赤龍帝の幼なじみ達   作:THIS

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 三章の最大の山場です。

 ここでイッセーがやらかします。


 


神がいないのなら・・・

SIDE イッセ―

 

 コカビエルの腰にあるベルト。それはハルトと同じベルト。

 

 そのやかましい音声もまた全く同じだった。

 

「変身。」

 

 そして、奴は変身する。

 

「お前・・・。」

 

 白いローブを纏ったその姿を見間違うわけがない。

 

 それは俺がアギトに覚醒するきっかけとなった魔法使いの姿。

 

「前の時も邪魔をされた。その借りも返させてもらうぞ。」

 

 奴は別の指輪に切り替える。

 

―――――フォールダウン、ナウ!!

 

 それは堕天の指輪。

 

 その音声と共に奴はさらに変身する。

 

 黒いローブに背中からは十枚の黒い光の翼。その一つ一つに紅い目がついている。

 

「さあ・・・戦争の始まりだ。」

 

―――――ゲート ナウ!!

 

 コカビエルが無数の召喚陣を展開。

 

 そこから、次々と怪物と堕天使たちが出現。しかも堕天使たちも同じようなドライバーを身に付け、変身している。

 

 これだけの戦力をこいつは保有していたのか?

 

「戦争のための戦力だ。さあ・・・お前達は私が直々に相手にしてやる。」

 

―――――――ランスレイン・・・ナウ!!

 

 コカビエルが軽く手を振るうと、巨大な光の槍が一斉に現れる。

 

 その数・・・百以上、いやもっとあるぞ!?しかも一つ一つが電信柱みたいな大きさをしている。その大きさの槍を一度にこれだけ・・・!?

 

「コカビエルの奴・・・厄介な力を!!」

 

「ハルトには感謝しないとな。あいつの研究成果を横取りした結果だ!!私のは違うが、おかげで部下達を魔法で強化できたのだからな!!」

 

 似ていると思ったらあいつの研究をパクリやがったのか。

 

 ハルトが知ったらものすごく怒るぞ。

 

 コカビエルがミサイルの様な槍の雨を上空に発生させたまま降り立つ。

 

 そこに木場達が斬りかかる。

 

 木場だけじゃない。ゼノヴィアもだ。

 

「悪いが、この姿になった私は魔王クラスなのだよ。」

 

 その二人を光の結界を展開させることで弾き飛ばした。

 

 隙がない。

 

 アギトの本能で分かるぞ。

 

「ぐっ・・・。」

 

「さすがに今のお前達と接近戦をしようとは思わない。特に空間すら斬るレベルまでにデュランダルを使いこなすお前は厄介すぎる。小娘の癖に不相応に戦い慣れているのも気になるが・・・。」

 

「あいつは私の因縁だ。この世界に転生してきた故にその腕前は相当なものと考えておけ。」

 

「それはどうも。前世の戦闘経験値。それが上乗せされているというのか。」

 

 ゼノヴィアと牙王。厄介な因縁だよな。

 

「しかし、面白い。そっちもそんな切り札を持っていたのか。変身する上に、その先があるとは。」

 

 牙王がコカビエルの隣にならぶ。

 

 ・・・ラスボスが二体って、反則もいい所だ。

 

「諦めんじゃねえぞイッセ―。」

 

「そう言う事だ。」

 

 そんな俺に弦太郎とゼノヴィアが構える。

 

「これも神の試練ね。かなりしんどいといってやりたいわ。」

 

 イリナも文句を言っているぜ。

 

「ふははははははははは!!」

 

 だが、その文句にコカビエルが笑う。

 

「お前達も健気だな。もうすでにいない主のために戦おうなど!!」

 

「何を言っているの?」

 

 部長がその言葉に反応を示す。

 

「ははははははあは!!そうだった。お前達下々にはあの戦争の真相が伝わっていなかったのだった。ついでだ、教えてやるよ。」

 

 コカビエルは狂ったように笑い、そして告げる。

 

「あの三すくみの戦争で魔王だけじゃなく・・・神も死んだのさ。」

 

『・・・・・・・・。』

 

 あいつは今、なんて言った?

 

 神様が死んだだと!?

