刹那の軌跡 【完結】   作:天月白

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最後のほうでちょっとだけ遊んでみました。
ロイドはいじくり回さないといけませんよね。
ロイド爆発しろ。


第31話 機械仕掛けの想い

アルクェイドは転がっている機兵とアインヘリアルに指令を与え、機兵は工房へ、アインヘリアルはメゾン・イメルダへ戻っていった。

 

「これでこの辺の機兵は大丈夫か」

 

「結構壊されちゃったけど大丈夫?」

 

「動けないのは動けるのが拾って帰るようになっているから問題ない」

 

入り口に転がっている機兵の中で腕がもげた機兵なども自分の腕を探し、持てないなら他の機兵が拾う。

そして、全て揃うと隊列を組んで動いていった。

 

「ここまで見事な統率は見たこと無い。

 これが本物の軍隊だと思うとゾッとする」

 

リーシャは少しも乱れない機兵の隊列を見て、感嘆の声をあげる。

 

「蛇という組織は何処までの力が………」

 

彼らの所属する組織の力の片鱗を垣間見た彼女は身震いをした。

 

「ふふ、流石にこれが出来る機兵はアルしか持っていないわ。

 他のはこういうことは少しも出来ないわよ」

 

アルクェイドの凄さを語るのが嬉しいのか、そう言うレンは楽しそうだ。

 

「いいの?

 私にそんなことを言ってしまって?」

 

身内でもないリーシャに言うことを危惧して彼女はレンに言う。

 

「あら、優しいのね。

 でも大丈夫よ、私はもう蛇に所属していないから」

 

「なら、これからどうするんだ?」

 

この間、アルクェイドがレンに与えた選択肢。

一つは蛇に戻るという選択。

それをレンははっきりと否定した。

 

「そうね、パパとママのところに行くか、エステルとヨシュアのところに行くかはまだ悩んでるけど、蛇には戻らないわ」

 

「そうか」

 

それがレンの選択というのならば、アルクェイドはソレを後押しするだけだ。

なんでもないように言う二人に、リーシャは少しだけゾッとしていた。

勝手に組織を抜ける。

それが許されるということに、組織に寛容であると言うよりも、得体のしれないという感覚がしていた。

 

「で、貴方はどうするつもり?

 まさか、その格好のまま支援課に会うつもり?」

 

「あ…………」

 

レンに言われてリーシャは自分の格好を思い出す。

このままアルクェイドたちと行けば、必ず今の服装について問われるだろう。

まさか舞台の衣装というわけにもいかないだろう。

そのような嘘は後に必ずばれる。

かと言って、銀になることも叶わない。

普段の格好に戻ったとしても、このような状態の街を彷徨いていたと言うわけにもいかない。

 

「どうしよう…………」

 

名案が思い浮かばずにリーシャはオロオロし始めた。

 

「確かこの辺に……」

 

「おい、いきなり何してる」

 

そんなリーシャを見て、レンはアルクェイドのコートの内側に顔を突っ込んだ。

 

「これでもないし、コレでもない」

 

レンはコートの中からナイフ、鎖、アクセサリと色々出してくる。

 

「あ、あったわ」

 

「いい加減にしろ」

 

アルクェイドは何かを見つけたレンの襟首を掴んで引き上げる。

レンの手には犬を表現した仮面を掴んでいた。

 

「何だそれは……

 そんな物を入れた覚えはないぞ」

 

自分が入れた覚えがない物が出てきてアルクェイドは眉を顰める。

そして、それをリーシャに向けて差し出す。

 

「これを着けていたら大丈夫でしょ」

 

「え、ええ……」

 

「待て、おい」

 

レンの頭を鷲掴みして、自分の方に向けさす。

 

「俺はそんな物を入れた覚えはないし、なぜお前が知っている?」

 

「ほら、仮面つけてるからたまにコレと間違うかなぁって……」

 

アルクェイドは冷たい目でレンを見下ろす。

 

「つまり、俺で遊ぼうとしたと?」

 

「そ、そうとも言うわね」

 

