刹那の軌跡 【完結】   作:天月白

41 / 86
第3話 時間仕掛けのお人形

「どうしてこうなった……?」

 

アルクェイドは自分の今の状況を考えてそう口にした。

彼は何故か正座させられていた。

彼の目の前にはイリア・プラティエが立っていた。

彼女の後ろに見えるのはシュリ・アトレイドにレン・ヘイワース、そしてティオ・プラトー。

 

「ねぇ、聞いてる、アルクェイド?」

 

イリアの言葉を右から左へ聞き流しながら、この場に到るまでの経緯を考えていた。

誰かの墓参りに行ってから3日後、アルクェイドはクロスベルへと戻ってきていた。

眠い頭を動かしつつ、陽の明るさに目を細めながらウォークスに跨って東門を潜り抜けた。

そのまま旧市街の方へ歩き、メゾン・イメルダに戻って行く。

そして、階段を登り扉を開いた。

そこには、仁王立ちしているイリアの姿があった。

アルクェイドは彼女がここにいることに怪訝に眉を顰めて言う。

 

「どうしてここに居るんだ?」

 

彼女の後ろにはいつの間に持ち込んだのか、ソファとテーブルが置かれている。

まるで何処かのエントランスのようだ。

そのソファに座っているのがシュリ、レンにティオだった。

テーブルの上には四人分のティーカップに多少の菓子類。

カップの数を見る限り、イリアも彼女たちに加わっていたのだろう。

階段を登る音で誰かが来たことを悟り、ここに来るのは彼女たち以外でアルクェイドくらいだと判断して待ち構えていたようだ。

そして、そこから何故か説教になったわけだが……

 

「どうして俺が説教されねばならんのだ?」

 

そこがどうしても分からずにアルクェイドは首を傾げる。

 

「どうしてって……

 シュリを一人にしてほっつき歩いているのが問題なのよ」

 

「別に問題はないだろ?

 家も与えた、ミラも渡してある。

 アルカンシェルでやることもある。

 何も問題ないじゃないか」

 

「あんたね…………」

 

こいつは本気で言っているのかとイリアは怒りを通り越して呆れ果てていた。

普通に考えれば、まだ幼いとも言えるようなシュリを一人で残しておくのは問題だろう。

だが、それはあくまで世間一般での話だ。

アルクェイドは物心付くと言うよりも、ヨルグに拾われてからはまともな生活送っているとは言えない。

アルクェイドが覚えている最古の記憶は何かを作っているヨルグの背中だ。

寡黙で、時間があれば何かを作っているような彼を見て、アルクェイドは育った。

遊びに連れて行かれたことも、外食に連れて行かれたことも、褒められたことも、ない。

幼い心なりに人と繋がりを求めて、ヨルグと同じようなことをして関わうとした。

そして、蛇という組織を知り、組織で行動をした。

つまり、ここまでのアルクェイドの歩みというのは、極端に言えば、血と銀しかないのだ。

それを知っているレンは少しだけ寂しそうな目をしている。

イリアの背後にいる三人も、途中からそれを失ったとはいえ、家族というものを知っている。

別にアルクェイドも知らないというわけじゃないだろうが、父親(ヨルグ)との関わり方が特殊すぎるのだ。

その結果、こうなってしまっている。

端的に言えば、アルクェイドの家族観がずれているのだ。

 

「別におかしくはないだろう?

 あいつにもやりたいことがある。

 ならば、それをやらしてやればいい。

 もし、それに迷うようならば話を聞くし、意見もしてやる。

 俺はシュリがやりたいことを後押ししてやるだけだ」

 

アルクェイドはきっぱりと自分の考えを述べる。

確かに彼の言うことも最もである。

 

「はぁ……………」

 

イリアはもう半分諦めていた。

アルクェイドの言うことは間違ってはいない。

間違ってはいない、と言うだけではあるが。

如何せんそれをシュリにするには早すぎる。

それをどうしたら彼は理解するのかとイリアは頭を悩ませた。

 

「とにかく、取り敢えず毎日ここには帰ってきなさい。

 今はそれだけでいいわよ」

 

