赤龍帝の幼なじみ達   作:THIS

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 大変お待たせしました。思うように執筆できず時間がかかってしまいました。

 今回は二話更新します。


 一つ目は・・・この世界の最強の人外魔境となった兵藤邸の実態がわかるようなっております。

 どうぞ。


ようこそ 人外魔境です。

 

 

 

 SIDE イリア

 

 今私は…魔境にいる。

 

「あれ?イッセーの家ってこんなに凄かったけ?」

 

 誠君の疑問に私達はため息をつく。

 

「これは・・・それ以前の問題だ。」

 

 記憶が確かなら、ごく普通の一軒家だったはず。

 

 それが・・・。

 

「土地レベルでおかしい。何があった?」

 

 あまりに広大な土地。数々の山や土地、湖すらあるレベルの。

 

 家なんてマンションというレベルすら通り越している。

 

「凄い・・・。」

 

「…なんで俺達はこんな異変に気付かなかった?それがまず疑問だ。」

 

――――そうだな。

 

 進兄さんの疑問はもっともだ。どうやら突然こうなったのに、誰も疑問に思っていないのだ。

 

「まあ、この国の神様からの贈り物です。」

 

「?」

 

 後でそれがそのままの意味だと知って、私達は卒倒しそうになったのは仕方のないことだろう。

 

 法的な問題に関しては・・・進兄さんも頭を抱えていたし。

 

 ベルトさんが間違いなくそんなことを法律が想定しているわけないだろうと慰めていたわ。

 

「イリア。一体君に何があったのか色々と聞きたい。」

 

 誠君が私のことをジト目で見ていた。ウッ…確かに二度と帰らないつもりだったから何も言っていなかったし…言う暇もなかった。

 

「まあ、何となく想像はつくけど。ずっと待っていたのにな・・・。」

 

 ずっと待っていた?

 

 どうして?

 

「ついに現れたわね。幼馴染第二波が・・・。」

 

 歓迎してくれたのは紅の髪の女だった。もう、人間離れした美しさを誇る。

 

 スタイルだって…うん、同じ女として羨ましいくらいに。

 

「…あっ、自己紹介が遅れたわね。私の名前はリアス・グレモリー。悪魔よ。」

 

 そういって背中から悪魔の翼を出したリアスさん。

 

「まあ、私が悪魔だなんて、この場所ではとるに足らないことよ。」

 

『・・・・・・。』

 

 もう言葉が出なかった。

 

 悪魔の登場ですらほんの序章だったのだ。

 

「あっ、おかえりなさい。」

 

「それといらっしゃいませ。」

 

「・・・なんでゼーベス星人がいるの?」

 

 家に入ると、そこにはあの宇宙海賊で有名なゼーベス星人達がいた。

 

 何故か、非常に礼儀正しい。

 

「それ以前に、なんというテクノロジー・・・。」

 

――――― 一人の科学者としてこれは・・・すごい。

 

 小さなミニカーとなったオプティマスとベルトさんがあちこちをスキャンしながら見て回っている。

 

 えっ?オプティマスがどうしてミニカーになっているかって?

 

 どうやらシフトカーをスキャンした結果だそうです。大きすぎて入れないと思ったら、小さくなったこと。それを見せつけられたリアスさんが「こっ、この程度で動じないわよ。」と卒倒しそうな顔で言っていたのが印象的だった。

 

 滅茶苦茶動じているのは気のせいではないだろう。

 

 まあ、こちらも理屈なんて理解できなかったし、深く考えたら負けだとなんとなくわかった。

 

――――トランスフォーマ―。ロイミュードと似た部分があるようだね。

 

 ベルトさんは何やら考え込んでいたけど。

 

 いろいろと苦労しているのかもしれない。後でゆっくりと話を聞きたい。

 

 まあ、とりあえずメカニックなお二人がいうには、この家は普通に見えて、実体は途方もない高度で、解析できないほどの数々のテクノロジーが満載らしい。

 

 もっとも普通に見えてというけど、外観がマンションクラスな時点で既におかしいと思うべきだ。

 

 ・・・なんか普通の感覚が狂ってきた気が。あっ、目眩が・・・。

 

「ほう・・・分かんのか?この夢とロマンが満載になったこの家の素晴らしさが!!」

 

 そこに、何時の間にか隣に現れたダンディーなおじさまが話しかけてくる。

 

「…何時の間に!?」

 

「おっと、警戒する必要はないぜ?俺はイッセーの身内だ。まあ・・・あいつの先生というべきか・・・。」

 

 おじさまは笑いながら背中に十二枚の黒い翼を出す。

 

「俺の名前はアザゼル。堕天使達の組織…グリゴリの総督をやっている。」

 

 悪魔に…堕天使・・・。まあ、イリナが天使になった時点でいてもおかしくはない。

 

 んん?順応が早いって?

 

 なんとなく理解し始めてきただけだって。

 

 この星には私にとって未知の何かがある。

 

 それが分かったのなら、それを知るべくやるだけだって。

 

 ただ、驚くことに疲れだけじゃない。

 

 決して・・・。

 

「はあ・・・・・・・。」

 

 うん、ため息くらいは許してね。

 

「あんたらとは一科学者として、後でいろいろと話を聞かせてほしいぜ。すげえ興味ある。グローバルフリーズのこととか・・・。」

 

――別にいいが、どうして君達がそのこと知っている?

 

「なあに、蛇の道は蛇なだけさ。まあ、裏のことは何も知らないみたいだから、俺から説明するわ。」

 

 そこからアザゼルさんとリアスさんにより、この世界の裏側を知ることになる。

 

「・・・まじか。」

 

―――ますます…アンビリーバボーだな。

 

「この世界の裏側って・・・。」

 

 天使、堕天使、そして悪魔の三大勢力。そして、それ以外の数々の神話勢力。

 

 私の故郷は本当に凄い星だった。

 

 銀河連邦に報告するべきだろうか・・・。

 

 そこから説明が更に続く。

 

 長年対立していた各勢力。だが、ある存在の出現で急速に和平が進んでいったという。

 

 それのきっかけを作り、そして中心となったのはイッセーであること。

 

「ここでイッセーか。一体あいつに何があった?」

 

 ここからが肝心な部分なのは私にもわかる。

 

 イッセーがその裏の世界で何をやらかしたのだろうか?

 

「・・・それにはアギトのことと神の遺産である神器(セイグリット・ギア)のことを話さないといけねえ。」

 

 アザゼルさんは話を進めていく。

 

 それは・・・。

 

 

 

 

 SIDE 誠。

 

 自分達は眠り続けるイッセーと面会することとなった。

 

「…イッセー、久し振り。」

 

「本当に・・・。」

 

 どうして眠っているのか含めて全ての事情を聴いた。

 

「お前・・・すげえことになっていたんだな。この世界の新たな神って。」

 

 イッセーがアギトと呼ばれる神の因子と神滅具という神器の中でも最上級、それも伝説のドラゴンの魂を宿したものを持っていたこと。

 

 そこに…異世界の強大な力を持つ龍との契約。

 

 彼は数々の存在を引き寄せていた。

 

 自分達もその中の一つだと。

 

 そしてイッセーは過去に死んだ神の代わりに神になると決意。その戦いの際にその体に宿っていた新たな存在が暴走し、それを押さえつけた後、暴走の反動で眠ってると。

 

「そうか・・・お前達が・・・。あの時は神器の中で眠っていたからわからなかったが。」

 

 そこに紅い髪をした一人の男性が現れた。

 

「あんたは?」

 

「紹介が遅れた。俺の名前はドライク。まあ、イッセーの相棒。二天龍の赤龍帝だ。今は人の姿をしているが・・・。」

 

 どうやらこの家でトップクラスの力を持つ、ドラゴンの化身体にあったようだ。

 

「あらら・・・早速来たか。」

 

 そして、小さな女の子二人を連れた女性も現れる。

 

「私の名前はクレア・ドラグレッター。同じくイッセーの相棒よ。そして、この子達は・・・。私達の娘。」

 

「そうか・・・。イッセーの奴、本当に恵まれているな。」

 

 一目でわかる。イッセーがどれだけ愛されているのか。

 

そして、この二人がイッセーの相棒であることも。

 

「…念願であるハーレムを作っているのも呆れたけどね。」

 

 それでハーレムを作りつつあるという点はもう呆れることしかできない。

 

 あいつめ・・・小さい頃からの夢を叶えてやがる。

 

「ほう・・・彼があのインドラの秘蔵っ子か。そして…まさか君まで来るとはね。まさか我が同志の幼馴染の一人だったとは驚いたぞ。広大なはずなのに世界って本当に狭いものだよ。」

 

 そこにもう一人来たけど・・・。

 

「ガタガタガタガタ・・・・・・。」

 

 そこに現れた存在にイリアが震えだした。

 

 その震え方が尋常じゃない。

 

 こちらと同じ歳の普通の青年にしか見えない彼に?

