赤龍帝の幼なじみ達   作:THIS

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 あけましておめでとうございます。

お待たせしました

 今回は大坂様から頂いたアイディアをもとにイッセーとネロが仮面ライダーの証と言えるバイクを手に入れる話です。

 えっ?

 ただで手に入れるわけないって?

 そんなの当たり前です。さあ・・・モンスターバイク達の登場です。


第三章 月光校舎のエクスカリバー
私達の愛馬は凶暴です。


 最初に言っておく。俺の幼馴染共はか~な~り・・・強い。

 

 経緯はどうあれ、それだけは共通していたと思っていたが・・・もう一つ共通している事があった。

 

 サイガも意外だが、皆・・・バイクの免許持ち。

 

 そして、その多くがバイク持ち。

 

 俺とネロは違っていたけど、最近になってようやくその仲間入りになったんだ!!

 

「このバイク・・・色々あってが俺達の物になったな。」

 

「ああ・・・本当に色々な意味で俺達の物だな。」

 

 ネロは結構慣れた手つきで整備している。こいつはあのブルーローズって言う改造拳銃を作るほどに手先が器用で、それでいて物持ちがいい。

 

「ここはどうすればいい?」

 

「ああ・・・まあここはな・・・。」

 

 整備の仕方も色々と教えてもらっている最中。

 

 ネロはモトクロスタイプのバイク。

 

 俺はオンロードタイプだ。

 

 このバイク・・・本当に色々あったと思うぜ。

 

 

「・・・えっと・・・オカルト研究部のレポート?」

 

 それは結婚式の騒動が落ちついてすぐのこと。

 

「ええ。いわくつきの何かを探しているのよ。何か良いのないかしら?それを悪魔としての部活動報告書であげたいのよ。」

 

 純血悪魔である部長は本来冥界の学校に通わないといけないけど、部長は日本の魔物、妖怪の研究を報告することで単位を修得しているらしい。

 

 部長がこの学校にいることができるように協力しないと。

 

「いわくつきって言われてもよお。俺はこの国に来て日が浅いぜ?悪魔どもとやりあっていたからいわくなんてもん今更だし。」

 

 ネロからしたらそれは本当に今更らしい。

 

「右に同じく。元妖怪と一緒にいるからな。いわくつきって・・・。」

 

 鋼兄からしてもそうだよな。

 

「考えられるとしたら悪霊の類かにゃ?」

 

 そこで黒歌が説明に入る。鋼兄と黒歌は部長のレポートの強力な味方だ。

 

「怪談話では妖怪や悪霊などの出番だからねえ。うん・・・いわくつきの何かねえ。」

 

「私も心辺りといえばねえ。そっちはどんなことが?」

 

「いやねえ。仙術を使って除霊みたいなことしたのよ。そっちは専門家みたいなもんでしょ?」

 

「あらわかる?」

 

「分からない方が可笑しいにゃ。」

 

 

 朱乃さんが黒歌と話し始める。

 

「そうか・・・んん?ちょっと待ってください。:

 

 そんな時、俺のスマホに連絡が入ってきた。

 

「はいはい・・・・。あっ・・・久しぶりです!半年ぶりって・・・へっ?」

 

 それは俺がすっかり忘れていた朗報であった。

 

「見つかったんですか!?」

 

 去年の夏に頼んだあれがついに・・・。

 

 

 

 

 

「久しぶりですおっさん!!」

 

「おっ・・・イッセ―ちゃんきたね。おやおや・・・友達を大勢連れて・・・。」

 

 俺はオカルト研究部と鋼兄を除く幼馴染共を連れて街の車両整備工場にきていた。

 

 鋼兄はちょっとした用事があるらしいぜ。

 

「綺麗どころも多いね。誰が本命なんだ?」

 

 結構愉快なこのおじさんは前のバイトでの常連さん。そのおじさんに頼んだんだ。

 

 バイクが欲しいって!!

 

 師匠がいたバイトで貯めた金を全て叩いて買う決意を固めた。

 

 ちなみに免許は習得済みだぜ。

 

 バイクを欲する理由。

 

  それはもちろんモテたい!!それに尽きる。

 

 まあ実際はそれが三割。

 

 そこにドライク達が万が一のための表の移動手段としてどうだ?と言う提案。

 

 仮面ライダ―のたしなみだって・・・クレアも言っていたし。

 

 仮面ライダ―って誰なの?確か昔悪の組織を壊滅させたヒーローって聞いた事があるけど。

 

 これが三割。

 

 残り?

 

 そんなの、決まっている。

 

 それは・・・男のロマンだぜ!!!

 

「・・・・・・子供みたい。」

 

 くっ・・・

 

 ふっ・・・ふふふ・・・小猫様が一刀両断に切って捨ててくれますよ。

 

 でも・・・だ。それでもロマンが実現しそうな時に俺のハートはこんな事に屈しな・・

 

「ロマンといったわりには今の今まで忘れていたんだよね?」

 

 うお・・・黒歌。お前も痛いところを・・・。

 

「半年以上も放置していた程度のロマンって・・・高が知れています。」

 

「そうにゃね。燃えカスもいいところにゃ。」

 

 がはっ!?

 

『ねー。』

 

 ぐっ、この猫姉妹めえ・・・。

 

 仲良く、それでいて容赦なく俺のガラスのハートを抉ってきやがって。

 

「ははは・・・愉快な仲間みたいだね。あの黒髪の姉ちゃんに見覚えがあるような気がするが・・・まあいい。これがその物さ。」

 

 そこにあったのは二つのバイクであった。

 

 一つはオンロードタイプ。

 

 もう一つはモトクロスタイプだ。

 

 二台も見つけてくれたのだ。

 

「なあイッセ―。よければ片方俺にくれねえか?俺もバイク欲しかったんだ。」

 

 ネロもバイクを見てうずうずしているようだ。

 

「いいぜ。」

 

 同志がここにもいた。こっちの予算の問題もあるけど・・・。

 

『・・・・・・。』

 

「金額はそうだねえ・・車両登録などを含めて・・・これでどうだい?」

 

 おっさんが提示してくれた金額は・・・驚くべき物だった。

 

「本体価格タダ同然っていいのか!?」

 

 登録などの費用などを引けば何と・・・本体はただ同然。

 

「まっ・・・まあ・・・な。」

 

『・・・・・・・・・。』

 

 そんなおっさんの態度に部長を初め皆が鋭い視線を向ける。

 

「そんなに美味しい話があるのかしら?」

 

 部長はおっさんに向けて問う。

 

 確かに話としては・・・おいしすぎるぜ。

 

「あっ・・・いやな。信じてもらえねえかもしれないが。」

 

「その点は安心しろ。」

 

 そこに・・・遅れてやってきた鋼兄が会話に参加してくる。

 

「鋼鬼のあんちゃんかい!?」

 

 あれ?おっさんと知り合いなのか?

