何気にとんでもない新キャラ登場です。
SIDE 黒歌
「ななななな何・・・・あっ・・・あなたがそんなとんでもないお方だったなんて!!」
鼻血を出して気絶中の鋼ちんを介抱しながら私は鋼ちんの母親と話しこんでいた。
そして・・・あまりにも仰天すぎる正体に唖然としていた。
私達のような日本の妖怪にとってはあまりにも恐れ多い方にゃ!!
「久しぶりの親子の団欒ですから。この歳で鋼も鬼として修業を終え独り立ちしようとしています。そこにあなたが・・・。」
「そっ・・そうだったのですか。あまり長居しても・・・。」
「それに関しては気にしないでください、でももし済まないと思ったら話してくれないかしら?・・・あなたから感じられる悪魔の気配に関して。」
「・・・流石にごまかせませんか。わかりました。助けてもらったお礼になるかわからなにゃいけど・・。」
「是非・・・聞かせて欲しい。」
そのタイミングで目覚める鋼ちん。ある意味反則。
私は事情を話したにゃ。
悪魔に転生できる駒。一つくすねた物を見せ、私はそれで悪魔になった事をいった。
その悪魔から逃げてきた事、追手を振り切りボロボロの状態でここにきた事もだ。
「・・・一度抗議してもいいかも。」
「いや母上。それでは外交問題になる。個人的に俺が殴りに行く。」
「どうやって冥界にいくの?」
「そういえばそうだったな。」
えっと・・・二人とも怒っていますね。それも私じゃなくてその悪魔に対して。
「グレモリ―家は情に深い一族。あの家の出身の魔王とは個人的に交渉関係がありまして、よく知っています。そこに妹さんを逃がしたのは良い判断です。」
「あとは・・・追手か。」
「えっと・・その・・二人とも?」
「とにかく猛士の方からは私が話を通しておきます。うまくかくまってやりなさい。」
「へっ?あっ・・・その・・・いいのかにゃ?」
「いいも何もあなたの言った事は真実です。私の力の一つを忘れましたか?」
「鏡の力でしたね。でも・・・私は厄介ものじゃ。」
「・・・普通なら追いだすべきです。でも、私も鋼を息子として育てて・・・考えが変わったようです。貴方の家族に対する深い思いやり・・・胸を打たれました。だからこそ、私達はあなたの後ろ盾になりましょう。」
「えっと・・・その・・・。」
捨てる神がいれば拾う神ありとはよくいうにゃ。
でも・・・拾う神がすごすぎたにゃ。
「おじさん達もそういうだろうな。」
「当たり前だろうが!!そうだろうが姉上!!」
もう一人乱入。髭だけでなく、全身の毛が濃い目の中年の男。なんかすごく豪快な人にゃ・・・まっ、まさかあの人って。
「・・・あなたのその性格・・・確実に鋼に移っていることを忘れないでください。」
「ははははいいではないか。それくらいのが人生は楽しい!!」
「おじさんの言うとおりだ!」
なるほど、この豪快さはこのおじさんから受け継いだか。
「あとは女の裸に免疫が出来れば完璧なのだがな。嫁ができた時どうする?」
「初恋もまだ故になんともいえん!!こっ・・・克服したいと思っているが。」
鋼ちんの弱点はこの歳で酷い物であった。
母とも一緒に風呂に入れぬほど。一種の呪いのように思えるくらいだ。
おじさん・・・はあ。この子すごい家族の中で生きているんだね。
「むむむ・・・そうだ。お前・・・こいつの嫁にならんか?」
いきなり嫁って困るにゃ。
私も年頃を迎えていたから考えてもいいのだけど・・・。
「いきなり言ったらかわいそうです。全く・・・速く孫の顔を見たいという気持ちは分かりますが、少し抑えなさい!!」
ははは・・・このおじさんも姉には頭があがらないみたいにゃ。
神話の話が本当ならこのおじさん・・・色々とやらかしているはずだし。
「うう・・・私・・・影が薄い。」
「おっ・・おばさんまで・・。」
あれ?陰でもう一人いる。ああ・・・あの方まで。
ははは・・・すごい子。
こうして私は鋼ちんが猛に戻るのに一緒についていくこととなり、そこでかくまってもらう事になった。
あの方から勾玉と小さな鏡のような物をもらったにゃ。お守りといってくれたけど?
