赤龍帝の幼なじみ達   作:THIS

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二つのゲート。

 それを救ったのは・・・


希望のコトバです。

 SIDE イッセ―。

 

 苦しむライザ―にフェニックスは笑う。

 

「このメモリには細工があってな。破壊された瞬間、対象者を絶望しファントムを生み出す状態と同じにするようにする。まあ・・魔力の逆流みたいなものだが。」

 

「・・・そういうことか。お前ら、ドレイクが使った方法を応用させたな。」

 

 ハルが怒りに燃えながらフェニックスを睨みつける。

 

「そういうことだ。便利だよな。絶望させる以外にももう一つの方法が確立してんだから。あのおっさんには感謝だぜ。」

 

「ぐっ・・・お前らの背後にドレイクがいるのは確実だな。」

 

「そういうことだ。そして、それと同じ方法をもう一人にも実は起こしている。」

 

 フェニックスの言葉と共にもう一人倒れる。

 

「がっ・・・ああ・・・ああ・・・・・・。」

 

 それはライザ―の妹―――レイヴェルだった。

 

「てっ・・・てめえ・・・。妹にまで手を出しやがって。」

 

「ふふふふ・・・うまくいきましたわ。」

 

 天井に白い蝙蝠の姿をした女が天井でわらっている。

 

 二人の背中から炎の翼が出てくる。

 

「まさか・・・二人とも宿しているのは・・・フェニックスのファントムか?」

 

「そういうことだ。俺の同胞。平行世界の同一のファントム。それが二体もいる。そしてその二体が俺の目的だ。」

 

 フェニックスは笑う。

 

「平行世界の二体のフェニックスと融合するんだよ。そして最強のファントムになってやる。そのためのベルトと指輪もある。」

 

 フェニックスの腰にハルと同じドライバーが・・・。

 

「そんな事のために・・・俺をわざと勝たせたのか?」

 

「そうだ。お前はあの試合でメモリは使っていなかった。この計画にはどうしてもお前にメモリを使わせ、メモリブレイクしてもらわないといけなかった。そう言った意味ではお前はよくや・・・がばら!?」

 

 こいつの無駄口を拳でふさぐ。

 

 こいつらの計画の肩棒をかつがされるなんてな・・・。

 

「もういい・・・お前は黙れ。」

 

「こいつ・・・あれだけ戦ってまだ動けるのか?」

 

 俺はもう我慢の限界だった。

 

「よくも俺の戦いに水を指してくれたな。こいつと拳を交え、そして分かりあえた。それだけで気持ちよく全て終われたと思ったのに!!」

 

 おまけだ。もう一発殴ってやった。

 

「ぐっ・・・こっ・・こいつ・・・」

 

 俺の声にフェニックスは息をのむ。

 

―――――こいつ・・・本当の意味で相棒の逆鱗にふれたな。

 

―――――うっ・・・うん。人が良いのもこういう時は本当に怖いわ。敵だった男のために激怒しているし・・・。

 

「今すぐ二人を助けないと・・・レイちゃんはその子を!!」

 

「わかったわ・・・きゃ!?」

 

 ハルとレイちゃんが二人を助けようと走り出す。

 

 でも・・・それを阻む者がいた。

 

「邪魔はさせませんよ。」

 

 それは・・・謎の大嵐を起こした男。

 

「井坂・・・。」

 

 それがレイヴェルちゃんの傍に。

 

 ハルの目の前には・・・・謎の男がいる。

 

「ひさしぶりだね。ウィザード。」

 

 その彼にハルは驚愕を隠せないでいた。

 

「フェニックスもいたから可笑しくないとは思っていたけど・・・お前まで復活していたか・・・グレムリンいや・・・ソラ!!」

 

「ははははは・・・あの時の礼をしたくて絶望から立ち上がり地獄から戻ってきたよ。」

 

イカレタ笑いをする彼。肌に感じるよ。あいつの異常な何かに・・・。

 

「そして、俺達は新しい力をそれぞれ獲得しているんだ。ねえ・・・。」

 

 グレムリンと呼ばれた男の腰にもベルトがあった。

 

「・・・ドライバーのセールスでもやっているのかな?」

 

 ハルも腰にドライバーを出現させる。

 

「どきなさい。早くしないとその子が!!」

 

 レイちゃんの腰にもドライバーが出現。

 

「へえ・・・でも私に勝てますか・・・ぬう!?」

 

 井坂に向けて数発の弾丸が命中。その隙に拳が放たれ、後ろに下がる。

 

「助太刀するにゃ。」

 

「私も・・・。」

 

 銃を手にした黒歌さんと小猫ちゃんの姉妹。

 

―――――バインド

 

「雷の鎖ですか。」

 

井坂の身体を雷の鎖が縛り、拘束する。

 

「私もですわ。前のゲームでの借りを返していません。」

 

「ははははは・・・いいでしょう、小娘さん達。私が直々にお相手を・・・んん?」

 

 その井坂に鋭い蹴りが放たれる。

 

 拘束された状態でふっ飛ばされる井坂。

 

 蹴りを放ったのはグレイフィアさんだった。

 

「それ以上の無礼は許しません。私も直々に相手にします。」

 

 だが、その蹴りを受けてもあいつは平然と立ち上がる。

 

 雷の拘束を力づくで引きちぎってだ。

 

「こいつ・・・人間じゃない?」

 

