他愛もない日常のメロディー   作:こと・まうりーの

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第14話 「飾り付け」

12月21日、火曜日。今日はなのはさん達が学校に行っている間、アリシアちゃんと二人で最終的な翠屋飾り付けの準備をした。ツリーなどの大きなものは12月中旬頃にはもう店内に搬入しておいたのだが、それ以外の店内の飾り付けは今日の夜、閉店後になのはさん、美由希さん、恭也さんにも手伝ってもらって、みんなでやる予定だ。

 

23日が祝日ということもあり、祝前日にあたる明日22日から営業時間を深夜0時まで延長するのだそうで、それに合わせて最終的な飾り付けを行うのだ。深夜営業は26日の日曜日までを予定している。

 

「このガーランド、長ーい。ほらほら、身体に巻きつくよ」

 

「アリシアちゃん、遊んでないで、こっちのテープペナント作るの手伝って~同じのをあと4本作るんだから」

 

などと大騒ぎをしながら準備を進める。テープペナントはガーランドと一緒に店内の壁に飾る予定だが、長さが必要なので結構大変だ。もっとも、今夜から殆ど徹夜でケーキ類の仕込みをする桃子さんや松尾さんに比べたら全然楽なのだけれど。

 

「…それに何だかんだ言って、結構楽しいしね」

 

「楽しいね~本当にお祭りだよね!今夜も楽しみ」

 

思わず口をついて出た独り言だったのだが、アリシアちゃんが答えてきた。

 

「テープペナントが終わったら、テーブルに置くキャンドルグラスの準備だよ。急がないとなのはさん達が帰ってきちゃう」

 

「なのはちゃんが帰ってきたら、次はケーキとかお菓子のポップを作るんだよね? 」

 

「そうそう。だからこっちも早く終わらせておかないと」

 

「じゃぁ、スピードアップ~」

 

アリシアちゃんは若干危なっかしい手つきで色紙を切っていく。

 

「急ぐのは良いけど、カッター使う時は、手を切らないように気をつけてね」

 

「うーん、ちょっと遅かったかも」

 

「切ったの!? もう、しょうがないなぁ。はい、『ヒール・スフィア』」

 

翠色のスフィアを生成し、アリシアちゃんの傷口に当てる。スフィアはすぐにはじけて消えたが、同時にアリシアちゃんの傷も塞がっていた。

 

「えへへ、ありがとう。やっぱりヴァニラちゃんって、他の魔法よりも回復魔法を使う時の方がすごいよね」

 

「そうかな? あまり意識したこと無いけど」

 

「なんていうか…術式に対して効果が高いっていうのかな? ほら、前にリニスを助けた時の魔法も、私あれから勉強したんだけど、たぶんSランク以上の魔法だと思うんだよね」

 

「またまたー、あの頃は私デバイスだって持ってなかったよ? そんな高等魔法使える訳ないじゃない。プレシアさんは何か言ってた? 」

 

「あー、ママにはまだ言ってない…なかなか時間取れなかったしね」

 

アリシアちゃんはにゃははと苦笑しながら言う。そう言えば引っ越した後のプレシアさんは忙しくて、あまりアリシアちゃんと話が出来ていなかった筈だった。地球に来てからというもの、随分と頼もしく感じてはいたが、彼女だってまだ甘えたい年頃。寂しくない筈がない。

 

「まぁ、それは戻ったら聞けばいいか。ところでアリシアちゃん、さっきの笑い方、なのはさんに似てたよね? 」

 

「あ、『にゃはは』? 何かうつっちゃった」

 

少し苦しいかとも思ったが、話題を逸らすことには成功したようだ。それから作業が終わるまでの間、私達はことあるごとに「にゃはは~」「にゃはは~」となのはさんごっこをしていた。

 

 

 

オーナメント類の準備は無事なのはさん達が帰宅する前に終了した。今日、翠屋が閉店したら一斉に搬入して飾り付けをするので、判りやすいように段ボールに入れて玄関に持っていくと、丁度なのはさんが玄関から入ってきたところだった。

 

「ただいま~あ、それ今夜の飾りだね」

 

「おかえりなさい。うん、準備は出来てるから、後は持っていくだけだよ」

 

「じゃぁ、ポップの方も作っちゃおうか」

 