 

 その場にいる全員が信じられないという表情を見せている。

 

「そっ・・・そんな。」

 

 アーシアが校門の傍で膝をついている。

 

 アーシアがああなるってことは、あいつが言ったことは真実なのか?

 

「知らなくて当然だ。神が死んだなど誰が言える!!人間は神がいないと心や法も保てない不完全な存在。おまけに他の堕天使や悪魔達も知ったらどうなるか?それを知っているのは各勢力のトップとごく一部の者達だけだ。先ほどバルパーが気付いた様子だったがな。」

 

「やはり・・・そうだったのか。」

 

 膝をつくバルパー。あいつも腐っても聖職者。相当ショックだったのだろう。

 

「そんな・・・じゃあ僕たちは何のためにあの施設で実験を・・・。」

 

 木場も、そしてその同志達も相当ショックだったみたいだ。

 

「神はいない。そして、戦争も種の存続が互いに危ぶまれる故に、それどころじゃなくなったのだ。何しろ神がいない故に、純粋な天使は生まれない。堕天使は天使が堕天しないと生まれないわけだからな。影響は大きい。悪魔サイドでさえ、純粋悪魔は希少な存在。どの種族も、人間を交えなければ存続ができない程まで落ちぶれた!!!」

 

 コカビエルの言葉に俺は気付いてしまった。

 

 アーシアや、木場でさえあれだけショックだったのだ。

 

 なら・・・あいつらはどうなんだ!?

 

「そんな・・・。」

 

「・・・・・・。」

 

「嘘よ・・・そんなの嘘よ!!」

 

「・・・・・・。」

 

 良太郎はまだ大丈夫みたいだ。でも・・・他の三人が。

 

 弦太郎ですら涙を流しながら膝をついている。

 

「神はいないのか・・・。俺・・・いつか友達になりたいと思っていたのに!!」

 

「・・・・そんな・・・そんな・・・。」

 

「・・・・・・・。」

 

 ゼノヴィア、そしてイリナはもう言うまでもない。2人とも見ていられないほど狼狽している。

 

 三人ともそのショックで変身が解けてしまった。

 

「アーシア!?アーシア!?」

 

「気をしっかりもちなさい!!」

 

 校門では倒れたアーシアを部長と朱乃さんが介抱している。

 

「ミカエルの奴は頑張っていると思うよ。神が残したシステムを代わりに運用し、天使と人間を纏めているのだからな。システムさえあればエクソシストや神への祈りも機能する。だが・・・それでも完全ではない。その聖魔剣がいい例だ。」

 

 木場のあの剣。あれって偶然じゃないのか。

 

「そして、アギト。お前のそのバグの一つといえるな。何しろアギトに神滅具(ロンギヌス)が宿ることは過去に一つもなかった。何しろの神がアギトに神器が宿らないように調整していたのだからな!!お前のような存在がいることこそ、神がいない最大の証拠になるのだよ!!」

 

――――――なるほど。

 

―――――何か可笑しいとは思っていた。だが、そんな背景があったということか。

 

 中の二人が納得した様子を見せる。

 

 だが・・・その前に俺は思う事があるんだ。

 

「さあ・・・戦争を始めよう。お前達を滅ぼし尽くし、今度こそ我らが勝つ!!そのための戦力も整えたのだからな!!!」

 

 圧倒的な強さと、絶望でしかない真実。

 

 それで周りの空気が一気に落ち込む。

 

「それがどうした?」

 

 そんな中、俺はぽつりとそんな事を言ってのける。

 

「な・・・に?」

 

「お前・・・俺のダチ達を絶望させて楽しいのか?」

 

 俺は歩き出す。一歩、一歩、足を踏みしめて。

 

「なぜだ?何故・・・お前は絶望しない?」

 

「絶望なら一度味わっている。それに俺は夢があるんだよ!!ハーレム王になりたいという夢、そして溢れて止まらない欲望がな!!」

 

「おっ・・・お前、こんな時に何を言っていやがる?可笑しいだろ!?」

 

 可笑しいのは分かっている。

 

 まあ、これだけの欲望があるからこそ、俺なんだ!!

 

 たとえば部長のおっぱいを考えてみろ。

 

 それだけでこの程度の絶望などふっ飛ばせるわ!!