「はははははははは・・・そうか。最強の女王までいるか。ならこっちも手駒が必要ですね。」

 

 井坂の影から次々と灰色のゴキブリのような怪物が現れる。

 

「楽しませてもらいますよ。私の新しい力の実験にちょうどいい。」

 

―――――ウェザー

 

―――――ズ―

 

 井坂は笑いながらド―パントへと変身する。

 

 試合に見せた時と同じ白いド―パントの姿をしている。

 

 だが、何かが違う。

 

 その変身に呼応するようにゴキブリ達も変化する。

 

――――アイスエッジ

 

――――サニーライト

 

――――スコール

 

――――サンダ―ボルト。

 

――――マンティス

 

―――――アント

 

―――――ウルフ

 

 などなど・・ゴキブリが次々とド―パントに変化。

 

 あいつの周りに一度に数十体のド―パントが誕生した

 

「上位メモリを持っている故の特権のようなものだよ。下位メモリの力をお前らに付属してやる。」。

 

 ハルの周りには鋼兄とネロ、サイガと木場がいる。

 

「こっちも多い。だったら手駒をだそうか。ねえ・・・カザリ。」

 

――――しかたないよね。手ごろなヤミ―は仕込めたから。

 

 その言葉と共にミイラのような怪物が招待客である悪魔の方々の中から次々と現れる。

 

「なんだこれは?」

 

「ふふふ・・・ふはははは・・・いいねえ。復活のために君を受け入れた甲斐はあるよ。」

 

 グレムリンの肩の上にライオンの姿をした何かが現れる。

 

「これは・・・グリードか!?」

 

 その名を知っている鋼兄が声を荒げる。

 

「詳しいね。そうだよ。そしてこれはヤミ―。ふふふふ・・・・。」

 

 ミイラのヤミ―は姿を変え、猫系のヤミ―へと姿を変える。

 

 二体の怪物が二人を助けるのを邪魔する。

 

「ふははははは・・・これであいつらの絶望は止められねえ。ふはははははは!!」

 

 2人を助けられない状況にフェニックスはさらに笑いやがる。

 

「これで・・・これで俺はさらに強く・・・うぐぶっ!?」

 

 だが、そんなあいつを俺は蹴り飛ばす。

 

「がっ・・・だっ・・・だからてめえ・・・いちいち嫌なタイミングで。」

 

 ついでに茫然としているライザ―の頭におもいきり拳骨を叩き込んだ。

 

「しっかりしやがれ!!」

 

「がばっ!?いっ・・・いてええ!!なにすんだ!!」

 

 正気に戻ったライザーの襟元を掴み俺は叫ぶ。

 

「こんなところで・・・絶望してんじゃねえええ!!」

 

「ハッ!?」

 

「お前は、俺ともう一度戦うんだろ!!俺に勝ちたいんだろ!?」

 

「オッ・・・お前・・・。」

 

 その言葉にライザ―の目に力が戻ってくる。

 

「だったらここで、さっき見せた根性みせないでどうする!!この程度で絶望しているのなら・・・俺には絶対に勝てねえぞ!!分かっているだろ!!」

 

 こいつにさらに言葉を投げかける。

 

「ぐっ・・・そう・・・だったな。」

 

 ライザ―は叫ぶ。絶望している場合じゃない事を思い出したようだ。

 

「この程度で不抜けていたらこいつには勝てねえ。ここで・・・。」

 

 ライザ―の言葉にも熱が戻る。

 

「ここで立ち止まっている場合じゃねえ・・・。」

 

 心の底から湧き上がる思いを叫んだ。

 

「こんちくしょぉぉぉぉぉぉ!!ここで負けられるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁ!!」

 

 そその叫びと共に背中から飛び出そうとしていたファントムがライザ―の身体の中に吸い込まれるように戻る。

 

「なっ・・・何!?」

 

「はあ・・・はあ・・・ちぃ・・・ちくしょ・・・やったぜ。やってやったぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!はあ・・・はあ・・・。」

 

 絶叫したあと、そのまま倒れ込む。

 

「これでまた・・・お前と戦えるな。」

 

 俺は拳を突き出す。ライザ―は力なくだがその拳をぶつけ俺が上、下とあわせていく。

 

「これでお前共ダチだな。」

 

 あのリーゼント馬鹿のダチの印・・・思わずやっちまったぜ。

 

 其の後、笑顔で親指をあげサムズアップをする。

 

これは冒険好きなあいつの好きな仕草。

 

 傷つき沈んだ俺の心に笑顔をくれたあいつが良くやっていた奴だ。

 

 それに、ライザ―も思わずサムズアップを返す。

 

 よく、がんばったな。

 

 後はあの子か。

 

 

SIDE レイヴェル

 

 私の中の全てが崩れて行くのを感じていた。

 

 兄がいなくなる。

 

 そして・・・私自身もだ。

 

 かつての私は夢があった。

 

 小さな頃に執事達が読んでくれた英雄談。それに胸を躍らせ、それを支える女性になりたいという気持ちを抱いていた。

 

 その夢すらも、色あせ崩れ去っていく。

 

 忘れたはずの夢なのに・・・どうして思い出したんだろう。

 

 もう、すべてがどうでもよくなってくる。

 

 私の中から私でない何かが突き破ろうとする。

 

 その時だった。

 

「こんちくしょぉぉぉぉぉぉぉ!!ここで負けられるかよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 兄が自力で抑え込んだのだ。

 

