赤龍帝の幼なじみ達   作:THIS

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 連続投稿第三弾

 ここでまだ幼いあの二人が奮闘します。

 そして敵キャラが新しく二人、それ以外にもう一人追加されます。

 過去編第二弾。

 どうぞ!!


 過去の友達を助けに来ました!!

 SIDE ???

 

 うまく騒ぎを起こして三人を逃がせた。でも、まだ諦める訳にはいかない。

 

 何時も一緒にいて支えあった大切な同志。

 

 教会の出身ではなかった僕に聖歌を教えてくれた大切な友達。

 

 それを助けられてよかった。皆で抵抗した甲斐がある。

 

 充満する毒ガス。

 

 苦しそうな皆。

 

「・・・兄さん頑張って。」

 

 隣では彼の妹もいる。彼女も含めみんな限界だった。

 

 

 

 僕は攫われた。バルパーという魔戒法師によって。

 

 そして、この施設にぶちこまれたのだ。

 

 そこで僕はみんなと出会った。

 

 苦しい日々を皆で支え合って耐えてきた。

 

 みんな家族に等しいくらい大切な人達。

 

 その皆が、次々と倒れて行く。

 

 防護服を着た男達の横に何も着ていない大変小柄な老人がいる。

 

「ひひひ・・・ですがあなた達はすぐにホラーの餌になります。」

 

「その通り。死してなお生贄になることを誇りに思いなさい。」

 

 その隣には首元にファーがついた白い服に紅のマント、立派なひげとまるでオーガの角を思わせるような髪をした魔術師もいる。

 

「逃げた兄の方も追いなさい。」

 

「それはさせない!!兄さんは私達の希望・・・ゴホゴホ・・・。」

 

 兄を逃がした彼女が抵抗しようとするけど・・・。

 

 それを・・・魔術師が手に持った銃を向け。

 

「やめろおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 無慈悲にそれを放ったのだ。

 

 銃弾に貫かれる彼女。

 

 そしてそのまま倒れる。

 

「ギヒヒヒヒ・・・どうせ死ぬのなら問題ない。」

 

 同志が、友達が死ぬ。

 

 毒ガスにやられて次々と・・・。

 

 俺はそれを黙って見ている事しかできないのか?

 

 嫌・・・違う。

 

 俺の中の何かがそれを教えてくれる。

 

「お前・・・。」

 

 僕は立ち上がる。先ほどまで死ぬほど苦しかったのに、体に力が入る。

 

「おや?まだ立てるというのですか?」

 

「おかしい。常人ならとっくに死んでいるはずだが・・・。」

 

「・・・念のために殺しておきましょうか。」

 

 その言葉と共に防護服を着た男達が一斉に手をかざす。

 

 手から炎が灯っていた。

 

 殺す?ここまでしておいて?

 

 今更そんな事言うの?

 

 こっちは限界だ。

 

 もう怒りしかない。

 

 お前達みたいな外道に対しての怒りしか。

 

 その怒りが自分の中の一線を越える。

 

――――火炎呪文(メラゾーマ)

 

 そこに連中が放った強力な火の球が命中して爆発が起こった。

 

 でも・・・。

 

 僕や周りで倒れている同志たちは無事だった。

 

「どういうことだ?どうしてあいつは無傷・・・。」

 

「あっ・・・ああ・・・そんな馬鹿な。」

 

 小柄な老人の方が僕を見て怯えている。

 

「その額の紋章。・・・なんでですか!?ダイはあの方が倒したはずなのに?」

 

 鏡を見ると僕の額で竜の頭を模した紋章が蒼い光を放っている。

 

「竜の紋章が・・・、竜の騎士がどうしてここに!?」

 

「貴様の世界の?ちぃ・・・。」

 

 もう一人の魔術師が銃弾を放つが、その程度簡単に見切れる。

 

「避けた!?」

 

 そのまま僕は走りだす。

 

「がばっ!?」

 

