俺が、”ザ・ワールド”だあっ!!    作:阿久間嬉嬉

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災難は続くぞ!

勘違い事件(事件と呼ぶほどのものでもない)から数日後。俺は未だにローブ姿で街中を闊歩していた。

 

いろいろ考えてみたが、この街から出て行けばもう巻き込まれないんじゃないか? 物語は一つの場所で終わるパターンとさまざまな場所を回るパターンがあるけど、どれも騒ぎの中にいなければいいだけの話。

なら、騒ぎの中心がいるかもしれない場所を去れば……よし、これで行くか。

 

本当はと言えば原作にかかわりたい気持ちの方が大きい。だが、このローブや”ザ・ワールド”の容姿じゃ、いくら格好良くとも犯罪者扱いもあり得るからなぁ……だって怪しすぎ。それにしても―――

 

「千九百二十円になります」

”コクッ”

 

いいなぁ日本。喋らなくても買い物が出来る。今まで当たり前のようにやってきたけれど、改めてサービス業、コンビニ、ス―パーのありがたみが分かったわ……。

やっぱりローブは目立つけどな。

 

―――そんな事よりも何かを買い忘れている気がするんだが……まぁいいか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

物を頬張るスタンドって能力やらイラストではあるけれど、改めてや見るとちょっと不自然だな、と俺はさっき買った牛丼弁当を食いながら思う。

 

排泄はしない癖にちゃんと腹が減るのは何故何だ? スタンドパワーでも補充してるのか? ……なんかあり得る気がしてきた……。といっても、これが二回目の食事なんだけどな。

…前回から数日も間が空いたな……

 

弁当を食い終わった充実感を感じながら、俺はこの街から出るプランを考えることにした。

 

昼間に出て行こうとして怪しまれたら元も子も無いが、それは夜も同じ。むしろ危険性でいえば夜の方が高いかもしれない。思い立った時が吉時ともいうしな(言うっけ?)……良し!

 

今すぐ出て行くぜ!

 

 

 

早速駅に着いた俺だったが……

 

『申し訳ありません。ただいま今点検をしております。そうですね……復興するのは夜あたりかと』

 

という看板を駅前で見つけた。

 

なんで、こんなときに点検してんだよ……そして何で会話みたいな言葉で書いてあるんだよ。後半部分いらねぇだろ。

しかし復興は夜かぁ……こうなったら、そこらの山から―――いやいや、余計に犯罪者扱いされそうだ。

待つしかねぇのか…はぁ~…。ま、変なことしなけりゃ大丈夫だろ。

 

 

俺は適当に街中を闊歩し、夜が来るのを待った

だが、その考えは甘いと今夜思い知らされることになるとは、俺も予想していなかった……―――

 

 

 

 

 

 

本屋で小説(ライトノベルではない方)を読んでいた俺は、ふと時間が気になり窓の外を見る。あたりはすでに暗くなっていた。

 

ん? もう夜か。本を読んでいると時間が経つのが早いな。時間は――――お、もうすぐ八時か。電車来るな。

 

「……客様。お客様!」

 

うぉ!? 店員さんいたのか! 夢中になりすぎて居るのに気付かなかった。

 

「もうすぐ八時です。全体停電によるメンテナンスが始まりますので―――」

 

全・体・停・電!? やばいじゃねぇか!

 

「うわっ!? 速い!?」

 

俺は猛烈な速度を出し、駅へと急ぐ。が、何故か迷って橋の方へと出てきてしまった。

 

この街、何でこんなに広い上に構造が迷路みたいなんだよ!? ……今から行っても間にあわねぇよな…停電してるしな。だから人少なかったのか。

…………ん? 待てよ。何も電車で出ることはない、この橋から街の外へと出ればいいだけの話じゃねぇか!

ようし、そうと決まったら―――

 

氷爆(ニウイス・カースス)!!」

「うわっ! あううっ」

 

……お約束か? この展開。とりあえず……隠れとくか。

 

「なるほど、ピンチになったら外に出ればいいか。ここは学園都市の端だからな」

 

ここ端っこなのか! よっしゃ、ラッキーだぜ!

 

「うぐ……くっ」

「これで決着(けり)……だな」

 

少年またピンチかよ!? ……いや、傷は意外と浅い…とするとあれはもしや?

