今回で二章を完結させます。
師走が忙しくてなかなかできませんでしたが・・・どうぞ!!
SIDE イッセ―
「不幸だ。俺・・・悪くないよね?」
色々と理不尽な怒りをぶつけられながら俺は今戦っている。
「てめえ・・・本当に何者だ?色々とありえないぞ。」
フェニックスが呆れながら聞いてくるけど、俺だって分からねえよ!
何で俺の中からあんな化け物が誕生することになる!?
「いまの内に始末してえが、刺激を与えるとどんなふうに暴発するかわからねえ。なんなんだよてめえは!!」
そして危険物扱いされているし!!触る事さえ躊躇われていますよ!?
泣きながら俺は雑魚を蹴り飛ばす。
――――――もう・・・フォローできない。あんたの助平さが生み出した罪は特にね。
――――――相棒といると色々と飽きない。
「ああそうですか!!」
<BOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOST!!>
ライオトル―パーを倍化させた拳で粉々に打ち砕く。
そんな俺に向けてトータスロードの一体が刃のようなヒレで斬りかかってくる。
「ぐっ・・・。」
その一撃に怯みながらも俺はカウンターを決めるが、そこを別のトータスロードとライオトル―パー達が邪魔をしてくる。
トータスロード達の固い甲羅による突進でふっ飛ばされ、ライオトル―パー達が手にした短剣のような武器を変形させた銃による攻撃を受けたのだ。
「イッセ―!!」
「世話やけんな!!」
そんな連中を部長とファイズが攻撃してくれる。
「・・・数が多い。」
――――――私の武器を使うかしら?
―――――それとも我らを召喚するか?
「いや・・・・・。」
相棒共の提案に苦笑しながら俺は別の選択を取る。
数の多い雑魚どもを一掃する方法を俺は当たり前のように思いつく。
「部長!!」
「何かしら?」
「勝手で申し訳ないですけど・・・プロモーションやらせてもらいます。」
「へっ?」
本来なら主の許可が必要ですが・・・今の俺ならできる。
―――――プロモーション・・・騎士(ナイト)
騎士になってみると、ベルトから蒼い棒のような物が現れる。
それを引き抜くと・・・俺の身体が黄金から青に変わった。
そして左肩に蒼いアーマーのような物がつく。
「まっ・・まさかエレメントチェンジ?いや・・・この場合はフォームチェンジか。」
フェニックスは姿が変わった俺の姿を見て何か言っている。
変化した俺に向けてライオトル―パー達が銃撃をしかけてくる。
それに対して両先端が展開して刃となり、そして長くなったハルバードを旋回させてすべて防ぐ。
そのまま飛んでくる銃撃をすべてかいくぐりながら一体を殴りとばす。
その感触だけで分かる。
「力は落ちているけど・・・速く動ける。」
この武器が落ちた力を補うためにあるようだ。
斬りかかろうとする連中に対して、ハルバードを振るってまとめて斬りとばす。
攻撃して来ても楽に避けられる。たった一歩で、前の三倍以上の距離を動ける。
動きが軽く、そして速くなっているためだ。
――――まさに嵐ね。
―――――ああ・・・東方の龍が巻き起こす嵐その物。
突風と共に敵を次々と斬りとばしていく姿をクレアはそう例えた。
「音速斬嵐の騎士(マッハスラッシュストーム・ナイト)と言うべきかしらね。」
部長はこの姿に名前すらつけているし。
倍化させた力を使えばさらに速く、そして鋭い攻撃が繰り出せる。
「・・・速すぎる!?何だこのスピードは。」
銃を撃とうが斬りかかろうがすべてかわせる。すごく軽く動ける。
あまりの速さに相手を幻惑出来るレベルだ。
「残像で分身ができるほど動きか。・・・・・すごいな。」
<BOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOST!!>
加速をさらに倍化、そしてその力を武器に譲渡。
――――――――Transfer!!
ライオトル―パーの群れを走り抜けながら俺はハルバードを振るう。
走り抜けると同時にライオトル―パー達は切り裂かれ、全滅する。
そこに・・・四体のタ―トスロード達が急襲。
床をまるで泳ぐようにして攻撃してきたのだ。
それをかわすが、攻撃する前に床に潜られてしまい攻撃ができない。
例え攻撃出来ても・・・亀だけあってその硬い甲羅が刃を弾いてしまう。
――――――どうするの?