アルクェイドに対しての悪戯は初めてではない。

それどころか、暇を見つければ何かをしていることが多い。

アルクェイドはレンの悪戯に引っかかったことはないし、それで呆れはしてもちゃんと相手していた。

なのに、今のこの悪戯は今までにない反応だった。

 

「まぁ、いいがな。

 もうするなよ」

 

左手でレンの頭を掴んで、少し髪をガシガシと乱す。

そして、アルクェイドは先に歩き出した。

 

「うー、髪は女の命なのにっ」

 

叱られた少女はやや涙目になりながら乱れた髪を整える。

リーシャはそんな彼の後ろ姿を眺めていた。

 

「前あった時よりも、少し変わったな……」

 

クロスベルで最初に出会った時よりも、何処か変わった気がしていた。

 

「そうね……

 でも、今のほうがらしい気がするわ」

 

「らしい……か」

 

ずっと彼と一緒にいた彼女がそう言うならば、あながち間違いではないのだろう。

そう思った時、リーシャは気づいた。

 

―やっぱり変わってないな……ケイ君だった時のままだ―

 

自分を良くも悪くも変えてしまった幼少期の彼の姿のままだと。

いつも引っ張りまして先に歩いて行く姿と、今の姿が重なった。

 

―あの時、自分が思っていたことは何だったかな?―

 

連れ回されていた時に感じた思いは一体何だったかと、少しだけ考えたが思い出せなかった。

だが、それに対して悲しい気持ちはなかった。

ただ、少しだけ残念だと思った。

 

「はい、これ」

 

リーシャはレンから仮面を受け取って着けようとした。

その時に、レンとリーシャは目が合った。

 

「ふふふ」

 

自分たちがどういう関係なのか気づいた彼女らは互いに笑い合う。

リーシャは仮面を着けて前を歩くアルクェイドを追いかける。

それにレンも続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁはぁ……」

 

「くそっ……」

 

IBCに逃げても機兵が止まることはなかった。

むしろ、逃げ場がないという意味ではより悪くなってすらいる。

 

「後……何体ですかっ?」

 

目の前に積み上げられていくガラクタとなった機兵。

その上を越えてさらに多くの機兵が近づいくる。

 

「さぁな……

 休む間すら与えてくれやしねぇ」

 

すでに疲労困憊となりながらもそれぞれに武器を構えて立ち上がる。

 

「え、止まった?」

 

だが、全ての機兵が動くのを止めた。

そして、積み上げられた機兵が動き始めた。

壊れた部分を拾い、壊れていない機兵も動き拾い始める。

 

「一体何が……」

 

機兵は支援課に向かって動くのを止めて、道の両脇に隊列組んで真ん中に通り道を作る。

そこから歩いてくるのが三人。

一人はアルクェイド・ヴァンガード。

一人はレン・ヘイワース。

最後の一人は何故か犬の仮面を着けていた。

アルクェイドは機兵の列の中央らへんで片手を上げて横に振る。

それだけで、全ての機兵が一斉に後ろを向いて歩き始める。

 

「まるで、軍隊じゃねえか……」

 

ランディはその光景を見て呟いた。

イェーガーに所属していた彼はこの機兵の行動の恐ろしさを真に理解していた。

死を恐れないどころか、一部を壊したところで動くことを止めない兵隊。

しかも、壊れたと思っていた機兵は実は動けていた。

下手に一部だけ壊して安心していたらいきなり動き出すことだろう。

 

「正気に戻ったのか」

 

「まぁ、正気というかなんというか……」

 

ランディにそう言われて曖昧にしかアルクェイドは答えることが出来なかった。

別に意識がなかったわけではないし、していたい行動をしていたのも事実。

とはいえ、操られていたことも事実。

 

「とにかく、お前たちの敵ではないさ」

 

アルクェイドは取り敢えず、その結論を出した。

 

「それよりも……」

 

ティオはアルクェイドに目をやってから、横の犬の仮面を着けた人物に目をやる。

 

「誰です?」

 

微妙に敵意を持ってティオは彼女を見ていた。

 

「えっと、その……」

 