 武器を手にした男達を拳の圧力だけでふっ飛ばす。

 

「だったらこれを受けなさい。皆・・・メラゾーマを!!」

 

―――――――集束呪文(マポプラス)

 

 残った連中のメラゾーマを受けるあいつ。

 

「この世界でさらに改良を重ねたワシの呪文じゃ。」

 

 その熱量に天井が溶け、蒸発する。

 

「避けれないでしょう。何しろ貴方の後ろには・・・。」

 

 僕の後ろには同志が・・・友達がいる。

 

 僕は彼らを守るために立ち上がっていたのだ。

 

「ヒヒヒ・・・受けてみなさい!!この呪文は目覚めたばかりの貴方が防げるレベルじゃありませんよ!!」

 

 おそらくあいつの言うとおりだろう。これだけの呪文を防ぎきる自信はない。

 

「だったら・・・。」

 

 でも、それに対する答えはシンプルだった。

 

「竜闘気(ドラゴニックオーラ)がさらに増大?」

 

「だったら真正面からぶち破る。」

 

 今出せる最大のパワーで相殺しかない!!

 

 僕のその決意に応えるように両手からも光が出てくる

 

「げぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?両手にも竜の紋章!?」

 

 手の甲に額と同じ紋章が現れたのだ。

 

「お前・・・一体何者?」

 

 その光を放つ両手を手の上で合わせ、力を集める。

 

「それはまさか!?」

 

「ぐっ、厖大なエネルギーが集束しているぞ。」

 

 頭の中で告げている。これが最大の技だと。

 

「そんな馬鹿な。あれを放つというのですか!?しかも従来よりも集束が早い!?」

 

 老人はそれを見て心底怯える。

 

「受けてみろ。多分威力は半端じゃないぞ。」

 

「不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い!!あれをこんな場所でぶっ放すなんてあなた、なっ、何を考えているのですか!!」

 

 あの老人は僕の力の正体を知っているのは間違いない。

 

 これがどんな呪文かこっちはまったく知らないけど、今は相手にとって相当脅威な呪文であるだけで十分。

 

 遠慮なくぶっ放してくれる!!

 

「ひぃぃぃぃぃぃ!!」

 

 両手をまるで竜の口のように開き、僕はそれを放つ。

 

 僕はこの時知らなかった。

 

 この呪文は父さんやおじいちゃん達竜の騎士の最大最強の切り札。

 

――――――竜闘気砲呪文(ドルオーラ)!!

 

 国一つ滅ぼす程の破壊力がある禁断の呪文であることを。

 

 

 

 SIDE イッセ―

 

 施設に侵入した俺達は突然の轟音にびっくりしていた。

 

 凄まじい力が突然現れたのは感じていた。

 

「なっ・・・なんだ!?」

 

 まるで隕石が落ちてきたかのような凄まじい振動。

 

 建物が大きく震える。

 

「これって・・・あの爆発!?発生源がまさかここだったなんて。」

 

 良太郎は何か別の意味で驚いている。

 

 外を見ると・・・。

 

『・・・・・・・・・・・・・。』

 

 教会の施設の半分が吹き飛び、その先にあった山脈が消滅していた。

 

 雄大な自然の景色が一変していたのだ。

 

「おいおい何があった?!」

 

「聞きたいのはこっちの方だ。」

 

 ダンテさんと鋼牙さんですら唖然茫然のあり様。

 

 一体何があったら、あんな惨状になる?

