俺が、”ザ・ワールド”だあっ!!    作:阿久間嬉嬉

7 / 28
別にいいだろ……たまには傍観させろ!

「ほな戦ろか……ローブの大男!」

 

そう言うや否や黒髪の少年は走り出し、こちらに向かってくる。

 

時を止めてすぐに仕留めるのは簡単……だが、そんな戦闘ばっかりじゃあ、行く先々で普通以上に怪しまれちまうし、相手によっては苦戦するかもしれねぇな……ならここはっ!

 

〔無駄ぁ!〕

「ぬごっ!?」

 

向かってくる黒髪を、ハイキックを繰り出して弾き飛ばす。………この戦闘は、時止め無しだ!

 

「へへっ……やるな大男! ”気”の防御をこんなにあっさり抜いてくるなんてな!」

 

黒髪は構えなおし、再び向かってきた。

 

 

 

 

side三人称

 

 

「おらぁ!」

〔無駄ぁ!〕

 

黒髪少年の拳をいなし、大男はすぐさま二発ジャブを入れる。が、予測していたらしく、何やら符と黒いもので防がれる。それでも衝撃を殺し切れなかったらしく大きく吹き飛んでいった。

そして体勢を立て直そうとした少年の目の前に……

 

「うおっ!? マジかいな!?」

 

岩のようなものが飛んできた。おそらく大男が投げ飛ばしてきたのだろう。少年は間髪いれずに飛んできた事に多少驚いたものの、岩を拳で砕き、攻撃を無効化した。

 

「びびったが……こんなもんぶご!? (しまった!? さっきのは囮か!)」

 

そう、先ほどの一撃は囮であり、岩を砕いて隙が出来たのを逃さず、大男は強烈なストレートをお見舞いしてきた。

 

(型と戦法はめちゃくちゃやし、動きも素人じみとるけど……やっぱ強いなこの男!)

 

強敵との戦闘に、高揚する黒髪の少年。しかし、一方の大男、DIOこと”ザ・ワールド”はというと……

 

(メガネの少年たちに押し付けて、俺は傍観したいんですけど! 本音を言うと!)

 

実に情けない事を考えていた。ちなみに件のメガネの少年達・ネギと仲間たちが戦闘に参加しない理由はというと、目で追うのが精いっぱいでこの戦闘についていけず、おまけに魔法が当たったらまずいからと魔法を唱えるのもやめていたためである。他にも、大男の実力と技を見極めるため……敵にまわったときの為に対処しやすくする為(ネギは渋ったが)という理由も一応ある。

 

「これならどうや! ”狗神”!」

 

少年が叫ぶと同時に、足元の陰からぞろぞろと黒い犬・”狗神”が現れた。さらに―――

 

「そして、これが”影分身の術”や! いくで!」

 

四方八方からの、狗神と”気”を纏った拳が迫る。

 

「な!? ディオさん!」

「まずいぜ! あれはかわせねぇ!?」

「一昨日より数は少ないですが、質はケタ違いです! これでは……」

 

しかも、もし本体が別の場所にいたらと考えると……かなりまずい状況だ。

 

 

―――――その状況に置かれた者が……”ザ・ワールド”で無かったらの話だが。

 

〔無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄あぁっ!〕

「ぐおぉおっ!? (なんやてぇ!?)」

 

拳が幾重にも、数十以上にも見えるほど打ち出され、分身と”狗神”はあっさりと消される。

 

「うっそーん……」

 

それを見たネギ達、絶句。カモは思わずつぶやき、明日菜などは目を丸くしてしまっている。

 

「ぐがあっ!」

 

どうやら本体も混じっていたらしく、”ザ・ワールド”の拳を受け打っ飛ばされる。

 

(不味いな……こら本気で勝てん。 千草姉ちゃんの言っとった”謎の瞬間移動”も使っとらんし、………こうなったらホンマの奥の手や!)

 

「いくで……こっからが本番…これで終いにしたるわぁっ! おおおぉぉっ!!」

 

獣のように黒髪の少年は咆哮を上げる。それと同時に体がみるみると、本当の半人半獣へと変化していく。

 

「ええ~っ!? なにあれ!?」

「じゅ、獣化かよ!?」

「変身……した!?」

「あれが奥の手ということらしいですね!」

 

しかしその姿を見ても、”ザ・ワールド”は動じもしない。黒髪の少年はその姿を見やり、苦痛のある顔に、喜びの表情を浮かべる。

 

(凄いなこの男……。瞬間移動無しでもここまで力の差があるんや。……小細工なしに勝負を挑んできてくれるこいつは……本物や!)

「おい! 俺の名は犬上小太郎! お前の名、教えてくれや!」

 

それに答えるように、”ザ・ワールド”は一枚の紙を出した。

 

『事情があって俺はほとんど話せない。だからこの紙で伝える。俺の名は……DIO(ディオ)だ』

「……へへっ。――――――いくでぇ!」

”コクッ”

 

お互いに構え、足に体重をかけ、腕を引絞る。そして―――――

 

「うおおぉぉぉっ!!!」

〔オオオオォォォ!!!〕

 

 

お互いの咆哮と共に拳がぶつかり、途轍もない衝撃波を発する。竹林は強風に煽られたようにしなり、ネギ達は余りの勢いに踏ん張らざるを得ない。

 

「うわああぁっ!?」

「きゃああぁっ!」

「うぎゃあぁーっ!?」

「くうっ!?」

 

そして衝撃波による風も止み、えぐれた石畳の上に立っていたのは………

 

「ディオさん!」

「やった……やったぁ!」

「勝っちまった! すげぇ!」

「凄い余裕ですね」

 

DIO……”ザ・ワールド”であった。

 

 

sideout

 

 

side”ザ・ワールド”

 

なんか、熱血マンガみたいに相手の名乗りや攻撃に答えて、あまつさえ倒しちまったけど……良かったのかコレ? 

それにしても、スタンドすごいよな本当に。魔法とか”気”とか無しでも鍛えて行けばマジで十分やっていけるよ、オイ。

 

「すごいです! ディオさん!」

「いや、本当にあんた魔法や”気”も使えない一般人かよ……」

 

ああ。 正確には一般”人”じゃないけどな。

 

それにしても……ここからどうやって出るか―――つーかこいつら、

 

「無駄無駄無駄無駄無駄っ! いやーなんかハマっちまったよ兄貴。アレに!」

「よし、ぼくも………無駄無駄無dふがぺ! ひたかみまひた~!?」

「兄貴ー!?」

「何やってんのよあんたら……」

 

いや、本当にお気楽だな。お前ら。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。