 

俺がそう思ったまさにその瞬間、激しい音と共に魔法陣のようなものが浮かび上がり、二人の女に何かが巻き付いた。

 

「や、やったぁ!」

「捕縛結界か、これは!?」

 

おお、やったじゃねぇか少年!

……って何のんきに観戦してんだ俺は? 停電している今のうちに出ていかねえと…

 

「そんなぁ!?」

「ふふ……詰めが甘かったな、ぼーや」

 

目を離したすきに状況が一変しとる!? 捕縛結界っての破られたのかよ!

 

「ああっ!?」

 

あ、杖奪われて捨てられた。

 

「うあ~~ん! ずるいですぅ~~っ!? 一対一でしょうぶしてくださいよ~!?」

 

みっともな……あ、いやでも子供だからしょうがないのか?

 

「泣きわめくな!」

 

バチン! という音を立てて少年の頬がはたかれた。痛そうだな…オイ。

 

「男のくせに、これぐらいでもう負けを認める気か!? この程度の苦悩、お前の親父は簡単に乗り越えたぞ!」

 

親父の話を出したってことは、あの少年は親父を目標にして頑張ってるってことか。……そういう物語の場合って大抵死んでるよな……もしくは行方不明。

 

「今日はよくやった。まぁ、一人で来たのは無謀だったがな、ぼーや。………さて、ではそろそろ血を吸わせてもらおうか」

「ううっ……」

 

……くそ、見てられねぇ。…けど、ここで出て行けばもう確実に―――

 

「待ちなさいーっ! 変質者ーっ!」

 

うごっ!? しまった、見つかったか!?

 

「カモ、いくよ!」

「合点承知だ、姐さん!」

「来たか、神楽坂明日菜……茶々丸!」

「はっ」

 

……よかった。見つかった訳じゃないみたいだな。ふぅ~…。

 

「喰らえぇい! 『オコジョフラーッシュ』!」

「茶々丸さん、ごめんなさい!」

 

この閃光、マグネシウムを利用したのか! いや、マグネシウムってこんなに光るか?

 

「隠れるよネギ!」

「あ、はいアスナさん、カモ君」

「急ぐぜ」

 

って、こっちに来た!? くそっ!

 

”時よ止まれ!”

 

止まっている間に離れてと……。よっし、間に合った~…。…ん?―――

うお!? なんだ、いきなり少年達がいた所が光った!?

 

「契約更新完了だぜぃ!」

「よし、行くわよネギ!」

「はい、アスナさん!」

「む、そこにいたのか!」

「……!」

 

お、戦闘再開するみたいだな。

 

契約執行(シス・メア・パルス) 90秒間(ぺル・ノーナギンタ・セグンタース)!!

ネギの従者(ミニストラ・ネギィ)、『神楽坂明日菜』!」

「やあっ!」

 

少年が呪文のようなものを唱え終わると同時に、オレンジの少女が走り出した。相手の女もそれを迎え撃つようだ。

 

「失礼を―――はぁっ!」

「わととっ!」

 

ん、後ろの方でも始まるみたいだな。

 

「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック!!」

「ラス・テル・マ・スキル・マギステエル!」

魔法の射手(サギタ・マギカ)氷の17矢(セリエス・グラキアーリス)!!」

「うっ…魔法の射手(サギタ・マギカ)連弾・雷の17矢(セリエス・フルグラーリス)!」

 

計34本の矢が乱れ舞い、ぶつかり合って相殺した。

 

これが魔法か! ネギまってすごいファンタジーな世界だな!

 

「まだだ、ぼーや! リク・ラク・ラ・ラック・ライラック…闇の精霊(ウンデトリーギンタ)29柱(スピリトゥス・オブスクーリー)!!」

「わわっ!? ラ ラス・テル・マ・スキル・マギステル、光の精霊(ウンデトリーギンタ)・ 29矢(スピリトゥス・ルーキス)!」

 

魔法の射手(サギタ・マギカ)連弾・闇の29矢(セリエス・オブスクーリー)!!」

魔法の射手(サギタ・マギカ)連弾・光の29矢(セリエス・ルーキス)!!」

 

今度は29本! しかも光と闇の魔法まであるのか! ……俺、魔法とか使えるか? 殆どスタンドだし無理か?