「了解した」

 

いまいち彼は納得していないのだが、イリアに反抗するだけ無駄だと思い頷いた。

少なくともアルクェイドは約束を違えることはない。

イリアはそれを知っているから今はそれでいいと納得した。

 

「で、だ。

 お前たちは何をしているんだ?」

 

アルクェイドは正座から立ち上がり、未だにソファに座り駄弁る三人に問う。

全員顔見知りではあるが、こんな風に所謂お茶会をしているイメージはなかった。

ちなみに、レンが事ある事に開くお茶会ではないことは明白だ。

 

「あら、見ての通りお茶しているのよ」

 

出来るだけ高い位置からポットを傾けてカップへとお茶を注いでいく。

ポットから出る紅茶がまるで吸い込まれていくかのようにカップから溢れずに注がれていく。

身に着けているスミレ色のゴシックドレスとも相まって、その様は実に優雅だった。

そして、レンはそれをアルクェイドへと差し出した。

アルクェイドは何も言わずにそれを受け取り、口に含む。

 

「悪くはないな」

 

一口飲んでそんな感想を言う。

そして、菓子類に手を伸ばしてビスケットを掴んで口に放る。

それをサクサクと噛みつつ階段を降りようとそちらに向かう。

アルクェイドは階段を降りていくと最奥にある自分の部屋へと入る。

前の状態からかなり改装されていて、更に奥の空間へと続く道は改装でひとつの部屋と化していた。

入ってすぐ側にある机に空になったティーカップを置き、工具の入ったベルトバッグを掴む。

それを腰につけて一つの工具を掴んでクルクル回しながら細工の素材が置かれている場所に近づく。

いつもアルクェイドが作るような銀細工の素材ではなく、オーバーマペットの様な機械的な素材だ。

その素材の側には幾つもの製作途中の物が並べられている棚が見える。

その中で一際目を引く物がある。

それは下半身のみの小さな機械人形(マペット)と思える物だった。

大きさにして下半身のみで子供の膝位の高さ。

今はないが、上半身も合わせると恐らく腰までの高さだろう。

それの色合いは黒を基調にピンク色がアクセントとなって、良い色具合に染められていた。

機械人形が重しのように足の下にはメモ書きで一言だけ書かれていた。

恐らくソレが、この機械の名前なのだろう。

一言、M&R=Schwester(シュヴェスター)と書かれていた。

アルクェイドは素材の山から適当な物を掴むとそれを一度分解して、望む物へと作り替えていく。

一見設計図と思わしき物も彼に周りに見当たらないにも関わらず、彼は無心に組み替えていく。

設計図を既に全て覚えているのか、それとも元からそんなモノ(設計図)など存在せず、感覚のみで作り上げているのか。

彼は立ったままで、手を動かしつつも足で一番近い椅子を手繰り寄せてそれに座る。

キャスターの付いた椅子は彼の意志で音を立てながら横に広い机を右へ左へと忙しなく動いている。

アルクェイドはずっと手の中にある物に視線を向けたままで、手だけで欲しい物を掴んで分解し、作り替えていく。

 

「速い………………」

 