 

「・・・・・・地下室は。」

 

「こっちです。着いて来てください。」

 

 焦った良太郎が皆に告げる。

 

「お前・・・ここを知っているのか?」

 

「自分でもまだ覚えている事にびっくりしているけど。」

 

 覚えている?それって一体・・・。

 

 良太郎の案内で目的の地下室へと俺達は辿り着く。

 

 そこには一人の少年が立っていた。

 

 両手と額に竜の紋章を輝かせた少年が。

 

 まだ幼いが、間違いない。あいつはサイガだ。

 

 そしてサイガが見ている方向から凄まじい破壊が巻き起こっている。

 

「まさか・・・こいつがやったというのか?」

 

「サイガ?」

 

 だが、両手と額の紋章が消え、サイガが力なく倒れる。

 

「う・・・うう。」

 

 その全身は酷いものだった。

 

「サイガ!!」

 

 鋼牙さんがサイガに駆け寄る。

 

――――こりゃ、全身がボロボロだぜ。一体どんな力を使えばこんなことに。

 

「父・・・様。」

 

「ああ・・・。」

 

 弱々しく震える手で鋼牙さんに手を伸ばすサイガ。鋼牙さんがその手を取る。

 

「助けに・・・来てくれましたか。信じていました。」

 

「・・・・・・よくがんばったな。」

 

 サイガが震える手で今度は倒れている子供達の方を指す。

 

「みんなを・・・友達をお願いします。助けてください。僕の・・・僕の友達を・・・。」

 

「ああ。分かった。」

 

 その言葉を聞き、安堵の笑みを浮かべた後にサイガは気を失う。

 

「・・・・・・。」

 

 その全身は血まみれである。一体何を使ったらここまでボロボロに。

 

―――――速く手当てしないと。流石にヤバいぞ。

 

「・・・・・・。」

 

 鋼牙さんは無言で立ちあがる。その拳は震えていた。

 

 表情は見えないけど・・・背中で語っていた。

 

 どうしようもなく怒り、そして悔いていることに。

 

「俺も手伝うぜ。魔王としての特権、ここで都合よく使わせてもらう。」

 

「・・・感謝する。」

 

 鋼牙とダンテが倒れた子供達の介抱に向かおうとした時だった。

 

「ヒッ・・・ヒィィィ・・・死ぬかと思いました。ワシの腕がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 瓦礫の下から左腕を失った小柄な老人が現れる。

 

「避けれたのが奇跡としかいいようがない。あんなの防げるか・・・。」

 

 その隣には多分豪奢な衣装だったのだろうが、マントが無残に引き千切られ、白い服も血などで汚れ、ずたずたになっていた。

 

「しかし竜の紋章が三つって、どんな化け物ですか!?おかげで、へっ?」

 

『・・・・・・。』

 

 その二人を、無言で見る鋼牙さんとダンテさん。

 

「ダンテ・・・だと?」

 

「やっぱり生きていたか。アリウス。」

 

 片方はダンテさんの知り合いですか?

 

「ちぃ・・・。」

 

「俺の因縁の相手なんだ。倒したはずなんだけどな。」

 

「ふふふ・・・私を必要としてくれている方に復活させてもらったのです。隣にいるザボエラと共に。」

 

「ですが・・・流石に驚きましたよ。黄金騎士の息子がここまでの力を秘めていたなんて。紋章を三つも持つ竜の騎士。捕えて研究でも・・・ひっ!?」

 

「・・・・・・ふざけるな。」

 

 ザボエラと言われた男の言葉に、鋼牙さんが叫ぶ。

 

 かなり怒っている。

 

 我を失わないように抑えているけど、それでも隠しきれないほどに怒っている。

 

 その威圧だけであの二人が下がる。

 

「俺の息子をこれ以上傷つけさせはしない!!」

 

 そこにいるのは一人の父親だった。サイガ・・・お前の父さんってすごい人だよ。

 

 その背中が格好いい。あいつはいつもこの背中を見て育っていたのか。

 

「おいおい。俺もいるぜ。」

 

 ダンテさんも剣を構える。

 

「・・・撤退した方が良い。さすがにあいつとまともに戦うのは避けたい。」

 

「そうですね。あれを回収してから。」

 

 ザボエラが邪悪な笑みを浮かべる。

 

 その言葉と共に気を失ったサイガの傍に影のような怪物が現れる。

 

「竜の騎士。そのサンプルを回収させてもらいますよ!!」

 

『!!?』

 

 誰もそれに反応できない。

 