 

「こいつらも裏のもんだ。黒歌。お前も知っていただろ?」

 

「あららばれてた?まあ・・・尻尾と耳は普段隠しているにゃからねえ。」

 

 黒歌が笑いながら。尻尾と耳を出す。

 

「やっぱりいたずら猫の姉ちゃんだったのかい。」

 

 おっさんも黒歌と知り合いみたいだな

 

「にゅふふふふ・・・黙っていてごめんね。この人猛士の一員にゃ。工場その物がちょっとした支部になっているのよ。」

 

 猛士って、たしか鋼兄の師匠達・・・魔化魍を倒す鬼を支援する組織のことだよな?

 

「ちなみにグレモリ―の次期当主だ。いい機会だし挨拶しておけばいい。」

 

「へえ・・・あなたが。改めて挨拶を。」

 

「ええ。よろしくね。」

 

「よろしくです。」

 

 小猫ちゃんまで一緒に挨拶って・・・そうか、小猫ちゃんは鬼になるからお世話になる可能性が大だもんね。

 

「この子が噂のいたずら猫ちゃんの妹?可愛いねえ。」

 

 そして、鋼兄は改めて問う。

 

「それで・・・このバイクは一体どんな曰くつきの代物なんだ?」

 

 えっとだ。曰くつきって言葉がきこえましたよ。

 

「実はねえ。この二台・・・憑いているんだよ。」

 

 憑いているってなに!?

 

「あらあら・・・なんかいるとは思いましたけどやはりそうでしたか。」

 

 朱乃さん気付いていたんですか!?

 

 気付いていたら早く言って欲しかったですよ!!

 

「祓おうとしたんだがねえ・・・なぜか出来ずに、でも捨てようとしたら呪いが掛かっているのかできなかった。それであんちゃんに引き取ってもらってもらおうかなって。乗ろうとしたら本来のスペックの三倍以上の出力を発揮し、暴走。誰も乗りこなせないってわけだい。とんだじゃじゃ馬さ、」

 

「はあ・・・あのな。」

 

 そんな危険極まりない代物を俺に引き取ってもらおうとしたわけかい!!

 

「それにイッセ―君なら乗りこなせると思って。あの人の弟子ならね。」

 

 俺なら出来る。

 

 その言葉に皆は一斉に俺を見やがった

 

『何となく分かる。』

 

 それで何故に納得!?

 

「はあ・・・まあいいだろ。」

 

 鋼兄も何も言ってこないし!!

 

 それよりも鋼兄もここに用事があったみたいだな。一体それって・・・。

 

「それよりもあれはどうなっている?」

 

「ああ・・・まだ厳しいな。あんちゃんの怪力に耐えられるハ―レを作るにはフレームから考え直している段階だ。」

 

「そうか・・・。俺の鉄馬はまだできないのか。」

 

 何故か落ち込む鋼兄。

 

「まあまあ・・・また乗せてあげるにゃ。」

 

 黒歌がそれをなぜか慰めている。

 

「へえ・・・ちょうどいいわ。」

 

 部長は色々な意味で怪物バイクを見て瞳を輝かせている?

 

「今回のレポート・・・このバイクにしましょう!!これ以上の逸材はないわ!!」

 

 そうやって俺達はこのモンスターバイク共を題材にレポートを書くこととなった。

 

 

 

 まず結論を言おう。

 

 調べて分かったこと。

 

「この子・・・九十九神化しかけているにゃ。」

 

 それはこのバイクが命を持ちつつあるというという・・・信じられない展開であった。

 

「・・・マジか?」

 

「まだ初期段階だけど、間違いないにゃ。」

 

「へえ・・・鎧とか古い物なら分かるけど、バイクがねえ。」

 

「比較的新しい部類ですのね。でも異様に早い・・・いえ早すぎるわ。」

 

 九十九神。付喪神と書く場合もあるけど、正しくはこっちの方らしい。

 

 まあ・・・鋼兄や黒歌などの日本神話独自の考えで、「神さび」とよばれるように長く、古くなった物には霊魂・・・神様が宿るという物だ。

 

 対象は自然もそうで、人間が作った物も当てはまる。

 

 長く、健在であり続けた物がそうなるらしい。妖怪の中にもこれに当てはまる者がある。

 

 最も、このバイク・・・二つとも結構新しいのに?

 

「よほどの偶然が重なっているのですわね。和御魂と荒御魂のバランスが崩れているのが気になりますけど・・・。」

 

 えっと・・・朱乃さんと黒歌の説明からすると、必ずしも九十九神っていいやつではないらしい。

 

 妖怪もそれに当てはまる連中もいる。

 

「ふむふむ・・・レポートになるわ。これ・・・。」

 

「えっと・・・この二つのバイクの経歴はまだなの?」

 

 そのバイクの経歴を今渡とハルに調べてもらっている。

 

 グレゴリとファンガイアの情報網に、さらにある探偵にも依頼しているほどだ。

 

「もう少しで分かると思いますわ。こんなバイク・・・絶対に普通じゃないですし。」

 

 朱乃さんは何やら確信している。

 

 色々と調べ、次の段階に進む。

 

 結界を張った学校のグランドでそれは行われる。

 

「・・・次は乗ってみましょうか。イッセ―。」

 

 そう・・・実際に乗ってみるてええぇぇぇぇぇぇ!!俺が乗るの!?