 

「ななななななっ・・・なんであんたまでここっ・・・ここに!??」

 

「久しぶり、イリア。あの時以来か。」

 

「どうした?イリア。」

 

 どうしてここまで警戒し、おびえて・・・。

 

「こっ…こいつはポルム。たった一人で、そして、一日で私達の銀河連邦を崩壊寸前に追いやった、だっ、大魔王よ!!」

 

『!?』

 

 その言葉に俺は震え上がる。

 

「ああ・・・なるほど。相当おびえているわな。」

 

「当り前よ!!あなたがあれほどの怪物だって初めて知ったわ‼‼はっきり言ってこちらは絶望しかなかったんだし。」

 

銀河連邦…宇宙にあるから相当デカい規模だよな?

 

 それを単独で崩壊寸前までに追いやった?

 

 それも一日で?

 

 あのポルムって奴が?

 

『・・・・・・。』

 

 進兄さんもさりげなく警戒している。

 

 一体目の前の彼はどれだけの怪物というのか想像もできない。

 

 そんなのどこを吹く風というようにポルムはイリアに尋ねる。

 

「…あの後、銀河連邦はどうなった?」

 

「まあ、撃さんが頑張ってくれたおかげで、いい具合になっているわ。」

 

「なるほど、思った通り。彼なら安心だ。ふふふふふふふふふ・・・。」

 

 その返答に大変満足げな笑いを見せるポルム。

 

「それがこいつの狙いだ。最初から彼を頭に据えるつもりだったのだろう?」

 

 そう言いながら金髪美人が現れる。

 

「ってサムス・・・あなた知っていたの?私もまあ…なんとなく意図は気づいていたけど。」

 

「それが分かったから、こいつを追ってあちこち旅していたんだ。やっと捕まえたし。」

 

 なんと、あのパワードスーツの中身が女性だったとは。

 

 名前と声から男だと思っていたけど・・・。

 

 しかも凄い美人。アメリカン系の美人・・・。

 

 スタイルも抜群。

 

思わず見惚れていたら・・・。

 

「・・・ふん。」

 

「いたたたたたたたたたたたたっ!?

 

 なんかイリアが不機嫌になって、尻をつねってきた。

 

「ほうほうほうほう・・・。」

 

 それを見てポルムさんはなんか微笑んでいますし

 

「・・・しかし傑作だよ。地球出身の彼が、今や銀河連邦のトップだもんな。」

 

 へっ?地球出身?

 

「…無茶苦茶恨み言を言ってたわよ?嵌められた。全て押し付けられたって。絶対にお礼参りに行ってやるって。」

 

「ふははははは!!流石は宇宙刑事。良く分かったものだよ!!一応ばれないようにいろいろとやったというのに、気づく辺り、刑事としてもやはり優秀だったよ。そうだな・・・なら彼に伝えてくれ。最高の褒め言葉をありがとう!!その調子で、新たな銀河連邦を頼むとな!!なーはははははははははははははははっ!!」

 

『・・・・・・。』

 

 それだけでわかった。

 

 なるほど、確かに魔王だ。どうやらやりたい放題に、好き勝手に暴れるだけ暴れて、後のことを誰かに押し付けたという形だな。

 

 その…地球出身の宇宙刑事・・・撃って人に。

 

 相当な策略家だぞ・・・あれは。

 

「まあ、それならこいつの手綱は頼むわ。貴女一人じゃ、荷が重いかもしれないけど。」

 

 イリアの言葉に、サムスは笑う。

 

「安心しろ。一人じゃないさ。なあ…私達の責任を取ってくれるって言ってくれたんだし?」

 

「・・・・・・。」

 

 笑いを引っ込め、冷や汗を流すポルム。

 

「私達?」

 

「こいつはあちこちでかなり罪を犯していてな。その償いをさせているわけだ。」

 

「そういうことです。」

 

 そこに可憐な少女が現れる。金髪に凛々しい顔をしている。

 

 うん、なんか姫様って感じが・・・。

 

「初めまして。私はリースといいます。とある世界で王女をやっていました。でも、あの方に心奪われ・・・追いかけてきました。」

 

『・・・・・・。』

 

 マジで王女ですか!?

 

 そのことに驚くのはイリアも同じだ。

 

「へえ~…サムスだけじゃなかったんだ・・・へえ・・・。」

 

 そして、ポルムの罪が何か理解したらしく、大変冷たい目で彼を見る。

 

「そこが弱点ってことか。流石大魔王だけのことはあるわね。うん…そんな部分まで大魔王だったなんて・・・良いこと知ったわ。」

 

 声のトーンが平坦で、逆に怖い。

 

 なんだ?あいつの罪って・・・。

 

「それに、こいつを止めるだけなら最強の奴もいる。」

 

「イリアさん!!!今の話って本当ですか!?」

 

「げえっ!?」

 

 そこに銀の髪をした女の子がやってくる。そして、ポルムの口から悲鳴が漏れた。

 

「あんた誰?」

 

「あっ、自己紹介遅れました。私はヒュミナと言います。こいつとは幼い頃からずっと一緒で・・・。」

 

 つまり、ポルムの幼馴染・・・。

 

「それでポルムったら!!なんてことしてんのよ!!サムスのいた世界で大暴れしたのは知っていたけど、そんなことまでしていたなんて初耳よ!!」

 

「いっ・・・いや、彼なら大丈夫だと見抜いた上でだ。それに彼がトップに立つのに誰も文句言われないように・・・。幾つものシナリオを考え、それ全て達成させたから、もう彼以外誰もいない状況にしただけで・・・。」

 

「それを逃げ道を塞いだというのよ!!ああ…後でその人に謝らないと。」

 

「・・・・・・。」

 

 イリアは呆然とその光景を見ている。

 

「驚いたか?どうやらポルムに対する最大のストッパーみたいでな。」

 

「ええ。安心したわ。」

 

 やはりこの世に絶対無敵というのは存在しないらしい。

 

 どの相手にも多かれ少なかれ弱点はあるものだ。

 

 安心した。いや…心の底から。

 

「それに今のあいつには相方もいる。」

 

「そういうこと。本当にいろいろやらかしてんな。武勇伝に困ることはないでしょ?」

 

 そこにもう一人黒髪の少年が現れる。

 

「現在私は悪魔でね。彼・・・サイガのクイーンをやっている。」

 

 ポルムが背中から悪魔の翼を出す。

 

「それって悪魔達が人間などの他種族を眷属にするってあれか?だが、それって実力に見合ったものがいるって・・・。」

 

 一応、その辺りの悪魔の事情もリアスさんから聞いている。

 

 イッセーとの出会いも彼を眷属にしようとしたこと。

 

 そこから全てが始まったと、つい最近のことのはずなのに、そのことを振り返っていたリアスさんが凄く遠い目をしていた。

 

 まだ半年も経っていないのに・・・。

 

 その僅か数か月で何があったのだろう?

 

 後でじっくりと聞きたい。

 

 そんな中で、ポルムから衝撃の言葉が放たれる。

 

「簡単なことだ。サイガは余と互角。それだけのこと・・・。」

 

「え?あんたもポルムみたいな怪物なの!?」

 

 その言葉にイリアが固まる。

 

「つまり、そちらさんも途方もない実力者だと・・・。」

 

「まあ・・・そういうことかな?まだその力を完全に物にしたわけじゃないけど。」

 

「ちなみに同じほどの実力者はごろごろとおるぞ。最低でも余とサイガが組めば銀河連邦くらい・・・十時間で簡単に壊滅できる。そんなレベルの連中がここにはたくさん集まって・・・。」

 

「…地球って何!?私の故郷ってこんなにおかしかった!?」

 

 イリアが頭を抱え、悲鳴を上げる。

 

 あまりに信じられない事実を突きつけられ軽く混乱している様子だ。

 

 銀河連邦崩壊クラスの実力者が集う星…集う街、集う家(?)

