赤龍帝の幼なじみ達   作:THIS

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 連続投稿第四弾にして過去編の最終話。

 ここで木場にまつわる過去は終わりを迎えます。

 
 そしてオリキャラの正体も明らかになります。

 彼はある意味、サイガとは運命の絆で結ばれています。


元の時代に帰ります。

 SIDE イッセー

 

 建物は光と共に消滅していた。

 

「・・・助かった。」

 

 その光景を俺達は遠く離れた地で眺めていた。

 

 彼が使った転送呪文・・・ルーラ。

 

 それで皆は助かったのだ。

 

 あの糞ジジイ共が使っていた同じ呪文で俺達は九死に一生を得たのだ。でも、その効力は段違いと言える。

 

 四十人以上も者達を一斉に運べたのだ。

 

 そこからが大変だった。

 

 その前に、俺が毒ガスでやられた子達をリカバリーベントで助けたりするなど、色々とやったぜ。

 

 あいつも回復系の魔法が使えるらしく、確かホイミとかキアリーなどを皆に使っていた。

 

 子供達は今すやすやと眠っている。

 

 サイガの傷も治したかったけど、何故か回復呪文を受け付けない。

 

 リカバリーベントですら効かないダメージなのだ。

 

 その理由をそいつは知っているらしく、薬草などで対処していた。

 

 その甲斐があってか、自力で信じられない程の回復を見せ、危険な状態から脱していた。

 

 どんな治癒能力をしているの?

 

「お前達には世話になった。ありがとう。」

 

 鋼牙さんが頭を下げる。

 

「いや、過去とは言え友達を助けるのは当然だぜ。それに礼を言うならあいつに――あれ?」

 

 窮地を助けてくれたあいつの名前を聞き忘れた事に気付き、俺達が振り向くが・・・。・

 

―――何時の間にか消えているか。鮮やかなものだ。

 

「・・・何者か分からないが、いつか礼を言わないとな。あいつの手当てが無かったらサイガは危なかったかもしれん。」

 

 一体何者だ?

 

 あれだけ危機的な状況で建物に乗り込んでいたといい・・・色々と謎が多い。

 

 だが、なんでだろう。

 

 近いうちにまた会えそうな気がする。

 

「こいつも頑張った。みんなをよく守った。」

 

 鋼牙さんは腕の中で眠り続けているサイガを見ている。

 

 あいつも頑張った。みんなを助けるためにあれだけの力を出して・・・。

 

――――あの一撃。多分サイガの潜在能力の一つなのだろう。あれだけの物を秘めているとは思いもしなかったぞ。下手したら戦神クラスはあるかもしれん。

 

――――多分。肉体に出た反動も最小限に抑えてああなっただけ。むしろあれだけの破壊力を発揮して、反動をあそこまで抑えられたと考えるべきね。色々と弱っていた状態で。

 

――――では成長した今、どれだけの力を発揮するというのだ?

 

 あいつ、どんだけの潜在能力を秘めているんだ?

 

 色々と力に謎の多い奴だと思っていたけど、あれほどとは、

 

「あいつめ。戻ったら色々と聞かないといけない事が出来たな。」

 

 そしてダンテさんは先ほどオルフェノクとして復活した女の子を連れていた。

 

「その子はどうするつもりだ?」

 

「俺の眷属にする。」

 

 ダンテさんはその子を眷属にすると言ってきた。

 

「俺はこいつが気に入った。姿が代わっても皆を助けようとする気概を持っている。それにオルフェノクに覚醒してそのままじゃ、こいつは長く生きられないだろうが。」

 

 オルフェノクの寿命は短い。人類の突然変異的な進化のためにだ。

 

「私も承知しました。せっかくの力・・・伸ばしたいので。」

 

「駒は自宅だから一緒に連れて帰るがな。」

 

「本当にありがとうございます。でも、まだ終わっていません。まだあいつらは・・・。」

 

「ああ知っている。」

 

 俺は知っている。この事件が俺達のいる時間でまた顔を出すこと。肝心のバルパーも他に研究に協力していたと思われるさっきの二人も逃げられた。

 

「お前達が逃がした三人だが、一人の所在は確認した。特徴からしてお前の兄だろうな。グレモリ―家に拾われている安心しろ。」

 