実際にどんなポップを作るのか聞いてみたところ、インターネットサイトからダウンロードフリーのクリスマスっぽい柄を貰ってきて、少し手を加えたものを発砲パネルにプリントアウトし、実際の商品名や値段は手書きするのだそうだ。一部、商品の写真をベースにしたポップも作成するようだが、それは事前になのはさんが用意済みとのこと。

 

クリスマスのイメージカラーと言うと大抵緑、赤、白、金の4色を思い浮かべるが、このうち金だけはプリンターで再現できないので、必要に応じて色紙を貼ったりラメを入れたりするのだそうだ。ただ、これが結構時間を要するらしい。

 

「商品名と値段はお母さんからリストを貰っているから、晩御飯までに手分けして作っちゃおう」

 

「了解~」

 

まずはパソコンの扱いに慣れたなのはさんがプリントアウトをして発砲パネルをカット。細かい作業が得意なアリシアちゃんが箔押しもどき作業。そして私が商品名と値段を書き込んだ上でパネルにスタンドを取り付ける作業を担当することにした。

 

「すっごく助かるよ。去年はこれ全部わたし1人でやったんだけど、夜中近くまでかかっちゃったんだ」

 

「美由希お姉ちゃんは手伝ってくれなかったの? 」

 

「お姉ちゃんはお店の方の手伝いをしてたよ。今日もだけど」

 

「お料理とか? 」

 

アリシアちゃんの問いかけに、なのはさんの動きが一瞬止まる。

 

「ううん、お姉ちゃんはウエイトレス専門。たぶん料理の方はお母さんと松尾さんだけでやるんじゃないかな。あとウエイトレスは忍さんも手伝いに来てくれるかも」

 

そう言うと、また何事も無かったかのように、なのはさんは作業を続けた。もしかして美由希さんは料理が下手なのだろうか。毎日桃子さんが作る料理を食べているのだから、味覚は相当鍛えられているようにも思うのだが。

 

「あれ、そう言えば忍さんって誰だっけ? 」

 

「話したこと無かったっけ? すずかちゃんのお姉さんだよ。月村忍さん」

 

「あ、月村さん。前に伊藤さんから、恭也さんの彼女だって聞いた気がする。すずかさんのお姉さんだったんだ」

 

「そうそう。その月村さんで合ってるよ」

 

それなら25日にもお世話になる訳だし、近いうちに確り挨拶をしておいた方が良いだろう。そんな雑談を続けながらもみんな確り手は動かし、作業は着々と進んでいた。最初に作業を終えたなのはさんがアリシアちゃんの作業を手伝い始めると更にスピードが上がり、最後のポップは何とか晩御飯前ギリギリに出来上がった。

 

「「「完成~!」」」

 

3人で声を合せてハイタッチ。出来上がったポップは、玄関に置いた店内用の飾りと一緒に置いておくことにした。

 

「あら、今年は早かったわね。そろそろご飯にするから、みんなを呼んできてくれるかしら? 」

 

桃子さんが晩御飯の支度をしながら声をかけてきた。

 

「あ、じゃぁ私が行ってくるね!」

 

アリシアちゃんが家を出て翠屋に向かう。随分とここでの生活に慣れたものだと思いながら、私はなのはさんと一緒に配膳のお手伝いをすることにした。

 

 

 

食事が終わり、みんなが翠屋に戻ると、私はなのはさん、アリシアちゃんと一緒にお風呂に入っておくことにした。飾り付け作業が終わったらすぐに帰宅して就寝できるようにするためだ。

 

「作業始める時に、お姉ちゃんが荷物を取りに来るから、それまではのんびりだよ」

 

お風呂上りに髪を梳かしながらなのはさんが言う。私は腰まであるアリシアちゃんの長い髪にドライヤーを当てながら、了解と返答した。

 

「ヴァニラちゃんも髪の毛きれいなんだから、伸ばせばいいのに」

 

唐突にアリシアちゃんが言ってきた。

 

「そうだね。ちょっと伸ばしてみるのも良いかな」

 

