二十分間休憩があったが、休憩後もまだ時間があったため、食いもの屋の屋台を回ったり特訓をしたりしていた。
……が、すぐに試合時間が来てしまった。
早いな、次の試合はもうすぐか……。
四つしか試合無いし、一つは不戦勝だし早く回ってくるのは当たり前か。
俺の次の相手は、桜咲刹那……あのメイド姿のデッキブラシ使いの少女か。俺、途中から試合見てないからどんな戦い方するか分かんねえんだよな……。
ま、いいや。当たって砕けろだ!
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side超
「ハカセ、調子はどうネ?」
「はい、カメラ妨害用ナノマシンの散布も良好ですし、ネットにまいた種もうまく芽吹いています」
……ふむ、今の所予定どうりネ
「ただ、二つほど気になる事があるんです。……一つは、エヴァさん達と素性不明の人が接触しているという事です」
「何者アル?
「図書館司書のクウネル・サンダースという人物で、今大会の出場者でもあります。所属は図書館島の図書館司書とありますが―――」
「ふむ……計画に不確定要素はつきものネ。調べておくとしよう」
「そして二つ目なんですが……この映像を見てください」
お、これは確か”ディエゴ・ブランドー”とかいう出場者の一人カ。あの”闇の福音”を弱い状態とはいえ軽く倒した男、ダタカ。
「……一旦ストップします。問題はここから―――エヴァさんが投げられた時の映像です」
ほお、エヴァンジェリンの投げ技が見事に……。……!?
―――今、映像が飛んダ……!? いきなり投げられタ!?
「この不可思議な現象は、コンマ0.01秒以下の”超”スーパースローカメラで撮影していたものでも、投げる瞬間は捕らえられませんでした。まるで―――」
「うむ、時間を操ったかのようネ……」
カシオペアも無しにこんな芸当が出来るとは……まだ決まった訳ではないが、十分に警戒しておく必要もありそうネ。
「出来るなら仲間に引き込みたいところだガ」
「クウネル氏以上に素性が不明な人物ですからね……」
ま、どんな事があろうとも、私の計画は狂わせないヨ。
sideout
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side第三者
『それでは皆さん、お待ちかねの第二回戦最終試合です! 桜咲刹那選手 対 ディエゴ・ブランドー選手! この試合の勝者がベスト4へと進めます!』
ステージ中央へと進みながら、刹那はエヴァンジェリンから教えられた事を思い返していた。
(最近の私は幸福な状況に流され、たるんでしまっていた……。そんな私の為に、エヴァンジェリンさんは時間を割いてまで諭すとは。……おかげで、自分の意思を示し、その意思をより強く持つ事が出来るようになった。『剣の道も幸福の道も、どちらもあきらめず進む』という意思を)
刹那は一度目を閉じ、深呼吸してから目を開け、目の前の男を見据えた。
(最弱状態だったとはいえ……エヴァンジェリンさんを軽くあしらった男。
いや、あの合気柔術を使いこなす、最弱とは呼べないほどのエヴァンジェリンさんの技を簡単に返してしまえるなど……、並みの者に出来る事ではない。
不可思議な技も持っているようだし、しっかり見据え油断しないようにしないと……!)
刹那は明日菜の試合の時と同等以上に”気”を込め、構える。
『それでは最終試合……ready Fight』
試合の火ぶたが切られた。
「がはっ!?」
と同時に、腹部に拳が決まっていた。
(予備動作すら無しにっ!? これは……一体!?)
「く……”斬岩剣”!」
刹那は”気”を込めた一撃を繰り出した。その一撃は本当に岩をも切り裂くほどの威力を誇る、凄まじい一撃――――のはずだった。
しかし、目の前の男はそれを片手で受け止めてしまったのだ。それと同時に蹴りが飛んでくる。型は滅茶苦茶だったが、そんなことが関係無いほどに速く、正確な一撃だった。
(防御して……流せば!)
達人と素人の違いからか、若干ずれたものの刹那の予測通りの場所に蹴りが飛んでくる。そして、流そうとしたまさにその瞬間、
「がっ!?」
蹴りが見事に入った。受け止め流したはずの蹴りがだ。
(エヴァンジェリンさんの時と同じだ……、やはりこの男は不可思議な術を使う…! この術の正体を見極めねば!!)
しかし、刹那は薄々だが感づいていた。 ”気”の防御を易々と抜いてくるパワー、巨体に似合わないスピードとテクニック。そして戦ってみて確かに感じた、まだ恐らく本気ではないだろうという所から―――
(せめて……せめてネギ先生の為に、ヒントだけでもつかんでおかなくては!)