「・・・よかった。」

 

 その報告を聞いた彼女は心の底から安堵する。

 

「もう一人はうまく山を下りて、家族、姉達に会えたらしい。まあ、崖から転落したり狼やドラゴンに襲われたりするなど、色々と不幸な目に会いながらの帰還だ。どうやったらそれだけの不幸な目にあって、それで帰れたのか信じられねえぜ。」

 

「良太郎も。はあ、不幸なのは変わっていないのね。でもよかった。」

 

 良太郎という名前に俺とゼノヴィア、そしてネロは一斉に同じ名前の彼を見る。

 

「はははは・・・まあね。」

 

 もしかしてとは思っていたよ

 

 こいつまで巻き込まれていたのかい!!

 

「お前、ちょうどこの時期一週間ほど行方不明になった事があったが、この事件に巻き込まれていたのか!?何で話してくれなかった!!」

 

 ゼノヴィアの話だと、良太郎が何者かに誘拐され、一週間ほど行方不明なった時があったらしい。

 

 誘拐犯の捜索をしていた時、彼がボロボロの状態で戻ってきたのだ。

 

「ちょっとした理由でね、内緒にさせてもらった。施設もああいう風に消滅していたから信じてもらえないと思ったし。もう隠しておく、必要なくなったけど。」

 

「・・・・・・お前がその子の未来の姿なのか。」

 

 ダンテさんと鋼牙さんも成長した良太郎に驚いている。

 

「へっ?あなたが良太郎!?」

 

――――ハハハハハハ!!そいつは驚いた。たくましく育ったものだな。

 

「不幸に負けずに頑張ってきたということか。」

 

「褒めているですか?それ・・・。」

 

 涙目の良太郎に対して、鋼牙さんは呆れているし、ザルバに至ってはもう爆笑している。

 

 女の子は唖然としているし。

 

 そんな様子に笑みつつ、ダンテさんは少し表情を引き締める。

 

 次はあまり良い報告ではない事が確かだった。

 

「最後の一人が・・・・すまない。まだ見つかっていない。」

 

「・・・そんな。ポルムが?」

 

 ダンテの口から告げられた事実に少女は言葉を失う。

 

 最期の一人。名前はポルムという男の子らしい。

 

 逃げたのは三人。そのうち二人は無事。そしてあと一人が行方不明という。

 

「もう一人はこっちでも捜索しよう。あいつが世話になったんだ。礼が言いたい。」

 

「ああ。頼む。」

 

 鋼牙さんも探してくれるらしい。それにダンテも礼をいう。

 

 どうも二人はこの一件で個人的な交流を持ってしまった感じである。

 

「いつかこの事件に決着をつける日がくるだろうな。それまでにお前は力を蓄え解け。」

 

「はい。ポルムも大丈夫だと信じています。だってあの子少々エッチだけど、その分しぶといですから。それと、お兄さん・・・。」

 

 その女の子が俺の傍へとよる。

 

「なんだ?」

 

 よく見るとすごく美人だ。お人形みたいにとても可愛い。将来絶対に美少女になることは間違いなしの女の子。

 

 そんな将来が超有望だと思われる彼女の話を聞くためにしゃがむと・・・。

 

 その女の子が頬にキスをする。

 

「はい?」

 

「いつかあなたのお嫁さんになりに行きます。覚悟しておいてください。何処にいても絶対に探し出しますから!!」

 

 その女の子は顔を真っ赤にさせながらも過激な発言をしでかす。

 

――――この子はまた罪を・・・。

-

―――――ハハハハハハ。もうこうなったら愉快でしかない。相棒、お前の夢であるハーレムへの夢を驀進中ではないか!!

 

 あれ?俺ってそんな大それたことをしたのか?