 兄が・・・助かった。

 

 そして・・・笑っている。

 

「・・・見ただろ。お前の兄は大丈夫だ。」

 

 助けたのは誰なのか・・・言葉にしないでもわかった。

 

「あっ・・・ああ・・・。」

 

 それはあの時のゲームで私を助けてくれた優しいドラゴン。

 

 直情的、性的、自分の欲望に忠実だけど、それでいて熱く、まっすぐで仲間思いなあの人だった。

 

 その人が不敵な笑みでこっちに向けて声をかけてくれる。

 

「お前もできる。一人でがんばれないなら、ライザ―もいるし・・・俺もいる。」

 

「あ・・・ああ・・・。」

 

 その姿に私の中で色あせ・・・崩れたはずの夢が蘇っていく。

 

 情熱が燃え上がる。

 

「だから・・・絶対にあきらめるな!!俺が・・・俺達が付いている!!」

 

 その一つ一つの言葉が私に力を・・・希望をくれる。

 

「ここで死ぬな。レイヴェル・フェニックス!!」

 

 私は・・・私を突き破ぶり出てこようとした何かを・・・。

 

「ああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 その溢れる希望と蘇った情熱のままに抑え込んだ。

 

 そして・・・崩れ去ろうとした私は蘇る。

 

「はあ・・・はあ・・・はあ・・・。」

 

 忘れ去ったはずの小さい頃の夢と共に。

 

 この日私は・・・無意識の内にずっと探していた私の英雄(ヒーロー)を見つけた。

 

 私が支えるべき人を。

 

 

 

 

SIDE イッセ―

 

「うっ・・・嘘だろ・・・あいつまで!?」

 

「はあ・・・はあ・・・はあ・・・・。」

 

 荒い息をしたままレイヴェルは倒れ込む。

 

 心成しか表情が嬉しそうに見えるのは何故だろうか?

 

 一方のフェニックスは思い切りうろたえている。

 

「そっ・・・そんな馬鹿なことがあるか!?二人ともファントムを力づくで抑え込んだだと!?二体ともこの世界の俺だけあって強力なファントムなんだぞ!!この方法なら抗えないはずじゃなかったか!?」

 

 その光景を見たフェニックスは驚きのあまりにうろたえる。

 

 してやったり、絶望から復活すれば乗り越えられると信じた俺の勝ちだ。

 

「ははは・・・まいったね。魔法使いが・・・。」

 

「二人も・・・できちゃった・・・。」

 

 ハルとレイちゃんも驚きのあまりに固まっている。

 

「イッセ―君。君は本当に色々と計り知れない。言葉だけで二人を絶望から救うなんて。」

 

 いや・・・必死なだけだって。

 

 あのままじゃ二人とも死んでいたんだし。

 

「てめえ・・・・余計なことを・・・がばら!?」

 

 俺は怒りに燃えるフェニックスを殴りとばす。

 

「これで遠慮なくお前をぶちのめせるな。」

 

 腰にベルトを出現させる。

 

「いっ・・・イッセ―!?」

 

 部長の声に俺は振り向く。

 

 わかっていますよ。

 

 神殺し――アギトであることを明かすということ。それは神話に対する挑戦になると。

 

 もしかしたら、冥界中の悪魔が敵にまわるかもしれない。

 

 それでも・・・俺は変身する。

 

「部長・・・俺は変身します。他でもない・・・あなたのために。」

 

「えっ?」

 

「俺・・・あの時俺の罪を許してくれた事がすごくうれしかったです。だから俺は・・・あなたのために戦います。」

 

 それは俺のまぎれもない本心。

 

 その決意で変身し、皆に正体がばれるなら・・・むしろ本望!!

 

「見ててください。俺の変身!!」

 

俺は第三の変身をする。

 

「変身!!」

 

 アギトとしての姿に。

 

――――すごい口説き文句だな。リアス殿・・・嬉さのあまりに涙目で口元を覆っているぞ。

 

――――・・・教育の方針の変更、急がないとこれはまずいわ。どんどん罪が増えて行く。このままじゃ数えきれなくなる!!

 

――――俺はすでに数えるのは諦めた。

 

――――ああもう・・・今までモテないのか不思議でしかたなかったけど、それって学校でエロ馬鹿認定されていて女子から見向きもされなかっただけだったのね!!ふたを開けるとここまでのレベルになっていたなんて。我ながら不覚だわ。

 

―――――・・・お前の教育は確かだ。ただ、いささかやり過ぎただけのことさ。もうこいつは正真正銘の女殺しのドラゴンだ。

 

 えっと中でクレアとドライクの嘆きが聞こえてきますけど、俺・・何か悪い事をしたのかな?

 

「おっ・・・お前・・・。アギトだったのか?」

 

 倒れたままのライザ―も驚いているし。まあ・・・仕方ねえか。

 

「わりぃ・・・。本気をだしていなかったわけじゃねえが・・・。」

 

 驚いたライザ―はすぐに落ち着きを取り戻す。

 

「いや・・・別に気にするな。今度戦う時はその力も引き出させてやるだけだ。」

 

 そこまでして俺と戦いたいのか?