事情を色々と話、私はすぐにみんなと仲良くなったにゃ。
鋼ちんの師匠である響鬼さんを初め、先輩の鬼達とその関係者達。
その拠点である甘処たちばなで働きながら、私は鋼ちんと一緒に過ごす。
その中で私も鬼の修行を始めていた。
「どうして鬼の修行を?」
学校には一緒に通っている。でも・・・私はみんなの働きをみて一緒に戦いたいと思うようになっていたのだ。
妖怪でそれでいて悪魔の私が鬼になろうというのは前代未聞。
でも・・・挑戦してみる価値はあるとい言ってくれ威吹鬼さんが師匠となってくれた。
鋼ちんは響鬼さんと轟鬼さんの二人。
本当に鬼の修行は・・・辛い。何度もめげそういなった。それを支えてくれたのは・・・鋼ちんだった。
「本当に黒歌ちゃんって・・・鋼君と仲がいいよね?」
「そっ・・そうかにゃ?」
「二人でセットか。良い組み合わせになるかもしれないね。うん・・・そうだね、」
多分・・・威吹鬼師匠はこの時点で私が鋼ちんに惹かれている事を察していたんだと思う。
仙術の強化は鬼になっても有効で、治癒も含め鬼達の大きな助けになっていた。
私は恩をかえすために皆に仙術も積極的に教えた。もちろん鋼ちんにも。
その・・・手とり足とり。
それを見てみんなの視線が生温かかったのは仕方にゃいことだったとおもう。
教えている時、顔がにやけてしまうのはどうも・・・止められない。
そんな穏やかな日々が三年つづき、これからも続くのだと思っていた。
私が鬼の力を手に入れ、鋼ちんも十六歳となり、コンビで魔化魍討伐に繰り出す事が多かった。
みんなからも名コンビと呼ばれるほどの活躍ができるようになり、普通になっていたある日・・・事件は突然起こる。
追手が私達の住んでいる店に襲撃をしかけてきたのだ。
しかも・・・私を誘い出すために人質を確保して。
私は自分をせめたにゃ・・・。重傷を負った仲間もいたんだ。
皆・・・私のせいだと分かっていてもだれも責めなかった。
それだけも十分だった。
「ごめんね・・・いままで・・・ありがとう。」
お世話になった皆に黙ってでて行こうとした。
でも・・・その先では。
「遅かったな。」
鋼ちんが待っていたのだ。
「不思議そうな顔をしているな。いい加減お前との付き合いは長くなるんだ。それくらい分かる。」
「・・・どいてにゃ。」
「駄目だな。」
「お願いだからどいてにゃ!!私のせいで・・・私のせいでみんな怪我しちゃった。あの子がさらわれてしまったのも・・・。私が・・私がいなかったらこんなことには。私・・あの時助からなかったらよかった・・。」
鋼ちんはそんな私の頬をはたく。
そして・・その後抱きしめた。
「そんな事・・・言わないでくれ!!」
鋼ちんも泣いていたんだ。滅多なことで泣かない鋼ちんが泣いている。それだけでも私は驚いたにゃ。
「俺はお前を助けて良かったと思っている。それは今でも・・・そしてこれからも変わらない。いや・・・俺が命を賭けて良かったと思えるようにしてやる!!」
それは鋼ちんの言葉。
「俺にとってお前はもう相方なんだよ。無くてはならない大切な人なんだ!!」
大切な・・・人?