 

「はははは!!これは愉快だ。そうなったら俺も協力してやらないとな。」

 

 爆笑するダンテをジト目で見ているネロ。

 

「・・・・・・それでどうしてあんたが冥界の魔王になっているのかの説明は?」

 

「フッ、悪いがそれはお前の世界の俺に聞いてくれ。色々あり過ぎて説明に時間がかかる。さすがにもう時間ないだろ?」

 

 ダンテさんの言うとおり、俺達の後ろでデンライナーが現れる。

 

「わかった。この件が終わったら冥界にでも乗りこんで直接問い正すから覚悟しとけ!!」

 

「はははは!!楽しみにしているぜ!!」

 

 えっと、ダンテさんとネロ。結構仲がいいな。

 

「時を越えて来た者達か。未来でのサイガの友となる者達に感謝する。そして、時の秘密はこの胸に留めておく。助けた子達は秘密裏にカンタイの地に住まわせるつもりだ。あの爆発のおかげで死亡扱いになるのは確実だし、それにあいつらはサイガの友達だ。あいつが世話になった礼になればいいが。」

 

「ありがとうございます。そうしてもらえると助かります。」

 

 はあ・・・良かったぜ。

 

―――こっちからしたら本当に愉快な体験をさせてもらった。礼には及ばんさ。

 

 ザルバの陽気な言葉に救われる。

 

「じゃあ・・・また会おう。」

 

 俺達は電車に乗り込む前に、あの女の子が言う。

 

「いつか、本当にいつか会いましょう!!イッセ―お兄ちゃん!」

 

 俺はそれに手を振って応える。

 

 いつかまた俺達の時代で会おうな。

 

 

 

 そして、俺達はデンライナーに乗り込む。

 

 元の時代に帰るために。

 

 

 

 

SIDE ???

 

 いよいよか。

 

 あいつらが電車に乗るのを離れた木の上でじっくりと観察する僕。

 

 僕はこの世界に戻ってきた。

 

 父さんの仲間を探す過程で異世界に入っており、僕はそこで生まれたのだ。

 

 でも、父さんたちは死んでしまった。僕を守るために。

 

 僕の中にこの世界で生まれたがために神器が宿っていたのだ。それも今知ったら驚く存在が宿っている。

 

 奴らはそれを狙っていたらしい。

 

 そして僕はボロボロの状態でバルパーってやつにつかまってここに放り込まれたのだ。

 

 心も体もボロボロだった僕を助けてくれたのは彼らだった。

 

 彼らを助けたかった。逃げている時もそればかり考え、戻る時もこの時代にマーキングしていたくらいだ。

 

 そして、間に合ってよかった。みんなを助けることができた。

 

 そのための力。それが果たせてよかった。

 

 今は行方不明になっている僕。でも見つかるわけがない。

 

 僕は逃走の過程で施設の謎の大爆発の余波でできた次元の裂け目に落ちてしまい、父さんたちの故郷の世界に戻った事なんて誰が想像したか。

 

 そして、そのショックなのか黒かった髪が銀色に変わった。

 

 髪だけじゃない。今は変身呪文(モシャス)で隠さないといけない致命的な変化もある。

 

 どうしたんだろうと思いながら彷徨っていた時に、師匠に出会ったんだ。

 

 スケベな爺に仮病じいさん。そして、ひょうきんだけど実はすごい元勇者な王様。

 

 この三人に占い師のばあちゃんからあるとんでもない事実を知らされた後、父さんたちの仲間達の元でみっちりと修行もさせてもらった。

 

 この身に宿したある宿命を知り、それで僕は立ち向かう事にしたんだ。

 

 なんか阿呆みたいな厖大な魔力を持っているらしいけど、それを引き出し、制御するのが一番大変だった。

 

 それまで魔法の類は一切使ったことなく、それでいて戦闘経験もゼロ。護身程度に母さんから少し習っていた程度だったんだ。

 

 体が少しばかり頑丈だったのが幸いだった。

 

 かなり無茶が効く。おかげで、もう地獄を見た。各魔法の契約から魔力のトレーニング。そこから一からならって、武術などの基礎もそうだし。

 

 スケベジジイ、良い性格していやがって。最近は唖然とさせることが多くなったのは嬉しいところだ。その領域に辿り着くのにどれだけかかったか。

 

 仮病じいさん。あの人も癖があった。まったくもう・・・掴みどころがない。修行にも妥協は全くなし。でも、精神的にもいい修行になったと思う。

 

 それと王様!!