そんなアルクェイドの姿を背後から眺めていた彼女がそう呟いた。

彼女とて、己の得物のメンテナンスが出来る程度にはエンジニアの技術を囓っている。

無論、一から創るのと修復や改良では、全然違うのは理解している。

それでも、機械の調整等の技量というのは見れば分かるくらいの自負があった。

速さだけが技量ではないと彼女は理解している。

彼が椅子を動かす時に微かに見えるソレはとても丁寧で、まるでそうなることが当たり前の様に見えるくらい完成度が高い。

仮に彼女が途方も無い時間をかけて同じような物を創った所で、彼のには足元にも及ばないのが簡単に予測できる。

故に、自らの立つ場所の位置を理解していたからこそ、彼女はアルクェイドの見えている世界がとても気になった。

彼女は自らの得物の性能を最大限に引き出し、満足に使いこなせていないことを知っていた。

こないだの機兵を見て理解していた。

機械で有るが故のその恐ろしさの片鱗を感じ、己の得物だけでは対処できないことを。

オーバーサイクルの構造を見た時もそうだった。

そんな力の使い方の考えも思い付きもしなかった。

自分と目の前の彼との差は何なのかと思った。

技術、発想、頭の柔軟さ、目の付け所、etc……

つまるところ、圧倒的に経験が足りていないのだ。

彼女はそういう結論を出した。

とはいえ、それも当然だろう。

触り程度とはいえ、彼の境遇を聞いた限り、彼女が物心付く前から彼は制作というモノに触れてきていた。

彼の人生の大部分を占める制作に迫るにはどうすればいいのか。

その問題に彼女は至って簡単な解答を出した。

そして、それをアルクェイドに伝えようと一歩踏み出した時だった。

 

「ア〜ル〜」

 

アルクェイドの背中にレンがダイブした。

その衝撃で結構大きな椅子の軋む音がし、彼の体もそれなりに前のめりになった。

 

「おい、レン」

 

それでもアルクェイドの視線は手の中の物へと注がれていた。

はしゃぐレンに、それに対して呆れつつ対応するアルクェイド。

 

「お茶会はどうした?」

 

「イリアとシュリがアルカンシェルに行ったからお終いよ」

 

「そうか」

 

ティオのことは背後に居ることを知っているのか問うことはなかった。

 

「何を創っているの?」

 

アルクェイドの首に腕を回してぶら下がりながら彼に問う。

傍から見ていて彼の首が閉まらないのか気になってしまうような光景だ。

 

「今は内緒だ。

 そのうち分かるさ」

 

「イケズ」

 

頬を膨らまして彼の返答に拗ねた態度を見せるレン。

アルクェイドは一連の流れに呆れつつも、微かに口元を緩めていた。

だが、それは誰からも見えない。

もっとも、それを理解しているからこそ、彼は微かに緩めてしまったのだが。

アルクェイドは輪っかとなっているレンの腕を掴んで持ち上げて首から外す。

話しかけるタイミングを逃してしまったティオはその光景を唖然と眺めるしか無かった。

 

ーあんな風にわたしも出来たらどれだけ楽かー

 

そんな意味のない願望を抱いてしまうほど、レンの態度が羨ましく感じてしまった。

無論、それ故のデメリットも存在しているのだが、それが気にならないくらい、メリットに頭を奪われていた。

アルクェイドに引き剥がされても尚も絡むレンにため息を吐いて、彼は手の中の物を置いて向き直る。

背凭れに体を預けて机の上に肘を置く。

空いた手を組んだ足の上に乗せて呆れた目でレンを見ている。

 

「一体どうした?

 今日はやけに絡むじゃないか」

 

アルクェイドはいつもならば、彼が何かしらを創っている時は言葉のみで絡むことが多い彼女を不思議に思って問い質す。

それは彼がレンに何かあると判断するには十分だった。

 

「後で付き合って欲しい事があるの」

 

普段の様に茶化したように言い回しと無理強いする様に手を引っ張ったりするような行動をせずに、正眼にアルクェイドを捉えてレンは言った。

アルクェイドもいつものようなお願いではないことを察して少しだけ目を細めてレンを見る。

 

「分かった」

 

彼らはしばらく視線のみを交わしていた。

そして、眼を閉じてアルクェイドはそう言った。

アルクェイドは目を開くと視界の隅に捉えていたもう一人へと視線を向ける。

 

「お前も何か用か?」

 

ずっと何も言葉を発することがなかったティオに声を掛ける。

部屋に入ってすぐの場所から一切動いていない彼女に声を掛けるが返答はない。

見た限り、言おうか否か迷っているようだった。

口を開いて何かを言おうとしてはすぐに口を閉じて微かに動かしたりしている。

アルクェイドはそれを問い詰めようとはせずに、彼女が言うのを待っている。

レンも空気を呼んでアルクェイドから離れて、遠巻きに彼らを眺めている。

 

「わたしに……」

 

ようやくティオは言葉を発した。

 

「わたしに機械人形(オーバーマペット)を下さい!」

 

