歌劇の始まり
この部分は物語のネタバレを多分に含みます。ネタバレが嫌だという人は一話から見ることをおすすめします。読んだ場合の苦情は受け付けません。
よろしいですか?
読まなくても物語には関係しません。
読むのですか……では、どうぞ。
初めまして、諸君。
いや、お久しぶりといったほうが良いかもしれないな。
私は怪盗B、世間ではそう呼ばれている者だ。
此度、魔都クロスベルで起きた怪事件。
もう今は収まりはした。
その中で起きた事件の中で大きく成長した若者たち。
歴史上幾度と語られる英雄伝説、英雄譚。
ありふれた語りぐさ。
故に多くの人々を魅了する。
しかし、いくつかの都合が良すぎる点が気になりましてね。
それを少し変えた歌劇を皆様にお見せしたい。
では、その幾つかとはなんなのか?
それは三つございます。
まず一つ目、我らが同志、殲滅天使のことだ。
悲劇にも、この舞台では親代わりだったパテル=マテルが壊れてしまった。
ヨシュア曰く、もう直せないとのこと……
彼女の過去から考えるに彼女はとても弱い。
戦闘能力ではなく、心が……だ。
彼女は今まで殻に篭っていたからこそ、耐えてこられたのだ。
それがエステル達によって破られてしまった。
確かに新たに心の拠り所が出来始めていた。
しかし、如何せんパテル=マテルほどの奥底までに辿り着くには少しばかり時間が足りなかった。
そこに辿り着くまでにパテル=マテルが壊れてしまった。
彼女は最大の心の拠り所がなくなったことで今まで耐えてきたモノを守るものがなくなってしまう。
それで起こったことは彼女の精神崩壊……
彼女は所謂廃人となってしまった。
次に二つ目、熊髭先生ことイアン先生だ。
最後の最後にロイドに説得されてキーアに話しかけたところでマリアベルに攻撃されてしまった。
ここで気になるところがある。
確かに彼女の攻撃は仮死状態にしただけかもしれない。
しかし、その後の手当が遅すぎる。
あれほど遅くなってしまっては血を失いすぎて、死んでしまう可能性のほうが高すぎる。
助かったとしても目が覚める可能性はかなり低く、仮に目覚めるとしてもかなり遅くなるだろう。
普通に考えて、帝国からのクロスベル解放にはまず間に合わないと見てもいいだろう。
最後に三つ目、アルカンシェルの最大の目玉、イリア・プラティエだ。
彼女はリハビリを経て、再び舞台の上に立つことが出来た。
いやはや、素晴らしいの一言だ。
事実は小説よりも奇なり……正にこれを体現する。
しかし、現実というものはそこまで甘くはない。
コレに付いては長くなるので本編で……
これから語る物語はこの三つの可能性を因果を弄ぶ力を失いかけたキーアが知覚してしまったことから始まる。
この三つを感じた彼女はそれではまたロイドたちがとても悲しみにくれてしまうということから、最後の欠片を振り絞って願ってしまう。
-助けてーと……
それを感じ取ったのはこれまた面白く、私の親友であった。
彼もまた、私とは近くて遠い美的センスを持っていて、互いに高め合う同志だ。
あのオリビエの様にライバルではなく、友でもない。
奇妙な関係だが、私は彼にとても惹かれている。
そして、彼が魔都クロスベルに行く理由は、私の一通の手紙が原因だ。
さてさて、長話はコレくらいとして、物語を始めようか。
それでは皆様、この物語が良きものであると願って……
縁がこざいましたら舞台の上でまた会いましょう。
それでは皆様、御鑑賞下さいませ……