突っ込まれるとは思っていたが、敵意まで持たれるとは思っていなかったリーシャは戸惑った。

咄嗟に良い言い訳が思い浮かばずに口吃る。

 

「そうね。

 昔からアルと知り合いで、クロスベルで再開した裏世界で生きてきた一人よ」

 

「まぁ、間違いではないな」

 

レンの微妙な説明にアルクェイドは苦笑する。

 

「なんで面を着けてるんだ?」

 

「ほらほら、お前らがほしい情報はそういうのじゃないだろ」

 

支援課四人からの興味を外すために、アルクェイドは彼らの方に進む。

 

「取り敢えず中に入れてくれ。

 傷の手当もしたい。

 お前らも疲れてるだろ」

 

「そいつには同意だな」

 

「ええ、流石に限界だったし……」

 

「拒否する理由はありません」

 

「一つだけ聞かせて貰う」

 

他の三人が同意する中で、ロイドだけはアルクェイドの目を見て問う。

 

「キーアを狙うことはもうしませんか?」

 

「それを含めて説明する。

 俺がアイツを攫うことはしない」

 

アルクェイドの言葉にロイドは安堵する。

支援課と三人はIBCビル内へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

「さて、この事件の首謀者は予想しているだろうが、ヨアヒム・ギュンターだ。

 アイツはキーアを執拗に確保しようと躍起になっている。

 その為に、ここ数日クロスベルでグノーシスという薬剤を使用している。

 効果については説明するまでもないだろう」

 

気怠げにソファに座ってアルクェイドは現状と彼らに情報を開示する。

その間にもアルクェイドは自身の傷を軽く手当している。

支援課の四人は各々武器の手入れや休息に務めている。

 

「ヨアヒムの潜入先は古戦場―太陽の砦だ。

 そこにはルバーチェの構成員も一緒にいる。

 俺が駒として使えていたから使ってはいなかったがな」

 

「アレだけの機兵を使える貴方が操れるなら不要でしょう」

 

先程まで戦っていた尋常じゃない数の機兵を思い浮かべて、ティオは言う。

統率力、数、武力、何をとってもルバーチェの構成員とは兵力という面では圧倒している。

 

「ねぇ、アル」

 

そこで、疑問が浮かんだのかエリィが口を挟んできた。

 

「貴方はどうしてグノーシスを摂取したの?

 少なくとも、自らそういうものを求めるとは思えないし、無理矢理呑ませたとも思えない」

 

それは至極当然の質問だった。

支援課はグノーシスを呑むことで操れると思っている。

それは間違いではないし、少なくともルバーチェや警備隊は呑まされている。

ならば、先程まで操られていたはずの彼はどうして操られていたのか?

何よりも、どうして今は操られていないのか?

その疑問にぶつかるのは当然だ。

 

「あー、やっぱ気になるか……」

 

どう説明したものかと、アルクェイドは後頭部をガシガシと掻き乱して言い淀む。

何か誤魔化せないかと、辺りを見渡していたら、ティオとレンと目が合った。

 

「……昔、ティオ・プラトーを助けたことはもう知っているとは思う。

 その時に、グノーシスの基となった薬物を投与されていた子供に襲われた」

 

「わたしと死神が見ていたときのことですね?」

 

「そこまで覚えているのか……で、だ。

 その子供から多少なりと傷を負ったのだが、その時に成分が相手の血と共に俺の体内に入ってな。

 それで、多少なりと操れるようになった、と言う訳だ」

 

嘘を付くならば、多少の真実を混ぜて、よりそれらしく仕立て上げたほうが嘘っぽくない。

如何にそれが荒唐無稽でも、真面目に語れば嘘にはならない。

後はそれがぶれなければ問題ない。

 

「それで、今操られていないのは?」

 

「それは、レンとそいつに助けられてな」

 

そう言って、アルクェイドはレンと仮面をしているリーシャを見る。

 

「蛇にもいろんな薬物がある。

 身体強化(ドーピング)に、自白剤、催眠剤、etcetc。

 その中にはグノーシスの成分と反応して対消滅するモノがあったんだ」

 