大きな声で勢い良く頭まで下げた。

アルクェイドはその言葉の意味をすぐに理解できなかった。

ティオが出した結論は機兵や魔導杖(オーバルスタッフ)を含めた機械の最大限活用だった。

数日前のヨアヒム・ギュンターに因る騒動が原因だった。

その時に見た機兵の能力や統率力。

それをたった一人で操作していたアルクェイドの力は異常なほど強い。

そして、巨大人形兵器も姿のみだが、そんなモノを操るという事実が、彼女にその結論に至らせた。

ティオとしてもあの事件の時に実力不足だったのは痛感していた。

アルクェイドがいなければ、ヨアヒムに勝つことさえ出来なかっただろうと。

これまでのレンの意味深な台詞が幾度と有ったことを思い出す。

恐らく、グノーシスに因る感応力の強化。

それが一因をになっているのだと考えた。

ならば、自分にもそれなりに出来るのではないかと思ったのだ。

オーバルスタッフやエイオンシステムだけでもそれなりに強くなれるだろう。

だが、それでは足りないとティオは考えた。

ならば、それ以外に因る成長へのアプローチが必要で、アルクェイドの持つ機兵ならばそれが出来ると答えを出した。

 

「巨大人形の方か、機兵の方かどっちだ?」

 

アルクェイドはレンの時よりも目を細めて、まるで睨んでいるかのような眼光でティオを見つめる。

ティオの真意を探ろうと見据えているのか、それとも何かを見極めようとしているのか。

 

「機兵の方です」

 

その目に怯まずにアルクェイドの目を真正面から見返す。

アルクェイドはその目に宿る意志を強く感じようと更に強く目に力を入れる。

その圧力故に、ティオの顔には冷や汗が表れ始めていた。

蛇に睨まれた蛙のように動けないような錯覚に陥るほど、体の奥底まで見通されているようなプレッシャー。

それでも、彼女は彼の目から欠片も逸らさない。

 

「――――いいだろう」

 

熟考。

数分にまで及ぶ長い沈黙の後で、アルクェイドは口を開いた。

ティオの目から感じた様々な意志とその想い。

誰もが目を逸らし、記憶の彼方からも抹消したいほどの記憶に立ち向かうという事実を理解して尚、ティオはその意志を曇らすことはなかった。

故に、アルクェイドはそう答えた。

目を逸らし、現状維持のままの過去ではなく、昇華し前へ進むために力を手に入れるために受け入れ踏み台にする覚悟。

それは、今まで以上に彼女を苦しめることだろう。

それでも、彼女はこのままの現状が歯痒かった。

 

(最初と最後には注目していたほうが良さそうか)

 

これまでの経験からアルクェイドはティオの修行に一抹の懸念を抱いた。

最初は勿論暴走の危険性、最後は覚悟を。

 

「3日後、受け取りに来るといい。

 お前専用の機兵を用意しておこう」

 

「ありがとうございます」

 

アルクェイドの言葉に丁寧に頭を下げる。

それを見届けると、アルクェイドは椅子を回転させて机へと向き直る。

話は終わりだと、アルクェイドの意思表示だった。

アルクェイドは先ほどの創りかけの物を片付け始めた。

ティオ専用の機兵の制作に取り掛かるのだろう。

レンもティオもそんなアルクェイドの姿を少しの時間眺めていた。

薄暗いその空間の上方で、微かに紅い光が煌いたような気がした。

それはまるで目のような形で、二つの光だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱりリーシャみたくスタイル良くないのダメなのかしら?」

 

自分の胸を手で覆いながらレン・ヘイワースは先程のお茶会の現場で呟いていた。

 

「どうでしょうか、少なくともわたしにもそういう興味は見せてはいないですが」

 

それに答えるのは同じような体型をしているティオ・プラトー。

こちらも同じように自分の体型を見下ろして重苦しい溜め息を吐いた。

 

「どうしたら大きくなるのかしら?」

 

「分かりません」

 

同じ悩みに悩む二人は素っ気無い態度を取り続ける男の姿を想像しながら想いを馳せる。

 

「あ、もしかしたら……………………」

 

「どうしました?」

 