「こんな時に言うのは可笑しいと思っている。だが・・・言わせてくれ。俺はお前に惚れている。ずっと・・・ずっと好きだった。そんな人がいなくなるなんて俺には耐えれない!!」
「・・・鋼ちん・・・。」
はっきり言って・・・反則。
こんな嬉しい言葉で私を止めてくるなんて。
それを振り切れるほど私は強くないにゃ・・・。
「返事はあとで良い。一緒に助けにいくぞ。」
ああ・・・もう。本当に卑怯にゃ。
涙も止まらないし。
「ほう・・・見せつけてくれるねえ。少年。」
「はははは・・・やっぱり二人はベストな組み合わせだったよ。」
「幸せゲットしたな・・・俺感激!」
まっ・・まさかその光景を師匠達にみられていた事には思いもしなかったにゃ。
はっ・・・恥ずかしすぎる。
「さて・・・いきますか。」
師匠達までいくのですか?あれ?他の鬼のみんなまで。
「俺達の仲間に手を出した事を後悔させてやるぞ。」
「応!!」
その地域にいる鬼達全員大集合。皆・・・やる気満々でした。
結果だけ言うと・・・。
相手が可哀そうだったにゃ。
鬼というのは悪魔にとっても人外と言えるほどのすごいパワーをもっている。
それを私の仙術や気で強化した結果・・・蹂躙になった。
百人の悪魔が一分で全滅って・・・どんだけなのよ。
相手は誰も殺していないが・・・精神的にはもう死んでいたにゃ。
「こっ・・これが日本の悪魔・・・鬼の力だというのか!?」
とんでもないくらいの恐怖だったはず。
人質も助け、万事解決かと思った。
でも・・・その時とんでもない事が起きた。
そこはある邪竜が倒された土地。
それは日本神話でも凄まじい知名度を誇るこの国最大にして最悪の邪竜。
彼らは人質を生贄にして禁断の術・・・反魂の術を使って蘇らせようとしていたのにゃ。
禁術は刺客の一人を生贄にして発動。
そして、復活してしまったのにゃ。
日本神話にでてくる災厄の化身・・・八又ノ大蛇を。
それは私達鬼にとっても最悪の相手。魔化魍の異常発生を伴うオロチとはまた別次元の災厄にゃ。
そいつの周りでは無数の魔化魍達も現れる始末。
私達は必死で戦った。
でも・・・それはあまりにも強く、また一人・・また一人倒れて行った。
切り札として用意された鋼ちんの二本目のアームドセイバーも折れた。
ヤマタノオロチは全くの無傷。
立っているのは私と鋼ちんを含むごく少数。
「鋼ちん!!しっかりしてにゃ!!」
そして鋼ちんもまた・・・重傷を負っていた。私を庇ったばかりに。
「何の・・・鍛えているからこれくらい・・・。」
それなのに鋼ちんは立ち上がる。
「もういいにゃ。お願いだからもう・・・。」
「退けねえよ。退いたらこいつは街に向かう。鬼として・・・見過ごせねえ。」
「でも・・・。」
鋼ちんの言うとおりあいつは・・・街に向かおうとしている。
こいつが街に向かったらどれだけの被害になるのか想像もできない。
「俺はそのために鬼になった。心もそのためにある。今・・その力を出さないで何のための強さだ!!」
鋼ちんは立ち上がる。
そんな鋼ちんに・・・無情にもヤマタノオロチは襲いかかってくる。
その一撃に鋼ちんが跳ね飛ばされ・・・そのまま動かなくなる。
「はっ・・・がね・・ちん?」
私は彼を必死で揺する。でも・・・彼は全く動かない。
「おきてにゃ・・・お願いだから起きて・・。」
どれだけ揺すっても全然起きない。ピクリとも・・・反応しない。
「ねえ・・・わたしからの返事・・・まだなんだよ?それをあんたはまだ聞いていないよ?」
認めたくない。
でも・・・現実はあまりにも非情で・・・。
「いやにゃ・・・。鋼ちん・・・いやにゃ・・・・。」
それが涙として溢れだすとともにヤマタノオロチの巨大な口が私と鋼ちんを飲み込もうとする。
「黒歌ちゃん!!」
「鋼ちん・・・目をさましてよおおぉぉぉぉぉぉぉ!!」