『ギャラクシーエンジェル』に登場していたヴァニラは相当髪が長かった筈だ。確か縦ロールでポニーテールにして尚、背中を超えるくらいの長さがあった筈。別にゲームのヴァニラと同じ髪型にしないといけない訳では無いが、少なくとも似合わないことはないだろう。それにメラニン色素で髪の色が決まる地球では、自然にここまで鮮やかに緑が発色することはない。普段は軽度の認識阻害魔法を使っているからこそ違和感なく見られてはいるものの、下手に切りに行って大量の証拠を残すわけにもいかない。

 

などと考えながら髪をいじっていたら、なのはさんとアリシアちゃんが生暖かく微笑みながら私を見つめていることに気付いた。

 

「ど、どうかした? 2人共」

 

「にゃはは~別に~」

 

「にゃはは~何でもな~い」

 

何だかなのはさんが2人いるように見えた。

 

 

 

準備を整えて待っていると、22時を少し回った頃に美由希さんが迎えに来てくれたので、みんなで荷物を抱えて翠屋に向かった。

 

「今年もホワイトクリスマスは期待できそうにないね」

 

ふとなのはさんが空を見上げて呟く。見上げてみると、そこには綺麗な星空が広がっていた。

 

「これはこれでいいんじゃない? 綺麗だし」

 

「ふふっ、そうだね」

 

「うー、綺麗だけど寒いよ? 」

 

「ほらほら、みんなお風呂上りなんだし、風邪ひかないように早めに移動するよ」

 

美由希さんに促されて、足早に翠屋に向かう。入口の看板は既に『Closed』になっていた。

 

「お、全員揃ったな。じゃぁ始めようか」

 

店内に入ると士郎さんがこちらを見てそう言った。姿が見えない桃子さんは恐らく厨房で松尾さんとケーキやお菓子の仕込みに入っているのだろう。テーブルの上に持ってきた荷物を並べる。と、恭也さんの隣にいた長い髪の美人さんがこちらにやってきた。

 

「初めましてだね。私は月村忍。すずかのお姉ちゃんって言った方が判るかな? 君達のことはすずかからも聞いてるよ」

 

どうやらこの人が噂の忍さんらしい。すずかさんの姉で、恭也さんの彼女。

 

「アリシア・テスタロッサだよ。こんばんは。初めましてー」

 

「初めまして、ヴァニラ・H(アッシュ)です。すずかさんにはいつもお世話になってます」

 

そう挨拶すると、忍さんは急に笑い出した。

 

「あはは、本当だ。小学生とは思えない挨拶だね。っと、あぁゴメンね。2人共、これからもすずかと仲良くしてあげてね」

 

何だか釈然としない部分もあったが、取り敢えず「はい」と返事をしておく。飾り付けをしながら、忍さんとはいろいろと話をした。25日の夜にお世話になる旨伝えたところ、どうやら当日は深夜営業終了まで翠屋でお手伝いをしてくれる予定とのことだった。

 

「まぁ、直接は会わないかもしれないけど、適当にやっていてくれて構わないから」

 

その言い方に少し違和感を覚えた。「適当にやっていてくれて構わない」というのは普通に考えれば忍さんよりも上の立場の人がいない時に使われる言葉である。そう言えばすずかさんからもご両親の話はついぞ聞いたことが無かった。

 

「あの、ご両親は? 」

 

「あれ? すずかから聞いてない? もう何年も前に交通事故で他界してるんだけどね」

 

「そうでしたか…すみません」

 

「別に気にしなくていいよ。昔の話だし、色々と面倒を見てくれる叔母や親類もいるから寂しくもないしね」

 

そんな感じで雑談をしながら作業を続けた。全てのテーブルにステンドグラス調のキャンドルグラスを並べ、中にメタルカップに入った小さなキャンドルを設置する。恭也さんと美由希さんはガーランドとテープペナントを窓枠に飾り、アリシアちゃんとなのはさんがサンタクロースや雪の結晶、スノーマンの抜き型にスノースプレーを吹き付けて窓を飾り付けていく。

 

ふと気が付くと、店内にクリスマスソングが流れていた。士郎さんがステレオをONにしてくれたらしい。

 

「雰囲気出るね~」

 

なのはさんが呟く。飾り付けもほぼ終了し、店内は完全にクリスマスムードだった。

 

「みんなお疲れさま。おかげで準備も大分整ったよ」

 

士郎さんがそう言いつつ、みんなにコーヒーを淹れてくれる。時刻は23時を少し回ったところだった。

 

