俺はバカだ……何故こんな簡単なことに、今の今まで気づかなかったんだ?
だからこんな事になってるんじゃねえか……後悔先に立たずってのはこういうときに使うんだろうな……こんな大事な事を二つも……くそっ
『レジ袋は要りません』
”ザ・ワールド”のスピードの精密動作性、そして”時止め”を使って、そう書いた紙を店員さんに見せる。
「そうですか、わかりました」
はっはっは~………
喋れないなら筆談すればいいんじゃねぇか! 何で今の今まで気づかなかった俺!?
あれか!? この体になった事のショックが大きすぎて、思考が天然よりになってたってことか!?畜生!
それに何で京都のボロ小屋まで戻ってきた!? 猿をぶっ飛ばしたその勢いで京都から出て行けばよかったじゃねぇか!?
なんだか知らねぇけど、明らかに堅気の雰囲気じゃない奴らがうろうろしてんだぞ!? おまけに俺を見つけたら追ってきたし! おかげで電車じゃ京都から出れねぇ!
不審人物決定じゃねぇか……こんなろ~…!?
■
んで……結局また徒歩かよ。
そりゃ殆ど疲れはしないとはいえ、結構むなしいぞコレ。目立たないように林の中や裏通りばっかり選んで通るの。
…今までこんな怪しい姿の奴が、普通に通りを歩いている方がおかしかったんだけどな。
まぁ、今はそんなことは問題じゃない。問題は―――――
何処だここ!?
竹林に入り、山の方へ向かって歩いてもう三十分は経つのに景色が全く変わらねぇぞ!? くそっ、こうなったら……走る!
ある程度加減はするが、それでもかなりのスピードを出し俺は走った。しかし、さっきまでと全く状況は変わらない。
どうなってんだ!? こうなったら空だ!
と、俺は空中から山頂を目指そうとする―――が、次の瞬間に俺がいたのは……先ほどの竹藪だった。
本当にどうなってんだこれは!? ………ん? あそこに道見たいのがあるな。もしや、あそこを歩けば出られるのか? もう手はねぇし、行くしかないか。
柵をまたいで―――
「あ! またあんた!」
「この人はっ……!?」
「ローブの人!」
またかよ!? コイツらとは何か縁でもあるのかよ!? 嫌な腐れ縁だなオイ!
「や、やいやいてめぇ! 何しやがったんだ、ここから出しやがれ!」
誤解だっつーの! えーと…紙とペンは……、
「何か出そうとしています!」
「させないわよ!」
「行けー姐さん!」
「え? ちょっとアスナさん、カモ君! まって―――」
”時よ止まれ!”
今のうちに歩きながら文字書いて、少年の傍に行ってと……
「ちょ、消えたぁ!?」
「ど、どこに」
「兄貴のとこだ!? いつの間に!」
「うわああぁっ!? ……あれ? 紙?」
文字読め文字読めと言わんばかりに、紙を突き出し揺する。
「えーっと…『誤解。閉じ込められたのは俺も同じ』…って、あなたもなんですか!?」
俺はそうだとうなずく。
「兄貴、騙されちゃだめだ! 隙を狙ってんのかもしれねぇぞ! ほら、姐さんからも!」
「う~ん……いや、勢い余って襲いかかっちゃったけど……思い出してみるとこのかを助けてくれたのよね? この人」
「はっ! そ、そうでした!」
オレンジと黒髪の妖精がネズミの言った事を否定してくれた。筆談一つでこんなに変わるのか……言葉ってすげえな。……いや、一昨日の事があってこそか。
「それにカモ君。刹那さんにも、怪しいって理由だけで疑ったよね? まぁ、刹那さんの時はしょうがないかもしれないけど、この人はもう三度も僕達に手を貸してくれてるんだよ? 疑う方がおかしくないかなぁ? ……見た目すっごく”悪”っぽいけど」
「たしかに……私の本体が襲いかかったのにも関わらず、気絶だけで済ましてくれましたしね……しかし、カモさんの言うとおり怪しいのも確かです。道中、警戒させてもらいますよ」
”悪っ”ぽいか。まぁ……それはしょうがな―――ちょっとまて、”道中、警戒はさせてもらう”? その言い方だと俺とお前らがこれかろ一緒に行動するみたいな………。
「とりあえず今は、お互いの目的は同じなんです……手を貸して下さい、ローブさん!」
お人好しすぎるだろ、この少年!? オレンジ髪とネズミほうはやれやれって顔してるし!
………今さらあがいても手遅れだな、コレ。しょーがねぇ……。
『DIO(ディオ)だ』
「え?」
『俺の名前、DIOだ』
「あ、はい! よろしくお願いします! ディオさん!」
あ~……何でこうなるかな~…―――――
「ほ~、千草の姉ちゃんが言っとった”強い奴”か……」
「!? 誰!」
オレンジが叫ぶと同時に巨大な蜘蛛が降りてくる。背に黒髪の少年を乗せて。
「おもろなってきたやんか!」
――――本当に、何でこうなるんだ?