 

「だってイッセ―の物でしょ?それに私達は免許持っていないし。」

 

 確かに俺は免許持っていますが・・・はあ・・・。

 

 しかたねえ。覚悟を決めるか。

 

 俺はヘルメットを被り、オンロードの方のバイクに乗ってみる。

 

 うお・・・いいねえ。この感覚。

 

 さてキーを指してエンジンを・・・

 

――――――――んん・・・・んんん・・・。

 

 あれ?キーを指す前にエンジンがかかっていますよ?

 

 それに何やら声が・・・。

 

 結構可愛い女の子の声ですよ?

 

―――――ふあ・・・あれ?なんかいい気分。まるでこう・・・何もない暗闇から抜け出せたような・・・。

 

「バイクが喋った?」

 

「まさか覚醒したの?九十九神に!?」

 

「まだ目覚めるのに早いにゃ!!どうなっているの?」

 

――――うーん。でも、体がだるい。走って暖めないと。暖めて・・・ひゃは♪

 

 こいつ今なんて言った?

 

 あれ?エンジンが全開に・・・?

 

―――――いくよおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!あはははははははははっははははははははははははぁぁぁぁl

 

「ちょっ・・・まっ・・・まてええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 突然笑いながら走り出しやがった。

 

 いきなりフルスロットルで行くなよ!!

 

「おっ、おい待てって!!」

 

 ネロがとっさにもう一つのモトクロスタイプの奴に乗ったら・・・・。

 

―――――よっしゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

 そっちからも威勢のいい叫びが聞こえてきやがった。

 

 まるでスポ根タイプの男の子の声が。

 

「・・・まじかよ。」

 

―――――かっ飛ばすぜ!!ついてこれる物なら・・・ついて来な!!

 

「ぬおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」

 

 ネロの乗った奴まで暴走し始めた。

 

「おっ・・・お前もなのか!?」

 

「すまん・・・ミイラ取りがミイラになっちまった!!」

 

 そして、俺とネロは今暴走バイクに乗ってグランドをぐるぐると回っている。

 

――――――ひゃほうい!!いいねえいいねえ!!やっと・・・積りに積ったこの衝動を解消できる!!

 

――――――最高だぜ!!ようやく自由だ!!倒れるまで走ってやるぜ!!

 

「・・・そっちのバイクはずいぶん声が可愛らしいな。」

 

「いえいえ・・・そっちはすごく威勢がいいじゃねえか。」

 

 俺達は仲良く並走しながら互いのバイクから聞こえてきた声について語り合う。

 

『ハハハハハハ・・・・はあ・・・これどうやったら止まるの?』

 

 そして、互いに止める事が出来ない事を知り、ため息をつく。

 

――――今の私は誰にも止められない・・・・迫る~ショッカ―!!

 

――――悪魔の軍団!!

 

 この二台・・・唄い出しやがった!!しかも何やら古い歌のようだが?

 

 ショッカ―?あれ?何か聞いた事があるような・・・。

 

 

 SIDR リアス

 

 

 暴走したバイクを見て唖然としている私達。

 

「部っ・・部長!!」

 

「とんでもない事がわかったよ。」

 

「探偵さんからの調査結果が出たわ。」

 

 そんな時に渡とハル、そしてカ―ミラが持ってきてくれた探偵からの調査結果。

 

 それが同時に揃った。

 

「えっと・・・はい?」

 

 その内容に私は間抜けな声をあげる。

 

「秘密結社ショッカ―が作ったバイク?」

 

 

 

 説明しよう。

 

 秘密結社ショッカ―とは世界征服を企んだ悪の秘密結社の事である。

 

 彼らの最大の特徴は動植物の特性を人間に組み入れた改造人間と呼ばれる怪人を繰り出してきたということだ。

 

 現在の科学技術すら超えた様々なオーバーテクノロジーを有しており、あちこちの世界で破壊工作や暗殺など・・・今で言うテロを行っていた。

 

 全世界規模の悪の組織。

 

 それを壊滅に追い込んだのはその組織から出た二人の改造人間の裏切り者。

 

 その名は・・・仮面ライダー。

 

 最初が技の一号、もう一人が力の二号と呼ばれている。

 

 この二人のおかげなの。

 

 裏の世界では有名な二人よ。たしか誰かが眷族としてスカウトしたって話が・・・。

 

「あの二台バイクはそのショッカ―の遺産なんだって。改造人間用のバイク・・・サイクロンの完成形。確実に人間が使うにはオーバースペック過ぎる性能のバイクだって。」

 

「しかも、そこにさらに新たな試みもしたらしい。それも・・・自立稼働って言う試みをね。そのために色々なオカルトにも手を出した。その中に霊魂召喚の類の術もあってね。多分それによってかつてショッカ―の犠牲になった者達魂が数多く憑けられたようだ。」

 

「それで人工的に魂を宿らせた状態にしたと?」

 

「超科学も行き着くところまで行ったら、オカルトと同じと言う事だ。しかし、そんな滅茶苦茶な術すら成功させたけど、うまく目覚めなかった。でも、つけられた数多くの魂と色々な術式の影響か、徐々に九十九神化が進んでいった。」

 

 魔法使いであるハルの説明はためになる。

 

「じゃあ・・・なぜ目覚めたの?」

 

 異様に早く九十九神になる要素は分かったわ。でも突然覚醒した理由は・・・。

 

「・・・これは僕の推測だけど、イッセ―君とネロ君がそれぞれアギトとギルスだからじゃないのかな?」

 

 渡の推理がそこに入る。

 

「アギトの力は全くの未知。神に近いか、神その物の力を持っている。その力に触れることで一気に覚醒を促されたと考えられないかい?」

 

『・・・・・・・。』

 

 渡の推理に皆は絶句するが・・・

 

「なるほど・・・ね。それなら納得だわ。」

 

 話ではアギトやギルスは手に触れたバイクなどの乗り物を変化させる力がある。また手にした武器にも干渉する力があるらしい。

 

 その力が作用したというのなら・・・。

 

「じゃあ・・・あれだけ無邪気なのも説明がつくわ。多分、無垢な状態のまま一気に覚醒したのだわ。つまりあれは・・・。」

 

 あの二台のバイクは生まれたての子供みたいなものだということ。

 

「それで走り回っているのは、多分憑いた魂の無念が暴走しているからしらね。どれだけの魂を使ったのか分からないけど、それを晴らしたいから暴走していると。」

 

「・・・まじかよ。俺子守は得意じゃねえぞ!!」

 

「右に同じって・・・うああああああぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 二人が乗ったバイクが駐車場に向かう。

 

 一体どんなスピードで走っているの?

