勘違い事件(事件と呼ぶほどのものでもない)から数日後。俺は未だにローブ姿で街中を闊歩していた。
いろいろ考えてみたが、この街から出て行けばもう巻き込まれないんじゃないか? 物語は一つの場所で終わるパターンとさまざまな場所を回るパターンがあるけど、どれも騒ぎの中にいなければいいだけの話。
なら、騒ぎの中心がいるかもしれない場所を去れば……よし、これで行くか。
本当はと言えば原作にかかわりたい気持ちの方が大きい。だが、このローブや”ザ・ワールド”の容姿じゃ、いくら格好良くとも犯罪者扱いもあり得るからなぁ……だって怪しすぎ。それにしても―――
「千九百二十円になります」
”コクッ”
いいなぁ日本。喋らなくても買い物が出来る。今まで当たり前のようにやってきたけれど、改めてサービス業、コンビニ、ス―パーのありがたみが分かったわ……。
やっぱりローブは目立つけどな。
―――そんな事よりも何かを買い忘れている気がするんだが……まぁいいか!
■
物を頬張るスタンドって能力やらイラストではあるけれど、改めてや見るとちょっと不自然だな、と俺はさっき買った牛丼弁当を食いながら思う。
排泄はしない癖にちゃんと腹が減るのは何故何だ? スタンドパワーでも補充してるのか? ……なんかあり得る気がしてきた……。といっても、これが二回目の食事なんだけどな。
…前回から数日も間が空いたな……
弁当を食い終わった充実感を感じながら、俺はこの街から出るプランを考えることにした。
昼間に出て行こうとして怪しまれたら元も子も無いが、それは夜も同じ。むしろ危険性でいえば夜の方が高いかもしれない。思い立った時が吉時ともいうしな(言うっけ?)……良し!
今すぐ出て行くぜ!
■
早速駅に着いた俺だったが……
『申し訳ありません。ただいま今点検をしております。そうですね……復興するのは夜あたりかと』
という看板を駅前で見つけた。
なんで、こんなときに点検してんだよ……そして何で会話みたいな言葉で書いてあるんだよ。後半部分いらねぇだろ。
しかし復興は夜かぁ……こうなったら、そこらの山から―――いやいや、余計に犯罪者扱いされそうだ。
待つしかねぇのか…はぁ~…。ま、変なことしなけりゃ大丈夫だろ。
俺は適当に街中を闊歩し、夜が来るのを待った
だが、その考えは甘いと今夜思い知らされることになるとは、俺も予想していなかった……―――
■
本屋で小説(ライトノベルではない方)を読んでいた俺は、ふと時間が気になり窓の外を見る。あたりはすでに暗くなっていた。
ん? もう夜か。本を読んでいると時間が経つのが早いな。時間は――――お、もうすぐ八時か。電車来るな。
「……客様。お客様!」
うぉ!? 店員さんいたのか! 夢中になりすぎて居るのに気付かなかった。
「もうすぐ八時です。全体停電によるメンテナンスが始まりますので―――」
全・体・停・電!? やばいじゃねぇか!
「うわっ!? 速い!?」
俺は猛烈な速度を出し、駅へと急ぐ。が、何故か迷って橋の方へと出てきてしまった。
この街、何でこんなに広い上に構造が迷路みたいなんだよ!? ……今から行っても間にあわねぇよな…停電してるしな。だから人少なかったのか。
…………ん? 待てよ。何も電車で出ることはない、この橋から街の外へと出ればいいだけの話じゃねぇか!
ようし、そうと決まったら―――
「
「うわっ! あううっ」
……お約束か? この展開。とりあえず……隠れとくか。
「なるほど、ピンチになったら外に出ればいいか。ここは学園都市の端だからな」
ここ端っこなのか! よっしゃ、ラッキーだぜ!
「うぐ……くっ」
「これで
少年またピンチかよ!? ……いや、傷は意外と浅い…とするとあれはもしや?
俺がそう思ったまさにその瞬間、激しい音と共に魔法陣のようなものが浮かび上がり、二人の女に何かが巻き付いた。
「や、やったぁ!」
「捕縛結界か、これは!?」
おお、やったじゃねぇか少年!
……って何のんきに観戦してんだ俺は? 停電している今のうちに出ていかねえと…
「そんなぁ!?」
「ふふ……詰めが甘かったな、ぼーや」
目を離したすきに状況が一変しとる!? 捕縛結界っての破られたのかよ!
「ああっ!?」
あ、杖奪われて捨てられた。
「うあ~~ん! ずるいですぅ~~っ!? 一対一でしょうぶしてくださいよ~!?」
みっともな……あ、いやでも子供だからしょうがないのか?
「泣きわめくな!」
バチン! という音を立てて少年の頬がはたかれた。痛そうだな…オイ。
「男のくせに、これぐらいでもう負けを認める気か!? この程度の苦悩、お前の親父は簡単に乗り越えたぞ!」
親父の話を出したってことは、あの少年は親父を目標にして頑張ってるってことか。……そういう物語の場合って大抵死んでるよな……もしくは行方不明。
「今日はよくやった。まぁ、一人で来たのは無謀だったがな、ぼーや。………さて、ではそろそろ血を吸わせてもらおうか」
「ううっ……」
……くそ、見てられねぇ。…けど、ここで出て行けばもう確実に―――
「待ちなさいーっ! 変質者ーっ!」
うごっ!? しまった、見つかったか!?