 

―――――相棒。こんな時に欲望を爆発させるな。

 

―――――いや、すごいメンタルしているわ。

 

<BOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOST!!>

 

「それに、前から疑問には思っていたんだ。どうしてアーシアみたいないい子が酷い目に合わないといけないのかって。神様って奴がいたら辛い思いをした分、アーシアの代わりにぶん殴ってやりたいと思った。それもできない事がわかった。だが・・・お前ら、何時まで落ち込んでいやがる。」

 

 俺は後ろで絶望している弦太郎、イリナ、ゼノヴィア、そしてアーシアに向けて声を叫ぶ。

 

「死んでも、その神様の遺志は残っているだろうが!!」

 

『!?』

 

「神様は存在していたんだ。それに変わりはない!!」

 

 俺は一喝する。

 

「それに弦太郎、イリナ!!お前ら、仮面ライダーを名乗るなら、覚えておけ!!」

 

 それもまた師匠の受け売りだった。

 

「例え神様がいなくても・・・俺達仮面ライダーがいるってな!!神様いなくなったびなら、その分、俺達が手を差し伸べればいいだけの事だ!!」

 

 俺に仮面ライダーを名乗る資格があるって言ったのは他でもない師匠だった。

 

 アギトになってからも名乗るのを躊躇っていたが、あえて名乗ってやる。

 

「だから、神様がいなくても俺がいる。仮面ライダーの名を持つ、俺達がいる。神様がいい人だったら、俺達がその遺志を受け継ぐまでだ!!」

 

『!?』

 

 その言葉に皆が驚く。

 

「神の遺志を継ぐだと?ふはははは・・・何をふざけた事を・・・。」

 

「俺は本気だ!!」

 

 コカビエルの嘲笑を一蹴する。

 

『!?』

 

「そりゃ、神様の遺志なんざ、分からねえからそこから知らんとな。その上で継ぐか決める。だが、俺の無限の欲望が面白そうだって後押ししている!!それに・・・。」

 

 俺は思うんだ。

 

「せっかくアギトになれたんだ。ハーレム王ついでに、それくらい欲張った目標があっても罰は当たらねえ!!」

 

『・・・・・・。』

 

 いや、でも俺って今すごい宣言したよね。これってハーレム王に加えて神の後釜になってやるといったような・・・。

 

――――スケベ心。ここまで来ると天晴だ。もう私はとっくに開き直っているがな!!

 

―――――ええ。ここまで来るともうついていくしかないわ。この子、とんでもない領域まで登りそう。

 

「ぐっ、アギト風情が!!神の力を持つからと言って・・・んん?神の力だと?」

 

 コカビエルはそこで言葉を止める。

 

「まさか、アギトが神滅具(ロンギヌス)を持つことになったのは!?そんな・・・そんな馬鹿なことがあってたまるか!!」

 

 あいつがうろたえながら何か言っているが、いい加減俺も怒りが限界なんだよ。

 

「だっ、だったら、俺の軍門に下れ!!戦争に勝った暁に世界の半分をくれてやる!!そうなれば、ハーレム王になるって夢だって自動的に叶う事になるぞ!!」

 

 コカビエルがとっさにそんな事を言う。

 

「・・・・・・。」

 

 その言葉に俺は動きを止めてしまう。

 

 それもいいかもしれないな・・・。

 

『オイ!!』

 

 おっとスマンスマン。

 

「あなたねえ。欲望に忠実すぎるわ。」

 

 部長からありがたいハリセンが入りました。

 

 変身しているおかげで威力が相当あります。

 

―――そこらへんも相棒なのか?

 

―――今のはそのまんま、魔王の誘惑じゃない。

 

「とりあえず・・・ダチを泣かせた分だ!!たっぷり受けとれ!!」

 

 俺は歩きだす。

 

「ぐっ、認めん!!お前ら風情が、神の遺志を継ぐなどと!!」

 

――――エクスプロージョン、ナウ!!

 

 俺は突然巻き起こった爆発を突っ切る。

 

―――――Explosion!!

 

 そして倍化の力を解放させた拳を叩き込む。

 

―――――シールド、ナウ!!