 

 なるほど・・・すげえ魔境だ。

 

 ここで宇宙全体の危機が起きてもおかしくない。

 

「ここはまさに火薬庫だな。」

 

 進兄さんも笑みを引きつらせている。

 

「どうどう。でも・・・心根はいいみたいだ。」

 

「?」

 

 自分の言葉にイリアが首をかしげる。

 

「イッセーの下に集まる奴らって、そういう奴らだってこと。そっちも例外じゃないでしょ?」

 

 少なくともこのポルムという奴…理由もなく銀河で大暴れする奴には見えない。

 

 それに、どうやらこの星で居を構えるのは間違いないし。

 

 そうでないと相方の件、そしてサムスさんを始めとした皆の責任という言葉も出てこない。

 

 そう考えたら、滅多なことはしないだろう。

 

「ほう・・・。素晴らしすぎるレベルの人を見る目だね。少なくとも、その歳で余の腹の内を探れるほどの・・・。」

 

 自分の発言に、ポルムは感心したように目を細める。

 

「君、もしかして転生者?」

 

『!?』

 

「そういえば・・・そのような相談をされていたな。」

 

 オプティマスが先に言ってくる。

 

「あ~うん。えっ?ああ・・・なんかそれっぽい。」

 

「…まだ完全じゃないのか?」

 

「そう、それ。一体誰のかわからないんだ。ただ・・・アギトの存在だけは知っていて。」

 

『!?』

 

 その単語に皆驚く。

 

「…それは興味深い。アギト関連の転生者なんて初めてだ。よし、この手を調べる術式や、道具があってね。試してもいいかい?」

 

 その中で素晴らしい笑顔を浮かべながら、ポルムさんの背後からいろいろな道具が出て来ましたよ?

 

 なんか拷問器具もあるし。

 

「へっ?」

 

「ふふふふふふふ・・・痛くしないから。ちょっと記憶が飛んだり、人格分裂だったり、一日ほど廃人になるくらいだから!!」

 

 その言葉を聞いた瞬間、自分はイッセーの部屋を飛び出した。

 

「謹んで遠慮します~!!」

 

 だって、大丈夫な要素はまったくねえ!!しかも、本人大丈夫って一言も言ってないし!!

 

 痛くなくても安心できない!!!

 

 不安・・・いや、絶望しかねえ!!

 

「逃げなくていいじゃないか~。」

 

 でも何時の間にか自分の前で先回りをしているポルムさん。

 

「!!?」

 

 どうして先回りされているのか、という疑問もあった。

 

 でも、まず大切なのはそのまま進んでも、引き替えすために止まったところですぐに捕まるという事実がそこにあるということ。

 

 だから・・・。

 

 こっちが驚きながらとった手段は、相手の股の間をスライディングで抜ける!!!

 

「なっ!?」

 

 その際に足を払って動き止めるのも兼ねて!!

 

「おっと!?へえ・・・普通なら立ち止まって別の方向へ逃げるか、固まって動けないはずなのに、逆に驚きながらすり抜けてくるなんて・・・。ますます興味を持ったよ。」

 

 でも、足を払い、すり抜けたのに、あいつは空を飛んでいる。

 

 って、背中から翼を出して本気で追いかけてきやがった!!

 

「逃がさないよ。君という存在を本気で調べたくなった。」

 

 必死で自分は逃げる。大魔王の魔の手から!!

 

「ひえええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 なるほど…確かに魔王だ。マッドサイエンティストという意味で。

 

 逃げる…とにかく逃げまくる!

 

 現在地が分からなくなるほどに逃げまくる!!

 

「・・・って、早い。そしてすばしっこい。なんて奴だ。しかも廊下をバレルロールって・・・。」

 

 こういった危機は何度もあるからな!!

 

 そう簡単に捕まってたまるか!!

 

 壁から天井を走りながら回ることも何度あったか。

 

 廊下をバレルロールのように走ることくらい誰だってできるだろ?

 

 俺を追いかけてきた連中は、その多くがパニックになっていたが…まあ、悪いことをしている奴らだし、罪悪感を思い出してくれたのかも。

 

「いや、それは違う!!」

 

 そこでツッコミ。大魔王からツッコミが来るなんてめったにない経験だわ。

 

「まさか余がツッコミに回ることになるとは・・・これだから天然という奴は。それはそうとして、これではキリがない。まさか逃げ足だけでもこのレベルなんて。スタミナは・・・これまでの経緯を考えると期待しない方がいいか。仕方ない。防犯システム起動!!」

 

 その言葉とともに壁、床ともに変な魔法陣やスイッチが出現。

 

 ついでに言えば、レーザーの網まで現れる始末。

 

 うん…あれ全部罠だ。

 

 保護者のじっちゃん、師匠、自分をここまで育ててありがとう。

 

 今のうちに感謝しておくよ。

 

 人生最大の危機、到来です。

 

 無数の罠がまるで津波のように襲い掛かってくる!!

 

 壁を蹴り・・・。

 

 天井を足で叩き・・・

 

 床を滑り・・・。

 

 ありとあらゆる手段で逃げる!!

 

「嘘・・・。まだ粘れるなんて・・・。まさか彼は忍者だというのか?!この日本で有名な影の執行者の末裔だとでも!?本当に驚かせてくれる。」

 

 何やら驚いている様子だけど、そんなこと気にしている場合じゃない。

 

 長くはもたないからだ。早く安全な場所を探さないと。

 

 しかもドアにも何か展開されていて・・。

 

 んん?近くの扉には何もない・・・。

 

 半ば空いているのか、魔法陣も何もない。

 

 ブラフっていう可能性もある。

 

 だが、この場合は・・・。

 

 うん・・・ここしかねえ!!

 

「なっ!?まさか・・・。」

 

 とにかくその扉に飛びこめぇぇぇぇ!!

 

 

 

 

SIDE アザゼル

 

 むう…後何が足りないのか・・・。

 

「私としては複数の技術と動力体系を結ぶ、何かが必要かなと思うけど?」

 

 そこか。確かにこれは色んな仮面ライダーの技術を結集させた傑作。

 

「もう一つ・・・動力とシステム制御を司る何かが欲しい。イッセー達の神滅具ならドライグ達がやっているような。」

 

「なるほど。何かの魂を・・・。でも一歩間違えたら危ないわよ?」

 

 巧を交えて、俺達はある天使と議論を重ねていた。その天使曰く、巧には色々と教えたいらしい。

 

 相当有望な逸材だと。

 

 なんか鼻が高いぜ。巧の技術者としての腕と発明家の才能を各勢力から高い評価を受けているなんてよお。

 

―――ガイアメモリにはそんな機能はない。アストロスイッチもそうだ。あるとしたら別の技術。だが、人造アンデットなどの技術は危険すぎる。

 

 フィリップの方もいろいろと検索してくれただな。まあ…言われるまでもねえ部分もあるが。

 

 アンデット関連は剣崎の奴からやめるように強く言われている。あいつ自身がその被害者だし。

 

 説得力があるっていうレベルじゃねえ。

 

「こう・・・エネルギーユニットとAIを兼ねた何かが・・・。」

 

んん?防犯システム、犯人捕獲用で作動か。

 

 泥棒でも入ってきたのかね?

 

 って誰か飛び込んで・・・・おっ?

 

 なんで誠の奴が飛び込んでくるんだ。

 

「ぜえぜえ・・・ぜえ・・・。」

 

 その後ろからポルムが呆れた様子でやってくる。

 

「なんて判断力。抜け目の無さと言い…ロックが掛かっていなかった部屋に飛び込むなんて。罠かと思ってしまうところなのに・・・。こっちの防犯システムの穴を直感で見抜くとは恐れ入る。間違いなく彼は余が認める猛者だよ。」

 

 はい?防犯システムの穴だと?

 

「改良点だ。でもおかげで助かった。すぐに直すように手配しよう。」

 

「はあ、はあ・・・。」

 

「でも、やっぱり君は誰かの転生者ということか。それも相当な修羅場を潜り抜けた。まあ、調べた限り、現世でも相当な修羅場の連続なのはわかっているけど。それでも異常だ。それこそ前世の経験をプラスした上で辛うじて説明つくレベルだ。」

 

「試したと言う事か?」

 

「まあね。案外こういった方法が効果的な場合が多い。危機的状況が記憶や経験を必要とするから。まあ…君の経歴からして、並みの状態じゃ無理だと判断して・・・。」

 

 おいおい・・・。うちの防犯システムを起動させないと検証できないってどんなんだ?

 

 一度、スサノオ殿に実験させたが、あいつが玄関から靴を脱ぐことすらできずに撃沈されたレベルの防犯システムだぞ!?

 

 あっ、もちろん本人の承諾はもらっているから安心してくれ。

 

 神すら玄関から上がらせないレベルの防犯システム。あまりに過剰すぎるが、ポルムの奴がいい笑みで・・・

 

―――――何事も実験が大切だし。いいデータが取れたよ。

 

 と言いやがった。

 

 うん…はっきり言って、俺は・・・。

 

 その言葉に感動したね!!