「カモ、いくよ!」
「合点承知だ、姐さん!」
「来たか、神楽坂明日菜……茶々丸!」
「はっ」
……よかった。見つかった訳じゃないみたいだな。ふぅ~…。
「喰らえぇい! 『オコジョフラーッシュ』!」
「茶々丸さん、ごめんなさい!」
この閃光、マグネシウムを利用したのか! いや、マグネシウムってこんなに光るか?
「隠れるよネギ!」
「あ、はいアスナさん、カモ君」
「急ぐぜ」
って、こっちに来た!? くそっ!
”時よ止まれ!”
止まっている間に離れてと……。よっし、間に合った~…。…ん?―――
うお!? なんだ、いきなり少年達がいた所が光った!?
「契約更新完了だぜぃ!」
「よし、行くわよネギ!」
「はい、アスナさん!」
「む、そこにいたのか!」
「……!」
お、戦闘再開するみたいだな。
「
「やあっ!」
少年が呪文のようなものを唱え終わると同時に、オレンジの少女が走り出した。相手の女もそれを迎え撃つようだ。
「失礼を―――はぁっ!」
「わととっ!」
ん、後ろの方でも始まるみたいだな。
「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック!!」
「ラス・テル・マ・スキル・マギステエル!」
「
「うっ…
計34本の矢が乱れ舞い、ぶつかり合って相殺した。
これが魔法か! ネギまってすごいファンタジーな世界だな!
「まだだ、ぼーや! リク・ラク・ラ・ラック・ライラック…
「わわっ!? ラ ラス・テル・マ・スキル・マギステル、
「
「
今度は29本! しかも光と闇の魔法まであるのか! ……俺、魔法とか使えるか? 殆どスタンドだし無理か?
「あははっ! それでこそあの男のぼーやだ! リク・ラク・ラ・ラック・ライラック……強いのをぶつけてこい!」
「ラス・テル・マ・スキル・マギステル……いきます! エヴァンジェリンさん!」
「
「
「
「
「
「
あいつ等の魔法が、ドゴオオォン! という音を立ててぶつかり合い、衝撃波を起こした!
いけっ! 頑張れ少年! ……こういうとき、ついうっかり声が出ないのはいいよな。
ドオオォン!
ぬお!? すげえ風圧! どっちが勝ったんだ?
「フフ…フフフ……やりおったなぁ、小僧」
「あわわ!? ごごごめめ御免なさい!」
……少年が勝ったのは分かった。だけど何で金髪少女の方は脱げてんだ? お約束か?
つーか、あの少女まだ戦う気か。不屈の精神だな、ある意味。
「まだだぞ……まだ勝負は―――」
「これはっ……!? いけない! マスター戻って!」
なんだ? なにが―――”バシャッ!”―――うお、眩しっ!? ……いきなりかよ……。でも、電気が付いたってことは復旧作業は終わったのか。
「きゃん!?」
次から次へと何だ!? って、金髪が落ちてくぞ!? 空飛べんじゃ―――
「どうしたの!? いきなり!」
「この復旧でマスターへの封印が復活し、魔力がなくなってしまったのです! このままでは、今はただの子供であるマスターは湖へ!」
まじかよっ!?
「エヴァンジェリンさーん!!」
「馬鹿! ネギっ!?」
「兄貴、無茶だっ!?」
……ちっくしょうがっ……!
”時よ止まれ!”
間に合えってんだよおぉっ!!
伸ばした両手は見事に少女をキャッチし、そのあとで体制を安定させた。――飛べるって便利だな!
「ん…? ………うお!? 貴様、あの時の! またいつの間に!」
「うわぁっ!? いきなり出てきたぁっ!?」
抱えていた少女を目の前の少年に渡す。というかこいつ、いつの間に杖に乗ってたんだか。
そいじゃ、さっさと去るか。……余計怪しまれんうちに。
「あ、あの! あのときはすみませんでした! それと―――」
もういいっての! さっさと退散!
「あ、ちょっと!」
何も聞こえへん! 聞いてへん!
俺は更にスピードを上げ、その場から離れた。
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ふぅ……追ってはこないみたいだな。にしてもこのまま、あてもなく放浪するのかぁ…それしか道がないとはいえ、なんか悲しい……くそ、この見た目じゃ無ければ! いや、十分過ぎるほど格好いいけど!
……そうだ、京都へいこう! 今回は西洋の魔法物語みたいだから、東洋の神秘いっぱいの所には原作も来ないだろう……ナイスアイデアだ!
思い立った日が吉日だぜ!
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side神楽坂明日菜
何だったの? あのローブの奴。 怪しすぎるにもほどがあるわよ。いきなり現れるし、顔隠してるし空飛ぶし。
もうすぐ修学旅行なのに嫌なことや変なことが起こりすぎよ……。
そういえば、修学旅行ってうちは選択式だったわよね。ハワイとかもあるけれど―――――
ネギの奴は京都とか喜びそうかな。委員長もそれ選びそうだし。