だったらもう一つ試してみましょうか。
「プロモーション・・・戦車(ルーク)!!」
その言葉と共にハルバードが消え、ベルトから剣の柄が出てくる。
それを引き抜くとともに今度は体が赤に変わった。右肩に赤いアーマーもついている。
手には引き抜いた赤い刀。
「今度は戦車なの?」
この姿は・・・うん、分かることは二つ。
まず一つ・・・。
背後から襲いかかってきたトータスロードの一撃をあえて受け、拳一発で殴りとばす。
「ごぼっ!?」
すごく力が上がり、防御力もあがっている。その分、体が重くなってはいるけど。
そして・・・もう一つ。
あいつらの動きが分かる。
トータスロード四体の位置が手に取るように分かるのだ。目だけじゃなくて、聴覚。振動、そしてそれ以外の第六感みたいなものも増強されている。
それがあいつらの位置を教えてくれたのだ。
「なんでだ?」
「攻撃がすべて・・・読まれている!?」
「全く当たらない。」
動きが鈍くても全然問題ないくらいだ。
そこにこの刀。そうか・・・このフォームの戦い方が分かる。
刀の唾の部分がアギトの角のように展開する。
<BOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOST!!>
――――――――Transfer!!
力を送り込むと、刀から凄まじい勢いで炎が噴き出す。
刀を構えたまま・・・その場で動かなくなる。
「だったら・・・前後から。」
「攻撃してくれる!!」
二体のトータスロードが全く同じタイミングで前後から飛び出してきたのと同時。
俺は横に動きながら剣で弧を描くようにして薙いだ。
「がっ・・・。」
「なんだと!?」
その一閃は二体のトータスロードの身体を上下に両断。
そのまま二体の身体が炎に包まれながら倒れ・・・爆発する。
横手から飛んでくる三体目。その頭を部長が受け止めていた。
――――ウェイクアップ。
わざわざ、カテナを解放させた腕でだ。
「その姿・・・炎剣心眼の戦車(フレイムソードアイズ・ルーク)と呼ばせてもらうわ。」
また名前をつけていますし。
顔面を掴まれて動けないトータスロード。
「・・・滅びなさい。」
「ぎゃあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
その身体に直接滅びの力を送り込み、三体目のトータスロードが絶叫と共に滅される。
・・・結構えげつない倒し方ですな。
最後の一体が逃げようとする。
「誰が逃がすか。」
だが、そこにファイズが手に赤い光の刃を持つ剣を持つ。
腰の携帯電話みたいになっているベルトのボタンを押す。
――――Exceed Charge
そのベルトから延びる赤いラインが剣に向かって赤い輝きのエネルギーを送り込む。
それと同時に剣を振ると、そこから赤いエネルギー波が放たれ、そのまま最後のトータスロードを拘束する。
「うっ・・・動けん!?」
そこにエネルギーを全開にさせた刃を持って突進。トータスロードを一刀両断。
こうして・・・ト―タスロード達も全滅した。
「・・・マジかよ。」
あっという間に全滅した助っ人達を見てフェニックスは茫然としている。
俺達はフェニックスに詰め寄る。
でも背中から出てきた炎の翼がそれを阻んだ。
「俺を舐めるな!!」
炎の翼を剣で切り裂きつつ、俺はフェニックスに詰め寄ろうとする。
刃とフェニックスの大剣がぶつかり合い、俺が弾き飛ばされたところにファイズが詰め寄ってくる。
手に変わった板のような物・・・って何それ?
「・・・・・・デジカメだ。」
へえ・・・って!!それデジカメなの!?
よく見るとレンズも確かに見える。
――――Exceed Charge
電子音と共に充電され・・・赤い閃光と共にデジカメごと強力なパンチを繰り出す。
「ぐおっ・・・!?」
最近のデジカメってすごいんだね。パンチの威力が上がる機能付き。
大剣と刃からぶつかって、フェニックスの大剣の方が粉々に砕かれちゃったよ。
・・・・・・俺は絶対にそれをデジカメとは認めないぞ。
そこにさらに部長が追い打ち。
滅びの魔力を込めて強烈な回し蹴り。
「がはっ!?」
「聞いた事があるわ。ファイズは総合ユニット型の神器・・・ファイズギアを使っているって。ベルトと携帯電話が本体だけど、それに付属した神器がいくつもあるらしいわ。追加で色々を付属できるようにグレコリが研究しているのよね?」
そんな変な神器があったの?