 

 そして・・・車に激突。

 

 車が吹っ飛んだわ。

 

 まるで紙のように次々と車を跳ね飛ばしながら二台のモンスターバイクは爆走する。

 

「まじかよ!!なんだよこのバイク!!」

 

「絶対にバイクのスペックじゃねえぞ!!」

 

―――私のパワーを舐めるな!!

 

―――しかもすっごく頑丈なんだぞ!!

 

 そのまま学校の外に出ようとするのを・・・。

 

「学校の外には出させないわ!!」

 

 私はあらかじめ張った結界が二体の行く手を阻もうとする。

 

 この結界はとっても頑丈よ。それこそミサイルの直撃にもびくともしないくらいに。

 

 でも・・・二台のバイクは揃って叫ぶ。

 

―――この程度で私達を止められると思うなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

 あら・・・まるでガラスのようにあっさりと結界がぶち破られた。

 

『・・・・おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおい!!!?』

 

 こいつらバイクと言う名の・・・重戦車よ。

 

 駄目だ、止められないわ。

 

「・・・とんでもない子たちね。」

 

 多分今、私は表情を引き攣つらせているわよね。

 

「仕方ない。追跡するか。」

 

――――コネクト。

 

 ハルがバイクを召喚。

 

「そうだね。」

 

 渡の傍にもバイクがやってくる。

 

「俺も・・・・。」

 

 鋼鬼さんもそのあとに続こうとして、その前に黒歌がバイクに乗ってやってくる。

 

「はいはい私が運転するから気にするにゃ。あんたが乗ったらバイクが乗り潰れるから。」

 

「・・・・・・はあ・・・。俺の怪力を憎むべきか、それともバイクの脆さを憎むべきなのか!?」

 

 鋼鬼さんのパワーだとアクセルを握りつぶし、ハンドルをへし折ってしまう事が多く、それに耐えられるバイクを作り直す必要があるらしいわね。

 

 鋼鬼さんドンマイよ。怪力もここじゃ逆効果ね。

 

 鋼鬼さんは黒歌の後ろに乗る形で追跡開始。

 

「私はディスクアニマルで追跡をします。」

 

 小猫ちゃんが音叉を取り出し、次々とタカ型のディスクアニマルを起動させていく。

 

「仕方ない。こっちも鎧を纏ってあれでいくよ。」

 

 サイガ君は鎧を纏って何をする気なの?

 

 

 

 SIDR イッセー

 

 ははは・・・もう訳が分からねえぜ!!

 

「無茶苦茶クレイジーな奴らだぜ。こいつら!!」

 

 俺達は今爆走しているバイクに乗っている。

 

 左右の景色なんてほとんど分からねえけど、障害物や車、人なんかは勘で俺達は避けているぜ!

 

 アギト最高!!ギルスもいいねえ。

 

「・・・俺達じゃなかったら絶対に大惨事だぞ。」

 

「そうだね。」

 

 ああもう・・・何んてじゃじゃ馬だよ!!

 

――――時速・・・大体三百は超えているわね。

 

 クレアが俺達の現在速度を教えてくれた。

 

「まじかよ。だが慣れてきた。」

 

「ああ・・・本当にだ。」

 

 何とか操縦出来ている自分達を褒めたい。

 

――――お兄ちゃんたちすごいね。

 

――――これならギアをあげても大丈夫かな?

 

『・・・・・・はあ!?』

 

 嫌な会話が聞こえてきましたよ?

 

 こいつらまだこれで・・・。

 

――――目指せ!!音速の壁!!

 

――――青いハリネズミを追い越してやるぜ!!

 

『ぬぎょああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 

 さらに加速って・・・うお・・・・Gが・・・Gがすげええぇぇぇっぇ!!

 

 

 

 SIDE 渡

 

 無っ・・・無茶苦茶なスピードだ。

 

「どうしようか。さらにスピードを上げたぞ。」

 

 信じられない速度でさらに加速をする二台のバイク。

 

「これ・・・・調べた本来のスペックを大幅に超えているよね!?」

 

 本来のスペックなら時速四百キロが限界のはずだった。

 

 でもすでに今・・・五百を超えている。

 

「九十九神化の影響にゃ。多分・・・あれで想定していたスペックを遥かに超えた性能を叩きだしている。」

 

 後ろから黒歌さんが乗るバイクが追いついてくる。後ろに鋼兄がいるよ。

 

 ちなみに僕達は変身した状態です。

 

 そうでないと、耐えられませんので。

 

「せめてあいつらも変身するように伝えんとな。」

 

「だったら任せて!!」

 

 僕たちの横にサイガ君がって・・・おおおい!!?

 

 

 

 

 SIDE イッセ―

 

「・・・・・・・・。」

 

「・・・・・・・・。」

 

 今俺達は信じられない物を見ているぜ。

 

「大丈夫か―!!」

 

―――無っ・・・、無茶苦茶ね。

 

 俺の隣には何と・・・サイガが鎧を纏った状態で轟竜に乗って並走していた。

 

 なんだあの馬。

 

――――聞いた事があるぞ。確か轟竜は風や音すら超え、光すら超えた速さと、大地を叩き割る力強さを兼ね備えた三界最強、最速の名馬だと。だが気位がたかく、乗る人を選ぶ。そうか、もしやと思っていたが、あの魔戒騎士はその最強の名馬に選ばれていたか。

 

 ドライク。それ本当か!?