 

 思わず両手で握手したよ!!

 

 あいつといるとどんどん面白いことができる!!

 

 そして、それに巧までいい笑顔なのがなあ。

 

 うん…共同作業はいい。

 

 だが・・・その合作の穴を見つけたとは・・・本当にただもんじゃねえな。

 

「・・・・・・・。」

 

 だが、被害者であるはずの誠の奴が全然反応しない。

 

「どうしたの?」

 

「G3・・・・。」

 

 何?!どうしてあれの名前を?

 

 誠が見ているのは三大勢力がその持ちえる技術の総力を結集して作り上げようとしている物。

 

 その名もG3!!

 

 完成すれば、魔王クラスの戦闘力も夢じゃない逸品だ。

 

 テーマは人造的に神滅具を作ること。人造神器、そしてその禁手化は巧のおかげで一定の成果をえることができた。

 

 巧の成果は極めて大きく。冥界、天界どころか各神話勢力すら問わず、技術者達の大きな注目を集めている。

 

 そんな中の新たなステージってやつだ。

 

 こちらも人造神器などの技術を総動員したのだが…足りねえピースがあって今、皆で悩んでいる最中・・・。

 

 ちなみに極秘のプロジェクトだ。

 

 そんなプロジェクトの名前をどうしてあいつが・・・。

 

「やっぱり・・・君だったか・・・。」

 

 おっ?天使側からの技術者がため息をつく。

 

 彼女はこの家に今日来たばかりだ。

 

 思えばその天使が発起人、かつ名付け親だった。前の神が生み出した最後の天使。だが、生まれたままずっと眠っていたらしく、俺達も初めて見る天使だった。

 

 四月に入って目覚めたらしく、そこで驚くことが発覚する。

 

そいつはその神の遺志を継いでいた。言わば、神様のラストメッセージ。

 

神は自身の後継者が現れ、三つの勢力が手を結ぶ時にその懸け橋となるべく彼女を最後に生み出したのだ。

 

異世界から召還したある人物の魂と共に。

 

 あの神はこのことも予見していたのだ。本当に恐れ入る。

 

 そこから多忙だったらしく、中々この家に来れなかった。だが、G3プロジェクトに問題が発覚したことでこの家にやってきた。

 

「私がいる。だから、あなたも、と思っていたけど・・・本当に久し振り。氷川君。」

 

「へっ?久し振り・・・っ?」

 

 軽く頭を抱え、痛みに顔をしかめた誠はいった。

 

「…小沢さん?」

 

 この天使は自分をそう呼ぶように言っていた。その名前を誠は口にしている。

 

「うん。いや~やっぱり運命ってやつかな?この世界で私がこれを作るのも…そしてその装着者として・・・氷川君、あなたがここにやってくるということも。まあ、元々あなたがこの世界に来てもおかしくないと思って、あなた用に調整していたから。」

 

『・・・・・・・・。』

 

 俺とポルムは視線を見合わせる。

 

 あまりに予想外のことにお互い驚いているということらしい。

 

「こりゃ、おもしれえ。やっぱ流石イッセーの幼馴染だけのことはあるわ。」

 

「うん。しかし、アギトのことを知っているということは、もしかして・・・。」

 

「・・・なんでさ・・・。」

 

 そこでもう一人やってきてしまった。

 

 その名はこの家の主・・・兵藤 翔一だ。

 

『あっ!?翔一(君)!!』

 

 彼の姿を見て二人が一斉に反応。

 

「・・・おやおや・・・まさか・・・。」

 

 どうやらそのまさからしい。この二人・・・翔一殿の・・・。

 

 こりゃ、更に面白いことになりやがった。

 

――――突然どうしたのかね?

 

「はあ…誠、無事だったか・・・。」

 

 そこにしゃべるベルトと進ノ介がやってくる。

 

―――おっ・・・なんだね?そちらにある素敵なパワードスーツは・・・。

 

 のちにその足りないピースをしゃべるベルトさんが埋めてくれることになる。

 

 イッセーの奴は本当に色々なものを持っていやがると思ったのは俺だけじゃないだろう。

 

 答えが向こうから転がり込んでくるなんて。

 

 

 

SIDE イリア

 

 はあ・・・。

 

 私は深く・・・それはもう深過ぎるくらい深いため息をついていた。

 

「私の悩みって・・・なんだったの?」

 

 私はネオ生命体のプロトタイプとして改造された。その直後に攫われ、人間じゃなくなった体に愕然とし、地球に帰るのを諦めたのだけど・・・。

 

「まあ…気にするな。皆そんなもんだ。結構身内に似たケースが多いと分かったら・・・。」

 

 新君が慰めてくれる。

 

 でもね…それでも思ってしまうのよ!!

 

 誰か・・・私の決意を返して。

 

 かなり悲痛な決意だったのに!!

 

 そこから銀河で探索者として頑張ってきたのよ!!必死に!!

 

 嘆きを止めない私を新君は苦笑い。

 

 そしてイリナも同じ心境らしく、優しく慰めてくれる。

 

「せっかく帰ってきたんだ。墓参りくらいしておけよ。」

 

 そこで弦太郎が突然そんなことを言ってきた。

 

「へっ?墓参り?って・・・誰の?」

 

「君のお父さんとお母さん、それとフェンに決まっているじゃないか。」

 

 お父さんと・・・お母さん、そしてフェンの墓?

 

 でも…私は皆が血まみれで倒れたところを見ただけで・・・。

 

 フェンも必死で私を助けようとして・・・。

 

「口止めされていないから言うけど、誠君と進兄さんが作ってくれた・・・。」

 

 ちょっとそれってどういうこと?!

 

「俺達も最近知ったけどさ、そっちが行方不明にあった後、看取ったのは誠なんだぜ?」

 

 誠君が?

 

「あいつが墓の管理をしている。毎年…毎年な。あなたのこともすっと待っていたから。いつかここに来るって・・・。」

 

「・・・・・・。」

 

 そうか・・・誠君・・・。

 

「・・・私達も花を手向けたわ。この街に来た時に。」

 

「いろいろと世話になったから。」

 

 皆・・・。

 

 私の胸が熱くなっていくのを感じた。私のために…こんなことをしてくれるなんて。

 

 そして、今でも私のことを待っていてくれた誠君にも・・・。

 

「・・・ありがとう。」

 

 目頭が熱い。こんなの久し振りだ。こんなに熱くなったのも・・・。

 

「本当に・・・ありがとう。」

 

 何も言わずに、イリナが私を抱きしめてくれる。それに私は暫く甘えることにした。

 

――――帰ってきてよかったな。イリア。

 

 私もそう思う。私…こんなに思われていたんだ。

 

 

 

 そこから少し落ち着き、私はある相談をすることにした。

 

「・・・私の体のことは知っているわね?」

 

「一応、簡単に調べている。」

 

「なんとかできないかしら?今のままじゃ…暴走してばかりで。」

 

 私の体はネオ生命体としての機能を備えているのだが、どうも上手くかみ合っていない。

 

 今更元に戻れるとは思っていない。でも、この力を活かすことがまだ出来ていないのだ。

 

 変身する前でも十分強いのが幸いだけど。

 

「そうだね。まず…君の体からは強い「フォース」が感じられる。まずそこ・・・。」

 

 って!?いきなり別の人が入ってきていますけど!?

 

「師匠?!」

 

「剣崎さん・・・。」

 

 イリナ達が彼のことを師匠と呼ぶ?

 

「はははは・・・師匠って、まあ、君達のマスターではあるけど、なんか照れくさい。」

 

 マスター?

 

「うんうん・・・やっぱりイッセー君の近くには素質のある子がどんどんやってくる。うん、君も弟子、いや、この場合はパダワンにしたいくらいだ。」

 

 えっと・・・なんの弟子ですか?

 

「ジェダイだよ。」

 

 ジェダイ?

 

 ああ…あの伝説の・・・。

 

 かつて銀河を守っていた超常的な力を使う騎士達。

 

「へえ・・・ジェダイ・・・。」

 

 私も探索者としてその遺跡をあちこち視たけど・・・。

 

 うん・・・・。

 

「・・・・・・・・・はい!?」

 

 なんで私がその伝説にならないといけないのですか!?