「ねぇ、ヴァニラちゃん。『ノエル』ってなぁに? 」

 

アリシアちゃんが唐突に聞いてきた。

 

「フランスっていう国の言葉で、クリスマスとかその季節なんかを意味する言葉だよ。どこで聞いたの? 」

 

「ほら、この歌」

 

耳を澄ませると店内にかかっているクリスマスソングの中に『ノエル』という言葉を聞き取ることが出来た。

 

「綺麗な言葉だね」

 

アリシアちゃんは随分と『ノエル』という言葉の響きが気に入った様子だった。

 

「あぁ、ノエルっていうのは人の名前になることもあるんだよ。そういう名前の人に出会ったら、綺麗な名前って言ってあげると喜ぶと思うよ」

 

忍さんが微笑みながらアリシアちゃんに語りかける。アリシアちゃんも元気に「うん!」と答えていた。

 

暫くみんなでコーヒーを飲みながらおしゃべりをしていたが、アリシアちゃんが大きな欠伸をしたのを切欠に、なのはさんも少しとろんとした表情になってきた。時計は23時30分を示している。

 

「美由希、なのは達を家まで連れて帰ってくれるか? 俺は忍を送ってくるから」

 

「オッケー。じゃぁみんなお疲れさま。家に帰って寝る時間だよ」

 

「「「はーい」」」

 

「あれだね、コーヒーってカフェインが眠気を醒ますとか言うけど、本当に眠いときは眠気の方が勝っちゃうよね」

 

美由希さんがそんなことを言いながら眠そうななのはさんとアリシアちゃんの手を取って歩き出した。私は少し先行してドアを開ける。

 

「あ、ヴァニラちゃんありがとう」

 

「いえ。じゃぁ、みなさん、おやすみなさい」

 

「あぁ、おやすみ」

 

士郎さん達に挨拶した後、私達は翠屋を後にした。

 

「そう言えばさっき、なのはちゃん『ホワイトクリスマス』って言ってたよね? あれなあに? 」

 

帰り道でふとアリシアちゃんが眠そうにしているなのはさんに問いかけた。

 

「えっとね…クリスマスの日に…雪が降って…辺りが白くなる…ことだよ」

 

「雪…雪かぁ。ヴァニラちゃん、天候操作とかできない? 」

 

「あれ、儀式魔法だよ? プレシアさんからもさわりだけしか教わってないから今は無理」

 

「そっかー、残念」

 

「ねぇヴァニラちゃん…『儀式魔法』って…何? 」

 

今度はなのはさんから質問された。

 

「儀式魔法っていうのは、確りした詠唱を魔法陣に調和させて、通常の魔法よりも大きな魔力を必要とする術式を制御する…って、あーダメだ。これはたぶん明日まで覚えてないね」

 

なのはさんは既に半分夢の中のような状態だった。美由希さんが一度しゃがんでなのはさんを背負うと、なのはさんはすぐにうとうとし始めた。

 

「みんな、魔法の講義はまたにして、今日はもう寝た方がいいね」

 

苦笑しながら自宅に入り、階段を上がる。

 

「じゃぁ、ヴァニラちゃん、アリシアちゃん、おやすみ。今日はありがとうね」

 

「「おやすみなさい」」

 

挨拶を済ませると美由希さんはなのはさんの部屋に向かい、私達は部屋の扉を閉めた。

 

「だいぶ~」

 

アリシアちゃんがベッドに倒れ込む。

 

「アリシアちゃん、ちゃんとパジャマに着替えてからだよ。ほら、脱いで」

 

「うん。ねぇ、今日楽しかったね」

 

着替えながらアリシアちゃんが言う。

 

「そうだね。お祭りの準備って、いつも楽しいよ」

 

「あの歌もよかったなぁ。私気に入っちゃった」

 

着替え終わったアリシアちゃんはそう言うと、さっき翠屋でかかっていた曲を歌い始めた。

 

「相変わらずすごい記憶力だよね。一回聴いただけで覚えちゃうなんて…にしても」

 

アリシアちゃんは異様に歌が上手かった。まるでプロの歌手が歌うのを聴いているような錯覚に陥る。と、唐突に歌が止まった。

 

「…歌詞忘れちゃった」

 