 だが、影の怪物が動き出す前にその身体が切り裂かれる。

 

「・・・・・・サイガ君に何をするの。」

 

 それは先ほどまで倒れていた金髪の少女だった。

 

 その白い服は血で汚れている。

 

「何で生きている!?確かに私がこの銃で・・・。」

 

「サイガ君に、みんなに手を出すのは私が許さない!!」

 

 戸惑うアリエスの前で少女は顔に文様みたいなものを浮かび上がらせて変身する。

 

 灰色の身体をした怪物。オルフェノクへと。

 

 その名はクレインオルフェノク。鶴の力を持ったオルフェノクだ。

 

 デンライナーに乗っている状態で俺はネロからオルフェノクについて聞いていた。

 

 それは人類の突然変異的な進化系。その資質を持つ者が一度死に、そこから復活することで覚醒するのと、オルフェノクがもつ使徒化の能力でオルフェノクになるパターンがあると。

 

 死を経て覚醒したオルフェノクはオリジナルと呼ばれ、共通して強大な力を持つ。

 

 そして、この少女もオリジナルとして覚醒したということか?

 

「絶対にサイガ君は同志たちは私が守る!」

 

「怪物に姿を変えてもですか?」

 

「何を言って・・・えっ?」

 

 その少女はザボエラの言葉に我に帰り、近くの鏡で己の姿を見る。

 

 そこに移っていたのは灰色の身体となった少女の姿、その背中から灰色の翼が生えてくる。

 

「何、この姿。私なの・・・・・・?」

 

 変わり果てた自分の姿に激しく動揺を示す彼女。

 

「・・・一度死を経て怪物になりましたか。」

 

「違う!!私・・・私は怪物じゃ・・・。」

 

「その姿・・・なるほどオリジナルのオルフェノク。面倒な奴になりましたね。」

 

 その少女は激しく否定しようとするが・・・変わり果てたその姿が事実を突きつけるのか否定できないでいる。

 

「そんな・・・。私は・・・。」

 

「廃棄処分の癖に生意気です。ここで名前の通り灰に変えてくれる!!」

 

 ザボエラが手から閃熱を放つ。

 

―――――閃熱呪文(ベギラマ)!!

 

 放たれた閃熱。それが動けない彼女に放たれる。

 

 変わり果てた自分の姿に茫然としていたあいつを放っておけなくて・・・。

 

「なんですと!?」

 

 俺は前に出てそれを受け止めた。オーラが勝手に出てきてその手で殴り消したのだ。

 

「わりぃ・・・手を出してしまった。良太郎。」

 

 後ろで勝手なことをしてしまった事を良太郎に謝っておく。時間にどのような影響が来るか分からないのに、勝手なことをしてしまった。

 

「いや、君は人として正しい事をしただけだよ。流石にこれは見過ごせない。」

 

 それでいて俺は怒りを抑えて、茫然としているその子の手を取る。

 

 涙を流して自分を見ていた彼女の目を見て言う。

 

「お前、すげえな。」

 

「えっ?」

 

「だって、一度死んで、いきなり蘇ってもなお俺の友達を助けてくれた。」

 

 倒れていたサイガが浚われそうになった所をこの子は無我夢中で助けてくれた。

 

「そんなお前が怪物?俺はその言葉を否定する。」

 

「否定って・・・。」

 

「お前は怪物じゃない。一人の女の子だ。俺の友達を助けてくれた優しく勇気のある女の子だよ。そうでないと・・・・。」

 

 精一杯の気持ちを伝える。

 

 今の俺に共通しているからこそ言いたい。

 

 アギトとなった俺だからこそ。

 

「涙を流して、悲しまないだろうが。」

 

 その異形の姿に、ありえない力に優しい自分の心を失って欲しくない。

 

「・・・・・・。」

 

 その言葉は届いてくれただろうか。

 

 茫然とする彼女はそのまま変身を解く。

 

 その彼女は泣いていた。

 

「私・・・私・・・。」

 