 

 コカビエルは光の盾を展開。

 

 盾と拳がぶつかる。

 

 そして、盾を粉々に砕いた拳がコカビエルの右頬を捉える。

 

「うおおおらあああああぁぁぁぁ!!」

 

爆発させた一撃に、コカビエルが吹っ飛ぶ。

 

「ぐ・・・お・・・。」

 

 へっ、一発かましてやったぜ!

 

「面白い。」

 

 んん?聞きなれない女の子の声が聞こえるぞ?

 

「欲望に忠実なアギト。そんな理由で神の遺志を継ごうというの?」

 

 見ると巧の傍に黒い服を着た少女が現れていた。

 

「ああ。だが、みんなで楽しくしないとだめだ。それに俺一人じゃ無理だって。あいつの言うとおり、人間は完全じゃない。だが、それって天使や堕天使、悪魔も、そして神様も同じじゃねえのか?コカビエルってやつも、ああ見ると俺達とそんなに変わりないように見えるしさ。」

 

「なっ・・・なに!?俺が貴様らと同等だと!?」

 

 コカビエルはその言葉にぎょっとする。

 

「完全な存在なんていない。だってさ、そうでないと神って奴は天使や、人間、アギトを生み出さなかったし、悪魔や堕天使だって生れなかった。それが答えなんだと思うぜ。」

 

「貴様・・・。」

 

 自分たちが完全でない。それを指摘され、怒りをあらわにするコカビエル。

 

「だからこそ、みんな。」

 

 よくよく考えれば、そんな大それたこと、一人でできるか!!

 

「幸いにも身内はみんな無茶苦茶頼りになるメンツばかりだ。一人じゃできないこともできる。むしろ、前の神様ができなかったことすらやり遂げて見せるぜ!!」

 

「なるほど。姉様が主に選んだ理由が良く分かる。」

 

 姉といいましたか?

 

「どうして出てきたの?」

 

 クレアが姿を現す。

 

「時がきたということ。私もあなたをずっと見ていた。あなたが苦しみ、そしてそれを乗り越えていくこともすべて。そして決めた。私は・・・。」

 

 女の子の姿が黒い炎に包まれ、その炎の中からそれは現れる。

 

 それはクレアそっくりな龍だった。

 

 色が黒いという違いがあるだけだ。

 

――――――そう・・・嬉しいわ。

 

 そして、クレアまでもが元の姿となって実体化した?

 

「久しぶり姉様。私もイッセ―と契約してもいい?」

 

 姉って、クレアのことなのか!?

 

「もうとっくに契約しているでしょうが。それに、とんでもない子よ?ハーレム王になる上に、神の後を継ぐってとんでもない発言をしたんだから。」

 

「だからこそ。その行く先を見てみたい。」

 

 その言葉と共に俺の右足に黒い竜の足甲が現れる。

 

「両腕は取られた。故に足に力を宿す。」

 

「カード自体はどちらの召喚機でも可能よ。だから安心して頂戴な。」

 

 えっと・・・。

 

 いつの間にか俺、二体目と契約していたのか?

 

 話からするとクレアの身内、妹みたいな存在と?

 

「俺が一度死んだ瞬間にだ。お前、こいつの力で禁手化したんだぞ?」

 

 巧が死んだ時?あの時にか?

 

 確かに声は聞こえたが・・・。

 

「こいつのおかげで何とか生きながらえてきたんだ。ありがとうな。」

 

 しかも・・・巧の命を繋いでくれていたのか。

 

「こっちからも礼を言わせてくれ。ありがとう。そして・・・よろしく!!」

 

 俺はクレアの妹に拳を差し出す。

 

 初めは首をかしげる彼女だったが、すぐに分かってくれたのだろう。

 

 彼女も拳を突き出し、互いに上、下とぶつけ合って、最後ぶつけ合って握手する。

 

「こっ、この期に及んでまだこんな存在を隠していたのか!?」

 

 コカビエルが本気で驚いている。

 

「自己紹介がまだだった。私の名前はドラグブラッカ―。姉様と対をなすもう一体の無双竜。」

 

 つまり、こいつも天龍クラスのドラゴン!?

 

「相棒。本当にドラゴンづくしで楽しいよ。」

 

 俺の後ろに三体のドラゴンが姿を現す。

 

 せっかくだ、三体共呼び出してやる。

 

―――――AdVent!!