 

「あははっ! それでこそあの男のぼーやだ! リク・ラク・ラ・ラック・ライラック……強いのをぶつけてこい!」

「ラス・テル・マ・スキル・マギステル……いきます! エヴァンジェリンさん!」

来れ氷精、(ウェニアント・スピーリトゥス)

闇の精(・グラキアーレス・オブスクーランテース)!!」

来れ雷精、(ウェニアント・スピーリトゥス)

風の精(・アエリアーレス・フルグリエンテース)!!」

闇を従え(クム・フルグラティオーニ・)吹雪け(フレット・テンペスタース・)

常世の氷雪(ニウアーリス)!」

雷を纏いて、(クム・フルグラティオーニ・)吹きすさべ(フレット・テンペスタース・)

南洋の嵐(アウトリーナ)!!」

 

闇の吹雪(ニウイス・テンペスタース・オブスクランス)!!!」

雷の暴風(ヨウイス・テンペスタース・フルグリエンス)!!!」

 

あいつ等の魔法が、ドゴオオォン! という音を立ててぶつかり合い、衝撃波を起こした!

 

いけっ! 頑張れ少年! ……こういうとき、ついうっかり声が出ないのはいいよな。

 

ドオオォン! 

 

ぬお!? すげえ風圧! どっちが勝ったんだ?

 

「フフ…フフフ……やりおったなぁ、小僧」

「あわわ!? ごごごめめ御免なさい!」

 

……少年が勝ったのは分かった。だけど何で金髪少女の方は脱げてんだ? お約束か?

つーか、あの少女まだ戦う気か。不屈の精神だな、ある意味。

 

「まだだぞ……まだ勝負は―――」

「これはっ……!? いけない! マスター戻って!」

 

なんだ? なにが―――”バシャッ!”―――うお、眩しっ!? ……いきなりかよ……。でも、電気が付いたってことは復旧作業は終わったのか。

 

「きゃん!?」

 

次から次へと何だ!? って、金髪が落ちてくぞ!? 空飛べんじゃ―――

 

「どうしたの!? いきなり!」

「この復旧でマスターへの封印が復活し、魔力がなくなってしまったのです! このままでは、今はただの子供であるマスターは湖へ!」

 

まじかよっ!?

 

「エヴァンジェリンさーん!!」

「馬鹿! ネギっ!?」

「兄貴、無茶だっ!?」

 

……ちっくしょうがっ……!

 

”時よ止まれ!”

 

間に合えってんだよおぉっ!!

 

 

伸ばした両手は見事に少女をキャッチし、そのあとで体制を安定させた。――飛べるって便利だな!

 

「ん…? ………うお!? 貴様、あの時の! またいつの間に!」

「うわぁっ!? いきなり出てきたぁっ!?」

 

抱えていた少女を目の前の少年に渡す。というかこいつ、いつの間に杖に乗ってたんだか。

そいじゃ、さっさと去るか。……余計怪しまれんうちに。

 

「あ、あの! あのときはすみませんでした! それと―――」

 

もういいっての! さっさと退散!

 

「あ、ちょっと!」

 

何も聞こえへん! 聞いてへん!

 

俺は更にスピードを上げ、その場から離れた。

 

 

 

 

 

ふぅ……追ってはこないみたいだな。にしてもこのまま、あてもなく放浪するのかぁ…それしか道がないとはいえ、なんか悲しい……くそ、この見た目じゃ無ければ! いや、十分過ぎるほど格好いいけど!

 

……そうだ、京都へいこう! 今回は西洋の魔法物語みたいだから、東洋の神秘いっぱいの所には原作も来ないだろう……ナイスアイデアだ!

 

思い立った日が吉日だぜ!

 

 

 

 

side神楽坂明日菜

 

何だったの? あのローブの奴。 怪しすぎるにもほどがあるわよ。いきなり現れるし、顔隠してるし空飛ぶし。

 

もうすぐ修学旅行なのに嫌なことや変なことが起こりすぎよ……。

そういえば、修学旅行ってうちは選択式だったわよね。ハワイとかもあるけれど―――――

 

 

ネギの奴は京都とか喜びそうかな。委員長もそれ選びそうだし。

 

 


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