 

 その前に剣崎さんって・・・。

 

「一応ジェダイマスターをしてね。」

 

 ジェダイ・・・あの伝説が目の前にいた。

 

 流石、地球。伝説のジェダイまでいるなんて・・・。

 

 もう何がいても驚かない方が賢明ね。

 

「それ以前に、いろいろとややこしい経緯をもっていたりするんだ。ははははは・・・。まあそれはともなく、力の制御の助けになると思う。君の力はフォースやこの地球での気と同質。どういう理屈かわからないけど、君は極めて強大なフォースを持っている。それもおそらくこの世界では最大。こっちだって足元に及ばないレベル・・・。」

 

 剣崎さんが目を細める。

 

「その力・・・ぜひ無駄にしてほしくないし、少なくとも暴走しない程度にまでには強制的に教育したいと。」

 

 そんなに凄い力を・・・私が?

 

「ちなみに気としての力は俺達の出番だ。」

 

 そこにもう二人現れる。

 

 一人は大変体格のいい、大男さん。鉄のような浅黒い肌が特徴的だ。

 

 相対するだけで猛者だとわかる。それも…この中では断トツ。

 

 でも、怯えさせない辺り、威圧しないようにする心配りも感じる。

 

 きっと…凄く良い人なんだと。

 

 これは私が宇宙で苦労してきて、そこで養われた人を観る目と、以前からなんとなく感じていた勘みたいなもの。

 

 もしかして、これがフォースだったりするの?

 

「イッセーの兄貴分をやっている鋼鬼という。黒歌、仙術の素質とジェダイの素質は似ているのだよな?」

 

 鋼鬼さんの隣で猫耳に尻尾、そして着物を派手に着崩した女の人がやってくる。

 

 うっ、この人もナイスバディ・・・。

 

 なんかこの家の女性陣って、破格のスタイルを持つ人達が多いような気がするわね。

 

 軽く嫉妬してしまう。

 

「うん・・・。ただジェダイのあれは例の器官があるかどうか。それが違いよ。」

 

 どうやらジェダイに関して、この家のメンツは相当に調べているらしい。

 

「あれがあると、仙術だって更に効率的にできる。はっきり言って反則的な器官にゃ。」

 

「まあまあ。あれがあるゆえの未来予知。そして、その双方の素質をこの家にいる連中の中で断トツの規格外で持っているわけか…。」

 

「フォースと仙術の技術検証をしていたけど…その成果をあの子で試してみていいかもしれにゃい。」

 

 あっ・・・あれ?なんか私を見て凄くいい笑顔?

 

「ふふふふふふ・・・流石イッセーの幼馴染の一人だけのことはある。」

 

「鍛えがいありそうですね。」

 

「仲間が増えるぞ!!」

 

「面白そうだわ!!仲間が増える。」

 

 イリナ?あなたもしかしてフォースを使うの?それってつまりあなたもジェダイ・・・。

 

「まだ弟子の段階だ。天使とジェダイの相性は抜群だ。一時衰退したけど、この世界でどんどん増やしたいところだよ。おかげで一つの夢ができた。それはこの世界で俺は多くの弟子を育てて、ジェダイ騎士団を作ることだ!!」

 

 ジェダイ騎士団・・・。

 

 この星で復活しようとしているのか。銀河の守り手たる伝説のジェダイ達が・・・。

 

 このこと、銀河連邦に言った方がいいよね?

 

 無関係じゃないし。

 

 それに銀河の守り手が増えるのは非常に喜ばしいこと。

 

「その夢の第一歩として、是非、修行をつけたい。」

 

 えっと・・・。

 

――――――悪い話ではないぞ?少なくともそちらの力の制御の役に立つなら・・・。

 

 ・・・うん。そうだね。

 

 メリットは大きい。それにこの力にもまだ何かある気がするし。

 

 でも、この時私は知らなかった。

 

 ここで剣崎さんたちに修行をつけてもらうことが、私が宇宙の伝説になる第一歩だったなんて・・・。

 

「んん?」

 

 そこで剣崎さんは驚いたように空を見る。

 

「どうやら…また一人、目覚めつつある子がこっちに向っている様だ。豊作豊作。」

 

 

 

SIDE オプティマス。

 

 誠君に関しては安全を確認できた。

 

 どうやらあのポルム殿がいろいろと実験を兼ねてやったことらしい。

 

 本当に彼は魔王なのだろうな。でも、悪い人間でもない。

 

 かなり、油断のならない類の人間であるのは間違いないが。

 

 そんなことを考えながら私は、ある声に導かれてある場所に来ている。

 

 それは・・・車庫というにはあまりに巨大な場所。

 

 たとえ全長が二百メートル、高さ百メートルクラスの大怪獣でもゆっくりとくつろげるような無駄に巨大な空間があった。

 

「あっ、来てくれたんだ!!」

 

 そこには一台のバイクがいた。

 

 朱と金のカラーリングのしたバイク。その車体には私が復活する際にサイバトロンのエンブレムにくっつく形で現れた紋章がある。

 

「君は一体・・・。」

 

 そして、そのバイクからは我らサイバトロンと同じ生命反応がするのだ。

 

 どういうことだ?

 

「えっと・・・まずはこの姿から。」

 

 そこで彼女はトランスフォームしたのだ。

 

 人の姿へと。

 

 そんな馬鹿な。セイバートロン星の生き残りなのか?

 

 いや、でも、彼女のような存在はサイバトロンにはいなかった。

 

 ディセプティコンでもないようだ。

 

 彼女にはどちらの陣営のマークもない。

 

どちらの陣営にも属さないのは・・・。

 

「私の名前はトルネ。兵藤 一誠の最初の眷属。元々はこの地球にあった秘密結社ショッカーが作ったバイクです。」

 

「地球のバイクが?もうキューブがないというのに・・・。」

 

 キューブがないと起こらないはずの現象が起きているのだ。

 

 あれなら物質に生命を与えることも可能だ。

 

 だが・・・生まれたばかりの彼らは理性がなく獣そのもの。

 

 少なくとも目の前の彼女になるまでに相当な時間が・・・

 

 そこまで考えて私はあることを思い出し、考えるのを一度止めた。

 

「いや、この星のことだ。それ以外にも要素があるのだろう。魔法や神の力とか・・・。」

 

 この世界の裏側にいる者達の力は未だに謎が多い。だが、その力は未知ながら素晴らしいとしか言えない。

 

 そのおかげで私は蘇ったのだから。

 

 その要素が彼女を生み出したと考えれば説明がつく。

 

「…順応が早い。」

 

 実際に存在する力。そして、それによって命を救われた体験した以上、認めない方が不毛だ。

 

 謎が多いから早く情報を収集して、整理をしたいところだが。

 

 情報の整頓は適応の第一歩。

 

「やっぱり、人生経験が違うのかな?」

 

「そうですね~。」

 

 そこにもう一人やってくる。

 

「…君達も同じ類か。」

 

 やってきたのはもう一台のバイクと・・・ホイールが球体になった大型の装甲車のようなもの。

 

「いやね。新たなアギトの眷属が誰かと思ってきたわけだけど・・・。」

 

「私よりも年上ですのね。」

 

 二人もそれぞれイッセーとは別のアギトの眷属らしい。

 

 その前にアギトの眷属とはなんだ?

 

「簡単に言えば、アギトの使徒。アギトのエルという存在。神で言う…天使。」

 

 以前いた神は、自らの使徒として天使を生み出していたと聞く。今ではその神がいなくなり、新しい天使は一切生まれなくなったとも。

 

「私はご主人が無意識に生み出した最初の眷属。アギトの因子によって魂を覚醒させられたの。レイダー君もそう。ライカさんは元々意思があったから少し違うけど。」

 

「私もその因子で、もうすぐ進化する予定です。」

 

 ライカと呼ばれた・・・その・・・二輪駆動の重装甲車?は頷く。

 

 ちなみにどうやらライカ嬢はトルネ嬢と同じ、バイクに分類されるらしい。

 

 バイク・・・なのか?

 

 機会があったらライカ嬢とその主とともにじっくりとバイクという定義について議論する余地がありそうだ。

 

 第三者の意見も是非聞きたい。

 

 今は、そう今だけは本題ではないので、この疑問は棚に上げておこう。

 

 非常に問いただしたいのだが、堪えておく。

 

「そして、オプティマスさん。あなたにもご主人の因子があります。おそらくご主人があなたを助けようとした結果。アギトの因子を送り込んだと思います。」

 

「私の体にアギトの因子・・・。」

 

 つまり今の私はアギトの使徒ということか。だからサイバトロンのマークにアギトの紋章が加わったと。

 

 だが、それだけでは説明がつかないことが一つある。

 

「おかしいデータがあるのだが・・・この・・・。」

 

――――――アクセス!!

 

 変なメモリが体の中に何時の間にか入っていたのだ。

 

「・・・あ~・・・それは・・・。」

 

「ガイアメモリって・・・あの人まで関わっているのか?」

 

 ガイアメモリ?なんだそれは・・・調べたいものだが・・・んん?

