しぶりに友との語らいも悪くないからだ。

 

「これからさらに苛烈になるぞ。アギトの力を持つ者が四人・・・いや、五人現れたのだからな。」

 

「はははは・・・・きっちり僕も含まれるのね。」

 

「当然だ。お前がこの世界で最も進化したアギトだからな。いや、むしろ因子を撒いた異世界の神の後釜と言っていい存在か?お前の進化の到達のおかげで、異世界のアギト騒動は一段落ついた。人間その物が新しいステージに立つという形でな。その気になれば権力などは思いのまま、まさに新たな神として人を統べる立場にもなれただろうに、お前はそれに興味がないというのが笑える。」

 

 目の前の男は神の座をむざむざ捨てた大バカ者だ。

 

 だが、それがあいつらしい。

 

「そんな翔一君と対等に話せるあなたも大概だと思うよ?」

 

 そこに彼の妻―まどかも現れる。

 

「だが、そのおかげで彼女と出会えた。」

 

「お前にとってはそれが最大の幸運か。」

 

「よくいう。君も手伝ってくれたのに?」

 

 二人の出会いの物語に俺ははかなり深く関わっている。

 

 二人の結婚の時、仲人もやっていたと知ったらイッセ―の奴がどんな顔をすることやら。

 

 そして、そのおかげである問題が起きている事もだ。

 

「悪いがまだ見つからない。君の大親友は。」

 

「そう・・・。」

 

 彼女を救うために、彼女の力を奪った存在。

 

 それでもまどかにとって彼女が友なのには変わらないらしい。

 

「またせた。ん?お前・・・だれ?」

 

 そこにもう一人現れる。

 

 無限の龍神であるオ―フィス。

 

 彼女は俺の方を見て首をかしげる。

 

「彼はイッセ―君の師匠だよ。そして超越者。時間を司る神速の神と言える存在かな?」

 

 そして、その隣にはフィリップまで。

 

「さて・・・僕も仮にも神なので、この事態に付いて説明を貰えないかな?気付いたという事は資格あるだろ?もっとも、オ―フィスが迂闊に口を滑らせたせいでもあるけど。」

 

 ついに全知の龍神も気付いたか。

 

「・・・しまった。」

 

 オ―フィスは無表情だが、己の失態に気付く。

 

 その仕草が可愛いのは認める。

 

 だが、まどかよ。それを見てたまらず抱きつくな。

 

 だって可愛いだもんて視線で訴えても困る。

 

「検索でも流石に分からないよね?」

 

「他の皆も順調に進化を重ねて行けば気付くはずだ。特にアーシアちゃんとネロ君はその類の能力は極めて高い。進化の著しいイッセ―もそうだし、近いうちに気付かれる。」

 

「あの子もどんどん強くなっている。そして、ついに神の後を継ぐって言った。」

 

 まどかは我が子の成長に感慨深そうにしている。

 

「皮肉だよね。普通の子として平和に生きて欲しいのに、あの子はこの世界のアギトの因子を得てしまった。元々異世界のアギトの因子を持っていたというのに。」

 

「・・・彼は因子を二重に持っているということか?」

 

 彼はただのアギトじゃない。異なる世界のアギトの因子を持つ変異体。

 

「異様なまでに早い進化も頷ける。それほどまでに濃いアギトの因子を持てばそうなる。ましてや、異世界の神の血まで受け継いでいるとは。力が発現するまで普通の人間と変わらなかったから誰も気づかれない。」

 

「私は元々人間だから。翔一君もそうだし、だから普通の子としてあの子は生まれたの。」

 

 フィリップは気付く。イッセ―の進化の秘密に。

 

「体が普通の人間だから、強過ぎる力にあの子がそれに耐えられない恐れがあった。だから力を封じていたけど・・・。」

 

 まどかはさりげなくイッセ―の力を抑制していた。

 

「それを悪魔の駒が解決してしまった。」

 

 でも、その抑制も意味がなさない。体がそれに耐えられるように転生機能を利用して飛躍的に進化してしまった。

 

「うん。あの子の進化はもう止まらない。でも・・・。」

 

 母親として何を不安に思っているのかは明らかだ。

 

 強過ぎる力はそれだけで不幸になる。

 

「安心したまえ。彼は一人じゃない。」

 

 それをフィリップは会えて否定する。

 

「彼自身も一人で大したことできないことを理解している。だが・・・。」

 

 フィリップは別の事を危惧している。それは俺も一緒だ。

 

「それ故に、その仲間達を失った後の彼の逆鱗が怖い。アギトの力が暴走するとなると・・・それにあの神器には覇龍(ジャガーノートドライブ)がある。それと呼応したら・・・。」

 

 下手したら冥界が滅ぶ。それほどの脅威をイッセ―は秘めている。

 

「その時は俺が止めるさ。あいつの師として。」

 

 彼が怒りで暴走する恐れがある。そうなった時、俺はあいつを倒す形になっても全力で止めるだろう。

 

 他でもないあいつ自身が滅びなんて望まないはずだからだ。

 

「その上で、あいつを怒らせた奴を叩きのめす。」

 

「その時は僕も駈けつけていると思うよ。」

 

 翔一まできたら、相手が可哀そうだな。だが、仕方ない。

 

 あいつの怒りはおそらくそう言った類だ。俺達が怒る理由にはなる程の。

 

「そうだね。私もどうなるのか・・・うっ・・・。」

 

 そこでまどかの様子が変わる。

 

 口元を抑え、そして苦しそうにしたのだ。

 

「・・・えっ?」

 

 翔一もそこである事を感じ取ったようだ。

 

 俺はその類の力はないが、察する事くらいはできる。

 

「おや?」

 

「おめでとうと言わせてくれ。」

 

 フィリップも、オ―フィスも感じ取ったらしい。

 

「ははは・・・そうか。今度は娘か。」

 

「うん。一誠・・・お兄ちゃんになるよ。」

 

 アギト、いや、神の一族がまた一席増えることになる。

 

「だが・・・何かの竜の神器を持っている。イッセーと同じ何かを。」

 

「・・・しかも神器付きか。」

 

 しかも、神器が付いているのは確定付きで。

 

「そうか。」

 

「この子は平和に生きて欲しいけど・・・。」

 

 神の一族と言える彼らの不安は尽きない。

 

「平和を願うのは当たり前の事だ。」

 

 彼は神であっても人でもある。そして普通の家族なのだ。

 

 当たり前のように父と母は息子を心配し、想いやっている。

 

 そんな、暖かい家族。

 

「だからこそ、俺が・・・いや、俺達がいる。今度の夏休み、俺達があいつにさらなる修行を付けやる。アザゼルの奴にも相談してある。」

 

「・・・そっちって堕天使の総督とも交流があるの?可笑しくもないけど。」

 

 夏休み、イッセ―、覚悟しておけ。

 

 俺達先輩ライダーと強力なドラゴン達がお前を徹底的に鍛えてやるからな。

 

 

 

 

 




 色々な事実が明らかになる話。

 ここから停止教室のヴァンパイアを始めたいと思います。

 まだまだポルムのスペックは明らかにしませんが・・・彼は恐ろしいスペックを秘めています。

 ではまた会いましょう!!

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