 その頭を撫でてやる。

 

「安心しろ。よく頑張った。あとは俺達に任せろ。お前もサイガも、そしてみんなも守ってやる。」

 

「うん・・・うん・・・・・・・。」

 

 その言葉に安心してくれたのか、その子はそのまま俺にもたれかかるようにして気を失う。

 

 この子をゆっくりと優しく寝かせる。

 

「おい・・・。」

 

 さてと。

 

 俺はあんなことを言った糞ジジイを睨みつけてやる。

 

「とりあえず一発ぶん殴らせろ!!」

 

 俺はその子に攻撃を仕掛けた糞ジジイを睨みつける。。

 

「ガキが生意気をぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

――――――火炎呪文(メラゾーマ)!!

 

 あいつが手から巨大な火球を放つ。

 

「ドライク、拳借りるわ。」

 

―――――ああ。遠慮なく行け。

 

 左腕に赤龍帝の篭手を召喚させながら俺はその炎に突っ込む。

 

 ドラゴンは伊達じゃない。その程度の炎でこの篭手はびくともしない!!

 

 そのまま左腕であいつの放った炎をかき消しながら突進。

 

「なんですと!?がばっ!?」

 

 俺の拳は糞ジジイ―――ザボエラの頬を捉え、そのまま殴りとばす。

 

 とりあえず一発だけ殴り飛ばす事ができたぜ。

 

「あの子は怪物じゃねえ。ただ一度死んで、蘇ってから力を得たただの女の子だ!!」

 

 俺の中で怒りが増大していく。似ているのだ。今の俺と。

 

 アギトという存在になった俺と・・・。

 

「そいつの心を抉るような事を言いやがって。覚悟はいいか?竜の怒りにお前は今触れたんだからな!!」

 

―――――あらあら、この子の怒りに火をつけたのね。あなた達もいい度胸をしているわ。この子の怒り、ちょっとすごいのよ?

 

 怒りで建物全体が震えだす。

 

「・・・・・・ほう。」

 

 ダンテさんも目を細める。

 

――――鋼牙。こいつからドラゴンの力を感じる。

 

「ドラゴン?じゃあ、あの篭手は神器なのか?」

 

 鋼牙さんも少し驚いた様子だ。

 

「なんなんじゃ?こいつ唯者じゃない?」

 

「・・・神器は持っているのは分かっている。だがあれは・・・。まさか神滅具!?」

 

 アリウスが俺の篭手を見てそれが何か気付いた様子だ。

 

―――<BOOSTBOOSTBOOST!!>

 

「赤龍帝の篭手(ブースデット・ギア)。こいつ・・・赤龍帝なのか?」

 

「なんですと!?」

 

 まあ間違っていない。実際はそれだけじゃないけどな!!

 

「おいおい押さえておけよ。逆鱗に触れたのはわかるが、建物が耐えらなくなる・・・。」

 

 ネロが俺の肩を叩いて注意してくれる。そのおかげで少し俺の怒りも収まる。

 

「それにお前だけずるいぞ。・・・俺の分がなくなるだろうが。」

 

 訂正。あいつもブチ切れている。そう言えばネロも似たような境遇だったもんな。

 

「お前ら・・・ぶっ潰す。」

 

「そういうことだ。話には聞いていたが、やはり実際に目にすると許せない者がある。今なら、木場の気持ちが少し分かる。あいつにも謝っておかないといけない。」

 

 ゼノヴィアまで・・・。

 

「貴様ら・・・ひっ!?」

 

 ザボエラの足元に銃弾が命中。

 

 撃ったのは良太郎?手に変な銃を持っていますけど・・・。

 

「ごめん。我慢するつもりだった。この後どうなっていたのかすごく気になっていたから静観しようと思っていた。でも・・・さすがにこれは許せない。」

 

 あれ?

 

 そして良太郎の目つきが大変危険だぞ?

 

「覚悟はいいよね?もちろん、答えは聞いていないから。」

 

 誰よりもすごく怒っている?