 

 三枚のアドベントカードによって俺の後ろに三体のドラゴンが出現。

 

「今回はまた暴れ甲斐がありそうだな。」

 

「ふふふふ・・・ええ。しかしやっと話せるわ。どういう経緯でイッセ―に憑いたの?一応話は聞いてはいるけど・・・。」

 

「色々あった。巧を助けたいという願いもあったから。」

 

 ドラグブラッカ―とクレアの会話。

 

「・・・悪夢だ。アギトで神滅具だけで厄介なのに、そこにドラグレッタ―と対をなすもう一体の無双龍だと!?」

 

 うん。これならあいつが戦争に用意した軍団も何とかなりそうな気がする。

 

 コカビエルは体を震わせるがその通りだぜ。

 

 そして、俺はもう一つの力が発動する。

 

「私の力、あなたをさらに進化させる。」

 

 ドラグブラッカ―の言葉と共に俺の身体に変化が起きる。

 

――――プロモーション、クイーン。

 

 それは女王への変化。

 

 今まで俺はアギトに変身した状態で女王への昇格ができなかった。

 

 だが、今その昇格が可能となる。

 

 俺はまた進化をする。

 

 前がグランドフォーム。

 

 背中はアクアフォーム。

 

 右肩がフレイムフォーム。

 

 左肩がストームフォーム。

 

 という俺の四つの形態が融合した姿になったのだ。

 

「ほう・・・。」

 

「今までのフォームチェンジの融合。一つの進化の集大成ということね。」

 

「そう・・つまりあれは・・・。」

 

 部長が今の俺の姿に命名をつける。

 

「仮面ライダーアギト、四重奏形態(カルテットフォーム)ってところかしら?」

 

「なんか、てんこ盛りって感じで、親近感わく。」

 

 良太郎が何故か今の俺の姿に親近感を覚えているぞ?

 

「あれ?」

 

 そして部長の目の前に悪魔の駒が?

 

「これってイッセ―に使った兵士の駒の一つじゃない。どうして一つだけ?」

 

「一つ分だけ巧の生命維持のためにとして今まで使わせてもらっていた。もう必要ない故に返却した。おまけをつけて。」

 

 えっと・・・じゃあ、今の俺って駒価値七個分なの?

 

「そもそも悪魔に転生できていないのだから、あなたに駒価値は全く意味ないわ。それに・・・。」

 

 部長は駒を見て告げる。

 

「この駒、変異の駒(ミューテーション・ピース)になっている。これがおまけだというの?」

 

 一つ駒を変異にさせた状態で返却って。

 

「ぐっ、そこでさらに進化だと?アギト、いや兵藤一誠!!お前は本当に恐ろしい存在だよ!!やはり、あの方が言っていた通り、全力で貴様を潰す・・・。」

 

 軍勢が一斉に俺向けられている。でも、もう怖くない。

 

「相棒達・・・多分、この戦い最期の大暴れになるぞ。」

 

「ふははははは、大暴れこそドラゴンの本慮発揮よ!!」

 

「暴れ甲斐があり過ぎて困るわ。」

 

「私も暴れる。巧はどう?」

 

「フッ・・・命の恩人が闘うのにじっとしてられるか。」

 

 巧も立ち上がり、俺の傍に立つ。

 

 二人で言ってやる。

 

『さあ・・・改めて俺達の聖戦(ケンカ)を始めようか!!』

 

「上等だ!!」

 

 その言葉と共にケルベロスが二体程俺達に向けて突進してくる。

 

「イッセ―ったら、何を言っているの?『私達』って言葉が抜けているわ。」

 

 俺の前に現れた部長そのケルベロス二体を一撃で蹴り飛ばす。

 

 部長・・・順調に強くなっていますね。上級悪魔でも苦戦必至なケルベロスを簡単に蹴り飛ばすなんて。

 

「ふふふ・・・まったくやんちゃな子なんだから。」

 

「ったく。違うだろ?」

 

 その後に朱乃さん。そしてネロ。

 

「がああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 ネロは変身する。ギルスに。

 

「貴様ら・・・!!」

 

 コカビエルが上空に展開していた光の槍を雨のように降らせてくる。

 

 一発一発が必殺クラスの威力を誇るそれだったが・・・。

 