 

 あの人が一番その、底知れない。ひょうきんだし、ふざけている部分もあるのに誰よりも聡明で、それでいて優しい。一番大切なことを学んだ気がする。

 

 なんかその王様にも似てきた自分が恨めしくも誇りに思ってしまう自分がいる。

 

 三人とも多分すごい人。あの三人から学べるだけの事を学んだ。

 

 それでもなんか僕を見て時々と感慨深そうにしていたよね?まるで何かを懐かしんでいるような気がして。

 

 父さんと母さんの死を言ったら、じいちゃんやばあちゃんに当たる人達は泣いていたし。

 

 一応、父さんと母さん達の師匠で、そして彼らがあの世界を救った英雄というのは聞いていた。でも、それ以外の父さんと母さんのことを知っているのかもしれない。今度帰ったら絶対に聞かないと。

 

 そんな風に色々とあったけど、何とか戦える程度にまでにはなったかな?

 

 神器も便利だし。

 

 必要な力は蓄えさせてもらった。時が来たと勘が教えてくれる。

 

 旅立つ前に師匠達からありがたい称号と幾つかの送り物をもらった。

 

 自慢の称号だ。

 

「目的は達成できたけど、このままじゃこの時代に取り残されるから・・・。」

 

 僕は時を超えるという電車の中に入る。

 

―――――合流呪文(リルルーラ)!!

 

 ドラゴンの力を宿したあいつに仕込んだリルルーラ草を使ったある粉。それが車内に落ちるようにうまく調整してある。

 

 それを目印にして電車の中に転送させてもらった。

 

 このまま僕を君たちの時代に連れて行ってもらう。

 

 同じ歳位になった良太郎もみつけた事だし。こいつらのいる時代に行った方がいい。

 

 この様子ならまだ何かあるみたいだ。

 

 そこで僕はもう一つの使命を果たさないと。

 

 行方不明の・・・勇者の捜索。

 

 そして、その勇者にあの世界からメッセージをたくさん託されている。

 

 それを伝える。

 

「三代目大魔道士ポルム。いざ未来の仲間の元へ!!」

 

 待っていてサイガ君、良太郎君!!みんな!!

 

「・・・・・・無賃乗車はお断りしているのですがね。」

 

 そこにステッキを持った素敵なおじさまがやってくる。

 

 ちぇっ、見つかってしまったぜ。まあ、これだけの外観だとばれても仕方ないか。

 

 相当未知なテクノロジーで作られているみたいだし。スキャニングしておこうかな?

 

 僕の背中から白い翼が生えてくる。

 

――――スキャニング

 

「今日はアギトやキルスといい変な客ばかりやって来る日ですね。あなたの場合は別世界からこの世界の時間に飛んできてしまった事例があります。どうしてこうデンライナーに干渉出来る連中ばかりがやってくるのか。」

 

 色々と嘆いているこの人はこの電車のオーナーみたいだ。

 

 どうやらここからもう一つの本領発揮の様ですね。

 

「せっかくですから、何かできる事ありますか?こう見えて結構色々と出来るので。もちろん時間の改変をするつもりはないですから。」

 

「ほう・・・。あなた契約を持ちこんでくるというのですか?あなたもある意味特異点と同じといってもいい存在として?」

 

 さて、ここからか。この人・・・僕の中の最大の秘密に気付いている。

 

 どのようにして話そうかね。そっちの事情も分かっていないからそこから聞かないと。

 

「・・・油断なりませんね。貴方のその叡智はちょっとでもボロを出せば付け込まれそうで。あの方の転生体だけのことはあるのでしょうか?」

 

 そっちの方が上手か。師匠達だけしか知らないあの事を知っているとは。

 

 今でも呪文で色々と隠しているのに。

 

「だったら事情を話してほしい。それくらいの度量はそっちもあるだろ?」

 

 それなら正面からやるまで。力づくで何とかしようとしたら偉い目にあうのはわかっているはずだ。

 

「・・・はあ。いいでしょう。その神器でデンライナーの全貌をスキャンされるのは止めて欲しいですからね。」

 

「あいあい。」

 

 僕は翼をしまう。必要な分はもうスキャン出来たけどね。

 

 向うに行くまで退屈はしないで済みそうだ。

 




 過去編終結。

 そして、イッセー。ここで実はフラグを立ててしまったという罠を用意していました。

 あの子は成長してどうなっているのか楽しみです(黒笑)


 オリキャラもまだまだいろいろと謎の多いキャラです。ですがまた再登場します。

 
 次から現代に戻ります。 

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