 

 あれ・・・そんなすごい奴なの?

 

――――すっ・・・すごい。

 

――――僕達と互角、いやそれすら超える速度で走れるの?

 

 純粋な驚きをバイク達は見せている。

 

 何か純粋な憧れみたいなもんを感じるぞ。

 

「んん?轟竜どうしたの?なんかまんざらでもない顔をして。」

 

 轟竜がそれを受けて満足そうな声をあげる。

 

―――ねえねえ・・・どんなことができるの?

 

―――教えて教えて!!

 

 そして二台のバイクはそろって言いやがった。

 

――――お兄ちゃん!!

 

 その言葉に轟竜が固まる。

 

 そして・・・少し間を開けた後・・・。

 

「ふるぶおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

「まっ・・・まて!!お前お兄ちゃんキャラだったのか!?落ちついてくれ!!頼むから!!」」

 

 その言葉に轟竜が・・・歓喜の雄叫びをあげている!?

 

「なに?弟、妹共、付いて来いって?世界の果てまで走るという事を教えてやるって・・・まてまてまてまてまてまてまてまて!!!この二人を止めるためにお前を呼んだのにぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

 サイガが必死になって説得しようとして・・・轟竜がさらに加速。

 

―――――はい!!

 

――――何処までも付いていきます!!

 

『まてやこらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 

 俺達は叫ぶぜ。出ないと・・・身体が・・・身体がもう耐えられない・・・。

 

 このままじゃ・・・死ぬ。

 

「言い忘れていた・・・二人とも早く変身して!!出ないと音速に達する前に体がバラバラになるよ!!」

 

 最高速度に達しようとする轟竜の上でサイガが必死になって叫んでいる。

 

 あっ・・・ありがとうな。すっかり忘れていたわ。

 

 俺達はそれぞれ・・・変身をする。

 

 俺はアギトに。

 

 ネロはギルスに。

 

 すると・・・

 

――――へっ?あっ・・・あれ?

 

――――僕たちの身体が・・・変わった?

 

 あのバイク達まで変身した?

 

 俺が乗っているバイクは赤に金が混じったバイクに。

 

 ネロのは緑のカニみたいな殻の付いたバイクにだ。

 

「こんな展開ありかよ!!」

 

―――なんだろ・・・もっと速く走れる。

 

―――うん・・・いくぜ!!すべて・・・振り切ろう!!

 

 状況・・・さらに悪化。

 

「・・・・・・なんでさ。」

 

「ハハ・・・こうなりゃやけだ。とことん付き合ってやる!」

 

 俺の嘆きと開き直ったネロの言葉をよそにさらに加速した一体の馬と二体のバイクは山を越え・・・そして海の上を走り抜けた。

 

 

 

 

 その後俺達は半日かけ超音速で地球を一周して帰ってきた。

 

 いつか世界一周旅行をしたいとは思っていた。

 

 でもさ・・・こんな形で実現するとは思いもしなかった。全然観光どころか、景色も見えなかったよ!!

 

 ただ・・・怖く、それでいてしんどかっただけだ!!

 

「ああ・・・もう・・・疲れた。」

 

「今日は一歩も動きたくないぜ。」

 

「轟竜の・・・馬鹿。」

 

 俺達三人は大の字になって倒れ込んでいる。

 

「ぶふる・・・。」

 

 轟竜が誇らしげに二台のバイクを見ている。

 

――――いや・・・世界は広いです。

 

――――うん。ここまで走れて幸せだよ。

 

「ぶるる・・・。」

 

―――――はい。誰かを乗せて走ること。それが私達の存在意義でした。おかげで走りたいというがむしゃらな衝動を発散できました。

 

―――――元々多くの無念を抱えていた魂の集合体。その無念も今の走りですっかり祓えました。その上、それについていける主も今見つけてよかったです。

 

・・・何かいやな予感がするぜ。

 

 二台のバイクがそれぞれ俺とネロの方にやってくる。

 

――――あの・・・お願いがあります。

 

――――右に同じく。

 

 二台の化け物バイク共は最高にイカレた事を言ってくれる。

 

――――御主人様になってください。

 

「・・・マジか。」

 

――――あんたとなら何処までも行けそうな気がするぜ。

 

「ハハ・・・こりゃクレイジーなバイクに見染められたぜ。」

 

「ぶるるる・・・。」

 

「・・・ん?轟竜どうしたの?」

 

 轟竜がサイガに話しかけてくる。

 

「・・・おい。それは正気か?お前がそんな事を言い出すなんて・・・。」

 

「ぶるるるる・・・。」

 

「はあ・・・分かった。クレアさんに頼んでみるよ。」

 

 

 

 こうやって俺達はオーバースペック過ぎるバイクを得る事となった。

 

 

 現在この色々と元気のいい相棒共を洗車している。

 

―――――いや・・・ご主人さま。ありがとうございます。おかげで気持ちがいいです。

 

「まあ・・・それくらいはしてやらんとな。」

 

 このバイク・・・名前はトルネ。トルネードのごとき走りっぷりだったから俺はそう名付けた。

 

 ネロのほうはレイダ―って名付けている。

 

―――――最高だぜ。

 

 そして、この生きたバイクをそれぞれ俺達は使い魔にしている。

 

 皆が言うには・・・前代未聞にして強力な使い魔だと。

 

 確かにそうだ。だが、強力すぎて体が付いていかねえ。こいつらの馬力も後で計測したいけど、現時点では計測不能と言う恐ろしさ。少なくともダンプカーを超えるのは間違いない。

 

 体も頑丈になっており、戦艦の装甲すらぶち抜ける。

 

 まさにモンスターバイク。

 

 もうあそこまで走りたいという衝動は消えているが、その分好奇心は旺盛だ。

 

 しかも俺達の力の影響でメタモルフォーゼしたついでに半分生物的な存在になっている。

 

 自立稼働はもちろん、自己修復、そして脅威の自己進化機能付き。

 

 おまけにガソリンいらずのすごいエコなんだぜ。

 