「神様がいないのは辛いです。でも、まだ私は手を伸ばせます。誰かの手を掴むことができます。手が届く限り、私はみんなを癒します!!」

 

「出来ることがまだある。だから、私はすべてを守る。」

 

『私達はまだ・・・立ち上がれる!!』

 

 それをすべて光の壁が防いでいた。

 

 アーシアとキリエさんまでやってきていた。キリエさんが神器の盾を使って俺達を守ってくれていたのだ。

 

 そして、俺達の疲労をアーシアの放つ光が癒していく。

 

 アーシアの回復の力。それが強くなっている証拠であった。

 

「・・・あれが噂のアギト。兵藤君の真の姿ですね。ネロ君もギルスの姿を見るのは初めてでしたね。」

 

「あいつら、すげえ力を隠していたんだな。でも・・・兵士の駒八個分の価値を明らかに逸脱しているぞ!?」

 

「アギトって・・・あのアギトかよ!!文献では知っていたが、イッセ―やネロがそうだったなんて、なんで早く教えてくれなかったんだ!?後で詳しい説明をもらうぜ。お前らを研究して、提出したいからな。」

 

「その前にアギトってなんだ?」

 

「あーと説明するとだな・・・。」

 

 そして、蒼のキバとなったソーナ会長と、匙、仁藤のコンビまでやってくる。

 

仁藤の奴、アギトまで興味の対象だったのかい!!俺を研究って・・・。

 

「そうだね。検索してもまだ分からない事だらけでゾクゾクするよ。アギトって言う存在はまさに可能性の塊。じっくりと研究してみたいよ。」

 

 そして、その場に一人の青年が現れる。

 

『・・・・・・・。』

 

 その姿に俺と巧は固まる。だって、ものすごく見覚えのある顔だったから。

 

「久しぶりだねイッセ―。そして、巧。君が無事でよかった。」

 

「えっと・・・えええええもっ・・もしかして!?」

 

 巧が生きている時点でもしかしてとは思っていた。でも、まさか・・・。

 

「そう、フィリップだ。ようやくこうやって語らえる。」

 

 その言葉に俺と巧は互いに視線を向ける。

 

 お互い、フィリップの生存を知らなった様子だ。

 

「なんで、全知の龍神まで来ている!?」

 

『龍神!?』

 

 コカビエルの発言に俺と巧は声を揃えて驚く。

 

 それって確か、ある魔王眷属の相棒だったよな。

 

「このタイミング、この場所が最高ね。それに、たっ君の無事も確認できたし。教えてくれてありがとうございます。フィリップ様。」

 

 フィリップの隣に降り立つのはレイちゃん。

 

「レイちゃん?どうしてここに?」

 

「それはこっちのセリフよ。あなたを探すためにグレゴリ中が大騒ぎになっていたんだから!!」

 

 えっと、巧が行方不明になってグレゴリが大騒ぎ?なんじゃそりゃ?

 

「そのショックで総督は今でも寝込んでいるし!!」

 

「・・・親父・・・。」

 

 レイちゃんの言葉に巧が天を仰いでいる。グレゴリの総督を親父って・・・。

 

「お前に話していなかったが、俺はグレゴリの総督アザゼルの息子なんだ。血は繋がっていないらしいが。」

 

『・・・・・・・。』

 

 その事実に皆が固まる。

 

 おい。今とんでもないことを聞いたぞ!?

 

「あとで、元気な顔を見せに行った方が良いな。」

 

 手から灰を落としながら巧が溜め息をつく。

 

「まったくもう、あなたはグレゴリの王子様でもあるのよ!!」

 

 ファイズとして戦っているのもすごいが、その肩書もすげえ。

 

「俺自身は大したことない。」

 

「・・・ファイズとして前線で大活躍してきたあんたをグレゴリの中のどれだけのメンツが慕っているのか一度じっくりと教えてやりたいわ。」

 

 人望もあるようで・・・。

 

「レイナ―レ。中級堕天使のくせに俺に逆らうのか!?」

 

 グレゴリの幹部であるコカビエルに対しても、レイちゃんはまったく臆していない。

 

「あの時は本当にお世話になりました。そのお礼を言いに来ただけです。ねえ?ハル君。」

 

――――――ゲート。

 

「その通りだよ。コカビエル。」

 

 レイちゃんが開いたゲートからその声は聞こえてくる。

 

 いや・・・、聞こえてしまったというべきだろうか?