 

「・・・ったく若者ばかりにいい格好はさせられねえな。」

 

「ああ・・・。」

 

―――――お前も歳をとったものだ。情にもろくなったか?

 

「仕方ないだろう。だが、この外道どもを野放しにはできん。サイガの事もあるからな!!」

 

 怒り心頭の俺に他の皆の怒りも重なる。

 

「チィ、ここは撤退です。黄金騎士にスパーダと戦うのは分が悪い。そこに赤龍帝もいるのじゃ・・・。」

 

「しかたない。デルパ!」

 

 ザボエラがアリエルと共に逃げる前に手にした黄金の筒を取り出し、そこから何かが出てくる。

 

「行きなさい・・・超魔ゾンビ10号!!」

 

 それは巨大な一つ目の蛇だった。丸太のように太い胴体。体の長さは軽く二十メートル以上はある。

 

「逃がすか!!」

 

――――――ルーラ!!

 

 だが、二人は光となってその場から姿を消す。

 

―――――転送呪文。それも見た事がある呪文ね。

 

―――――ああ。だがその前にあいつをなんとかしないとな。

 

 出てきた蛇の全身から猛烈な瘴気が発せられる。

 

 それは床すら腐食するほどの強烈なもの。

 

「くそ・・・。」

 

――――バルカン。

 

 ネロがブルーローズより無数の弾丸を叩き込むが・・・。

 

 あいつの肉が固いのか総てめり込むだけで全然効果がみられない。

 

 俺も殴ってみるが、衝撃が吸収され、逆に弾き飛ばされる。

 

 良太郎の銃弾もそうだ。全然聞いていない。

 

 なんだこいつ?

 

――――こいつ死肉の凝縮体よ。まるでゴムのように衝撃を吸収するレベルまでのね。

 

 死体で作られている?そう言えばゾンビだってあいつもいっていたよな。

 

 じゃあ痛みすら感じないのか。

 

 時間稼ぎにはもってこいってわけかい。

 

 でも、速く倒さないといけない。でないと毒で弱っているサイガ達の命が・・・。

 

 ・・・仕方ない。

 

 俺とネロが視線をかわし、変身する覚悟を固めた時だった。

 

「逃げ脚だけは早いな。」

 

「ああ。あいつは斬っておくべき外道だったのに。」

 

 鋼牙さんとダンテさんは全然怯まず、むしろ逃がした事を憤っている。

 

 それが気に障ったのか超魔ゾンビとか言っていた蛇の怪物が襲いかかってくるが。

 

『失せろ。』

 

 と二人が一斉に剣を振るって一撃で切り裂いた!?

 

 丸太のように太い胴体が十字に切り裂かれながらそいつは動きを止める。

 

 緑の炎を纏っていた鋼牙さんの剣のせいで、そいつの身体は緑の炎に包まれていく。

 

 強えぇぇぇぇぇ・・・。

 

 あいつ相当頑丈そうだったぞ。それを瞬殺ってどんだけですか?お二人とも。

 

「あっ・・そういえば後一体のイマジンは!?」

 

 そもそも俺達はイマジンを追ってここまで来たのだ。

 

「あそこだ。」

 

 ネロは呆れた様子でサイガがやらかしたと思われる破壊の後を見る。

 

「そんな・・・ばかな・・・。」

 

 そこには全身ボロボロで倒れているサイ型のイマジンの姿。

 

 どうも山脈を吹き飛ばした謎の攻撃に巻き込まれたらしい。

 

 そのまま消滅していく。

 

「なんだそりゃ。」

 

 結局俺達はまともにイマジンと戦っていない。

 

「ははは・・・まあ手間は省けたよ。今のうちにみんなを・・・。」

 

―――――――あなた達には黒の核晶(コア)の実験になってもらいます。

 

 その中、建物内にさっきの老人の声が聞こえてくる。

 

 それはダンテさんと鋼牙さんが斬った蛇の怪物の頭から。その口が動いて喋っている。

 

「黒の核晶だと?お前ら正気か!!」

 

 鋼牙さんが何か知っている様子だ。何それ?