「単独でも使えるし、組み合わせたら信じられない力を発揮するそうよ。」
「癖は強い。使い方も取得するのが大変だった。」
そうだろうね。でも・・・デジカメがパンチ力強化って言うのは未だに衝撃が。
そんなところにフェニックスが立ち上がってくる・
「ちい・・・このままじゃ勝てねえ。しかも滅びの魔力とフォトンブラットか。これは俺の力と相性が悪い。しかたねえ。切り札をつかわせてもらうぜ。」
フェニックスはある指輪を発動させる。
――――リバイブ。
それは蘇生の魔法。
それと共に四体のタ―トスロードと何体かライオトル―パーが復活。
続いてもう一つの指輪も発動。
――――フュージョン。
それと共に蘇生した連中が光となって、フェニックスと一つになる。
現れたのは四メートル位の巨大な亀怪人。
「ふはははは・・・リサイクルってやつだ。」
だからって怪人を蘇生させて合体するのはリサイクルとして色々とまちがっていないか!?
亀怪人の前方に巨大な火球が精製される。
当たると不味い。
かわそうとおもった。でも・・・後ろには部長と一緒に戦ってくれているファイズ。そしてまだ逃げようとしている者たちがいる。
「・・・・・くそぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
それが放たれ、俺達を飲み込まんと襲いかかってきた。
SIDE ネロ。
今俺の腕の中で一人の男が逝こうとしていた。
「鋼兄!!」
「俺はもう・・・だめだ。」
震える手で俺の手を掴む。ああ・・・あれだけ力強かったのに握った手から伝わる力は赤子のように弱々しい。
「鋼鬼さん・・・ごめんなさい。」
その後ろでは白いテーブルクロスを纏ったキリエの姿。
そのテーブルクロスから見える艶めかしい体のラインを見た鋼兄は・・・。
「ごぶっ!?」
また血を噴き出した。
「はあ・・・は・・・・・・あ・・・ああ・・・黒歌。子ども残してやれなくて・・・ごめんよ。そう・・・つたえてくれ。」
「鋼兄ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
巨星が今落ちようとしていた。
どうしてこうなったかと言うと話はキリエが皆を守るために神器の力を発動させていたことから始まる。
「キリエ!!無茶をするな!!」
「私だってできることはやらせてほしいわ。だって・・・・・・。」
彼女の背後には子供達がいる。
はあ・・・こういったところは相変わらずだぜ。
「俺達が引きつける。その間に逃がしてくれ。」
誰かのために身体を張ることを惜しまない。すごく優しい。いや優しすぎる。
だからこそ・・・守りたいと思う。
愛しいと思うぜ!!
そして目の前では鋼兄が・・・本気をだしていた。
「おらああああああぁぁぁ!!」
飛びかかってきたおっぱいライオンを背負い投げで投げた!?
でもおっぱいライオンもすぐに体を翻して着地。あの巨体で音もなく静かにだ。
「厄介だな、あの巨体であのしなやかさと機動性か。」
猫の様な敵なだけある。
でかく、怪力も誇るのに、それでいて身が軽く、速い。
でかさも相まって爪の一撃は脅威。
おまけに・・・。
「おっぱいぃぃぃぃぃぃ!!」
タテガミから無数の毛針を飛ばしてきたのだ。
「ちぃ!!」
皆が剣を振るいながらそれを防ごうとする前に・・・・
「みなさん大丈夫ですか!?」
キリエが神器の力ですべて防いでくれる。
「長期戦はさけたいな。」
「うん。下手したら街に被害が・・・。」
渡の言うとおり・・・あのままじゃ街に行ってしまう。
あいつの欲望ならよリ美女の多い街に向かうのは必須。
行かせないと俺達は必死で食い止めているのだが・・・それでもこのままじゃ時間の問題かもしれない。
「仕方ない・・・本気を出すか。現時点でどこまで力のコントロールができるか試すいい機会だ。」
手にしたアームド・クサナギを発動させる鋼兄。
周りに無数のディスクアニマル達が集まっている。
「おっぱいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
あのおっぱいライオンがキリエを見つけて突進してきやがった。
あの野郎・・・キリエを狙いやがったな!!
それはレッドクイーンとブルーローズを交差させて受け止めようとするが・・・。
その爪は常識外に強力で・・・。
「ぐぼっ・・・・まじかよ!!」
レッドクイーンの刀身とブルーローズの銃身を粉々にしやがった。
そのまま俺はふっ飛ばされる。
「ネロ!!」
そしてキリエに向けて・・・。
「おっぱいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
とおっぱいライオンが例の咆哮をかました。
「へっ?きゃああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」
空中にいたキリエはその咆哮にぶっ飛ばされつつ服が破壊され・・・。
「へっ?」
その先にいた鋼兄とキリエが正面衝突したんだ。
真っ裸のキリエと正面から抱き合う様にしてぶつかる鋼兄。
抱きとめてくれたのは感謝だぜ。
顔面にキリエの胸が完全にぶつかっているのがうらやましくもある。
いや・・・本当にスタイル良い。あんな清楚で、かなりわがままな体を。
幼いころから一緒にいるけど・・・これはすごく・・・。
「って・・・ネロ!!何じろじろとみているのよ!」
「・・・ハッ。」
あっ・・・あぶねえ。俺もイッセ―みたいになるところだったぜ。
「・・・・・・。」
たっ・・・頼むキリエ。涙目で俺を睨まないでくれ!!