 

「ヒッ、ヒイィィィィィ!!?」

 

 その声に、あれ?コカビエルが怯えている?

 

「君はもう二つ罪を追加するのを忘れていたよ。一つは俺の研究成果。よくも勝手に使ってくれたね。」

 

 現れたのはハルトの奴だ。

 

 あいつ・・・なんかめちゃくちゃ怒っていないか?

 

「もう一つ。思いだした事だけど、お前のおかげでイッセ―は一度死に、そのあとも大怪我を負ったとか?」

 

 右手からなんか黒くてヤバいオーラが立ち上っていますよ。

 

「なっ・・・なんでだ!?何故、異空間からこうも早く・・・。」

 

「お前、我の存在忘れている。」

 

「ははは・・・ありがとうねオ―フィス。」

 

「げっ!?無限の龍神まで・・。」

 

 渡。隣にオ―フィスちゃんを伴って登場。

 

「警告したはず。この街に手を出したら滅すると。」

 

 あれ?オ―フィスちゃんがものすごく怒っている?

 

 声色や表情は淡々としているのに、にじみ出るオーラがヤバい!!

 

「・・・・・・オ―フィスからも貴重な話を聞けたんだ。はははは、本当いい度胸しているよね、コカビエル?」

 

 ハルト。どうどう,落ち着こうね。

 

 お前、すげえ恐いぞ!?

 

「ホント・・・どうしたんだろうな?ハルトの奴、この世界で魔王化するなんて。まあ、ある意味、魔法使いの行きつく先としては間違っていないだろうが。」

 

「お前、確かハルトとは古い知り合いだったよな。昔は違ったのか?」

 

「ああ。まあ、基本的なところはそんなに変わっていない。今はただ、キレたらあのようにドS魔王になる程度の違いだ。」

 

「その違い、とてもでかいよな!?あれ、どんだけドSなんだ!?」

 

 首をかしげる呑気な仁藤と匙のやり取りを耳にしながら俺は同意する。

 

 確かにあれは魔王だ。ドS魔王だ。

 

 何この魔王降臨!?

 

『ガタガタガタガタガタガタ・・・。』

 

 敵味方問わず、皆が怯えとる。コカビエルだけじゃない。他の堕天使たちの怯えた様子が尋常じゃない?

 

「ヒッ・・ひいいいやるならせめてひと思いに!!」

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」

 

 うわ・・・、相当今のハルトって恐れられているんだな。

 

 だが、そのハルトが怒りを引っ込めこっちを見てくる。

 

「巧、無事でよかった。」

 

「わりぃ。でも、まだ何とか生きているぜ?」 

 

 そして、巧、ハルト。お前ら知り合いだったのかい!

 

「お互いイッセ―繋がりと知ったのはつい最近だがな。」

 

 苦笑する巧。その様子だと、お互いにそれを知った時に驚いたみたいだな。

 

「イッセ―、同じグレゴリの最高幹部の一人として許可する。コカビエルを完膚無きに叩きつぶせ。ただし殺すなよ?」

 

 右手を鳴らしながらハルトは告げる。

 

「処刑はこっちがやるから。他のお前らも同罪だ。覚悟しておけ。」

 

 ああそうですか。あいつもかわいそうだな。

 

「ぐっ・・・ハルトの・・・処刑・・・。」

 

 すでに処刑確定だなんて。

 

 コカビエルがその内容を知っているのかすっかり怯えておる。

 

 というより、ハルト?お前がグレゴリ最高幹部って初耳なんですけど?

 

 幹部であることは聞いたけど、コカビエルと同じ立場なのは初耳だよ!!

 

 どんだけ偉いの?

 

「お前。俺よりもよっぽど魔王らしいぞ。」

 

 そして、その後ろから・・・へっ?なんであんたがいるの?

 

「ダンテ!?」

 

 五大魔王のお一人まで出てきた!?

 

「よう、久しぶりだな若者共。そして、お前まで来ていたか。」

 

「変な巡り合わせだな。お互いに。」

 

「違いねえ。それと小僧たちも元気そうでなりよりだ。」

 

 ダンテ様までなんで出て来たのさ!?