いやにゃ・・・。
鋼ちんが死ぬなんて・・・絶対に。
―――――導くが我の役目。
だが、そのオロチの牙を巨大な鏡の様な物が阻んだ。
「あのお方の命におり、あなた達を守護します。」
私の前には小さな鴉がいた。しかし・・・ただの鴉じゃない。
足が三本ある。
「そして・・・うけとりなさい。あなたの先祖たちが作った鬼武者達の秘宝を。」
鴉の身体から光が発せられ、オロチが封印された祠の傍にあった社にあたる。
そこから出てきたのは・・・蒼い篭手であった。
それが鋼ちんの左腕に装着される。
「これは鬼の篭手。遠い昔異界・・・幻界からの侵略者と戦ったあなた達とは違う鬼の一族が使っていた物。」
聞いた事があるにゃ。
幻界からの侵略者と戦う鬼と呼ばれし一族。その切り札である鬼の篭手。
それは倒した物の魂を吸い取り、糧とする篭手。そしてそれをつけた人間は人外の鬼武者となる。
あれ?私がくすねていた悪魔の駒が・・。
「この方はその鬼武者達の直系の末裔。由緒正しき鬼の篭手の後継者です。」
悪魔の駒が篭手に吸収された?それと共に鋼ちんの身体から鼓動が蘇る。
「新しい日本神話の始まりです。我が契約者・・・黒歌様。」
えっと・・・あたしいつの間にかこんなすごい神鳥と契約したのかにゃ?
それよりも篭手が付いた鋼ちんが・・・起きあがった。
「・・・・鋼ちん?」
彼は無言で折れたアームドセイバーを手にする。
それを手にした瞬間・・・周囲から無数のディスクアニマル達が集まっていく。
それが鎧となりつぎつぎと鋼ちんの身体を覆っていく。
これは装甲化?いや・・・違う。
原理は似ているけど、そんなレベルじゃない。
鬼に変身しながら鋼ちんは新しい姿になる。
全身から蒼いオーラを噴き出す鬼の姿へと。
「これが・・・現代の鬼武者なのですね。」
鋼ちんは伝説の鬼武者となった。
そこからはもう・・・圧倒的だった。
素手で襲いかかってきたヤマタノオロチを殴りとばしたのが始まりだった。山脈のように厖大な巨体を誇るヤマタノオロチの巨体が浮き、ふっ飛ばされ、そのまま倒れる光景は中々見られる物じゃない。
反撃も受け止め、逆にその身体を掴み投げ飛ばす。
途方もない巨体を誇るヤマタノオロチを軽々と投げ飛ばす光景もまた・・・現実とは思えないすごさにゃ。
ヤマタノオロチも初めて恐れを見せた。とるに足らないほどの小さいはずなのにあまりに異質で強大な力を持つ怪物に。
だが・・・逃げる選択肢はもうあいつにはのこされていなったにゃ。
逃がすつもりなど、鋼ちんにはまったくなかったし。
小さな鬼神と強大な邪竜。つぎつぎと攻撃をしかけても鋼ちんは真正面から受け止め、そして拳で殴り返した。
どんな攻撃も通じない。圧倒したすべてが通じない悪夢をあの邪竜は味わっていたのだ。
もちろん私を初めとする師匠達一同は固まっていた。
目の前の光景を現実と受け止めていいのか測りかねているのだ。
それこそ・・・神話で聞くような現実離れした光景だった。
止めの一撃が放たれ、それを受けたヤマタノオロチはぐったりとその山の様な巨体を横たえる。
そして、そいつに向けて折れたアームドセイバーを突き立てる。
それと共にあの巨体が消滅。鬼の篭手に吸収されていく。
「・・・力を吸収したというのか?それにあの剣は・・・・。」
折れたアームドセイバーも元に・・いや、其違う剣へと変わっていた。
刀身が前の二倍近くになり、そして赤から緑へと変わっていたのだ。
「荒ぶる・・・神。」
誰かがその名を言う。それは・・・かつてヤマタノオロチを倒した神の事だ。
今起こっているのはその再現だった。
それを見届けた後・・・変身を解いた鋼ちんは気絶。
そのまま一週間も眠り続けたにゃ・・・。
「んん・・・ああ・・・あれ?」
そして、一週間後。何事もなく彼は目をさましたにゃ。
「よく寝たぜ。うん・・・・爽やかな朝だ。今日も生きている!」
