いや~…京都っていいね。 寺院や仏閣が多くて神秘的な雰囲気を漂わせてると思えば、緑の多さと自然の優しさとほのぼの感もあり、いいところだなやっぱ。
……なにより八橋スーパーで買えるし。一週間チョイかけて来た甲斐あったな。
ただ住居を確保するため山まで行ってボロ小屋を見つけ、やったと思ってついフードを脱いだ瞬間、
『ひいいぃ!? 化けもんやあぁっ!?』
とか言って、偶然そばにいたおっさんが逃げてったのにはちょっと傷ついた。でも、住居は確保させてもらったけどな。
そして、京都に来てから更に数日。
今、俺は清水寺の”清水の舞台”にいる。相変わらず怪しいローブ(別のに変えた)は目立っているが、今のところ別に支障はない。特訓ばかりで京都の寺院・仏閣見てなかったし、ここらでちょいと息抜きでもな!
―――しっかし、聞くと見るとは大違いだな”清水の舞台”!! 確か此処、結構高い割には落ちても死ぬ奴少ないんだっけか? 今の俺なら飛び降りても大丈夫そうだし試してみるか?
……いやいや、何考えてんだ。そんなことしたら、取材とかで顔見られちまうだろ。”清水の舞台飛び降りて無傷! トンデモ人間現る!”みてぇな……。
「これが噂の飛び降りるあれか!」
「よ~し……だれか飛び降りろっ! 命令だ!」
「本当に飛んでも大丈夫なのかなぁ」
「ならば拙者がお先に―――」
「あなた達、お止めなさい!」
うお~…隣の団体うるせぇー……! 修学旅行生か、賑やかなこって。
「わーすごい! 京都が一望できるじゃないですかー!」
「ハシャぎすぎで落ちないでよ、ネギ」
ぶほっ!?
こ、この声は……あの時の少年とオレンジ!? もしこっちに気づかれたら色々とヤバい……退散しよう。
俺は気付かれないよう、その場をそそくさと立ち去った。―――普通に喋れてたら、さっきの所で気付かれてたかもしれねぇ……案外、喋れないのも役に立つな。
ところで、誰かこっちを見てる気がするんだが気のせいか? って皆が時々見てるから、気がするのも当然か。
「………」
■
俺は、清水の舞台から数十メートルほど離れた場所まで行き、一息つく。
ふぅ、まさかあいつ等が来てるとは……修学旅行に弟を連れてきてもいいのモノなのか、今時は?
まぁいいか。もう俺には関係な―――
「見つけたぞ、貴様」
―――い話になってくれれば、万々歳だったんだけどなぁ…………誰だよ、この刀を構えた半でこ女。敵意むき出しじゃねぇか、俺が何したよ。…見た目が怪しいからか?
「お前は何者だ? その姿、そしてネギ先生達を見かけた瞬間に逃げるように立ち去る所をみると……関西呪術協会の者か?」
関西呪術協会!? こっちにもそんな魔法みたいなものあるのかよ!? てかこのローブのマークってその呪術協会の者なのか?
「何者か、目的は何か答えろ。答えねば―――答えさせてやる」
答えられないんだけどな、俺。だって”無駄”以外喋れねぇもん。後は吠えるぐらいしか、声発せないし。
「飽くまで沈黙か……ならば」
どうにかして会話手段を得ないと……つっても何があるんだ、手話とかできないし、口の動きで読み取らせようにも顔出すわけにはいかないし………
「斬る!」
ってうお!? いきなり斬りかかって来んな! というか、あれマジの日本刀―――
「はあっ!」
ぐああぁっ! 斬られっ、斬られ……て無い? 刃が止まってる?
「な、障壁か!」
そういや容姿だけが”ザ・ワールド”じゃなかったんだったな、俺。すっかり忘れてた。
体丈夫だな、近距離パワー型スタンド。
「ならばっ! 神鳴流奥義―――」
”時よ止まれっ!”