 

 鋼牙さんも親しげに話しているし。

 

「いい師がいて退屈しなかった。いや、修行になった。」

 

「はあ・・・人外どもばかりでこっちは大変だったにゃ!!ハルっちは凄く怖いし。オ―ちゃんも無表情で怒っているし!!まあ、愛で甲斐があったけど。」

 

 鋼兄と黒歌まで・・・。

 

 しかも黒歌、さりげなくオ―フィスちゃんを愛でまくっていたのかい!!

 

「姉様!!お義兄様!!」

 

 そんな二人に小猫ちゃんが駆けより抱きついてくる。

 

 そういえば、小猫ちゃん、二人の事をかなり心配していたもんな。

 

「・・・さて。俺も覚悟決めるか。」

 

 ・・・・・・そうか。流石に三人目になるともう驚かなくなるぞ。

 

 巧が生きていた。

 

 そしてフィリップも生きていた。

 

 なら、もう一人も生きていても全くおかしくないね!!

 

「翔太郎・・・。」

 

 だが、恨めしい声だけは変えられねえぞ!!

 

「すまん。」

 

「すまんじゃねえ!!ったく、後で覚えておけ!!」

 

 はあもう・・・。死んだと思ったあいつらまで生きていて。

 

 何がどうなってんの?

 

 巧の場合はオルフェノクに覚醒したことで蘇ったことは分かるけどさ。

 

「こっちもやらせてもらおうか。なあ・・・相棒。」

 

 翔太郎が腰にベルトを装着。

 

 すると、フィリップの腰に同じ物が出現。

 

―――――サイクロン。

 

―――――ジョーカー!!

 

 二人が手にしているのはガイアメモリ!?

 

「変身。」

 

 そして二人がそれをそれぞれのベルトに差し込み、フィリップの方のガイアメモリが翔太郎に転送。

 

 それと共に辺りに突風が巻き起こり、翔太郎は変身する。

 

 魔王眷族の一人・・・Wに。

 

 ってWだと!?

 

 そして、フィリップはそのまま倒れながら転送された。

 

――――――便利だね。体は自動的に転送されるっていうのは。

 

「ああ。」

 

 俺は何となく理解したぞ。

 

 こいつら悪魔に転生して助かったのか?

 

 それも魔王眷属として!!

 

「ねえイッセー。一度あなたの幼馴染についてじっくりと考察してみたいのよ。」

 

 なんか頭痛そうな部長が俺の肩に手を置く。

 

「魔王眷属と全知の龍神、グレゴリの王子にグレゴリ最高幹部の一人って・・・さすがに可笑しいと思うのよね。あなたどんな人脈をしているの?」

 

 いっ、いや!!それに関しては俺も激しく同意ですって!!

 

「もう・・・あなたの身内。何が出てきてもおかしくないと思うべきかも。ははは、神様も出てきているから、もう笑うしかないわ。」

 

 部長!!しっかりしてください!!

 

「お前らまであのアギトの友だというのか?」

 

「そうだ。」

 

「そうだな。共に死線をくぐりぬけたという仲ではあるかな?そっちはどうだ?」

 

「フッ・・・間違ってはいないな。」

 

 なんでその友にダンテ様と鋼牙さんまで入るの?

 

「・・・・・・・ハルトまでそうだというのか?」

 

「当然。」

 

「・・・そんな馬鹿なことが・・・。」

 

 コカビエルがなんか絶望したような声色になっているぞ?

 

「・・・ぐっ・・・この戦争。負けられん!!」

 

「上等。」

 

 もうわけが分からんが、これだけのメンツがいれば負ける要素はねえな!!

 

「では改めて。部長、一緒に。」

 

 俺は皆を見廻し、一緒に宣言してやる。

 

「はあ・・・そうね。ではみんなよろしくお願いするわ。」

 

 部長も一緒に宣言するぞ!!

 

『ここからは俺(私)達の聖戦(ケンカ)だ!!』

 

 お前達・・・この街から生きて帰れると思うなよ。

 

 

 

 




さて、ここで全員集合。

 文字通り戦争開始です。

 この世界でアギトが神滅具を得るというは重大な意味があるのです。

 ハルトはついに魔法使いの行き着く先に行ったと思ってください。

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