「今日も生きているじゃにゃい!!」
本当に呑気なことを言ったので私は思いっきりその頭に拳骨を喰らわせた。
「おお・・・・おはよう。って・・・どうした?オロチを倒してその後気を失ったのは分かるが・・・。」
「・・・その前に何があったかよくおもいだしなさいにゃ・・・もう。」
本当にいつも通りで泣けてくる。
「一度死んだんだよ。あんた・・・・・・。」
どれだけ深い絶望を味わったというのか少しは察してほしい。
私は鋼ちんに抱きついて・・・その胸をポカポカと叩く。
「その・・・すまない。」
そんな態度に逆に腹がたって・・・やらかしてしまった。
「すまないじゃない!責任とって!」
「責任?」
「こんだけあたしを虜にした責任にゃ!!一生をかけて償え!!」
「とっ・・虜?えっと・・・償うっておまえ何を言って・・・。」
「鈍感!!」
私はそのまま口づけをかわす。
「はっ・・・はい!?」
「これでいいかにゃ?私の気持ち・・・伝わった?」
「あっ・・・ああ・・・その・・・。」
顔を真っ赤にさせて混乱の極みにいる鋼ちん。
「あたしは鋼ちんの事が好き。いや・・・愛しているにゃ!!だから・・・あたしを嫁にしなさい!!あんたが無茶しないようにあたしが一緒に入れるように!!」
「・・・・・・・・・・・・。」
さらに固まった様子。
今気付いたけど・・・鋼ちんの告白の返事が逆プロポーズって私もすごいことをしたような・・・。
「わっ・・・わかった・・・。むしろ光栄だ。段階とかいろいろとすっぽかしていると思うけどすごくうれしい。遠慮なく嫁にもらおう。」
「約束にゃ。大好き。」
そうやって再び口づけ。
『・・・・・・・・・・・・。』
そしてそんな夫婦漫才を。
騒ぎを聞いてかけつけだのだろう。師匠達を初めとする猛一同と・・。
「孫・・・たのしみにしていますね。」
「あっぱれだ。わしの二代目の誕生とだけじゃく、嫁ができるとは。いや・・・今日は酒がうまそうだ!!」
「今年は豊作になりそうですね。」
鋼ちんのお義母さまとおじさま、おばさまがしっかりとみとどけていたにゃ・・。
おかげで家族一同へのあいさつの手間が省けたのは唯一の救いだった。
SIDE イッセ―
色々な意味で想像の遥か斜め上を行く経緯に俺達は唖然としたぜ。
「あっ・・・あなた達の背後にあの方たちまでいるというの!?」
部長はある事に気付いた様子で。
「義理の親子関係にゃ。血のつながりはないけど育ての親にゃ。」
「・・・さらに無茶苦茶よ。」
しかし・・・単独で邪竜を倒した?
「一体どんな力を発揮しているというのだ?歴戦の勇者や戦神でもできるのか分からないレベルだぞ。生前の私と互角の力はあるということか?」
ドライクも驚いているから、よっぽどなんだろうな。
「日本神話を塗り替えたとみんな驚いていたにゃ。これは極秘事項だからみんな知らないけど知ったら・・・本当の意味で力を解放したら魔王級何処じゃないのがばれちゃうし。まだ本人はその力を制御するための修行を続けているから完全じゃないと思うけど。」
極秘の事を簡単に言わないでくださいよ。でも・・・それが本当なら。
「それはそうよ!!それこそ・・・。」
部長が何を言いたいのかわかる。
話が本当なら多分・・・鋼兄は神の領域へと足を踏み入れている。
己が目標としていた領域。
それも戦神や鬼神と言われるカテゴリーにだ。
まさに荒ぶる神の二代目か・・・何時の間にそんな怪物になったんだよ。
全く・・・俺たちより先の領域にいてくれるなんて。
目標になってくれるなんて嬉しすぎるぜ。
「それはそうとして・・・逆プロポーズねえ。」
「姉様・・・すごい積極的です。これが肉食・・・。」
「いっ・・・いやね。勢いは。」
それで告白は鋼兄からはわかったけど、返事が逆プロポーズって・・・爆発しちまえ!!