 部品も古いのは交換。部品提供は冥界の魔王眷族に詳しい人がいるらしく、部長の伝手でそれをもらっている。

 

 生きたバイクという普通ならまずありえない存在に関しても色々と知っているらしく整備の仕方を教えてもらってすごく助かっている。

 

 いつかお礼をいわないとな。

 

 しかし・・・こいつら整備をする甲斐が結構ある。

 

 実際に喜んでくれるから。

 

―――――やれやれ。その教育が大変なんですけど。

 

―――――まあまあ、こんな面白い連中が弟分と妹分になるのだから。

 

 こいつらはまだ生まれたばかり。色々と教育する必要がある。

 

 教育役として立候補したのはクレアとドライクそして・・・もう一人。

 

――――ふふふ・・・いいものだな。体を洗ってもらうという物は。

 

 それはサイガの轟竜であった。

 

 こいつもサイガに体を洗ってもらっているのだ。今はドライヤ―で体を乾かしているのだけど・・・

 

 こいつ確かに喋っているよね!?

 

――――あなたも私のカードで契約するなんてね。

 

――――この二人のためだ。こいつら・・・私の事を兄と慕ってくれたのでな。

 

「・・・お前のキャラに心の底からびっくりしている。」

 

――――ちなみにお前の事も弟のように思っているぞ。

 

「さいですか。」

 

 サイガは洗い終わり、ミニチュア化した愛馬と語らっている。あいつも相当面白いキャラしてんな。

 

―――そろそろ私も次世代の事を考えたいのでな。今は嫁探し中だ。

 

――――へえ・・・だったらちょうどいいかも。

 

 轟竜の言葉に思うところのがあるのだろう、クレアが声をかける。

 

―――まだいつになるか分からないけどあなたに紹介したい子がいるの、あの子は確かまだのはずだったし。

 

―――楽しみにしています。クレア殿。

 

「・・・しかもお前婚活中かい!!」

 

「やれやれだ。さてと・・・乗りにいきますかね。」

 

「おうともよ。」

 

 そしてネロと俺はそれぞれの相棒に乗る。

 

「さて・・・ようやく乗れるひとっ走り。」

 

「待ちなさい。」

 

 ネロもノリノリで行こうとした時・・・キリエ姉さんがやってきて止める。

 

「あなた・・・この国で運転する際大切な物を忘れていないかしら?」

 

「へっ?」

 

 キリエ姉さんは大切なことを言っていた。

 

「あなた免許ないでしょ!!」

 

「そんなもん必要ねえって。行くぜレイダ―!!」

 

―――――おう。かっとばし・・・。

 

 2人が加速して車庫を飛び出そうとするがその前に。

 

「だから待ちなさい。」

 

 その顔面に結界が発生。それで殴りとばされる。

 

「がばら!?」

 

―――なっ・・・なんですと!?

 

「そんな状態で運転させません!!」

 

 十字架の杖で結界をゴルフのようにかっ飛ばしてぶつけたの?

 

 キリエさんも進化している?

 

「はあ・・・安心しなさい。リアスさんに一日で免許習得できる地獄の合宿を手配してもらったから。死ななければ夜中には免許とれるわ。」

 

 えっと・・・なんで免許取得に命をかけないといけないのです?

 

「ちょ・・・でも。」

 

「安心しなさい。そっちの相棒も道連れだから。」

 

―――――あの・・・僕は遠慮したいかなって・・・。

 

「い・い・か・ら・来なさい。それとイッセ―君あなたもよ。」

 

「なんで!?」

 

「免許取得してからかなり間があいているから、研修と言う形で勘を取り戻させるわ。も・ち・ろ・ん・あなたも来てもらうわ、トルネちゃん。あなた自身にも交通マナーを学んでもらう必要があるから!!」

 

――――はいぃぃぃぃぃ!!?

 

「言っておきますけどこれは先生としての譲歩です。全く・・・相棒であるあなた達もしっかり教育しますから覚悟してくださいね!!」

 

 こうして俺達はまた地獄を見ることとなる。

 

 トルネとレイダ―もまたそうだ。

 

 この件で、この二台がキリエ姉さんに全く頭が上がらなくなったのは仕方のないことである。

 

 そして、この二台のおかげで九十九神に関するオカルト研究部のレポートが出来たのだが、あまりに凄い内容で、冥界の学会で議論の嵐が巻き起こり、後に魔王のある方が訪問したという。

 

 

 

SIDE ハル

 

「というわけだ。」

 

「ははは・・・そりゃ愉快だな。」

 

「はあ・・・イッセ―も苦労してんな。なんて奴を使い魔にしてんだよ。」

 

 俺はリアス部長と共に生徒会にやってきている。

 

 そして俺は今・・・前世からの縁と楽しく喋っているのだ。

 

「仁藤。いや・・・この世界では親しみをこめて攻介と呼ぶが、悪魔としての生活は楽しんでいるか?」

 

「ははは・・・当然。考古学を専攻する身として神器などの歴史に非常に興味がある!!」

 

 仁藤 攻介。前世で共に戦った戦友。

 

 こいつもこの世界にやってきていた。おまけに・・・シトリー眷族になっていた。

 

 相変わらず前向きだな。悪魔になる事も肯定的だし。

 

 それと研究熱心だし。

 

 こっちの提督に紹介してやりたい。

 

 絶対に意気投合する。

 

―――――輪廻を超えた付き合いになるとは愉快だぞ。お前という娯楽が無いと生きていけないようだ。

 

 転生にキマイラまで付いてきたし。

 

 今ではこいつの使い魔扱い。まあ・・・あいつ自身も大切にしている辺り良い相棒関係と思うけどな。

 

「お前が攻介と昔馴染みってことにびっくりしたぜ。」

 

「俺のライバルだ。相棒。」

 

「だからいつからお前の相棒に俺がなった!?」

 

「照れ隠しなのはわかっている。皆まで言うなって!!」

 

「なんでだ!?」

 

 同じ眷族の匙とはすっかり意気の合う相棒らしい。

 

 かなりの凸凹コンビだろうが、相性はいいと思う。

 

「あと勝手にライバルにするなって・・・はあ。それで、匙のあれは具合どうなの?」

 

 俺の言葉に匙は腰についているある物を見せてくれる。

 

 それは・・・ビーストドライバーと同じベルトである。

 

「まあ・・・中にいるあいつとの対話は済ませている。愉快な奴でホントよかった。魔力は自前で何とかなるだけましだな。」

 

――――ふあ・・・そろそろお腹空いたよ。ご飯まだかな?