 

 一方のフェニックスは舌打ちする。

 

「ちい・・・アギトの力は温存していたということか。仕方ねえ・・・助っ人を呼ぶか。」

 

 その言葉と共に四体の亀型の怪人が現れる。

 

「トータスロードさん達・・・よろしく頼のむぜ。」

 

『御意。』

 

「・・・五対一だと。」

 

 ライザ―がそれを見て悔しそうに唸る。あいつはもう動けない。

 

「こい。相手は俺だろ?」

 

「おっ、お前・・・。」

 

「お前は生き残ることを考えろ。俺なら・・・大丈夫だ。」

 

 かなり不利だけど、やるしかねえ。ここからが本番だぜ。

 

「まだまだ・・・来い、グール共。」

 

 そして百体を軽く超えるグ―ル達が一斉に出現。

 

「おまけをつけてやる。」

 

 そしてフェニックスは腰に付けたベルトにある指輪を当てる。

 

――――アーマードアップ・・・ライオトル―パー!!

 

 そしてグ―ル達の身体を銅の色をした鎧のような物で覆われて行く。

 

 手には銃と短剣を組み合わせたような武器がある。

 

「量産型のギアだ。一つ一つが神器クラスの力があるぜ。そいつを守りながら戦えるかな。」

 

「ぐっ・・・・・・。」

 

 苦しい展開だぜ。一体一体は大したことがないが、それでも無視できないレベルにまで強化されている。

 

 おまけにグ―ル達の動きも雰囲気も変わる。知性は感じられなかったのに、鎧を纏ったとたんにまるで軍隊のように動きが整然とされたものになっている。

 

「前の分も含めて存分にいたぶってやる。覚悟し・・・・・・なっ?」

 

 そこに救援が現れる。

 

 出現したグ―ル達の上に赤い光で出来た三角錐のような物がいくつも現れたのだ。

 

 その数、多分グ―ル達と全く同じ数。

 

「これは・・・クリムソンスマッシュ!?」

 

 そして、それが雨のようにグ―ル達の降り注ぎ、グ―ル達を殲滅させる。

 

 多分一発一発が必殺技クラスの威力がある。それを一斉にはなってくるなんて・・・。

 

「・・・露払いは任せてもらおうか。」

 

 そして、それは俺の隣にいつの間にかいた。

 

 黒と銀の身体に赤い光のラインが走った異形。顔はまるでライトのようになっている。

 

「あっ・・・赤き閃光、555(ファイズ)だと!?オリジナルギアが来るとは・・・。」

 

「お前は・・・・・・。」

 

「味方だ。俺の同志だよ。」

 

 俺の疑問に答えるのはハルであった。

 

「いきなりアクセルを使うなんて赤い閃光に恥じない派手な登場だね。」

 

「・・・ゲームでは暴れなれなかった分のわびだ。俺も加勢させてもらってもいいか?」

 

 ハルの仲間だったのか。ハルの野郎・・・何時の間にこんな奴を伏せていたんだ?

 

「・・・・・・。」

 

 何だろう・・・こいつ。

 

 初めてあったはずなのに・・・。

 

「・・・ああ。頼むぜ。」

 

 初めてって気がしない。俺の中の何かが・・・ざわめく。

 

―――――後であなたに聞きたい事があるわ。ドラグブラッカ―のことで。

 

「・・・!?」

 

 クレアがファイズに話しかけてくる。

 

「・・・出来れば内密に。あとでハルを通して連絡を取る形で。」

 

―――――ええ。頼むわ。

 

「俺達の相手はお前ら二人か?」

 

「いいえ・・・もう一人いるわ。」

 

 そこにもう一人って・・・部長!?

 

 カ―ミラが手に噛みついて・・・って、腰にベルトが出現していますよ!?

 

「変身。」

 

 そして、全身を鎖が包み込み・・・渡が変身するキバと似た姿になった。

 

 これが鋼兄と渡が言っていた紅のキバか。

 

 見るのは初めてだったりする。

 

「・・・噂の滅びのキバか。」

 

 フェニックスは忌々しげに部長を見る。・

 

「あなたばかり格好つけさせるわけにはいかないわ。私もよろしくて?」

 

「あっ・・・ああ。すげえメンツばかりで流石に参っちまうが。あいつの惚れた女もまた普通じゃねえな。」

 

 ファイズもため息をついて何かいっているし。

 

「三人で相手させてもらうわ。」

 

 とにかく頼りになる仲間が二人か・・・悪くねえ。

 

「ちい・・・だったら、こいよ。俺も変身させてもらう。」

 

――――――ドライバーオン!!

 

 そして腰のベルトを起動。本当にハルのベルトとおんなじなんだな・・・。

 

 やかましい。

 

「・・・そこまでハルの奴と同じにしなくてもいいのにな。」

 

 ファイズの言うとおりだぜ。

 

 そして、フェニックスの姿もまた変わる。

 

 朱金の魔法使いに。頭は金色のオパールのようになっている。背中のマントはフェニックスの翼のようになっており、腰のローブはクジャクの尾羽のようである。

 

 手には大剣が握られている。

 

「手駒はまだまだあるんだぜ?」

 

 指輪をベルトに充てるフェニックス。

 

―――コネクト。

 

 魔法陣を横に展開させ、そこから次々とライオトル―パーが出現。

 

「二人ともいくぜ。」

 

「ええ――さあ、滅びの時間よ!!」

 

「いきなりハードだなおい!!」

 

 俺達は三人で戦う事になった。

 

 

side 鋼鬼。

 

 向こうは向こうで派手にやっているな。

 

 拳一発でふとった豚ネコのようなヤミ―を粉々に打ち砕きながら俺は感心したようすでいう。

 

「・・・う・・・嘘でしょ?そのヤミ―・・・打撃を吸収する特性をもっているのに。」

 

「だったら吸収きれない力と技を持って拳をねじ込めばいいだけだ。」

 

 鬼に変身はしているが、その程度の相手だ。

 

「ハルト君・・・とんでもない化け物をつれているね。」

 

「否定はしない。」

 

 ハルよ、せめて化け物の部分を否定してくれ。

 

 それにお前も人の事は言えないぞ?