無論その時には苦痛があるがな、とアルクェイドは補足する。

微妙に蛇という組織を知り、そういうものが有ってもおかしくないと思える程度には彼らは信じていた。

そこで、微かにアルクェイドは部屋の隅の方にいるキーアに目を向ける。

だが、それも一瞬で、誰も気づかない。

 

「と、俺が知っているのはそこで終わりだ。

 それで、お前たちはどうする?」

 

「勿論、彼を止めに行く」

 

分かりきっていた答えを聞いてアルクェイドはソファに深く凭れる。

 

「そう時間を空けることは出来ないだろうが、少しは休息しとけ」

 

「ああ、分かっている」

 

ロイドが頷くと見ると、アルクェイドは目を瞑り、規則的な寝息が聞こえ始めた。

 

「やっぱり無茶していたんだな」

 

「そうね、操られていたのもそうだけど」

 

「あの機兵を一人で統率して」

 

「体は傷だらけでボロボロです」

 

ロイドたちは見るからに疲弊しているアルクェイドを見て言う。

すぐにでも体を休めたいのを我慢して、ロイドたちに情報を渡した。

伝えるだけなら彼でなくてもいいのだ。

レンでもいいし、リーシャでも良かった。

だけど、それでもアルクェイドは自らの口で支援課に伝えた。

ならば、その心意気を彼らは汲んでやらねばならないのだ。

 

「休息もそうだけど、しっかり準備していきなさいよ?

 アルが操れないことに気付いたら今度はルバーチェを使ってくると思うわよ」

 

「ああ、分かっている。

 みんな、休息と準備を含めて二時間後、エントランスに集合だ」

 

ロイドのその言葉にみんなは頷くと各々は散開した。

それから45分は経っただろうか。

アルクェイドは目を覚ました。

ソファから立ち上がると硬くなった体を解すために伸びをする。

アルクェイドがエントランスを見渡すと、向かいのソファにはレンが寝転がってエニグマ=Mを弄っていた。

彼らが居る場所よりも少しだけ離れたソファにはオーバルスタッフを整備しているティオとロバーツ所長。

その側にはランディが寝転がって休息していた。

リーシャは外からの月明かりを浴びて、手には歪な銀片翼の鎖を持って月明かりに反射して煌めいていた。

エントランスにはロイドとエリィの姿はなかった。

気配を察するには、エリィはエントランスの真上、ロイドはやや斜め上だった。

エリィは所謂エレベータホール、ロイドはディーターと共にいるようだ。

アルクェイドはそのままカウンターに向かう。

そして、コートから携帯端末を取り出すとIBCの端末に接続する。

IBCとの契約にあるデータを採集していると、少しだけ奇妙な動きが読み取れた。

 

「ん?」

 

誰かが、監視カメラや放送機材を操作しているようだった。

 

「こんな状況で誰が何のために?」

 

アルクェイドはその操られているカメラの映像をハッキングして携帯端末に映しだした。

 

「何をしているんです?」

 

ティオが背後から覗き込んでいた。

その後ろにはランディとレンの姿も見えた。

 

「いや、面白いことが起こっているなと」

 

「どれどれ?

 コレは……お嬢が映ってるじゃねえか」

 

「これはこのビルの最上階ですね。

 ロイドさんがやって来ましたね」

 

手すりに手をやって立っていたエリィの背後からロイドがやって来た。

 

「何かしゃべっているようだが、聞こえないな」

 

「カメラですので、流石に音声までは……」

 

ランディの呟きにティオが答える。

 

「なんで貴方はそんな風に私のことが分かっちゃうのかしら?」

 

「レンちゃん、分かるのですか?」

 

「なんとなくだけどね」

 

唇の動きから会話を察したレンが言うと、回りは驚きを隠せなかった。

 

「でもコイツはいいぞ、面白くなってきた」

 

心底面白可笑しそうにランディは笑っている。

 

「続きを言うわね。

 ……考えて見れば不公平よね。

 私はもう……色々な物を貴方に曝け出してしまった」

 

レンはエリィの声を代弁する。

ロイドの口はこのカメラから見えないために代弁できない。

 

「ほっほう。

 なかなかやるじゃねえかロイドも」

 