若さゆえの過ちとしてくれ!!頼む!!
それよりも何か体を隠すものを・・・。・
「・・・すっ、すまねえ。って・・・鋼兄?」
真っ裸のキリエと真正面から抱きとめた鋼兄がなんの反応を示さない事に気づいてしまう。
「その・・・ごめんなさいね。えっと・・・。」
無言でキリエを下ろす鋼兄。
キリエが恥ずかしそうにもじもじとした時だった。
「ごぶばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
鋼兄・・・凄まじい勢いで鼻血をだしたよ。
「がおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!?」
その勢い・・・あのおっぱいライオンの顔面にまで届き、視界をふさぐくらいに。
どんだけの出血なんだよ。
そのまま鋼兄が倒れた。
今思えば、あのおっぱいライオンって鋼兄の天敵と言える存在じゃねえのか?
くそ・・・そのせいで鋼兄が大量出血(鼻血による)で死にかけていやがる。
「俺はもう・・・だめだ。だが・・・せっ・・・せめて・・・。」
鋼兄はあるカードを取り出す。
そしてそれを出現させた鬼の篭手に装填。
―――――――Adⅴent!
「行け・・・ヤマタ。おっ・・・俺の代わりに皆を・・・頼む!!・・・ガグ。」
「鋼兄ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
俺の腕の中で巨星が落ちた。
「・・・・・・瀕死の状態でなお皆の事を案じるとは我が主ながらあっぱれな奴よ。」
そして、会場の外に、とっ・・・とんでもない巨体の蛇が召喚される。
「この姿になるのも久しぶりだのう。」
ヤマタノオロチ。
かつて邪竜の一体で、それでいて鋼兄が倒したとされる化け物。
「・・・・・・。」
でかい。あまりにも。
山一つ以上の大きさはある。
あんな奴を鋼兄って単独で圧倒して倒したのかよ。
その本気を出す前に、今は鼻血による大量出血で死にかけているが。
「我が契約者の・・・命を賭した願いだ。存分にやらせてもらうぞ!!」
そして、そのまま超巨大おっぱいライオンを抑え込みにかかった。
山のようにでかいおっぱいライオンが圧倒されている。
「みな・・・鋼兄の意思を無駄にするな!!」
上空から渡が飛び上がっている。
――――ウェイクアップフィーバー!!
両足から赤い蝙蝠の翼を展開させながらおっぱいライオンを蹴り飛ばす。
うお・・・あのでかい奴が吹っ飛んで行く光景は流石にレアだね。
「がっおお・・・・。」
例の咆哮をする前に・・。
「・・・黙ってもらうぜ。」
俺は悪魔の力とギルスの力を全開。その頭を巨大化させた右腕の力で抑え込む。
もうあの色々な意味で危険な咆哮はさせねえ。
ついでにタテガミも抑えているから毛針は発射できねえぜ。
もがき苦しむおっぱいライオンの爪が俺に向かって振り下ろされようとした時だった。
「その爪・・・封じさせてもらうよ。」
木場が巨大な剣を上空にて召喚。それで右前足を地面に縫い付ける。
「だったら・・・動きはこっちが封じようかな?」
そして左前足にはサイガが轟竜に乗ってかけていた。
巨大化させた剣を逆手に持って彼は斜め上に切り上げる。
それはアバンストラッシュによる闘気の刃。
そこに追いつくようにして彼は突進。
これは・・・本家本元のアバンストラッシュ。
そこに上から振り下ろすようにして放ったもう一発のアバンストラッシュを十字にクロスさせた・・・奇跡のような超必殺技。
馬に乗った状態、それも巨大化した剣で放つ辺りさらにめちゃくちゃだ。
――――――アバンストラッシュX!!