 

 ハルは別の豹のようなヤミ―に変身した状態でアイアンクロ―をかましている。

 

 必死でもがいているが、全く相手は動けない。

 

「・・・いい加減爆せろ。」

 

 って・・・そのまま頭を握りつぶしやがった。

 

 あの握力だけは俺でも真似できない。変身したら握力は確か百トンは超えていたよな。

 

 まさに必殺。

 

 その光景をソラは唖然とみている。

 

「・・・訂正するよ。君も十分化け物だ。どうやったら握力だけでヤミ―を倒せる?」

 

「ちょっと右腕にタネがある。じっくり調べてみるかい?四人分はあるけど?」

 

 ハルの左腕にタイマーのような物が出現する。なんだあれは?

 

「げっ・・・。」

 

 ソラはそれが何か理解しているようで、慌てて下がる。

 

「えっ・・・遠慮しておくよ。転生して、色々と手ごわくなったね。まだドラゴンスタイルになっていないというのに―――今の君でも戦いたくないよ。」

 

 向うではサイガが鎧を纏った状態で戦っていた。

 

 相手はライオンのようなヤミ―である。

 

 爪で斬りつけようとして、それをかわしつつ逆手に持った剣で斬りつけるサイガ。

 

「そんなもの?」

 

 だが、その背後に別のヤミ―が現れる。

 

 黒い豹のようなヤミ―だ。それが闇を纏いながら無音で接近。

 

 サイガに襲いかかってきたのだ。

 

 黒い闇に包まれ、無数の斬撃音が聞こえる。

 

 そして闇から・・・ボロボロに切り刻まれて吹っ飛ぶ黒豹のヤミ―。

 

「・・・危なかったよ。体が勝手に動かなかったら対応できなかった。」

 

 不意打ち。それも視界を封じられ、音も立てない襲撃にサイガは対応していた。

 

 平然としているのはなぜだろうか?

 

 右手に・・・竜の顔のような紋章が輝く。

 

 ライオンのヤミ―が爪で斬りかかるが、それをけりでふっ飛ばす。

 

「せっかくだ。こっちの秘剣を受けてみるかい?」

 

―――――ギガデイン

 

 剣を掲げると、そこに天から凄まじい雷が落ちてくる。

 

 その剣を持って二体のヤミ―に突進。

 

 途中で逆手に持ち替えつつ・・・剣を振るった。

 

―――――ギガスラッシュ!!

 

 雷の爆発と共にメダルとなって粉々に吹っ飛んで行く二体のヤミ―。

 

「おらおらおらおら!そんなもんかい!!?」

 

 ネロがもう一体・・・虎型のヤミーを投げ飛ばし、そこからレッドクイーンで切り刻む。

 

「そしてこれはおまけだ。」

 

 ネロの手にもう一本の刀・・・次元を切り裂く刀――夜魔刀を出現。

 

 それでさらに切り刻む。

 

――――ショ―ダウン。

 

 そして最後二本で十字に切り、ヤミ―は爆発。

 

 木場も二本の剣で交互にヤミ―を斬りつけて倒した。

 

 あっけなくヤミ―は全滅する。その光景にソラと言うやつは目を丸くする。

 

「・・・・・・まいったね。せっかくのヤミ―をこんなに簡単に倒されるなんて。一応メダルは回収しておくよ。」

 

「よろしく。こっちの力にもなるから。」

 

――――――コレクト。

 

 ソラが腰のベルトに指輪を当てると散らばった大量のセルメダルが集まっていく。

 

 そのメダルをすべてソラが吸収していく。

 

「もともと餌だった。撃破されても得はあるんだよね。」

 

 ソラの肩にいるカザリと言うグリード。

 

「お前は・・・エイジが倒したはずだよな?」

 

「・・・ああ。久しぶりだね。おどろいたよ。ヤミ―を一撃で倒すなんて、あの時よりも強くなったか。」

 

 カザリが笑う。間違いない・・・エイジと共に戦ったグリードの一体。

 

 紫のメダルの力で自我を宿したコアメダルが砕かれ、消滅したはず。

 

「まさかハルの因縁と手を組むか。」

 

「メダルが割れ、自我を保てなくなった所に彼が落ちて来てね。見事にくっついただけだよ。いまは互いに共存共栄している状態さ。彼の欲望も最高でね。セルメダルが定期的に生み出されているから最適だよ。すごく気が合うしさ。」

 

 グリードにファントム。この二つの融合体をみることになるか。

 

「さて・・・メダル一枚。これで面白い手品をみせてあげよう。」

 

 ソラがセルメダル一枚取り出す。

 

――――――コネクト。

 

 そのメダルを緑の魔方陣の中にほうりこむ。

 

―――――サモン。

 

 そして、続いて別の指輪をつかうと、地面の下から怪物が現れたのだ。

 

「・・・なっ・・・。」

 

それはカザリが生み出すネコ科のヤミ―にしては大きい。

 