どんだけなんだ。どんだけ好きあっているんだあんたら!?
「姉様は今・・・幸せですか?」
そんな黒歌に小猫ちゃんは聞く。
「うん・・・とっても幸せにゃ。まだまだ色々と事件も多いし、大変だけど・・・なんでもどんと来いといえるくらいにすっごくしあわせにゃ!!」
それは心からの言葉なんだと思う。
アーシアもおそらく彼女の喜びの波動を感じているみたいだし。
「今ならはっきりと思える。あの時助けてもらって良かったって。必死であがいてきて良かったって。だからこれからもがんばるにゃ。私もあの領域にたどりつかないといけないし。」
黒歌までそこを目指しているの?
「嫁としては当然。足を引っ張るつもりもないし、むしろ助けるくらいの何かは必要。そう言った意味でこの鏡の力はありがたいにゃ。」
召喚するのは一枚の鏡である。
「仙術と相性抜群。風水の要素もあるから色々とまだ研究しにゃいと。」
「すごい・・・私もまけていられないわ。」
「新しい神話はもう始まっているのね。」
朱乃さんは何故か遠い目をしています。
「・・・・・・・。」
そして部長?
なんか様子がおかしい。なんか憂いのある表情を見せている。
「?」
アーシアもそれに気付いたようだ。どうもアギトになってから人の心の機敏が肌のように感じてしまう。
何か悩みを抱えているのか?
「おーい。今帰ったぞ!!」
そんなタイミングで・・・鋼兄が帰ってきた。
いや・・・あんたも相当な修羅場をくぐり抜けてきたねえ。
「んんん?なんかみんなの反応が可笑しいぞ?黒歌・・・何をした?」
「何って・・・女子同士で鋼ちんとの馴れ初めを・・・。」
「・・・そっ・・そうか////。本当に女子はそう言う話が好きだな。」
顔を赤らめる鋼兄。ああ・・・照れくさいのが良く分かる。
―――――わしはこんな純情な奴に倒されたというのか。
「んん?」
「おっ・・・そうだ。クレア殿に礼を言わないとな。ありがとう。」
その言葉に呼応するようにクレアがでてきた。
「その様子だと・・・まさかできたというの?私が言った仮説が?」
「ああ・・・篭手に封印されていたドライグ殿もできた。ならこっちに封印されているこいつもできて可笑しくないと思ったが大成功だった。みんな紹介するな。でて来い。ヤマタ。」
『・・・・・・はい?』
鋼兄の肩の上に・・・頭が八つ、尾も八つある奇妙なデフォルメ化されたヘビが現れる。
「・・・話にあった邪竜?」
「まさか赤龍帝までいるのは知らなった。ワシもこんな姿だが・・・よろしく頼む。」
まっ・・・まじですか。
日本神話であまりにも有名すぎる存在と鋼兄・・・契約してしまったのか!?
同じくおどいたのだろう。ドライクは小さな翼で空を飛び、ヤマタの方へと向かう。
「あっ・・・ああ。だがやけにさっぱりしているな。破壊衝動や自滅願望は消えているのか?」
「・・・清めの音の力だそうだ。わしの魂を清めるのには驚いた。」
「水害などの災害の化身であるお前がまともになるのに想像もしなかったぞ。」
ドライクとヤマタが話しこんでいるみたいだし。
「うまい酒が飲むのが今の生きがいだ。この世界の恵みの結晶と言える酒は素晴らしい。聞けば世界中には色々な酒があると聞く。まずはそれを飲んでみたい。」
「酒が好きなのは変わっていないのか。だがおいしいのか?」
「癖になるぞ。うまい酒をつくるために気象を操る事もいとわぬ。田畑を近くもらおうと思っているくらいだ。自分でつくってみようかと。」
えっと・・・何か少し変なドラゴンだぞ?