「エリィさんにこんなこと言わすなんて相当なタラシですね」

 

ランディはこの展開にテンションが上がってきたようだ。

ティオは呆れたようにジト目でロイドを睨む。

 

「俺は兄貴に憧れていたんだ。

 でも、俺は兄貴の様に守れる自信は無かったんだ。

 だから、俺は知らない街に逃げ出したんだ」

 

ロイドが動いて口元が見えるようになり、レンはロイドの声も代弁する。

それはガイ―彼の兄に対しての思いだった。

 

「ロイド……」

 

憧れるものが消えるという現実。

それは一体どんな気持ちだったのだろうか。

家族としても、人生の先輩としても、そして目指す理想の喪失。

 

「ロイドさん……」

 

先程までのように茶化すような空気はない。

 

「兄貴ならどうするだろうか。

 兄貴ならどう考えるだろうか。

 そう考えて行動してきたんだ」

 

理想になりたいがために理想に当てはめて行動する。

その辛さはレンには痛いほどに理解できた。

それに対応する人格を産み出して行動するというのは楽であり、無理していること。

自分を無視して行動するのはとても辛い。

それは言ってしまえば自己否定になってしまう。

みんなそれに折り合いをつけて生きている。

だが、それが度を過ぎれば壊れてしまうことは明白。

そんな無理な生き方を吐露したロイドにエリィは後ろから抱きついた。

 

「おおおおおおお!?」

 

それを見た瞬間、再びランディのテンションが一気にあがった。

 

「私はあなたのお兄さんを知らない。

 でも、私達を率先して引っ張ってくれていたのは他ならぬ貴方自身なのよ」

 

それは誰でもない、ロイド自身を認める言葉。

 

「誰でもない、ガイさんでもない、貴方だから私達を導くことが出来た」

 

「え……」

 

「日曜学校で出会っていたら良かったな………」

 

自分を認められるという感覚がロイドの中に浸透していく。

 

「自信を持って、そんな貴方だから私達―私は好きだから」

 

「おい、これもう告白だろ!!」

 

エリィの言葉にランディはもう身悶えていた。

 

「エリィさん、大胆です」

 

まさか二人もこの会話が彼らに聞かれているとは思ってもいないだろう。

そこで、アルクェイドはある動きに気づいた。

 

「む?」

 

カメラと放送機器に異常な動きが見られた。

ロイドが振り向いたところで、アルクェイドは画面の映像を別のに変えた。

 

「おい!

 いい所だったのに何してんだ!」

 

「待ってください!

 この動きは……」

 

怒鳴るランディをアルクェイドがしていることに気づいて止める。

 

「誰かが放送を使おうとしている?

 アルクェイドさんはそれを止めようとしている」

 

「こんな状況で誰が?」

 

今放送機器を使って告知する必要性は皆無。

なのに使おうとしている誰かがいる。

しかも内部から――――

 

「それが意味していることはつまり――――」

 

「野暮なことをしようとしてる奴が居るってことさ」

 

アルクェイドは異常な速度でキーボードを叩く。

 

「まずはマイクとの接続を切る。

 そして、放送機器にジャミング」

 

アルクェイドは瞬く間に放送機器をガラクタへと変えるために操作し始めた。

 

「わ、わたしよりも速い……」

 

ティオが驚愕する速度でプラグラムへの侵入して、改竄していく。

 

「変更へのロックパスを変更。

 さらに違うスピーカーへの接続。

 さらにジャミング、ジャミング、ジャミング」

 

幾重にもロックを重ねて、操作する物を変えていく。

 

「マスターの権利の発動をしてきた?

 この権利を持っているのは……」

 

ティオはなんとか目で追うことが出来て状況を認識できている。

 

「ちっ、流石に管理者権限までは把握できなかったか」

 

そこでアルクェイドは操作を止めた。

全てを操作権限を相手に奪われてしまったのだ。

管理者が権限を奪い返すとすぐに放送が流れた。

 

「非常事態のため、一部の照明及びエントランス以外の非常口を封鎖させていただきます」

 

女性の声でそういう放送が流れた。


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