 いや・・・大きすぎた。

 

 何しろ体高だけでも軽く見て、三十メートルはある。

 

 出現だけで式場の一部が崩落、戦いの舞台が式場の外に変わったくらいだ。

 

「・・・あっ・・・・・・あれ?」

 

「・・・・・・はい?」

 

 それは超巨大な紅の獅子であった。

 

「そっ・・・想像をはるかに超える奴がでてきたね。いきなり成体なのもそうだけど。」

 

「でかすぎる。なんなのこいつ・・・。」

 

 そして、驚いているのはソラもカザリも同じだった。

 

 目を丸くして、召喚したヤミ―を見ている。

 

「おい・・・誰にセルメダルを入れた。」

 

 俺は最悪の事態を覚悟していた。あいつはあの魔法で誰かにセルメダルを入れたのは間違いない。

 

 問題はそれが誰かということだ。

 

「いやね・・・カザリが素晴らしい欲望を持った奴がいるからって、ほらあの現赤龍帝でアギトの彼。」

 

 そして、それは無情にも現実になってしまった。

 

「コネクトの魔法陣越しにメダルを放り込んで、出来たヤミ―を瞬時にこっちに召喚してみたけど・・・なに・・・これ・・・。」

 

 イッセ―に入れたというのか・・・。

 

「お前・・・。」

*

 よりによって・・・イッセ―なのか?

 

「お前なんてことをしてくれたんたあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 俺は頭を抱えて絶叫する。

 

 最悪だ。最悪すぎる。

 

「おっ・・・おい鋼兄。どうした?」

 

 俺の動揺にただならぬ物を感じたのだろう。皆がかけよってくる。

 

「ヤミ―はな。簡単にいえばセルメダルを放り込まれた人間の欲望を元に生まれる怪物だ。」

 

 そして、欲望を満たすために動く。そして、セルメダルをためるのだ。

 

「こっちもエイジから聞いた事があるよ。グリードとヤミ―との戦闘経験もあるし、彼と一緒に戦ったことがある。」

 

 渡。お前もエイジの知り合いだったのか。

 

 後でじっくりと話を聞きたいところだが。

 

「欲望が大きいと強さが増す傾向がある。そしてあれはイッセ―から生まれた。」

 

「・・・・あのでかさはつまりイッセ―君の欲望の途方もないでかさを現していると?」

 

 木場・・・察しがいいな。

 

 怪獣並のでかさか。あいつの業はすごい。

 

「・・・・・・まずい。欲望がでかすぎて制御ができない。なんなの、このヤミ―!!」

 

 ソラも制御しようとはしていたのだろうが・・・無理だろうな。

 

 あいつの欲望は俺達だって制御できねえ。

 

「信じられない。僕たちが制御できないほどの欲望をもっているなんて。セルメダルに変換したらどれだけの量になるの?一体どんな欲望を・・・。」

 

「おっぱい・・・・。」

 

 超巨大ライオンヤミ―は叫ぶ。

 

『へっ?』

 

「おっぱいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

 

 己の中の欲望を冥界中に轟かせんと。

 

 その轟きを聞いたイッセ―は驚きのあまりに目を丸くしていやがるし。

 

『・・・・・・。』

 

 あまりにも予想通り過ぎて悲しくなる。

 

「もしかして、これ全て煩悩だというのかい?・・・・・・冗談でしょ?」

 

「あっ、呆れて・・・何もいえない。何時から人間はここまで業が深くなったの!?」

 

 ソラとカザリの2人が信じられないって顔しているし。

 

 あと、頼むからイッセ―と俺達を一緒にするな。

 

「このアホみたいな大きさはイッセ―の中の煩悩をそのまま具現化したというわけかい。」

 

 ネロがひきつった笑いを見せる。ああ・・・その通りだろう。

 

「イッセ―君・・・一体どれだけ助平なの。」

 

 渡。全くその通りだ。

 

「あいつの煩悩は本当に恐ろしい。良い意味でも悪い意味でも可能性の塊なのが実証されたよ。」

 

「シャレになっていないって・・・もう面倒な。」

 

 ハルの関心をよそに、サイガはうんざりしている様子。

 

「・・・みんな覚悟はいいか?これは・・・強敵だ。」

 

 俺はアームド・クサナギを出現させる。

 

「はあ・・・ソラ、イッセ―には手を出さないほうがいい。これは忠告だ。こっちだって何が飛び出すのか分からないから。」

 

「・・・・・・そうだね。」

 

「欲望の怪物である僕達が制御できないほどだからね。メダルは少なくとも万単位、馬鹿みたいにがっぽり稼げそうだけど、リスクがでかすぎる。」

 

 まったくあいつらイッセ―の欲望・・・いや煩悩を解放させやがって!!