 

 匙の肩の上に現れたのは虎の身体にどことなく獅子に似た人間の顔を持つ獣。サソリの尻尾に蝙蝠の羽を持っていた。

 

 他にも体には頭の左右には虎とヤギ、頭の下には蛸。後ろ足の付け根の右はコウモリ、左は蜘蛛。尻尾の付け根にはサソリとそれぞれの頭がくっついている。

 

「美味しいお菓子と、美味しい燻製肉もってきたから。」

 

―――――――うむ。許す。うまうま・・・うむ。やはり食べないと。あと野菜チップスも頼む。

 

 匙と攻介はそろってシトリー眷族の兵士。

 

 それぞれ、変異の駒を二つ含む、二つずつの駒が割り振られている。

 

 変異の駒がどれだけの価値か分からないけど、少なくとも六つ分。下手な戦車や僧兵を超える潜在能力を秘めているのだ。

 

 その上に、攻介だけじゃなく、匙にもビーストドライバーと同じ物が・・・。

 

 そして、その中にいるのはキマイラじゃない。ある意味もっととんでもない奴が入っていた。

 

 それは人食いで有名なマンティコア。

 

 それがビーストドライバーの中に入っていたのだ。

 

 他にもかなりの数の魔物が入っていたらしいが、すべてこいつが食べ、その力を取り込み、そのままファントム化。ずっと封印されていたのを匙が身につけてしまい、そのまま装着者になってしまったというわけだ。

 

 ただ色々と取り込んでしまったために、雑食性になってしまい野菜チップスが好物になってしまったという愉快な経緯を持つ。

 

 旺盛な食欲は変わらないけど。

 

 そいつと使い魔契約を匙は結んでいる。

 

 シトリー眷族はWビーストという切り札を持っているも同然。

 

 本当に何をしでかすのか分からないし。

 

「それでお前が持っている神器・・・調べて観たぞ。」

 

「ありがとうな。」

 

 そんでもってこいつはビーストドライバーとミラージュマグナム以外にもこの世界に生まれてきたことで神器を得ていた。

 

 それがこいつの首輪だ。

 

「最初に言うが驚くなよ。それは巨獣の模写首輪(ベヒモス・ラーニング・リング)。簡単にいえば色々な獣の力を身につけることができるというものだ。」

 

「獣?」

 

「この世界なら魔獣、神獣も含まれる。力や能力をラーニング、そして、好きなアイテムに変換させ何時でも使えるようにするらしい。」

 

「へえ・・・あっちの世界ならともかくこの世界なら相当有用だな。」

 

 この能力は俺達魔法使いにとっても確かに有用だ。指輪に変えておけば、魔法としてその力を使う事ができるのだから。

 

「でも問題が、どうやってラーニングするのかわかっていないことだ。」

 

「はい?それ肝心な部分だろうが!!」

 

 だが、この神器の致命的な欠陥はラーニング方法が未だに分かっていないということ。

 

 前の使用者は偶然力を手に入れたらしい。しかも、この神器は一例しか報告がされていないので、詳しいデータがないのだ。

 

「まあまあ・・・その件に関しては総督が非常に興味を示していてね。近々直接会いたいと。レアな神器だから研究したいと言っていたし。」

 

「そうかい。まあ・・・気長に待つとするかねえ。」

 

 こいつの神器は正直どんな力を秘めているのか分からない。何しろ神器の中で唯一三大巨獣の一体「ベヒモス」の力を宿した物だから。

 

 下手したら神滅具クラスに化ける恐れもある。

 

 そうなると他の二つも気になる。

 

 しかもその内の一つを匙が持っている。黒い龍脈以外にあいつはもう一つ神器をもっている。

 

 三大巨獣の一体・・・リヴァイアサンが宿った「巨竜の顎」を。

 

 これもまだ能力が判明していない謎の神器だ。

 

「そして他のメンツまでコーチをつけてくれって言うのだからまいったよ。」

 

「しゃあねえだろうが、魔法使いは同じ眷族に三人もいるし。」

 

 そして、この眷族・・他に何人か魔法使いがいる。

 

「放置するわけにはいかない・・・か。」

 

 俺は出来上がったメイジ用のドライバーと指輪を見せる。

 

「おおっ・・・用意してくれたのかい。」

 

「絶望から救った奴らを大切にしろよ?」

 

 グレゴリからも許可はもらっている。

 

「まったく、お前達眷族の専属コーチになりそうな気がするよ。」

 

「よろしくお願いします・・・師(マスター)」

 

「・・・そんな呼び方、俺には似合わないから勘弁してくれ。」

 

 やれやれだ。

 

「それと・・・また何か抱えているな。何かあったらまた言えよ?」

 

「・・・整理つけたらな。まだどうなるか分からない。」

 

 こういうところも変わらない。今度はすごく長い付き合いになると思うと、少し憂鬱だが、頼もしい。そんな奴だ。

 

 

 

 SIDE リアス。

 

「はあ・・・ついに姉様が動き出したわ。」

 

 私はソ―ナとお茶を楽しみながら聞いてしまった。

 

「そう。もう外堀は埋まったのね。」

 

「ええ。家の中の誰も反対する人はいないし、向うの家も、魔戒騎士たちの総本山、元老院も説得済み。むしろ実家では漸く相手を見つけてくれたって、歓迎の声があがっているくらいです。」

 

 あれだけ天真爛漫に好き勝手やっていたらねえ。

 

「ついにあなたの姉さんも結婚か・・・。」

 

「これで落ち着いてくれればいいですけど。」

 

 ソ―ナはお茶を飲みながら疲れた様子でため息。

 

 相当振り回されたみたいね。

 

「ええ。でも姉様の作戦があまりに緻密で、恐怖を覚えているのもありますが。」

 

 えっと・・・あなたが恐怖を覚えるほど?