 

「異世界の最悪の兵器だ。アバンの書に後から書き加えられるようにして書かれていた。詳しい製法は知らないが、小型の爆弾一つで大陸一つ吹っ飛ぶくらい禁断の兵器だと・・・。」

 

 おいおい・・・なんてもんを使おうとしている?

 

――――――今回はそれの改良、威力調整型です。それでも建物の周囲二キロは軽く消滅するでしょうけど。まあ、ちょうどここも破棄しようとしていたのでちょうどいいです。この建物もろとも吹っ飛ぶが良い。あなた達だけなら脱出できるかもしれませんがそうなると子供達はどうですかね。ひひひひっ。

 

 あの野郎ぉぉぉぉ!!卑怯にも程がある。

 

 俺達がこの子達を見捨てられないことを見越して・・・。

 

 おまけに逃がすつもりもないみたいだ。

 

 みんなをミラーワールドに逃がそうとしたけど・・・。

 

――――まさか私達の世界への出入りにまで干渉する結界があるなんて。

 

 展開した結界がそれを阻んでいた。

 

―――――さらばじゃ!!はははははははははは!!

 

「少し喋り過ぎだ。」

 

 笑うその頭をダンテさんが銃で撃ち抜く。それと共に頭は消滅。

 

 だが・・・不味いぞ。

 

 倒れている子供達は軽く見て四十人位はいる。

 

 もうすぐに爆発するのにこいつらを助けて行くのは・・・。

 

 凄まじい振動と共に崩壊を始める建物。

 

「おまえさんの言うとおり、外道もいい所だな。あいつめ・・・。」

 

 ダンテさんがかなり怒っている。いつもの余裕がない。

 

――――――どうする?

 

「こうなったら鎧で身を呈して庇うくらいしか・・・。」

 

「すまん。ドライク。クレア、お前達も手伝ってくれ!!」

 

―――ああ。それしかあるまい。

 

―――私達の身体、耐えられないかもね。流石に・・・。

 

「安心しろ。俺も付き合うから。」

 

 相棒達だけに命をかけさせるわけにはいかねえ!!

 

 変身した上でできる限り力を倍化させて皆にそれを譲渡。それで何とかしのぎ切る!!

 

 建物の振動がさらに強まる。いよいよ爆発が起ころうとした時だった。

 

「どうやら間に合ったみたいだな。」

 

 唐突に一人の男が現れる。

 

 丸い銀縁眼鏡をかけ、銀色の長い髪をはためかせた俺達と同じくらいの年の男。

 

白いマントの下の服は緑と黒に白い文様が書かれた法衣を着ている。まるでコスプレを見ているかのような服。    

 

手には先端が二股に分かれた双頭の杖。背中に白いリュック見たいな物が見える。

 

頭には黄色いバンダナ。左腕には篭手みたいな物がある。

 

「誰だあんた?」

 

「誰かの危機に参上した唯の大魔道士だ。よろしく!!」

 

 大魔道士?なんじゃそれ?

 

「さて・・・状況は思ったより悪い。」

 

 でも、彼は眼鏡を手で直しながらいう。

 

「みんな僕の傍に寄ってくれ。」

 

『へっ?』

 

「いいから!!みんなを一斉に飛ばす!!急いで!!壁に大穴があいているのが幸いだ。結界をぶち破りながら逃げる!!」

 

 あいつは手に宝石の付いた羽を取り出し、それを周囲に五本投げつけて方陣を作る。

 

 その指示に従い俺達は一斉にその法陣の中に子供達を急いで運び込んだ。

 

――――極大化発動。

 

 

 

 




 最後に現れたのはだれなのか?

 彼はある世界からやってきたオリキャラです。

 この時点でどの世界かわかる人はわかるかもしれません。

 次話である程度推察できるようにします。 

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