「酒ってうまいのか?」
「・・・・・・・。」
えっと・・・そこにオ―フィスちゃんが加わるのは勘弁してほしい。
「みっ・・未成年はお酒禁止です。」
幼女なんて問題外だ。
キリエさんが丁寧に説明しているし。
そしてオ―フィスをみたヤマタは固まっているし。
固まったままドライグを見て・・・。
「黙っておいてやれ。それが彼女の望みだ。」
「・・・驚かせる立場なのに・・・逆にワシが驚かされた。」
驚くヤマタにオ―フィスちゃんが興味深そうに近づいてくる。
「一つ聞きたい。契約はどんな感じだった?ドライグには聞いた。」
「・・・ワシと真正面で戦い圧倒して倒した男だ。力を振るう契約相手としてこれ以上の不足はない。むしろ誇らしいぞ。」
本当にヤマタノオロチを真正面から撃破したのか。
鋼兄・・・すげえな。
「そうか・・・。」
オ―フィスちゃんは何やら考え込み・・・。カードを取り出す。
「決めた。」
そして、渡の所へ行く。
「渡・・・契約を結ぼう。」
「契約?なんだいそれ・・・?」
「いいから。受け取ってほしい。」
オ―フィスちゃんが差し出したカードを受けとった瞬間・・・カードが代わる。
それは自らの体を喰らうヘビをバックにしたオ―フィスちゃんの姿だ。
「契約成立。我・・・渡と共にある。」
「あっ・・・ありがとう。このカード大切にするね。タツロット。収納しておいて。」
「わかりました!!」
『・・・・・・・・・・。』
その光景にドライグとヤマタは何故か驚き固まっているよ。
クレアまで驚いているけど?
「おっ、おい。クレア。あの時渡したカードってもしかしなくても契約のカードなのか?」
「えっ・・・ええ。でも契約したい相手がいたなんてね。お姉さん・・・驚いちゃった。」
「おまえはとんでもないことを仲介してしまったという自覚はあるのか?!前代未聞すぎるぞ!!オ―フィスが特定の個人と契約するなんてな!!」
「はっ・・はははは・・・・これは不味いわ。あの渡って言う人も自覚ないけどあの人・・・無限の力を得たも同然ね。」
「・・・渡殿を偉く気に言っていたのは知っていたが、躊躇いもなく契約するか。何をしたらそこまで懐くことになる?」
無限ってなんです?もしかして俺達渡のとんでもないパワーアップの現場にたちあったんじゃないのか?
「・・・世界の理がかわるな・・・。私も復活した甲斐がある。見届ける価値があるそうで愉快愉快。」
ヤマタさん。意外とたのしんでいますね。
「・・・もうどうにでもなって。なんで邪竜まで・・・。」
部長。ごめんなさい。
なんかどんどんと変なのが集まってきます。
SIDE 鋼鬼。
思えば・・・黒歌と出会ってから四年。
色々とありすぎたな。
俺は布団の上で寝転がりながら振り返っていた。
思えば・・・姉さん女房みたいなやつだったな。
一緒に修行し、互いに励まし合い、互いに助け合いながらずっと一緒だった。
情けないが・・・何時そうなったのかは分からない。
だが・・・いつの間にか好きになっていた。
多くの問題があった。でも・・・一つ一つ解決していっている。
――――主も積み重ねていくタイプということか?