「一回聴いただけでそこまでできれば大したものだよ。歌も上手だし。あ、確り覚えてパーティーで披露してあげたら? みんなきっと喜ぶよ」

 

「えへへ~ありがとう。隠し芸になるかな? 」

 

「なるね。なるなる」

 

2人してくすくすと笑ったあと、アリシアちゃんがまた大きな欠伸をした。そろそろ寝ようということになり、私達はベッドに潜り込んで電気を消した。

 

「じゃぁ、おやすみ、アリシアちゃん」

 

「うん。おやすみなさい」

 

暫くするとアリシアちゃんの規則正しい寝息が聞こえてくる。

 

(クリスマスかぁ…もう地球にきて2か月近く経ってるんだよね)

 

長期戦になることは覚悟していたつもりだったが、本当にこのままのんびりしていていいのだろうか、という考えが頭をよぎる。アリシアちゃんは随分とこちらの生活に馴染んでいるようには見えるが、プレシアさんやイグニス父さん、アリア母さんはこちらの状況を知る術はないのだ。何とかしてこちらの無事を知らせることは出来ないものだろうか。これはことあるごとに考えていたことではあるが、いつもいい考えは浮かばずに終わっていた。

 

<ハーベスター、ここからミッドチルダに通信を送る方法とか無いかな? >

 

<≪You asked me the same question seventeen times, master. Unfortunately, my answer is also the same.≫>【マスターからの同じ質問はこれで17回目です。残念ながら答えも同じになります】

 

これもそうだった。こちらの世界に来てから殆ど3日に1回くらいのペースで同じ質問をハーベスターに投げていたのだが、帰ってくる回答はいつも同じ。念話は届いて精々数十kmで次元を超えることなど出来ないし、転送魔法だって儀式魔法に分類される長距離転送以外似たようなものだ。そもそも座標の設定が出来ない以上、こちらで取れる対応策は存在しないのだ。それでも何か出来ることがあるのではないか、という気になってしまう。

 

<ねぇ、管理外世界とは言っても、次元航行艦が近くまで様子を見に来ることってあるんじゃないかな? >

 

<≪I guess, yes. However, I do not know the detailed time schedule of the TSAB vessel and it will be difficult to contact them.≫>【恐らくあるでしょう。ただ、次元航行艦の詳細な航行スケジュールは判りませんし、コンタクトを取るのは困難かと】

 

その時、先ほどアリシアちゃんやなのはさん達と話していた儀式魔法のことが頭に浮かんだ。

 

<ねぇ、儀式魔法で天候操作とかしたら、気付いてもらえる可能性はないかな? >

 

<≪In case if the TSAB vessel is staying nearby, it might be possible. Otherwise, ceremonial spell will not be enough to be detected. In this case, you may need the huge energy, such as dimensional quakes.≫>【もし次元航行艦が近くに居る状態なら可能かも知れませんが、そうでなければ儀式魔法程度では検知されることはないでしょう。この場合は次元震クラスのエネルギー放出が必要と思われます】

 

<判った。ありがとう>

 

可能性は0ではないらしいが、いずれにしても今の私は完全に儀式魔法をマスターしている訳では無い。天候操作にしても、一度プレシアさんが理論を教えてくれた程度で、実際に使ったことは無かったし、仮に術式を構築できたとしても、暴走しないように制御の練習も必要だろう。

 

(それに、あれは『サンダー・フォール』…雷を落とす魔法だったから…完全に制御できないうちは危なくて使えないよ…)

 

完全にマスターしている魔法なら術式を再構成して、例えばそれこそ雪を降らせるような魔法に書き換えることも出来るだろうが、理論から術式を組み上げるとなるとそれなりの準備期間が必要だ。なのはさんのように感覚で魔法を組めるなら、もしかしたら可能かもしれないが、先生自身がまともに使えない魔法など、危なすぎて生徒に教える訳にもいかない。

 

(今は諦めるしかないか…)

 

私もなのはさんと一緒に魔法の練習をしておこうと改めて思った。いずれ、儀式魔法を正確に使いこなせるようになれば、救助を呼べるかも知れない。そんなことを考えているうちに、私はいつの間にか眠りについていた。

 




サブタイトルに話数表示をつけてみました。。
っていうか、第1部の文言も入れました。。
当然第2部も予定しています。。

追記:章管理を始めたので、部数表示は消しました。。

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