 

 そこで調べたいと思うと、あるデータが入ってきた。

 

 それは・・・膨大なデータ。

 

 その中から必要な情報を見つけ、引き出す。

 

「アクセス…ガイアメモリ。それは地球の記憶。それを基にその力を引き出す力。アクセスは・・・。」

 

 アクセスの力。それは・・・。

 

 どこからも情報を引き出したり、干渉することすらできる「接続」の力。しかも接続できる距離など関係ない。

 

 先ほどはこの地球と言う名のサーバーに接続したことで得られた情報だ。

 

 おそらく、ここから我が母星まで接続することすら簡単だ。

 

 普通の生物なら使いこなせないが、トランスフォーマ―である私なら・・・いや、でもこの力はあまりにも危険すぎる。

 

 これを使えば・・・。

 

「・・・イッセーとその友の信頼に応えないとといけないな。」

 

 どうやら私の自制が重要なようだ。

 

 この力は皆のために使おう。そう誓った時だった。

 

 警報がなる。

 

「あれ?」

 

「何があった!?」

 

―――――――――アクセス!!

 

 すぐにこの家のシステムに接続し、状況把握。

 

 そこには、宇宙船があった。

 

 ある星雲で使われるものだ。

 

 メモリーが確かならあれは・・・。

 

 そして、その船は今、襲われている。

 

―――――ッ!?急いで救援に・・・。

 

 襲っている相手はメガへクス。それが十体・・・。このままでは船が・・・。

 

「・・・あっ、もう向かっているから安心して。」

 

 トルネが無邪気に笑う。

 

 もう向かっていると?

 

 ここの対応の速さに流石に私は舌を巻いた。

 

「・・・私の経験・・・この場で役に立つのだろうか?」

 

 悲しいことに、ここにいる人達のレベルは髙過ぎる。

 

 そんな中で私は何ができるのだろうか?

 

「安心して、おそらくあなたは私たちが欲していたとある素質とそれに関する豊富な経験を持っているから。」

 

 トルネ殿の言葉に首をかしげるが、のちに私は皆の力になるようになる。

 

 総司令官として。

 

 

 

SIDE 弾

 

「ちぃ…メガへクスがどうして!?」

 

 地球に到着しようとしていた時に、突然の襲撃。

 

 十体ものメガへクスが襲い掛かってきたのだ。

 

「狙いは・・・きっとあの二人だろうな・・・。」

 

 メガへクス達は基本的に単独か多くても三体で行動するのが基本だ。

 

 だが、今回は十体という異例。

 

「なんで…メガへクスに狙われてんだ?」

 

 おっ・・・更に増援として十体。

 

 ・・・・・・明確な殺意を感じる。

 

 二人に対する明らかな殺意が。

 

「地球・・・。この星にまた何か起きているというのか?」

 

 この星は父の故郷。

 

 俺の初めての友達がいる星。

 

「ってそれどころじゃねえ。甲板に出るぞ!!」

 

 そう言って、俺は甲板の上でメガへクスの内一体と対峙。

 

「…蒸着!!」」

 

 その言葉とともに俺の姿は変わる。

 

 コンバットスーツを纏った姿に。

 

 銀色のスーツは銀河警察からしても有名なもの。

 

 それは父から受け継いだギャバンのもの。

 

―――――説明しよう。銀河連邦のコンバットスーツは僅か0.05秒で・・・。

 

「黄金の果実…奪う。」

 

 いつものナレーションが入る前にこちらに攻撃がやってくる。

 

 まあ、僅か0.05秒で蒸着できるのだから、かわしたり防ぐことに関しては何も問題ない。

 

「こちらの船を狙うとは…いい度胸してんな。」

 

 ポルムのおかげで、宇宙刑事引退しないといけなくなった父の分まで頑張るぜ!!

 

「…光を超えるぜ!!レーザーブレイド!!」

 

 剣を取り出し、メガへクスに切りかかる。

 

 だが、すぐにそれに反応を示し、左腕を刃に変形させて受け止めてくる。

 

 その後、右腕を大砲へ変化。こっちに向けてくるがそれを蹴りで跳ね飛ばす。

 

 よろけたところを斬る。

 

 一発でメガへクスのボディに火花が散り、装甲を切り裂く。

 

「厄介だな。」

 

――――銀河警察の宇宙刑事…確認。過去のデータ参照…コードネーム、ギャバンである確率97パーセント。

 

 こいつら一体一体が、下手なダブルモンスターよりもはるかに強い。

 

 下手な攻撃は無駄だ。極めて高い自己修復機能ですぐに治る。

 

 現にボディの傷もすぐに治る。

 

 おまけに情報を共有している。

 

 やっぱり過去に倒した奴のデータまで共有していたか。

 

――――ギャバンダイナミックに警戒。

 

 あいつを一撃で倒すにはそれしかねえが、当然警戒されているわな。

 

 それが十体。

 

 シャレにならないぜ。

 

 だがまあ・・・。

 

「守るためにひと肌脱がせてもらうぜ!!」

 

―――――物量で押す。Fire!!

 

「そういうこと・・・なら・・・。」

 

 場に現れた無数のエネルギー砲弾による攻撃。

 

 かわすこともできねえし、かわしたら艦に被害が出る。

 

「…試してみるか。」

 

 レーザーブレイドの刀身に手を当て、エネルギーを纏わせ、そのまま砲弾の群れに向けて走り出す。

 

 最近、俺は少しおかしい。

 

 軽い未来予知みたいな力というのか?

 

 どうも単なる勘とは違う力に目覚めつつあるのだ。

 

 今だって、飛んでくるエネルギー砲弾をどのタイミングでどのように斬ればいいのか分かってしまうのだ。

 

「・・・ここ・・・だぁぁぁぁぁ!!」

 

 フルチャージさせたレーザーブレイドでエネルギー砲弾の群れを一閃。

 

 全ての砲弾をあいつに向けて跳ね返す。

 

 自身が放った砲弾を受けて怯む五体のメガへクスたち。

 

 その隙を見逃さない。

 

 そのまま走りながら五体のメガへクスをスピンするようにして薙ぐ。

 

 飛び上がりながら一回転して、その勢いのまま切り裂く、従来のギャバンダイナミックとは違う。

 

 一対多数用のギャバンダイナミックだ。

 

――――バっ…馬鹿な!?

 

 たった一閃で五体のメガへクスを纏めて両断。

 

 これくらい、砲弾を全て跳ね返すことに比べたら楽である。

 

 爆発、消滅するメガへクス達。

 

 それを背にしながら改めて思う。

 

 なんだろう、この力は?

 

 父にこのことを話したら、首をかしげていた。

 

 どうも答えが出ない。

 

 だが、この地球にこの力に対する答えがある気がする。

 

 この力がそう告げている。

 

「はあ、まあ考えってもしかたねえ。まずは・・・。」

 

 残り五体のメガへクスを・・・。

 

「きゃああああああぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 そこで悲鳴が聞こえてくる。

 

 急いで中に入ると・・・。

 

――――始まりの女…捕獲。

 

 一体のメガへクスが助けた少女を捕まえていた。

 

 宇宙空間で漂っていても平気でいた二人の内の片割れ。

 

 あちらの怪我は軽度だったので、もう目を覚ましたのか・・・。

 

「その人を離せ!!」

 

 そこまで言って俺は走り出すが、助ける必要はなかった。

 

 そのメガへクスが突然現れた槍に串刺しになったからだ。

 

 鍔元がバナナ。まるでバナナを向いたら中身が槍だったような変わった武器。

 

――――バナスピア―。

 

「舞を離せ・・・。」

 

 それをぶん投げた奴は、よろよろとよろめきながらも凄まじい怒りでメガへクスを睨み付けていた。

 

「鉱太!?」

 

「ががががががが!?」

 

 まだ怪我が治っていないのだろう。ふらふらになりながらも、黄色い変わったメイスを引きずりながらまだ少女を離そうとしないメガへクスに向かって歩いていく。

 

 逃げようにもそのメガへクスは胴体を槍でぶち抜かれ、壁に縫い止められている。

 

――――マンゴパニッシャー!!