よっしゃ、この数日の特訓で2秒まで止められるようになった! 戦闘力も着実に上がってるんだよ! なめんな! ……って、こいつとは初対面じゃん…。
馬鹿なことを考えながらも、しっかり彼女の後ろへと回る。
「な!? 消え―――がふっ」
見失って慌てる彼女の頭にアームハンマーを喰らわせ、気絶させる。ゴズンと鈍い音がしたけど大丈夫だよな?
とりあえずベンチまで運んで―――
「せ、せっちゃん!?」
「刹那さん!」
「あんた、あの時の!? 桜咲さんに何したのよ!」
まさかの鉢合わせかよ!? ええい、くそ……ほれ! お前らの友達だ! 受け取れ!
驚きと焦りのあまり、俺は彼女を彼らへ放り投げてしまった。
「うわわっと!?」
何がほれだ……投げるのは結構まずい行動じゃねぇかっ!! ―――後悔は後だ! 逃げろ逃げろ!
俺は住居のボロ小屋まで、時々時間を止めながら走って逃げた。しっかし、”ザ・ワールド”が走って逃げるって中々にシュールな光景だよな……オイ。
■
・少し前から・
sideネギ
はぁ~~…僕幸せだ。こんなに木造建築を見られるなんて……これで刹那さんの事が無ければなぁ。
(なぁ兄貴)
僕が悩んでいると、カモ君が小声で話しかけてきた。
(どうしたの、カモ君)
(見てみろよ。さっきから俺たちの事見てた桜咲 刹那が消えたんだ)
あっ、本当だ。刹那さんがいない!? 何処に行ったんだろう?
(きっと仲間と通信を取るために離れたに違いないぜ。あいつは関西のスパイだからな!)
(だから、決めつけるのはまだ早いってば。それに刹那さんは僕の生徒だし、信じてあげないと)
(お人好しだな~…兄貴。まぁ、そういう所も尊敬してるけどな)
(有難う、カモ君)
「な―――え――”ゴズン!”――っ」
何だろ、今の声と音? 誰かに荷物でも落としたのかな? ま、まさか喧嘩―――
「せ、せっちゃん!?」
このかさんの驚く声に振り向くとそこには、見覚えの無いローブを着た見覚えのある体格の人が刹那さんを抱えていた。
「刹那さん!」
あなたは……あのローブの人!? まさかあの音は―――
「あんた、あの時の!? 桜咲さんに何したのよ!」
アスナさんも、やってきてローブの人に対して構えを取る。すると、ローブの人はいきなり刹那さんを僕に向かって放り投げ、そのままあっという間に去っていってしまった。
「せっちゃん大丈夫なん……?」
「ちょっと待ってください」
これは……気絶しているだけだ。傷も軽い打撲傷だけだな。音の割には軽かったみたいだ。
(あいつも関西呪術協会か? 桜咲 刹那があまりにもふがいねぇから、見捨てたのか?)
もう、またカモ君は……
(まだ決めつけるに早いよ。それに、本当に見捨てたのならこんな場所でやるわけないよ。音は聞こえにくくて、人は見え難いけど、それでもバレる。何より気絶で済ませて、運ぶなんてしないだろうし。ほら、そばにベンチがあるでしょ。そこに置こうとしたんじゃないかな?)
(だったら、なんで桜咲 刹那は気絶してたんだ?)
(それは分からないけど……でも、少なくとも悪人じゃないと思う)
(お人好しにもほどがあるぜ兄貴……警戒はしとけよ)
(ごめんね……警戒はもちろんするよ)
正直言うと、ローブの人は悪かもしれないって僕は思ってる。けれど、本当に悪なら僕やエヴァンジェリンさんを助けたりしない。
信じてますローブの人。
sideout
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side”ザ・ワ-ルド”
………なんかとんでもない期待をかけられた気がするんだが……この嫌な予感が気のせいであることを祈るしかないな。―――無駄かもしれないが。