 

「おっぱいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

 冥界のど真ん中で煩悩を叫ぶライオンのヤミ―。

 

「きゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 その叫びと共に逃げようとした女性の服が・・・はじけ・・・。

 

 あれ?視界がまっくらになったぞ。

 

「鋼鬼さん。見ない方が良い。」

 

「この手の大型の敵には鋼兄さんが重要な戦力。鼻血出して倒れられたら困る。」

 

「・・・・・・すまないな。」

 

 木場と渡の気遣いだろう。2人が瞬時に目をふさいでくれたのだ。

 

「状況だけおしえてくれ。」

 

「あのヤミ―の咆哮はそのまま洋服破壊(ドレスブレイク)の効果がある。女子達が裸になって悲鳴を上げて逃げて行った。そにあのヤミ―は満足している。」

 

「・・・泣けるで。」

 

 親が親だけにさすがだ。ああ・・・涙がでてきた。

 

「女子の裸を見て、メダルがすごい勢いで貯まっている!?通常のヤミ―とは比べ物にならない破格の効率だ。」

 

「・・・・・・考えようによっては本当にお買い得なヤミ―の親なのかもね。欲望をかなえるためのハードルも低いし。制御方法さえ確立すれば・・・。」

 

 だからお前ら、もうイッセ―をヤミ―の親にしないでくれ!!

 

 こいつ一体で冥界中を大パニックに陥れかねないスペックを持っているぞ!!

 

 さっきのでさらに一回り巨大化しやがったし。

 

「はあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 ネロがキルスに変身。

 

「来い・・・轟竜!!」

 

 サイガも鎧の馬のような物を召喚。

 

「これ終わったらイッセ―君を殴ろう。僕はそう決めたよ。」

 

『まったくだ!!』

 

 木場の言葉に皆は同意する。あいつの煩悩ごと殴りとばしたい。

 

「俺は悪くねえええええええええぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 向うでイッセ―の悲鳴が聞こえるが、もう決定事項だ。あとで覚悟しておけ。

 

 俺達は今からイッセ―の煩悩の化身―――超巨大おっぱいライオンとの死闘を始める。

 

 我ながらすごく嫌なネーミングだと思うが。

 

 

 

 side 朱乃

 

「・・・・・・・・・。」

 

 みんなイッセ―君のヤミ―の出現に脱力しているわ。

 

 あそこまで溜まっていたなんてすごい子。

 

「ふははははは・・・その欲望、すばらしい!!」

 

 井坂と言う男は逆に称賛すらしているわ。

 

「これだけ巨大な欲望と言う名のエネルギーがあるか。これは手ごわい訳だよ。」

 

 欲望。あれだけの巨大なエネルギ―を持っているのだから確かに手ごわいかも。

 

 井坂と言う男も手ごわいという意味では同じだった。

 

「やりますね。」

 

 グレイフィア様が私達の目の前で井坂に攻撃を仕掛けようとしても全く手を出せないほどだ。

 

 近づこうとすると雷や嵐が阻み、蜃気楼などで幻惑してくる。

 

 それに彼が生み出すゴキブリが変化したド―パント達が邪魔をする。

 

 一体一体が最低でも上級悪魔クラスの力を持つ。その相手に私達は苦戦を強いられている。

 

「・・・・仕方ありませんね。アルファ。」

 

「出し惜しみは無しね。確かにこの男は危険だわ。」

 

 グレイフィア様の手にデッキが現れる。

 

 腰にもベルトが出現していた。

 

「・・・・・・ほう。禁手化か。いいだろう。」

 

「それにようやく専門家が現れましたしね。」

 

―――――サイクロン!!

 

―――――ジョーカー!!

 

「んん?」

 

 二つのガイアメモリの音声、そして巻き起こる突風共にそれは現れる。

 

 右半身が緑、左半身が黒の男。

 

「来たか・・・W(ダブル)。」

 

 それは魔王・・・アシュカ・ベルゼブブ様の眷族。兵士の駒の変異を二つ使った異形の戦士。

 

 戦車や僧侶を超える六つという価値だが、実際の戦闘力はそれすらはるかに上回る。

 

 ガイアメモリと呼ばれる物を使うのだ。上に彼もまた契約者。

 

 それも異世界から来た全知の龍神を相棒としているのだ。

 

 その龍神と合わせて変身した姿があのW(ダブル)。

 

 二人で一人の仮面ライダ―だ。

 

「・・・お前は変わったな。」

 

―――――その身体、人間どころか、悪魔でもない。一体どんな存在になった?

 

 そしてWから聞こえるもう一人の声がその契約した龍神なのだ。

 

「それは戦ってみればわかることじゃないのかな?」

 

 井坂は雷をWに向かって落とすが・・・それを軽々かわしながら飛び蹴りを喰らわせる。

 

「だったらそうさせてもらうぜ!!」

 

「むっうぅ?!」

 

 それは風のように軽やかで、それでいて鋭い一撃。其れを受けて後ろに下がる井坂。

 

「そうですか。あなた方も数々の戦いを潜り抜けてきた。その証拠に今の一撃、鋭くそして重くなった。ガイアメモリとの適合率も上がっている。その上悪魔となった特典で身体能力も上がったと来たものだ。」

 

「へえ・・・受けただけでわかるのかい。」

 

―――――気をつけたまえ。井坂はもう一つのメモリも使っている。動物園の記憶のね。

 

「・・・おい。まじか?」

 

 動物園の記憶?それってそんなに厄介なものかしら?

 

「動植物なら何でもありの上位メモリじゃねえか。」

 

 それは厄介。だから動物園なのね。

 

――――もう一つの力も検索したけど・・・なるほど、厄介すぎる。どうやったら異界のアンデット、ジョーカーの力を得ることができるんだい?