その一撃によって、おっぱいライオンの左腕は切り裂かれ、肩口ごと吹っ飛ぶ。
大きくバランスを崩したおっぱいライオンをヤマタが巻きついて抑え込む。
そこにハルが歩きながら告げる。
「止めは任せてもらおうか。鋼兄の弔い込めて。」
「いっ・・・いっ、いえまだ死んでいませんよ!!」
倒れた鋼兄。アーシアちゃんとキリエの必死の介抱を受けている。
むしろあれだけの出血があってまだ生きているのはすごいぜ。
「冗談だ。それよりも右腕の力・・・解放させてもらう。」
そしてハルは呪文を唱える。
いや、呪文と言うよりそれは詩のようなものであった。
―――――我は原初の黒き蛇と契約せし者。
その言葉と共に当たりの空気が一変する。
―――――祖は初めての誘惑者。楽園の住人に禁断の果実を教えた者。
それと共に右腕が黒いオーラのような物に覆われる。
――――神の最大の憎しみ。それ故に疎ましきもの。
それはまるで黒い蛇のような形をとる。
――――その牙に宿るは大罪と言う名の毒。その血すら反逆と言う名の毒となる。
なんだ・・・あれ?
あまりに邪悪なオーラにおっぱいライオンですらおびえているぞ。
――――さあ・・・その毒により憎しみと大罪すら蝕み、神をも殺し、
その右腕に宿る黒い蛇とハルの声が重なる。
『・・・すべて喰らいつくそう。』
その言葉と共にハルは走りだす。
『そして・・・あとに残すは、希望なり!!』
最後の言葉と共にその右腕をおっぱいライオンに叩き込む。
その一撃は・・・・。
おっぱいドラゴンの身体を粉々に打ち砕いた。
あの巨大なおっぱいドラゴンの身体をだ。
「スネイク・・・バイド。」
凄まじすぎる破壊力。それと必殺技の名前をあとで言うタイプなんだ。
「・・・貴様。どうしてそいつを宿している?」
ヤマタはハルをにらみつける。
「原初の邪竜と呼べるそいつを・・・・・。」
ハルの右腕に纏った黒い蛇をヤマタは原初の邪竜と呼ぶ。
「分からない。でも・・・うまく共存できているよ。こっちには別にドラゴンもいるし。」
ヤマタはハルをしばし見て・・・。
「我が主の友もまた・・・とんでもない連中ばかりか。この世界で新しい神話が始まっているのかもしれない。」
ヤマタは何かを悟った様子。
「神にとって最も憎いとされた蛇の力。もう一つの異世界の龍と共に使いこなすのは困難な道のりだぞ。」
「それでもこいつも見捨てる事ができない。」
「見捨てる・・・だと?」
「こいつは孤独なだけだ。きっと悪い奴じゃない。まだ会話もできないけど俺にはわかる。いつかしっかりと喋りたいよ。」
黒い蛇を左手で優しく撫でてやるハル。その言葉にウソはない。
「・・・そうか。神の憎しみすらお前は救おうというのだな。」
二人の会話。それはおそらくハルの腕に宿っている何か話だろうな。
ハルの腕に宿る蛇が何かを言いたげに唸るが・・・そのまま姿を消す。
「こいつも希望だ。俺・・・そしてみんなのな。」
その言葉に満足したのかヤマタの体も透け始める。
「ああ・・・こいつらと一緒にいるのも運命だったのだな。おかげで当分退屈しないで済む。新たな神話に関われることを誇りに思おう。主の蘇生・・・頼むぞ。」
ヤマタはそうやって姿を消す。
そうして俺達の無駄に派手で大規模な物となった戦いは終わった。
「・・・メダル、頑張って集めないとね。」
辺りに数万・・・いや数億単位はあるかもしれない大量のセルメダルの回収が始まる。
「・・・泣けるぜ。」
でも拾わないと何かやばそうだし。
いつのまにかあいつらも消えていやがる。
やりたい放題やって逃げやがった。
「あとは鋼兄・・・輸血を急ごう。」
「こんな事もあろうか、本人の血を定期的に集めていたから。」
渡。グッジョブだ。とんだけ手回しがいいの!?
「オ―フィスちゃんも看病を手伝っている。」
そう言えば・・・確かにあのゴスロリ娘も何やら力を発して鋼兄をささえている。
「鋼兄さん血の気が多いから一週間に一回とっても全く問題ないのはすごいね。」
伊達に鼻血を出し続けているわけじゃねえな。
瀕死の鋼兄の介抱と並行して俺達は後始末を開始した。
他は他で勝手に終わるだろうし。
鋼兄・・・今回は不憫すぎました。
色々な意味で相手が悪かったとしかいえないです!!
でも彼は現時点でも本気を出したら最強です。
別の機会の活躍に期待してください。