「積み重ねは大事だ。まだ鬼武者化の力の制御は完全じゃない。発動時間の強化のための修行をあの方より受け・・・まだ実践している途中だし。」
俺はそんなに才能がある方ではなかった。
だが、鬼としての力はこれまでの積み重ねを通して、確実な力として自信も持てるようになっていたのだ。
だが、そこにあの鬼の篭手の力だ。
「暴発したら危険だろうが。まだ真・鬼武者化は出来ていないし、アームド・クサナギも使いこなせていない。」
――――ワシの力と鬼武者の力。二つが合わさって誕生したあの剣か。二つの鬼の力の結晶と言える剣。ふふはははは・・・むしろ簡単に使いこなされたら困る。一応ワシの血肉と骨で作られ、そこにワシの魂が封じられているのだぞ?それなりに苦労してもらわんと。
「言ってくれる。それでこそ修行しがいがある。」
一人でいてもどうも退屈しない。面白い奴と契約したものだ。
「鋼ちんおきているかにゃ?」
そこに黒歌が部屋に入ってくる。来ているのは寝巻代わりの黒い着物だ。
あちこちはだけているぞ・・。
正直・・・スタイルは抜群すぎるくらいにいい。
正直眼の毒・・・本来なら眼福といいたいのだが。
――――ふふふ・・・本当に初心なやつだ。
俺の中でヤマタがからかってくる。
「隣・・いいかにゃ?」
「ああ・・・。」
俺達は二人でまったりとする。
「ねえ・・・とりあえず・・ひと段落ついたにゃね。」
「そうだな。」
一年間の世界放浪の旅を経て小猫ちゃんを発見。
その際に多くの猛者たちとも知り合えた。
はぐれ悪魔の指定も最近になってようやく解除した。
やっと・・・穏やかに暮らせる。
訳ではないか。まだまだ災難は続きそうだ。
「約束・・覚えているかにゃ?」
俺は黒歌とその・・約束をしていた。
妹さんの件とはぐれ悪魔としての件が解決したら・・・その・・。
「次の発情期が来たら・・・子づくりしようというものだったな。」
もう夫婦である。子供を作っても問題はない。
レアな種族である黒歌の種の保存もある。それに何より・・母上達が孫の姿が見たいとせがむのだ。
まだ・・・俺の弱点は克服できていないの故に困ったものだが。
「覚えていて結構・・・ん。」
そんな俺に向けて黒歌は突然のキス。それも・・ディープな奴をやってくる。
「ちょっ・・お・・お前いきなり何を・・・って・・。」
俺はあの振りの時に気付くべきだった。
「まっ・・まさかお前・・・・もう来たのか?発情期。」
色っぽく頬を赤く染めた黒歌は頷きながら、俺を押し倒す。
その眼は・・・。
「もう・・がまんできない!」
完全に獲物を狙う肉食獣の眼。
そうか獲物は俺なのか。
――――喰われる立場になるか。面白い物だ。
ヤマタは俺の中で笑っている始末だ。頼むから黙っていてくれ。
着物を脱いで裸になる黒歌。
当然鼻血はでるが・・・。
あれ?垂れる程度ですんでいるぞ?
「ふふふ・・・・弱点克服成功にゃ。私限定だけど一緒に旅する間に慣れさせておいて正解だったにゃ。むしろ限定的なのも・・・・独占できるという意味では好都合!!」
「・・・・・・・。」
おいおい。俺の弱点もそう言う形で攻略済みですかい!!お色気みたいなことをなんども旅している間にやっていたのはそういうことか!!
旅の間、俺がどれだけ鼻から血を噴き出したと思っている?
確実に一トン以上は噴き出しているぞ!!
まったく・・・。
俺は黒歌を抱き寄せる。
負けっぱなしは性に合わない。
「そうなったら遠慮はしないぞ。俺だって男なのだからな。」
「にゅふふふふ・・・大歓迎にゃ。」
艶のある笑みから切なそうな顔をしながら黒歌は止めの一言をいう。
「・・・・抱いて。あんたの・・・子供が欲しい。」
理性をふっ飛ばすのに十分だった。
こうして・・・俺達は夫婦としての初夜を迎えることとなる。
子づくりという物を初めて体験することとなったのだった。