 

「ふははははははははははは!!」

 

 井坂の姿がド―パントのそれからさらに変わる。

 

 白の身体に胸と頭の部分が金色になったカミキリムシや昆虫の化け物のような姿。

 

「三人目が人間からアンデットの融合でジョーカーになったという経緯がある。同じようなことができるのかやってみたらこの通りだよ。」

 

―――――四人目のジョーカーか。それだけで君たちの背後に統制者がいるのは容易に想像できるよ。

 

「アンデットってなんだ?」

 

――――――端的にいえば不死身の怪物。ある方法でしか、封印できない厄介な存在だよ。

 

 ただでさえ厄介なのに、その上不死身になった男。

 

「どうします?エクストリームになりますか?」

 

 井坂の言葉にWは軽く肩をすくめて見せる。

 

「あれは切り札だ。まだ必要はねえ。まあ・・・グレイフィアの姉さんというとっても心強い味方もいるし今回は二人で・・・。」

 

「いや・・・私達もいるにゃ。」

 

 黒歌が笛を吹きながら隣に並ぶ。

 

「そういうこと。」

 

 レイちゃんも腰にベルトを出現させて並ぶ。

 

「私達も・・・・。」

 

「忘れないでほしい。」

 

 そこに私と小猫ちゃんも続く。

 

――――豪華だね。鬼と魔法使いまで戦ってくれるよ。

 

「ふはははは・・・いいでしょう。ここからが本番ということで。」

 

 井坂の姿が白いド―パントのそれに戻る。

 

「いくにゃ・・・。」

 

 拭いた笛の響きを額に当てる黒歌。

 

「変身。」

 

 レイちゃんはベルトに黒真珠の変身用の指輪を当てる。

 

 そして二人は変わる。

 

 黒歌さんが氷と風を切り裂き、奏鬼に。

 

 レイちゃんは仮面ライダーウィッチに。

 

 そして、グレイフィア様も腰のベルトにデッキを装填する。

 

「変身。」

 

 その姿は黒のインナーに銀色の毛皮に似たアーマーと同じ色のローブを腰を纏った姿に変わる。

 

 頭には鹿の角のような物がついている。

 

 そして左胸に黄金の召喚機がついている。

 

 その名は・・・・インぺラ―。

 

 前の大戦で双銀の女王として敵味方共に畏怖されたグレイフィア様の本気の姿。

 

「サバイブは使わないでおきます。」

 

 いえ、正確にはまだ一つ上の姿がある。

 

 それでも素が強すぎるこの方が変身するのはそれだけで反則である。

 

「この六人・・・いや、八人でやらせてもらうぜ。」

 

 Wの彼は皆と戦う事を宣言して見せる。

 

――――僕とアルファを入れる当たり、律義だね。

 

―――――気を使ってくれてありがとう。

 

「どの程度の力かみせてもらおう・・・いぃ!?」

 

 井坂が攻撃する前にグレイフィア様は動いていた。

 

 床を蹴り砕くほどの脚力を持って、井坂を蹴り飛ばしたのだ。

 

 あの姿は特に脚力、それも異様なまでに強化される。

 

 蹴り一発一発が必殺技と言えるくらい。

 

 現に蹴り一発で他のド―パントは爆発して消滅していますし。

 

「反応が甘いです。」

 

「ぐっ・・ふふふ・・・ふはははは・・・・いいねえ。それでこそだ。」

 

 そこにさらにWが追い打ちで蹴りを入れてふっ飛ばす。

 

 それを受けてなお・・・井坂は笑って立ち上がる。

 

 本当に手ごわい。

 

「それくらいでないと・・・この身体になった甲斐がありませんよ。」

 

「っつたく、とうとう人間すらやめちまいやがって。」

 

―――――――この世界でも君は相当なことをしでかしているようだね。

 

 そんな井坂に向かってWは告げる。

 

『さあ・・・お前の罪を数えろ。』

 

 何故か隣でグレイフィア様も一緒に井坂に指差して言っていますし。

 

「・・・・・・グレイフィアの姉さん。頼むから人の決め台詞を取らないでくれ。」

 

「たまにはいいじゃないですか。それに・・・器物破損、傷害など色々と頭の中であの人の罪がどれだけあるのか考えてしまい、あと始末がもう・・・憂鬱で。」

 

―――具体的に数えるとどれくらいになるか・・・。金額でも示してもいいかも。

 

「でも器物破損ならイッセ―もやらかしているぞ。まあ・・・あのヤミ―のせいで分かんなくなったが・・・。」

 

 巨大なライオンヤミ―のおかげで式場は半壊状態。

 

 それに開き直ったのかグレイフィア様は少し笑う。

 

「なら好都合。このまますべての罪をあなた達になすりつけてくれる。」

 

『おい!!』

 

 グレイフィア様。それはさすがに・・・。

 

――――さすがにあの破壊に自分も加担しているなんて分かったら後が面倒なのは目に見えている。合理的な判断だよ。あいつらが破壊の上から破壊してくれたからばれる事もない。

 

「あの・・・・逆にあなた達の罪を数えたくなってくるのですが。」

 

 井坂も結構いい性格をした最強の女王様に呆れている始末。

 

――――これくらいじゃないとルシファー眷族はやっていけないわよ。

 

 アルファさん・・・あなた達苦労していますね。

 

「まあ・・・いいでしょう。その程度の罪など痛くもかゆくもないですし。」

 

 あの人も自分の興味のない音はとことん無頓着なのね。

 

 そんなグダグダな感じで私達は不死身の怪物と戦う事になった。

 

 

 




 今回の更新はここまでです。


 また活動報告でアイディア募集をしたいと思います。

 よろしくおねがいします。

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