 

「舞を・・・。」

 

 そのままメイスを手にし、ハンマー投げのようにぶん回して・・・。

 

「離しやがれ!!!」

 

 メガへクスを思い切り殴り飛ばす。

 

 粉々になっていくメガへクス。

 

 おいおい、深手を負っている状態で一撃かよ・・・。

 

「うっ!?」

 

「鉱太?!」

 

 彼の方が怪我は酷い。それこそ普通の人間ならとっくに死んでいるほどの重傷だ。

 

「あんた大丈夫か!?」

 

 倒れる前にその体を支える。

 

「…ああ…舞は?」

 

「私は平気だから!!えっと・・・。」

 

「弾。えっと・・・。」

 

「鉱太だ・・・。うっ・・・。」

 

「舞です。あなたが私達を助けて・・・。」

 

「まあな。それよりもお前・・・鉱太?まさか・・・。」

 

「ああ…弾ってまさか・・・。」

 

 俺は変身を解き、鉱太も金髪の姿から親父と同じ地球人としての姿になる。

 

 うん・・・。

 

『・・・・・・やっぱりか。』

 

「へっ?えっ?」

 

 俺達はお互いにため息をつく。

 

「なんでお前人間止めてんだ?」

 

 宇宙空間を生身で生きている時点で確実に人外だ。

 

「いろいろあったんだよ。そういうお前は・・・そうか…宇宙刑事になったんだな。」

 

「あの…この人って鉱太の知り合い?」

 

 舞という少女が俺達のやり取りに驚く。

 

「ああ。昔馴染みだ。」

 

「そういえば、そのべっぴんさんは?」

 

「俺の奥さん。」

 

 うん・・・そうか奥さんか。

 

 ・・・・・・・・。

 

「・・・・・・悪い。もう一度説明たのむ。」

 

 何やら理解不能の単語が聞こえてきましたよ?

 

 奥さん?俺と同じ歳でなんで結婚してんの!?

 

 人外になったついでにお前はリア充にでもなったというのか!?

 

 こっちはそういったことは今まで無縁だったのに!?

 

 ああ…なんか暗黒面に堕ちそう・・・。

 

「説明に時間がかかる・・・。いろいろあったから。」

 

 深いため息をつく鉱太にこっちも聞くのをやめる。

 

 まだ終わっていないからだ。

 

「まあ…あいつらを片付けた後で。」

 

 再びコンバットスーツを纏う。

 

 後ろで現れた別のメガへクス。

 

 それと戦うために。

 

「おっ・・・おれも・・・うっ・・・。」

 

「ここは任せておけ。」

 

 明らかに人外になった体もそうだが、それでも今は戦えないのは明らかだ。

 

――――コードネームギャバン。前回の戦闘時よりも戦闘力のアップを確認。

 

 早速解析しやがったか。

 

――――下手な攻撃は効果なしと判断。

 

 あいつらが一斉に腕を刃に替える。

 

――――かわせない同時攻撃・・・。

 

 まずい。

 

 あいつら、コッチが対応しきれないほどの密度で攻撃するつもりだ。

 

―――より確実性をあげるために到着した戦力も・・・。

 

 そこに壁ぶち破って巨大なメガへクスが三体も現れる。

 

 これが前回との大きな違いだ。

 

 メガへクス達を運ぶ宇宙船。その正体は巨大なメガへクスだ。

 

 トランスフォーマと同じく、二つの形態へと瞬時へとトランスフォームする。

 

 この点から、伝説のトランスフォーマーの関与も俺達は疑っている。

 

 まあ、デカい分、その戦闘力は疑う余地もない。

 

 一体だけなら何とかなる。だが三体は流石にきつい。

 

「・・・あいつ・・・相当俺達を恨んでやがるな。」

 

「やっぱり股関節破壊してやればよかった。金的だけじゃ生ぬるかった。」

 

「こっちもマンゴパニッシャーを叩き込んでやればよかった。ドンカチじゃ甘かった。」

 

『今度あったら絶対にボコってやる。』

 

「・・・・・・。」

 

 うん。後で後ろの二人から事情聴取しないといけないようだ。

 

 黒幕のこと知っているのかと、執拗までに狙われる理由について。

 

 ついでに説教もしないといけない。

 

 どうやら相手が怒って当然のことをしたみたいだから。

 

 断片的だけど、金的と凶器による殴打をしたようだ。

 

 刑事として説教しなくては。

 危機的状況なのにそんなことを考えられるなんて、俺は頭でもおかしくなったのだろうか?

 

 危機的状況なのに、なんとかなると何かが叫んでいる。

 

 一斉に飛んでくるメガへクス達。腕は刃に変形させた状態だ。

 

 それが一斉に襲い掛かってきて・・・。

 

 一陣の風が吹いた。

 

 それはまさに風だった。

 

 通り抜けてからその存在に初めて気付くという点では。

 

 しかもあまりにも早く、何かが通り過ぎたのは分かったが、何が通り過ぎたのか分からない。

 

 そして、通り過ぎた後には・・・。

 

「…遠慮なんていらないよね?」

 

 両断されていくメガへクスと刀を持つ一人の青年の姿。

 

――――おいおい良太郎。俺達にも暴れさせろや。

 

――――せっかく修行したのですよ?

 

「そうだね。」

 

 あいつの体の中に何かが入り込んでくる。

 

 それとともにあいつの髪に赤のメッシュが入る。

 

 そして、刀を肩に担いでいう。

 

「俺・・・参上!!」

 

 まだ再生できる個体がいたらしく、メガへクスが立ち上がろうとしたところで・・・。

 

「言っておくが俺は最初っから・・・。」

 

 既に刀が振るわれ、あらぬ方向から斬撃が飛んできたのだ。

 

「クライマックスだぜ!!」

 

 それが再生途中のメガへクスを切り裂く。

 

 切り方そのものは浅いが・・・。

 

――――自己修復機能不全・・・。

 

 切られた傷が修復しないのだ。

 

「はん!!やっぱ幻魔剣は有効だったか!!」

 

 あいつらの自己修復を阻む方法あるだと??!

 

 他のメガへクス達が攻撃してくるが・・・。

 

「見え見えなんだよ!!よっ・・・はっ!!」

 

 飛んでくる砲弾や剣を簡単にかわしていく。

 

 動きそのものは荒々しいが、この感覚はまさか・・・。

 

 俺と同じ力・・・だと!?

 

「おっ?匂うぜ?フォースの匂いを・・・。あんた・・・素質持ってんな。」

 

 彼は俺の方を見て、笑う。

 

―――モモタロス。そっちの方面にも鼻が効くようになったのね。

 

「おう。さっきの娘と言い、豊作、豊作。こりゃ剣崎の兄ちゃんが喜ぶぜ。」

 

 フォース・・・だと?

 

 確かそれってお時話の伝説のジェダイが使う力・・・。

 

―――先輩。今度はこっちの番だって。

 

「・・・って、やべえな。頼むわ。」

 

 視線を向けると無数のミサイルらしきものを放つ

 

 今度は青い何かが入り込み…髪に青いメッシュが・・・。

 

「お前・・・僕に釣られてみる?」

 

 と言い始めましたよ!?

 

「まあ、もうとっくに釣っているのだけどね。」

 

 一斉にミサイルを放つメガへクス達。

 

 その攻撃があらぬ方へと反らされる。

 

――――ターゲットロック…エラー!?

 

「幻術というやつだよ。お前らみたいな奴らでも簡単に釣れるよ。ほら!!」

 

 手にしていた剣が変化する。一本の釣り竿のような槍へと変わったのだ。

 

 その槍が消える。

 

 だが、それとともに。

 

――――動作…不良・・・!?

 

 突然、無数のメガへクス達が動けなくなった。

 

「言ったはずだよ?もうお前達は釣られているって。」

 

 動けないメガへクス達。

 

「じゃあね。」

 

 指を鳴らすとともに爆発消滅していくメガへクス。

 

 一体何が起きて・・・。

 

「うん・・・これで。おっと!?」

 

 背後から巨大メガへクスが腕を変形させた刃を青年に振り下ろしてくる。

 

 だが、カメの甲羅型の結界がそれを弾く。

 

「まいったね。こういうのは趣味じゃないけど。」

 

――――だったら今度はこっちの番や!!

 

「へっ?ちょ・・・どあああああぁぁぁぁ!!」

 

 今度は黄色い何かが入り込み、髪に黄色のメッシュが入ったぞ?