 

 あなたは戦略とか凄かったわよね?そのあなたが恐怖を覚えるほど?

 

 ソ―ナのカップを持つ手が微かに震えている。

 

 本気だわ。あの方は・・・。

 

「でも、サイガ君が靡かないとは思わないの?」

 

 でも肝心な穴がある。それはサイガ君自身の気持ちだ。

 

 彼はかなり精神力も強い。そう簡単に籠絡なんて・・・。

 

「・・・その点に関してはお姉様を良い意味でも悪い意味でも信じています。」

 

 何が言いたいのかわかる。

 

 セラフォル―様は欲しいといった物は必ず手に入れる。滅多なことで欲しがらないけど、今回はその滅多にない事態。

 

 しかも、初めての恋だ。その情熱はすごい。

 

 あの方が本気になると・・・色々な意味で敵わないわ。

 

 あの手この手で相手を籠絡させる。多分・・・相当大胆な手をつかってくるのでしょうね。

 

「それで、お姉さまより最期の堀を埋めたいとのことです。」

 

「最後の堀?って私を呼び出したのにも関係がありそうね。」

 

 私の質問にソーナは眼鏡を直しながら告げる。

 

「ええ。その通りです。最期は彼の友人達です。そこを埋めてしまえば完璧です。」

 

「ああ・・・そして、その友人に私も含まれるという事ね。」

 

「当然です。クレアさんもご協力お願いできませんか?あの人の超能力じみた危険察知能力を超えるための策を出すにはあなたの協力がどうしても必要なのです。」

 

「もちよ!!こんな面白い事に参加できるなんて光栄だわ。」

 

 その席に実はクレアまでついてきている。

 

 シ―ナいわく、絶対に押さえておきたいポイントだそうだ。

 

「あなた・・・相当できるわね。あの子の素質を的確に見抜いているじゃない。」

 

「いえいえ。貴方も相当。」

 

 この二人、知略を使うという点では似ているかも。

 

 さて・・・サイガ君。

 

 そろそろあなた、責任を取る時間よ。

 

 私は全力で協力するつもりだから覚悟してよね?

 

 

 

SIDE サイガ

 

 なっ・・・なんだろう。今すごく嫌な予感がした。

 

 何か・・・この先とんでもない事が起きそうな気が・・・。

 

 

 SIDE アーシア

 

 そう言えば・・・サイガ君に言い忘れていました。

 

 前のゲームで見た予知の映像。

 

 でも今更言えませんよね?

 

 魔法少女っていうのですかね?そんなコスプレをしたツインテールの黒髪の美少女と体育館で再会し、そのままキスをさせられる映像だなんて・・・。

 

 悪い事じゃないですし。

 

 それにそのキス・・・その・・・結構エッチっというか・・・ディープな物でしたし。

 

 それを受けて・・・顔を真っ赤にさせたサイガ君がそのキスをした女の子の素敵な笑顔で言ったセリフを受けてそのまま倒れるところで終わりました。

 

 そんなはしたない内容を、私の口から言えません////!!

 

 

SISE ???

 

「それって本当なのですか?ダンテ様。」

 

「そうだ。」

 

「へえ・・・セラ姉様についに。」

 

 私はダンテ様から聞いた朗報を喜んでいた。

 

「でも、その相手がよりってあの事件の時の彼だなんて・・・運命って分からないわ。」

 

「そうだったな。それでどうする?お前の因縁がもうすぐ始まろうとしているが?」

 

 ダンテ様は私の背中を押してくれる。

 

「もちろん・・・参加させてもらいます。ついでに新たなポーン候補も見てきます。」

 

「頼むぜ。ついでにお前の兄さんに会ってきたらどうだ?」

 

「・・・でもそれは難しいかも。兄さん・・・私の事を死んだ者だと思っているから。」

 

「実際一度死んでいるがな。」

 

「それを言われると弱いですね。一度死んだからこそ、この力を得ちゃいましたけど。」

 

 私の背中に灰色の翼が現れる。

 

「でもおかげ様で私は生きています。そして、聖剣に決着をつける事ができます。」

 

「おう。頑張ってこいや」

 

 本当にに優しい方。私も頑張らないと。

 

「仕事が片付いたら向う。あいつが紹介してくれた彼をこの目で見たいからな。」

 

「わかりました。では行ってきます。」

 

 私は姿を変える。

 

 灰色の怪人・・・クレイン・オルフェノクへと変えて。

 

「待っていてね兄さん。サイガ君・・・。」

 

 この事件に決着をつけるために。

 

 

 

 




 あとがきを利用して予告をさせてもらいます。






 僕は聖剣を・・・エクスカリバーを許さない。

 それは今でも、そして変わる事がないだろう。

 復讐してやる。死んだ仲間のために・・・亡くなった双子の妹のために。


 あの時の誓いを忘れない。この剣に誓ったその生きるという思いを。

 その誓いのために僕はこの地にやってきた。彼に手を差し伸べるために。

 そして・・・皆の言葉を伝える。


 俺は生きる。灰となって消えさるその瞬間までずっと。

 今更名乗り出る事なんてしない。だが・・・それでもあいつには幸せになってほしい。

 そのために俺は今・・・戦っている。命を燃やしつくすように。



 僕達は負けない。この世界の時もまた・・・みんなにとってかけがえのない物だから。

 だから僕はこの世界でも戦う決意をした。前の人生よりもはるかに苦しく長いと思う。

 でも、みんながいる。一人じゃないから・・・僕は戦える。


 四人の意思。

 それが交差し、物語が幕をあける。



 私は一度死んだ者。一度死に・・・そしてまた蘇った。

 優しい人達によって私は今生きている。そして力を蓄えている。

 みんな・・・みんな生きている。それを彼に伝えるために私は今・・・立ち上がる。


そこに五人目が加わることで。


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