微かな希望が見えたような声を上げたレンの発言にティオが首を傾げる。

 

「エステルから聞いたんだけどね。

 揉んでもらったら大きくなるって言ってたの」

 

そんな信憑性に欠ける提案を彼女は出した。

 

「本当にそれでなるのでしょうか?」

 

ティオの疑問も当然だろう。

だが、他にいい提案も無いのもまた事実。

彼女たちの心境は、藁にも縋りたいほどだった。

 

「でも、自分で揉んでも効果が有るのでしょうか?」

 

「エステルが言うにはね。

 好きな人にしてもらうといいんだって」

 

レンのその言葉に二人はとある男の姿を思い浮かべる。

仮にその男に頼んだ所で、もはやソレは告白と同義なのだが、彼女たちはその問題すらも気にならなかった。

そのことよりも、切実ということなのだろうか。

 

「まぁ、それはあながち間違いではないな」

 

「そうなの?」

 

「ああ、科学的に言うならば、好きな奴が近くに居れば恥ずかしいというか緊張するというか、ドキドキするだろう?」

 

「ソレは確かに……」

 

「その時に恐らく女性ホルモンが出ているだろうから、そのおかげでより女性らしくなることは有り得る」

 

「なるほど、確かにまるっきり嘘というわけではないよ……」

 

そこで二人は誰かが会話に混ざっていることに気づいた。

そして二人はその誰かの声がする方へ錆びついた扉のように軋む音が聞こえそうな動きでそちらに顔を向ける。

 

「それで胸が大きくなるという確証は無いがな」

 

「アル!?」

 

「アルさん!?」

 

誰かが誰なのか理解すると二人は驚愕の声を上げる。

その声の大きさにアルクェイドも微かに驚いて少し目を大きく開く。

 

「い……一体、いつから……?」

 

「ティオ・プラトーが自らの体を見下ろし始めたくらいからだな」

 

「かなり最初じゃないですか……」

 

ティオはまるで絶望に陥ったような顔をする。

 

「というかだな」

 

彼はそんな彼女たちに励ますような声を掛ける。

 

「お前たちは体型的には年齢相応だろうが。

 これから成長する場所が小さくても、むしろ当然だろうが」

 

未だ10代前半の彼女たちは体型的には異常はない。

アルクェイドの言葉はもっともだった。

彼女たちはこれから成長する可能性はとても大きい。

まだまだ、体型で悩むには早過ぎる年齢だ。

 

「レンちゃんはそうかも知れませんが、わたしは危機感抱いてもいいと思います」

 

ティオはぺたぺたと自らの胸辺りを手で触りながらそんなことを言う。

それに対してどう言ったものかと、アルクェイドは後頭部を掻く。

 

「まぁ、大事な成長期を教団で過ごしていたからだろうな。

 レンもそうだったが、被験者はどいつもこいつもやつれてまともな栄養など取れなかっただろうしな」

 

ヨアヒムの持っていたファイルの写真でもそうだったが、被験者は誰もが細くやつれていた。

体重も資料見る限りでは、餓死寸前の状態に近いものだった。

そんな状態ではまともな成長など望める見込みなど無い。

 

「つまり、レン達の体が貧相なのは……」

 

「教団が原因だということですか……」

 

悩める乙女から、一転して大きく肩を震わせる彼女たちに気押させれて、アルクェイドは微かに後退る。

 

「……あ、ああ、恐らくな」

 

そんな彼女たちになにか言葉をかける事を恐れて、アルクェイドは短く肯定することしか出来なかった。

 

「教団許すまじ!」

 

「教団殲滅!」

 

「乙女の敵です!」

 

「…………………」

 

怒りの拳を振り上げて高々と宣言する二人の前にアルクェイドはもう何も言えなかった。

彼が思うことはただ一言。

 

ー女って怖いなー

 

アルクェイドは体型の為に狂信宗教撲滅謳い上げる彼女たちを見ながら、そんな事を思っていた。




後半は少しだけ遊んでみました。
物語に関係は余り無いですが。
まぁ、こんなことも有ったという日常。
多少の遊び心もないと面白く無いですよね。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。