 

 それを見た巨大メガへクスが弾かれた巨大な刃を再び振り下ろす。

 

 それをあいつは何もせずにその身で受けた。

 

 結果・・・。

 

 振り下ろしたメガへクスの刃が粉々になるという意味不明の光景だった。

 

「・・・まじか?」

 

 動揺しつつも、もう片方の腕も刃に変形させた巨大なメガへクス。その巨大な刃で首を跳ね飛ばそうと薙ぎ払ったが・・・。

 

 それを片手で受け止めた。

 

 その刃を受け止めた手で粉々に握り潰す。

 

 そして、そのまま巨大メガへクスの胴体に張り手をかましたのだ。

 

 その一撃、胴体を粉砕し、消滅させた。

 

「俺に強さにお前は泣いた!!」

 

――――いや、相手は機械だし。それ以前に泣く暇もなかったと思うよ。

 

 なんだ?あいつ・・・。

 

 無茶苦茶だぞ。

 

「さあ、涙はこれで拭いとき!!」

 

 その言葉に残り二体の巨大メガへクスは後ろに下がる。

 

 …あんな奴に接近戦は挑みたくないよな。

 

 間合いに入ったとたん一撃必殺だ。

 

「なんやつまらんのう。」

 

――――遠距離攻撃で粉砕。

 

 二体の巨大メガへクスが腕を大砲に変形。ミサイルまで用意して放とうとする。

 

――――ねえねえ、今度はこっちの番だよね?

 

「しゃあない。行ってきいや。」

 

 続いて紫の何かが入り込み。

 

 紫のメッシュが入る。

 

「さあて・・・張り切っちゃうよ?」

 

 飛んでくる砲弾やミサイルの嵐。

 

 それをまるで踊るようにかわしながら、何時の間にか手にしていた銃を撃ち放つ。

 

 時間がゆっくりとなり、その中を自由に踊っているような感じだ。

 

「魔女の時間・・・こんな形だけど再現したよ?」

 

―――――――ははははは・・・まさか自力であれを再現するなんて

 

「ついでに良い銃の使い方も習ったんだ。今度両足にも銃が欲しいよ!!

 

 弾丸は次々と巨大メガへクスに命中。

 

 一方彼のほうは全く被弾せず。まるで時間をゆっくりと伸ばしているかのような動き。

 

 メガへクス達は全身から損傷による火花を散らしながら膝をついていた。

 

――――バっ…馬鹿な・・・。当たらない・・・。

 

「…倒すけどいいよね?」

 

――なんで…当たらない?

 

 よろめくメガへクスに

 

―――リっ…理解不能・・・。

 

「答えは聞いてない!!」

 

 とどめの銃弾乱射。

 

 そして巨大メガへクス二体が粉砕される。

 

 だが・・・。

 

――――最終プログラム起動。

 

 破壊したメガへクス達の破片が集結し・・・。

 

――――コード ヘル。

 

 ケンタウロスみたいな形態となってメガへクスが再生。

 

「へえ・・・面白そうじゃないの!!」

 

―――――ふふふ・・・ここでこそ私の出番。

 

「えっ?どあああああぁぁ?!」

 

 そんな彼に今度は白いのが入ってきて・・・。白いメッシュと何やら羽できたマフラーみたいなものを身に着けましたよ?

 

「降臨。―――満を持して。」

 

 今度は何?

 

 あいつ…シャーマンか何かか?

 

 次々と変なことになっていくぞ!!

 

 ケンタウロス形態となった巨大メガへクスの背後から四つの腕のパーツが出現。刃に変形して、飛んできた。

 

 それがまっすぐ彼を切り裂いた、ように見えたのだが・・・。

 

「その程度か?」

 

 後ろに手を組んだまま、一歩右に動いただけでそれをかわしていた。

 

 それを見たメガへクスは下半身から無数の砲台を出現。一斉に砲撃。

 

 だが、その砲弾が次々と消滅。

 

「馬ならその背に乗るのが礼儀。」

 

 そして、彼はメガへクスの背に立っていた。

 

 その動き…まったく見えず。

 

 それに遅れて気づいたメガへクスが上半身を回転させて振り払おうとする。

 

 だが、切り裂いたのは宙を舞う白い羽だけ。

 

「…頭が高い。」

 

 今度はそのメガへクスの頭の上に立っている。

 

――――センサーに反応なし?

 

「・・・お前達程度にこの私を捉えることなどできないよ。」

 

 掴みかかる手をすり抜けるようにかわしながら、虫を追い払うような手刀を顔面に叩き込み、メガへクスの前に着地する。

 

 手刀を受けたメガへクスは大きく体制を崩し、驚いていた。

 

「切り札の割にはつまらないものだな。」

 

 いまだ後ろに手を組んだままの彼。

 

 まったくもって余裕だ。

 

――――全方位射撃!!

 

 その挑発に乗ったのか全身から砲台を展開させるメガへクス。

 

――――――ちょっと!!この船に被害が出るよ。

 

「うむ…なら仕方ない。こっちも少し本気を出すとしようか。」

 

 その言葉とともに彼の背後から・・・無数の人影が出現。

 

 それはもう一人の彼。

 

 それが次々と現れ、総勢十人。

 

「・・・なんですと!?」

 

―――馬鹿な・・・全部実体がある?

 

 動揺する俺とメガへクスなんぞどこ吹く風。

 

 彼は両手に小太刀を出現させつつ言う。

 

「仕留める時間のようだ。私の妙技、とくと味わってくれたまえ。」

 

 彼の姿が消える。

 

 そして、十体の彼の姿はメガへクスの周りに何時の間にか立っていた。

 

―――――――全てにターゲットロック・・・。

 

 そこまで言って、巨大メガへクスの全身から火花が散る。

 

―――がががががががが!?知覚…不能・・・!?

 

 そして、全身が切り刻まれ、まるで積み木ように切断面からずれ落ちようとしている。

 

――――自己修復機能・・ぜっ…全開・・・。

 

「しつこいものだな。微塵切りにしたというのにまだ・・・。」

 

―――――とどめはこっちがやるよ。

 

 既に死に体のあいつに向けてメッシュが消えて普通に戻った彼。

 

「飛天御剣流・・・。」

 

 何時の間にか手にしていた刀を鞘に納めながら走っていた。

 

 抜刀しながら斜め上にメガへクスを両断。

 

 とどめにその鞘の一撃で切り裂いたメガへクスの上半身を粉々に粉砕。

 

「双龍閃」

 

 その一撃でメガへクスは終わった。

 

「ふう・・・。なんか思うけど、みんなここまで強くなったら、そりゃあのてんこ盛りが異常な強さになるわけだよ。変身すらしていないし。」

 

――――――皆本当に強くなったよな・・・。

 

―――――イマジンもまた強くなるか。

 

――――――ははははは!!

 

――――――まだまだこれからだよ。

 

―――――――うむ。悪くない。

 

 一体何者?

 

 単独であれだけのメガへクス達を蹂躙するとは。

 

「えっと、それで大丈夫ですか?」

 

「あっ・・・ああ。助かった。重傷者がいて・・・。」

 

 地球にこれだけの戦士がいたなんて。

 

「・・・・あっ。」

 

 そこで思い出す。父の故郷の星、そしてこの国にいる伝説の戦士。

 

「SAMURAI・・・。」

 

「へっ?」

 

「そうだ!!あんたもしかしてあのSAMURAIか?」

 

「えっと・・・。」

 

 この国の伝説の戦士。そのNIHONNTOUと呼ばれる剣一本で奇跡を起こすという・・・。

 

 子供の時に父が自慢げに話していたけど…本当だったんだ。

 

 剣一本でまじで奇跡を起こしていたし。

 

 SINOBIもいるのだろうか?

 

「・・・・・・なんだろう、微妙に正解な部分もあるから否定しにくい。」

 

――――まあ…ある意味今やSAMURAIだわな。

 

「そこが特に否定できない。はあ、何時の間にか人外になったな…僕。」

 

 感動だ。宇宙刑事やってよかった!!

 

 これがこの星の神秘ってやつか?

 

「うう・・・。」

 

 って、鉱太のこと忘れていた。

 

「悪い、船を降ろしたい。どこかにいい場所は・・・。」

 

「あっ、それなら・・・うん・・・真下から格納庫が開くからそこに着陸を。」

 

 格納庫?

 

 モニターを出すと真下の広大な土地の一部が開く。

 

「・・・・・・・・・。」

 

 秘密基地だと・・・この地球に・・・?

 

「そうか・・・これが父の故郷。神秘の国・・・JAPANか・・・。」

 

 父の言っていたことって本当だったんだ。

 

 今度話してあげよう。

 

『だから微妙に否定しにくい誤解はやめてくれないか!?』

 

 何故突っ込まれないといけない。

 

 訳の分からない現象・・・つまり、神秘にある溢れているじゃないか。

 

 そのツッコミが三人同時?

 

 鉱太達からもツッコミがきたぞ。

 

「あいたたたた…傷が開いて・・・。」

 

 怪我している割には律儀だよな。

 




 微妙に否定しにくい誤解ほど厄介な物はない。

 私はそれを落第騎士より学びました。あれは厄介すぎる。

 愉悦ですがね。

 もう一話投稿します。

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